生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬
出願番号:2008061877
年次:2010
IPC分類:A61K 31/7056,C07H 19/052,A61P 1/04,A61P 7/00


特許情報キャッシュ

石田 哲也 JP WO2009005046 20090108 JP2008061877 20080701 ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬 旭化成クラレメディカル株式会社 000116806 特許業務法人 もえぎ特許事務所 110000774 石田 哲也 JP 2007173707 20070702 A61K 31/7056 20060101AFI20100730BHJP C07H 19/052 20060101ALI20100730BHJP A61P 1/04 20060101ALI20100730BHJP A61P 7/00 20060101ALI20100730BHJP JPA61K31/7056C07H19/052A61P1/04A61P7/00 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100826 2009521631 15 4C057 4C086 4C057BB02 4C057DD01 4C057LL06 4C057LL18 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA16 4C086GA16 4C086GA17 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA05 4C086MA07 4C086MA52 4C086NA06 4C086NA14 4C086ZA51 4C086ZA66 4C086ZA68 4C086ZB08 本発明は、ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬に関する。特に、白血球除去療法と組み合わせて用いられる、ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬に関する。 炎症性腸疾患、中でも潰瘍性大腸炎およびクローン病は、腸粘膜にびらんや潰瘍を形成する慢性の炎症性疾患であり、症状が治まる緩解期と、下痢や下血が頻繁に起こる活動期を繰り返す症状を呈し、患者数が年々増加している疾患である。日本では約10万人、アメリカでは約100万人が罹患していると推定されている。これらの疾患の原因としては、細菌やウイルス感染、遺伝的素因、消化管の血管やリンパ管の障害などが推測されているが、真の原因はいまだ明らかにされていない。これらの疾患は、日本では厚生労働省の特定難治性疾患に指定されており、潰瘍性大腸炎の治療にはステロイド剤、サラゾスルフアピリジン、5−アミノサリチル酸(以下、「5−ASA」という)、アザチオプリン、シクロスポリンと白血球除去療法などを症状に応じて使用量を増減して使用すること、(非特許文献4)また、クローン病の治療には、成分栄養剤、ステロイドホルモン、サラゾスルフアピリジン、5−ASA、アザチオプリンとインフリキシマブなどを症状に応じて使用量を増減して用いることとされている(非特許文献5)。 このように、炎症性腸疾患の薬剤としては、炎症抑制作用を有するサラゾスルファピリジン、メサラジンに加え、ステロイド薬が主に使用されてきた。しかし、ステロイド薬が十分に奏効しない難治例(ステロイド無効例)も少なくなく、免疫抑制薬である6−メルカプトプリン(以下、「6−MP」という)やアザチオプリンが以前から使用されている。また、ステロイド薬に反応はするものの、減量すると症状が悪化するステロイド依存性のクローン病や潰瘍性大腸炎では、ステロイド薬の長期大量投与を回避するためにも、しばしば6−MPやアザチオプリンが併用されている。 しかし、6−MPやアザチオプリンは、使用に際し、骨髄抑制(汎血球減少、血小板減少等)、ショック様症状(悪寒、戦慄、血圧降下等)、感染症、肝機能障害、黄疸、間質性肺炎、重度の下痢など、重大な副作用の発現に注意しなければならない。これらのうち、骨髄抑制については、その副作用発現確認のため、投与開始後3ヶ月、1〜2週間に1回の白血球数のモニタリングが必要であり、その後も2〜3ヶ月に1度必要である(非特許文献1)。このことは、外来患者を診察する医師にとって、患者の安全性確保とコントロールに大変な労力を必要としている。 炎症性腸疾患の緩解を維持するための薬剤は、重大な副作用に対する安全性確保が容易であることはもちろん、長期間投与されるので、緩解維持効果があり、副作用がより少なく、長期間にわたって安全に投与が可能な薬剤が望まれている。 上記治療方法の他に、ミゾリビンが炎症性腸疾患の維持療法に有効であるという報告もある(非特許文献7)。