タイトル: | 再公表特許(A1)_抗BRAK(CXCL14)ヒトモノクローナル抗体及びその用途 |
出願番号: | 2008052603 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C07K 16/18,C12N 5/10,C12P 21/08,A61K 39/395,A61K 49/00,A61K 51/00,A61P 3/10,A61P 3/04,G01N 33/577,G01N 33/531,G01N 33/53 |
原 孝彦 寺沢 由紀 JP WO2008096905 20080814 JP2008052603 20080212 抗BRAK(CXCL14)ヒトモノクローナル抗体及びその用途 財団法人 東京都医学研究機構 591063394 小林 浩 100092783 片山 英二 100095360 大森 規雄 100120134 岩田 耕一 100153693 鈴木 康仁 100104282 原 孝彦 寺沢 由紀 JP 2007030027 20070209 C07K 16/18 20060101AFI20100430BHJP C12N 5/10 20060101ALI20100430BHJP C12P 21/08 20060101ALI20100430BHJP A61K 39/395 20060101ALI20100430BHJP A61K 49/00 20060101ALI20100430BHJP A61K 51/00 20060101ALI20100430BHJP A61P 3/10 20060101ALI20100430BHJP A61P 3/04 20060101ALI20100430BHJP G01N 33/577 20060101ALI20100430BHJP G01N 33/531 20060101ALI20100430BHJP G01N 33/53 20060101ALI20100430BHJP JPC07K16/18C12N5/00 BC12P21/08A61K39/395 NA61K39/395 DA61K49/00 AA61K49/02 AA61P3/10A61P3/04G01N33/577 BG01N33/531 AG01N33/53 D AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100527 2008557192 36 4B064 4B065 4C085 4H045 4B064AG27 4B064CA10 4B064CA20 4B064DA01 4B064DA13 4B065AA91X 4B065AA91Y 4B065AB04 4B065AC14 4B065CA25 4B065CA44 4B065CA46 4C085AA13 4C085AA14 4C085CC22 4C085CC23 4C085CC32 4C085KA03 4C085KA04 4C085LL20 4H045AA11 4H045BA10 4H045DA76 4H045EA24 4H045EA28 4H045EA50 4H045FA74 本発明は、BRAK(Breast and Kidney expressed chemokine)を認識する抗体及びその用途に関する。 近年、肥満に密接に関連して発症する糖尿病(特に、インスリン抵抗性を示す「2型糖尿病」)の患者数は世界的に増加している。これに伴い、高血圧症や動脈硬化症等も増加傾向にある。これらの発症機構は、脂肪代謝やホルモン調節の総合的な破綻によると推察されており、メタボリックシンドロームと総称されるようになった。 最近、肥満マウスや肥満患者の白色脂肪組織を用いた遺伝子発現解析により、肥満及びこれに伴うインスリン抵抗性の惹起には、白色脂肪組織中のマクロファージが重要な働きをしていることが報告された(非特許文献1、2参照)。肥満マウスを用いた実験では、まずこれらのマクロファージからTNFαが産生され、インスリンによるブドウ糖吸収作用が抑制された。そして、これと同時に、IL−1及びIL−6などの炎症性サイトカインの分泌が高まって慢性の炎症状態が導かれた(非特許文献3、4参照)。事実、TNFα又はその受容体を破壊したマウスでは、肥満によるインスリン抵抗性が改善された(非特許文献5参照)。 最近の研究により、JNKキナーゼ、及び小胞体ストレスシグナル伝達経路の活性化が肥満によるインスリン抵抗性に必須であることが示唆された(非特許文献6、7参照)。また、肝臓のIKK−β/NF−κB経路をブロックすると、肥満によるインスリン抵抗性が改善されることも報告された(非特許文献8、9参照)。従って、マクロファージの浸潤によって引き起こされる肥満脂肪組織からの炎症性サイトカインの分泌亢進や脂肪酸の負荷により、上記小胞体ストレス・JNK経路、又はIKK−β/NF−κB経路が活性化されることが、肥満に伴うインスリン抵抗性の惹起の主要原因であると考えられている。 さらに、肥満マウスの脂肪組織では、脂質や糖質のエネルギー代謝を制御する重要な分泌性ホルモンであるアディポネクチンの産生が抑制されることも報告されている(非特許文献10参照)。 ところで、「BRAK」(Breast and Kidney expressed chemokine)は、腫瘍細胞株で発現消失する新しいヒトケモカイン遺伝子として、1999年にHromasらによってクローニングされたものである(非特許文献11参照)。その後、複数のグループによって同一のケモカイン分子に関する解析結果が報告されている(非特許文献12〜14参照)。 現在までに、50種類を越えるケモカインの遺伝子が哺乳類動物の染色体にコードされていることが分かっている。これらケモカインは、92〜99個のアミノ酸から構成されており(分子量は約8,000〜10,000)、それぞれが、ジスルフィド結合する4つのシステイン残基を有している。このシステイン残基及びその周辺のアミノ酸配列は、ケモカインのN末端側における特徴的なものであり、ケモカインはこの特徴に基づいて「CC」、「CXC」、「CX3C」及び「C」という4つのグループに分類されている(非特許文献15参照)。なかでも、CXCケモカインは、これまでに16種類が同定されており、N末端側にあるGlu−Leu−Arg配列(ELR配列)の有無によって、ELR+ CXCケモカインとELR− CXCケモカインとに分類されている。BRAKは、ELR配列を持たないELR− CXCケモカインに属するものであり、名称統一のため「CXCL14」と命名されている。 最近の研究によって、BRAKは、プロスタグランジンE2によって活性化させたヒト末梢血単球由来マクロファージを特異的に遊走させる活性を有することが明らかとなった(非特許文献16参照)。またBRAKは、ヒト単球及び造血前駆細胞より分化誘導した樹状前駆細胞(非特許文献17、18参照)、並びにヒト乳癌由来上皮細胞株(非特許文献19参照)に対しても、特異的な遊走活性を有することが報告された。このように、BRAKは、T細胞及びB細胞等に対してではなく、組織マクロファージ及び樹状前駆細胞等に対して遊走活性を有するユニークなケモカインであり(非特許文献16参照)、同一の作用スペクトラムを持つCXCケモカインは他には知られていない。 BRAKの発現は、ヒトにおいては小腸、腎臓、肝臓、子宮及び乳腺等で確認されており(非特許文献14参照)、子宮癌及び乳癌の患者検体又は癌細胞株ではBRAKの発現が消失しているという興味深い知見が得られている(非特許文献11、12参照)。この知見により、BRAK応答性細胞は、癌組織へは遊走され難くなると推察されている(非特許文献20参照)。一方、成獣マウスにおいて、BRAKの発現は、脳、肺、骨格筋、脂肪及び卵巣で主に確認されている(非特許文献14参照)。しかし、マウス個体内におけるBRAK応答性細胞、特に白色脂肪組織中の単球及びマクロファージについての挙動実体や機能などに関する知見は得られていなかった。 そこで、本発明者は、白色脂肪組織への単球及びマクロファージの走化性とBARKとの関連性を明らかにし、肥満とインスリン応答に関する種々のパラメーターの動態を解析するために、BRAK遺伝子が破壊されたノックアウト非ヒト動物、具体的にはBRAKノックアウトマウス(BRAKホモ欠損マウス(−/−))を作出した。そして、このBRAKノックアウトマウスと、同腹の対照マウス(野生型マウス(+/+)、BRAKヘテロ欠損マウス(+/−))とを用いて、インスリン抵抗性及び白色脂肪組織中のマクロファージ数等について解析及び比較評価した(国際出願番号:PCT/JP2006/324622)。 その結果、BRAKノックアウトマウスは、普通食を与えて飼育した場合、対照マウスと比べて体重及び白色脂肪量が顕著に少なく、また高脂肪食を与えて飼育した場合では、対照マウスと同程度の白色脂肪量となるものの肥満マウスに特有の肝肥大及び脂肪肝が軽減されていた。そして、BRAKノックアウトマウスは、白色脂肪組織内部のマクロファージ数が対照マウスに比べて顕著に少なく、さらに、肥満に伴うインスリン抵抗性が観られなかった。以上の結果から、本発明者は、BRAK(CXCL14)が、摂食量調節による肥満化のプロセス、白色脂肪組織中へのマクロファージの遊走活性、及び2型糖尿病の代表的症状である肥満性インスリン抵抗性の獲得に関与するという知見を得た。Weisberg SP et al.,J.Clin.Invest.,112:1796−1808(2003)Xu H et al.,J.Clin.Invest.,112:1821−1830(2003)Wellen KE et al.,J.Clin.Invest.,112:1785−1788(2003)Wellen KE et al.,J.Clin.Invest.,115:1111−1119(2005)Uysal KT et al.,Nature,389:610−614(1997)Hirosumi J et al.,Nature,420:333−336(2002)▲O▼zcan U et al.,Science,306:457−461(2004)Cai D et al.,Nat.Med.,11:183−190(2005)Arkan MC et al.,Nat.Med.,11:191−198(2005)Yamauchi T et al.,Nat.Med.,7:941−946(2001)Hromas R et al.,Biochem.Biophys.Res.Commun.,255:703−706(1999)Frederick MJ et al.,Am.J.Pathol.,156:1937−1950(2000)Cao X et al.,J.Immunol.,165:2588−2595(2000)Sleeman MA et al.,Int.Immunol.,12:677−689(2000)Zlotnik A et al.,Immunity,12:121−127(2000)Kurth I et al.,J.Exp.Med.,194:855−861(2001)Shellenberger TD et al.,Cancer Res.,64:8262−8270(2004)Schaerli P et al.,Immunity,23:331−342(2005)Allinen M et al.,Cancer Cell,6:17−32(2004)Shurin GV et al.,J.Immunol.,174:5490−5498(2005) そこで、本発明は、BRAK(CXCL14)の機能(例えばBRAKの産生もしくは作用)を抑制又は阻害する化合物及びその用途を提供すること、特に、BRAKを認識する抗体及びその用途を提供することを目的とする。