生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター
出願番号:2008058065
年次:2009
IPC分類:A61K 31/122,A61P 3/04,A61P 3/10,A61P 9/10


特許情報キャッシュ

井上 誠 大野 高政 田邊 宏樹 高橋 二郎 大木 史郎 山下 栄次 JP 2009215184 公開特許公報(A) 20090924 2008058065 20080307 細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター 井上 誠 508070932 富士化学工業株式会社 390011877 廣澤 勲 100095430 井上 誠 大野 高政 田邊 宏樹 高橋 二郎 大木 史郎 山下 栄次 A61K 31/122 20060101AFI20090828BHJP A61P 3/04 20060101ALI20090828BHJP A61P 3/10 20060101ALI20090828BHJP A61P 9/10 20060101ALI20090828BHJP JPA61K31/122A61P3/04A61P3/10A61P9/10 10 OL 19 特許法第30条第1項適用申請有り 平成19年9月7日 アスタキサンチン研究会、名古屋大学大学院生命農学研究科食品機能科学研究室主催の「第3回アスタキサンチン研究会」に発表 4C206 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB25 4C206NA14 4C206ZA45 4C206ZA70 4C206ZC35 本発明は、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する有効成分が、細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)、特に脂肪細胞においてPPARγアンタゴニストとして作用する事によりアスタキサンチン及び/又はそのエステル自身は脂肪蓄積を阻害しメタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、動脈硬化などの予防に繋がる事、並びにPPARγアゴニストと併用することでPPARγアゴニストの副作用である肥満を抑制する飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品に関する。 現代社会の、交通手段の進歩による運動不足、食事の高脂肪食化により肥満、糖尿病、高脂血症が引き起こり、これは1998年にWHOが診断基準とともにメタボリックシンドロームという名称で統一化され、一つの病態として概念化された。 糖尿病の治療において、インスリン分泌を促進させるスルホニル尿素剤、糖吸収を阻害するα−グリコシダーゼ阻害剤が、血糖値をコントロールする目的としたものであるのに対し、ピオグリダゾン及びロシグリタゾンなどチアゾリジン誘導体は、核内レセプターperoxisome proliferator-activated receptor γ(PPARγ)のアゴニストして作用機序が解明されている。 これらチアゾリジン誘導体は、TNF-αの発現を抑制しインスリン抵抗性を改善、アディポネクチンを増加させ、インスリン感受性を高める一方で、PPARγアゴニストとして脂肪細胞の分化を促進し、副作用として体重増加、呼吸困難、浮腫、心不全など複数の副作用が報告されている。従って、PPARγアンタゴニストとして作用させる事が出来れば、脂肪細胞の分化を抑制し、糖尿病、肥満にも有用である。 ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(peroxisomeproliferator-activated receptor:PPAR)は、脂質代謝を維持する遺伝子群の発現制御を担う転写制御因子として同定された核内受容体ファミリーに属するリガンド依存性転写制御因子である。哺乳動物ではPPARα、PPARδ(PPARβ、NUC−1、FAAR)、PPARγの3種のサブタイプの存在が知られており、PPARαは主に肝臓で、PPARδは普遍的に発現している。PPARγにはPPARγ1とPPARγ2の2種のアイソフォームが存在しており、PPARγ1は脂肪組織の他に免疫系臓器や副腎、小腸で発現している。PPARγ2は脂肪組織で特異的に発現しており、脂肪細胞の分化・成熟を制御するマスターレギュレーターである。 PPARγリガンドとしては、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2やΔ12−プロスタグランジンJ2などのアラキドン酸代謝物、ω−3多価不飽和脂肪酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸、9−ヒドロキシオクタデカジエン酸や13−ヒドロキシオクタデカジエン酸などのエイコサノイド類などが知られている。また、共役トリエン構造又は共役テトラエン構造を有する炭素数10〜26の共役不飽和脂肪酸などがPPARγリガンドであることが開示されている(特許文献1)。 これまで天然物由来のPPARγリガンドとしてクルクミン又はその誘導体(特許文献2)、クローブ抽出物や生薬として知られる厚朴抽出物(特許文献3)、アマチャヅルの疎水性抽出物(特許文献4)が知られている。 一方、天然に存在するキサントフィルの中でもアスタキサンチンが特異的にPPARγリガンド活性を有し、HEK293細胞ではPPRE上で転写活性を示さないアンタゴニスト様に働くこと、マクロファージではコレステロールの排出を促進するmRNAであるABCトランスポーターを活性化するアゴニスト様に働くことが発表されている(非特許文献1)。 