タイトル: | 特許公報(B2)_脂肪酸メチルエステルの製造方法および脂肪酸メチルエステルの製造装置 |
出願番号: | 2007556796 |
年次: | 2013 |
IPC分類: | C11C 3/10,C07C 67/03,C07C 69/24,C07C 69/58,C10L 1/02,C07B 61/00 |
川嶋 文人 山本 英夫 越川 哲也 JP 5234736 特許公報(B2) 20130405 2007556796 20070126 脂肪酸メチルエステルの製造方法および脂肪酸メチルエステルの製造装置 株式会社レボインターナショナル 500371112 国立大学法人愛媛大学 504147254 愛媛県 592134583 細田 芳徳 100095832 川嶋 文人 山本 英夫 越川 哲也 JP 2006021774 20060131 20130710 C11C 3/10 20060101AFI20130620BHJP C07C 67/03 20060101ALI20130620BHJP C07C 69/24 20060101ALI20130620BHJP C07C 69/58 20060101ALI20130620BHJP C10L 1/02 20060101ALI20130620BHJP C07B 61/00 20060101ALN20130620BHJP JPC11C3/10C07C67/03C07C69/24C07C69/58C10L1/02C07B61/00 300 C11C 1/00− 5/02 C07B 31/00− 63/04 C07C 1/00−409/44 C10L 1/02 CA/REGISTRY(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開平05−286904(JP,A) 特開2002−105484(JP,A) 特開2002−241787(JP,A) Bioresource Technology,1999年,70(3),249-253 4 JP2007000032 20070126 WO2007088702 20070809 13 20091222 井上 恵理 本発明は、油脂とアルコールから脂肪酸アルキルエステルを製造する技術分野に関する。 グリセリンと脂肪酸のエステル化物である油脂、とアルキルアルコールから製造される脂肪酸アルキルエステルは工業原料として化粧品や医薬品などの分野で使用されるだけでなく、近年ではバイオディーゼル燃料(以下、「BDF」と示す)と呼ばれる軽油の代替燃料として地球温暖化防止と環境負荷低減の観点から関心が高まっている。 油脂類の主成分であるトリグリセリドとアルキルアルコールからエステル交換反応により脂肪酸アルキルエステルを製造する方法については以前より複数の方法が知られている。工業的に最もよく用いられている方法は水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物を均一触媒として使用し、触媒存在下で当該アルコールの沸点近傍にてエステル交換反応を行うものである。しかしこの方法では触媒の有機溶媒に対する溶解度が高いために脂肪酸アルキルエステル内に触媒が高濃度で溶け込み、純度の高い高品質なBDFを製造するためには精製操作に水洗などの煩雑な操作が必要であり、またアルカリ排水の後処理などの問題があった。 これらの問題を避ける方法として、超臨界状態のアルコールと油脂とを反応する方法が例えば特許文献1(特開2000−109883)に開示されている.この方法では無触媒下で反応を行うために触媒の除去などの精製操作が必要ない。しかしながら高温、高圧の反応条件のためエネルギー的にもまたプロセスコスト的にも実用にむくものではない。 また均一触媒ではなく、固定触媒を用いることにより、精製操作の簡略化を行う方法がある。たとえば特許文献2(特開平6−313188)には固体酸触媒としてカチオン交換樹脂、複合金属酸化物、固体のヘテロポリ酸などを用いる方法が開示されている。しかしながら一般的に酸触媒は塩基触媒よりもエステル交換反応における活性が低いため、反応に高温あるいは長時間を要し、副生成物としてエーテルや分解物などを生成するという問題がある。 固定触媒として固体塩基触媒を用いる方法としては例えば特許文献3(特開2001−271090)には水酸化カルシウムや酸化カルシウムを含む固体触媒の存在下、90℃〜240℃の温度範囲の条件でエステルの製造を行う方法が、また特許文献4(特開2004−35873)には油脂(廃油を含む)とアルコールを生石灰または苦土石灰と反応する方法が開示されている。