生命科学関連特許情報

タイトル:再公表特許(A1)_三次元細胞培養担体およびそれを用いた細胞培養方法
出願番号:2008050286
年次:2010
IPC分類:C12M 3/00,C12M 1/00,C12N 5/00,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

神林 洋 津田 正信 佐藤 典明 三木 敬三郎 三谷 なな子 JP WO2008084857 20080717 JP2008050286 20080111 三次元細胞培養担体およびそれを用いた細胞培養方法 日本板硝子株式会社 000004008 株式会社バイオス医科学研究所 301000505 鎌田 耕一 100107641 間中 恵子 100143236 神林 洋 津田 正信 佐藤 典明 三木 敬三郎 三谷 なな子 JP 2007004691 20070112 C12M 3/00 20060101AFI20100409BHJP C12M 1/00 20060101ALI20100409BHJP C12N 5/00 20060101ALI20100409BHJP C12N 5/10 20060101ALI20100409BHJP JPC12M3/00 ZC12M1/00 CC12N5/00 DC12N5/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100506 2008553126 17 4B029 4B065 4B029AA21 4B029BB11 4B029CC05 4B029CC10 4B065AA87X 4B065AC20 4B065BC45 4B065CA60 本発明は、細胞の三次元的な立体培養に使用可能な三次元細胞培養担体と、それを用いた細胞培養方法とに関する。 培養されている細胞の状態(細胞の付着や増殖の様子)を光学顕微鏡によって観察できる細胞培養担体として、リン酸カルシウム系化合物によって形成された平板状の細胞培養担体が提案されている(特開2004−173502号公報参照)。この平板状の細胞培養担体は、一方の面に細胞を付着させて増殖させ、その反対側の面(他方の面)から細胞の状態を観察するように構成されている。 また、細胞を多層に、あるいは高密度に生育させることができる細胞培養担体として、炭素繊維を三次元空間内で絡まり合わせることによって作製された細胞培養担体が提案されている(特開2004−135668号公報参照)。さらに、多孔質ガラス等の無機多孔体を用いることによって、効率の良い細胞の培養と、容易な細胞観察とを可能とする細胞培養担体も開示されている(特開2006−141290号公報参照)。 また、特表2003−509021号公報には、水溶性ガラスのマトリクスを含む細胞培養増殖基質が開示されている。この細胞培養増殖基質は、例えば直径が20〜30μmのガラスファイバーや、平均直径が15μm〜6mmのガラス粒子等を用いて形成されている。 しかし、上記に示した従来の平板状の細胞培養担体では、平均厚さ1mmの場合の波長600nmの光に対する透過率が数%程度と低かった。したがって、細胞の状態を観察することが困難な場合もあった。また、この細胞培養担体は平板状であるため、生体内の条件を再現した三次元的な立体培養が困難であった。三次元的な細胞の培養を行うために単に厚みを増加させると、可視光透過率が低下して細胞の観察ができなくなり、細胞を確認するために細胞を担体から分離しなければならないという問題が生じていた。 また、炭素繊維を用いて形成された細胞培養担体は、細胞を三次元的に立体培養することは可能であったが、炭素繊維自体の可視光透過率が低いため、光学顕微鏡を用いて培養途中の細胞を詳細に観察することが困難であった。さらに、多孔質ガラスを利用した細胞培養担体の場合、形状によっては充分な光透過性を得ることが困難な場合もあり、さらなる高効率の細胞培養と容易な細胞観察とを同時に実現することが困難であった。 水溶性ガラスを用いて作製された上記の細胞培養増殖基質は、細胞の観察が可能な程度の可視光透過率を有する。しかし、直径が20〜30μmのガラスファイバーや、平均直径が15μm〜6mmのガラス粒子等では、生体内と環境が類似する三次元空間を実現することが困難であり、培養される細胞の形態および機能を生体内の細胞と同様に発現させることが困難であった。 