キサントフィルとは、カロテイドの中で酸素原子を含み、例えばアスタキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、クリプトキサンチン、ツナキサンチン、サルモキサンチン、パラシロキサンチン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、ククルビタキサンチン、ディアトキサンチン、アロキサンチン、ペクテノール、ペクテノロン、マクトラキサンチン、カプサンチン、カプサンチノール、フコキサンチン、フコキサンチノール、ペリジニン、ハロシンチアキサンチン、アマロウシアキサンチン、カンタキサンチン、エキネノン、ロドキサンチン、ビキシン、ノルビキシンなどであり、好ましくはアスタキサンチン、クリプトキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、カンタキサンチン、カプサンチン、フコキサンチンが挙げられる。 アスタキサンチンは、エビ、カニ等の甲殻類、サケ、タイ等の魚類、緑藻ヘマトコッカス等の藻類、赤色酵母ファフィア等の酵母類等、天然、特に海洋に広く分布する食経験豊かな赤色色素である。近年、アスタキサンチンが活性酸素種に対して強力な抗酸化作用を有することが見いだされ(ビタミンEの100〜1,000倍、β−カロテンの約40倍)、健康食品の素材として注目されている。アスタキサンチンの有するその他の機能特性として、抗炎症作用、抗動脈硬化作用、糖尿病に対する作用、光障害に対する網膜保護作用、抗ストレス作用、精子の質向上作用等数多くの報告がなされている。特に、筋肉に関しては哺乳類の筋肉機能の持続時間を予防的及び/もしくは治療的に改善、ウマの労作性横紋筋融解症治療するための方法が知られている。 PPARγのリガンドである、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2やΔ12−プロスタグランジンJ2などのアラキドン酸代謝物、ω−3多価不飽和脂肪酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸、9−ヒドロキシオクタデカジエン酸や13−ヒドロキシオクタデカジエン酸などのエイコサノイド類、又はトログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等のチアゾリジン誘導体などはPPARγアゴニストとして作動する一方で、脂肪細胞の蓄積を抑制し、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、動脈硬化を改善するPPARγアンタゴニスト作用を持つ食品、いわゆる健康食品、医薬部外品及び医薬品に関する報告は知られていない。 また、PPARγアゴニストの中でも、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等のチアゾリジン誘導体はPPARγアゴニストとして糖尿病治療薬として使用されて、その強力なPPARγアゴニスト作用により肥満が重大な副作用となっており、この副作用を抑制する食品、いわゆる健康食品、医薬部外品及び医薬品に関する報告は知られていない。特開2000−355538号公報特開2003−128539号公報特開2005−97216号公報特開2006−241097号公報「第16回天然薬物の開発と応用シンポジウム」講演要旨集,頁162,2006年11月1日 本発明は、天然由来の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)として、メタボリックシンドロームなどの予防、及びPPARγアゴニストの副作用である肥満を抑制するために有用な組成物を提供することを目的とする。 本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意研究を行った結果、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する有効成分が、細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)であり、特に脂肪細胞においてPPARγアンタゴニストとして働き脂肪蓄積を抑制すること、更に糖尿病薬として用いられているPPARγアゴニストとの併用で副作用である肥満を抑制したことを見出し、これらの知見に基づいて、本発明を完成するに至った。 すなわち、本発明は、次の(1)〜(10)よりなる。(1) アスタキサンチン及び/又はそのエステルを有効成分とする細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(2) PPARγアンタゴニストとして働き脂肪蓄積を抑制する(1)に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(3) PPARγを介し、SRC−1と複合体を形成する項(1)〜(2)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(4) PPARγアゴニストの副作用である肥満を抑制する(1)〜(3)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(5) PPARγアゴニストが、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2、Δ12−プロスタグランジンJ2などのアラキドン酸代謝物、ω−3多価不飽和脂肪酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸、9−ヒドロキシオクタデカジエン酸、13−ヒドロキシオクタデカジエン酸などのエイコサノイド類、又はトログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾンのチアゾリジン誘導体の糖尿病治療薬の副作用である肥満を抑制する(1)〜(4)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(6) PPARγを介し、mRNAの発現を調節する(1)〜(5)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(7) PPARγを介し、mRNAであるCD36を抑制する(1)〜(6)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(8) PPARγを介し、mRNAであるaP2、LPL、及びアディポネクチンの発現を上昇させる(1)〜(7)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(9) PPARγを介し、白色脂肪細胞として卵巣周囲脂肪組織重量を減少させる(1)〜(8)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。