具体的には、BRAKの機能を抑制又は阻害する化合物(特にBRAKを特異的に認識する抗体)を用いて、2型糖尿病及び肥満のリスク診断や、2型糖尿病及び肥満の予防・治療(軽減)に有効利用できる用途を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、上記課題を解決し得る化合物(特に抗体)、及びその用途(2型糖尿病や肥満の診断、予防及び治療等)等を開発して、本発明を完成した。 すなわち、本発明は以下の通りである。(1)配列番号:1若しくは配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチド又はその誘導体、あるいはそれらの部分ペプチドを認識する抗体。 本発明の抗体としては、例えば、モノクローナル抗体、ヒト型化抗体又はヒト抗体、及び標識化された抗体、ならびにこれらを組み合わせた抗体が挙げられる。 また本発明の抗体としては、例えば、白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進活性、及び/又はインスリン抵抗性の改善活性を有する抗体が挙げられる。(2)上記(1)記載の抗体を産生するハイブリドーマ細胞。(3)上記(2)記載のハイブリドーマ細胞を生体内又は生体外で培養し、その体液又は培養物から上記(1)記載の抗体を採取することを特徴とする、上記(1)記載の抗体の製造法。(4)上記(1)記載の抗体を含有してなる診断薬。 本発明の診断薬は、例えば2型糖尿病及び/又は肥満の診断に用いることができる。(5)上記(1)記載の抗体を含有してなる医薬。 本発明の医薬は、例えば2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療剤、白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進剤、インスリン抵抗性の改善剤として用いることができる。(6)哺乳動物に対して、上記(1)記載の抗体の有効量を投与することを特徴とする2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療方法。(7)哺乳動物に対して、上記(1)記載の抗体の有効量を投与することを特徴とする白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進方法。(8)哺乳動物に対して、上記(1)記載の抗体の有効量を投与することを特徴とするインスリン抵抗性の改善方法。(9)2型糖尿病及び/又は肥満の診断薬を製造するための上記(1)記載の抗体の使用。また、2型糖尿病及び/又は肥満の診断用の上記(1)記載の抗体。(10)2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療剤を製造するための上記(1)記載の抗体の使用。また、2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療用の上記(1)記載の抗体。(11)白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進剤を製造するための上記(1)記載の抗体の使用。また、白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進用の上記(1)記載の抗体。(12)インスリン抵抗性の改善剤を製造するための上記(1)記載の抗体の使用。また、インスリン抵抗性の改善用の上記(1)記載の抗体。 図1は、C2C12細胞、あるいはForskolin刺激したC2C12細胞のCXCL14に対する走化性を調べたデータである。6時間の培養後にChemotaxicellミクロチャンバーの中から裏面へと移動した細胞数を測定し、統計的有意差を検定した。グラフは各群の平均値±標準誤差を示す。 図2は、Forskolin刺激したC2C12細胞のCXCL14に対する走化性が、抗マウスCXCL14特異抗体の添加によって中和されるかどうかを調べたデータである。6時間の培養後にミクロチャンバーの中から裏面へと移動した細胞数を測定し、統計的有意差を検定した。グラフは各群の平均値±標準誤差を示す。 図3は、Forskolin刺激したTHP−1細胞のCXCL14に対する走化性が、抗マウスCXCL14特異抗体の添加によって中和されるかどうかを調べたデータである。2時間の培養後にChemotaxicellミクロチャンバーの中から裏面へと移動した細胞数を測定し、統計的有意差を検定した。グラフは各群の平均値±標準誤差を示す。 図4は、Forskolin刺激したTHP−1細胞のCXCL14に対する走化性が、抗マウスCXCL14モノクローナル抗体の添加によって変動するかどうかを調べたデータである。2時間の培養後にChemotaxicellミクロチャンバーの中から裏面へと移動した細胞の代表的な染色写真を示す。 図5は、抗マウスCXCL14特異抗体が、CXCL14によるインスリンシグナルの阻害活性を中和することを示した図である。分化誘導したC2C12由来筋細胞を標記の物質存在下でインスリンにて刺激し、Akt Ser473のリン酸化をウエスタンブロッティングによって測定した。 以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。 なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2007−030027号明細書の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。 なお、本明細書においては、BRAKとCXCL14とは同義であり、いずれの表記を用いた場合も同じものを意味する。1.本発明の概要<本発明をするに至った経緯> 本発明者は、筋ジストロフィーモデルマウスmdxの骨格筋細胞においてmRNA発現が上昇していたことに着目し、BRAK(CXCL14)の生理機能に注目した。 近年になって、マクロファージが骨格筋や肝臓などの損傷修復に重要な働きをしていることが次々と発表された。そこで、本発明者は、CXCL14遺伝子欠損マウス[CXCL14(−/−)マウス]をmdxマウスと交配し、CXCL14(−/−)mdxマウス及びCXCL14(+/−)mdxマウスを産出した。これらのマウスについて、血中クレアチンキナーゼ(CK)活性を定期的に測定したところ、個体間でばらつきはあるがCXCL14(−/−)mdxマウス群の方がCXCL14(+/−)mdxマウス群よりCK値が有意に低下していた。しかし、老齢CXCL14(−/−)mdxマウスの骨格筋や横隔膜を組織化学的に解析したところ、mdxマウス特有の筋変性症状は、老齢CXCL14(+/−)mdxマウスとほぼ同様に生じていた。CXCL14(−/−)マウスでは、ハブ毒注射による骨格筋の損傷実験においても正常マウスと同程度のキネティクスで筋組織の再生が観られた。以上の事実から、CXCL14(−/−)mdxマウスで観られた血中CK値の減少は、筋膜の変性緩和によるものではなく、CXCL14の筋肉に対する別の生理機能を反映しているものと考えられた。 そこで、CXCL14(−/−)マウスの基本的性質を慎重に比べてみたところ、普通食を与えて飼育した6ヶ月齢CXCL14(−/−)雌マウスの平均体重は、CXCL14(+/−)雌マウスと比べて25%少なく、子宮周囲の白色脂肪量は4分の1に減少している結果が得られた。この体重差はCXCL14(−/−)マウスの摂食量が少ないことによるものであった。次に、これらのマウスに高脂肪食を与えて飼育したところ、CXCL14(−/−)マウスは、CXCL14(+/−)マウスより体重は軽いものの次第に肥満になり、内臓白色脂肪量についてはほぼ同程度となった。しかし、このCXCL14(−/−)マウスは、肥満マウス特有の肝肥大と脂肪肝が軽減されていた。さらに、高脂肪食飼育したCXCL14(−/−)マウスの血糖値は、高脂肪食飼育CXCL14(+/−)マウスよりも有意に低かった。そこで、インスリン投与後の血糖値変化を測定したところ、高脂肪食飼育したCXCL14(−/−)マウスは、肥満個体でおこるインスリン抵抗性が改善されていた。このような結果から、本発明者は、2型糖尿病及び肥満におけるCXCL14の生理的役割を詳しく解析するに至った。また、CXCL14(−/−)マウスにおけるインスリン抵抗性の改善が、特に骨格筋にて顕著であったことから、CXCL14(−/−)mdxマウスで観察されたCK値の低下は、糖代謝と密接に関係しているものと考えられた。<本発明及びBRAKの作用メカニズム> 本発明者は、BRAK(CXCL14)遺伝子を欠損するマウス系統[CXCL14(−/−)マウス]を用いた解析結果から、CXCL14が2型糖尿病の代表的症状である肥満性インスリン抵抗性の獲得、及び摂食量調節による肥満化のプロセスに関与することを明らかにした(これについては下記(1),(2)に詳述)。これらの知見から、本発明者は、CXCL14の機能(例えばCXCL14の産生もしくは作用)を抑制又は阻害する化合物、特にCXCL14を特異的に認識する抗体が、2型糖尿病に対する新しい治療薬として有効であり、またポテンシャルとして肥満軽減薬としても有効であることを見出した。さらに、上記化合物(特に抗BRAK抗体)は2型糖尿病及び肥満リスクの診断薬としても有用であることを見出した。