しかしながら水酸化カルシウムや酸化カルシウムは一般的にはエステル交換反応における活性は低く、そのため反応温度を高くするあるいは長い反応時間、あるいは大量の触媒が必要となるなどの問題がある。 酸化カルシウムをアルコールで前処理して活性化した構造Ca(OH)(OR)………とし、これを固体塩基触媒として用い、芳香族アルコールとのエステル交換反応によって芳香族カルボン酸芳香族エステルを製造する方法が特許文献5(特開平5−286904)に開示されている。しかしながら、この特許文献5には、BDFとして使用できる脂肪酸アルキルエステルの製造についてはなんら記載されていない。特開2000−109883特開平6−313188特開2001−271090特開2004−35873特開平5−286904 本発明は、トリグリセリドを主成分とする油脂類とアルキルアルコールからディーゼル燃料油あるいは工業原料等として有効利用できる脂肪酸アルキルエステルを温和な条件下において高い反応効率で製造し、さらに触媒成分を除去するための後処理工程を簡略化もしくは省略可能な工業規模で利用可能な製造方法を提供することを目的とする。 上記の目的を解決するために、この発明の脂肪酸アルキルエステルの製造方法は、油脂類とアルコールとの間で酸化カルシウムを含む塩基触媒の存在下にエステル交換反応を行って脂肪酸アルキルエステルを製造するに際し、予め塩基触媒をアルコールに接触させて活性化処理することを特徴とする。粉末状の塩基触媒を用いる場合には、この塩基触媒をメタノール中で15分から5時間撹拌することによって活性化処理することが好ましい。一方、管型反応器等を用いる反応で粒状の塩基触媒を用いる場合には、粒状の塩基触媒をメタノール中に3〜7日浸漬させることによって活性化処理することが好ましい。また、油脂類とメタノールを100:30〜100:110の割合で混合し、この混合液をメタノールとの接触により活性化処理した酸化カルシウムを含む粒状の塩基触媒を充填した反応管に流通させてエステル交換反応させることが好ましい。これらに加えて、生成した脂肪酸アルキルエステルを精製するために温度250℃以下、圧力1330Pa以下において減圧蒸留を行ってもよい。さらにこの発明の脂肪酸アルキルエステルの製造装置は、油脂類とメタノールを混合するための混合装置と、メタノールとの接触により活性化処理した酸化カルシウムを含む粒状の塩基触媒を充填し混合液を流通させてエステル交換反応を行うための反応管と、反応混合物からグリセリンを分離するための分離装置と、生成した脂肪酸アルキルエステルを精製するための減圧蒸留装置を有するものである。 この発明によれば、触媒成分が生成物中にほとんど溶け込まず、純度の高い脂肪酸アルキルエステルを製造できるという効果を有する。したがって、製造された脂肪酸アルキルエステルはBDFとして使用しても有害性が少ない。精製工程も簡略になり、製造コストが低くなるという効果も有する。アルコールによる塩基触媒の活性化により、固体触媒でありながら、高い合成能力を有するという効果も有する。流通式反応装置を示す模式図である。流通式回分反応装置を示す模式図である。エステル収率の時間変化を示すグラフであり、塩基触媒の活性化処理を行ったものと行わないものの比較を示す。エステル収率の時間変化を示すグラフであり、塩基触媒の活性化処理時間の違いによる比較を示す。エステル収率の時間変化を示すグラフであり、活性化処理を行った塩基触媒と水酸化カリウムの比較を示す。エステル収率の時間変化を示すグラフであり、活性化処理を行った塩基触媒とアルコラート触媒の比較を示す。実施例2におけるエステル収率の時間変化を示すグラフである。反応回数による触媒活性の変化を示すグラフである。脂肪酸アルキルエステル製造装置の構成を示すブロック図である。実施例5におけるエステル収率の時間変化を示すグラフである。エステル収率の時間変化を示すグラフであり、油脂類・メタノール比による違いを示す。1.油脂タンク2.メタノールタンク3.送液ポンプ4.第1反応管5.第1分離器6.第2反応管7.第2分離器10.反応容器11.撹拌器12.反応管 この発明を実施するための最良の形態について説明する。化1に示すように、塩基触媒の存在下にトリグリセリドである油脂類とメタノールとのエステル交換反応により、脂肪酸メチルエステルとグリセリンとが生成することになる。 