生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法
出願番号:2008013555
年次:2009
IPC分類:C07C 2/82,C07C 15/18


特許情報キャッシュ

梶田 浩史 加藤 佳久 JP 2009173580 公開特許公報(A) 20090806 2008013555 20080124 2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法 日油株式会社 000004341 恩田 博宣 100068755 恩田 誠 100105957 梶田 浩史 加藤 佳久 C07C 2/82 20060101AFI20090710BHJP C07C 15/18 20060101ALI20090710BHJP JPC07C2/82C07C15/18 5 OL 8 4H006 4H006AA02 4H006AC23 4H006BA93 4H006BB11 4H006BC10 4H006BC19 本発明は、例えば架橋剤、高分子修飾剤、難燃助剤等として有用な2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法に関するものである。 従来、クメン及び有機過酸化物を出発原料とし、有機過酸化物が熱分解する条件で反応させることにより2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが製造できることは知られている。すなわち、有機過酸化物の熱分解により有機過酸化物のラジカルが生成し、そのラジカルがクメン中の第3級水素を引き抜くことによりクミルラジカルが生成し、生成したクミルラジカルの2分子がカップリング反応して2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンが生成する。 このような方法の1つとして、有機過酸化物にジアシルパーオキサイドを使用する方法が古くから知られている。しかしながら、ジアシルパーオキサイドの熱分解により生じたラジカルはアシルラジカル構造をとり、水素引き抜き力が弱いため、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率が著しく低くなるという欠点があった。そのような欠点を改良するために、近年では有機過酸化物としてジt−ブチルパーオキサイドや1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサンを使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。欧州特許第01190720号公報(第7頁及び第8頁) しかしながら、特許文献1に記載されている方法では、大量のクメン中での製法であり、触媒あたりの収率が開示されているが、クメンあたりの収率が不十分であった。さらに、ジt−ブチルパーオキサイドの揮発性が高いため、生成してくる低沸分と一緒にこの有機過酸化物(触媒)が反応系外に留出するという問題や、熱分解温度が高いため反応温度を高く設定せざるを得ないために原料のクメン(沸点:152℃)が反応系内から留出してしまうという問題があった。さらに、反応生成物中に含まれる有機過酸化物に由来する希釈溶剤の混入や副生成物が多いため、反応生成物の純度が低い上に、精製が困難であるという問題があった。 そこで、本発明の目的とするところは、収率が高く、かつ純度が高い2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法を提供することにある。 第1の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、クメン及び有機過酸化物を出発原料とし、有機過酸化物の熱分解に基づいて反応させて2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを製造する方法において、前記有機過酸化物がパーオキシモノカーボネートであることを特徴とする。 第2の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、第1の発明において、前記パーオキシモノカーボネートは、t−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネート(但し、アルキル基の炭素数は3〜8)であることを特徴とする。 第3の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、第1又は第2の発明において、前記パーオキシモノカーボネートは、1時間半減期温度が105〜125℃のものであることを特徴とする。 第4の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、第2又は第3の発明において、前記パーオキシモノカーボネートはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートであることを特徴とする。 第5の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、第1から第4のいずれか1項の発明において、前記有機過酸化物を熱分解させる温度は125〜145℃であることを特徴とする。 本発明によれば、次のような効果を発揮することができる。 第1の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、クメン及び有機過酸化物を出発原料とし、有機過酸化物の熱分解に基づいて反応させて2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを製造する方法において、前記有機過酸化物がパーオキシモノカーボネートである。係るパーオキシモノカーボネートは、従来のジt−ブチルパーオキサイドに比べて熱分解温度が低いため反応温度を低く設定することができ、原料であるクメンの留出を抑えることができると共に、反応生成物であるt−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン等を留出させて反応を促進させることができる。さらに、パーオキシモノカーボネートは、従来の1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサンと比較してアルキルラジカルなどの生成が少ないことから、副反応を抑え、副生成物の生成を抑制することができる。