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タイトル:再公表特許(A1)_配糖体アグリコンの製造方法
出願番号:2008001525
年次:2010
IPC分類:C07D 309/32,C07D 311/36,C07D 311/40,C07J 63/00,C07J 75/00


特許情報キャッシュ

磯部 洋祐 加茂 修一 佐藤 俊郎 吉田 弘之 JP WO2008155890 20081224 JP2008001525 20080613 配糖体アグリコンの製造方法 株式会社J−オイルミルズ 302042678 公立大学法人大阪府立大学 505127721 中嶋 伸介 100106448 鈴木 征四郎 100080252 磯部 洋祐 加茂 修一 佐藤 俊郎 吉田 弘之 JP 2007164018 20070621 C07D 309/32 20060101AFI20100730BHJP C07D 311/36 20060101ALI20100730BHJP C07D 311/40 20060101ALI20100730BHJP C07J 63/00 20060101ALI20100730BHJP C07J 75/00 20060101ALI20100730BHJP JPC07D309/32C07D311/36C07D311/40C07J63/00C07J75/00 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,NO,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100826 2009520302 26 4C062 4C091 4C062CC25 4C062EE63 4C091AA06 4C091BB02 4C091CC01 4C091DD01 4C091EE04 4C091FF02 4C091FF06 4C091GG03 4C091GG05 4C091HH04 4C091JJ03 4C091KK01 4C091LL03 4C091LL06 4C091MM01 4C091NN01 4C091PA02 4C091PA05 4C091PB01 4C091QQ05 4C091QQ15 4C091RR13 本発明は、配糖体から糖質残基を除いて配糖体アグリコンを製造する方法に関し、より詳細には、酸触媒や有機溶媒を使用せずに、配糖体からアグリコンを高効率かつ安価に製造する方法に関する。 多くの生理活性物質は、天然には、配糖体、すなわち、非糖部からなる母体化合物(以下、アグリコンという)に糖質残基が結合した構造をとることが多い。糖質残基の存在は、主に、配糖体の無毒化、安定化や親水化のためといわれている。したがって、配糖体の医薬効果、抗酸化性、抗ガン性といった生理活性は、通常、アグリコン部位に存在する。 一般に水溶性である配糖体は、経口投与されると、通常、腸内細菌や消化酵素によって糖質残基が脱離し、アグリコンとなって腸管に吸収されやすくなる。最初からアグリコンの形態で投与されるなら、腸管吸収率や血中濃度の向上が期待される。 天然の配糖体からアグリコンを抽出する方法として、従来、グリコシダ−ゼなどを用いた酵素反応(特許文献1および2)、酸加水分解法(特許文献3)が知られている。また、特許文献4では、前記酵素反応や酸加水分解法で遊離したアグリコンを亜臨界または超臨界状態の液体中へ抽出する方法が記載されている。特開2006−081440特開2005−224162特開平09−104693特開昭63−33341 前記グリコシダーゼによる酵素反応を工業的に行おうとすると、設備費や製造コストが高い、反応に時間を要する、抽出やpH調整、酵素の除去などの手間がかかる、アグリコン回収率が低いといった問題が生じる。回収率に関して、特許文献2では、イソフラボン配糖体からイソフラボンアグリコンへの変換率は94%までであり、アグリコン純品が得られていない。さらには、上記酵素反応は、食品とした場合の風味の劣化、臭気の発生などの問題もある。 また、酸加水分解法に使用される塩酸、硫酸などの強酸は、設備の腐食の原因となる。