タイトル: | 特許公報(B2)_1,6−ヘキサンジオールの製造方法 |
出願番号: | 2007553939 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C07C 29/149,C07C 31/20,C07B 61/00 |
井伊 宏文 伊藤 智行 河村 嘉樹 松下 敏之 JP 5428161 特許公報(B2) 20131213 2007553939 20070112 1,6−ヘキサンジオールの製造方法 宇部興産株式会社 000000206 津国 肇 100078662 束田 幸四郎 100113653 齋藤 房幸 100116919 井伊 宏文 伊藤 智行 河村 嘉樹 松下 敏之 JP 2006005802 20060113 20140226 C07C 29/149 20060101AFI20140206BHJP C07C 31/20 20060101ALI20140206BHJP C07B 61/00 20060101ALN20140206BHJP JPC07C29/149C07C31/20 ZC07B61/00 300 C07C 29/149 C07C 29/80 C07C 31/20 特表2000−505468(JP,A) 特表2002−516889(JP,A) 特開2004−339174(JP,A) 特開2005−008586(JP,A) 6 JP2007050286 20070112 WO2007080946 20070719 19 20091228 松本 直子 本発明は、1,6−ヘキサンジオールの製造方法に関する。 1,6−ヘキサンジオールは、ポリエステル樹脂や、ウレタンフォームやウレタン塗料、接着剤の原料として有用な物質である。例えばポリウレタンの原料としては、鎖延長剤としてそのまま用いることができ、またポリカーボネートジオールやポリエステルポリオール等の製造に用いてソフトセグメントとして用いることができる。 ε−カプロラクタムの合成原料として有用なシクロヘキサノン及び/又はシクロヘキサノールは、シクロヘキサンの空気酸化により工業的に製造されているが、1,6−ヘキサンジオールは、シクロヘキサンの空気酸化の際に副生するグルタル酸、アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などを含むカルボン酸混合物をアルコールによってエステル化した後に水素還元し、1,6−ヘキサンジオールとし、これを蒸留分離することにより製造されている(特許文献1及び2)。 上記方法で得られた1,6−ヘキサンジオールには、不純物として1,4−シクロヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、高沸点成分などが含まれているため、例えば、1,6−ヘキサンジオールを原料としてポリカーボネートジオールを製造し、これを原料としてウレタン化反応を行うと、重合速度が遅く、十分な分子量が得られないこと、また鎖延長剤としてウレタン化反応にそのまま用いた場合にも同様な問題があることがわかった。また、ポリエステル製造時にも重合速度に同様な影響が出てくるという問題などもあった。 不純物である1,4−シクロヘキサンジオールを除去することについては、特許文献3には、上記カルボン酸混合物をアルコールによってエステル化した後に予備水素還元し、シクロヘキサノン、シクロヘキサノールに変換する方法が、特許文献4には、蒸留により1,4−シクロヘキサンジオールほぼ不含のエステルを得る方法が記載されている。 しかしながら、予備水素還元する方法では製品純度が十分ではないという問題があった。またエステルを蒸留する方法においては、エステルは、モノマーであることが好ましいが、実際は、カルボン酸混合物の有効成分の多くは水抽出後の濃縮によりオリゴマーエステルとなるため、1,6−ヘキサンジオールを高収率、高純度で得るには、カルボン酸モノマーのエステル化のみならずオリゴマーエステルの解重合も必要である。しかし、従来の製造法では、カルボン酸モノマーのエステル化とオリゴマーエステルの解重合が同時に行われていた為、カルボン酸のエステル化によって生成する水や残存するカルボン酸のため、解重合で有効なルイス酸触媒や塩基触媒が失活し、解重合に時間がかかるという問題や、水やカルボン酸や酸触媒(例えば鉱酸)によって反応器が腐食するという問題があった。また、エステル化および解重合反応は平衡反応であるが、生成する水の影響で平衡反応収率が上がらないという問題もあった。更にまた、エステル化によって生成するエステル、水、アルコールなどを分離するための多くの設備が必要であった。