従って、本発明の製造方法によれば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率を高め、かつ純度を高めることができる。 第2の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、パーオキシモノカーボネートは、t−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネート(但し、アルキル基の炭素数は3〜8)である。このため、係るt−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネートは熱分解温度が適切であり、反応が円滑に進行し、第1の発明の効果を向上させることができる。 第3の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、パーオキシモノカーボネートは1時間半減期温度が105〜125℃のものである。従って、この1時間半減期温度に基づいて反応温度を適切に設定することができ、第1又は第2の発明の効果を高めることができる。 第4の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、パーオキシモノカーボネートはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートである。このt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートは熱分解温度が最も適切であるため、第2又は第3の発明の効果を有効に発揮させることができる。 第5の発明の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、有機過酸化物を熱分解させる温度は125〜145℃である。従って、原料であるクメンの沸点(152℃)より低い温度で反応を行うことができ、クメンの留出を抑制して反応効率を高めることができ、第1から第4のいずれかの発明の効果を向上させることができる。 以下、本発明の最良と思われる実施形態について詳細に説明する。〔2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法〕 本実施形態の1,2−ジフェニルエタンの製造方法は、クメン及び有機過酸化物を出発原料とし、有機過酸化物の熱分解に基づいて反応させて2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを製造する方法であり、前記有機過酸化物はパーオキシモノカーボネートである。すなわち、パーオキシモノカーボネートが熱分解してラジカルが生成し、生成したラジカルがクメンの第3級水素を引き抜いてクミルラジカルを生成し、得られたクミルラジカルがカップリング反応することにより、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを製造することができる。(パーオキシモノカーボネート) 前記パーオキシモノカーボネートは、クメンの第3級水素を引き抜いてクミルラジカルを生成させ得るものであり、特に制限されない。該パーオキシモノカーボネートとしては、例えばt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度118℃)、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度115℃)、t−オクチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(1時間半減期温度119℃)、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−オクチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、1,6−ビス(t−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン(1時間半減期温度115℃)、ジエチレングリコール−ビス(t−ブチルパーオキシカーボネート)(1時間半減期温度118℃)等が挙げられる。 これらのパーオキシモノカーボネートのうち、t−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネート(但し、アルキル基の炭素数は3〜8)は熱分解温度(1時間半減期温度)がクメンの沸点(152℃)より30℃余り低く適切であり、前記反応を円滑に進行させることができる点から好ましい。このt−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネートのうち、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートは熱分解温度が最も適切で、副生成物を留出(留去)させることができ、主生成物である2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率を高めることができる点から最も好ましい。 また、パーオキシモノカーボネートは1時間半減期温度が105〜125℃のものが、その1時間半減期温度に基づいて反応温度を適切に設定することができることから好ましく、110〜120℃のものがより好ましい。1時間半減期温度が105℃より低い場合には、反応温度を低く設定すると生成低沸分が留去されないため反応の進行が遅れたり、反応温度を高く設定すると熱分解によって過剰のラジカルが生成して副反応が顕著になったりして好ましくない。一方、1時間半減期温度が125℃より高い場合には、反応温度を高く設定する必要があり、原料のクメンが留出し、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率が低下して好ましくない。 パーオキシモノカーボネートを熱分解させる温度(反応温度)は、原料であるクメンの沸点(152℃)より低い温度で反応を行うことができ、クメンの留出を抑制して反応効率を高めることができる点から125〜145℃であることが好ましい。この温度が125℃未満の場合、パーオキシモノカーボネートの熱分解によるラジカルの発生が不足し、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率低下を招いて好ましくない。その一方、145℃を超える場合、副反応が増加したり、原料のクメンが留出したりして好ましくない。 