また、配糖体やアグリコンが疎水性であり、加水分解反応は水を嫌うため、酸加水分解法は有機溶媒中で行われる必要がある。しかし、強酸や有機溶媒などの薬品の使用は、得られるアグリコンを食品とする場合に消費者にとって好ましくないとともに、製造工程から生じる排出物や廃棄物は環境上も好ましくない。また、酸加水分解法は、副生物を生じ易く、効率的でない。 そこで、本発明の目的は、上記強酸や有機溶媒を使用しない、人および環境に優しいアグリコンの製造方法を提供することにある。しかも、配糖体からアグリコンを高効率かつ安価に製造する方法を提供することである。 本発明者らは、上記課題を鋭意検討した結果、高温・高圧水を用いれば、従来のような酸や有機溶媒を使用しなくても配糖体アグリコンを高効率に製造できることを見出した。 本発明は、配糖体を高温・高圧水と接触させることを特徴とする、アグリコンの製造方法を提供する。本明細書において、高温・高圧水とは、水の臨界点(374℃、22.1MPa)よりも低い温度、かつその温度の飽和蒸気圧以上の圧力を有する水を意味する。 本発明は、高温・高圧水が有する以下の特性:(1)水の誘電率が下がって、有機溶媒と同様の性質を呈し、配糖体やアグリコンを溶解すること、および(2)水のイオン積が増すと共に、高温下で、より増強された酸触媒と同等の機能を持つこと、を利用することにより、配糖体の糖質残基のみを加水分解してアグリコンを遊離させるものである。なお、上記特許文献4には亜臨界状態の液体を使用することが記載されているものの、これは遊離したアグリコンを抽出するためだけにあり、本発明のアグリコンの製造方法とは相違する。 超臨界水を用いた水熱反応では、ほとんどの有機化合物が分解してしまうが、本発明の製造方法では、高温・高圧水の条件を適当に調整することによって、糖質残基だけを効率的に除去し、アグリコンをそのままの状態で得ることができる。 本発明はまた、上記製造方法により得られる、アグリコンに関する純度が95〜100%の配糖体アグリコンを提供する。ここで、「アグリコンに関する純度」とは、遊離したアグリコンと未反応の配糖体中のアグリコンの総重量に対する前記アグリコンの重量割合を意味する。 本発明の製造方法は、反応成分は試料と水のみであり、従来の方法のような有機溶媒、酸触媒、酵素などを使用しなくてよい。したがって、残留触媒および残留酵素の洗浄除去や、酸触媒のpH調整の必要もない。さらに、本発明の製造方法は、酵素反応に比べて、アグリコンへの転換率が高い点でも有利である。さらに、本発明の製造方法は、配糖体の種類によっては、処理後、高温・高圧水を通常の水に戻した時点で、水に不溶のアグリコンが水層に沈殿するため、アグリコンが水から容易に分離される。したがって、本発明の製造方法では、配糖体残渣とアグリコンとの分別が従来の方法と比べて非常に簡便となる。 本発明の製造方法のアグリコン転換率が高いため、本発明の製造方法により得られるアグリコンは、従来技術で得られるアグリコンと比べて、アグリコンの純度が向上している。すなわち、本発明によれば、高純度のアグリコンが提供される。本発明に従う配糖体アグリコンの製造方法を実施するための連続式反応系の概略を示す図である。本発明に従う配糖体アグリコンの製造方法を実施するためのバッチ式反応装置の概略を示す図である。実施例1〜6で用いた大豆サポニン配糖体のクロマトグラムである。ここで、X軸は溶出時間(分)を示し、Y軸は吸光度(相対値)を示す。実施例1〜6で得られた大豆サポニンアグリコンのクロマトグラムである。ここで、X軸は溶出時間(分)を示し、Y軸は吸光度(相対値)を示す。実施例7〜13で用いた大豆イソフラボン配糖体のクロマトグラムである。ここで、X軸は吸光度(相対値)を示し、Y軸は溶出時間(分)を示す。実施例7〜13に用いた大豆イソフラボンアグリコンのクロマトグラムである。ここで、X軸は吸光度(相対値)を示し、Y軸は溶出時間(分)を示す。本発明の製造方法に従って製造される大豆サポニンアグリコンおよび大豆イソフラボンアグリコンの回収率を示す図である。本発明の製造方法に従って製造される大豆サポニンアグリコンおよび大豆イソフラボンアグリコンの生成物に対する濃度を示す図である。