米国特許第3,524,892号明細書米国特許第3,268,588号明細書特開昭51−108040号公報特表2000−505468号公報 本発明者らは、上記のような欠点を有しない、1,6−ヘキサンジオールを合成する方法を提供することを目的として鋭意研究を行った結果、シクロヘキサンから1,6−ヘキサンジオールを製造する方法において、シクロヘキサンの酸化の副生成物として得られるカルボン酸混合物のエステル化と共に、反応混合物からカルボン酸エステル、水、及びエステル化に用いた過剰の低級アルコールを留去する工程を同時に行う一方、その後釜に含まれるオリゴマーを解重合してカルボン酸エステルに変換する工程を触媒存在下、高温、高圧下で行うことにより、上述の問題が解消され、1,4−シクロヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、高沸点成分などの不純物の含有量が極めて低減された、純度の高い1,6−ヘキサンジオールを高収率で得ることができることを発見して、本発明を完成させるに至った。 本発明は、シクロヘキサンから1,6−ヘキサンジオールを製造する方法であって、(1)シクロヘキサンの酸化により得られた反応混合物の水抽出濃縮液を低級アルコールで処理して、抽出液中に含まれるモノカルボン酸及びジカルボン酸をエステル化するとともに、水、過剰の低級アルコール及びカルボン酸エステルを留去・分留し;(2)釜残に含まれるオリゴマーエステルを、低級アルコールの存在下、触媒の存在下、高温、高圧下で解重合して、カルボン酸エステルに変換し;(3)上記工程(1)で分留したカルボン酸エステル、及び上記工程(2)で得たカルボン酸エステルをそれぞれ、又は併せて水素化し、1,6−ヘキサンジオールに変換する;工程を含む方法。に関する。 本発明の方法を用いることにより、エステル化と共に水や有機酸を除去することにより、従来よりも少ない設備で効率よくエステル化を行うことができ、解重合工程においても、水や酸に弱いルイス酸触媒や塩基触媒を失活させることなく、また反応器の腐食も抑えることができ、反応速度を格段に向上させることができる。更に、ポリウレタンやポリエステルの製造時に重合速度を低下させる不純物である1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオールなどの含有量が極めて低減された、純度の高い1,6−ヘキサンジオールを収率良く得ることができる。本発明の方法のエステル化の装置例である。本発明の方法のエステル化の装置例である。本発明の方法の解重合反応の相変化図である。本発明の方法のエステル化の装置図である。本発明の方法の工程概略図の一例である。解重合の工程における、反応温度および反応圧力の、解重合の収率に対する影響を示す図である。 本発明は、(1)シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスで酸化することにより得られた反応混合物を水で抽出することにより、副生成物であるグルタル酸、アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのカルボン酸混合物を抽出し、次いで濃縮して得られた濃縮液を低級アルコールで処理して、濃縮液中に含まれるモノカルボン酸及びジカルボン酸をエステル化するとともに、水、過剰の低級アルコール及びカルボン酸エステルを留去・分留する工程を同時に行い;(2)釜残に含まれるオリゴマーエステルを、低級アルコールの存在下、触媒の存在下、高温、高圧下で解重合して、グルタル酸エステル、アジピン酸エステル、6−ヒドロキシカプロン酸エステルなどのカルボン酸エステルに変換し;(3)上記工程(1)で分留したカルボン酸エステル、及び上記工程(2)で得たカルボン酸エステルをそれぞれ又は併せて水素化して1,6−ヘキサンジオールに変換する;ことによって、シクロヘキサンから1,6−ヘキサンジオールを製造するというものである。 本発明の方法について、以下に詳細に説明する。 本発明の(1)工程においては、シクロヘキサンの酸化により得られた反応混合物を水で抽出し、濃縮した抽出液を低級アルコールで処理する。かかる抽出液を得るには、具体的には、まずシクロヘキサンを、酸素又は酸素含有ガスで酸化して、主成分であるシクロヘキサノン及びシクロヘキサノールと、副生成物であるグルタル酸、アジピン酸、6−ヒドロキシカプロン酸などのカルボン酸を含む混合物を得る。シクロヘキサンを酸素又は酸素含有ガスにて酸化する方法は、当業者であれば適宜選択することができるが、例えば、Ullmannn's Encyclopedia of Industrial Chemistry,5.Ed,1987.Vol.A8,S.2/9に記載の方法が挙げられる。具体的には、シクロヘキサンを含む反応容器に酸素又は酸素含有ガスを導入し、コバルトなどの金属塩(オクチル酸コバルトなど)を触媒として用いて、0.8〜1.2MPaの加圧下に、150〜180℃で反応させることにより行うことができる。 次いで、得られた酸化反応混合物を水で処理することにより、カルボン酸混合物を水層に抽出して、シクロヘキサノン及びシクロヘキサノールから分離する。抽出に際しては、酸化反応液に対して例えば1〜10wt%の水を用いて抽出を行うことができる。 この段階では抽出した水層には、一般には、アジピン酸1〜4wt%、6−ヒドロキシカプロン酸1〜4wt%、グルタル酸0.01〜1wt%、5−ヒドロキシ吉草酸0.01〜1wt%、1,2−シクロヘキサンジオール(シス及びトランス)0.01〜0.5wt%、1,4−シクロヘキサンジオール(シス及びトランス)0.01〜0.5wt%、ギ酸0.01〜1wt%、並びにその個々の含量が一般に0.5wt%を上まわらないその他の多くのモノ−及びジカルボン酸、エステル、アルコール、アルデヒド等の含酸素化合物が含まれている。