本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたものであり、培養途中の細胞を光学顕微鏡等によって詳細に観察することが容易であり、且つ、生体内での細胞増殖と類似の状況での細胞培養が可能な、三次元細胞培養担体および細胞培養方法を提供することを目的とする。 本発明の三次元細胞培養担体は、細胞を培養するための三次元空間を備えた繊維構造体を含む三次元細胞培養担体であって、前記繊維構造体は、互いに接合された複数の繊維によって形成されており、前記繊維は、厚さ3mmに成形したときの可視光透過率が40%以上である材料によって形成されており、前記繊維のアスペクト比が1以上であり、前記繊維の繊維径が100μm以上700μm以下である。なお、本明細書において、可視光とは、波長380nm〜780nmの光のことである。また、アスペクト比は、(繊維長)/(繊維径)で求められる値である。 本発明の三次元細胞培養担体に用いられている繊維構造体は、高い可視光透過率を有する材料で形成された繊維によって構成されているので、培養途中の細胞を光学顕微鏡等によって詳細に観察することが可能である。また、本発明の三次元細胞培養担体は、複数の繊維が互いに接合された繊維構造体を用いて形成されているので、さまざまな形状、大きさおよび空隙率等を容易に実現できる。また、この繊維のアスペクト比は1以上であって、繊維径は100μm以上700μm以下であるので、細胞の培養に適した大きさの空隙を有する繊維構造体を容易に作製できる。したがって、生体内と環境が類似する三次元空間を実現できるので、培養される細胞の形態および機能を生体内の細胞と同様に発現させることが可能となる。また、繊維を用いて形成されているので、目的とされる形状(厚み等)に応じて繊維径や繊維長等を適宜選択し、光の散乱を充分に抑制できる、可視光に対して透明性の高い繊維構造体を実現できる。すなわち、本発明によれば、形状に限定されることなく、可視光に対して透明性の高い三次元細胞培養担体が実現できる。さらに、本発明の三次元細胞培養担体によれば、従来の三次元細胞培養担体と比較して培養された細胞を取り出しやすいという効果も得られる。すなわち、本発明の三次元細胞培養担体によれば、シャーレ等の2次元培養容器と同程度の取り出しやすさで細胞を回収することも可能となる。 以上のように、本発明の三次元細胞培養担体によれば、光学顕微鏡等による詳細な観察と、生体内での細胞増殖と類似の状況での細胞培養とが、同時に実現できる。 本発明の細胞培養方法は、細胞培養担体に細胞を担持させ、前記細胞培養担体に培養液を供給することによって前記細胞を増殖させる細胞培養方法であって、前記細胞培養担体が、上記した本発明の三次元細胞培養担体である。したがって、本発明の細胞培養方法によれば、生体内での細胞増殖と類似の状況で効率良く細胞培養ができ、且つ、光学顕微鏡で細胞を観察することも可能となる。本発明の細胞培養方法の一例における一工程を説明するための斜視図である。本発明の細胞培養方法の一例における一工程を説明するための斜視図である。本発明の細胞培養方法の一例における一工程を説明するための斜視図である。本発明の三次元細胞培養担体の実施例(サンプル2−5)で細胞を培養させた際の様子について、光学顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。本発明の三次元細胞培養担体の実施例(サンプル2−6)で細胞を培養させた際の様子について、光学顕微鏡を用いて観察した状態を示す図である。 以下、本発明の実施の形態について説明する。 <三次元細胞培養担体> 本発明の三次元細胞培養担体の実施の形態について説明する。 本実施の形態の三次元細胞培養担体は、繊維構造体を用いて形成されている。なお、本実施の形態では、例えば複数の繊維によって形成された繊維構造体のみからなる三次元細胞培養担体について説明するが、本発明の三次元細胞培養担体が、例えば、繊維構造体を構成する複数の繊維を互いに接合するための接着剤等を含んでいてもよい。また、繊維構造体にさらなる特性を付加するために、細胞の接着、増殖および分化を促進する蛋白質、ペプチド、アミノ酸、化学物質等をコートまたは結合させてもよい。