ここで、ミゾリビンは、化学名を4−カルバモイル−1 −β−D −リボフラノシル−イミダゾリウム−5 −オレイトといい、オイペニシリウム(Eupenicillium )属に属するオイペニシリウム・ブレフェルディアナム(Eupnicilliumbrefeldianum )M −2166 株(FERM P −1104 )の培養液より発見された核酸関連物質で、水に易溶で、200 ℃付近で褐色発泡分解する弱酸性物質で、その製造法としては種々の方法が知られている(非特許文献2〜3、特許文献1〜4)。また、ミゾリビンは免疫抑制作用を有し、腎移植における拒絶反応の抑制、原発性糸球体疾患を原因とするネフローゼ症候群、ループス腎炎、慢性関節リウマチに有効である。 ミゾリビン製剤であるブレディニン(登録商標)(旭化成ファーマ(株))の承認時迄の調査および市販後調査によれば、ミゾリビンの副作用発現頻度は14.65%(719例/4,909例)と少なく、その主なものは、腹痛、食欲不振等の消化器系障害4.95%(243例) 、白血球減少等の血液系障害2.46% (121例) 、発疹等の過敏症2.42%(119例)で、このうち貧血は0.63%(31例)である(非特許文献6)。これらに加え、副作用の臨床現場での実態として、ミゾリビンは、6−MPやアザチオプリンに比べ骨髄抑制に関して強く発現する傾向がある。 ミゾリビンの一日の最大投与量を200mg/日にし、血中濃度を1.5μg/mL以上に維持できた小児潰瘍性大腸炎患者及び小児クローン病患者の症例では、ステロイド薬の投与量を減量しても再燃することなく、ステロイド薬の内服を中止できた。しかし、小児潰瘍性大腸炎患者1例においては、ミゾリビン開始後、発熱を訴えたため、ミゾリビン投与を中止した(非特許文献7)。前述の6−MPやアザチオプリンと比較すると、ミゾリビンは副作用の少ない薬剤であるといえるが、より一層安全な投与方法の確立が望まれていた。日本国特開昭48 −56894号公報日本国特開昭51 −1693号公報日本国特開昭50 −121275号公報日本国特開昭50 −121276号公報Gastroenterology 130;935−939 (2006)J .Antibiotics ,27(10 ),775 (1974)Chem .Pharm.Bull .,23 ,245(1975)棟方昭博.平成17年度潰瘍性大腸炎治療指針改訂案 (厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」 平成17年度研究報告書) p13−15,2006飯田三雄.クローン病治療指針改定案(2006)(厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服対策研究事業「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」平成17年度研究報告書) p26−28,2006ブレディニン錠:製品情報概要,旭化成株式会社(2001年12月作成)大谷清孝他、日本小児栄養消化器肝臓学会雑誌(p51,第20巻増刊号,2006) 本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、潰瘍性大腸炎に対する治療効果があり、しかも潰瘍性大腸炎の緩解維持において副作用を懸念する必要のない、長期投与が可能なミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬を提供することを目的とする。 本発明者等は、上記課題を解決するために、より安全なミゾリビンの投与プロトコール等について鋭意研究を重ねた。その結果、白血球除去療法が行われている期間中の潰瘍性大腸炎患者にミゾリビンを投与すれば、ミゾリビンは潰瘍性大腸炎の治療及び緩解維持に対して十分な効果を示し、且つミゾリビンの投与量を低く抑えることが出来るので、従来よりも副作用が極めて低いことを見出して、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は以下に関する。(1)ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬であって、該治療薬は白血球除去療法を施行しており、少なくとも白血球除去療法の開始以降はミゾリビン以外の免疫抑制剤を投薬していない潰瘍性大腸炎の患者に対して用いられ、前記治療薬の投与開始時期が白血球除去療法の施行中であって臨床症状が改善した時点以降であり、ミゾリビンの最高血中濃度が0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満となるように少なくとも1回/日で投与されることを特徴とするミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。