パーオキシモノカーボネートの使用量は、クメン1モル(mol)に対して通常0.1〜1.0モル、好ましくは0.3〜0.7モルである。この使用量が0.1モル未満の場合には、釜効率が低下し、反応後に大量のクメンが反応液中に残り、再沈法で精製する場合には、再沈溶媒が良溶媒となるため2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの回収率が低下する。その一方、使用量が1.0モルを越える場合には、熱分解により生じるアルコキシラジカルが自己開裂や不均化等により失活し、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率が低下する傾向にある。〔反応温度〕 2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを製造する際における反応温度について説明する。この反応温度は、パーオキシモノカーボネートの1時間半減期温度から1時間半減期温度+30℃までの範囲であることが好ましい。例えば、パーオキシモノカーボネートがt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートである場合には、その1時間半減期温度が118℃であることから、反応温度は118℃〜148℃であることが好ましく、125℃〜145℃であることがさらに好ましい。反応温度が1時間半減期温度よりも低い場合、パーオキシモノカーボネートの熱分解によるラジカルの発生量が少なくなり、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率が低下して好ましくない。一方、1時間半減期温度+30℃を超える場合、副反応が増加したり、原料のクメンが留出したりして2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率及び純度が低下し好ましくない。(反応方法) 2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを製造する際には、例えば反応温度まで加熱したクメンに、パーオキシモノカーボネートを好ましくは30秒〜30分かけて滴下する。このパーオキシモノカーボネートの滴下は、30分以上かけてゆっくり行うこともできるが、製造に要する時間が長くなる。また、一部のクメンでパーオキシモノカーボネートを希釈し、残りのクメン中に前記希釈したパーオキシモノカーボネートを滴下する方法を採用することにより、滴下時の取扱性を高めることができるため好ましい。 この反応は、まずパーオキシモノカーボネートが熱分解してラジカル(ブトキシラジカル及びイソプロポキシカーボネートラジカル)を生成する。これらのラジカルは、クメンの第3級水素の引き抜き能が高く、クミルラジカルを容易に生成する。続いて、生成したラジカルが原料であるクメンの特に第3級水素を引き抜くことによりクミルラジカルを生成する。次いで、得られたクミルラジカル同士がカップリング反応を起こすことにより、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン、t−ブチルアルコール(沸点82.5℃)、イソプロピルアルコール(沸点82.4℃)、アセトン(沸点56.3℃)及び二酸化炭素等を生成する。この場合、反応温度を例えば125〜145℃に設定することにより、主生成物である2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンに対して、副生成物であるt−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン及び二酸化炭素等が反応温度より低い沸点であることから、副生成物を留出させながら、反応を進行させることができる。(精製方法) 前記反応で得られた2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの反応液を60〜80℃程度に冷却し、メタノ−ルを再沈(再沈殿)溶媒として再結晶化を行うことが好ましい。再沈溶媒としては、メタノール以外にエタノール、2−プロパノール、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、トルエン、キシレン、クメン、イソパラフィン、鉱油等を用いることができる。これらの再沈溶媒のうち、メタノールが最も貧溶媒となり好ましい。また、これら再沈溶媒の混合物や水との相溶性があるものは、水希釈溶媒を使用することもできる。 また、反応後に原料であるクメンを含む低沸分(低沸点成分)を減圧留去し、溶融した2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを得た後、60〜80℃程度に冷却、固化し、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを得る方法もある。この場合、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの融点が約110℃であることから、直接冷却して結晶化が行われる。この方法では、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン中の不純物がそのまま残存するため、再沈法と比較して2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの純度が低下する。 結晶化した2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを、例えば濾紙上に広げて常温で放置することにより乾燥させることができる。揮発性が低い再沈溶媒を使用する場合には、棚段乾燥機や真空乾燥機を使用して乾燥することもできる。〔実施形態の作用、効果のまとめ〕 ・ 本実施形態の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法では、有機過酸化物がパーオキシモノカーボネートに特定されている。係るパーオキシモノカーボネートは、従来のジt−ブチルパーオキサイドに比べて熱分解温度が低いため反応温度を低く設定することができ、原料であるクメンの留出を抑えることができると共に、反応生成物であるt−ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン等を留出させて反応を促進させることができる。