(10) (1)〜(9)のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)を含有する飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品。 アスタキサンチン及び/又はそのエステルを有効成分とする組成物を医薬品や飲食品の形で投与・摂取することによって、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、動脈硬化を予防すること、並びにPPARγアゴニスト糖尿病薬の副作用である肥満を抑制することができる。 アスタキサンチンとは、天然物由来のもの又は合成により得られるものを意味する。天然物由来のものとしては、例えば、緑藻ヘマトコッカスなどの微細藻類、赤色酵母ファフィアなどの酵母類、エビ、オキアミ、カニなどの甲殻類の甲殻、イカ、タコなどの頭足類の内臓、種々の魚介類の皮やヒレ、ナツザキフクジュソウなどのAdonis属植物の花弁、Paracoccussp. N81106、Brevundimonas sp. SD212、Erythrobacter sp. PC6などのα−プロテオバクテリア類、Gordonia sp. KANMONKAZ-1129などの放線菌、Schizochytriuym sp. KH105などのラビリンチュラ類(特にヤブレツボカビ科)やアスタキサンチン産生遺伝子組み換え生物体などから得られるものをあげることができる。天然からの抽出物及び化学合成品は市販されており、入手は容易である。 アスタキサンチンは、3、3'−ジヒドロキシ−β、β−カロテン−4、4'−ジオンであり、立体異性体を有する。具体的には、(3R、3'R)−アスタキサンチン、(3R、3'S)−アスタキサンチン及び(3S、3'S)−アスタキサンチンの3種の立体異性体が知られているが、本発明にはそのいずれも用いることができる。本発明はこれらアスタキサンチン異性体のモノエステル及びジエステルを含む。 本発明において、アスタキサンチンの脂肪酸エステルは、天然物由来のもの又は合成により得られるもののいずれも用いることができるが、体内での吸収からアスタキサンチンエステルが各種の油脂に溶解した天然物由来が好ましい。天然物由来には、例えば、オキアミ抽出物、ファフィア酵母抽出物、ヘマトコッカス藻抽出物があるが、特に好ましいのはアスタキサンチンの安定性の良さとアスタキサンチンのエステルの種類によりヘマトコッカス藻抽出物である。 アスタキサンチンの脂肪酸エステルは突然変異原性が観察されず、安全性が高い化合物であることが知られて、食品添加物として広く用いられている。 ヘマトコッカス藻は、ボルボックス目クラミドモナス科に属する緑藻類であり、通常は緑藻であるためクロロフィル含量が高く緑色であり、2本の鞭毛によって水中を遊泳しているが、栄養源欠乏や温度変化等の飢餓条件では休眠胞子を形成し、アスタキサンチン含量が高くなり赤い球形となる。本発明においては、いずれの状態でのヘマトコッカス藻を用いることができるが、アスタキサンチンを多く含有した休眠胞子となったヘマトコッカス藻を用いるのが好ましい。また、ヘマトコッカス属に属する緑藻類では、例えば、ヘマトコッカス・プルビイアリス(Haematococcus pluvialis)が好ましい。 ヘマトコッカス緑藻類の培養方法としては、異種微生物の混入・繁殖がなく、その他の夾雑物の混入が少ない密閉型の培養方法が好ましく、例えば、一部解放型のドーム形状、円錐形状又は円筒形状の培養装置と装置内で移動自在のガス吐出装置を有する培養基を用いて培養する方法や、密閉型の培養装置に光源を入れ内部から光を照射して培養する方法、平板状の培養槽やチューブ型の培養層を用いる方法が適している。 本発明のヘマトコッカス藻から抽出物を得る方法としては、ヘマトコッカス藻を乾燥粉砕した後アセトンやアルコールなどの有機溶媒で抽出する方法、ヘマトコッカス藻を有機溶媒に懸濁させて粉砕し同時に抽出する方法、二酸化炭素などを用いる超臨界抽出する方法などで行うことができる。 前記培養物又は前記甲殻類から有機溶媒を用いて抽出及び精製する方法については種々の方法が知られている。例えば、アスタキサンチン及びそのエステルは油溶性物質であることから、アスタキサンチンを含有する天然物からアセトン、アルコール、酢酸エチル、ベンゼン、クロロホルムなどの油溶性有機溶媒でアスタキサンチン含有成分を抽出することができる。また、二酸化炭素や水などを用い超臨界抽出を行うこともできる。抽出後、常法に従って溶媒を除去してモノエステル型のアスタキサンチンとジエステル型のアスタキサンチンの混合濃縮物を得ることができる。得られた濃縮物は、所望により分離カラムやリパーゼ分解によりさらに精製することができる。 前記のドーム型培養装置や密閉型の培養装置で培養したヘマトコッカス藻を乾燥させ、粉砕後にアセトンで抽出又は、アセトン中で粉砕と抽出を同時に行ったのち、アセトンを除去してアスタキサンチン抽出する製法が、又は超臨界抽出を行い、精製したものは、空気に触れることがないことからアスタキサンチンの酸化がほとんどなく、夾雑物が少なく、すなわち本発明の効果を阻害する物質が少なく、アスタキサンチンと中性脂肪を純度良く多く含むことができ好適である。 次に、本発明における細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)について説明する。 PPARとはペルオキシソーム増殖剤応答性受容体(peroxisome proliferator-activated receptor)であり、脂質代謝を維持する遺伝子群の発現制御を担う転写制御因子として同定された核内受容体ファミリーに属するリガンド依存性転写制御因子である。哺乳動物ではPPARα、PPARδ(PPARβ、NUC−1、FAAR)、PPARγの3種のサブタイプの存在が知られており、PPARαは主に肝臓で、PPARδは普遍的に発現している。PPARγにはPPARγ1とPPARγ2の2種のアイソフォームが存在しており、PPARγ1は脂肪組織の他に免疫系臓器や副腎、小腸で発現している。