生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_みりん類の製造方法およびその利用
出願番号:2008062474
年次:2009
IPC分類:C12G 3/08


特許情報キャッシュ

永崎 直樹 木津 弥恵子 JP 2009213432 公開特許公報(A) 20090924 2008062474 20080312 みりん類の製造方法およびその利用 キッコーマン株式会社 000004477 鈴木 英之 100125542 永崎 直樹 木津 弥恵子 C12G 3/08 20060101AFI20090828BHJP JPC12G3/08 102 4 OL 6 本発明は、みりん類の製造方法およびその利用に関し、特に、麹の風味を残しつつ、色沢が淡麗で、経日的褐変増色の少ないみりん類の製造法に関する。 みりん類は、一般に、蒸しもち米等の原料米を米麹および焼酎等のアルコールと混合し、麹菌の作用で原料米を糖化し、原料米中の成分を分解溶出させ、さらに熟成を経た「醪」を圧搾、滓下げ、ろ過、火入れ等の処理に供することにより製造される。この「醪」を製造するための最初の原料の混合(すなわち、仕込み)においては、原料米、米麹及びアルコールを同時に、少なくとも実質的に同時といえる短時間のうちに混合するのが常法である。 みりん類は、通常、淡黄褐色の色沢を有するが、清酒等と比べると経日的に褐変増色しやすい傾向を有し、こうした褐変増色がみりん類の品質として好まれない場合があることから、褐変増色しにくい製品が求められている。 みりん類の褐変増色を抑制するためには、従来、例えば、活性炭処理が知られている。その他にも、柿渋を添加して火入れを行い、凝集物を沈殿清澄化する方法(例えば、特許文献1参照)や、乳酸菌を添加した水に糯米を浸漬する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。また、滓下げ工程終了後の製品充てん工程までの間のみりん類にプロテアーゼを作用させる方法(例えば、特許文献3参照)も知られている。しかしながら、これらの方法はいずれも、本来のみりん類の製造工程に対して付加的な投入物の調製およびその添加工程を要し、そのための設備等を必要とする。従って、付加的な作業負担を極力要しない簡単な方法でありながら、みりん類の褐変増色をさらに遅らせることができる方法が望まれていた。 みりん類における褐変増色は、製品中に含まれる糖類(アルデヒド基を潜在的に有する単糖及びその誘導体)と、蛋白質やペプチド、アミノ酸に由来するアミノ基とが非酵素的に共有結合する、いわゆるメイラード反応によるものと考えられる。みりん類は、その中に糖類を多量に含むと共に、原料米から麹菌の酵素の作用により分解溶出されるアミノ酸を含む。従って、メイラード反応の抑制という観点からは、分解溶出されるアミノ酸の量を低減する目的で、使用する麹菌の量を減らして麹菌の酵素の作用を弱めるという方策が考えられ得る。しかし、麹の使用量を減らした場合には、麹菌の作用により、あるいは麹菌自体によりもたらされるアミノ酸以外の各種成分まで少なくなってしまうことにより、みりん特有の重厚な香りや風味が保持されなくなるという問題を有している。この問題は、糖液等を用いてみりんを希釈することで色を薄くし、アミノ酸含量を減らすという方法においても同様にあてはまり、糖液等で希釈する方法により製造されたみりん類は、確かに色は薄く、褐変増色も一定度合で抑制されているものの、みりん特有の重厚な香りや風味が十分とはいえない。特公昭52−4638号公報特開平11−113555号公報特開2002−345449号公報 本発明は、簡便な操作により、麹由来の好ましい風味を残しつつ、色沢が淡麗で経日的褐変増色の少ないみりん類を提供することを課題とする。 本発明者らは、前記課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、みりん類の製造の際に、麹をアルコール処理した後に原料米と混合して仕込むことにより、得られるみりん類は色沢が淡麗で経日的褐変増色が少ないものとなることを知り、これらの知見に基づいて本発明を完成した。 すなわち、本発明は以下に関する。(1)原料米と麹とを混合して仕込む前に麹をアルコール処理することを特徴とする、みりん類の製造方法。(2)仕込み前のアルコール処理により麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼが全部または一部失活されていることを特徴とする、みりん類の製造方法。