生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_髪質改善剤の評価方法
出願番号:2008063025
年次:2009
IPC分類:G01N 30/88,G01N 33/15,G01N 30/72,G01N 27/62,A61K 8/18,A61K 8/97,A61Q 5/12


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辻村 久 増川 克典 佐藤 平行 JP 2009216656 公開特許公報(A) 20090924 2008063025 20080312 髪質改善剤の評価方法 花王株式会社 000000918 飯田 敏三 100076439 佐々木 渉 100118131 宮前 尚祐 100131288 星野 宏和 100141771 辻村 久 増川 克典 佐藤 平行 G01N 30/88 20060101AFI20090828BHJP G01N 33/15 20060101ALI20090828BHJP G01N 30/72 20060101ALI20090828BHJP G01N 27/62 20060101ALI20090828BHJP A61K 8/18 20060101ALI20090828BHJP A61K 8/97 20060101ALI20090828BHJP A61Q 5/12 20060101ALI20090828BHJP JPG01N30/88 AG01N30/88 EG01N33/15 ZG01N30/72 CG01N27/62 VA61K8/18A61K8/97A61Q5/12 4 OL 12 2G041 4C083 2G041CA01 2G041DA02 2G041DA05 2G041DA09 2G041DA18 2G041EA04 2G041FA07 2G041FA10 2G041FA30 2G041GA03 2G041GA06 2G041GA08 2G041GA09 2G041GA11 2G041GA17 2G041GA25 2G041GA27 2G041LA08 2G041MA05 2G041MA06 4C083AA112 4C083AC641 4C083AC642 4C083CC31 4C083CC33 4C083CC37 4C083CC38 4C083CC39 4C083DD23 4C083DD27 4C083EE07 4C083EE22 本発明は、髪質改善剤の評価方法に関する。 シャンプーやワックス等の外用のヘアケア剤を利用して毛髪の感触に関わる物性を改善することが可能である。例えば、セラミドをシャンプーに配合することにより毛髪表面の摩擦が低減するという報告(例えば非特許文献1参照)もあり、市場にはセラミドが配合されたシャンプー、トリートメント等のヘアケア剤が存在する。しかし、その効果は毛髪表面に関する一時的な物性の改善であり、永続的に髪質を改善するものではない。一方で、パーマやブリーチ等の化学反応型のヘアケア剤を利用して毛髪内部の物性や形状を改善することも可能である。しかし、その効果は半永続的あるいは永続的であるものの、新たに毛根から生えてくる毛髪の物性や形状を改善させるものではない。 外用のヘアケア剤や化学反応型のヘアケア剤を用いることなしに、半永続的あるいは永続的に毛髪の髪質(ハリコシ、ボリューム、ツヤ、くせ・うねり等)を改善するためには、毛母細胞での代謝を変えることが有効な手段である。即ち、毛髪は多数の蛋白質分子と脂質分子を主要構成成分としているので、これら分子の代謝を制御することにより、毛根から生えてくる毛髪の髪質を改善することが可能である。従来の髪質改善剤の評価方法としては、切り取ったヒトの毛髪、複数本を試料とし、髪質改善剤の使用前後での曲げ性を調べることによって、髪質改善剤を評価する方法がある(例えば特許文献1参照)。「インターナショナルジャーナルオブコスメティックサイエンス(International Journal of Cosmetic Science)」、第17巻、p.133−146(1995年)特開2005−134344号公報 しかしながら、特許文献1の方法では、毛髪が評価可能な長さ(数cm)に成長するまで髪質改善剤の使用を継続する必要があり、髪質改善剤の迅速な評価が困難であるという問題がある。 即ち、本発明は、髪質改善剤による髪質改善効果を迅速に評価する方法を提供することを目的とする。 上記課題に対して、本発明者等は、髪質改善剤使用前後の毛髪の脂質組成情報と髪質改善効果との相関関係を脂質の網羅的解析により検討した。その結果、髪質改善剤の使用により髪質が改善されると共に、毛母細胞で生合成される多数の脂質分子(特にセラミド分子群)が増減すること、及び脂質分子(特にセラミド分子群)が髪質と関連して変動する分子マーカーであることを発見した。本発明はこれらの知見に基づくものである。 即ち、本発明は髪質改善剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出して毛髪脂質分子の組成情報を得る工程と、髪質改善剤使用前後での前記毛髪脂質分子の組成情報と髪質改善剤の使用による毛髪の髪質改善効果とを関連付ける工程を含む、髪質改善剤の評価方法を提供するものである。 本発明によれば、毛髪脂質を網羅的に解析することにより、髪質改善に有意な毛髪脂質を特定することができる。また、本発明によれば、髪質改善剤使用前後における毛髪脂質組成の情報から、髪質改善剤の有効性(髪質改善効果)を的確且つ迅速に評価することができる。 以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。 本明細書において、「髪質」とはハリコシ、ボリューム、ツヤ、くせ・うねり等を意味し、「髪質改善剤」とは上記で例示した髪質を改善する物質を意味する。