本発明の製造方法に従って製造される大豆サポニンアグリコンおよび大豆イソフラボンアグリコンの配糖体(仕込み時)に対する濃縮率を示す図である。 以下に、本発明の配糖体アグリコンの製造方法を、一実施態様を用いて詳細に説明する。まず、本発明の配糖体アグリコンの製造方法の原料となり得る配糖体は、糖質残基のヘミアセタール性水酸基またはヘミケタール性水酸基と、母体化合物のアルコール、フェノール、カルボン酸などの反応基との間で脱水縮合したもののすべてを包含する。該配糖体は、主に天然の二次代謝物であるが、これと同じ構造を有する合成物も含まれる。 前記配糖体は、糖質残基が結合する原子の種類に応じて、O−グリコシド、S−グリコシド、N−グリコシド、C−グリコシドなどに分類される。本発明の製造方法は、結合する原子の種類に依存せず、すべての配糖体に適用可能である。 上記配糖体のアグリコンの構造の例としては、イソフラボン、フラバノン、フラボン、フラバン、カルコン、ジヒドロキシカルコン、カテキン、フラバノノール、ネオフラボノイド、フラボノール、オーロン、アントシアニン、ロイコアントシアンなどのフラボノイド類;サポニゲンなどのテルペノイド類;ジゴキシゲニン、ジギトキシゲニン、ウザリゲニン、ストロファンチジン、ギトキシゲニン、アセチルストロファンチジン、ウアバゲニンなどのステロイド類;キノン類;リグナン類などが挙げられる。 一方、前記配糖体に存在する糖質残基の具体例は、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、ラムノース、アラビノース、キシロース、フルクトース、ジギトキソースなどの単糖;マルトース、スクロース、ラクトースなどの二糖;ならびに前記糖が3〜8個結合したオリゴ糖である。 天然に存在するO−グリコシド型の配糖体の具体例としては、イソフラボン、サポニン、オレウロペイン、アントシアニン、ルチン、アビイン、ヘスペリジン、ナリンジン、シトロニン、トリシン、センノサイド、ブフォトキシン、ジギトキシン、ラントシドC、デスラノシド、ジゴキシン、メチルジゴキシン、ウアバイン、G−ストロファンチン、アミグダリン、ステビオサイド、グリシルリジン、スウェルチアマリン、ゲンチオピクロシドなどが挙げられる。 上記イソフラボンは、大豆、エンドマメ、ヒヨコマメ、クローバー、ハリエニシダ、クズなどのマメ科植物や、バラ科、アヤメ科、クワ科およびヒユ科の植物に多く含まれるフラボノイド配糖体の一種である。大豆イソフラボンでは、ダイジン、グリシチン、ゲニステインなどの配糖体が確認されている。 ダイジンおよび、そのアグリコンであるダイゼインの化学構造式を以下に示す。〔式中、R1、R2、R3、R’1、およびR’2は水素原子を表す〕を示す。 上記サポニンは、大豆、小豆、オリーブなどに豊富に存在する無定形の配糖体である。アグリコンの種類により、トリテルペノイドサポニンおよびステロイドサポニンの二種類がある。トリテルペノイドサポニンのアグリコンは、オレアナンまたはダンマランである。一方、ステロイドサポニンのアグリコンは、スピロスタン、フロスタンまたはC27ステロイドアルカロイドである。 トリテルペノイドサポニンの一種である大豆サポニンB配糖体、および、そのアグリコンのソヤサポゲノ−ルBの化学構造式を、以下に示す。〔式中、R1はCH2OHまたは水素原子を表し、R2はβ−D−Glc、α−L−Rhaまたは水素原子を表す〕を示す。 上記オレウロペインは、オリーブの実、種子、果皮、種皮、葉、茎、芽などから、またはこれらの乾燥物、粉砕物もしくは脱脂されたものから、主として水および/または有機溶媒で抽出して得られる。化学構造式を以下に示す。 その他、ルチンは、ソバや茶葉に含まれるフラボノイド配糖体である。ジギトキシンは、ジキタリス中に含まれ、無色の白色結晶性の粉末である。ラナトシドCは、ケジギタリス中に多く含まれる。ラナトシドCをアルカリで加水分解したものがデスラノシドであり、このデスラノシドを酵素反応でグルコースを除去したものがジゴキシンである。ストロファンチンは、きょうちくとう属の植物中に存在するグリコシドである。グリシルリジンおよびグリシルリザ−ドは、甘草の根に含有される無色の結晶である。アミグダリンは、ビターアーモンドや果実の核内に多く含まれる。