(3)麹と接触させる際のアルコール濃度を20〜100%(v/v)に調整し、温度を0〜80℃にて1時間〜10日間接触させることによりアルコール処理を行う、上記(1)〜(2)に記載のみりん類の製造方法。(4)上記(3)に記載のみりん類を使用して得られる飲食品。 本発明によれば、麹由来の好ましい風味を残しつつ、色沢が淡麗で経日的褐変増色の少ないみりん類を簡便な操作によって得ることができる。本発明のみりん類を用いることにより、麹由来の好ましい風味を残しつつ、色沢が淡麗で経日的褐変増色の少ない調味料、酒類、食品を得ることができる。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。(みりん類) 本発明における「みりん類」とは、例えば、みりん、みりん風調味料、発酵調味料、アルコール含有発酵調味料または本直しを含む。(醪の製造) 本発明のみりん類の製造における「醪」の製造方法は、麹をアルコール処理した後に仕込むことを除いては、従来の一般的な醪の製造法と何ら変わるものではない。本発明の「仕込み」または「仕込む」とは、従来方法における「蒸しもち米等の原料米を米麹および焼酎等のアルコールと混合する工程」または「蒸しもち米等の原料米を米麹および焼酎等のアルコールと混合すること」に相当する。 「醪」の一般的な製造法は、例えば、蒸煮した米に、米麹及び、場合により酵素剤を添加して仕込むというものである。「醪」は、適当な条件下で、糖化・熟成される。糖化は、アルコールの存在下または非存在下で行うことができる。アルコールとしては、例えば、醸造アルコール、飲食料品工業用アルコールが使用される。使用する酵素剤としては、例えば、アミラーゼ等が挙げられる。糖化時には、加温を行ってもよく、例えば、20〜40℃で、30〜60日程度反応させて糖化を行うことができる。(麹、原料米、酵素) 本発明のみりん類を製造するための麹、原料米、酵素類は特に限定されず、従来のみりん類の製造に用いられているものを任意に用いることができる。(アルコール処理による麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類の失活) 本発明においては、米麹を「仕込み」前に予めアルコール処理することが重要である。本発明の製造法におけるアルコール処理とは、「仕込み」前に麹をアルコールと一定期間接触させることをいう。麹とアルコールとの接触方法は限定されないが、例えば、アルコールを入れた容器中に麹を投入して一定時間浸漬する方法は操作が極めて簡便であり好ましい。本発明においては、原料米と混合される時点で、麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類が少なくとも部分的に失活していることが重要である。これにより、麹菌の作用が弱められ、同じ量の麹を仕込んだ場合であっても、麹の作用によって得られる醪中のアミノ酸含量を低減でき、得られるみりん類の褐変増色を抑制できる。 麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類の失活程度は任意であり、原料の種類、成分組成、麹の種類、または目的とする醪の品質等によって、適当な失活度合を選択することができる。すなわち、麹由来のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類をわずかに失活させてもよく、あるいは大部分を失活させてもよい。さらに、場合によっては、麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類は完全に失活させた上で、別途好適な酵素剤を添加することにより、それらを補うこともできる。(アルコール処理の条件) アルコール処理の条件は、任意の程度に麹由来のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類が失活するよう、適宜調節すればよい。調節の方法は、例えば、麹と接触させる時のアルコール濃度および接触時間、温度等を調節することにより行うことができる。