(1)肥満性インスリン抵抗性獲得におけるCXCL14の役割 CXCL14は、組織マクロファージを誘引するケモカインとしてcDNAクローニングされた77アミノ酸(シグナルペプチドを含む場合は99アミノ酸)から成るタンパク質である(Hromas,R.et al.,BBRC,255:703−706,1999:Frederick,M.J.et al.,Am.J.Pathol.,156:1937−1950,2000;Sleeman,M.A.et al.,Int.Immunol.,12:677−689,2000)。本発明者は、CXCL14(−/−)マウスが、高脂肪食飼育による肥満性インスリン抵抗性になりにくいことを見出した。この事実に基づき、本発明者は、上記遺伝子改変マウス(CXCL14(−/−)マウス)が2型糖尿病治療薬の研究開発に有用であると考えた(国際出願番号:PCT/JP2006/324622)。 そこで、対照マウスとしてのCXCL14(+/−)マウスを、高脂肪食で12週間飼育したところ、一般的な過食肥満マウスと同様に、1)内臓白色脂肪へのマクロファージ浸潤、2)血中アディポネクチン濃度の低下、3)インスリン抵抗性惹起因子のひとつであるretinol binding protein 4(RBP4)の血中濃度上昇、4)脂肪肝、及び5)インスリン腹腔投与による血糖値低下の鈍化が観察された。これに対して、高脂肪食飼育したCXCL14(−/−)マウスでは、上記1)〜5)の項目のすべてについて、有意に改善することが認められた。この違いは、特に雌マウスにおいて顕著であった。さらに、CXCL14を骨格筋特異的に強制発現させたトランスジェニックマウスをCXCL14(−/−)マウスと交配して二重遺伝子改変マウスを作出したところ、この二重遺伝子改変マウスは高脂肪食飼育によるインスリン抵抗性が復帰した。一方、C2C12筋芽細胞株を分化誘導させて調製した筋管をインスリン刺激したin vitro実験系において、CXCL14はインスリン刺激によるAktキナーゼのリン酸化と2−deoxy−glucose(グルコースのアナログ)の取り込みを部分阻害した。この実験結果は、CXCL14がマクロファージ走化性因子としてだけでなく、糖代謝を直接制御することを示す初めての結果であった。高脂肪食飼育したCXCL14(−/−)マウスでは、骨格筋でのインスリン応答性が特に改善されていたことから、CXCL14は肥満個体において、内臓脂肪へのマクロファージ浸潤による慢性の炎症反応を誘導するだけでなく、骨格筋での糖吸収を直接阻害することにより、肥満性のインスリン抵抗性発症に寄与しているものと考えられた。(2)CXCL14と肥満との関係 CXCL14(−/−)雌マウスは、普通食飼育条件下及び高脂肪食飼育条件下の両方において、CXCL14(+/−)雌マウスと比べて平均体重が20〜25%軽かった。同様のことは、レプチン欠損による遺伝性肥満マウスob/obとCXCL14(−/−)マウスとの二重変異マウスにおいても観察された。8〜10週齢のCXCL14(−/−)ob/ob雌マウスは明らかな肥満を呈するが、CXCL14(−/−)ob/ob雌マウスと比べて体重が15〜20%低下しており、このとき摂食量も約20%低下していた。従って、CXCL14はレプチン系とは独立のメカニズムにより食欲を上昇させる又は食欲低下を抑制する顕著な効果を有するものであると考えられた。2.CXCL14の機能を抑制又は阻害する化合物 CXCL14の機能を抑制又は阻害する化合物としては、例えばCXCL14の産生又は作用を抑制又は阻害する化合物が挙げられる。このような化合物としては、例えば、(i)CXCL14遺伝子の機能を抑制又は阻害する化合物、(ii)CXCL14分子に直接相互作用(例えば、結合もしくは会合)してCXCL14の機能を抑制又は阻害する化合物、(iii)CXCL14が作用する対象となる物質(CXCL14の基質)や細胞等に対して相互作用(例えば、結合もしくは会合)してCXCL14の機能を抑制又は阻害する化合物などが挙げられる。また、これら化合物は、当該技術分野において通常認識される、いわゆる低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよいし、これらの中間的な分子量を有する化合物であってもよく、特に限定はされない。 具体的に、上記(i)の化合物としては、例えば、CXCL14遺伝子の機能を抑制又は阻害する核酸、及び他の各種有機化合物等が挙げられる。当該核酸としては、ポリヌクレオチド及びオリゴヌクレオチド(DNA,RNA)、ならびにペプチド核酸(PNA)等のいずれであってもよく、具体的な種類としては、例えばアンチセンスDNA、siRNA、shRNA及びマイクロRNA等が挙げられる。 上記(ii)の化合物としては、例えば、CXCL14を特異的認識する抗体又は酵素、当該抗体及び酵素には含まれない天然又は合成ポリペプチド及びオリゴペプチド、ならびに他の各種有機化合物等が挙げられる。 上記(iii)の化合物は、CXCL14及びその遺伝子に直接的に作用するものではない点で、CXCL14に対する間接的な抑制又は阻害化合物であると言える。当該化合物としては、例えば、CXCL14の作用対象となる物質を認識する抗体又は酵素、当該抗体及び酵素には含まれない天然又は合成ポリペプチド及びオリゴペプチド、ならびに他の各種有機化合物等が挙げられる。 上述したCXCL14の機能を抑制又は阻害する化合物は、例えば、2型糖尿病及び肥満の診断薬、2型糖尿病及び肥満の予防・治療剤又は予防・治療方法、白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進剤又は低減促進方法、ならびにインスリン抵抗性の改善剤又は改善方法などの用途に好適に用いることができる。 以下においては、上述したCXCL14の機能を抑制又は阻害する各種化合物のうち、特に好ましい態様の一つである「CXCL14を認識する抗体」について、各種用途への使用態様も含めて詳細に説明するが、該抗体以外の上記化合物についても各種用途への使用態様については該抗体の説明と同様の説明が適用され得る。3.本発明の抗体 本明細書において用いられる配列番号のうち、配列番号:1〜配列番号:6は、以下のペプチドのアミノ酸配列を表す。なお、配列番号:1及び配列番号:2で表されるアミノ酸配列(99アミノ酸)は、いずれも、N末端の22アミノ酸はシグナル配列である。また、配列番号:1で表されるアミノ酸配列は、NCBI(GenBank)のウェブサイト(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に「Accession number:AAD03839」として表されており、配列番号:2で表されるアミノ酸配列は、同ウェブサイトに「Accession number:AAD34157」として表されている。また、配列番号:3〜配列番号:6で表されるアミノ酸配列は、いずれも、配列番号:1又は配列番号:2で表されるアミノ酸配列の一部であり、括弧( )内の数値範囲は、配列番号:1又は配列番号:2で表されるアミノ酸配列中の存在位置(N末端からのアミノ酸残基数で表示)を示す。〔配列番号:1〕ヒト型CXCL14〔配列番号:2〕マウス型CXCL14〔配列番号:3〕ヒト型CXCL14(23−99)〔配列番号:4〕ヒト型CXCL14(24−35)〔配列番号:5〕マウス型CXCL14(23−99)〔配列番号:6〕マウス型CXCL14(24−35) ここで、配列番号:1で表されるヒト型CXCL14のアミノ酸配列と、配列番号:2で表されるマウス型CXCL14アミノ酸配列とを以下に示す(いずれも各アミノ酸は1文字表記)。当該アミノ酸配列において、下線を付したアミノ酸残基(計2残基)は、シグナル配列以外の部分において、ヒト型CXCL14とマウス型CXCL14との間で相違が認められるアミノ酸残基である。 本明細書におけるタンパク質(ポリペプチド又は部分ペプチド)は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:1で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチドをはじめとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基、カルボキシレート、アミド又はエステルの何れであってもよい。 本発明の抗体が認識しうるポリペプチドの誘導体、すなわちヒト又はマウス型CXCL14の誘導体としては、例えば、配列番号:1又は配列番号:2で表されるアミノ酸配列の一部のアミノ酸残基が、置換可能な基によって置換されたもの、アミノ酸残基の一部が欠失したもの、アミノ酸残基などが付加・挿入されたものなどが挙げられる。配列番号:1又は配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドの誘導体の例としては、上記アミノ酸配列中の1又は2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個)、より好ましくは、1、2又は3個)のアミノ酸が欠失したもの、上記アミノ酸配列に1又は2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個)、さらに好ましくは、1、2又は3個)のアミノ酸が付加したもの、上記アミノ酸配列に1又は2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個)、さらに好ましくは、1、2又は3個)のアミノ酸が挿入されたもの、又は上記アミノ酸配列中の1又は2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個(1〜5個)、さらに好ましくは、1、2又は3個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたものが挙げられる。 なお、上述したヒト又はマウス型CXCL14の誘導体は、例えば、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩(好ましくは生理学的に許容される酸付加塩)などとして用いてもよく、このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。 