原料として使用する油脂類は、例えば天然の植物性油脂としてはナタネ油、ダイズ油、ヒマワリ油、パーム油、ゴマ油、トウモロコシ油、ヤシ油、ベニバナ油、綿実油、ヒマシ油などが、また動物性油脂としては牛脂豚脂、魚油等が挙げられる。またレストラン、食品工場、一般家庭等から廃棄される廃食油等も挙げることができる。エステル交換反応を高収率に行うために、水分や固形分、酸性物質の含有量が少ない油脂類を使用するのが好ましい。したがってたとえば廃食油を原料として使用する際には、含まれている水分や固形分を除去する為の前処理を施すことが好ましい。また、酸性分が多い場合には前処理として脱酸、あるいはイオン交換樹脂などの酸触媒による脂肪酸のエステル化を行ってもよい。 本発明において使用するアルコールは特に限定されるものではないが、好ましくは炭素数1〜5の炭化水素骨格を有するアルコールであり、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、t−ブチルアルコール、ペンタノール等を挙げることができる。さらに塩基触媒の活性化においては、上記以外にもエチレングリコール,グリセリン等を用いることも可能である。特に工業的には低コストでありしかも回収容易であるという観点から、メタノールがより好ましい。 本発明において塩基触媒としては、固体触媒としてエステル交換反応を促進するものを使用し、アルカリ土類金属ならびにその酸化物、水酸化物および水素化物が使用可能であるが、その反応性ならびにコストの観点から酸化カルシウムが最も好ましい。酸化カルシウムの形態としては粉末状、粒状、あるいはこれら触媒をジルコニア、チタニアあるいはセラミックハニカムなどの各種担体に担持したものや樹脂、炭素材料などを用いてペレット化したものも使用可能である。これら触媒は固体であることから、反応液中への触媒の混入の可能性を大幅に低減することができ反応終了後における触媒の分離・回収ならびに生成物の精製が容易となる。ここで粉末状とは、槽型反応器等で攪拌機にて油脂、アルコールと固体触媒が充分に混合することが可能な大きさであり、例えば市販の粉末状酸化カルシウムなどが使用できる。また粒状としては、管型反応器に充填して使用するため、反応管から流出しないようにメッシュ等などの保持手段で保持するのに十分な大きさが必要である。粒径が大きすぎると反応効率が低下し、小さすぎると圧損が大きくなるため、反応管の大きさなども考慮し適宜選択するが、1〜10mmが好ましく、3〜8mmがより好ましい。 予め塩基触媒をアルコールに接触させて活性化処理するが、この工程について説明する。反応器による塩基触媒の活性化は塩基触媒を当該アルコール中で攪拌あるいは静置することにより行うことができる。活性化の温度は5度から当該アルコールの沸点程度まで可能であるが、低温では時間を要し、高温ではエネルギー的負荷が大きくなるので20〜40℃程度が好ましい。粉末状触媒を用いる場合は反応に必要な量の塩基触媒とアルコールを反応装置に充填し、15分から24時間攪拌し、より好ましくは15分から5時間攪拌して活性化した後、油脂原料を投入する。粒状触媒を管型反応装置等で用いる時は所要量の触媒を3日から10日、より好ましくは3日から7日間、当該アルコールに浸漬して膨潤させ、活性化したものを反応管に充填して使用する。あるいはこの場合ははじめから反応管内にクッション材とともに触媒を充填し、アルコールを充填し、反応管内で活性化を行うことも可能である。 エステル交換反応の反応条件を説明する。粉末状の触媒を用いる場合には油脂1molに対して3.1〜14molのアルコールを用いるのが好ましいが反応活性と反応後のアルコール除去を考慮すると3.1〜8molがより好ましい。触媒量は油脂に対して0.02〜5重量%が好ましく、0.03〜2重量%がより好ましい。管状反応器等の流通式反応装置にて粒状触媒を使用する場合には油脂とアルコールの流量比を油脂1molに対してアルコール3.1〜40molにするのが好ましいがグリセリンなどによる触媒への影響を低減し、反応活性の維持と反応後の後処理の観点から8〜28molがより好ましい。 本発明に用いる装置としては、槽型や管型などの形態のものを用いることができ、1回ごとに反応生成物を得る回分式反応装置としてもよく、連続して反応生成物を得る連続式反応装置としてもよい。 