その他のモノ−及びジカルボン酸、エステル、アルコール、アルデヒド等の含酸素化合物としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、蓚酸、マロン酸、コハク酸、4−ヒドロキシ酪酸及びγ−ブチロラクトンなどが含まれている。 ついで、カルボン酸混合物を含む水層を濃縮する。濃縮は、通常、蒸留により行う。温度10〜250℃、好ましくは20〜200℃、更に好ましくは30〜200℃で、圧力0.1〜150KPa、好ましくは2〜110KPa、更に好ましくは10〜105KPaで、蒸留することにより、濃縮前に比べて1/50〜1/2倍、好ましくは1/20〜1/3倍の量にまでする。この条件で濃縮することにより、水を全量の2wt%以下、好ましくは1wt%以下まで濃縮することができる。 この濃縮で、抽出した水層に含まれていた各種カルボン酸が一部縮合して、オリゴマーエステルが生成する。 上記のように水抽出し、濃縮して得られたカルボン酸混合物(以下、COAと示す)を低級アルコールで処理して、抽出濃縮液中に含まれるモノカルボン酸及びジカルボン酸をエステル化するとともに、水、過剰の低級アルコール及びカルボン酸エステルを蒸留により留去・分留する工程を同時に行う。このエステル化と留去・分留の工程は、一つの装置で行うことができる。 エステル化に用いる低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、好ましくは、メタノールを用いることができる。 また用いる低級アルコールの量については、上記の濃縮したカルボン酸混合物(COA)に対してアルコールの混合比(質量比)が、0.1〜30、有利に0.5〜15、特に有利に1〜5である。 エステル化に際しては、撹拌槽、気泡塔、蒸留塔などの反応容器中、必要に応じてこれらを複数使用して、上記の濃縮したカルボン酸混合物(COA)を反応装置上部又は中部から降下させ、低級アルコールを反応装置下方から導入して、向流で反応させるか、上記の濃縮したカルボン酸混合物(COA)の液相中に、低級アルコールの気体(ガス)を導入する、或いは、これらを併合してエステル化を行う。この反応は通常、加熱して行われ、必要であれば触媒が使用される。 低級アルコールは、液体で系内に導入してガス化させても、系外でガス(気体)化させても導入することができる。 上記の濃縮したカルボン酸混合物(COA)の液相中に、低級アルコールを導入するエステル化においては、撹拌機にて、液相の撹拌を行うこともできる。また、エステルに混入すると好ましくない高沸分を分離するために、留出ガスに蒸留塔を設けることも可能である。 加熱温度は、使用する低級アルコールの種類に応じて適宜選択することができるが、例えば50〜400℃、好ましくは100〜300℃、更に好ましくは150〜250℃の温度で行うことができる。 またエステル化の工程は、加圧条件下で行うことができるが、エステル化反応の反応装置中の自己圧で行うこともできる。エステル化は、0〜5MPa、更に0.5〜2MPa、特には1〜1.5MPaの圧力下で行うのが好ましい。 上記の温度及び圧力についての反応条件は、エステル化に用いる低級アルコールの種類に応じて適宜選択できる。例えばメタノールを使用する場合、温度100〜300℃(好ましくは、240℃)、圧力0.01〜10MPa(好ましくは、0.5〜2MPa)とすることができる。 エステル化工程の反応時間は、使用する低級アルコールの種類、反応化合物の量などに応じて適宜選択することができるが、例えば0.3〜10時間、好ましくは0.5〜5時間とすることができる。 エステル化の工程は、触媒の添加なしに行うことができるが、反応速度を高めるために触媒の存在下で行うこともできる。触媒としては、均質に溶解する触媒又は固体触媒を用いることができる。均質に溶解する触媒としては、例えば鉱酸(例えば硫酸、リン酸、塩酸など)、スルホン酸(例えばp−トルエンスルホン酸)、ヘテロポリ酸(例えばリンタングステン酸)、又はルイス酸(耐水性、耐酸性のものに限る)などを挙げることができる。 固体触媒としては、酸性又は過酸性材料を用いることができる。例えば、酸性又は過酸性金属酸化物;酸性強化のためにスルフェート基又はホスフェート基などの鉱酸残基が添加されたSiO2、Al2O3、SnO2、ZrO2、成層ケイ酸塩、ゼオライト;スルホン酸基又はカルボン酸基を有するイオン交換樹脂;等が挙げられる。 固体触媒は固定床とするか、懸濁床として使用することができる。 懸濁床の場合、触媒の使用量は、全量に対して0.1〜5wt%であり、固定床の場合、LHSVが0.1〜5h-1の範囲である。 均質に溶解する触媒又は固体触媒の使用量は、全量に対して0.01〜1wt%である。触媒は、エステル化工程の後に分離することもできるが、そのまま次の解重合工程の触媒として使用することもできる。 