また、「網羅的」とは、多種且つ微量で存在する毛髪脂質分子が含まれる試料を測定して、各脂質分子を一度の測定で分離検出することを意味する。 まず、毛髪脂質試料の調製方法について説明する。 本発明において、毛髪のうち毛根部又は頭皮近傍の毛元部分を使用する。毛髪は様々な外的因子(光、熱、シャンプーなど)により毛髪脂質を失う。本発明における「頭皮近傍の毛元部分」とは、このような外的因子の影響をほとんど受けておらず、毛根部とほぼ同等の毛髪脂質組成であるような、頭皮の生え際の毛髪の一部を意味している。本発明においては、毛根部又は頭皮から1cmまでの毛元部分を使用するのが好ましく、毛根部を使用するのがより好ましい。 髪質改善剤使用前後での毛髪脂質試料を以下のように調製する。即ち、毛根又は頭皮近傍の毛元部分を採取し、クロロホルム又はメタノールを加え、一定時間放置することにより、毛髪脂質を抽出する。 上記のように調製した毛髪脂質試料について、液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、その測定データを解析する。 次に、本発明における液体クロマトグラフ−質量分析法について図面を参照して説明する。 図1は、セラミド分子群等の脂質分子解析システムの一例のブロック図である。このシステムは、液体クロマトグラフ10、質量分析装置20及び演算装置30からなっている。 液体クロマトグラフ10は、溶離液aを送液する高圧グラジエントポンプ11、脂質試料溶液bを導入するオートインジェクター12、および分離カラム13を備えている。ここで、脂質試料溶液bとしては、毛髪採取物から抽出等により調製したセラミド等の脂質分子群を含む試料溶液を使用する。一方、溶離液aとしては、セラミド等の脂質分子群を適度に保持して分子種別に分離することが可能であり、不揮発性の酸や塩を高濃度に含まないものが好ましい。例えば、溶離液aを揮発性の酢酸アンモニウムを少量含んだメタノール溶液とすることが好ましい。 分離カラム13の充填剤としては、例えば、シリカゲルにオクタデシル基を結合させた逆相カラムを用いることができる。 液体クロマトグラフ10を以上のように構成することにより、脂質分子群を、疎水性の違いに基づいて分離することができる。 質量分析装置20は、イオン化装置21と質量分離検出装置22からなる。 イオン化装置21でのイオン化の方法としては、感度の点からエレクトロスプレーイオン化法(ESI)が好ましいが、この他、大気圧化学イオン化法(APCI)や大気圧光イオン化法(APPI)等も用いることもできる。 質量分離検出装置22は、イオン化装置21で生成したイオンを、m/z毎に分離し、検出する。質量分離検出装置22としては、四重極(Q)型質量分析計、イオントラップ(IT)型質量分析計等の質量分析計、Q−TOF型、IT−TOF型等のハイブリッド型質量分析計、あるいはトリプル四重極型等のタンデム質量分析計(MS/MS)を用いることができる。 尚、以上の液体クロマトグラフ10及び質量分析装置20としては、これらが一体になった市販の液体クロマトグラフ−質量分析装置を使用することができる。 演算装置30は、液体クロマトグラフ10における保持時間と、質量分析装置20で検出されたm/z及びイオン強度を、3軸に展開して多段マスクロマトグラムを形成する演算手段を有する。 本発明の髪質改善剤の評価方法では、質量分析装置20で検出した全てのデータを、保持時間とm/zとイオン強度の3軸に展開した、図3および図4に示すような多段マスクロマトグラムを形成する。 多段マスクロマトグラムの形成により、全てのセラミド分子等の脂質分子群を網羅的に捉えることが可能となり、同属体や微量成分の認知が容易になるので、保持時間とm/zの情報から、個々のセラミド分子を容易に同定することが可能となる。 更に、本発明の髪質改善剤の評価方法では、セラミド分子等の脂質分子群の化学構造を同定するため、予め、複数のセラミド分子等の脂質分子について、保持時間とm/zを対応させたデータベースを構築しておくことが好ましい。このデータベースに基づいて、任意の脂質試料の多段マスクロマトグラムから脂質試料に含まれる全脂質分子を迅速に同定することが可能となる。 また、本発明の髪質改善剤の評価方法では、質量分析装置20にて選択イオンモニタリング法を行うことにより、複数の特定脂質分子を高感度に検出することもできる。選択イオンモニタリング法による検出データについても、図3と同様な多段マスクロマトグラムを形成することができ、複数の特定脂質分子を高感度且つ網羅的に捉えることが可能となる。 内部標準法を利用することにより定量することもできる。内部標準としては、毛髪に存在しない脂質を利用することができ、例えばセラミドの場合であればN−ヘプタデカノイル−D−エリスロール−スフィンゴシンを用いることができる。 上記の方法により、髪質改善剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分での毛髪脂質分子の組成情報を得、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報を求める。 本発明において、毛髪脂質分子の例としては、セラミド分子群、コレステロール、硫酸コレステロール、脂肪酸等が挙げられる。本発明においては、毛髪脂質分子はセラミド分子群であることが好ましい。 次に、本発明の好ましい態様としてのセラミド分子群について説明する。 セラミド分子はスフィンゴ塩基と脂肪酸がアミド結合した化合物であり、スフィンゴシンと脂肪酸の構造の違いによって、NDS(ノンヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン)類、NS(ノンヒドロキシアシル−スフィンゴシン)類、ADS(α−ヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン)類、及びAS(α−ヒドロキシアシル−スフィンゴシン)類に分類される。