例えば、麹と接触させる際のアルコール濃度を20〜100%(v/v)、好ましくは20〜80%(v/v)、より好ましくは30〜50%(v/v)、最も好ましくは35〜45%(v/v)に調整し、処理温度を0〜80℃、好ましくは5〜70℃、より好ましくは10〜60℃、最も好ましくは15〜55℃に保ち、1時間〜10日間、好ましくは1〜7日間、より好ましくは2〜5日間、最も好ましくは3日間処理することにより、麹由来のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類を部分的に失活させることができる。 アルコール処理の間に麹と接触させるアルコールは、一度に麹と接触させてもよく、必要に応じ、段階的に添加してもよい。すなわち、アルコール処理におけるアルコール濃度を段階的に高めるあるいは低めるために、濃度の異なるアルコールを追加添加することも任意に行うことができる。 アルコール処理後の麹を「仕込む」際には、例えば、アルコールと接触させた後の麹をアルコールから取り出して仕込んでも良く、また、麹との接触に用いたアルコールの一部を麹と共に仕込みに持ち込んでも良く、さらには、浸漬に用いたアルコールの全部を麹とともに仕込んでも良い。特に、浸漬に用いたアルコールの全部を仕込む場合には、アルコール浸漬により麹から抽出された各種成分を全て仕込むことができると共に、浸漬に用いたアルコールを廃棄する操作も不要であり、操作が簡便である。 また、アルコール処理した麹を仕込む場合に、何らアルコール処理に供していない麹を任意の割合で混合して仕込むこともできる。 このように仕込んだ後の工程は、従来のみりん類の製造に準じて行えばよい。本発明の方法によれば、従来のみりん類の製造に用いる材料のみを使用し、その仕込み手順のみを若干変更することにより実現できるものである。したがって、本発明の方法は、単独で用いた場合にも、また、その他の褐変増色抑制を意図した公知の手法と組み合わせた場合にも、極めて簡便に褐変増色抑制効果を得ることができる。(みりん類を使用した酒類または食品) 上述の方法により製造した本発明のみりん類は、従来のみりん類同様、任意の方法で各種食品、酒類等に配合し、飲食することができる。本発明のみりん類を使用した場合、色調が製品の品質に大きく貢献するような飲食品、例えば、透明な液体状である飲料、色の淡い液体調味料等において、特に効果が高いことが期待される。 以下、実験例及び実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。(みりん類の製造) 1)比較例1のみりん(区分1):精白もち米1,000gを常法により洗浄、浸漬、水切りした後、常圧で40分間蒸煮した。放冷後、表1に示す配合で仕込みを行った。仕込みの際の麹重量は100gとした。 2)比較例2のみりん(区分2):精白もち米900gを常法により洗浄、浸漬、水切りした後、常圧で40分間蒸煮した。放冷後、表1に示す配合で仕込みを行った。仕込みの際の麹重量は、区分1の2倍量の200gとした。 3)本発明1のみりん(区分3):常法により製麹した米麹100gを、40%(v/v)アルコール740mlに浸漬し、室温にて静置した。別途、精白もち米900gを区分1、2の方法に準じて蒸煮した。アルコールと麹を接触させて3日後に、この麹のアルコール浸漬物の中に、表1の配合で酵素剤、米麹(アルコール処理を行っていないもの)とともに、蒸煮した精白もち米を投入し、仕込みを行った。 4)本発明2のみりん(区分4):常法により製麹した米麹200gを、40%(v/v)アルコール740mlに浸漬し、室温にて静置した。別途、精白もち米900gを区分1〜3の方法に準じて蒸煮した。アルコールと麹を接触させて3日後に、この麹のアルコール浸漬物の中に、表1の配合で酵素剤、米麹(アルコール処理を行っていないもの)とともに、蒸煮した精白もち米を投入し、仕込みを行った。 区分1〜区分4について仕込んだものを30℃にて糖化熟成を行い、得られた醪をハンドプレスで1ヶ月後に圧搾、製成した。(増色度および官能評価) 得られたみりんの分析値を表2に示す。50℃で7日間保存した時の色度(430nmにおける吸光度)の変化を増色度とした。 比較例において、麹を2倍に増やした比較例2のみりん(区分2)は、比較例1のみりん(区分1)に比べてアミノ酸度が高く、そのために、製成時の色度および、保存時の増色度も顕著に高かった。また、風味の点からは、麹を2倍に増やした比較例2のみりん(区分2)の方が、麹使用量の少ない比較例1のみりん(区分1)よりも風味良好であり、麹量を減らしたものでは麹らしい甘い香りが乏しかった。 