(2)ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬が、経口投与用の潰瘍性大腸炎治療薬であって、ミゾリビンの最高血中濃度が、前記治療薬の経口投与後2〜4時間のミゾリビン血中濃度である、(1)に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。(3)前記臨床症状が改善した時点が、LichtigerのClinical Activity Indexが改善した時点である、(1)または(2)に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。(4)前記白血球除去療法が、患者から血液を採取して、該血液中の白血球を白血球除去手段により除去した後、該患者に返血する工程を含む、(1)から(3)のいずれかに記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。(5)前記白血球除去手段が、遠心分離機または白血球に対して親和性を有する担体の何れかである、(4)に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。(6)前記白血球に対して親和性を有する担体が、酢酸セルロースを含むセルロース誘導体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルホンまたはポリアクリロニトリルからなる群から選択される、(5)に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。(7)ミゾリビン含有免疫抑制剤を用いた潰瘍性大腸炎の治療方法であって、白血球除去療法が施行されており、少なくとも白血球除去療法の施行開始以降はミゾリビン以外の免疫抑制剤が投薬されていない潰瘍性大腸炎の患者に対し、ミゾリビン含有免疫抑制剤を、前記白血球除去療法の施行中であって臨床症状が改善した時点以降に投与を開始し、ミゾリビンの最高血中濃度が0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満となるように少なくとも1回/日投与することを特徴とする潰瘍性大腸炎の治療方法。(8)ミゾリビン含有免疫抑制剤を、経口投与する潰瘍性大腸炎の治療方法であって、ミゾリビンの最高血中濃度が、経口投与後2〜4時間のミゾリビン血中濃度である、(7)に記載の潰瘍性大腸炎の治療方法。(9)前記臨床症状が改善した時点が、LichtigerのClinical Activity Indexが改善した時点である、(7)または(8)に記載の潰瘍性大腸炎の治療方法。(10)前記白血球除去療法が、患者から血液を採取して、該血液中の白血球を白血球除去手段により除去した後、該患者に返血する工程を含む、(7)から(9)のいずれかに記載の潰瘍性大腸炎の治療方法。(11)前記白血球除去手段が、遠心分離機または白血球に対して親和性を有する担体の何れかである、(10)に記載の潰瘍性大腸炎の治療方法。(12)前記白血球に対して親和性を有する担体が、酢酸セルロースを含むセルロース誘導体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルホンまたはポリアクリロニトリルからなる群から選択される、(11)に記載の潰瘍性大腸炎の治療方法。 本発明に係るミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬は、白血球除去療法を施行している潰瘍性大腸炎患者に対して用いると、治療効果及び緩解維持効果がある。しかも白血球除去療法と併用しないミゾリビン単独使用の場合と比較すると、ミゾリビンの投与量を低く抑えられるので、本発明に係るミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬を長期間投与しても副作用の心配がなく、安全である。 以下、本発明に係るミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬の実施態様を説明するが、本発明はこれらの態様のみに限定されるものではない。 炎症性腸疾患とは、主として消化管に原因不明の炎症をおこす慢性疾患の総称で、主に潰瘍性大腸炎とクローン病の二疾患からなる。潰瘍性大腸炎は、直腸出血、粘液性陰窩膿瘍、炎症性偽ポリープ、腹痛、下痢を伴った結腸と直腸の潰瘍を特徴とする疾患で、しばしば貧血、低蛋白血漿、電解質異常を起こす。クローン病は、主として口腔から肛門までの消化管全域に、非連続性の炎症および潰瘍を起こす疾患で、その病変は消化管の粘膜から漿膜までの全層を侵し、進行すると腸管が狭くなる狭窄によって腸閉塞をきたすことや、腸管に穴のあく穿孔や瘻孔、それらに膿が溜まった膿瘍ができることがある。何れの疾患も症状が治まる緩解期と、下痢や下血が頻繁に起こる活動期を繰り返す。緩解期から活動期への移行を再燃という。 