特に限定されないが、例えば、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン、ポリリジン、ポリオルチニン、ポリエチレンイミン、抗体、リガンド、レセプター蛋白質、接着因子等が使用できる。 繊維構造体は、三次元空間(空隙)を備えた立体構造を有しており、互いに接合した複数の繊維によって形成されている。本実施の形態における繊維構造体に用いられる繊維についての詳細は後述するが、例えばガラス繊維や化学繊維が使用できる。例えばガラス繊維を用いる場合、ガラス繊維焼結体を繊維構造体として用いることができる。細胞増殖のための適度な三次元空間を確保するために、繊維構造体の空隙率は30%以上70%以下が好ましく、38%以上55%以下がより好ましい。なお、本明細書において、繊維構造体の空隙率とは、繊維構造体が占める体積に対する、当該繊維構造体が占める体積から繊維の体積を除いた体積の百分率のことである。すなわち、空隙率は、以下の式で求められる値である。 空隙率(%)=(VR−VG)×100/VR VR:繊維構造体の体積 VG:繊維の体積 また、本発明において、繊維構造体が占める体積(繊維構造体の体積)VRは、例えばコイン型であれば、半径×半径×円周率×厚みのように求めることができ、繊維の体積は繊維の密度と質量とによって求めることができる。 繊維構造体に用いられる繊維は、培養中の細胞観察が可能な程度に透明な三次元細胞培養担体を実現するために、可視光透過率が高い材料によって形成されていなければならない。そこで、この繊維は、厚さ3mmに成形したときの可視光透過率が40%以上である材料によって形成される。好ましくは、厚さ3mm(好ましくは厚さ5mm)に成形したときの可視光透過率が50%以上である材料(より好ましくは80%以上の材料)によって形成された繊維を用いることである。このような可視光透過率を満たす材料によって形成された繊維として、例えばガラス繊維や化学繊維(例えば、アクリル、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリスチレン等の繊維)が用いられ、特にガラス繊維が好適に用いられる。ガラス繊維を用いて繊維構造体を形成した場合、可視光に対して透明な三次元細胞培養担体を実現できると共に、より平滑で化学的に安定な表面状態を提供できるので、細胞の付着が容易となる。また、ガラス繊維は一方向に連続しているので、このようなガラス繊維の一方向連続性が細胞培養にとって好ましいと考えられる。 ガラス繊維は、その組成成分の含有率の違いによって複数種類存在するので、細胞増殖のための適度な環境を作り出すこと等を考慮して適宜選択することが望ましい。一般的に、細胞の培養は微アルカリ性であるpH7.4付近で行われるため、このような環境で適度な耐水性を有するCガラス組成のガラス繊維が好適に用いられる。なお、Eガラス組成やAガラス組成のガラス繊維も使用可能である。 本発明の三次元細胞培養担体に用いられる繊維は、アスペクト比((繊維長)/(繊維径))が1以上(好ましくは1〜10)である。このような繊維を用いることによって、適度な空隙を有する繊維構造体を作製できるので、細胞培養により適した三次元細胞培養担体を得ることができる。より細胞を培養しやすい大きさの空隙を有する繊維構造体を形成するために、アスペクト比が1.5以上の繊維を用いることが望ましい。 繊維構造体を構成している複数の繊維は、その繊維径が、100μm以上700μm以下の範囲内であり、250μm以上500μm以下(例えば300μm)であることが好ましい。繊維径が100μm以上の繊維を用いることによって、細胞の培養に適した大きさの空隙を有する繊維構造体を容易に作製でき、且つ、光の散乱を抑えることができるので、細胞の観察がより容易となる。繊維径が100μm未満の場合、繊維構造体としたときの繊維の曲率が大きくなるため、細胞が繊維に付着しにくくなる。さらに、繊維径が100μm未満の場合、適度な空隙率の確保が困難となり、細胞培養のための空間が不足するという問題も生じる。また、繊維径が700μmを超えると、繊維構造体中の空隙が大きくなりすぎることで、安定的な3次元での細胞の積み上がりが困難になってしまう。したがって、繊維径700μm以下の繊維を用いる。 また、繊維構造体を構成している複数の繊維は、その繊維長が、500μm〜50000μmであることが好ましく、500μm〜6000μmであることがより好ましく、500μm〜3000μmであることがさらに好ましい。