さらに、パーオキシモノカーボネートは、従来の1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサンから生成するアルキルラジカルの生成量が少ないことから、副反応を抑え、副生成物の生成を抑制することができる。従って、本発明の製造方法によれば、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率を高め、かつ純度を高めることができる。よって、得られる2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを架橋剤、高分子修飾剤、難燃助剤等として好適に使用することができる。 ・ 前記パーオキシモノカーボネートがt−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネート(但し、アルキル基の炭素数は3〜8)であることにより、係るt−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネートは熱分解温度が適切であり、反応を円滑に進行させることができる。 ・ パーオキシモノカーボネートは1時間半減期温度が105〜125℃のものであることにより、この1時間半減期温度に基づいて反応温度を適切に設定することができる。 ・ パーオキシモノカーボネートはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートであることにより、このt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートは熱分解温度が最も適切であるため、上記の効果を有効に発揮させることができる。 ・ パーオキシモノカーボネートを熱分解させる温度は125〜145℃であることにより、原料であるクメンの沸点(152℃)より低い温度で反応を行うことができ、クメンの留出を抑制して反応効率を高めることができる。 以下、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態をさらに具体的に説明するが、本発明はそれら実施例の範囲に限定されるものではない。(実施例1) 反応釜(反応器)中で140℃に保持されたクメン(184g、1.5モル)中に98%のt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度:118℃)90g(0.5モル、仕込みモル比:クメン/有機過酸化物=3/1、クメンに対して48質量%)を3時間をかけて撹拌しながら滴下し、反応を行った。その後、140℃で2時間撹拌して熟成反応を行った。この場合、滴下反応中及び熟成反応中のいずれにおいても、有機過酸化物の分解物等の低沸分は反応系外に留去しながら反応を行った。そして、粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン177.9g(収率:66.0%、純度:44.2質量%)を得た。 得られた粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンについて、メタノールを再沈溶媒として結晶化させた後、濾過及び乾燥を行って精製した。その結果、精製後に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン74.1g(収率:58.2%、純度:94質量%)を得た。(実施例2) 反応釜中で140℃に保持されたクメン(184g、1.5モル)中に95%のt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート(1時間半減期温度:119℃)130g(0.5モル、仕込みモル比:クメン/有機過酸化物=3/1、クメンに対して67質量%)を3時間をかけて撹拌しながら滴下し、反応を行った。その後、140℃で2時間撹拌して熟成反応を行った。この場合、滴下反応中及び熟成反応中のいずれにおいても、有機過酸化物の分解物等の低沸分は反応系外に留去しながら反応を行った。そして、粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン218.4g(収率:62.5%、純度:34.1質量%)を得た。 得られた粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンについて、メタノールを再沈溶媒として結晶化させた後、濾過及び乾燥を行って精製した。その結果、精製後に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン71.2g(収率:55.0%、純度:92質量%)を得た。(比較例1) 反応釜中で150℃に保持されたクメン(184g、1.5モル)中に98%のジt−ブチルパーオキサイド(1時間半減期温度:144℃)74g(0.5モル、仕込みモル比:クメン/有機過酸化物=3/1)を4時間をかけて撹拌しながら滴下し、反応を行った。その後、150℃で4時間撹拌をして熟成反応を行った。この場合、滴下反応中及び熟成反応中のいずれにおいても、有機過酸化物の分解物等の低沸分は反応系外に留去しながら反応を行った。そして、粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン186g(収率:60.4%、純度:38.7質量%)を得た。 得られた粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンについて、メタノールを再沈溶媒として結晶化させた後、濾過及び乾燥を行って精製した。その結果、精製後に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン59.2g(収率:42.8%、純度:86質量%)を得た。なお、副生成物として、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの異性体やメチル基が付加した化合物などが生成したものと考えられる。(比較例2) 反応釜中で133℃に保持されたクメン(184g、1.5モル)中に純度80%の1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサン(1時間半減期温度:111℃、希釈溶剤はイソパラフィン)163g(0.5モル、仕込みモル比:クメン/有機過酸化物=3/1)を3時間をかけて撹拌しながら滴下し、反応を行った。その後、133℃で2時間撹拌をして熟成反応を行った。この場合、滴下反応中及び熟成反応中のいずれにおいても、有機過酸化物の分解物等の低沸分は反応系外に留去しながら反応を行った。