毛髪には以下に示す合計73種のセラミド分子が存在することが知られている。 尚、本明細書において、各セラミド分子を以下のように表記する。 上記(i)では、セラミド分子の脂肪酸部の種類を規定する。ここでNはノンヒドロキシアシルであることを示し、Aはα−ヒドロキシアシルであることを示す。 上記(ii)では、(i)の脂肪酸の炭素数を規定する。ここで、上記(a’)では「25:1」となっているが、これは脂肪酸の炭素数が25で、不飽和結合を1つ有することを示す。 上記(iii)では、セラミド分子のスフィンゴ塩基の種類を規定する。ここでDSはジヒドロスフィンゴシン又はその誘導体であることを示し、Sはスフィンゴシンまたはその誘導体であることを示す。 上記(iv)では、(iii)のスフィンゴ塩基の炭素数を規定する。 尚、上記(a)、(b)、(c)及び(d)のセラミド分子の化学式は以下の通りである。 本発明において、液体クロマトグラフ−質量分析法で測定し、測定データを解析する毛髪脂質はセラミド分子群であることが好ましく、セラミド分子の中でもNDS類及びNS類であることがより好ましい。NDS類とNS類がより好ましいのは、NDSは毛髪におけるセラミド分子群の主成分であり、NSはアポトーシスや細胞分化等に関して高い生理活性を有するためである。 本発明において、液体クロマトグラフ−質量分析法で得られた測定データを解析することで、髪質改善剤使用前後で有意に増減する毛髪脂質を分類し、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報をそれぞれ算出する。 これとは別途、髪質改善剤の使用により髪質がどの程度改善されたか、いわゆる髪質改善効果を評価する。髪質改善効果の評価方法は特に制限されることはなく、通常の方法で行うことができる。 上記のように算出した髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と、髪質改善効果とを関連付けることにより、本発明を実施することができる。 本発明の好ましい態様としては、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善効果との関連付けに基づいて、被験剤使用前後において毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した毛髪脂質試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、被験剤使用前後での毛髪脂質組成情報を求め、求めた毛髪脂質の組成情報から、被験剤を評価する方法が挙げられる。これにより、被験剤使用により髪質がどの程度改善されたか、いわゆる髪質改善効果を評価することなく、毛髪脂質組成の情報だけで被験剤を評価することができる。 以下に、本発明の好ましい態様について詳細に説明する。 まず、被験剤の使用前後での毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から毛髪脂質試料を調製する。調製方法については、髪質改善剤使用前後の毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分からの毛髪脂質試料の調製方法と同様である。 次に、調製した毛髪脂質試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、その測定データを解析する。液体クロマトグラフ−質量分析法での測定方法、及び解析方法についても、先に述べた方法と同様である。そして、上記解析結果を基に、被験剤の使用による毛髪脂質組成情報を算出する。組成情報の算出方法についても、先に述べた方法と同様である。その後、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善効果との関連付けに基づいて、被験剤使用による毛髪脂質組成情報から被験剤の評価を行う。 以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。(1)毛髪の採取 1ヶ月以上カラリングやパーマ処理を実施していない16名の被験者の頭皮から1cmの毛元部分の毛髪、及び髪質改善剤(ユーカリエキスを3%配合した頭皮ローション)を頭皮に1年間毎日2回適用した後の同一被験者の頭皮から1cmの毛元部分の毛髪を採取した。それぞれの毛髪は、天秤により毛髪重量を測定した。(2)毛髪改善剤による髪質改善効果の評価 髪質改善剤使用前後の髪質改善効果の評価方法として、以下のように毛髪のカール半径を測定することによって行った。毛髪のカール半径の測定方法は、毛髪(毛先から15cmまでの部分)を高解像度スキャナーで読み込み、毛髪形状の二次元イメージを取得した後、1mm間隔で各点の接線角度を求め、隣り合う2点の接線角度から曲率を算出した。これら曲率の平均値の逆数をカール半径とした。その結果、髪質改善剤使用後において毛髪のカール半径(うねり)が有意に改善されたことを確認した(図2)。(3)セラミド試料の調製 上記で採取した頭皮から1cmの毛元部分の毛髪に、クロロホルム/メタノール=2/1(体積比)溶液を加え、24時間放置することによりセラミドを抽出した。同様に、クロロホルム/メタノール=1/1(体積比)溶液、クロロホルム/メタノール=1/2(体積比)溶液、クロロホルム/メタノール/水=18/9/1(体積比)溶液においても抽出を行い、これらの抽出液を混合した。このように調製したセラミドの抽出液を窒素気流下で乾固し、これにN−ヘプタデカノイル−D−エリスロール−スフィンゴシンを含むメタノールを加えて溶解し、セラミド試料を調製した。