言い換えれば、繊維構造体を構成している複数の繊維(繊維群)の繊維長分布が、500μm〜50000μmの範囲内に含まれることが好ましく、500μm〜6000μmの範囲内に含まれることがより好ましく、500μm〜3000μmの範囲内に含まれることがさらに好ましい。このような繊維長分布を有する繊維群を用いることによって、細胞の培養に適した空隙を有する繊維構造体を容易に作製できるので、細胞培養により適した三次元細胞培養担体を得ることができる。 例えば、本発明において用いられる繊維がガラス繊維である場合、所定の組成を有するガラスを熔融紡糸して所定の繊維径となるように作製されたガラス繊維を粗切断、粉砕および分級することによって、上記の繊維径、繊維長およびアスペクト比を実現できる。このように作製されたガラス繊維は、ほぼ円柱状の形状を有しており、その表面は滑らかである。 本発明の三次元細胞培養担体の形状は、特には限定されず、この担体を収容する培養器の形状に合わせて適宜決定できる。例えば、培養器となるウェル(凹部)が複数設けられた細胞培養用マイクロプレートを用いる場合は、三次元細胞培養担体の形状をウェルに収容可能なコイン型とすればよい。コイン型の寸法(外径)を変化させることによって、あらゆるサイズのウェル(例えば、一つのプレートに設けられているウェルの数が12個、24個、48個または96個となるように設定された各サイズのウェル)に収納できる。 本発明の三次元細胞培養担体は、ラジアルフロー型培養装置(例えば、エイブル株式会社製のラジアルフロー型リアクター等)に組み込む中空円筒形状とすることも可能である。この場合は、繊維構造体を培養装置のリアクター内に充填することによって、中空円筒形状の三次元細胞培養担体とできる。また、本発明の三次元細胞培養担体を、培養された細胞をより容易に取り出せるような形状とすることもできる。そのような形状は、例えば、繊維構造体を複数の部分に分割可能な構造とすることによって実現できる。具体的には、例えばラジアルフロー型培養装置に適用する場合、繊維によって形成された輪状のシートを複数枚重ねることによって繊維構造体が形成されていてもよい。 上記に説明したように、本発明の三次元細胞培養担体は、繊維構造体によって形成されているので、所定の形状に成形した状態で用いることもできるし、用いる装置内に充填して用いることもできる。したがって、従来の多孔質ガラスビーズからなる細胞培養担体(例えば、ドイツ国のショットグラスベック社製の「シラン(Siran)」)等のように、収納容器および充填作業が必ずしも必要でなく、取り扱いが容易である。また、充填率のバラツキも少ないため、細胞培養のバラツキも小さくできる。 以下に、本発明の三次元細胞培養担体の製造方法の一例について説明する。なお、ここではガラス繊維を用いてコイン型の三次元細胞培養担体を製造する方法の例を説明するが、本発明の三次元細胞培養担体の製造方法はこれに限定されない。 所定の組成を有するガラスを熔融紡糸して所定の繊維径となるように作製されたガラス繊維を粗切断および粉砕した後、所定の繊維長分布を有するガラス繊維に分級する。分級の方法は、特には限定されないが、例えば、JIS規定(JIS Z 8801)の試験用篩を用いた乾式振動分級法が用いられる。このようにして得られた所定の繊維径および繊維長を有する複数のガラス繊維を、所定の内径および長さを有するセラミックスチューブに詰め込む。この状態のまま、例えば650〜850℃の温度で1〜3時間焼成し、その後、冷却する。冷却後、炉から取り出したガラス繊維をセラミックスチューブごと所定の厚さにスライスし、セラミックスチューブ内からガラス繊維焼結体(繊維構造体)を取り出す。このような方法で、コイン型の三次元細胞培養担体を作製できる。なお、上述したように、ガラス繊維のガラス組成としては、例えばCガラス組成、Eガラス組成およびAガラス組成等を用いることができる。各組成の例は、以下の表1に示すとおりである。なお、表1に示す組成の割合は、質量%である。 <細胞培養方法> 本発明の細胞培養方法では、上記に説明した本発明の細胞培養担体に培養液を供給することによって、細胞を増殖させる。 