本発明の抗体が認識しうる部分ペプチド、すなわちヒトもしくはマウス型CXCL14又はその誘導体の部分ペプチドとしては、例えば、配列番号:1又は配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドにおいて、その一部のアミノ酸残基が欠失したもの、一部のアミノ酸残基が置換可能な基(例、Cys、水酸基など)によって置換されたもの、その一部のアミノ酸残基が欠失し、かつ一部のアミノ酸残基が置換可能な基(例、Cys、水酸基など)によって置換されたものなども挙げられる。 当該部分ペプチドの例としては、ヒトもしくはマウス型CXCL14又はその誘導体のN末端側の約22残基(シグナルペプチド部分)が欠失したものが挙げられる。より具体的には、当該部分ペプチドは、配列番号:1で表されるアミノ酸配列の(i)第23番目〜第99番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド(配列番号:3)、(ii)第24番目〜第35番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド(配列番号:4)、及び(iii)これら(i)〜(ii)のポリペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたもの、ならびに、配列番号:2で表されるアミノ酸配列の(iv)第23番目〜第99番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド(配列番号:5)、(v)第24番目〜第35番目のアミノ酸配列を有するポリペプチド(配列番号:6)、及び(vi)これら(iv)〜(v)のポリペプチドの一部のアミノ酸残基(例、1個)が置換可能な基によって置換されたものなどが好ましく挙げられる。 抗体の抗原の調製法、及び抗体の製造法については、自体公知の方法、例えばWO 94/17197号公報に記載の方法やそれに準ずる方法を用いることができるが、以下に、その例を示す。 (1)抗原の調製 本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、例えばCXCL14(BRAK)もしくはその誘導体又はその部分ペプチドや、CXCL14と同一の抗原決定基を1種あるいは2種以上有する合成ペプチドなどの何れのものも使用することができる(以下、これらを単にCXCL14抗原と称することもある)。CXCL14もしくはその誘導体又はその部分ペプチドとしては、前述したものが用いられる。CXCL14抗原は、例えば、ヒト及びマウス、あるいは場合によりサル、ラット及びブタなどの哺乳動物から自体公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製することもできるし、また市販の天然精製標品であってもよいし、合成ペプチドを用いてもよい。 CXCL14抗原は、公知の方法、例えばWO 02/06483号公報に記載の方法に準じて調製でき、さらに、(a)ヒト及びマウス、あるいは場合によりサル、ラット及びブタなどの哺乳動物の組織又は細胞から公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製すること、(b)ペプチド・シンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成方法で化学的に合成すること、あるいは(c)CXCL14又はその誘導体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養すること、によっても調製される。 (a)該哺乳動物の組織又は細胞からCXCL14抗原を調製する場合は、その組織又は細胞をホモジナイズした後、酸又はアルコールなどで抽出を行い、該抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離し、CXCL14抗原を調製できる。 (b)CXCL14抗原を化学的に合成する場合に用いられる、合成ペプチドとしては、例えば天然より精製したCXCL14抗原と同一の構造を有するものや、CXCL14などのアミノ酸配列において3個以上、好ましくは6個以上のアミノ酸からなる任意の箇所のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を1種あるいは2種以上含有するペプチドなどが挙げられる。 (c)DNAを含有する形質転換体を用いてCXCL14抗原を製造する場合、該DNAは、公知のクローニング方法(例えば、Molecular Cloning(2nd ed.;J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法など)に従って作製することができる。該クローニング方法とは、(1)CXCL14抗原のアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプローブ又はDNAプライマーを用い、cDNAライブラリーからハイブリダイゼーション法によりCXCL14抗原をコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法、又は(2)CXCL14抗原のアミノ酸配列に基づきデザインしたDNAプライマーを用い、PCR法により該CXCL14抗原をコードするDNAを含有する形質転換体を得る方法などが挙げられる。 CXCL14を加水分解して得られる部分ペプチドとしては、例えば、配列番号:1又は配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをアミノペプチダーゼやカルボキシペプチダーゼなどのエキソプロテアーゼによりN末端及び/又はC末端から順次加水分解して得られる部分ペプチド又はそれらの混合物、あるいは配列番号:1又は配列番号:2で表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドを種々のエンドペプチダーゼにより加水分解して得られる部分ペプチド又はそれらの混合物などが用いられる。 前記合成ペプチドは、公知の常套手段で製造することができ、固相合成法、液相合成法のいずれによっても製造することができる。すなわち、該ペプチドを構成し得る部分ペプチド又はアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、B.Merrifield〔ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイェティ(J.Am.Chem.Soc.),85,2149 1963年〕、M.Bodanszky及びM.A.Ondetti〔ペプチド シンセーシス(Peptide Synthesis),Interscience Publishers,New York,1966年〕、Schroeder及びLuebke〔ザ ペプチド(The Peptide),Academic Press,New York,1965年〕、泉屋信夫他〔ペプチド合成の基礎と実験、丸善、1985年〕、矢島治明及び榊原俊平〔生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、205、1977年〕などが用いられる。また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて該ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られるペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。 ペプチドのアミド体は、アミド形成に適した市販のペプチド合成用樹脂を用いて得ることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などが挙げられる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするペプチドの配列通りに、公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、目的のペプチドを取得する。あるいはクロロトリチル樹脂、オキシム樹脂、4−ヒドロキシ安息香酸系樹脂等を用い、部分的に保護したペプチドを取り出し、更に常套手段で保護基を除去し目的のペプチドを得ることもできる。 上記した保護されたアミノ酸の縮合に関しては、ペプチド合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、カルボジイミド類が好ましく用いられる。このようなカルボジイミド類としてはDCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが挙げられる。各種活性化試薬による活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt、HOOBtなど)とともに保護されたアミノ酸を直接樹脂に添加するか又は、対称酸無水物又はHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護されたアミノ酸の活性化を行ったのちに樹脂に添加することができる。保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、ペプチド縮合反応に使用しうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。そのような溶媒としては、例えばN,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジンなどの三級アミン類、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適宜の混合物などが保護されたアミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒として用いられる。反応温度はペプチド結合形成反応に使用され得ることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20℃〜約50℃の範囲から適宜選択される。活性化されたアミノ酸誘導体は通常約1.5〜約4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸又はアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化して、後の反応に影響を及ぼさないようにすることができる。 