(4)セラミド分子群の測定および解析 上記のように調製したセラミド試料を用いて、液体クロマトグラフ−質量分析法で網羅的な測定を行った。液体クロマトグラフ−質量分析法による測定条件は以下の通りである。(4−1)液体クロマトグラフ−質量分析装置 液体クロマトグラフと質量分析装置が一体になった分析システムとして、アジレント社製1100シリーズLC/MSDを使用した。(4−2)カラム、分離条件 カラム及び分離条件は次の通りとした。分離カラム:化学物質評価研究機構、L−column ODS 2.1mmΦ×150mm(5μm)移動相:10mmol/L酢酸アンモニウム含有メタノール移動相流速:0.2mL/分カラム温度:40℃試料溶液注入量:5μL(4−3)質量分析装置における分析条件 質量分析装置における分析条件は、以下の通りとした。イオン化法:ESI極性:負イオンフラグメンター電圧:250VVcap電圧:3000Vネブライザー圧力:30psig乾燥ガス温度:350℃乾燥ガス流量:8.0L/分SIMモニターイオン:表1(5)測定データの解析 得られたデータを、保持時間とm/zとイオン強度の3軸を有する多段マスクロマトグラムに展開した。その結果を図3および図4に示す。その後、保持時間とm/zの情報からなるセラミド分子群のデータベースを利用して各ピークを同定した。毛髪改善剤使用前の毛髪採取物からは、図3に示すように、41本のピークを検出することができた。一方、毛髪改善剤使用後の毛髪採取物においても、図4に示すように、41本のピークが検出されたが、そのプロファイルは使用前(図3)と異なっていた。そして、各セラミドのピーク面積を求め、内部標準物質に対するピーク面積比を算出し、さらに毛髪重量で除することにより、単位毛髪重量当たりの各セラミド分子の絶対量を算出した。 上記の操作により、採取した毛髪の毛根部に含まれる各セラミドの量を測定した。その結果を表2に示す。尚、表2にはうねり緩和とセラミド量変化の相関関係も示す。(6)髪質改善剤使用前後のセラミド分子群の組成情報と髪質改善効果との関連付け 表2の結果から、髪質改善剤使用後では、N14DS18、N16DS18、N18DS18、N20DS18、N24DS18、N18:1DS18、N24:1DS18、A14DS18、A16DS18、A18DS18が有意に減少し、N17DS18、N21DS18、N23DS18、N27DS18、N28DS18、N16:1DS18、N27:1DS18、N30:1DS18、N16S18、N22S18、N24S18、N26S18、N24:1S18、A16S18、A24S18が有意に増加していた。即ち、脂肪酸鎖の炭素数が偶数のNDS類やADS類は減少し、脂肪酸鎖の炭素数が奇数のNDS類、脂肪酸鎖が長鎖のNDS類、NS類、AS類は増加する傾向であった。 また表2に剤使用前後のカール半径の比(うねり緩和)とセラミド量の比(セラミド量変化)について、相関係数を算出した結果を示す。この結果から、脂肪酸鎖の炭素数が偶数のNDS類やADS類に比べて、脂肪酸鎖の炭素数が奇数のNDS類、NS類、AS類ではうねり緩和と高い正の相関を示す分子種が多数認められた。 以上の結果より、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善効果とを関連付けることによって、髪質改善剤の髪質改善効果を評価できることが確認された。図1は、毛髪脂質試料を網羅的に測定、解析することができるシステムの一例のブロック図である。実施例における、髪質改善剤使用前後の毛髪のカール半径の測定結果である。実施例における、髪質改善剤使用前のセラミドの多段マスクロマトグラムである。実施例における、髪質改善剤使用後のセラミドの多段マスクロマトグラムである。符号の説明10 液体クロマトグラフ11 高圧グラジエントポンプ12 オートインジェクター13 分離カラム20 質量分析装置21 イオン化装置22 質量分離検出装置30 演算装置a 溶離液b 脂質試料溶液 髪質改善剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出して毛髪脂質分子の組成情報を得る工程と、髪質改善剤使用前後での前記毛髪脂質分子の組成情報と髪質改善剤の使用による毛髪の髪質改善効果とを関連付ける工程を含む、髪質改善剤の評価方法。 前記毛髪脂質分子がセラミド分子群である請求項1の記載の髪質改善剤の評価方法。 前記セラミド分子群がノンヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン(NDS)類、ノンヒドロキシアシル−スフィンゴシン(NS)類、α−ヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン(ADS)類、及びα−ヒドロキシアシル−スフィンゴシン(AS)類から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項2の記載の髪質改善剤の評価方法。 被験剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した毛髪脂質試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、被験剤使用前後での毛髪脂質組成情報から、前記髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善剤使用前後での毛髪の髪質改善効果との関連付けに基づいて、被験剤の目的とする髪質改善効果を評価することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の髪質改善剤の評価方法。 【課題】被験剤使用前後の毛髪脂質組成の情報から、被験剤の髪質改善剤としての有効性(髪質改善効果)を的確且つ迅速に評価する方法を提供する。【解決手段】髪質改善剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出して毛髪脂質分子の組成情報を得、髪質改善剤使用前後での前記毛髪脂質分子の組成情報と髪質改善剤の使用による毛髪の髪質改善効果とを関連付ける、髪質改善剤の評価方法。【選択図】なし