本発明の細胞培養方法によって用いられる細胞は、特に限定されないが、例えば、線維芽細胞、軟骨細胞、(間葉系、造血系、胚)幹細胞、神経細胞、上皮細胞、骨芽細胞、内皮細胞、心筋細胞、筋芽細胞、膵臓細胞、肝実質細胞等の組織・臓器由来の細胞等、さらに、腫瘍化した動物由来の細胞、株化した細胞を含む動物、昆虫、植物等に由来する細胞を挙げることができる。また、これらを遺伝子組換えにより作製した細胞を挙げることができる。なお、本明細書における「細胞」には、蛋白合成能やDNA合成能等を有する無細胞系も包含される。 本発明の細胞培養方法には、例えば複数のウェルが設けられた細胞培養用マイクロプレートを用いてもよく、三次元細胞培養担体が収容されたラジアルフロー型バイオリアクターを用いてもよい。ラジアルフロー型バイオリアクターを用いる場合、細胞を大量に生産することもでき、また、培養された細胞からの代謝物を多量に取り出すこともできる。 本発明の細胞培養方法のさらに別の例として、遠心分離用のコニカルチューブを用いる例について説明する。上述したように、本発明の三次元細胞培養担体は、当該担体を収容する培養器の形状等に応じて、その形状を適宜変更することができる。そこで、本発明の三次元細胞培養担体を遠心分離用のコニカルチューブに収容可能な形状とすれば、遠心分離用のコニカルチューブ内で細胞を培養することができる。図1A〜図1Cを参照しながら、遠心分離用のコニカルチューブ内で細胞を培養する方法について説明する。 まず、図1Aに示すように、遠心分離用のコニカルチューブ1内に、本発明の三次元細胞培養担体2を配置する。この三次元細胞培養担体2はコイン型であり、コニカルチューブ1の内部に収容可能な寸法に形成されている。ここでは、HEPAフィルタ4付きのキャップ3が用いられている例を示している。次に、コニカルチューブ1内の三次元細胞培養担体2に細胞を播種して、培養液5中で細胞の培養を行う(図1B参照)。培養終了後、コニカルチューブ1に酵素(例えばトリプシン)を入れて、酵素によって三次元細胞培養担体2から細胞を剥離する。次に、遠心分離操作を行い、コニカルチューブ1の底に細胞の沈渣6を集める(図1C参照)。最後に、三次元細胞培養担体2と上清とを除去して、細胞の沈渣6を回収して細胞を得る。 従来は、別の容器で細胞を培養し、培養終了後、培養された細胞を遠心分離用のコニカルチューブに移して遠心分離する、という作業が必要であったため、移しかえの作業中に細菌汚染や細胞の取り違え等の問題が生じていた。これに対し、図1A〜図1Cを参照して説明した上記の方法は、細胞を培養し、その細胞を分離する作業を一つの容器内で行うことができるため、細菌汚染等の問題は生じない。 なお、本発明の細胞培養方法において用いる培養液は、培養する細胞に応じて適宜選択すればよいため、特には限定されない。 本発明の細胞培養方法によれば、三次元細胞培養が可能であるため、生体内に類似した状態で細胞を培養することができる。また、使用される三次元細胞培養担体は可視光に対して透明であるため、培養途中での細胞観察が容易に行える。 以下、実施例を用いて、本発明をさらに具体的に説明する。 (実施例1) [三次元細胞培養担体の作製方法] 表2に示すCガラス組成のガラスを熔融紡糸して繊維径300μmのガラス繊維を作製し、粗切断および粉砕した。その後、繊維長分布が500〜1500μmであるガラス繊維に分級した。具体的には、JIS規定の試験用篩を用いて乾式振動分級法にて分級し、目開き710μm篩(前段篩)を通過し、且つ、目開き300μm篩(後段篩)上に残ったガラス繊維を焼結体原料とした。このようにして得られたガラス繊維(焼結体原料)を、内径13mmおよび長さ50mmを有するセラミックスチューブに3g詰め込み、その状態のまま670℃で1時間焼成し、炉中で放冷した。冷却後、炉から取り出したガラス繊維をセラミックスチューブごとダイヤモンドカッターによって2〜3mmの厚さにスライスし、セラミックスチューブ内からガラス繊維焼結体(繊維構造体)を取り出した。このようにして、厚さ2〜3mm、直径12〜13mmのコイン型の三次元細胞培養担体を作製した。なお、本実施例で用いたCガラス組成のガラスは、厚さ3mmの時の可視光透過率が80%以上(例えば波長600nmの透過率が95%)であった。なお、本実施例における可視光透過率は、本実施例で用いたCガラス組成を厚さ3mmのガラスに成形し、このガラスについて分光光度計を用いて測定した。以下の実施例でも同様である。また、本実施例の三次元細胞培養担体の空隙率は、47%であった。 [細胞の培養方法] 以上のように作製した三次元細胞培養担体(滅菌済み)を、安全キャビネット(SANYO社製、「MHE−130AB3」)内で無菌的に24well plate(Becton Dickinson社製、「353047」)のウェル中に収容し、以下の手順で肝癌細胞の培養を行った。(1)本実施例で用いた細胞懸濁液は、10cmのtissue Culture dish(Becton Dickinson社製、「353003」)で培養した肝癌細胞を培地に懸濁したものである。37℃、95vol%の空気と5vol%の炭酸ガス(CO2)との混合ガス気流下で、80〜90%コンフルエント(培養表面飽和)まで肝癌細胞を培養した。培地を除き、PBS(−)で2回洗浄した。0.25%のTrypsin−EDTA(GIBCO社製、「25200−072」)2mLで細胞を剥離し、終濃度10%になるように、FBS(Fetal Bovine Serum)(Bio West社製、「S1820」)を添加したDMEM/F12培地(SIGMA社製、「D8900」)8mLで懸濁した。細胞懸濁液を冷却遠心機(TOMY社製、「EX−126」)で遠心し(4℃、1000rpm、2min)、上清を除いた。培地(DMEM/F12培地(SIGMA社製、「D8900」))を添加し、細胞数が2.0×106cells/mLとなるように希釈した。調製した細胞懸濁液を100μL/wellに播種した(2.0×105cells/well)。(2)CO2インキュベータ(SANYO社製、「MCO−17A1C」)に入れ、37℃、95vol%の空気と5vol%の炭酸ガス(CO2)との混合ガス気流下で1時間インキュベートした。(3)(1)で用いたものと同じ細胞懸濁液の培地を900μL添加した(合計播種量:2.0×105cells/mL/well)。(4)細胞培養を開始した。(5)24時間後、三次元細胞培養担体を新しいウェルに移動させた。(6)ウェル底に付着した細胞と、三次元細胞培養担体に付着した細胞とを区別した。(7)以後、48時間毎に培地(培養液)交換を繰り返し行い、最終的に168時間培養を行った。 以上の結果、本実施例の三次元細胞培養担体に付着した最終的な細胞数は、約5×105cellsであった。これは、通常(2次元)の24well plateで培養した場合(面積2cm2の細胞数約5.12×104cells)の約10倍の細胞数であった。 この結果から、本発明の三次元細胞培養担体を用いた三次元培養が行われることで、より生体に近い状態が作り出されていることが確認された。なお、ここでは、血球計算盤(エルマ販売株式会社製、「Neubauer line Haemocyto meter」)を用いて、1mm2あたりの細胞数をカウントした。1mm2当たりの液量が0.1mm3であることから、104を掛けて1mLあたりの細胞数を求めた。 培養された細胞を光学顕微鏡で確認したところ、細胞増殖の様子が鮮明であった。 (実施例2) 繊維径および繊維長を変化させた以外は、実施例1と同様の方法で、三次元細胞培養担体のサンプル2−1〜2−11を作製した。表3に示す篩(前段篩、後段篩)の組合せで分級を行い、前段篩を通過し、且つ、後段篩上に残ったガラス繊維を各サンプルの焼結体原料とした。また、得られたガラス繊維の繊維径および繊維長分布は、表4に示されている。 これらのサンプルを用いて、実施例1と同様の方法で細胞を培養した。なお、サンプル2−4は実施例1の三次元細胞培養担体と同じである。これらのサンプルについて、最終的に得られた細胞数を、ペンタックス社製の細胞培養担体(CELLYARD(TM)HA,scaffold,φ13mm×2mm(製品番号なし))を用いた場合の細胞数と比較して評価した。表3に評価結果を示す。なお、評価結果におけるA、B、C、Dの定義は以下のとおりである。A:ペンタックス社製の細胞培養担体に対し、2.0倍を超える培養細胞数B:ペンタックス社製の細胞培養担体に対し、1.5倍を超え2.0倍以下の培養細胞数C:ペンタックス社製の細胞培養担体に対し、1.0倍を超え1.5倍以下の培養細胞数D:ペンタックス社製の細胞培養担体との対比で、細胞培養数が同等または劣る 以上の結果から、空隙率が30%以上であり、繊維のアスペクト比が1.5以上であるサンプル2−2〜2−11は、従来の細胞培養担体(ペンタックス社製の細胞培養担体)と比較して培養細胞数が多いことが確認された。