生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_緑膿菌の薬剤排出ポンプの機能を阻害する方法及び薬剤
出願番号:2007557763
年次:2013
IPC分類:C07K 14/21,G01N 33/50,A61K 39/395,A61K 45/00,A61P 31/04,G01N 33/15,C07K 16/12,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

良原 栄策 猪子 英俊 JP 5314286 特許公報(B2) 20130712 2007557763 20070209 緑膿菌の薬剤排出ポンプの機能を阻害する方法及び薬剤 学校法人東海大学 000125369 内田 直人 100149294 奥原 康司 100137512 良原 栄策 猪子 英俊 JP 2006033522 20060210 20131016 C07K 14/21 20060101AFI20130926BHJP G01N 33/50 20060101ALI20130926BHJP A61K 39/395 20060101ALI20130926BHJP A61K 45/00 20060101ALI20130926BHJP A61P 31/04 20060101ALI20130926BHJP G01N 33/15 20060101ALI20130926BHJP C07K 16/12 20060101ALN20130926BHJP C12N 15/09 20060101ALN20130926BHJP JPC07K14/21G01N33/50 ZA61K39/395 DA61K39/395 NA61K45/00A61P31/04G01N33/15 ZC07K16/12C12N15/00 A A61K 39/395 A61K 38/00 C07K 14/21 G01N 33/15 G01N 33/50 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表2003−511074(JP,A) 国際公開第99/061021(WO,A1) 特表2002−510463(JP,A) Wong,K.K.Y. et al.,Evaluation of a structural model of Pseudomonas aeruginosa outer membrane protein OprM, an efflux component involved in intrinsic antibiotic resistance,J. Bacteriol.,2001年 1月,Vol.183, No.1,P.367-374 Wong,K.K.Y. et al.,Insertion mutagenesis and membrane topology model of the Pseudomonas aeruginosa outer membrane protein OprM,J. Bacteriol.,2000年 5月,Vol.182, No.9,P.2402-2410 6 JP2007000072 20070209 WO2007091395 20070816 10 20100208 中尾 忍 本発明は、多剤耐性緑膿菌の薬剤排出ポンプの機能を阻害する方法に関する。特に本発明は、薬剤排出ポンプを構成するサブユニットであるOprMのアミノ酸配列を改変することにより、緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能を阻害し、抗生剤の薬効を増強する方法に関する。さらに本発明は、前記の効果を奏する薬剤並びに当該薬剤をスクリーニングする方法にも関する。 緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)とともに院内感染症の主要起因菌であり、これらの菌は多剤耐性を示すために感染症の治療が難しく大きな問題となっている。この菌の薬剤耐性獲得に大きく貢献しているのが薬剤排出ポンプである。このポンプは、菌内部に入った薬剤をエネルギーを使って積極的に細胞外に輸送、排出する。緑膿菌が具備する薬剤排出ポンプは、構造が異なる種々の抗生剤を排出する機能を有するため、緑膿菌の多剤耐性化が起こる。 緑膿菌はグラム陰性菌で内膜と外膜の二つの膜とを備えているので、薬剤を細胞外に排出するにはこの二つの膜を介して薬剤を能動的に輸送することが必要である。 薬剤排出ポンプは幾つかのファミリーに分類され、それらの中で、様々な抗生剤を排出することが知られているRND(resistance nodulation division)ファミリーのポンプは3種類のサブユニットから構成されている。