アルブチンは、しゃくなげ科植物、コケモモ、ウワウルシなどの植物中に存在する。 天然に存在するS−グリコシド型のアグリコン配糖体の例として、シニグリンが挙げられる。シニグリンは、黒からし、西洋ワサビ、カラシナ、ダイコン、クレソンなどのアブラナ科の野菜の葉、種子や根の中に存在する。 天然に存在するC−グリコシド型のアグリコン配糖体の例として、アロイン、マンギフェリン、アロエシンなどが挙げられる。アロインは、アロエ属の植物の葉中に存在する。 上記配糖体は、均一な水溶液または懸濁液として、高温・高圧水処理に供される。その場合、必要に応じて固形の配糖体を、粉砕処理してから、水に溶解または懸濁させてもよい。 原料として用いる配糖体の濃度は、水に溶解あるいは十分に流動性を保たれる懸濁状態であればよく、通常、1〜50%(w/w)であり、好ましくは5〜20%(w/w)である。 高温・高圧水の温度は、通常、100〜374℃であり、好ましくは140〜320℃であり、さらに好ましくは200〜300℃である。その圧力は、上記温度に対応する飽和水蒸気圧以上、すなわち液体状態を保持する圧力であればよい。好ましくは、上記温度に対応する飽和水蒸気圧から0〜22MPa高い範囲、より好ましくは上記温度に対応する飽和水蒸気圧である。処理温度および圧力が上記範囲よりも緩和されると、配糖体の加水分解反応が進まず、アグリコンの回収率が上がらない。逆に、上記範囲よりも過酷であると、アグリコンの熱分解反応が進み、その結果、アグリコンの回収率が低下する。また、反応装置が腐食する、より高い耐圧性が必要になるなどの問題も生じる。 配糖体の性状に応じて、高温・高圧水の適正な条件が異なるので、適宜、調整する。例えば、大豆サポニンの高温・高圧水処理温度は、飽和水蒸気圧において240〜320℃が好ましく、さらに240〜280℃が好ましい。大豆イソフラボンの高温・高圧水処理温度は、200〜320℃が好ましく、さらに240〜280℃が好ましい。 高温・高圧水と配糖体との接触時間は、通常、0.1〜120分でよく、好ましくは0.5〜20分、特に好ましくは1〜5分、さらに好ましくは1〜3分である。高温・高圧水との接触時間が短すぎると、加水分解反応が進行せず、生成物中に配糖体が残存する。逆に、長すぎると、アグリコンの加水分解および熱分解が進行し、アグリコンの回収率が低下する。 接触時間の詳細は、適用する配糖体の性状と、温度および圧力に応じて適宜調整される。例えば大豆イソフラボンおよび大豆サポニン配糖体の場合、温度240〜280℃とその飽和蒸気圧の条件下で、1〜5分間の反応を行わせると、糖質残基だけを分解除去しアグリコンを残すことができる。 本発明の製造方法では、配糖体を高温・高圧水処理すると、水相と固相とが分離したものが得られる。固相にはアグリコンが含まれ、一方、水相には、配糖体に結合していた糖が含まれる。 固相中のアグリコンは、高温・高圧水条件の程度に応じて、処理後にゲル状または沈殿物となる。好ましくは、沈殿物が得られる高温・高圧水条件を採用する。沈殿物を分離する方法としては、特に制限されず、自然沈降、遠心分離、濾過などが挙げられ、好ましくは遠心分離である。強固なゲル状の場合は、そのまま蒸発乾固させた後、水洗して水溶性成分を除去してもよい。 本発明の製造方法によれば、配糖体からアグリコンへの転換率(アグリコンの回収率)は、条件を適正化することで、70〜100%、好ましくは95〜100%、特に好ましくは99〜100%に達する。したがって、本発明はまた、上記製造方法により得られる、アグリコンに関する純度が、通常、70〜100%、好ましくは95〜100%、特に好ましくは99〜100%の配糖体アグリコンを提供する。 回収したアグリコンに不純物が含まれている場合、常法に従って精製してもよい。例えば、溶媒分別、カラムクロマトグラフィー、蒸留、膜分離があげられる。 また、高温・高圧水処理後の前記水相に含まれる糖は、常法に基づいて分離精製ことができる。具体的には、イオン交換、吸着、蒸留、蒸発、塩析、膜分離、抽出などである。 本発明の製造方法に使用する高温・高圧水処理装置は、特に限定されない。例えばバッチ式、連続式などの公知の高温・高圧水処理装置を使用することができる。 