本発明でいうミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬とは、有効成分の1つとして少なくともミゾリビンを含む製剤を意味し、白血球除去療法と併用することにより、炎症性腸疾患の治療及び緩解維持に好適に使用することができる。これまで、ミゾリビンを白血球除去療法と組み合わせると、ミゾリビンが白血球除去療法に使用する基材に吸着されて、その血中濃度が低下する恐れがあると考えられていたが、本発明の潰瘍性大腸炎治療薬によればミゾリビンの使用濃度を従来より低く抑えることができたうえに、潰瘍性大腸炎の治療及び緩解維持に有効に用いることできた。 ここで、潰瘍性大腸炎の治療とは潰瘍性大腸炎の症状を活動期から緩解期に移行させることを意味し、潰瘍性大腸炎の緩解維持とは活動期を繰り返すこと無く緩解期を持続させることを意味する。 ミゾリビンは、適宜、カプセル剤、顆粒剤等の経口投与用製剤、坐剤、経皮吸収製剤や注射剤として常法の製剤化技術にて製剤化することができる。本発明のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬としては、市販されているミゾリビン経口投与用製剤ブレディニン(登録商標)(旭化成ファーマ(株))が好適に使用できる。 本発明におけるミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬は、ミゾリビンの最高血中濃度が0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満となるように投与されることが必要である。潰瘍性大腸炎の緩解維持のためにミゾリビンをいつまで服用するべきかについての明確な判断基準が無く、ミゾリビンの投与が長期間に及ぶ可能性があることから、ミゾリビンの最高血中濃度は1.5μg/ml未満とした。ミゾリビンの最高血中濃度が0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満であれば、潰瘍性大腸炎の緩解維持効果がいずれの患者でも十分発揮され、且つ副作用発現の可能性が最小限となる。より好ましくは、ミゾリビンの最高血中濃度は0.8μg/ml以上1.3μg/ml以下である。ミゾリビンの最高血中濃度が0.6μg/ml未満では、潰瘍性大腸炎の治療効果または/および緩解維持効果が十分ではなく、一旦緩解期に入っても症状が再燃する怖れがある。また、ミゾリビンの最高血中濃度が1.5μg/ml以上では、潰瘍性大腸炎の治療効果または/および緩解維持効果のメリットよりも副作用が発現する可能性のデミリットが高くなる。但し、ミゾリビンの投与毎に毎回最高血中濃度を測定する必要はなく、治療開始前または治療開始時に、ミゾリビンの最高血中濃度が上記範囲になるように経口投与量を設定すれば良い。 経口投与量の設定を適切に行うためには、投与開始後の早い時期にミゾリビンの血中濃度を測定することが望ましく、その結果血中濃度が低い場合には投与量を増やし、高い場合には減らすことでミゾリビンの最高血中濃度が上記範囲内に入るようにする。具体的にはミゾリビンを含有するある単位量の製剤を1錠ごとに増やして血中濃度を確認することで設定することができる。 ミゾリビンは、その最高血中濃度が0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満となるならばどのような投与形態であっても良い。経口投与の場合、投与後2〜4時間で最高血中濃度に達するので、この時期に採血して血中濃度を測定する。ミゾリビンの血中濃度測定方法はどのような方法であっても良いが、例えばJ Chromatogr. 1988 Nov 18;432:340−345記載の方法が好適に使用できる。 本発明に係るミゾリビンの経口投与量は、患者毎に異なるが、成人の場合、1日1回3mg/kg以上6mg/kg未満もしくは1日1回150mg以上300mg未満になる。 本発明におけるミゾリビンの投与の開始は、白血球除去療法施行の途中であって臨床症状が改善した時点以降でなければならない。ミゾリビンの投与の開始時期は、臨床症状が改善した時点以降であって白血球除去療法施行の途中であればいつでも良いが、早い方が好ましい。臨床症状が改善した時点とは、潰瘍性大腸炎の病態を表す血便回数、下痢の回数、血便回数、腹痛、全身状態、大腸内視鏡検査所見等が改善した時点である。病態の改善を表す総合的な指標としてはどのような指標を用いても良いが、好ましくはRachmilewitzのClinical Activity Index (以下CAIと略す)、DAI(Disease Activity Index)、LichtigerのCAI(Lichtiger S et al. Cyclosporine in severe ulcerative colitis refractory to steroid therapy. N EnglJ Med. 1994;330(26):1841-1845)であり、最も好ましくはLichtigerのCAIである。