上記のエステル化の工程をより具体的に説明すると、例えば、反応装置中のカルボン酸混合物にガス状低級アルコールを導入する気液反応(図1)、あるいは充填塔、棚段塔などの反応蒸留塔の上方又は中部からカルボン酸混合物(COA)を装置内に滴下し、下方からガス状低級アルコールを導入する気液反応(図2)によって行うことができる。このような操作により、液相中にアルコールが溶け込んでエステル化が進行すると共に、生成した液相中の水が気相に放出されることにより、水が系内から十分に除去され、効率的に30mgKOH/g以下と低い酸価(AV)を達成することができる。また、カルボン酸混合物中の未反応のアジピン酸や6−ヒドロキシカプロン酸、1,4−シクロヘキサンジオールなどの高沸点成分、触媒を使用した場合は触媒等が留出液に混入する量は問題にならない程度である。即ち、エステル化反応と好ましくない物質との蒸留分離が同時に行えるのが特徴である。 エステル化工程で分留されたカルボン酸エステル、低級アルコール及び水の混合物は、蒸留塔に導入され、そこで圧力0.1〜200KPa、温度0〜150℃、好ましくは、圧力10〜150KPa、温度25〜200℃にて低級アルコールが留去される。得られた釜残を蒸留塔に再度導入するか、又は第二の蒸留塔に導入し、圧力0.1〜150KPa、温度0〜150℃、好ましくは、圧力4〜120KPa、温度25〜120℃にて、水が留去される。このようにして上記混合物から分離されたカルボン酸エステルは、以降の(3)工程の水素化に付す前に、更に蒸留することもできる。 その一方、濃縮したカルボン酸混合物に含まれていた化合物のうち、6−ヒドロキシカプロン酸の末端ヒドロキシル基とダイマーを形成した化合物や、オリゴマーエステル(オリゴマーと記載)は、釜残として残留する。 本発明の(2)工程においては、(1)工程において水、生成したカルボン酸エステル、そして過剰の低級アルコールを、留去し、分留した後の釜後に含まれるオリゴマーエステルを、触媒の存在下、低級アルコールを存在させて、高温、高圧下で解重合して、アジピン酸エステル、6−ヒドロキシカプロン酸エステルなどのカルボン酸エステルに変換する。 (2)工程において用いることができる触媒としては、均質に溶解する触媒又は固体触媒を挙げることができる。均質に溶解する触媒としては、例えば、鉱酸(例えば、硫酸、リン酸、塩酸など)、スルホン酸(例えば、p−トルエンスルホン酸)、ヘテロポリ酸(例えば、リンタングステン酸)、ルイス酸(例えば、アルミニウム化合物、バナジウム化合物、チタン化合物、硼素化合物、亜鉛化合物)、塩基触媒(例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、アルコレート、又はアミンなどが挙げられる。)などを挙げることができるが、好ましくはルイス酸又は塩基触媒、更に好ましくは、ルイス酸を挙げることができる。 ルイス酸としては、テトラアルコキシチタン、更には、テトラn−ブトキシチタン、テトライソプロポキシチタンを好ましく使用することができる。 本発明の方法では、(1)工程でエステル化反応により生成する水や残存するカルボン酸が系から除去されるため、(2)工程において、酸や水による上記触媒の劣化が少なく、このため、特にルイス酸を好ましく用いることができる。 均質に溶解する触媒の使用量は、工程(1)の釜残に対する重量比として一般に、0.00001〜0.01、有利に0.0001〜0.005である。 固体触媒としては、酸性又は過酸性材料を用いることができ、例えば酸性又は過酸性金属酸化物、酸性強化のためにスルフェート基又はホスフェート基などの鉱酸残基が添加されたSiO2、Al2O3、SnO2、ZrO2、成層ケイ酸塩、ゼオライト、スルホン酸基又はカルボン酸基を有するイオン交換樹脂等が挙げられる。固体触媒は固定床とするか、懸濁床として使用することができる。 触媒として均質に溶解する酸触媒を使用した場合は、解重合後の反応溶液を塩基で中和してもよい。塩基の使用量は、触媒の酸当量あたり1〜1.5当量である。塩基としては、一般に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、アルコレート、又はアミンなどが挙げられる。これらは、そのまま、或いは解重合に用いる低級アルコールに溶解させて使用することができる。 (2)工程において用いることができる低級アルコールとしては、メタノール、エタノール、好ましくは、メタノールを用いることができる。 解重合で用いることができる低級アルコールの使用量は、オリゴマーエステルを含む(1)工程における蒸留釜残に対して0.5〜10倍(重量)、好ましくは1〜5倍である。 解重合反応は、高温、高圧下、具体的には高温かつ解重合反応液の蒸気圧曲線よりも高圧側(液相)で行う。より具体的には、低級アルコールとしてメタノールを用いる場合には、反応は、200℃で4MPa以上、好ましくは240℃で8MPa以上、特に好ましくは、250〜280℃にて9〜15MPa、更に特に好ましくは265〜275℃にて9〜12MPaの条件下、液相で行う。 低級アルコールとしてメタノールを用い、メタノール/エステル比を変化させた場合の解重合反応液の相変化を示す蒸気圧曲線の例を図3に示す。 