図1には、連続式高温・高圧水処理装置で配糖体アグリコンを製造する場合の反応系が示されている。水タンク容器11中の水を水ポンプ12で所定の圧力に昇圧した後、ヒーター13で加熱し、所定温度の温水を作る。原料の配糖体は、水と混合して溶液またはスラリー液の状態にしてから原料タンク14へ投入される。次に、前記原料をスラリーポンプ15で昇圧し、温水と原料スラリーとを混合して、高温・高圧水反応用耐熱耐圧管16へ通す。その後、クーラー17で室温付近まで冷却し、フィルター18で未溶解固形分を除去し、背圧弁19を通して処理水を容器へ回収する。常圧に戻すことにより、配糖体アグリコンは、水に不溶となるため、容器内に沈殿することが多い。この場合、沈殿物をアグリコンとして回収する。 バッチ式の場合の配糖体アグリコン製造装置は、例えば図2に示すステンレス鋼のような耐腐食性の材質でできた開閉自在の耐圧耐熱管21、高温・高圧水温度でのソルトバス22のような恒温装置、攪拌機24や反応管揺動装置のような前記反応容器の内容物を均質化するため機構などからなる。上記反応管に配糖体および水を入れて密閉し、この反応管を所定温度に加熱して、反応管内を高温高圧とすれば、前記反応管内部の水が高温・高圧水となり、加水分解反応によってアグリコンが遊離される。 以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。〔実施例1〜6,比較例1〜2〕大豆サポニンからの大豆サポニンアグリコンの製造〔反応管の作製〕 図2に示すバッチ式反応装置20を、高温・高圧水処理に使用した。この反応装置20は、ステンレス製管21(外径10mm、内径8.2mm、長さ150mm、容積8.2cm3)の両端にキャップ(SWAGELOK製、商品名SS−600−C)を脱着自在に取り付けたものである。〔ソルトバスの準備〕 高温・高圧水処理の間、反応管21を高温の一定温度に保つため、ソルトバス22(トーマス化学社製、製品名ThermometerInspecting Bath CELSIUS600H)を使用した。前記ソルトバス内の熱媒体には、硝酸カリウムと亜硝酸ナトリウムを1:1の割合で混ぜた配合塩(融点140℃)を使用した。反応装置20は、さらに、反応管を納めるカゴ(縦7cm、横20cm、深さ3cm)と、このカゴを上下に揺らして、反応管内の試料を攪拌するための攪拌機24を具備した。〔各処理温度における圧力および水仕込量の計算〕 反応管内の圧力は、水の飽和蒸気圧に等しいと仮定した。また、管内の容積に占める各相の割合は、下記式:〔式中、Vは反応管容積(cm3)、Vsは乾燥配糖体の体積(cm3)、V1は水相(液相)の体積(cm3)、V2は気相の体積(cm3)である〕で表される。 また、乾燥配糖体の仕込量(g)と水仕込量との間には、下記式:〔式中、V、VS、V1およびV2は上記と同様であり、mwは水仕込量(g)、mは乾燥配糖体の重量(g)、wは含水率、ν1は水相での水の比容積(cm3/g)、ν2は気相での水の比容積(cm3/g)、ρは水の密度(g/cm3)である〕で表される。 反応管に投入可能な水仕込量Vは、配糖体を0とした場合、である。 したがって、高温・高圧水処理温度で反応管容積になる水量は、8.2/ν1(g)となる。気相分の余裕を持たせるため、Max水相量をその80%とした。実験に使用する高温・高圧水処理温度での飽和蒸気圧と水の比容積および水蒸気の比容積を表1に示す。〔試料投入〕 大豆(Glycine max)の胚軸から特開2006−124324号に記載の溶媒抽出法により抽出された大豆サポニン濃縮物(配糖体濃度80%)1重量部に対して、水19重量部を添加し、配糖体試料液を作製した。大豆サポニン配糖体のクロマトグラムを図3に示す。大豆サポニン配糖体の分析条件は以下のとおりである。