更に具体的に例示すれば、LichtigerのCAIにおいて3ポイント以上改善した時点を臨床症状が改善した時点とすることができる。その後は、病態が緩解期に移行後も緩解維持を目的に投与を継続することが望ましい。なお、緩解維持期のミゾリビン投与量は開始期の投与量と同様で良い。 白血球除去療法は、日本国内では潰瘍性大腸炎に対して保険適用されており、通常、週1回の治療を5週連続で実施するプロトコールを1クールとして、1クールないし2クール行われている。本発明で、白血球除去療法の施行中とはこの1クールないし2クールの白血球除去療法を行っている期間のことである。 白血球除去療法には、遠心分離機を用いて赤血球と白血球の比重の違いを利用して分離する方法、並びに白血球に対して親和性を有する担体を充填した血液循環用カラムを用いて白血球を除去する方法の2種類の方法がある。本発明においては上記した方法の何れも使用することができる。白血球に対して親和性を有する担体を充填した血液循環用カラムを用いて白血球を除去することもできるが、ここで使用する白血球に親和性を有する担体としては、これまで白血球除去療法に使用されてきた種々の担体をあげることができ、例えば、セルロース、酢酸セルロースを含むセルロース誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアクリロニトリル等の高分子材料等を例示することができる。そのなかでも、ポリエステル不織布や、セルロース系ビーズなどが好適に使用される。これらの担体の形状としては、繊維(不織布状、織布状) 、多孔質体、粒子(粒状やビーズ状) 、フイルム、平膜、中空糸などの形態であってもよい。このようなカラムとしては、具体的には、すでに種々の白血球除去療法に臨床的に使用されているカラムを挙げることができ、例えば、旭化成メディカル(株)からセルソーバE(登録商標) の販売名で市販されている白血球除去カラム、その他、(株)JIMROからアダカラム(登録商標) の販売名で市販されている顆粒球除去カラム等を挙げることができる。 以下の実施例により本発明を詳細に説明する。これらは本発明の好ましい実施態様であり、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。[実施例1](1)対象患者 本発明者の所属する病院(大分赤十字病院、以下同)の潰瘍性大腸炎(UC,ulcerative colitis)患者4名を対象に検討を行った。厚生労働省の重症度分類中等症以上の潰瘍性大腸炎で、6−MPやアザチオプリン内服により過去に副作用が出現した薬歴のある患者を症例番号1〜4とした。以下、比較例1、比較例2で対象とする潰瘍性大腸炎患者も同様の薬歴を有する。(2)ミゾリビン最高血中濃度の測定方法 ミゾリビン最高血中濃度の測定は、通常の方法(J Chromatogr. 1988 Nov 18;432:340−5)に準じて行った。患者にミゾリビンを経口投与した後、最高血中濃度が得られる2〜4時間経過後に、患者血液を2ml採血し、30分〜60分冷所保存後、血球と血清に遠心機を用いて分離し、その血清1mlを−20℃に冷凍し、最高血中濃度測定用のサンプルとした。(3)副作用発現の判断方法 ミゾリビン投与期間中の副作用発現は、一般臨床検査値、臨床症状に基づいて判断した。 すなわち、骨髄抑制の副作用発現は、白血球数(基準値 4000〜8000/μl)、ヘモグロビン濃度(基準値 男性13.5〜17.6g/dl、女性11.3〜15.2g/dl)、血小板数(基準値 15〜35x104/μl)を基準値と比較して判断した。なお、白血球数が3000/μl以下になると、重篤な感染症、出血傾向等が発現する恐れがあり、禁忌である。(4)治療内容及び結果 上記患者に対して白血球除去療法(セルソーバE(登録商標)、担体としてポリエステルを使用)を週1回で5週連続実施して、これを1クールとして、2クール行った。いずれの患者も白血球除去療法の開始以降は、ミゾリビン以外の免疫抑制剤を投薬しなかった。白血球除去療法の施行中で血便等の臨床症状の改善傾向が見られた時点、具体的にはLichtigerのCAIが3ポイント以上改善した時点で、1錠中ミゾリビンを50mg含有する錠剤(ブレディニン(登録商標))の投与を1日1回3錠、すなわち150mg/日で開始し、以後継続した。症例番号1〜4の症例では、ミゾリビンの最高血中濃度は0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満であった。 この治療により、4名すべての患者を緩解期に導入することができた。緩解維持期間中は開始用量を保ってミゾリビンを服用した。潰瘍性大腸炎の病型と重症度は、厚生労働省の潰瘍性大腸炎分類による。 以上の結果を表1に示した。症例番号1〜4の患者の緩解維持期間は33ヶ月以上に達した。さらに、4症例何れの患者においてもミゾリビンの投与期間中に骨髄抑制等の重大な副作用は観察されず、その他の発熱等の副作用に関しても、観察されなかった。