なお、この蒸気圧曲線は、約50ccサファイヤグラス付きオートクレーブ(可視化装置)を減圧にした後、工程(1)のエステル化後の残留釜残と低級アルコールを1/3容量仕込み、密封したまま昇温させながら、温度と圧力の関係をプロットすることによって得ることができる。この蒸気圧曲線より上側の条件にすることにより、つまり、蒸気圧曲線上(気液状態)よりも加圧した条件にすることにより、均一の液相となり、この条件下で解重合反応を進行させる。 上記のような高温、高圧下、液相で解重合反応を行うことにより、解重合反応は速やかに進行するため、反応時間は、0.5分〜10分、好ましくは1〜5分とすることができる。また均一相での反応であることから、スケールアップも容易である。 解重合反応を行うには、具体的には、(1)工程における釜残に、低級アルコール及び触媒を添加し、上記の条件で加圧加熱する。 そして、上記(1)工程においてエステル化により生成する水が系から除去されており、また酸価(AV)が低下しているため、酸や水分による反応器の腐食は軽減されている。 次に、解重合後の反応混合物から、使用した過剰の低級アルコールを、蒸留留去する。その際の圧力は、0.1〜150kPa、好ましくは2〜100kPa、特に好ましくは4〜80kPaである。塔頂温度は、例えば0〜150℃、好ましくは15〜90℃、特に好ましくは25〜75℃である。塔底部温度は70〜250℃、有利に80〜220℃、特に有利に100〜200℃である。 なお、過剰の低級アルコールの除去においては、解重合条件から圧力を解放するフラッシュ蒸留が好ましい。 このような条件で蒸留することにより、解重合後の反応混合物に含まれている過剰の低級アルコール、水、並びに例えばギ酸、酢酸及びプロピオン酸の相応する低沸点のエステルが分離される。この物質流は燃焼するか、又は回収されたアルコールは、エステル化工程又は解重合工程で更に再利用することができる。 上記の低級アルコール、水、並びに例えばギ酸、酢酸及びプロピオン酸の相応する低沸点のエステル等とは別に、主に、使用した低級アルコールとジカルボン酸、例えばアジピン酸及びグルタル酸、ヒドロキシカルボン酸(例えば6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸など)とのカルボン酸エステル、未反応オリゴマーエステル及び遊離もしくはエステル化された1,4−シクロヘキサンジオール、その他高沸点成分を含む混合物が分離される。 この混合物は、次の(3)工程の水素化の前に、蒸留に付して、1,4−シクロヘキサンジオールなどの高沸点成分や水素化触媒の触媒毒であるAV成分(工程(1)に含まれるモノカルボン酸及びジカルボン酸、例えば、アジピン酸、グルタル酸、6−ヒドロキシカプロン酸、5−ヒドロキシ吉草酸、又はその縮合物)を除去しておくことが好ましい。この蒸留は、先の工程(1)でエステル化され、蒸留によって水、アルコールと共に分留されたカルボン酸エステルの蒸留とは、それぞれ別に、或いは併せて行っても良い。 この(エステル)蒸留工程の圧力は、0.1〜100kPa、有利に0.1〜10kPa、特に有利に0.3〜5kPa、である。塔頂温度は、50〜200℃、有利に80〜180℃、特に有利に90℃〜150℃である。塔底温度は、70〜250℃、有利に100〜230℃、特に有利に130〜220℃である。 また、上記の蒸留によって得られる釜残を再度上記と同じ条件により解重合に付して、釜残に含まれていたオリゴマーエステルをカルボン酸エステルに変換することもできる。上記(1)工程において水が系外に除去されているため、(2)工程の1回目の解重合においてルイス酸を使用した場合でも、ルイス酸は水による失活を被らないため、この2回目の解重合反応において再度ルイス酸を添加しなくても良い。このようにして2回目の解重合により得られるカルボン酸エステルもまた、先に得られたカルボン酸エステルと共に又は別々に、次の工程(3)の水素化に付して、1,6−ヘキサンジオールとすることができる。 本発明の(3)工程においては、上記工程(1)で分留したカルボン酸エステル、及び上記工程(2)で得たカルボン酸エステルを水素化し、蒸留して1,6−ヘキサンジオールに変換する。 上記工程(1)で分留したカルボン酸エステル、及び上記工程(2)で解重合し、場合によっては更に蒸留に付して得られたカルボン酸エステルは、別々に、又は一緒にして水素化することができる。水素化還元は、触媒を用いて接触的に、水素ガス相又は液相中で行う。 水素化に用いる触媒としては、カルボニル基の水素化に好適な全ての均質或いは不均質触媒を用いることができ、例えば、金属、金属水酸化物、金属化合物又はこれらの混合物を挙げることができる。 ここで、均質な触媒としては、例えば、フーベンヴァイル(Houben-Weyl,Methoden der OrganischenChemie,Band IV/Ic,GeorgThieme Verlag Stuttgart,1980.S.4567)に記載のものが挙げられる。また、不均質触媒としては、例えば、フーベンヴァイル(Houben-Weyl,Methoden der Organischen Chemie,Band IV/1c,S.16-26)に記載のものが挙げられる。