緑膿菌には複数のRND型ポンプが存在するが、そのうちで主要なポンプはMexAB-OprMポンプである。 図1に模式的に示すように、MexAB-OprMポンプは、薬剤トランスポーターとして働くMexBが内膜にあり、薬剤透過孔を形成するOprMが外膜にあり、内膜と外膜とを結合するMexAがペリプラズムに存在する複合体を形成している。この複合体を介して、細胞内の薬剤が直接細胞外に排出される。 MexAB-OprMポンプを構成するタンパク質のアミノ酸配列は既に決定されており、その立体構造もX線解析等の手法を用いて研究されている(非特許文献1)。また、そのポンプ機能を阻害して抗生剤の薬効を増強する試みも行われている。例えば、特許文献1では、ポンプ機能を阻害すると考えられる化合物類の立体構造と阻害機能との相関から予測されるファーマコフォアを特定し、当該ファーマコフォアの条件に合致する化合物類を合成することが行われている。しかしながら、このような方法は、ポンプ機能を阻害する化合物を同定するために莫大な数の化合物類をスクリーニングする必要があり実用的ではない。Hiroyuki Akama等, J. Biological Chemistry, Vol.279, 52816-52819 (2004)特開2002−128768 よって本発明における課題は、ポンプを構成するタンパク質のアミノ酸配列及び立体構造に鑑み、より効率的に緑膿菌の薬剤排出ポンプの機能を阻害できる方法を見いだし、そのような効果を奏する薬剤及びその薬剤のスクリーニング方法を提供することにある。 本発明は、上記課題を解決するために、MexAB-OprMポンプの構造に着目した。すなわち、MexAB-OprMポンプを構成する3つのサブユニットのいずれもが機能発現には不可欠であることに鑑み、これらのうち1つのサブユニットの機能を阻害すればポンプ全体の機能を消失させることができるとの知見に基づいて、特に、薬剤ポンプサブユニットの中で唯一細胞外に露出している部分を有するOprMのアミノ酸配列を改変することによって薬剤排出ポンプ全体の機能を阻害することができることを見いだした。 すなわち本発明は、成熟OprMタンパク質のアミノ酸配列の第100番目から第109番目のいずれか、あるいは第311番目から第320番目のアミノ酸のいずれかを改変することからなる、多剤耐性緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能を阻害する方法を提供する。 特に、MexAB-OprMポンプの機能を阻害する場合には、成熟OprMタンパク質のアミノ酸配列における第311番目及び/又は第318番目のアミノ酸を改変するのが好ましい。 本発明によれば、薬剤排出ポンプのサブユニットの1つであるOprMの一部の領域のアミノ酸配列に基づいて、薬剤排出ポンプの機能を阻害する薬剤を設計できる。従って、従来の構造と機能との相関に基づくラショナルドラッグデザイン等とは異なり、莫大な数の化合物をスクリーニングすることなく、緑膿菌の薬剤(多剤)耐性を低下させ、抗生剤の薬効を向上させることのできる薬剤を容易に設計及びスクリーニングすることができ、その結果、感染症の有効な予防及び治療に寄与することができる。MexAB-OprMポンプの構造を示す模式図である。OprMの二次構造を示す模式図である。実施例におけるOprM変異体の発現を確認するためのウエスタンブロットの結果を示す図である。 上記したように、MexAB-OprMポンプを構成するサブユニットの1つであるOprMは、外膜で薬剤を排出するためのチャンネルを形成する膜タンパク質である。OprMは、大きく3つのドメインから構成されている。図2に、OprMの二次構造を模式的に示す。1つめのドメインはペリプラズムに突出し、そのほとんどがαへリックスからなる特徴的な大きなドメインであり、このドメインがMexAやMexBと相互作用していると考えられている。2つめは外膜を貫通するドメインで、βシートが集まって樽状の構造をつくり、その真ん中を抗生剤が通過する。3つめのドメインは細胞外に突出したループからなり、もっとも小さいドメインである。この3つめのドメインは二つのループからなり、各々10アミノ酸から構成されている。 本発明では、このループ状のドメインに注目し、これらのドメインの薬剤排出機能への寄与を検討した。その検討するために、分子生物学的に一般的に用いられている方法を用いた。すなわち、ループを構成するアミノ酸残基を他のアミノ酸(システイン残基)に特異的に置換し、得られた変異体を緑膿菌に戻し、薬剤排出ポンプの機能がどのように変化するかを調べることによって、当該部分のアミノ酸が薬剤排出機能の発現に関与するか否かを明らかにした。 