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特許公報(B2)_髪質改善剤の評価方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_髪質改善剤の評価方法
出願番号:2008063025
年次:2012
IPC分類:G01N 30/88,G01N 33/15,G01N 30/72,G01N 27/62,A61K 8/18,A61K 8/97,A61Q 5/12


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辻村 久 増川 克典 佐藤 平行 JP 5102658 特許公報(B2) 20121005 2008063025 20080312 髪質改善剤の評価方法 花王株式会社 000000918 飯田 敏三 100076439 佐々木 渉 100118131 宮前 尚祐 100131288 星野 宏和 100141771 辻村 久 増川 克典 佐藤 平行 20121219 G01N 30/88 20060101AFI20121129BHJP G01N 33/15 20060101ALI20121129BHJP G01N 30/72 20060101ALI20121129BHJP G01N 27/62 20060101ALI20121129BHJP A61K 8/18 20060101ALI20121129BHJP A61K 8/97 20060101ALI20121129BHJP A61Q 5/12 20060101ALI20121129BHJP JPG01N30/88 AG01N30/88 EG01N33/15 ZG01N30/72 CG01N27/62 VA61K8/18A61K8/97A61Q5/12 G01N 30/88 A61K 8/18 A61K 8/97 A61Q 5/12 G01N 27/62 G01N 30/72 G01N 33/15 特表2009−539783(JP,A) 特開2004−286738(JP,A) 特開2007−108060(JP,A) 特開2003−227821(JP,A) 特開平10−236927(JP,A) 特開2000−26241(JP,A) 特開2005−134344(JP,A) 4 2009216656 20090924 12 20101207 柏木 一浩 本発明は、髪質改善剤の評価方法に関する。 シャンプーやワックス等の外用のヘアケア剤を利用して毛髪の感触に関わる物性を改善することが可能である。例えば、セラミドをシャンプーに配合することにより毛髪表面の摩擦が低減するという報告(例えば非特許文献1参照)もあり、市場にはセラミドが配合されたシャンプー、トリートメント等のヘアケア剤が存在する。しかし、その効果は毛髪表面に関する一時的な物性の改善であり、永続的に髪質を改善するものではない。一方で、パーマやブリーチ等の化学反応型のヘアケア剤を利用して毛髪内部の物性や形状を改善することも可能である。しかし、その効果は半永続的あるいは永続的であるものの、新たに毛根から生えてくる毛髪の物性や形状を改善させるものではない。 外用のヘアケア剤や化学反応型のヘアケア剤を用いることなしに、半永続的あるいは永続的に毛髪の髪質(ハリコシ、ボリューム、ツヤ、くせ・うねり等)を改善するためには、毛母細胞での代謝を変えることが有効な手段である。即ち、毛髪は多数の蛋白質分子と脂質分子を主要構成成分としているので、これら分子の代謝を制御することにより、毛根から生えてくる毛髪の髪質を改善することが可能である。従来の髪質改善剤の評価方法としては、切り取ったヒトの毛髪、複数本を試料とし、髪質改善剤の使用前後での曲げ性を調べることによって、髪質改善剤を評価する方法がある(例えば特許文献1参照)。「インターナショナルジャーナルオブコスメティックサイエンス(International Journal of Cosmetic Science)」、第17巻、p.133−146(1995年)特開2005−134344号公報 しかしながら、特許文献1の方法では、毛髪が評価可能な長さ(数cm)に成長するまで髪質改善剤の使用を継続する必要があり、髪質改善剤の迅速な評価が困難であるという問題がある。 即ち、本発明は、髪質改善剤による髪質改善効果を迅速に評価する方法を提供することを目的とする。 上記課題に対して、本発明者等は、髪質改善剤使用前後の毛髪の脂質組成情報と髪質改善効果との相関関係を脂質の網羅的解析により検討した。その結果、髪質改善剤の使用により髪質が改善されると共に、毛母細胞で生合成される多数の脂質分子(特にセラミド分子群)が増減すること、及び脂質分子(特にセラミド分子群)が髪質と関連して変動する分子マーカーであることを発見した。本発明はこれらの知見に基づくものである。 即ち、本発明は髪質改善剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出して毛髪脂質分子の組成情報を得る工程と、髪質改善剤使用前後での前記毛髪脂質分子の組成情報と髪質改善剤の使用による毛髪の髪質改善効果とを関連付ける工程を含む、髪質改善剤の評価方法を提供するものである。 本発明によれば、毛髪脂質を網羅的に解析することにより、髪質改善に有意な毛髪脂質を特定することができる。また、本発明によれば、髪質改善剤使用前後における毛髪脂質組成の情報から、髪質改善剤の有効性(髪質改善効果)を的確且つ迅速に評価することができる。 