PPARγ2は脂肪組織で特異的に発現しており、脂肪細胞の分化・成熟を制御するマスターレギュレーターである。 PPARの3種のサブタイプとしてPPARαは脂質代謝調節において脂肪酸酸化系関連遺伝子の転写の主要因子と位置づけられ、PPARδは脂肪酸酸化促進と、酸化によるエネルギーを熱に変換する標的遺伝子として近年注目され、PPARγは脂肪細胞の分化に必須であり、余剰エネルギーをTGとして蓄える過程にも必須の役割を果たしている。 本発明において、PPARとしてはPPARα、PPARδ(PPARβ、NUC−1、FAAR)、PPARγの中でも、好ましくはPPARδ(PPARβ、NUC−1、FAAR)及び/又はPPARγである。 セレクティブPPARモジュレーターとは、PPARの多彩な転写共役因子をリクルートすることで、病態の改善にとって望ましい作用のみを発現させることであり、更に細胞選択的セレクティブPPARモジュレーターとは、各種細胞においてアドニスト様に働いたり、アンタゴニスト様に働くことを意味する。 本発明者らは、CoA−BAP法において、アスタキサンチンがキサントフィルの中でもコアクチベーターであるTIF−2を用いた実験でPPARγに対しリガンド活性を持つこと(複合体形成)を見出している。 ここでコアクチベーターとは、PPARの転写活性を亢進するコファクターとして多数報告され、大別して、A)クロマチンの再構成を促進する分子複合体、B)ヒストンに共有結合型の修飾を付加する分子、C)転写調節因子を集積させる足場として機能する分子、D)基本転写装置との橋渡しを仲介する分子に分けられるが、本発明でのコアクチベーターとしては上記4種類に特に限定を受けない。 本発明者らは、アスタキサンチンがPPARγと、DNA鎖をほどき結果的に脂肪細胞肥大化に繋がるコアクチベーターであるCBPと複合体を形成しないことを報告し、今回の検討で脂肪細胞肥大化を抑制するコアクチベーターであるSRC−1とリガンド活性を持つことを見出した。 この結果は、アスタキサンチンが病態の改善にとって望ましい作用のみを発現させるセレクティブPPARγモジュレーターであることを支持している。 一方、本発明者らは、HEK293細胞上でアスタキサンチンをリガンドとしたPPARγ複合体がPPRE上で転写活性を示さないアンタゴニストとして働くこと、及びマクロファージ中ではmRNAであるABCトランスポーターを活性化することを見出しており、今回更に脂肪細胞中では脂肪蓄積を抑制するアンタゴニストとして働くことを証明し、すなわちアスタキサンチンがSPPARMの中でも細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーターである事を見出した。 マウス線維芽細胞である3T3−L1細胞を使用した脂肪細胞における実験内容について詳しく説明するが、脂肪細胞であれば特に限定を受けない。 脂肪細胞の脂肪蓄積を検証するために、マウス線維芽細胞である3T3−L1細胞を脂肪細胞へ分化誘導した後、インスリンとPPARγアゴニスト又はアスタキサンチンを培養し、細胞内への脂肪蓄積をoil red O染色で解析した。 ここでPPARγアゴニストとしては、15−Δ12,14−デオキシプロスタグランジンJ2、9−ヒドロキシオクタデカジエン酸、13−トログリタゾンヒドロキシオクタデカジエン酸、又はトログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾン等のチアゾリジン誘導体の糖尿病治療薬いずれでもよく、好ましくはトログリタゾン、ロシグリタゾン及びピオグリタゾン、より好ましくはロシグリタゾンである。 染色結果、アスタキサンチンは、PPARγアゴニストであるロシグリタゾンと比較して、明らかに赤く染まった脂肪滴が小さく、脂肪の蓄積が抑えられたことが示唆された。 また同様の条件で、ロシグリタゾン単独、アスタキサンチン単独、ロシグリタゾン及びアスタキサンチン混合物、及びPPARγアンタゴニストであるGW9662及びアスタキサンチンをそれぞれ培養し、脂肪の蓄積をAdipoRed(商標)で解析したところ、ロシグリタゾン単独では濃度依存的に脂肪を蓄積したのに対し、アスタキサンチン単独、ロシグリタゾン及びアスタキサンチン混合物、及びPPARγアンタゴニストであるGW9662及びアスタキサンチン群は濃度依存的な脂肪の蓄積を抑制した。 この結果、アスタキサンチンは脂肪蓄積を抑制するPPARγアンタゴニストとして働くことが判明し、更にPPARγアゴニストである糖尿病薬ロシグリタゾンの脂肪蓄積を阻害したことから、PPARγアゴニストの脂肪細胞の分化〜肥大化促進、すなわち副作用である肥満を抑制することが明らかとなった。 更に、これらの結果を検証するため、同条件でアスタキサンチンとロシグリタゾン共培養し、PPARγの標的遺伝子であるaP2、LPL、CD36及びアディポネクチンのmRNA発現をRT−real time PCRで解析した結果、CD36は減少し、aP2、LPL及びアディポネクチンは上昇した。 ここで、aP2は前駆脂肪細胞から脂肪細胞になる過程において必要な脂肪酸結合タンパクで、LPLはVLDLをLDLへ、中性脂肪を脂肪酸へ変換するリポプロテインリパーゼ、CD36は脂肪酸を取り込むトランスポーター、アディポネクチンは抗動脈硬化作用を示すアディポカインであることが知られている。 すなわち、このmRNA発現の結果は、前駆脂肪細胞〜小型脂肪細胞〜肥大脂肪細胞に至るPPARγアゴニストであるロシグリタゾンの副作用である肥満において、aP2の上昇により前駆脂肪細胞〜小型脂肪細胞へは促進され、さらに、LPLの上昇により中性脂肪からの脂肪酸放出を促進されるが、CD36減少により脂肪酸の取り込みは阻害され小型脂肪細胞〜肥大脂肪細胞へは抑制されることを意味し、アスタキサンチンがPPARγアゴニスト系糖尿病薬の副作用である肥満を抑制していることを示唆している。 以上のin vitroの結果を更に検証するため、マウスを用いたin vivoでアスタキサンチンの作用を解析した。 アスタキサンチンとしてアスタキサンチン2%パウダー(アスタリールパウダー(商標):富士化学工業)を飼料とし、糖尿病モデルマウス(db/dbマウス)を使用した実験において、白色脂肪細胞として卵巣周囲脂肪組織重量、血糖値、及び中性脂肪を減少させ、アディポネクチンレベルを上昇させた。 