図1は流通式かつ連続式の反応装置を示す模式図である。油脂タンク1とメタノールタンク2はそれぞれ送液ポンプ3を備えており、油脂とメタノールは独立に流量を調整されながら第1反応管4へ供給される。ここで、第1反応管4の上流側に油脂とメタノールを十分に混合するための混合装置(図示省略)も設けられている。第1反応管4の内部に塩基触媒が充填されていて、油脂とメタノールはこの第1反応管4を通過する間にエステル交換反応を行う。第1反応管4の外側には恒温装置(図示省略)が設けられており、第1反応管4を所定の温度に保つようになっている。第1反応管4の下流には第1分離器5が設けられており、主にグリセリンの除去を行う。図1の反応装置においては、第1分離器5の下流には、第2反応管6と第2分離器7が設けられている。さらに、メタノールタンク2より第1分離器5の下流にメタノールを供給する送液ポンプ3も設けられている。第2分離器7によってグリセリンを除去した後に再度エステル交換反応を行って、さらに純度の高い脂肪酸アルキルエステルを製造することもできる。 図2は、回分式製造装置の例を示す模式図であるが、エステル反応は塩基触媒を装填した反応管に油脂類とアルコールを流通させることによって行う。容器10は、撹拌器11を備えている。この容器10と反応管12は環状に接続されており、容器10内の液体が反応管12へ流入するとともに、反応管12を通過した液体が再び容器10へもどるようになっている。反応装置は、さらに、容器10と反応管12の温度を調整するための手段や液送ポンプも設けられているが、図示は省略する。 反応管12へは予めメタノール中に浸漬させて活性化処理した粒状の塩基触媒を装填する。容器10に投入された1回分の油脂類とメタノールは撹拌器11によって容器10内で均一に混ぜ合わされながら、反応管12を繰り返し通過してエステル交換反応を行う。必要に応じて、副生成物のグリセリンを容器10から取り除く。所定の純度に達したときに反応装置を停止し、合成された脂肪酸アルキルエステルを容器10から回収する。次回分の油脂類とメタノールを容器10に投入して、次の製造を行う。 この発明の第1の実施例について説明する(実施例1は参考例である)。槽型の反応装置により、回分式反応を行った例である。図3は、エステル収率(反応生成物サンプル中の脂肪酸メチルエステルの重量比のパーセント表示)の時間変化を示すグラフであり、塩基触媒の活性化処理を行ったものと行わないものの比較を示す。CaO0.01g活性化なし(図3中に「0.01g」と表示) 触媒として酸化カルシウム0.01g、メタノール3.9g、サラダ油15gを還流冷却器付き50mlナス型フラスコに入れ、反応温度60℃にてマグネティックスターラーで撹拌した。反応の経過を見るために少量をサンプリングし、メタノールを減圧下で除去し、遠心分離にてエステル層を分離した。このエステル約100mgを量りとり、イソオクタンで5mlに希釈した後、その脂肪酸エステルの量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量し、脂肪酸メチルエステルと反応生成物油脂類の重量比を算定することによってエステル収率を求めた。その結果3時間後のエステル収率は(2%)、10時間後のエステル収率は(64%)であった。CaO0.01g活性化あり(図3中に「0.01g活性化」と表示) 触媒として酸化カルシウム0.01g、メタノール3.9gをナス型フラスコに入れ、室温にて1時間マグネティックスターラーで撹拌した。その後サラダ油15gを添加し、還流冷却器を付けて反応温度60℃にて撹拌した。反応経過は上記と同様に測定した。その結果3時間後のエステル収率は(57%)、10時間後のエステル収率は(83%)であった。CaO0.05g活性化なし(図3中に「0.05g」と表示) 酸化カルシウムを0.05gとした以外は上記CaO0.01g活性化なしと同じように試験を行った。その結果3時間後のエステル収率は(5%)、10時間後のエステル収率は(88%)であった。CaO0.05g活性化あり(図3中に「0.05g活性化」と表示) 酸化カルシウムを0.05gとした以外は上記CaO0.01g活性化ありと同じように試験を行った。その結果3時間後のエステル収率は(89%)、10時間後のエステル収率は(87%)であった。 「CaO0.05g活性化あり」および「CaO0. 