以下、図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。 本明細書において、「髪質」とはハリコシ、ボリューム、ツヤ、くせ・うねり等を意味し、「髪質改善剤」とは上記で例示した髪質を改善する物質を意味する。また、「網羅的」とは、多種且つ微量で存在する毛髪脂質分子が含まれる試料を測定して、各脂質分子を一度の測定で分離検出することを意味する。 まず、毛髪脂質試料の調製方法について説明する。 本発明において、毛髪のうち毛根部又は頭皮近傍の毛元部分を使用する。毛髪は様々な外的因子(光、熱、シャンプーなど)により毛髪脂質を失う。本発明における「頭皮近傍の毛元部分」とは、このような外的因子の影響をほとんど受けておらず、毛根部とほぼ同等の毛髪脂質組成であるような、頭皮の生え際の毛髪の一部を意味している。本発明においては、毛根部又は頭皮から1cmまでの毛元部分を使用するのが好ましく、毛根部を使用するのがより好ましい。 髪質改善剤使用前後での毛髪脂質試料を以下のように調製する。即ち、毛根又は頭皮近傍の毛元部分を採取し、クロロホルム又はメタノールを加え、一定時間放置することにより、毛髪脂質を抽出する。 上記のように調製した毛髪脂質試料について、液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、その測定データを解析する。 次に、本発明における液体クロマトグラフ−質量分析法について図面を参照して説明する。 図1は、セラミド分子群等の脂質分子解析システムの一例のブロック図である。このシステムは、液体クロマトグラフ10、質量分析装置20及び演算装置30からなっている。 液体クロマトグラフ10は、溶離液aを送液する高圧グラジエントポンプ11、脂質試料溶液bを導入するオートインジェクター12、および分離カラム13を備えている。ここで、脂質試料溶液bとしては、毛髪採取物から抽出等により調製したセラミド等の脂質分子群を含む試料溶液を使用する。一方、溶離液aとしては、セラミド等の脂質分子群を適度に保持して分子種別に分離することが可能であり、不揮発性の酸や塩を高濃度に含まないものが好ましい。例えば、溶離液aを揮発性の酢酸アンモニウムを少量含んだメタノール溶液とすることが好ましい。 分離カラム13の充填剤としては、例えば、シリカゲルにオクタデシル基を結合させた逆相カラムを用いることができる。 液体クロマトグラフ10を以上のように構成することにより、脂質分子群を、疎水性の違いに基づいて分離することができる。 質量分析装置20は、イオン化装置21と質量分離検出装置22からなる。 イオン化装置21でのイオン化の方法としては、感度の点からエレクトロスプレーイオン化法(ESI)が好ましいが、この他、大気圧化学イオン化法(APCI)や大気圧光イオン化法(APPI)等も用いることもできる。 質量分離検出装置22は、イオン化装置21で生成したイオンを、m/z毎に分離し、検出する。質量分離検出装置22としては、四重極(Q)型質量分析計、イオントラップ(IT)型質量分析計等の質量分析計、Q−TOF型、IT−TOF型等のハイブリッド型質量分析計、あるいはトリプル四重極型等のタンデム質量分析計(MS/MS)を用いることができる。 尚、以上の液体クロマトグラフ10及び質量分析装置20としては、これらが一体になった市販の液体クロマトグラフ−質量分析装置を使用することができる。 演算装置30は、液体クロマトグラフ10における保持時間と、質量分析装置20で検出されたm/z及びイオン強度を、3軸に展開して多段マスクロマトグラムを形成する演算手段を有する。 本発明の髪質改善剤の評価方法では、質量分析装置20で検出した全てのデータを、保持時間とm/zとイオン強度の3軸に展開した、図3および図4に示すような多段マスクロマトグラムを形成する。 多段マスクロマトグラムの形成により、全てのセラミド分子等の脂質分子群を網羅的に捉えることが可能となり、同属体や微量成分の認知が容易になるので、保持時間とm/zの情報から、個々のセラミド分子を容易に同定することが可能となる。 更に、本発明の髪質改善剤の評価方法では、セラミド分子等の脂質分子群の化学構造を同定するため、予め、複数のセラミド分子等の脂質分子について、保持時間とm/zを対応させたデータベースを構築しておくことが好ましい。このデータベースに基づいて、任意の脂質試料の多段マスクロマトグラムから脂質試料に含まれる全脂質分子を迅速に同定することが可能となる。 また、本発明の髪質改善剤の評価方法では、質量分析装置20にて選択イオンモニタリング法を行うことにより、複数の特定脂質分子を高感度に検出することもできる。選択イオンモニタリング法による検出データについても、図3と同様な多段マスクロマトグラムを形成することができ、複数の特定脂質分子を高感度且つ網羅的に捉えることが可能となる。 内部標準法を利用することにより定量することもできる。内部標準としては、毛髪に存在しない脂質を利用することができ、例えばセラミドの場合であればN−ヘプタデカノイル−D−エリスロール−スフィンゴシンを用いることができる。 上記の方法により、髪質改善剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分での毛髪脂質分子の組成情報を得、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報を求める。 本発明において、毛髪脂質分子の例としては、セラミド分子群、コレステロール、硫酸コレステロール、脂肪酸等が挙げられる。本発明においては、毛髪脂質分子はセラミド分子群であることが好ましい。 次に、本発明の好ましい態様としてのセラミド分子群について説明する。 