金属触媒としては、上記非特許文献に記載の周期律表の副族I、及びVI〜VIIIの金属、特に、銅、クロム、モリブデン、マンガン、レニウム、ルテニウム、コバルト、ニッケル、又はパラジウムを用いることができ、これら金属の1種又は複数種を用いることができる。 特に銅含有水素化触媒を好ましく用いることができる。具体的には、Cu−Cr、Cu−Zn、Cu−Zn−Al、Cu−Zn−Ti、Cu−Fe−Al、Cu−Si等があげられる。また、その形態については特に限定されるものではなく、反応器の形式によって、粉末、顆粒、錠剤等の形態から適宜選択すればよい。銅亜鉛触媒の場合、微量のアルミニウム、マグネシウム、ジルコニウム等を含んでも良い。 水素化反応において、不均質触媒は、固定床又は懸濁床にて使用される。 触媒の量は、触媒の種類に応じて適宜選択することができるが、一般的には、固定床の場合、LHSV=0.1〜5h−1とし、懸濁床の場合、懸濁液に対して0.1〜5wt%とすることができる。 水素化反応を、ガス相中で行う場合は、固定床触媒を用い、圧力は、0.1〜15MPa、好ましくは、0.5〜12MPa、更に好ましくは1〜10MPaである。 反応温度は、100〜350℃、好ましくは、120〜300℃である。 水素化反応を、液相中で行う場合は、固定床又は懸濁床にて行うことができが、いずれの場合も、圧力1〜35MPa,温度100〜350℃、好ましくは、圧力5〜30MPa、温度200〜300℃で行うことができる。 水素化還元は、1つの反応器中で、或いは、複数の反応器を直列に接続して実施することもできる。水素化還元は、非連続的に行うこともできるが、連続的に行うことが好ましい。 上記の条件で水素化還元を行って得られる反応混合物は、主に1,6−ヘキサンジオールを含み、その他の成分としては、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール並びに少量の炭素原子1〜7個を有するモノ又はジアルコール及び水が得られる。 これらの反応混合物を、膜システム又は蒸留カラムに付すことによって、水や低級アルコールなどの低沸点成分と、1,5−ペンタジオール及び1,2−シクロヘキサンジオール、そして1,6−ヘキサンジオールを主に含有する成分とに蒸留分離することができる。この蒸留における圧力は、1〜150KPa、好ましくは、10〜120KPa、更に好ましくは、20〜110KPaである。蒸留温度は、塔頂温度は、0〜100℃、好ましくは30〜70℃、塔底部温度は、100〜220℃、好ましくは120〜200℃である。 上記の蒸留分離によって得られた1,6−ヘキサンジオールを主に含有する成分は、更に、蒸留カラム中で精製して、1,6−ヘキサンジオールを、1,5−ペンタンジオール、場合により1,2−シクロヘキサンジオール、並びにその他の場合により存在する低沸点化合物から分離することができる。この蒸留条件としては、圧力は、例えば0.1〜100KPa、好ましくは、0.5〜50KPa、更に好ましくは、1〜10KPa、蒸留カラムの塔頂部の温度は、例えば50〜200℃、好ましくは、60〜200℃、塔底部の温度は、例えば130〜250℃、好ましくは150〜220℃に調節することができる。このような条件で蒸留カラムを用いて蒸留精製を行うことにより、1,6−ヘキサンジオールを、99%以上の純度で得ることができる。 また、1,5−ペンタンジオールを獲得しようとする場合は、更に蒸留カラムで分離できる。 以下に本発明を実施例により詳細に説明する。工程1:シクロヘキサンの酸化及び水による抽出 シクロヘキサンを160℃、1MPaの条件で酸化し、160℃、1MPaの条件で水を用いて抽出して、以下の組成を有するカルボン酸混合物を得た。シクロヘキサン酸化物の水抽出物(水抽出物の組成)吉草酸:0.1wt%5−ヒドロキシ吉草酸:0.11wt%カプロン酸:0.02wt%コハク酸:0.3wt%6−ヒドロキシカプロン酸:3.8wt%グルタル酸:0.3wt%アジピン酸:2.7wt%1,2−シクロヘキサンジオール:0.02wt%1,4−シクロヘキサンジオール:0.04wt%その他:水及び微量成分工程2:水抽出物の濃縮 次いで、本抽出物を、13KPaの条件下で濃縮して、以下の組成の濃縮物を得た。(組成)オキシカプロン酸:27.9wt%(内、約90wt%がオリゴマー)アジピン酸:19.8wt%(内、約50wt%がオリゴマー)H2O:2.0wt%1,4−シクロヘキサンジオール:0.7wt%工程3:エステル化 工程2で得られたボトム液(上記濃縮液)700g/hを連続的に反応装置(気液反応槽700cc×2槽、図4)にフィードし、メタノールをガス化させた後に2槽それぞれに350g/hの速さで反応液中にバブリングさせた。その際、反応槽内の温度は外部加熱により240℃を保ち、圧力は、留出ガスが1MPaを保つように背圧弁で調節した。その結果、以下に示すような留出ガス、ボトム液がそれぞれ得られた。留出ガス(冷却凝縮後):757g/h H2O=6.9wt% アジピン酸ジメチル=8.7wt% ヒドロキシカプロン酸メチル=1.7wt% 1,4−シクロヘキサンジオール=痕跡量 アジピン酸=痕跡量 6−ヒドロキシカプロン酸=痕跡量 その他、MeOH、低沸成分など。