01g活性化あり」が本発明の実施例になるが、以上の通り、塩基触媒である酸化カルシウムをメタノールと混合・撹拌して活性化させてから使用することによって、エステル収率を向上させることができる。特に、反応開始直後におけるエステル収率の増加速度が高くなっており、短時間で80%近くに達する。これまでのCaOを塩基触媒として用いたエステル交換反応では反応速度が遅く、しかも油脂から精製できる脂肪酸アルキルエステルの収量も低かったが、この発明によれば固体触媒でありながら高い反応速度と高いエステル収率を実現できる。 次に、上記と同じく粉末状触媒を用い、槽型の反応装置により、回分式反応を行った例において触媒の活性化における活性化時間の影響について説明する。図4は、エステル収率の時間変化を示すグラフであり、塩基触媒の活性化処理時間の違いによる比較を示す。多少の反応速度の違いが見られるが0.5時間以上活性化処理を行えば活性化のないものに比べ高い反応速度が得られることが分かる。なおこの試験で用いた酸化カルシウムは市販の粉末状酸化カルシウム(和光純薬工業(株))であり、この活性化に要する時間は酸化カルシウムの焼成温度などの条件にも合わせて適宜調整することが好ましい。 この実施例のように、槽型の反応装置で粉末状の塩基触媒を用いる場合には、塩基触媒をメタノール中で撹拌して活性化処理するのが好ましい。図4に示すように、撹拌時間は15分から24時間程度が好ましい。さらに所要時間と効果の関係を考慮すると、15分から5時間がより好ましい。 次に従来触媒との比較を示す。均一触媒である水酸化カリウム(KOH)を使用して比較試験を行った。触媒を水酸化カリウム0.01gとし、それ以外は上記条件と同じように試験を行ったところ、3時間後のエステル収率は(77%)、10時間後のエステル収率は(77%)であった。また、水酸化カリウムを0.05gとした場合には、3時間後のエステル収率は(91%)、10時間後のエステル収率は(90%)であった。以上、本発明は反応速度・エステル収率ともに水酸化カリウムを使用した場合と遜色ないものであった。図5は、エステル収率の時間変化を示すグラフであり、活性化処理を行った塩基触媒と水酸化カリウムの比較を示す。 また、カルシウムのアルコラート触媒を使用して比較試験を行った。図6は、エステル収率の時間変化を示すグラフであり、活性化処理を行った塩基触媒とアルコラート触媒の比較を示す。CaO0.05g活性化あり(図6中に「0.05g活性化」と表示)触媒として酸化カルシウム0.05g、メタノール3.9gをナス型フラスコに入れ、室温にて1〜1.5時間マグネティックスターラーで撹拌した。その後サラダ油15gを添加し、還流冷却器を付けて反応温度60℃にて撹拌した。反応経過は上記と同様に測定した。その結果3時間後のエステル収率は(89%)、10時間後のエステル収率は(87%)であった。CaO0.005g活性化あり(図6中に「0.005g活性化」と表示)触媒として酸化カルシウム0.005gとした以外は上記と同様に測定した。その結果3時間後のエステル収率は(75%)、10時間後のエステル収率は(83%)であった。Ca(OH)(OCH3) 0.05g活性化なし(図6中に「Ca(OH)(OCH3)0.05 g」と表示)酸化カルシウム1gをメタノール10mlに加えてスラリーとし、5時間加熱還流を行った。これを濾過、乾燥することにより白色粉末を得て、これをアルコラート触媒Ca(OH)(OCH3)として使用する。これは、特許文献5にも記載されている製造方法である。CaOの0.05gと等mol量の0.079gを使用する。それ以外は上記CaO0.01g活性化なしと同条件である。その結果3時間後のエステル収率は(49%)、10時間後のエステル収率は(89%)であった。Ca(OCH3)2 0.005g活性化なし(図6中に「Ca(OCH3)2 0.005 g」と表示)アルコラート触媒Ca(OCH3)2 の市販品を用いた。この触媒を0.0091gとした以外は上記CaO0.01g活性化なしと同じように試験を行った。その結果3時間後のエステル収率は(11%)、10時間後のエステル収率は(65%)であった。以上より、本実施例の触媒活性化の効果が特に高いことが分かる。 この発明の第2の実施例について説明する(実施例2は参考例である)。これも槽型の反応装置で回分式反応を行った例である。油脂としてサラダ油15g、アルコールとしてメタノールを使用し、60℃にて反応を行った。塩基触媒は、酸化カルシウム0.005gをメタノール中で1.5時間攪拌し、活性化したものを使用した。