一方、同じ麹重量を使用したもの同士で、本発明2のみりん(区分4)を比較例2のみりん(区分2)と比較すると、本発明2のみりんではアミノ酸度が顕著に低く、また製成時の色度および、保存時の増色度も顕著に低かった。すなわち、同じ麹量を使用しても、仕込み前に麹をアルコール処理することにより、増色傾向が抑制されたみりんを得ることができた。 さらに、本発明2のみりん(区分4)と同量の麹を仕込んでいるが、その半量がアルコール処理を行った麹であり、残りの半量がアルコール処理を行っていない麹を用いて仕込んだ本発明1のみりん(区分3)では、麹由来プロテアーゼ、ペプチダーゼ類の失活程度によるものと思われる、区分2と区分4のみりんに関する数値の中間的なアミノ酸度および増色度を有するみりんが得られた。 また、官能評価の結果、米麹の量が少ない対照みりん(区分1)に比べ、区分2〜4はいずれも、みりん特有の甘い香りを保持し、風味が良好であった。特に、区分4は、増色度が低いとともに風味も良好であり、みりんとして優れた品質であると評価された。 原料米と麹とを混合して仕込む前に麹をアルコール処理することを特徴とする、みりん類の製造方法。 仕込み前のアルコール処理により麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼが全部または一部失活されていることを特徴とする、みりん類の製造方法。 麹と接触させる際のアルコール濃度を20〜100%(v/v)に調整し、温度を0〜80℃にて1時間〜10日間接触させることによりアルコール処理を行う、請求項1〜2に記載のみりん類の製造方法。 請求項3に記載のみりん類を使用して得られる飲食品。 【課題】麹由来の好ましい風味を残しつつ、色沢が淡麗で経日的褐変増色の少ないみりん類を提供する。【解決手段】みりん類の製造において、麹を予めアルコールと一定条件下で接触させた後に、原料米と混合して仕込むことにより、アミノ酸度の低いみりん類を得る。【効果】麹中の酵素の全部または一部を失活させてから仕込むことによって、褐変反応の進行に関与するアミノ酸の含量が少なく、かつ、麹由来の好ましい風味を有するみりん類を簡便な操作によって得ることができる。【選択図】なし


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特許公報(B2)_みりん類の製造方法およびその利用

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_みりん類の製造方法およびその利用
出願番号:2008062474
年次:2013
IPC分類:C12G 3/08


特許情報キャッシュ

永崎 直樹 木津 弥恵子 JP 5344529 特許公報(B2) 20130823 2008062474 20080312 みりん類の製造方法およびその利用 キッコーマン株式会社 000004477 鈴木 英之 100125542 永崎 直樹 木津 弥恵子 20131120 C12G 3/08 20060101AFI20131031BHJP JPC12G3/08 102 C12G 3/08 JSTPlus(JDreamIII) 特開平10−179133(JP,A) 醸造の事典,1988年,初版第1刷,p.236 4 2009213432 20090924 7 20110119 西村 亜希子 本発明は、みりん類の製造方法およびその利用に関し、特に、麹の風味を残しつつ、色沢が淡麗で、経日的褐変増色の少ないみりん類の製造法に関する。 みりん類は、一般に、蒸しもち米等の原料米を米麹および焼酎等のアルコールと混合し、麹菌の作用で原料米を糖化し、原料米中の成分を分解溶出させ、さらに熟成を経た「醪」を圧搾、滓下げ、ろ過、火入れ等の処理に供することにより製造される。この「醪」を製造するための最初の原料の混合(すなわち、仕込み)においては、原料米、米麹及びアルコールを同時に、少なくとも実質的に同時といえる短時間のうちに混合するのが常法である。 みりん類は、通常、淡黄褐色の色沢を有するが、清酒等と比べると経日的に褐変増色しやすい傾向を有し、こうした褐変増色がみりん類の品質として好まれない場合があることから、褐変増色しにくい製品が求められている。 みりん類の褐変増色を抑制するためには、従来、例えば、活性炭処理が知られている。その他にも、柿渋を添加して火入れを行い、凝集物を沈殿清澄化する方法(例えば、特許文献1参照)や、乳酸菌を添加した水に糯米を浸漬する方法(例えば、特許文献2参照)が知られている。