原料アミノ酸のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、ターシャリーペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが挙げられる。カルボキシル基の保護基としては、たとえばC1−6アルキル基、C3−8シクロアルキル基、C7−14アラルキル基の他、2−アダマンチル、4−ニトロベンジル、4−メトキシベンジル、4−クロロベンジル、フェナシル基及びベンジルオキシカルボニルヒドラジド、ターシャリーブトキシカルボニルヒドラジド、トリチルヒドラジドなどが挙げられる。 セリン及びスレオニンの水酸基は、たとえばエステル化又はエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては例えばアセチル基などの低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが挙げられる。また、エーテル化に適する基としては、たとえばベンジル基、テトラヒドロピラニル基、ターシャリーブチル基などである。 チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、たとえばBzl、Cl−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、ターシャリーブチルなどが挙げられる。 ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、Bom、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが挙げられる。 原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、たとえば対応する酸無水物、アジド、活性エステル[アルコール(たとえば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル]などが挙げられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、たとえば対応するリン酸アミドが挙げられる。 保護基の除去(脱離)方法としては、たとえばPd−黒又はPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども挙げられる。上記酸処理による脱離反応は一般に−20℃〜40℃の温度で行われるが、酸処理においてはアニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。 原料の反応に関与すべきでない官能基の保護及び保護基、ならびにその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基あるいは公知の手段から適宜選択しうる。 ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、まず、カルボキシル末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化し、その後、アミノ基側にペプチド鎖を所望の鎖長まで延ばした後に、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除いたペプチド(又はアミノ酸)とを製造し、この両ペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる方法が挙げられる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護ペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗ペプチドを得ることができる。この粗ペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のペプチドのアミド体を得ることができる。 ペプチドのエステル体を得るにはカルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、ペプチドのアミド体と同様にして所望のペプチドのエステル体を得ることができる。 CXCL14抗原は、不溶化したものを直接免疫することもできる。また、CXCL14抗原を適当な担体に結合又は吸着させた複合体を免疫してもよい。該担体(キャリアー)とCXCL14抗原(ハプテン)との混合比は、担体に結合あるいは吸着させたCXCL14抗原に対して抗体が効率よくできれば、どのようなものをどのような比率で結合あるいは吸着させてもよく、通常ハプテンに対する抗体の作製にあたり常用されている高分子担体を重量比でハプテン1に対し0.1〜100の割合で使用することができる。このような高分子担体としては、天然の高分子担体や合成の高分子担体が挙げられる。天然の高分子担体としては、例えばウシ、ウサギ、ヒトなどの哺乳動物の血清アルブミンや例えばウシ、ウサギなどの哺乳動物のチログロブリン、例えばウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジなどの哺乳動物のヘモグロビン、KHL(キーホールリンペット)ヘモシアニンなどが用いられる。合成の高分子担体としては、例えばポリアミノ酸類、ポリスチレン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、ポリプロピレン類などの重合物又は供重合物などの各種ラテックスなどを用いることができる。 また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができる。縮合剤としては、例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプトファンを架橋するビスジアゾ化ベンジジンなどのジアゾニウム化合物、アミノ基同士を架橋するグルタルアルデビトなどのジアルデヒド化合物、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、チオール基同士を架橋するN,N’−o−フェニレンジマレイミドなどのジマレイミド化合物、アミノ基とチオール基を架橋するマレイミド活性エステル化合物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋するカルボジイミド化合物などが好都合に用いられる。また、アミノ基同士を架橋する際にも、一方のアミノ基にジチオピリジル基を有する活性エステル試薬(例えば、SPDPなど)を反応させた後還元することによりチオール基を導入し、他方のアミノ基にマレイミド活性エステル試薬によりマレイミド基を導入後、両者を反応させることもできる。(2)モノクローナル抗体の作製 本発明の抗体は、ポリクローナル抗体であってもモノクローナル抗体であってもよく、特に限定されるものではないが、モノクローナル抗体であることが好ましい。以下、本発明の抗体の作製方法として、モノクローナル抗体の場合を例に挙げて説明する。 CXCL14抗原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入、皮下注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独であるいは担体、希釈剤と共に投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行われる。温血動物としては、例えばサル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどが挙げられるが、抗体、特にモノクローナル抗体の作製にはマウスが好ましく用いられる。 モノクローナル抗体の作製に際しては、CXCL14抗原を免疫された温血動物、例えばマウスから、抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓又はリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、抗CXCL14モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。血清中の抗CXCL14抗体価の測定は、例えば後記の標識化CXCL14と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することによりなされる。融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature),256,495(1975)〕に従い実施できる。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられ、好ましくはPEGなどが用いられる。骨髄腫細胞としてはたとえばNS−1、P3U1、SP2/0、AP−1などがあげられ、P3U1などが好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄細胞数との好ましい比率は、通常1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。 抗CXCL14抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えばCXCL14又はその誘導体又はそれらの部分ペプチドを直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)又はプロテインAを加え、固相に結合した抗CXCL14モノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体又はプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したCXCL14を加え、固相に結合したCXCL14モノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。