また、サンプル2−1〜2−11の全てについて、光学顕微鏡による細胞の詳細な観察が可能であった。図2は、サンプル2−5を用いて細胞が培養された様子を示す光学顕微鏡写真であり、図3は、サンプル2−6を用いて細胞が培養された様子を示す光学顕微鏡写真である。これらの顕微鏡写真によれば、本発明の三次元細胞培養担体によれば、光学顕微鏡を用いて細胞の増殖の様子を充分に観察できることがわかる。 (実施例3) 表5に示すEガラス組成のガラス繊維を用い、さらに繊維径および繊維長を変化させた以外は、実施例1と同様の方法で三次元細胞培養担体のサンプル3−1〜3−4を作製し、実施例1と同様の方法で細胞を培養した。これらのサンプルについて、実施例2と同様の方法で評価した結果を表6に示す。なお、本実施例で用いたEガラス組成のガラスは、厚さ3mmの時の可視光透過率が50%以上(例えば波長600nmの透過率が60%)であった。 サンプル3−1〜3−4の全てが、従来の細胞培養担体(ペンタックス社製の細胞培養担体)と比較して培養細胞数が多いことが確認された。なお、サンプル3−1〜3−4の全てについて、光学顕微鏡による細胞の詳細な観察が可能であった。 (実施例4) 表7に示すAガラス組成のガラス繊維を用い、さらに繊維径および繊維長を変化させた以外は、実施例1と同様の方法で三次元細胞培養担体のサンプル4−1〜4−4を作製し、実施例1と同様の方法で細胞を培養した。これらのサンプルについて、実施例2と同様の方法で評価した結果を表8に示す。なお、本実施例で用いたAガラス組成のガラスは、厚さ3mmの時の可視光透過率が60%以上(例えば波長600nmの透過率がが75%)であった。 サンプル4−1〜4−4の全てが、従来の細胞培養担体(ペンタックス社製の細胞培養担体)と比較して培養細胞数が多いことが確認された。なお、サンプル4−1〜4−4の全てについて、光学顕微鏡による細胞の詳細な観察が可能であった。 本発明の三次元細胞培養担体および細胞培養方法によれば、光学顕微鏡等によって培養途中の細胞の形状や増殖の様子を容易に観察でき、さらに細胞の形態および機能を生体内の細胞と同様に発現させることができる。したがって、本発明は、医薬品の製造および食品はもちろんのこと、生体組織の培養を含めた細胞培養が必要とされる全ての分野での研究開発および商業生産のプロセスに適用できる。 細胞を培養するための三次元空間を備えた繊維構造体を含む三次元細胞培養担体であって、 前記繊維構造体は、互いに接合された複数の繊維によって形成されており、 前記繊維は、厚さ3mmに成形したときの可視光透過率が40%以上である材料によって形成されており、前記繊維のアスペクト比が1以上であり、前記繊維の繊維径が100μm以上700μm以下である、三次元細胞培養担体。 前記繊維は、厚さ3mmに成形したときの可視光透過率が50%以上である材料によって形成されている、請求項1に記載の三次元細胞培養担体。 前記繊維の繊維長が、500μm以上50000μm以下である、請求項1に記載の三次元細胞培養担体。 前記繊維構造体の空隙率が、30%以上70%以下である、請求項1に記載の三次元細胞培養担体。 前記繊維が、ガラス繊維である、請求項1に記載の三次元細胞培養担体。 前記繊維構造体が、ガラス繊維焼結体である、請求項5に記載の三次元細胞培養担体。 前記繊維構造体が、複数の部分に分割可能である、請求項1に記載の三次元細胞培養担体。 細胞培養担体に細胞を担持させ、前記細胞培養担体に培養液を供給することによって前記細胞を増殖させる細胞培養方法であって、 前記細胞培養担体が、請求項1に記載の三次元細胞培養担体である、細胞培養方法。 本発明の三次元細胞培養担体は、細胞を培養するための三次元空間を備えた繊維構造体を含んでいる。繊維構造体は、互いに絡まり合った複数の繊維によって形成されている。繊維構造体に用いられる繊維は、厚さ3mmに成形したときの可視光透過率が40%以上(好ましくは50%以上)である材料によって形成されている。このような繊維の一例として、例えばガラス繊維が挙げられる。また、この繊維のアスペクト比は1以上であり、繊維径は100μm以上700μm以下である。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る