また、滓下げ工程終了後の製品充てん工程までの間のみりん類にプロテアーゼを作用させる方法(例えば、特許文献3参照)も知られている。しかしながら、これらの方法はいずれも、本来のみりん類の製造工程に対して付加的な投入物の調製およびその添加工程を要し、そのための設備等を必要とする。従って、付加的な作業負担を極力要しない簡単な方法でありながら、みりん類の褐変増色をさらに遅らせることができる方法が望まれていた。 みりん類における褐変増色は、製品中に含まれる糖類(アルデヒド基を潜在的に有する単糖及びその誘導体)と、蛋白質やペプチド、アミノ酸に由来するアミノ基とが非酵素的に共有結合する、いわゆるメイラード反応によるものと考えられる。みりん類は、その中に糖類を多量に含むと共に、原料米から麹菌の酵素の作用により分解溶出されるアミノ酸を含む。従って、メイラード反応の抑制という観点からは、分解溶出されるアミノ酸の量を低減する目的で、使用する麹菌の量を減らして麹菌の酵素の作用を弱めるという方策が考えられ得る。しかし、麹の使用量を減らした場合には、麹菌の作用により、あるいは麹菌自体によりもたらされるアミノ酸以外の各種成分まで少なくなってしまうことにより、みりん特有の重厚な香りや風味が保持されなくなるという問題を有している。この問題は、糖液等を用いてみりんを希釈することで色を薄くし、アミノ酸含量を減らすという方法においても同様にあてはまり、糖液等で希釈する方法により製造されたみりん類は、確かに色は薄く、褐変増色も一定度合で抑制されているものの、みりん特有の重厚な香りや風味が十分とはいえない。特公昭52−4638号公報特開平11−113555号公報特開2002−345449号公報 本発明は、簡便な操作により、麹由来の好ましい風味を残しつつ、色沢が淡麗で経日的褐変増色の少ないみりん類を提供することを課題とする。 本発明者らは、前記課題解決のために鋭意研究を重ねた結果、みりん類の製造の際に、麹をアルコール処理した後に原料米と混合して仕込むことにより、得られるみりん類は色沢が淡麗で経日的褐変増色が少ないものとなることを知り、これらの知見に基づいて本発明を完成した。 すなわち、本発明は以下に関する。(1)アルコール処理した麹を用いて仕込み・糖化・熟成を行うことにより得られる、アルコール含有量が16%未満のみりん類の製造方法。(2)アルコール処理により麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼが全部または一部失活されていることを特徴とする、上記(1)に記載のみりん類の製造方法。(3)アルコール処理した麹を用いて仕込み・糖化・熟成を行い、前記アルコール処理におけるアルコール濃度を20〜100%(v/v)に調整し、アルコールと麹の接触を0〜80℃、1時間〜10日間で行わせることを特徴とする、アルコール含有量が16%未満のみりん類の製造方法。(4)上記(1)〜(3)に記載の製造方法により得られるみりん類を使用して得られる飲食品。 本発明によれば、麹由来の好ましい風味を残しつつ、色沢が淡麗で経日的褐変増色の少ないみりん類を簡便な操作によって得ることができる。本発明のみりん類を用いることにより、麹由来の好ましい風味を残しつつ、色沢が淡麗で経日的褐変増色の少ない調味料、酒類、食品を得ることができる。 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。(みりん類) 本発明における「みりん類」とは、例えば、みりん、みりん風調味料、発酵調味料、アルコール含有発酵調味料または本直しを含む。(醪の製造) 本発明のみりん類の製造における「醪」の製造方法は、麹をアルコール処理した後に仕込むことを除いては、従来の一般的な醪の製造法と何ら変わるものではない。本発明の「仕込み」または「仕込む」とは、従来方法における「蒸しもち米等の原料米、米麹および焼酎等のアルコールを混合する工程」または「蒸しもち米等の原料米、米麹および焼酎等のアルコールを混合すること」に相当する。 「醪」の一般的な製造法は、例えば、蒸煮した米に、米麹及び、場合により酵素剤を添加して仕込むというものである。「醪」は、適当な条件下で、糖化・熟成される。糖化は、アルコールの存在下または非存在下で行うことができる。アルコールとしては、例えば、醸造アルコール、飲食料品工業用アルコールが使用される。使用する酵素剤としては、例えば、アミラーゼ等が挙げられる。