卵巣周囲脂肪組織重量が減少したことは、脂肪細胞において脂肪細胞蓄積を抑制したPPARγアンタゴニストであること、並びに脂肪細胞肥大化を抑制したmRNAデータを支持している。 血糖値が減少したことは、アスタキサンチンがアディポネクチンレベルを上昇させることにより肝臓における糖新生を抑制し、骨格筋における糖の取り込み・糖代謝が促進し、空腹時血糖値が低下したと考えられ、すなわち脂肪細胞におけるPPARγアンタゴニストとして働き、アディポネクチンのmRNAレベルが上昇したことを支持している。 中性脂肪が減少したことは、血中アディポネクチンレベルの上昇によって、骨格筋でのエネルギー代謝に血中中性脂肪が利用されることで血中中性脂肪が減少したと考えられた。 以上、in vivoの試験結果からも、アスタキサンチン及び/又はそのエステルが、脂肪細胞においてPPARγアンタゴニストであることが証明され、メタボリックシンドロームを予防すること、並びにPPARγアゴニスト糖尿病薬の副作用である肥満を抑制する細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)であることを見出した。 アスタキサンチンを含有する組成物の形態としては、医薬品、特定保健食品、いわゆる健康食品、一般の食品の形態のいずれもとることができる。 本発明の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)含有組成物に用いられるアスタキサンチンの量は、アスタキサンチン遊離体換算量で、成人では1日あたり、0.5〜100mg、好ましくは1〜30mgの服用量で経口投与又は非経口投与で行う。投与量は、投与される患者の年齢、体重、症状の程度、投与形態によって異なる。本発明の医薬品におけるアスタキサンチン量は0.01〜99重量%、好ましくは0.1〜90重量%の量で含有させることができる。 本発明の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)の効果を補助するため、本発明の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)含有組成物に補助効果を有する物質を添加することができる。例えば、フラボノイド、セサミン、クルクミノイド、フラボノイド、没食子酸、ピロガロール、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、カテキンガレート、ガロカテキンガレート、エピカテキンガレート、エピガロカテキンガレート、エピガロカテキン、グルコガリン、プロアントシアニジン及びそのポリマー、エラグ酸、タンニンなどのポリフェノール、SOD様物質、コエンザイムQ10、α−リポ酸、デオキシリボ核酸及びその塩、アデノシン三リン酸、アデノシン一リン酸などのアデニル酸誘導体及びそれらの塩、リボ核酸及びその塩、グアニン、キサンチン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩などの核酸関連物質、血清除蛋白抽出物、脾臓抽出物、胎盤抽出物、鶏冠抽出物、ローヤルゼリーなどの動物由来の抽出物;酵母抽出物、乳酸菌抽出物、ビフィズス菌抽出物、霊芝抽出物などの微生物由来の抽出物、ヘチマ抽出物、センキュウ抽出物、パパイヤ末、高麗人参抽出物、ブルーベリー抽出物、ビルベリー抽出物、カシツ抽出物、イチョウ葉抽出物、ニンジン抽出物、センブリ抽出物、ローズマリー抽出物、オウバク抽出物、ニンニク抽出物、ヒノキチオール、セファランチンなどの植物由来の抽出物、α−又はγ−リノレイン酸、エイコサペンタエン酸及びそれらの誘導体、コハク酸及びその誘導体並びにそれらの塩、エストラジオール及びその誘導体並びにそれらの塩、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸などのα−ヒドロキシ酸及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、メフェナム酸、フェニルブタゾン、インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン、アラントイン、グアイアズレン及びそれらの誘導体並びにそれらの塩、ε−アミノカプロン酸、ジクロフェナクナトリウム、ヒアルロン酸、コンドロイチン、コラーゲン、アロエ抽出物、サルビア抽出物、アルニカ抽出物、カミツレ抽出物、シラカバ抽出物、オトギリソウ抽出物、ユーカリ抽出物及びムクロジ抽出、チロシナーゼ活性阻害剤が、システイン及びその誘導体並びにその塩、センプクカ抽出物、ケイケットウ抽出物、サンペンズ抽出物、ソウハクヒ抽出物、トウキ抽出物、イブキトラノオ抽出物、クララ抽出物、サンザシ抽出物、シラユリ抽出物、ホップ抽出物、ノイバラ抽出物及びヨクイニン抽出物、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン及びケラタン硫酸並びにこれらの塩類、コラーゲン、エラスチン、ケラチン及びこれらの誘導体並びにその塩類、グルタチオン、ビタミンB、D−アスコルビン酸、海洋深層水、DHA、漢方薬類、海草類、無機物など、並びにそれらの混合物からなる群から1種又は2種以上選択することができる。また、これらを含んだ果実や葉芽、表皮、藻類、菌類などの乾燥粉体を配合することによっても、同様の効果を得ることができる。これらの成分は、医薬品全量に対して一般には0.01〜90重量%、好ましくは0.1〜50重量%配合され、一種以上組み合わせて用いることができる。 本発明の組成物を医薬品の形態で用いる場合、経口又は非経口で投与することがでる。経口用の剤形としては、例えば、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投薬形態、シロップ及び懸濁液のような液体投薬形態で投与される。非経口の剤形としては、点鼻剤、貼付剤、軟膏剤、坐剤の形態で投与される。なお、ここで医薬品には医薬部外品もふくまれる。 本発明の組成物を医薬品の形態で用いる場合、一般製剤の製造に用いられる種々の添加剤を適当量含んでいてもよい。このような添加剤として、例えば賦形剤、結合剤、酸味料、発泡剤、人工甘味料、香料、滑沢剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、界面活性剤などが挙げられる。