OprMを構成する二つのループを各々E1領域及びE2領域とする(図2参照)。その一次構造は以下の通りである。 E1: Pro-Gly-Asp-Leu-Ser-Thr-Thr-Gly-Ser-Pro (配列番号:1) E2: Arg-Gln-Leu-Ser-Gly-Leu-Phe-Asp-Ala-Gly (配列番号:2) すなわち、E1は、OprM成熟体のアミノ酸配列における第100番目のアミノ酸であるプロリンから第109番目のプロリンまでの領域であり、E2は、第311番目のアミノ酸であるアルギニンから第320番目のグリシンまでの領域である。 具体的には、基質(薬剤)としてアズトレオナム(AZT)(β-ラクタム剤)及びナリジキシン酸(NA)(キノロン系薬剤)を用いた場合、E2領域、特にOprM(R311C)、OprM(Q312C)、OprM(F317C)、OprM(R318C)、OprM(A319C)、及びOprM(G320C)の変異体を導入した緑膿菌では、薬剤感受性が変化しており、中でもOprM(311C)ではAZT及びNAの両方に対する耐性が格段に低下し、OprM(D318C)ではAZTに対する耐性が顕著に低下しているがNAに対する耐性は野生型と同等であることがわかった。 一方、E1領域の10残基のうち、第109番目のアミノ酸をシステインに置換したOprM(P109C)変異体では、特にNAに対する薬剤感受性が増大した。 即ち、緑膿菌の薬剤排出ポンプMexAB-OprMにおいては、E1及びE2領域、特にE2領域のアミノ酸配列が、ポンプ機能の発現に大きく寄与していることが明らかになった。さらに実験結果は、E2領域のアミン酸の中でも、第311番目のアルギニン及び第318番目のアスパラギン酸が、薬剤排出ポンプの機能に特に重要な役割を果たしていることを示唆した。言い換えれば、E2領域のアミノ酸、特に第311番目のアルギニン及び第318番目のアスパラギン酸を置換することにより、緑膿菌の薬剤感受性の向上(薬剤耐性の低下)が達成できることが見いだされた。 アルギニンは正に荷電したアミノ酸であり、アスパラギン酸は負に荷電したアミノ酸であることから、311番目及び318番目のアミノ酸における荷電状態が薬剤ポンプの機能発現に関係していることも考えられる。 なお、本明細書において、OprM(R311C)とは、第311番目のアルギニン(R)がシステイン(C)に置換された変異体を意味するものとする。 上記の知見から、MexAB-OprMポンプの機能発現には、成熟OprMタンパク質のアミノ酸配列におけるE1及びE2領域のアミノ酸、中でも第311番目のアルギニン及び第318番目のアスパラギン酸が重要な役割を果たしていることが解明された。従って、これらのアミノ酸に特異的に作用する薬剤を用いれば、MexAB-OprMポンプの機能を阻害することが可能である。本発明はそのような作用を有する薬剤を提供する。 即ち、本発明に係る薬剤は、成熟OprMタンパク質アミノ酸配列における第100番目から第109番目のいずれか、あるいは第311番目から第320番目のアミノ酸のいずれかを含む配列に特異的に作用する、緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能を阻害する薬剤である。特に、成熟OprMタンパク質アミノ酸配列における第311番目及び/又は第318番目のアミノ酸を含む配列に特異的に作用する薬剤が好ましい。 上記の作用を有する薬剤として第1に挙げられるのは抗体である。すなわち、抗体が上記アミノ酸部分に特異的に結合してブロックすることにより、MexAB-OprMポンプの機能を阻害できるものと考えられる。 成熟OprMタンパク質のアミノ酸配列は知られているので、当該アミノ酸配列の該当部分と同一又は相同のアミノ酸配列を持つポリペプチドを合成し、分子生物学的な常套手段を用いることによって容易に抗体を調製することができる。例えば、従来の抗体を用いた療法と同様に、緑膿菌に結合した抗体が補体系等を介して殺菌するというメカニズムも考えられるが、本発明の知見に基づけば、抗体が標的とするアミン酸部位に結合するだけでポンプ機能を阻害できると推測される。従って、補体系を発動できない場合にも有効であろう。 本発明者等は実際に、E2領域のアミノ酸配列(配列番号:2)を有するポリペプチドに対するモノクローナル抗体を調製し、その抗体を共存させることにより、緑膿菌に対する抗生剤の薬効が増強され、抗体が存在しない場合(コントロール)に比較して、生菌数が顕著に減少することを確認した。 即ち、本発明に係る薬剤の第一の態様は抗体である。 ここで、抗体のFc領域は基質への結合に直接関与していないので、Fc領域を欠く抗体断片も本発明の第一の態様における薬剤として使用することができる。