糖化時には、加温を行ってもよく、例えば、20〜40℃で、30〜60日程度反応させて糖化を行うことができる。(麹、原料米、酵素) 本発明のみりん類を製造するための麹、原料米、酵素類は特に限定されず、従来のみりん類の製造に用いられているものを任意に用いることができる。(アルコール処理による麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類の失活) 本発明においては、米麹を「仕込み」前に予めアルコール処理することが重要である。本発明の製造法におけるアルコール処理とは、「仕込み」前に麹をアルコールと一定期間接触させることをいう。麹とアルコールとの接触方法は限定されないが、例えば、アルコールを入れた容器中に麹を投入して一定時間浸漬する方法は操作が極めて簡便であり好ましい。本発明においては、原料米と混合される時点で、麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類が少なくとも部分的に失活していることが重要である。これにより、麹菌の作用が弱められ、同じ量の麹を仕込んだ場合であっても、麹の作用によって得られる醪中のアミノ酸含量を低減でき、得られるみりん類の褐変増色を抑制できる。 麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類の失活程度は任意であり、原料の種類、成分組成、麹の種類、または目的とする醪の品質等によって、適当な失活度合を選択することができる。すなわち、麹由来のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類をわずかに失活させてもよく、あるいは大部分を失活させてもよい。さらに、場合によっては、麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類は完全に失活させた上で、別途好適な酵素剤を添加することにより、それらを補うこともできる。(アルコール処理の条件) アルコール処理の条件は、任意の程度に麹由来のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類が失活するよう、適宜調節すればよい。調節の方法は、例えば、麹と接触させる時のアルコール濃度および接触時間、温度等を調節することにより行うことができる。例えば、麹と接触させる際のアルコール濃度を20〜100%(v/v)、好ましくは20〜80%(v/v)、より好ましくは30〜50%(v/v)、最も好ましくは35〜45%(v/v)に調整し、処理温度を0〜80℃、好ましくは5〜70℃、より好ましくは10〜60℃、最も好ましくは15〜55℃に保ち、1時間〜10日間、好ましくは1〜7日間、より好ましくは2〜5日間、最も好ましくは3日間処理することにより、麹由来のプロテアーゼ、ペプチダーゼ類を部分的に失活させることができる。 アルコール処理の間に麹と接触させるアルコールは、一度に麹と接触させてもよく、必要に応じ、段階的に添加してもよい。すなわち、アルコール処理におけるアルコール濃度を段階的に高めるあるいは低めるために、濃度の異なるアルコールを追加添加することも任意に行うことができる。 アルコール処理後の麹を「仕込む」際には、例えば、アルコールと接触させた後の麹をアルコールから取り出して仕込んでも良く、また、麹との接触に用いたアルコールの一部を麹と共に仕込みに持ち込んでも良く、さらには、浸漬に用いたアルコールの全部を麹とともに仕込んでも良い。特に、浸漬に用いたアルコールの全部を仕込む場合には、アルコール浸漬により麹から抽出された各種成分を全て仕込むことができると共に、浸漬に用いたアルコールを廃棄する操作も不要であり、操作が簡便である。 また、アルコール処理した麹を仕込む場合に、何らアルコール処理に供していない麹を任意の割合で混合して仕込むこともできる。 このように仕込んだ後の工程は、従来のみりん類の製造に準じて行えばよい。本発明の方法によれば、従来のみりん類の製造に用いる材料のみを使用し、その仕込み手順のみを若干変更することにより実現できるものである。したがって、本発明の方法は、単独で用いた場合にも、また、その他の褐変増色抑制を意図した公知の手法と組み合わせた場合にも、極めて簡便に褐変増色抑制効果を得ることができる。(みりん類を使用した酒類または食品) 上述の方法により製造した本発明のみりん類は、従来のみりん類同様、任意の方法で各種食品、酒類等に配合し、飲食することができる。