抗CXCL14モノクローナル抗体のスクリーニング、育種は、通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、10〜20%牛胎児血清を含む動物細胞用培地(例、RPMI1640)で行われる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗CXCL14抗体価の測定と同様にして測定できる。 抗CXCL14モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法(例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など)に従って行われる。 また、CXCL14の一部領域と反応する抗CXCL14抗体を産生するハイブリドーマ、及び、CXCL14とは反応するがその一部領域とは反応しない抗CXCL14モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの選別は、たとえばその一部領域に相当するペプチドとハイブリドーマが生産する抗体との結合性を測定することにより行うことができる。 以上のようにして、ハイブリドーマ細胞を温血動物の生体内又は生体外で培養し、その体液又は培養物から抗体を採取することによって、本発明の抗体を製造することができる。 このようにして得られる本発明の抗体は、2型糖尿病及び肥満の診断薬、2型糖尿病及び肥満の予防・治療剤、白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進剤、インスリン抵抗性の改善剤として使用することができる。 これらの目的には、本発明の抗体は、抗体分子そのものを用いてもよいし、又は上記の抗体の断片及びV領域の一本鎖抗体を用いてもよく、これらはいずれも本発明の抗体の範囲内のものである。抗体の断片は、抗体の一部分の領域を意味し、具体的にはF(ab’)2、Fab’、Fab、Fv(variable fragment of antibody)、sFv、dsFv(disulphide stabilized Fv)又はdAb(single domain antibody)などが挙げられる。V領域の一本鎖抗体は、VL(L鎖可変領域)とVH(H鎖可変領域)とをリンカーでつないだ構造を持つものである。 また、本発明の抗体としては、ヒト型化抗体(ヒト化抗体)及びヒト抗体が好ましい態様として挙げられる。これらヒト型化抗体及びヒト抗体は、本明細書においては総称して「ヒト抗体」、又はモノクローナル抗体の場合は「ヒトモノクローナル抗体」と言うことがある。これらの抗体は、免疫系をヒトのものと入れ換えた哺乳動物を用い、該哺乳動物を免疫して、通常のモノクローナル抗体の作製と同様に直接作製することができる。 ヒト型化抗体を作製する場合は、マウス等の哺乳動物(非ヒト動物)の抗体の可変領域から相補性決定領域(complementarity determining region;CDR)をヒト可変領域に移植して、フレームワーク領域(FR)はヒト由来のものを、CDRは非ヒト動物由来のものを使用して再構成した可変領域を作製する。次いで、この再構成した可変領域をヒト定常領域に連結することでヒト型化抗体を作製することができる。また、ヒト型化抗体は、非ヒト抗体由来可変領域及びヒト抗体由来定常領域とからなるキメラ抗体として作製することもできる。ヒト型化抗体の作製法は、当分野において周知である。 ヒト抗体は、一般に、V領域の抗原結合部位、すなわち超過変領域(Hyper Variable region)についてはその特異性と結合親和性が問題となるが、構造的にどの動物で作製してもかまわない。一方、V領域のその他の部分や定常領域の構造は、ヒトの抗体と同じ構造をしていることが望ましい。ヒトに共通の遺伝子配列については遺伝子工学的手法によって作製する方法が確立されている。4.本発明の抗体の用途 以下に、本発明の抗体の用途について、詳細に説明する。(1)本発明の抗体を含有してなる診断薬 本発明の抗体(特に、ヒトモノクローナル抗体)は、CXCL14(BRAK)が関与する疾患、すなわち2型糖尿病及び/又は肥満の診断薬として使用することができる。 具体的には、本発明の抗体は、2型糖尿病及び/又は肥満のリスク診断を目的として使用される。前述した通り、CXCL14ホモ欠損マウスを用いた解析結果から、CXCL14が2型糖尿病の代表的症状である肥満性インスリン抵抗性の獲得、及び摂食量調節による肥満化のプロセスに関与することを明らかにした。従って、被験者から採取した体液や組織などの生体サンプル(被測定液、被検液)中の抗原量(CXCL14量)を測定することにより、被験者の2型糖尿病及び肥満リスクを評価することができる。 本発明の抗体を用いる測定法は、特に制限されるものではなく、被測定液中の抗原量(CXCL14量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的又は物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製し算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。このような測定法としては、例えば、サンドイッチ法、競合法、イムノメトリック法、ネフロメトリーなどが用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法、競合法がより好ましく、特にサンドイッチ法が好ましい。 (A)サンドイッチ法 サンドイッチ法は、担体上に不溶化した本発明の抗体(固相用抗体)、標識化された本発明の抗体(固相用抗体とはエピトープが異なる抗体:標識用抗体)及び被検液を反応させた後、標識剤の活性を測定することにより被検液中のCXCL14又はその誘導体を定量する方法である。 サンドイッチ法においては、担体上に不溶化した本発明の抗体に被検液を反応(1次反応)させ、さらに標識化された本発明の抗体を反応(2次反応)させた後、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより、被検液中のCXCL14量を定量することができる。1次反応と2次反応は同時に行ってもよいし時間をずらして行ってもよい。標識化剤及び不溶化の方法は、前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。サンドイッチ法によるCXCL14の測定法においては、例えば、1次反応で用いられる抗体がCXCL14またその誘導体のC端側の部分ペプチドを認識する場合は、2次反応で用いられる抗体はC端側の部分ペプチド以外(即ち、N端側)を認識する抗体が好ましく、1次反応で用いられる抗体がCXCL14又はその誘導体のN端側の部分ペプチドを認識する場合は、2次反応で用いられる抗体は、N端側の部分ペプチド以外(即ち、C端側)を認識する抗体が好ましく用いられる。また、標識用抗体は、西洋ワサビパーオキシダーゼ(HRP)で標識化されて用いられることが好ましい。 (B)競合法競合法 競合法競合法は、本発明の抗体、被検液及び標識化されたCXCL14又はその誘導体を競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたCXCL14又はその誘導体の割合を測定することにより、被検液中のCXCL14又はその誘導体を定量する定量法である。競合法による被検液中のCXCL14又はその誘導体を定量は、例えば、固相化法を用いて行うことが好ましい。固相化法の具体例としては、抗マウスIgG抗体(ICN/CAPPEL社製)を固相化抗体として用い、この固相化抗体の存在するプレートに、(i)本発明の抗体、(ii)HRPで標識化された配列番号:1又は配列番号:2で表されるペプチド、及び(iii)被検液を添加し、反応後、固相に吸着したHRP活性を測定し、CXCL14又はその誘導体を定量する方法が挙げられる。 (C)イムノメトリック法 イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化された本発明の抗体に対して競合反応させた後、固相と液相を分離するが、あるいは被検液中の抗原と過剰量の標識化された本発明の抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化された本発明の抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。 (D)ネフロメトリー ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合には、レーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。 上記(A)〜(D)の測定法において、標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、特に限定されるものではないが、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、特に限定されるものではないが、例えば[125I]、[131I]、[3H]、[14C]などが好ましい。上記酵素としては、特に限定されるものではないが、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えばβ−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが挙げられる。上記蛍光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばフルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが挙げられる。上記発光物質としては、特に限定されるものではないが、例えばルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが挙げられる。さらに、抗体と標識剤との結合には、ビオチン−アビジン系の化合物を用いることもできる。 抗原あるいは抗体の不溶化にあたっては、物理吸着を用いてもよく、また通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、例えばアガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、例えばポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコンなどの合成樹脂あるいはガラスなどが挙げられる。 