そして、粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン265.8g(収率:56.0%、純度:25.1質量%、有機過酸化物の希釈溶剤が混入)を得た。 得られた粗の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンについて、メタノールを再沈溶媒として結晶化させた後、濾過及び乾燥を行って精製した。その結果、精製後に2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン74.3g(収率:37.4%、純度:60質量%)を得た。収率及び純度が低いのは、水素引き抜き能の高いアルコキシラジカルのほかに、多くのアルキルラジカルが生じ、副生成物が多量に生成したためと考えられる。 以上のように、実施例1及び2の結果から、パーオキシモノカーボネートとしてt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート又はt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネートを使用した場合、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの収率が高く、かつ純度も高くなることが明らかになった。 一方、従来の有機過酸化物である、ジt−ブチルパーオキサイドを使用した比較例1や1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−シクロヘキサンを使用した比較例2では、クメンあたりの収率が低い上に、純度も低いことがわかった。ちなみに、ジt−ブチルパーオキサイドを使用したときの反応温度は150℃に設定したが、反応温度をこれ以上に上昇させるとさらに原料であるクメン(沸点152℃)やジt−ブチルパーオキサイド(沸点111℃)が反応系外に多量に留出することとなり、収率が一層低下する。 なお、前記実施形態を次のように変更して具体化することも可能である。 ・ 前記パーオキシモノカーボネートとして、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネート、t−アミルパーオキシアリルモノカーボネート、t−オクチルパーオキシアリルモノカーボネート、クミルーパーオキシアリルモノカーボネート、t−ヘキシルパーオキシアリルモノカーボネート等を用いることもできる。 ・ 前記パーオキシモノカーボネートとして、熱分解温度(1時間半減期温度)の異なる複数の化合物を適宜選択して使用することもできる。 さらに、前記実施形態より把握される技術的思想について以下に記載する。 ・ 前記反応は、パーオキシモノカーボネートが熱分解してラジカルを生成し、該ラジカルがクメンの第3級水素を引き抜いてクミルラジカルを生成し、該クミルラジカルがカップリング反応するものであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法。このように構成した場合、各反応が順に起って2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを効率良く得ることができ、請求項1から請求項5のいずれかに係る発明の効果を向上させることができる。 ・ 前記有機過酸化物を熱分解させる温度は、パーオキシモノカーボネートの1時間半減期温度から1時間半減期温度+30℃までの範囲であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法。このように構成した場合、請求項1から請求項4のいずれかに係る発明の効果に加え、有機過酸化物を熱分解させる温度をパーオキシモノカーボネートの1時間半減期温度に基づいて適切に設定することができる。クメン及び有機過酸化物を出発原料とし、有機過酸化物の熱分解に基づいて反応させて2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンを製造する方法において、 前記有機過酸化物がパーオキシモノカーボネートであることを特徴とする2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法。前記パーオキシモノカーボネートは、t−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネート(但し、アルキル基の炭素数は3〜8)であることを特徴とする請求項1に記載の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法。前記パーオキシモノカーボネートは、1時間半減期温度が105〜125℃のものであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法。前記パーオキシモノカーボネートはt−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートであることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法。前記有機過酸化物を熱分解させる温度は125〜145℃であることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法。 【課題】、収率が高く、かつ純度が高い2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法を提供する。【解決手段】2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタンの製造方法は、クメン及び有機過酸化物を出発原料とし、有機過酸化物の熱分解に基づいて反応させることによって行われる。この場合、有機過酸化物としてパーオキシモノカーボネートを用いる。パーオキシモノカーボネートとしては、t−ブチルパーオキシアルキルモノカーボネート(但し、アルキル基の炭素数は3〜8)が好ましく、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネートが最も好ましい。また、パーオキシモノカーボネートとしては1時間半減期温度が105〜125℃のものが好ましく、パーオキシモノカーボネートを熱分解させる温度は125〜145℃であることが好ましい。【選択図】なし


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る