本発明のみりん類を使用した場合、色調が製品の品質に大きく貢献するような飲食品、例えば、透明な液体状である飲料、色の淡い液体調味料等において、特に効果が高いことが期待される。 以下、実験例及び実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明の技術的範囲は、それらの例により何ら限定されるものではない。(みりん類の製造) 1)比較例1のみりん(区分1):精白もち米1,000gを常法により洗浄、浸漬、水切りした後、常圧で40分間蒸煮した。放冷後、表1に示す配合で仕込みを行った。仕込みの際の麹重量は100gとした。 2)比較例2のみりん(区分2):精白もち米900gを常法により洗浄、浸漬、水切りした後、常圧で40分間蒸煮した。放冷後、表1に示す配合で仕込みを行った。仕込みの際の麹重量は、区分1の2倍量の200gとした。 3)本発明1のみりん(区分3):常法により製麹した米麹100gを、40%(v/v)アルコール740mlに浸漬し、室温にて静置した。別途、精白もち米900gを区分1、2の方法に準じて蒸煮した。アルコールと麹を接触させて3日後に、この麹のアルコール浸漬物の中に、表1の配合で酵素剤、米麹(アルコール処理を行っていないもの)とともに、蒸煮した精白もち米を投入し、仕込みを行った。 4)本発明2のみりん(区分4):常法により製麹した米麹200gを、40%(v/v)アルコール740mlに浸漬し、室温にて静置した。別途、精白もち米900gを区分1〜3の方法に準じて蒸煮した。アルコールと麹を接触させて3日後に、この麹のアルコール浸漬物の中に、表1の配合で酵素剤、米麹(アルコール処理を行っていないもの)とともに、蒸煮した精白もち米を投入し、仕込みを行った。 区分1〜区分4について仕込んだものを30℃にて糖化熟成を行い、得られた醪をハンドプレスで1ヶ月後に圧搾、製成した。(増色度および官能評価) 得られたみりんの分析値を表2に示す。50℃で7日間保存した時の色度(430nmにおける吸光度)の変化を増色度とした。 比較例において、麹を2倍に増やした比較例2のみりん(区分2)は、比較例1のみりん(区分1)に比べてアミノ酸度が高く、そのために、製成時の色度および、保存時の増色度も顕著に高かった。また、風味の点からは、麹を2倍に増やした比較例2のみりん(区分2)の方が、麹使用量の少ない比較例1のみりん(区分1)よりも風味良好であり、麹量を減らしたものでは麹らしい甘い香りが乏しかった。 一方、同じ麹重量を使用したもの同士で、本発明2のみりん(区分4)を比較例2のみりん(区分2)と比較すると、本発明2のみりんではアミノ酸度が顕著に低く、また製成時の色度および、保存時の増色度も顕著に低かった。すなわち、同じ麹量を使用しても、仕込み前に麹をアルコール処理することにより、増色傾向が抑制されたみりんを得ることができた。 さらに、本発明2のみりん(区分4)と同量の麹を仕込んでいるが、その半量がアルコール処理を行った麹であり、残りの半量がアルコール処理を行っていない麹を用いて仕込んだ本発明1のみりん(区分3)では、麹由来プロテアーゼ、ペプチダーゼ類の失活程度によるものと思われる、区分2と区分4のみりんに関する数値の中間的なアミノ酸度および増色度を有するみりんが得られた。 また、官能評価の結果、米麹の量が少ない対照みりん(区分1)に比べ、区分2〜4はいずれも、みりん特有の甘い香りを保持し、風味が良好であった。特に、区分4は、増色度が低いとともに風味も良好であり、みりんとして優れた品質であると評価された。 アルコール処理した麹を用いて仕込み・糖化・熟成を行うことにより得られる、アルコール含有量が16%未満のみりん類の製造方法。 アルコール処理により麹中のプロテアーゼ、ペプチダーゼが全部または一部失活されていることを特徴とする、請求項1に記載のみりん類の製造方法。 アルコール処理した麹を用いて仕込み・糖化・熟成を行い、前記アルコール処理におけるアルコール濃度を20〜100%(v/v)に調整し、アルコールと麹の接触を0〜80℃、1時間〜10日間で行わせることを特徴とする、アルコール含有量が16%未満のみりん類の製造方法。 請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法により得られるみりん類を使用して得られる飲食品。


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