これら個々の免疫学的測定法を本発明に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてCXCL14又はその誘導体の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる(例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol.70(Immunochemical Techniques(Part A))、同書 Vol.73(Immunochemical Techniques(Part B))、同書 Vol.74(Immunochemical Techniques(Part C))、同書 Vol.84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、同書 Vol.92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、同書 Vol.121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)など参照)。 また、本発明の抗体は、CXCL14又はその誘導体を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中のCXCL14又はその誘導体の検出、被検細胞内におけるCXCL14又はその誘導体の挙動の分析などのために使用することもできる。(2)本発明の抗体を含有してなる医薬 本発明の抗体(特に、ヒトモノクローナル抗体)は、CXCL14(BRAK)が関与する疾患、すなわち2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療剤等の医薬の有効成分として使用することができる。当該医薬としては、さらに、白色脂肪組織中のマクロファージの低減促進剤、及びインスリン抵抗性の改善剤も好ましく挙げられる。 以下、上記予防・治療剤としての医薬の使用について説明するが、同様の説明が上記低減促進剤及び改善剤の使用についても適用することができる。 本発明の抗体を含有してなる予防・治療剤は低毒性であり、そのまま液剤として、又は適当な剤型の医薬組成物として、ヒト又は哺乳動物(例えば、マウス)に対して非経口的又は経口的に投与することができる。本発明の抗体は、それ自体を投与しても良いし、又は適当な医薬組成物として投与しても良い。投与に用いられる医薬組成物としては、本発明の抗体及びその塩と薬理学的に許容され得る担体、希釈剤もしくは賦形剤とを含むものであっても良い。このような医薬組成物は、経口又は非経口投与に適する剤形として提供される。非経口投与のための組成物としては、例えば、注射剤、坐剤等が用いられ、注射剤は静脈注射剤、皮下注射剤、皮内注射剤、筋肉注射剤、点滴注射剤等の剤形を包含しても良い。このような注射剤は、公知の方法に従って調製できる。注射剤の調製方法としては、例えば、上記本発明の抗体又はその塩を通常注射剤に用いられる無菌の水性液、又は油性液に溶解、懸濁又は乳化することによって調製できる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液等が用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン界面活性剤(例、ポリソルベート80、HCO−50(polyoxyethylene(50mol)adduct of hydrogenated castor oil))等と併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が用いられ、溶解補助剤として安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等を併用してもよい。調製された注射液は、適当なアンプルに充填されることが好ましい。直腸投与に用いられる坐剤は、上記抗体又はその塩を通常の坐薬用基剤に混合することによって調製されてもよい。 経口投与のための組成物としては、固体又は液体の剤形、具体的には錠剤(糖衣錠、フィルムコーティング錠を含む)、丸剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤を含む)、シロップ剤、乳剤、懸濁剤等が挙げられる。このような組成物は公知の方法によって製造され、製剤分野において通常用いられる担体、希釈剤もしくは賦形剤を含有していても良い。錠剤用の担体、賦形剤としては、例えば、乳糖、でんぷん、蔗糖、ステアリン酸マグネシウムが用いられる。 上記の非経口用又は経口用医薬組成物は、活性成分の投与量に適合するような投薬単位の剤形に調製されることが好都合である。このような投薬単位の剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤が挙げられる。抗体の含有量としては、投薬単位剤形当たり通常5〜500mg程度、とりわけ注射剤では5〜100mg程度、その他の剤形では10〜250mg程度の含有量が好ましい。なお、前記した各組成物は、上記抗体との配合により好ましくない相互作用を生じない限り他の活性成分を含有してもよい。 本発明の抗体を含有する予防・治療剤としての医薬の投与量は、投与対象、対象疾患、症状、投与ルート等によっても異なるが、例えば、成人の2型糖尿病の治療のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。また、成人の肥満症の治療のために使用する場合には、本発明の抗体を1回量として、通常0.01〜20mg/kg体重程度、好ましくは0.1〜10mg/kg体重程度、さらに好ましくは0.1〜5mg/kg体重程度を、1日1〜5回程度、好ましくは1日1〜3回程度、静脈注射により投与するのが好都合である。2型糖尿病及び肥満症の予防の場合、あるいは、他の非経口投与(例、皮下投与)及び経口投与の場合も、これらに準ずる量を投与することができる。症状が特に重い場合には、その症状に応じて増量してもよい。 なお、本発明の明細書において、アミノ酸等を略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commision on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。アミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL−体及びR−体のうちL−体を示すものとする。Gly :グリシン Ala :アラニンVal :バリン Leu :ロイシンIle :イソロイシン Ser :セリンThr :スレオニン Cys :システインMet :メチオニン Glu :グルタミン酸Asp :アスパラギン酸 Lys :リジンArg :アルギニン His :ヒスチジンPhe :フェニルアラニン Tyr :チロシンTrp :トリプトファン Pro :プロリンAsn :アスパラギン Gln :グルタミンPAM :フェニルアセタミドメチルBoc :t−ブチルオキシカルボニルFmoc :9−フルオレニルメチルオキシカルボニルCl−Z :2−クロロ−ベンジルオキシカルボニルBge−Z :2−ブロモーベンジルオキシカルボニルBzl :ベンジルCl−Bzl:2−クロロ−ベンジルOcHex :シクロヘキシルエステルOBzl :ベンジルエステルTos :p−トルエンスルホニルHONB :N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミドHOBt :1−ヒドロキシベンゾトリアゾールHOOBt :3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアジンMeBzl :4−メチルベンジルBom :ベンジルオキシメチルBum :t−ブトキシメチルTrt :トリチルDNP :ジニトロフェニルTFA :トリフルオロ酢酸DMF :N,N−ジメチルホルムアミドDCM :ジクロロメタンDCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミドBHA :ベンズヒドリルアミンpMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミンCHO :ホルミル 以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。 ≪材料と方法≫1.走化性試験 公的な細胞バンクよりそれぞれ入手したマウス骨格筋由来筋芽細胞株C2C12〔American Type Culture Collection(ATCC)より入手〕、及びヒト単球系白血病細胞株THP−1(財団法人ヒューマンサイエンス財団研究資源バンクHSRRBより入手)を、10%ウシ胎仔血清入りのDulbecco’s modifies Eagle’s medium(DMEM)培地、あるいは10%ウシ胎仔血清入りのRPMI−1640培地にてそれぞれ培養し、対数増殖期にある細胞を実験に用いた。C2C12細胞は2×105個を100mmプレートに接種し、37℃で一晩培養後、最終濃度20μMになるようにForskolin(Sigma社)を添加して、37℃でさらに2日間培養した。THP−1細胞については、106個を100mmプレートに接種すると同時にForskolinを最終濃度20μMになるように添加して、37℃で2日間培養した。なお、Forskolinは細胞内のcAMP濃度を高めてAキナーゼとその下流転写因子群を活性化する試薬である。Forskolin刺激したTHP−1細胞株は、活性化マクロファージと類似した性質を有する細胞株として免疫学研究に広く用いられている。 C2C12細胞に対してはマウスCXCL14(R&D Systems社)を、THP−1細胞に対してはヒトCXCL14(Peprotec社)をそれぞれ最終濃度100nMになるようにケモタクシスバッファー〔0.1% Fatty acid−free BSA(Sigma社)−20mM HEPES pH8.0(Invitrogen社)−DMEM〕にて希釈し、550μlずつ24ウェルプレートに入れた。