カラム: ODSカラム(SHISEIDOCAPCELL PAK C18 AG-120 size 4.6 x 250nm)移動相: A液; 水:TFA=100:0.05 (v/v)B液; アセトニトリル:TFA=100:0.05 (v/v)流速: 0.7mL/minカラム温度: 40℃検出: 205nm(UV検出器)注入量: 10μL溶離条件: 0分のとき、B液の比率を13%、0→10分で、B液の比率を13→30%、10→20分で、B液の比率を30→50%、20→25分で、B液の比率を50→50%、25→35分で、B液の比率を50→100%、35→55分で、B液の比率を100→100%、55→57分で、B液の比率を100→13%、および57→65分で、B液の比率を13→13%となる直線グラジエントを行う。 大豆サポニンA配糖体では、ソヤサポニンA1(溶出時間:18.771分)、大豆サポニンB配糖体のうちのソヤサポニンI(溶出時間:29.331分)、ソヤサポニンV(溶出時間:28.613分)が検出されている。 この試料液を約3.46g分取し、上記反応管21に充填し、キャップを閉めた。〔高温・高圧水処理〕 配糖体および水の仕込まれた反応管21をカゴ23に載置した後、反応管21をカゴ23ごと、下表2に示す温度のソルトバス22に浸漬した。 高温・高圧水処理の間(1分または5分)は、上記攪拌機24により、反応管21を35回/分の間隔で上下に揺動させた。その後、前記反応管21をソルトバス22から取り出し、水冷した。〔水相および沈殿物の回収〕 水冷した反応管21をよく振り、内容物を均一化させた。反応管21のキャップを開け、バイトン製チップのついた押棒で、管の内容物を全量、試験管に移した。試験管に水を添加して、容量を約10mlとした。その後、遠心処理(4000rpm×15分)にて、遠沈させた。遠沈後の状態観察の結果を、表2にまとめた。〔沈殿物のエタノ−ル処理〕 遠沈した試験管の内容物を全量、デカンテーションし、濾過、水洗した。水層は廃棄した。一方、濾紙上の固形物をエタノールで溶解し、得られたエタノ−ル溶液を再度、濾過した。濾紙上に最終的に残った固形物は、不溶物とした。 濾過したエタノール溶液を試験管に移した。エタノール溶液の状態観察の結果を表2に示す。エタノール溶液の内容物を、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)を用いて同定した。大豆サポニンアグリコン分析条件は以下のとおりである。カラム: ODSカラム(SHISEIDOCAPCELL PAK C18 AG-120 size 4.6 x 250nm)移動相: アセトニトリル:水:1-プロパノール:0.01%酢酸=80:13.9:6:0.1(V/V/V/V)流速: 0.9mL/minカラム温度: 40℃検出: 205nm(UV検出器)注入量: 20μL 図4のクロマトグラムにソヤサポゲノールA(溶出時間:8.697分)、ソヤサポゲノールB(溶出時間:17.146分)が検出されているように、大豆サポニンアグリコンが多く含まれていることが確認された。〔アグリコン回収率、アグリコン濃度、および濃縮率の導出〕 実施例1のゲルは、そのまま蒸発乾固し、回収量を重量測定した。さらに、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)を用いて回収アグリコンの量を求めた。実施例2〜6の生成物は、エタノール溶液を沈殿溶解物と合わせて溶剤留去後、回収量を重量測定し、さらに、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)を用いて回収アグリコンの量を求めた。比較例1および2では、実施例1と同様に、ゲルをそのまま蒸発乾固して、重量測定しようとしたが、大豆サポニンアグリコンが得られなかった。 表3に、回収アグリコン量、アグリコン回収率、アグリコン濃度、および濃縮率を示す。アグリコン回収率は、実施例2(240℃×5分)および実施例3(280℃×1分)でほぼ100%回収に達した。原料配糖体のモル数に対して回収アグリコンのモル数がほぼ100%であったことから、配糖体からアグリコンへの転換率もほぼ100%と推定される。 アグリコン濃度および濃縮率については、実施例1(240℃×1分)、実施例2(240℃×5分)、実施例3(280℃×1分)の条件では、試料液中の配糖体濃度(67.5%)よりも濃縮された。しかも、実施例2および実施例3の条件で、アグリコン濃度が極大となった(図8および図9)。