油脂とメタノールの重量比を(100:26)、(100:50)、(100:100)の3条件に変えて試験を行った。また、比較例として、水酸化カリウム(KOH)0.005gを使用して同様の試験も行った。図7は、第2の実施例におけるエステル収率の時間変化を示すグラフである。 酸化カルシウムを使用した場合、いずれの油脂/メタノール比においても水酸化カリウムを使用した場合より高い反応速度とエステル収率を達成している。また、水酸化カリウムを使用した場合、メタノールを多くすると高いエステル収率に達するが反応初期の反応速度は遅く、メタノールを少なくすると反応初期の反応速度は速いが高いエステル収率に達しない。 この発明の第3の実施例について説明する(実施例3は参考例である)。これも槽型の反応装置で回分式反応を行った例である。第1および第2の実施例は、反応槽で1回だけ反応させた例であり、これでもすでにエステル収率80%以上の純度の脂肪酸アルキルエステルを得ている。この実施例では、エステル収率を上げるために1回目の反応後に副生成物のグリセリン除去を行い、2回目の反応を行った。 触媒として酸化カルシウム0.5g、メタノール19.5gをナス型フラスコに入れ、室温にて0.5時間マグネティックスターラーで撹拌した。その後サラダ油75gを添加し、還流冷却器を付けて反応温度60℃にて4時間撹拌を行った。反応溶液からメタノールを減圧除去した後しばらく静置し、グリセリン層を分層分離した。この1段目の反応終了後の反応溶液のBDF収率は91%であった。次に2段目の反応を行うために酸化カルシウム0.25g、メタノール15gをナス型フラスコに入れ、室温にて0.5時間マグネティックスターラーで撹拌し、これに先ほどの1段目の反応溶液を添加した。還流冷却器を付けて反応温度60℃にて2時間撹拌を行った。反応溶液を濾過して触媒を除去した後、メタノールを減圧除去した。しばらく静置し、グリセリン層を分層分離した。この反応溶液のエステル収率は97%であった。これにより、BDFに対して要求される国際的な基準等を満たす純度の高い脂肪酸アルキルエステルを得ることが可能となる。 この発明の第4の実施例について説明する。図2に示す流通式回分反応装置を使用して製造する例である。内径50mm、長さ100mmの反応管に、5日間メタノールに浸漬して活性化した平均粒径3〜5mm程度の粒状の酸化カルシウムおよそ75mlを充填した。60℃の恒温槽に反応管を設置し、油150gとメタノール50gを反応槽にて混合し、流量15ml/分となるように定量ポンプで連続的に反応管に流通した。4から6時間経過後、少量をサンプリングし、メタノールを減圧下で除去し、遠心分離にてエステル層を分離した。このエステル約100mgを量りとり、実施例1と同様の方法によってエステル収率を求めた。図8は、反応回数による触媒活性の変化を示すグラフである。40回繰り返して反応させてもエステル収率の低下はみられなかった。 また、エステル交換反応により生成したグリセリンを分離・除去して得られた脂肪酸アルキルエステルを減圧蒸留で精製した例についても説明する。図9は、脂肪酸アルキルエステル製造装置の構成を示すブロック図である。反応装置20は図1に示すような流通式反応装置でもよく、図2に示すような回分反応装置(流通式回分反応装置を含む)でもよい。流通式反応装置の場合、第2反応管6や第2分離装置7は省略しても良い。この反応装置20により生成された脂肪酸アルキルエステルを減圧蒸留するための減圧蒸留装置21が備えられている。 蒸留は、温度250℃以下、圧力10Torr(1330Pa)以下にて行う。ここでは、この実施例で得られた脂肪酸アルキルエステル101gを温度160℃、圧力80Paにて減圧蒸留をおこなって、精製した。精製物のデータを表1に示す。純度の高いBDFが得られたことが確認できる。グリセリン、ジグリセリド、モノグリセリドの含有量などについて、BDFに関するEU規格値も示してある。既存のアルカリ触媒法ではこの数値をクリアすることは容易ではなかったが、この精製物はいずれの基準値をも十分にクリアしている。このように高純度のBDFを製造できるにもかかわらず、製造コストは低く抑えることができ、液体触媒・水洗処理による従来方法より安く実施することも可能である。 この発明の第5の実施例について説明する。管型の流通式反応装置を使用して連続製造する例である。