Fcを欠くことにより嵩が小さくなれば、緑膿菌へのアクセスがさらに容易になり薬剤として有効になると考えられる。 さらに、ヒトへの投与を考慮すると、抗体の一部をヒト抗体としたヒト化抗体とすることも有利であろう。 本発明の薬剤の第二の態様は有機小分子である。本発明者等によって標的とすべきアミノ酸配列及びその位置が特定されたので、当該配列に特異的に結合しうる小型のペプチドや他の有機分子をスクリーニングすることができる。 従って、本発明は、被験物質と配列番号:1又は2のアミノ酸配列を有するポリペプチドとを接触させ、当該ポリペプチドと相互作用をする被験物質を検出することを含む、緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能を阻害する薬剤のスクリーニング方法も提供する。相互作用が確認された薬剤(被験物質)は、次いで、通常の手法を用いて、インビボ又はインビトロで緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能に対する作用を確認すればよい。 一方、MexAB-OprMポンプやOprMの三次元構造も明らかにされているので、その構造における標的部位を特定し、当該部位を覆うような立体構造を有する化学物質をコンピュータプログラム等を用いて予測し、その結果に基づいて化学物質を合成、機能スクリーニングすることにより本発明の薬剤を調製することもできる。 また、緑膿菌において構成的に発現され、薬剤耐性に寄与している多剤排出ポンプとしてはMexAB-OprMが知られているが、薬剤が投与されることによって誘導される排出ポンプが存在することも知られている。MexXY-OprMポンプがその例である。この排出ポンプは、ゲンタミシン等のアミノグリコシド系抗生剤が存在することによって発現が誘導され、これらの薬剤に対する耐性が獲得されると考えられている。MexXY-OprMもMexAB-OprMと同様に3つのサブユニットからなり、外膜に存在するのは同じOprMである。従って、MexXY-OprMポンプもMexAB-OprMと同様のメカニズムに従って阻害できるものと考えられる。 実際に、MexAB-OprMを欠損した緑膿菌株はアミノグリコシド系抗生剤に感受性であるが、その株に野生型のOprMを導入するとアミノグリコシド系抗生剤に対する耐性が生ずる。これは、アミノグリコシド系抗生剤によってMexXYは誘導されるが、OprMを欠損しているためにポンプが構成されずに感受性であったものが、OprMの導入によってポンプ機能が回復したことを示している。 次いで、MexAB-OprMを欠損した緑膿菌株に、MexAB-OprMに用いたようなOprM の変異体(E1及びE2領域のアミノ酸を1つずつシステインで置換したもの)を導入すると、MexAB-OprMとは異なり、E1領域にアミノ酸置換を持つ変異体を導入した緑膿菌においてポンプ機能の低下がみられた(データは示さず)。 すなわち、MexAB-OprMに対して顕著な効果が見られたE2領域のみならず、E1領域ににおけるアミノ酸の改変によっても緑膿菌のポンプ機能の阻害効果が得られることが確認された。 上記したような薬剤は、緑膿菌の薬剤排出ポンプの機能を阻害するため、従来から緑膿菌の予防/治療に用いられている抗生剤とともに患者に投与することにより、薬剤排出ポンプによる抗生剤の薬効の減弱を防ぐことができる。即ち、本発明は、本発明の薬剤と抗生剤とを含有する形態で提供されるのが好ましい。そのような形態で提供されると、緑膿菌による感染症を有効に予防/治療することができる。 本発明の薬剤は、抗生剤の他に、製薬上許容される担体、溶媒、賦型剤、希釈剤などの成分を含有していてもよいことは言うまでもない。 以下に実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。(実施例1) 上記成熟OprMタンパク質のアミノ酸配列のE1及びE2領域にある20残基のアミノ酸を、各々システイン残基に置換した変異タンパク質を構築した。まず、OprM遺伝子をベクターであるpUCP20に導入した。このベクターは大腸菌と緑膿菌の両方で働くシャトルベクターである。通常の変異導入キットを用いて、OprM遺伝子に特異的に変異を導入し、このベクターを大腸菌にトランスフォーメーションした。この大腸菌を培養してプラスミドを調製し、その塩基配列を決定し、変異が導入されていることを確認した。 次いで、このプラスミドをOprMが欠損している緑膿菌に導入し、これらの菌のポンプ機能を検定するために薬剤感受性を測定した。ポンプ機能に欠陥があれば、薬剤に対する感受性が高まるからである。薬剤感受性を表し指標として、最小発育阻止濃度(MIC)を採用した。