セラミド分子はスフィンゴ塩基と脂肪酸がアミド結合した化合物であり、スフィンゴシンと脂肪酸の構造の違いによって、NDS(ノンヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン)類、NS(ノンヒドロキシアシル−スフィンゴシン)類、ADS(α−ヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン)類、及びAS(α−ヒドロキシアシル−スフィンゴシン)類に分類される。毛髪には以下に示す合計73種のセラミド分子が存在することが知られている。 尚、本明細書において、各セラミド分子を以下のように表記する。 上記(i)では、セラミド分子の脂肪酸部の種類を規定する。ここでNはノンヒドロキシアシルであることを示し、Aはα−ヒドロキシアシルであることを示す。 上記(ii)では、(i)の脂肪酸の炭素数を規定する。ここで、上記(a’)では「25:1」となっているが、これは脂肪酸の炭素数が25で、不飽和結合を1つ有することを示す。 上記(iii)では、セラミド分子のスフィンゴ塩基の種類を規定する。ここでDSはジヒドロスフィンゴシン又はその誘導体であることを示し、Sはスフィンゴシンまたはその誘導体であることを示す。 上記(iv)では、(iii)のスフィンゴ塩基の炭素数を規定する。 尚、上記(a)、(b)、(c)及び(d)のセラミド分子の化学式は以下の通りである。 本発明において、液体クロマトグラフ−質量分析法で測定し、測定データを解析する毛髪脂質はセラミド分子群であることが好ましく、セラミド分子の中でもNDS類及びNS類であることがより好ましい。NDS類とNS類がより好ましいのは、NDSは毛髪におけるセラミド分子群の主成分であり、NSはアポトーシスや細胞分化等に関して高い生理活性を有するためである。 本発明において、液体クロマトグラフ−質量分析法で得られた測定データを解析することで、髪質改善剤使用前後で有意に増減する毛髪脂質を分類し、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報をそれぞれ算出する。 これとは別途、髪質改善剤の使用により髪質がどの程度改善されたか、いわゆる髪質改善効果を評価する。髪質改善効果の評価方法は特に制限されることはなく、通常の方法で行うことができる。 上記のように算出した髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と、髪質改善効果とを関連付けることにより、本発明を実施することができる。 本発明の好ましい態様としては、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善効果との関連付けに基づいて、被験剤使用前後において毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した毛髪脂質試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、被験剤使用前後での毛髪脂質組成情報を求め、求めた毛髪脂質の組成情報から、被験剤を評価する方法が挙げられる。これにより、被験剤使用により髪質がどの程度改善されたか、いわゆる髪質改善効果を評価することなく、毛髪脂質組成の情報だけで被験剤を評価することができる。 以下に、本発明の好ましい態様について詳細に説明する。 まず、被験剤の使用前後での毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から毛髪脂質試料を調製する。調製方法については、髪質改善剤使用前後の毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分からの毛髪脂質試料の調製方法と同様である。 次に、調製した毛髪脂質試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、その測定データを解析する。液体クロマトグラフ−質量分析法での測定方法、及び解析方法についても、先に述べた方法と同様である。そして、上記解析結果を基に、被験剤の使用による毛髪脂質組成情報を算出する。組成情報の算出方法についても、先に述べた方法と同様である。その後、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善効果との関連付けに基づいて、被験剤使用による毛髪脂質組成情報から被験剤の評価を行う。 以下、本発明を実施例に基づき更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。(1)毛髪の採取 1ヶ月以上カラリングやパーマ処理を実施していない16名の被験者の頭皮から1cmの毛元部分の毛髪、及び髪質改善剤(ユーカリエキスを3%配合した頭皮ローション)を頭皮に1年間毎日2回適用した後の同一被験者の頭皮から1cmの毛元部分の毛髪を採取した。それぞれの毛髪は、天秤により毛髪重量を測定した。(2)毛髪改善剤による髪質改善効果の評価 髪質改善剤使用前後の髪質改善効果の評価方法として、以下のように毛髪のカール半径を測定することによって行った。毛髪のカール半径の測定方法は、毛髪(毛先から15cmまでの部分)を高解像度スキャナーで読み込み、毛髪形状の二次元イメージを取得した後、1mm間隔で各点の接線角度を求め、隣り合う2点の接線角度から曲率を算出した。これら曲率の平均値の逆数をカール半径とした。その結果、髪質改善剤使用後において毛髪のカール半径(うねり)が有意に改善されたことを確認した(図2)。(3)セラミド試料の調製 上記で採取した頭皮から1cmの毛元部分の毛髪に、クロロホルム/メタノール=2/1(体積比)溶液を加え、24時間放置することによりセラミドを抽出した。同様に、クロロホルム/メタノール=1/1(体積比)溶液、クロロホルム/メタノール=1/2(体積比)溶液、クロロホルム/メタノール/水=18/9/1(体積比)溶液においても抽出を行い、これらの抽出液を混合した。