図1に示すような装置が使用できるが、この実施例では、第2反応管6と第2分離器7は使用せず、1段の反応で脂肪酸アルキルエステルを製造する例を示す。内径9mm、長さ250mmの管型反応装置に、平均粒径3〜5mm程度の粒状の酸化カルシウムおよそ6.3gを所定日数の期間25℃のメタノールに浸して活性化した固体塩基触媒15mlを充填した。60℃の恒温槽に反応管を設置し、油とメタノール重量比が100:75、流量15ml/時間となるように定量ポンプで連続的に反応管に流通した。反応の経過を見るために少量をサンプリングし、先と同様にメタノールを減圧下で除去し、遠心分離にてエステル層を分離した。このエステル約100mgを量りとり、イソオクタンで5mlに希釈した後、その脂肪酸エステルの量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により定量し、エステル化収率を求めた。図10はこの実施例におけるエステル収率の時間変化を示すグラフである。45時間後のエステル収率は5日浸漬したものが88%、7日浸漬したものが62%、10日浸漬したものが58%であった。 この実施例のように塩基触媒を反応管に充填し、その反応管に油脂類とアルコールを通して反応させる場合、粒状の塩基触媒を反応管に入れることが好ましい。この場合、予めアルコール中に塩基触媒を浸漬することなく反応管に装填すると、反応管に油脂類とアルコールを導入したときに塩基触媒が膨れ上がり、反応管内の内圧の上昇などを引き起こすが、予めアルコール中に塩基触媒を浸漬することによってこれを防止でき、また、触媒性能を高めることができる。浸漬時間は触媒の形状や表面積などによるが一般的には3日以上静置すればよく、より好ましくは3から7日である。本実施例の条件下では5日程度が最適であった。 図11はエステル収率の時間変化を示すグラフであり、油脂類・メタノール重量比による違いを示す。酸化カルシウムをメタノール中に5日間浸漬させて活性化したものを使用し、60℃にてエステル交換反応を行った。油脂とメタノールの重量比を(100:26)、(100:100)、(100:150)とした例を表示している。油脂とメタノールの重量比が100:26のときエステル収率は時間の経過とともに低下しており、エステル収率の観点からは、油脂100に対してメタノールの重量比が30以上であることが好ましい。一方、メタノールの含有量が多くなると、エステル収率の低下が見られるとともにエステル交換反応の後におけるメタノールを除去するための処理の負担が大きくなる。この観点からは、油脂100に対してメタノールの重量比が110以下であることが好ましい。エタノール収率とメタノール除去処理の負担が最もバランスよいのは、油脂100に対してメタノールの重量比が40以上80以下である。 この発明は、不純物が少ない脂肪酸アルキルエステルを低コストで製造する方法として広く使用できる。植物性の油脂を原料として使用できるので、たとえば、化石燃料に変わるBDFの製造方法として利用できる。特に、廃油を原料として使用すれば、廃棄物の再利用としての意義も有する。 油脂類とメタノールとの間で粒径が1〜10mmの酸化カルシウムを含む粒状の塩基触媒の存在下にエステル交換反応を行って脂肪酸メチルエステルを製造するに際し、予め該塩基触媒をメタノール中に20〜40℃で3〜7日浸漬させることによって活性化処理することを特徴とする脂肪酸メチルエステルの製造方法。 油脂類とメタノールを重量比で100:30〜100:110の割合で混合し、この混合液を活性化処理した塩基触媒を充填した反応管に流通させてエステル交換反応させる請求項1に記載の脂肪酸メチルエステルの製造方法。 油脂類とメタノールを混合し、この混合液を活性化処理した塩基触媒を充填した反応管に流通させてエステル交換反応させ、反応混合物からグリセリンを分離し、生成した脂肪酸メチルエステルを精製するために温度250℃以下、圧力1330Pa以下において減圧蒸留を行う請求項1に記載の脂肪酸メチルエステルの製造方法。 油脂類とメタノールを混合するための混合装置と、予めメタノール中に20〜40℃で3〜7日浸漬させることによって活性化処理した粒径が1〜10mmの酸化カルシウムを含む粒状の塩基触媒を充填し混合液を流通させてエステル交換反応を行うための反応管と、反応混合物からグリセリンを分離するための分離装置と、生成した脂肪酸メチルエステルを精製するための減圧蒸留装置を有する脂肪酸メチルエステルの製造装置。