1)アグリコン回収率=回収アグリコン量/仕込んだ配糖体中のアグリコン量2)回収アグリコン濃度=回収アグリコン量/回収物の総量3)濃縮率=回収アグリコン濃度/試料液中の配糖体濃度〔実施例7〜13〕大豆イソフラボンアグリコンの製造〔試料投入〕 大豆(Glycine max)の胚軸から抽出された大豆イソフラボン濃縮物(配糖体濃度80%)1重量部に対して、水18重量部を添加し、試料液を作製した。大豆イソフラボン配糖体のクロマトグラムを図5に示す。大豆イソフラボン配糖体分析条件は、以下のとおりである。カラム: ODSカラム(YMC-pack ODS-AM-303 size 4.6 x 250 nm )移動相: A液; アセトニトリル:水:酢酸=15:85:0.1 (v/v)B液; アセトニトリル:水:酢酸=35:65:0.1 (v/v)流速: 1.0mL/minカラム温度: 40℃検出: 254nm(UV検出器)注入量: 10μL溶離条件: 0分のとき、B液の比率を0%、0→50分で、B液の比率を0→100%、50→55分で、B液の比率を100→0%、および55→60分で、B液の比率を0→0%となる直線グラジエントを行う。 大豆イソフラボン配糖体のうち、ダイジン(溶出時間:9.998分)、グリシチン(溶出時間:10.780分)、およびゲニスチン(溶出時間:16.822分)が検出されている。 この試料液から約3.46gを分取して、実施例1と同様の反応管21に充填した。〔高温・高圧水処理〕 配糖体および水の仕込まれた反応管21をカゴ23に載置した後、反応管21をカゴ23ごと、下表に示す温度のソルトバス22に浸漬した。高温・高圧水処理の間(1分または5分)は、上記攪拌機24により、反応管21を35回/分の間隔で上下に揺動させた。その後、前記反応管をソルトバス22から取り出し、水冷した。〔水相および沈殿物の回収〕 水冷した反応管21をよく振り、内容物を均一化させた。反応管21のキャップを開け、バイトン製チップのついた押棒で、管の内容物を全量、試験管に移した。試験管に水を添加して、容量を約10mlとした。その後、遠心処理(4000rpm×15分)にて遠沈させた。遠沈後の状態観察の結果を、表4にまとめた。〔沈殿物のエタノール処理〕 遠沈した試験管の内容物を全量、デカンテ−ションし、濾過、水洗した。水層は、ヘッドスペースをアルゴン置換した後、冷蔵保存した。一方、濾紙上の固形物をエタノールで溶解し、得られたエタノール溶液を再度、濾過した。濾紙上に最終的に残った固形物は、不溶物とした。 濾過されたエタノール溶液を試験管に移した。表4にエタノール溶液の状態観察の結果を示す。エタノール溶液中の物質を、高速液体クロマトグラフィーを用いて同定した。図6にクロマトグラムを示す。大豆イソフラボンアグリコン分析条件は以下のとおりである。カラム: ODSカラム(YMC-pack ODS-AM-303 size 4.6 x 250 nm )移動相 : A液; アセトニトリル:水:酢酸=15:85:0.1 (v/v)B液; アセトニトリル:水:酢酸=35:65:0.1 (v/v)流速: 1.0mL/minカラム温度: 40℃検出: 254nm(UV検出器)注入量: 10μL溶離条件: 0分のとき、B液の比率を0%、0→50分で、B液の比率を0→100%、50→55分で、B液の比率を100→0%、および55→60分で、B液の比率を0→0%となる直線グラジエントを行う。 図6のクロマトグラムで、大豆イソフラボンアグリコンとして、ダイゼイン(溶出時間:30.128分)、グリシテイン(溶出時間:32.358分)、ゲニステイン(溶出時間:42.846分)が検出されているように、大豆イソフラボンアグリコンを多く含むことが確認された。〔アグリコンの収率、濃度、および濃縮率の導出〕 実施例7〜13の生成物は、エタノール溶液を沈殿溶解物と合わせて溶剤留去後、回収量を重量測定し、さらに、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)を用いて回収アグリコンの量を求めた。その値をアグリコン回収率、アグリコン濃度、および濃縮率とともに表5に示す。 アグリコン回収率は、実施例11(280℃×1分)の条件で、ほぼ100%に近い値が得られた。