薬剤としては、アズトレオナム(AZT)(β-ラクタム剤)及びナリジキシン酸(NA)(キノロン系薬剤)を用いた。得られた測定結果を以下の表1に示す。 上記の結果から、E1領域では、第109番目のアミノ酸を置換した場合にNAに対する感受性が顕著に変化したことがわかる。一方、E2領域のアミノ酸置換変位体の複数において、薬剤感受性に大きく影響する、すなわちポンプ機能に寄与しているものが見いだされた。 次いで、E2領域のアミノ酸残基を置換した変異体が、その置換位置によってポンプ機能に変化を来すことは実証されたが、上記の結果が当該変異体が発現していないことに起因するものではないことを確認するため、各変異体が実際に発現されていることを確認する実験を行った。具体的には、各変異体をもつ緑膿菌、及び野生型のOprM を持つプラスミドを有する緑膿菌を、プラスミド上の遺伝子の発現を誘導するIPTGの存在下で培養して集菌した。ウェスタンブロットの結果を図3に示す。図3の結果から、各変異体が実際に発現されていることが確認された。(実施例2)OprMのE2領域に対するモノクローナル抗体による緑膿菌の薬剤ポンプ機能の阻害(1)モノクローナル抗体の作成 OprMのE2と同じアミノ酸配列をもつポリペプチドを合成し、それを抗原としてマウスに免疫し、モノクローナル抗体を作成した。 ポリペプチドに反応する抗体を産生する細胞から、培養上清を調製した。この上清をprotein Gカラムにかけて17種類のモノクローナル抗体を精製した。(2)薬剤排出ポンプMexAB-OprMに及ぼすモノクローナル抗体の阻害活性の測定 上記(1)で得られた17種類のモノクローナル抗体のうちの2種類(MAb1及びMAb2)を用いて、以下の実験を実施した。 試験菌:前培養した緑膿菌PAO1株をMueller Hinton (MH) brothに希釈してから37度で培養し、600nmでの吸光度がおよそ0.8に達するまで培養を行う。その菌液をMH brothで200倍に希釈して実験に供した。 緑膿菌液20μlにモノクローナル抗体溶液25μlを加えて37度で30分間インキュベートした後、抗生剤であるアズトレオナム(AZT)(10μg/ml)溶液を5μl添加し(AZT の最終濃度は1.0 μg/ml)、37度で60分間反応させた。抗体の効果を調べるためのコントロールとして、100度で5分間処理して抗体溶液を用いた。生菌数の測定:上記の菌混合液50μlに冷やした生理食塩水(PBS) 950μlを加え、さらにその希釈液50μlをPBS 950μlに加えた。そこから100μlの菌液をとり、LB寒天に塗末し、37度で一晩培養した。翌日寒天上に生育したコロニーの数をカウントした。 モノクローナル抗体を加えたときに得られた生菌数を、コントロールでの生菌数と比較して%で表示し、抗体の効果を検討した。その結果以下のようなデータが得られた。 表2に掲げた結果は、モノクローナル抗体(MAb1及びMAb2)が薬剤排出ポンプを阻害することによって抗生剤の排出が抑制され、その結果抗生剤の殺菌作用が増大したことを示している。即ち、これらモノクローナル抗体が、薬剤排出ポンプMexAB-OprMの活性を阻害する作用を有することが確認されたものと考えられる。成熟OprMタンパク質のアミノ酸配列における、第311番目、第312番目、第315番目、第317番目、第318番目、第319番目、及び第320番目のアミノ酸のいずれかをシステインで置換することからなる、緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能を阻害する方法。成熟OprMタンパク質のアミノ酸配列における第311番目及び/又は第318番目のアミノ酸をシステインで置換することからなる、請求項1に記載の方法。成熟OprMタンパク質アミノ酸配列における第311番目から第320番目のアミノ酸に特異的に結合する抗体又はそのFc領域を欠く断片を含む、緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能を阻害する薬剤。前記抗体が、成熟OprMタンパク質アミノ酸配列における第311番目及び/又は第318番目のアミノ酸を含む配列に特異的に結合することを特徴とする請求項3に記載の薬剤。請求項3又は4に記載の薬剤と抗生剤とを含有する緑膿菌による感染症の治療薬。被験物質と配列番号:2のアミノ酸配列を含むポリペプチドとを接触させ、当該ポリペプチドと相互作用をする被験物質を検出し、次いで、相互作用が確認された被験物質について薬剤排出ポンプ機能に対する作用を確認することを含む、緑膿菌の薬剤排出ポンプ機能を阻害する薬剤のスクリーニング方法。配列表


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