このように調製したセラミドの抽出液を窒素気流下で乾固し、これにN−ヘプタデカノイル−D−エリスロール−スフィンゴシンを含むメタノールを加えて溶解し、セラミド試料を調製した。(4)セラミド分子群の測定および解析 上記のように調製したセラミド試料を用いて、液体クロマトグラフ−質量分析法で網羅的な測定を行った。液体クロマトグラフ−質量分析法による測定条件は以下の通りである。(4−1)液体クロマトグラフ−質量分析装置 液体クロマトグラフと質量分析装置が一体になった分析システムとして、アジレント社製1100シリーズLC/MSDを使用した。(4−2)カラム、分離条件 カラム及び分離条件は次の通りとした。分離カラム:化学物質評価研究機構、L−column ODS 2.1mmΦ×150mm(5μm)移動相:10mmol/L酢酸アンモニウム含有メタノール移動相流速:0.2mL/分カラム温度:40℃試料溶液注入量:5μL(4−3)質量分析装置における分析条件 質量分析装置における分析条件は、以下の通りとした。イオン化法:ESI極性:負イオンフラグメンター電圧:250VVcap電圧:3000Vネブライザー圧力:30psig乾燥ガス温度:350℃乾燥ガス流量:8.0L/分SIMモニターイオン:表1(5)測定データの解析 得られたデータを、保持時間とm/zとイオン強度の3軸を有する多段マスクロマトグラムに展開した。その結果を図3および図4に示す。その後、保持時間とm/zの情報からなるセラミド分子群のデータベースを利用して各ピークを同定した。毛髪改善剤使用前の毛髪採取物からは、図3に示すように、41本のピークを検出することができた。一方、毛髪改善剤使用後の毛髪採取物においても、図4に示すように、41本のピークが検出されたが、そのプロファイルは使用前(図3)と異なっていた。そして、各セラミドのピーク面積を求め、内部標準物質に対するピーク面積比を算出し、さらに毛髪重量で除することにより、単位毛髪重量当たりの各セラミド分子の絶対量を算出した。 上記の操作により、採取した毛髪の毛根部に含まれる各セラミドの量を測定した。その結果を表2に示す。尚、表2にはうねり緩和とセラミド量変化の相関関係も示す。(6)髪質改善剤使用前後のセラミド分子群の組成情報と髪質改善効果との関連付け 表2の結果から、髪質改善剤使用後では、N14DS18、N16DS18、N18DS18、N20DS18、N24DS18、N18:1DS18、N24:1DS18、A14DS18、A16DS18、A18DS18が有意に減少し、N17DS18、N21DS18、N23DS18、N27DS18、N28DS18、N16:1DS18、N27:1DS18、N30:1DS18、N16S18、N22S18、N24S18、N26S18、N24:1S18、A16S18、A24S18が有意に増加していた。即ち、脂肪酸鎖の炭素数が偶数のNDS類やADS類は減少し、脂肪酸鎖の炭素数が奇数のNDS類、脂肪酸鎖が長鎖のNDS類、NS類、AS類は増加する傾向であった。 また表2に剤使用前後のカール半径の比(うねり緩和)とセラミド量の比(セラミド量変化)について、相関係数を算出した結果を示す。この結果から、脂肪酸鎖の炭素数が偶数のNDS類やADS類に比べて、脂肪酸鎖の炭素数が奇数のNDS類、NS類、AS類ではうねり緩和と高い正の相関を示す分子種が多数認められた。 以上の結果より、髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善効果とを関連付けることによって、髪質改善剤の髪質改善効果を評価できることが確認された。図1は、毛髪脂質試料を網羅的に測定、解析することができるシステムの一例のブロック図である。実施例における、髪質改善剤使用前後の毛髪のカール半径の測定結果である。実施例における、髪質改善剤使用前のセラミドの多段マスクロマトグラムである。実施例における、髪質改善剤使用後のセラミドの多段マスクロマトグラムである。符号の説明10 液体クロマトグラフ11 高圧グラジエントポンプ12 オートインジェクター13 分離カラム20 質量分析装置21 イオン化装置22 質量分離検出装置30 演算装置a 溶離液b 脂質試料溶液 髪質改善剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出して毛髪脂質分子の組成情報を得る工程と、髪質改善剤使用前後での前記毛髪脂質分子の組成情報と髪質改善剤の使用による毛髪の髪質改善効果とを関連付ける工程を含む、髪質改善剤の評価方法。 前記毛髪脂質分子がセラミド分子群である請求項1の記載の髪質改善剤の評価方法。 前記セラミド分子群がノンヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン(NDS)類、ノンヒドロキシアシル−スフィンゴシン(NS)類、α−ヒドロキシアシル−ジヒドロスフィンゴシン(ADS)類、及びα−ヒドロキシアシル−スフィンゴシン(AS)類から選ばれる1種以上であることを特徴とする、請求項2の記載の髪質改善剤の評価方法。 被験剤使用前後における毛髪の毛根部又は頭皮近傍の毛元部分から調製した毛髪脂質試料を液体クロマトグラフ−質量分析法で分離検出し、毛髪脂質分子の組成情報を得、被験剤使用前後での毛髪脂質組成情報から、前記髪質改善剤使用前後での毛髪脂質組成情報と髪質改善剤使用前後での毛髪の髪質改善効果との関連付けに基づいて、被験剤の目的とする髪質改善効果を評価することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の髪質改善剤の評価方法。


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