賦形剤としては、例えばトウモロコシデンプン、馬鈴薯デンプン、コムギコデンプン、コメデンプン、部分アルファー化デンプン、アルファー化デンプン、有孔デンプン等のデンプン類、乳糖、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、マルチトールなどの糖アルコール、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト、無水リン酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、軽質無水ケイ酸などの無機化合物などがあげられる。結合剤としては、例えばヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、アラビアゴム末、ゼラチン、プルランなどが挙げられる。崩壊剤としては、例えばデンプン、寒天、カルメロースカルシウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、結晶セルロース、F−MELT(商標、富士化学工業(株)製)などがあげられる。酸味剤としては、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸などがあげられる。発泡剤としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムなどが挙げられる。甘味料としては、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ソーマチンなどが挙げられる。香料としては、例えばレモン油、オレンジ油、メントールなどが挙げられる。滑沢剤としては、例えばステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール、タルク、ステアリン酸、フマル酸ステアリルナトリウムなどが挙げられる。着色剤としては、例えば食用黄色5号、食用赤色2号、食用青色2号などの食用色素、食用レーキ色素、三二酸化鉄などが挙げられる。安定化剤としては、エデト酸ナトリウム、トコフェロール、シクロデキストリン等が挙げられる。pH調整剤としては、クエン酸塩、リン酸塩、炭酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、酢酸塩、アミノ酸塩などが挙げられる。界面活性剤として、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどがあげられる。アスタキサンチンやトコトリエノールの吸収や製剤化を良くするためには粉末状態にすることができる。 シロップ、ドリンク剤、懸濁液などの液剤は、有効成分を必要に応じてpH調製剤、緩衝剤、溶解剤、懸濁剤等、張化剤、安定化剤、防腐剤などの存在下、常法により製剤化することができる。懸濁剤としては、例えば、ポリソルベート80、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロース、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、アラビアガム、粉末トラガントなどを挙げることができる。溶解剤としては、例えば、ポリソルベート80、水添ポリオキシエチレンヒマシ油、ニコチン酸アミド、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、マクロゴール、ヒマシ油脂肪酸エチルエステルなどを挙げることができる。安定化剤としては、例えば亜硫酸ナトリウム、メタ亜硫酸ナトリウムなどを挙げることができる。防腐剤としては、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、ソルビン酸、フェノール、クレゾール、クロロクレゾールなどを挙げることができる。 皮膚外用剤の形態には、特に限定されず、例えば、乳液、クリーム、化粧水、パック、分散液、洗浄料、メーキャップ化粧料、頭皮・毛髪用品等の化粧品や、軟膏剤、クリーム剤、外用液剤等の医薬品などとすることができる。上記成分以外に、通常化粧品や医薬品等の皮膚外用剤に用いられる成分、例えば、美白剤、保湿剤、各種皮膚栄養成分、紫外線吸収剤、酸化防止剤、油性成分、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、色剤、水、防腐剤、香料等を必要に応じて適宜配合することができる。 飲食品としては、サプリメント、健康食品、栄養機能食品や特定保健用食品などの保健機能食、特別用途食品、一般食品、医薬部外品さらにはスポーツ用のサプリメントとして用いることができ、摂取のしやすさや摂取量が決めやすいことから、サプリメント、スポーツ用のサプリメント、保健機能食、特別用途食品が好ましく、前述医薬品と同様の形態、錠剤、口腔内速崩壊錠、カプセル、顆粒、細粒などの固形投与形態、液剤、ドリンク、シロップ及び懸濁液のような液体投与形態で摂取することができる。上記医薬品用製剤で用いる成分のうち、食品で使用可能なものを選択でき、その他に乳蛋白質、大豆蛋白質、卵アルブミン蛋白質など、又は、これらの分解物である卵白オリゴペプチド、大豆加水分解物、アミノ酸単体の混合物を併用することもできる。また、ドリンク形態で提供する場合は、栄養バランス、摂取時の風味を良くするためにアミノ酸、ビタミン類、ミネラル類などの栄養的添加物、甘味料、香辛料、香料及び色素などを配合してもよい。本発明の飲食物の形態は、これらに限定されるものではない。 一般食品、すなわち飲食物の形態例としては、マーガリン、バター、バターソース、チーズ、生クリーム、ショートニング、ラード、アイスクリーム、ヨーグルト、乳製品、ソース肉製品、魚製品、漬け物、フライドポテト、ポテトチップス、スナック菓子、かきもち、ポップコーン、ふりかけ、チューインガム、チョコレート、プリン、ゼリー、グミキャンディー、キャンディー、ドロップ、キャラメル、パン、カステラ、ケーキ、ドーナッツ、ビスケット、クッキー、クラッカー、マカロニ、パスタ、ラーメン、蕎麦、うどん、サラダ油、インスタントスープ、ドレッシング、卵、マヨネーズ、みそなど、又は果汁飲料、清涼飲料、スポーツ飲料などの炭酸系飲料又は非炭酸系飲料など、茶、コーヒー、ココアなどの非アルコール又はリキュール、薬用酒などのアルコール飲料などの一般食品への添加例を挙げることができる。 