ボトム液:643g/h 酸価(AV)=20mgKOH/g H2O=0.1wt% その他、アジピン酸、ヒドロキシカプロン酸などのオリゴマー成分など。工程4:メタノールの回収及び水の留去 上記で得られた留出ガスを冷却凝縮後、以下の条件により、第1の塔でメタノールを回収し、第2の塔でH2O及び低沸分を除去した。第1塔蒸留装置:スルーザーラボパッキングEX(住友重機械)5個蒸留条件:0.1kg/cm2G、塔頂部66℃、塔底部111℃第2塔蒸留装置:スルーザーラボパッキングEX(住友重機械)5個蒸留条件:410Torr、塔頂部76℃、塔底部190℃ その結果、下記の組成の濃縮液を得た。MeOH=0.2wt%アジピン酸ジメチル=74.2wt%ヒドロキシカプロン酸メチル=14.6wt%H2O=0.1wt%カプロラクトン=0.8wt%1,4−シクロヘキサンジオール(cis+trans)=N.D.グルタル酸ジメチル=3.7wt%コハク酸ジメチル=1.2wt% 上の実施例に対する比較例(バブリングがない状態でのエステル化およびその濃縮液)について検討した。 カルボン酸混合物(COA)6kgとMeOH3.9kgを20Lオートクレーブに仕込みエステル化反応を行った。240℃、3MPa、3hrで反応はほぼ平衡に達し、そのときの反応液の分析値は、酸化(AV)=42mgKOH/g、H2O=8.5wt%であった。 この液を10Lエバポレーターを用いて、30〜250Torr、オイルバス温度50〜100℃で濃縮し、下記の組成の濃縮液5940gを得た。MeOH=0.2wt%アジピン酸ジメチル=13.6wt%(COA基準収率57%)6−ヒドロキシカプロン酸メチル=16.0wt%(COA基準収率55%)H2O=0.1wt%工程5:解重合 工程3で得られたボトム液100g/hとメタノール200g/hとテトラブトキシチタン触媒0.1g/hを連続的に管型反応器へフィードして、以下の条件で解重合反応を行った。反応器条件:270℃、10MPa、滞留時間は5分アジピン酸ジメチルと6−ヒドロキシカプロン酸メチルの収率は83%であった。工程6:メタノール除去 工程5の解重合によって得られた反応液を以下の条件で蒸留して、メタノールと低沸分を除去した。蒸留装置:スルーザーラボパッキング(5個)蒸留条件:160Torr、塔頂部34℃、塔底部89℃工程7:エステルの精製 工程4及び工程6で得られたボトム液を以下の条件で蒸留し、アジピン酸ジメチル、オキシカプロン酸メチル等を得た。蒸留装置:スルーザーラボパッキング(27個)蒸留条件:5Torr、塔頂部70〜111℃、塔底部117〜188℃,還流比10工程8:水素化 工程7で得られたエステルを、以下の条件により、固液反応槽にて水添反応を行った。水添装置:懸濁床水添条件:250℃、25MPa、触媒:CuO−ZnO触媒(銅/亜鉛(金属重量比)=1/1)=1wt%、5hr成績:ケン化価転化率98%工程9:ジオールの精製 工程8で得られた反応液1000gを、以下の条件で蒸留精製し、高純度1,6−ヘキサンジオールを得た。蒸留装置:スルーザーラボパッキング(30個)、還流比10メタノール主成分:257g(760Torr)1,5−ペンタンジオール主成分:60g1,6−ヘキサンジオール主成分:554g(10Torr,搭頂部137〜140℃、塔底部150〜190℃) 1,6−ヘキサンジオール主成分中のうち製品となる留分の不純物の組成は、以下のとおりであった。1,4−シクロヘキサンジオール:0.1wt%1,2−シクロヘキサンジオール:N.D.1,5−ヘキサンジオール:N.D.1,7−ヘプタンジオール:N.D.1,5−ペンタンジオール:0.1wt% こうして1,6−ヘキサンジオールの収率は90%以上、更に95%を超えることが確認された。 以上の工程1〜9の概略図を図5に示す。[比較例1](解重合反応をオリゴマーを分離せずに行う例) カルボン酸混合物(工程2の濃縮液:COA)100g/hとメタノール200g/hを、以下の条件で連続的に管型反応器へフィードし、カルボン酸エステルを得た。反応器条件:270℃、10MPa、滞留時間10分反応成績:アジピン酸ジメチル+オキシカプロン酸メチル収率35%【0082】[比較例2](解重合反応をオリゴマーを分離せずに行う例) カルボン酸混合物(工程2の濃縮液:COA)100g/hとメタノール200g/hとテトライソプロポキシチタン触媒0.3g/hを、以下の条件で連続的に管型反応器へフィードし、カルボン酸エステルを得た。反応器条件:270℃、10MPa、滞留時間10分反応成績:アジピン酸ジメチル+6−ヒドロキシカプロン酸メチル収率40%【実施例2】 実施例1の工程3:エステル化の工程において、使用したメタノール中の水分量を変化させて、得られるボトム液(反応液)および留出ガスの酸価(AV)に対する水分量の影響を検討した。温度200℃または240℃、圧力1.0MPa、メタノール/カルボン酸混合物比1の反応条件で検討した。結果を表1に示す。メタノール中の水分量が高いと、ボトム液および留出ガスいずれの酸価(AV)も上昇する傾向が示された。