[比較例1](1)対象患者 本発明者の所属する病院の潰瘍性大腸炎患者1名を対象に症例番号5として検討を行った。(2)治療内容及び結果 ミゾリビンの最高血中濃度が0.11μg/mlとなるようにミゾリビンの投与量を減量した以外は、実施例1と同様に白血球除去療法とミゾリビン投与を行った。結果を表1に示す。患者の症状は一旦緩解したが2ヵ月後に再燃した。[比較例2](1)対象患者 本発明者の所属する病院の潰瘍性大腸炎患者5名を対象に症例番号6〜10として検討を行った。(2)治療内容及び結果 ミゾリビンの代わりに6−MPを30mg/日以上投与した以外は、実施例1と同様に白血球除去療法を行った。血球数のモニタリングは、投与開始後3ヶ月間は1〜2週間に1回、その後は1ヶ月に1回行った。 以上の結果を表2に示した。表2の白血球数、ヘモグロビン濃度、血小板数は、30mg/日以上の6−MPを表2に示した期間投与した後の測定値である。全ての患者で骨髄抑制の副作用が出現し、6−MPの投与量を30mg/日以下に減量もしくは6−MPの投与を中止せざる得ない結果となった。なお、本邦において緩解維持効果が認められている6−MPの投与量は30mg/日であり、これを下回ると再燃する可能性が高いとされている。また、本発明者の所属する病院における潰瘍性大腸炎患者の6−MPやアザチオプリンによる骨髄抑制が原因の不応例は、全体の約3割であった。 本発明に係るミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬は、潰瘍性大腸炎の患者の治療薬、緩解維持薬として好適に使用することができる。ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬であって、該治療薬は、白血球除去療法が施行されており、少なくとも白血球除去療法の開始以降はミゾリビン以外の免疫抑制剤が投薬されていない潰瘍性大腸炎の患者に対して用いられ、前記治療薬の投与開始時期が白血球除去療法の施行中であって臨床症状が改善した時点以降であり、ミゾリビンの最高血中濃度が0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満となるように少なくとも1回/日で投与されることを特徴とするミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬が、経口投与用の潰瘍性大腸炎治療薬であって、ミゾリビンの最高血中濃度が、前記治療薬の経口投与後2〜4時間のミゾリビン血中濃度である、請求項1に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。前記臨床症状が改善した時点が、LichtigerのClinical Activity Indexが改善した時点である、請求項1または2に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。前記白血球除去療法が、患者から血液を採取して、該血液中の白血球を白血球除去手段により除去した後、該患者に返血する工程を含む、請求項1から3のいずれかに記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。前記白血球除去手段が、遠心分離機または白血球に対して親和性を有する担体の何れかである、請求項4に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。前記白血球に対して親和性を有する担体が、酢酸セルロースを含むセルロース誘導体、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスルホンまたはポリアクリロニトリルからなる群から選択される、請求項5に記載のミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬。 本発明は、潰瘍性大腸炎に対する治療効果があり、しかも潰瘍性大腸炎の緩解維持において副作用を懸念する必要のない、長期投与が可能なミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬を提供することを課題とする。 本発明は、ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬であって、該治療薬は白血球除去療法を施行しており、少なくとも白血球除去療法の開始以降はミゾリビン以外の免疫抑制剤を投薬していない潰瘍性大腸炎の患者に対して用いられ、前記治療薬の投与開始時期が白血球除去療法の施行中であって臨床症状が改善した時点以降であり、ミゾリビンの最高血中濃度が0.6μg/ml以上1.5μg/ml未満となるように少なくとも1回/日で投与されることを特徴とする、ミゾリビンを含有する潰瘍性大腸炎治療薬に関する。


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