飲食品では、アスタキサンチンを一般食品の原料と共に配合し、常法に従って加工製造することにより製造される。アスタキサンチンの配合量は食品の形態などにより異なり特に限定されるものではないが、一般にはアスタキサンチンの使用量は当業者が飲食物の種類に応じて適宜選択でき、前述の医薬品と同様の量を配合することができる。 本発明の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)を飼料に配合した場合も、医薬品や飲食品と同様の効果を得ることができ、例えば、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、サル、犬、猫、ハムスター、豚、牛、羊、馬、ワニ、ヘビ、トカゲ、鳥に投与することができる。本発明を以下の実施例及び製剤例にて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 [使用薬物] アスタキサンチン(ロッシュ社製)、ロシグリタゾン(Alexas Biochemicals製)、GW9662(Sigma社製)はすべて適当な濃度でジメチルスルホキシド:DMSO(wako)に溶かし、−80℃で保存した。 [実施例1] 核内レセプター活性実験(CoA−BAP法) NuLigand Kit(商標、Microsystems)を用いて行った。まず、GSTと核内レセプターLBDのキメラタンパク溶液100μlを0.1Mの炭酸緩衝液に溶解させた後、100mlずつ96well plateに分注しし4℃で一晩静置しplateに核内レセプターLBDを接着させた。WellをDTTを含む緩衝液Aで3回ほど洗浄した後、アルカリフォスフォターゼと融合させたSRC−1キメラタンパク溶液を10mlの緩衝液で稀釈し100μlずつwell plateに分注した。100倍濃度サンプルのDMSO溶液を1μlずつ加えて4℃で1時間静置し、反応させた。Well plateを緩衝液Bで3〜5回洗浄後、NPP基質液を100μlずつ加え、30℃で静置して反応させた。適当な黄色を呈したところで0.5MのNaOHを25ml加えて反応を停止させ。405nmの吸光度を測定した。 アスタキサンチンがPPARγと、DNA鎖をほどき結果的に脂肪細胞肥大化に繋がるコアクチベーターであるCBPと複合体を形成しないこと、脂肪細胞肥大化を抑制するコアクチベーターであるSRC−1とリガンド活性を持つことが判明した。結果を表1及びグラフを図1に示す。 [実施例2] 脂肪細胞の脂肪蓄積に及ぼす影響 3T3−L1細胞は10%FBS、50U/ml penicillin、50mg/ml streptomycin入りDMEM high gulcose培地(Irvine Scientific)でコンフルエントにならないように注意して培養した。Well plateはすべてSD SIOCOAT(商標、BECTON BICKINSON)を用いて行った。3.0×104cell/cm2になるように6well plate、24well plate、96well plateそれぞれのplateに細胞を撒き込んだ。24時間後にほぼコンフルエントになっていることを確かめた後、もう2日間培養し、十分細胞を休止期に誘導させた。まず、培地を分化誘導培地に交換し、2日間培養した後、維持培地に交換し、2日間培養した。分化誘導後、それぞれサンプルを1μg/ml insulinを含むサンプル培地で培養した。6well plateは24時間後にRNA抽出に用いた。24well plate、96well plateは2日間ごとに新しいサンプル入りの維持培地に交換し、4日間培養して、Oil red O染色及びAdipoRed(商標)assayに用いた。 (試験方法)1.Oil red O染色3T3−L1細胞から脂肪細胞への分化誘導を行った24well plateの培地を捨てて10%ホルムアルデヒドのPBS溶液を500μlずつ加え室温で20分間放置した後、新しく10%ホルムアルデヒドのPBS溶液を500μlずつ加え1時間から4℃で一晩放置し細胞を固定した。ミリQで2〜3回洗浄した後、Oil red O溶液を1mlずつ加えて、1時間室温で放置した。Oil red O溶液を捨てて、ミリQで2〜3回洗浄した後、よく乾燥させた。2.AdipoRed(商標)assay3T3−L1から脂肪細胞への分化誘導を行った96well plateを100mlずつPBSで1回洗浄した。PBSを200μlずつwellに分注しAdipoRed(商標)を5μlずつ加えて10分間遮光して室温で放置した。マルチラベルカウンターでexcitation485nm/emission535又は572nmに設定し蛍光を測定した。 脂肪細胞をOil red O染色すると脂肪滴は赤く染色される。分化誘導前の3T3−L1細胞は脂肪滴が全く観測されず、分化誘導したコントロールで比較すると、ロシグリタゾン(10μM)は脂肪滴が大きく広範囲に観測され、アスタキサンチン(10μM)は脂肪滴が小さく、範囲も狭かった。結果を表2、写真を図2に示す。 AdipoRed(商標)assayにより、ロシグリタゾン単独では濃度依存的に脂肪を蓄積したのに対し、アスタキサンチン単独、ロシグリタゾン及びアスタキサンチン混合物、及びPPARγアンタゴニストであるGW9662及びアスタキサンチン群は濃度依存的な脂肪の蓄積を抑制した。結果を表3及びグラフを図3に示す。 [実施例3] 脂肪細胞のmRNA発現に及ぼす影響(RT−real time PCR法)Total RNA 500ngをもとにRiverTra−α−(TOYOBO)を用いてcDNAを作成した。反応液の組成を表4に示す。aP2、LPL、CD36は表4の配列でプライマーを作成し、Syber Green(商標)master mix(Applied Biosystems)を使用して行った。反応組成、条件は表5に示す。各mRNAの数値はβ-アクチンを内部標準とし、各mRNAとコントロールの蛍光強度比で求めた。 