【0084】 実施例1の工程3:エステル化の工程において、反応形式を、1槽式(図1)、2槽式(図4)、反応蒸留塔を用いる反応蒸留式(図2)に替えて、得られるボトム液(反応液)および留出ガスの酸価(AV)に対する影響を検討した。結果を表2に示す。2槽式において最も良好な酸価が得られることが示された。【表2】注:DMA:アジピン酸ジメチル MOC:6−ヒドロキシカプロン酸メチル【実施例4】 実施例1の工程3:エステル化の工程において、1槽目および2槽目における滞留時間を変化させて、得られるボトム液(反応液)および留出液の酸価(AV)に対する影響を検討した。結果を表3に示す。 実施例1の工程3:エステル化の工程において、エステル化する濃縮カルボン酸混合物(COA)に対するメタノールの比率を変化させて、得られるボトム液(反応液)および留出ガスの酸価(AV)に対する影響を検討した。結果を表4に示す。【0087】 実施例1の工程3:エステル化の工程において得られるボトム液(反応液)の酸価を変化させて、工程5:解重合の工程における解重合反応器内でのテトラブトキシチタン触媒の析出に対する影響を検討した。ボトム液(反応液)の酸価(AV)が30mgKOH/g以下であると、テトラブトキシチタン触媒がほとんど析出しないことが示された。結果を表6に示す。【実施例7】 実施例1の工程3:エステル化の工程において、反応圧力を変化させて、得られるボトム液(反応液)および留出液の酸価(AV)に対する影響を検討した。結果を表5に示す。 実施例1の工程5:解重合の工程において、解重合に付す釜残に対するテトラブトキシチタン触媒の使用量を変化させて、収率に対する影響を検討した。メタノール2倍量(重量比)、温度270℃、圧力11MPaの条件下で、検討した。結果を表6に示す。触媒の量が多いほうが、収率が高くなる傾向が観察された。 実施例1の工程5:解重合の工程において、反応温度および反応圧力を変化させて、解重合の収率に対する影響を検討した。メタノールを用いた場合、メタノールの臨界温度、及び臨界圧力以上では、収率が良好であることが示された。反応温度および反応圧力の影響は、テトラブトキシチタン500ppm、解重合に付す釜残に含まれるオリゴマーに対してメタノール2倍量(重量比)の条件下で検討した。結果を表6および図6に示す。 実施例1の工程5:解重合の工程において、解重合に付す釜残に含まれるオリゴマーに対するメタノールの重量比率を変更させて、収率に対する影響を検討した。テトラブトキシチタン1000ppm、温度270℃、圧力11MPaの条件下で、検討を行った。結果を表6に示す。 実施例1の工程5:解重合の工程を、異なる滞留時間および異なる酸価(AV)条件下で行って、収率に対する影響を検討した。結果を表6に示す。 本発明の方法を用いることにより、ポリウレタンやポリエステルの製造時に重合速度を低下させる不純物である1,4−シクロヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,7−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、高沸点成分などの不純物の含有量が極めて低減された、純度の高い1,6−ヘキサンジオールを得ることができる。また、エステル化工程で水や有機酸を除去することにより、解重合工程で、水や有機酸に弱いルイス酸や塩基を失活させる事ことなく使用でき、また反応器の腐食も抑えることができる。更には、解重合の反応速度を格段に向上させることができる。 シクロヘキサンから1,6−ヘキサンジオールを製造する方法であって、(1)シクロヘキサンの酸化により得られた反応混合物の水抽出濃縮液を、ガス状の低級アルコールで処理して、抽出液中に含まれるモノカルボン酸及びジカルボン酸を、気液反応にてエステル化するとともに、水、過剰の低級アルコール及びカルボン酸エステルを留去・分留し;(2)釜残に含まれるオリゴマーエステルを、低級アルコールの存在下、触媒の存在下、250〜280℃、9〜15MPaで解重合して、カルボン酸エステルに変換し;(3)上記工程(1)で分留したカルボン酸エステル、及び上記工程(2)で得たカルボン酸エステルをそれぞれ、又は併せて水素化し、1,6−ヘキサンジオールに変換する;工程を含む方法。 工程(1)において、エステル化を、100〜300℃、0.01〜10MPaの条件下、ガス状のメタノールを用いて行う、請求項1記載の方法。 工程(2)のオリゴマーエステルの解重合を、30mgKOH/g以下の酸価を有するオリゴマーエステルを用いて行う、請求項1又は2に記載の方法。 工程(2)において、解重合を、オリゴマーエステルの蒸気圧曲線よりも高圧側で行う、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。 工程(1)及び(2)において得られたカルボン酸エステルを、それぞれ又は併せて、更に蒸留に付す、請求項1〜4のいずれか1項記載の方法。 カルボン酸エステルの蒸留後に得られる釜残を更に解重合に付して、カルボン酸エステルに変換し、ついで水素化に付す、請求項5記載の方法。