抗体による中和実験には、ヒツジ抗マウスCXCL14ポリクローナル抗体(AF730、R&D Systems社)、又はラット抗マウスCXCL14モノクローナル抗体(MAB730、R&D Systems社)を、それぞれ最終濃度10μg/mlとなるようにCXCL14を含むケモタクシスバッファーに添加した。次に、C2C12細胞に対してはポアサイズ8μmの、THP−1細胞に対してはポアサイズ5μmのChemotaxicellミクロチャンバー(Kurabo社)を反応液上部に静置した。Forskolin刺激したC2C12細胞、又はForskolin刺激したTHP−1細胞を、ケモタクシスバッファーにて一度洗浄してウシ胎仔血清を除去した後、2×105個/200μLずつChemotaxicellミクロチャンバーに上層した。上記のようにセットした24ウェルプレートを、37℃で、6時間(C2C12細胞)又は2時間(THP−1細胞)培養した。反応終了後、ただちにミクロチャンバー上部の培養液を除去し、Diff−Quik(国際試薬社)を用いてミクロチャンバー下部に付着した細胞を固定・染色した。ミクロチャンバー上部に残存した細胞は綿棒を用いて除去した。ミクロチャンバーの膜を取り外しスライドガラスにマウントした後、光学顕微鏡(100倍)下でポア周囲に移動した細胞の数をカウントした。測定は各サンプルにつきn=4以上の検体を用い、StatView−J5.0(SAS Institute社)を用いて統計処理を行った。2.ウエスタンブロット解析 C2C12筋芽細胞株を、5%ウマ血清入りのDMEM培地にて4日間培養し、筋分化を誘導した。血清を除いたDMEM培地にて、37℃で16時間培養した後、筋細胞を100nMのマウスCXCL14(R&D Systems社)にて1時間処理し、さらに10nMインスリン(Sigma社)を添加して37℃で10分間刺激した。抗体による中和実験には、ヒツジ抗マウスCXCL14ポリクローナル抗体(AF730、R&D Systems社)を最終濃度10μg/mlとなるようにCXCL14を含む前処理用の培地に添加した。ネガティブコントロールとして、免疫していないヒツジの精製IgGを添加した培地を用いた。これらの細胞を溶解し、20μgのタンパク質混合物をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動にかけ、その後、抗Akt−pSer473抗体、及び抗Akt抗体(Cell signaling社)を用いてウエスタンブロット解析を行った。なお、Aktは、プロテインキナーゼB(PKB)とも呼ばれるセリン/スレオニンキナーゼであり、PI3キナーゼ経路で活性化され、インスリン代謝などの様々な現象に関与するものである。 ≪結果と考察≫ CXCL14の代表的な生物活性である走化性について、Chemotaxicellミクロチャンバーを用いたin vitroアッセイにて解析した。以前報告した通り(Nara N et al.,J.Biol.Chem.,vol.282,p.30794−30803,2007)、筋分化させたC2C12細胞はCXCL14に反応する。そこで、一般的な分化誘導試薬であるForskolinにてC2C12細胞を刺激した後に走化性試験にかけてみたところ、マウスCXCL14による細胞誘引が検出された(図1)。同様の活性は、ヒトCXCL14にも検出された(図1)。マウスCXCL14とヒトCXCL14とはポリペプチチドを構成する77アミノ酸残基のうち2残基しか異なっていないため(配列番号:1及び配列番号:2参照)、C2C12細胞に発現する受容体がヒトCXCL14と交叉反応したものと予想される。次に、マウスCXCL14に対する特異的抗体を走化性試験液に添加したところ、マウスCXCL14によるC2C12細胞の誘引がポリクローナル抗体AF730によって61%、モノクローナル抗体MAB730によって54%、それぞれ阻害された(図2)。次に、Forskolin刺激したTHP−1細胞を用いて、同様の走化性試験を行ったところ、ヒトCXCL14による細胞誘引が抗マウスCXCL14ポリクローナル抗体AF730の添加によって79%阻害された(図3)。以上の結果は、CXCL14の標的細胞として肥満性インスリン抵抗性の惹起に関与する2種類の細胞(骨格筋細胞と活性化マクロファージ)に対して、抗CXCL14特異的抗体の添加がCXCL14の生物活性を中和できることを示すものであった。特に、内蔵脂肪に蓄積した活性化マクロファージは、肥満性糖尿病の主要な悪化原因として知られているため、その走化性を抑えることができる抗CXCL14抗体は、抗糖尿病薬として利用できることが分かった。なお、抗マウスCXCL14モノクローナル抗体MAB730をTHP−1細胞のアッセイ系に添加した場合には、THP−1細胞のヒトCXCL14に対する走化性が逆に増強された(図4)。この現象のメカニズムはまだ不明だが、CXCL14に対する特異的モノクローナル抗体は、CXCL14の生物活性をネガティブにもポジティブにも制御できる可能性を示すものであった。 分化したC2C12筋細胞では、インスリン刺激によるAktキナーゼの第473番目のセリン残基のリン酸化(活性化状態)がCXCL14の前処理によって部分阻害されることが知られている(Nara N et al.,J.Biol.Chem.,vol.282,p.30794−30803,2007)。そこで、抗CXCL14抗体が、CXCL14によるインスリンシグナル阻害活性を中和できるかどうかを検討した。コントロール抗体存在下では、マウスCXCL14の前処理によってリン酸化Aktのバンドは薄くなったが、抗マウスCXCL14ポリクローナル抗体AF730の存在下では、リン酸化Aktのバンドは濃いままであった(図5)。この結果は、骨格筋細胞において、抗CXCL14特異的抗体の添加はCXCL14によるインスリンシグナルの阻害活性を中和できることを示すものであった。骨格筋は、インスリンによる血糖値調節を行う主要な組織である。肥満によって骨格筋のCXCL14発現量も増加するため、CXCL14によるインスリンシグナルの部分阻害も肥満による全身性のインスリン抵抗性に寄与しているものと考えられた。抗CXCL14抗体は、糖尿病発症に関連するCXCL14の第二の活性に対しても、有効性を持つものと推測された。 Forskolin刺激したC2C12細胞を用いた検討では、マウスCXCL14による細胞誘引は別種のケモカインCXCL12に対する応答と同様に、百日咳毒素感受性であった。従って、CXCL14受容体は3量体Gタンパク質結合性の7回膜貫通型タンパク質であると考えられるが、現時点まで、CXCL14受容体遺伝子はヒト及びマウスを含めてどの種においてもまだ単離同定されていない。抗CXCL14特異的抗体は、肥満によって過剰産生されたCXCL14によって惹起される前糖尿病状態を緩和するツールとして有用であるのみならず、未解明のままであるCXCL14の生理的機能や受容体構造を解明していく上でも役立つものと考えられた。 本発明によれば、BRAK(CXCL14)の機能を抑制又は阻害する化合物、特にBRAKを特異的に認識する抗体(好ましくはヒトモノクローナル抗体)を提供することができる。また本発明は、該抗体を産生するハイブリドーマ細胞、及び該抗体の製造法を提供することができる。さらに本発明は、上記化合物(特に抗BRAK抗体)の用途として、2型糖尿病及び肥満の診断薬、2型糖尿病及び肥満の予防・治療剤、白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進剤、インスリン抵抗性の改善剤、2型糖尿病及び肥満の予防・治療方法、白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進方法、インスリン抵抗性の改善方法などを提供することができる。 上記化合物(特に抗BRAK抗体)は、2型糖尿病や肥満のリスクの診断薬として利用できるとともに、2型糖尿病に対する新しい治療薬となり、またポテンシャルとして肥満軽減薬にもなる点で、極めて有用なものである。[配列表]配列番号:1若しくは配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチド又はその誘導体、あるいはそれらの部分ペプチドを認識する抗体。モノクローナル抗体である請求項1記載の抗体。ヒト型化抗体又はヒト抗体である請求項1記載の抗体。標識化された請求項1記載の抗体。白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進活性を有する請求項1記載の抗体。インスリン抵抗性の改善活性を有する請求項1記載の抗体。請求項1記載の抗体を産生するハイブリドーマ細胞。請求項7記載のハイブリドーマ細胞を生体内又は生体外で培養し、その体液又は培養物から請求項1記載の抗体を採取することを特徴とする、請求項1記載の抗体の製造法。請求項1記載の抗体を含有してなる診断薬。2型糖尿病及び/又は肥満の診断に用いる請求項9記載の診断薬。請求項1記載の抗体を含有してなる医薬。2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療剤である請求項11記載の医薬。白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進剤である請求項11記載の医薬。インスリン抵抗性の改善剤である請求項11記載の医薬。哺乳動物に対して、請求項1記載の抗体の有効量を投与することを特徴とする2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療方法。哺乳動物に対して、請求項1記載の抗体の有効量を投与することを特徴とする白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進方法。哺乳動物に対して、請求項1記載の抗体の有効量を投与することを特徴とするインスリン抵抗性の改善方法。2型糖尿病及び/又は肥満の診断薬を製造するための請求項1記載の抗体の使用。2型糖尿病及び/又は肥満の予防・治療剤を製造するための請求項1記載の抗体の使用。白色脂肪組織中のマクロファージ数の低減促進剤を製造するための請求項1記載の抗体の使用。インスリン抵抗性の改善剤を製造するための請求項1記載の抗体の使用。 BRAK(CXCL14)を認識する抗体及びその用途を提供する。 本発明の抗体は、配列番号:1若しくは配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するポリペプチド又はその誘導体、あるいはそれらの部分ペプチドを認識する抗体である。