脂肪細胞において、aP2の上昇により前駆脂肪細胞〜小型脂肪細胞へは促進され、LPLの上昇により中性脂肪を取り込み脂肪酸を排出させる一方で、CD36減少により脂肪酸の取り込みは阻害され小型脂肪細胞〜肥大脂肪細胞へは抑制されることを意味し、アスタキサンチンがPPARγアゴニスト系糖尿病薬の副作用である肥満を抑制していることを示唆している。結果を表6及びグラフを図4に示す。 [実施例4] 肥満・糖尿病モデルマウスに及ぼす影響1.使用動物 C57BL/6J(チャールズリバー)は20〜26℃、12時間ごとの点灯、消灯を行う環境下で飼育した。BKS.Cg−m+/+Leprdb/Jclマウス(db/mマウス)(日本クレア)も同様の条件で飼育し、交配によって、BKS.Cg−+Leprdb/+Leprdb/Jclマウス(db/dbマウス)を作成し実験に用いた。2.動物実験 コントロールオイルパウダー、2%アスタキサンチンパウダー(アスタリールパウダー(商標)富士化学工業)をCMF粉末飼料に混合したものを飼料とした。前日絶食下、4週ごとの体重測定を行い、眼底静脈層から採血を行った。3000gで20分遠心分離し、血清中の血糖、中性脂肪をグルコースCII−テストワコー(wako)、トリグリセライドE−テストワコー(wako)によって96well plateを用いた1/5スケール(測定試薬200μlに5倍希釈血清を15μl加える。)の実験系で測定した。また、血中アディポネクチンレベルはマウス/アディポネクチンELISAキット(大塚製薬)によって測定した。 卵巣周囲脂肪組織重量、血糖値、及び中性脂肪を減少させ、アディポネクチンレベルを上昇させた。結果を表7及びグラフを図5に示す。 本発明において、アスタキサンチン及び/又はそのエステルを含有する有効成分が、脂肪細胞においてPPARγアンタゴニストとして働き脂肪蓄積を抑制する細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)でありメタボリックシンドロームなどの予防に繋がる事、更に糖尿病薬として用いられているPPARγアゴニストとの併用で副作用である肥満を抑制したことを見出した。 本発明により、アスタキサンチンを含有する有効成分が、細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)として働くことで、メタボリックシンドローム、糖尿病、肥満、動脈硬化などを改善、及び/又はPPARγアゴニストの副作用である肥満を軽減する飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品を提供できる。PPARγとSRC−1、及びCBPとの複合体形成に及ぼすアスタキサンチンの作用を示すグラフである。脂肪細胞の脂肪蓄積に及ぼすアスタキサンチンの作用(Oil red O染色)を表す顕微鏡写真である。脂肪細胞の脂肪蓄積に及ぼすアスタキサンチンの作用(AdipoRed(商標)試験)を示すグラフである。脂肪細胞でのmRNA発現に及ぼすアスタキサンチンの作用を示すグラフである。db/dbマウスのアスタキサンチン投与における作用を示すグラフである。 アスタキサンチン及び/又はそのエステルを有効成分とする細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγアンタゴニストとして働き脂肪蓄積を抑制する請求項1に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγを介し、SRC−1と複合体を形成する請求項1または2記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγアゴニストの副作用である肥満を抑制する請求項1〜3のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγアゴニストが、15−デオキシ−Δ12,14−プロスタグランジンJ2、Δ12−プロスタグランジンJ2などのアラキドン酸代謝物、ω−3多価不飽和脂肪酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)などの不飽和脂肪酸、9−ヒドロキシオクタデカジエン酸、13−ヒドロキシオクタデカジエン酸などのエイコサノイド類、又はトログリタゾン、ロシグリタゾン、ピオグリタゾンのチアゾリジン誘導体の糖尿病治療薬の副作用である肥満を抑制する請求項1〜4のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγを介し、mRNAの発現を調節する請求項1〜5のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγを介し、mRNAであるCD36を抑制する請求項1〜6のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγを介し、mRNAであるaP2、LPL、及びアディポネクチンの発現を上昇させる請求項1〜7のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 PPARγを介し、白色脂肪細胞として卵巣周囲脂肪組織重量を減少させる請求項1〜8のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)。 請求項1〜9のいずれか1項に記載の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)を含有する飲食物、機能性食品、外用剤、化粧品、医薬部外品及び医薬品。 【課題】 天然由来の細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)として、メタボリックシンドロームなどの予防、及びPPARγアゴニストの副作用である肥満を抑制するために有用な組成物を提供すること【解決手段】 アスタキサンチン及び/又はそのエステルを有効成分とする、細胞選択的セレクティブPPARγモジュレーター(SPPARM)である。脂肪細胞においてPPARγアンタゴニストとして働き、脂肪蓄積を抑制する。糖尿病薬として用いられているPPARγアゴニストとの併用で、PPARγアゴニストの副作用である肥満を抑制する。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る