実施例11(280℃×1分)の条件で、配糖体における初期濃度(80.7%)よりも濃縮され、アグリコン濃度が極大となった(図7〜9)。〔実施例14〕(試料投入) オレウロペインを約35%以上含んだオリーブ抽出物(製品名「オピエース」)を約5%濃度で水に分散させ試料液とした。この試料液を均一な状態で約3.6g分取して、実施例1と同様の反応管21に充填した。(高温・高圧水処理、回収率測定) 配糖体および水の仕込まれた反応管21をカゴ23に載置した後、反応管21をカゴ23ごと、下表の温度のソルトバス22に浸漬した。高温・高圧処理の間(1分、5分)は、上記攪拌機24により、反応管21を35回/分の間隔で上限に揺動させた。その後、前記反応管をソルトバス22から取り出し、水冷した。 得られた試料をHPLCにより測定し、アグリコンの変換回収量を計算した(表6)。200℃×5分間、240℃×1分間の処理で、25%程度のアグリコンが回収できた。1)変換回収率=100×〔(処理後のアグリコン濃度)―(未処理のアグリコン濃度)〕/〔未処理オレウロペイン濃度―処理後のオレウロペイン濃度〕 各種配糖体アグリコンは、糖質残基の結合した状態よりも、体内吸収性が向上し、生理活性も高まる上に、糖質残基のない分摂取量が少なくて済むので、付加価値が高まる。具体的には、サポニンには、コレステロール低下作用、免疫賦活作用、抗腫瘍活性、抗変異原活性などの生理作用がある。大豆イソフラボンアグリコンは、女性ホルモン様作用を有するため、骨粗鬆症、更年期障害、乳がんなどの女性疾患に対する治療薬とし有効である。ルチンアグリコンには、抗ウイルス作用が期待される。ジギトキシン、ラナトシドC、デスラノシド、ジゴキシン、メチルジゴキシン、ウアバインなどのアグリコンは、強心薬として有用である。ストロファンチンアグリコンは、極めて有効な心臓興奮剤となり得る。グリシルリザードアグリコンは、医薬にも使用する。アルブチンアグリコンは、利尿剤として使用され、また、メラニン合成に関与するチロシナーゼを阻害する作用により、美白効果(化粧材)にも寄与する。シニグリンアグリコンは、医薬に使用が期待される。符号の説明10 高温・高圧水反応装置11 水タンク容器12 水ポンプ13 ヒーター14 原料タンク15 スラリーポンプ16 高温・高圧水反応用耐熱耐圧管17 クーラー18 フィルター19 背圧弁20 バッチ式反応装置21 耐圧耐熱管22 ソルトバス23 カゴ24 攪拌機A アグリコン 配糖体を高温・高圧水と接触させることを特徴とする、配糖体アグリコンの製造方法。 前記配糖体が、O−グリコシド、S−グリコシド、N−グリコシド、およびC−グリコシドからなる群の少なくとも一種である、請求項1に記載の配糖体アグリコンの製造方法。 前記配糖体が、フラボノイド配糖体、テルペノイド配糖体、ステロイド配糖体、キノン配糖体およびリグナン配糖体からなる群の少なくとも一種である、請求項1に記載の配糖体アグリコンの製造方法。 前記配糖体が、大豆サポニンおよび/または大豆イソフラボンである、請求項1に記載の配糖体アグリコンの製造方法。 前記配糖体がオレウロペインである、請求項1に記載の配糖体アグリコンの製造方法。 前記高温・高圧水の温度が150〜320℃であることを特徴とする、請求項1に記載の配糖体アグリコンの製造方法。 前記配糖体と高温・高圧水との接触時間が、0.5〜20分であることを特徴とする、請求項6に記載の配糖体アグリコンの製造方法。 請求項1に記載の配糖体アグリコンの製造方法により得られる、アグリコンに関する純度が95〜100%の配糖体アグリコン。 酸触媒や有機溶媒を使用せずに、配糖体からアグリコンを高効率かつ安価に製造方法する方法を提供する。配糖体を高温・高圧水と接触させることを特徴とする、配糖体アグリコンの製造方法。高温・高圧水の温度は、通常、100〜374℃であり、好ましくは140〜320℃であり、さらに好ましくは200〜300℃である。その圧力は、上記温度に対応する飽和水蒸気圧以上、すなわち液体状態を保持する圧力であればよい。


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