生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_インターフェロンαを含む口腔組成物
出願番号:2007553936
年次:2012
IPC分類:A61K 38/21,A61P 1/02,A61K 9/06,A61K 9/68,A23K 1/16,A23K 1/18,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

吉岡 邦晃 佐藤 耕 五反田 亨 伊藤 亮 磯貝 恵美子 竹原 一明 前原 信敏 JP 5046030 特許公報(B2) 20120727 2007553936 20070112 インターフェロンαを含む口腔組成物 北里第一三共ワクチン株式会社 511018642 独立行政法人産業技術総合研究所 301021533 清水 初志 100102978 春名 雅夫 100102118 山口 裕孝 100160923 刑部 俊 100119507 井上 隆一 100142929 佐藤 利光 100148699 新見 浩一 100128048 小林 智彦 100129506 渡邉 伸一 100130845 大関 雅人 100114340 五十嵐 義弘 100114889 川本 和弥 100121072 吉岡 邦晃 佐藤 耕 五反田 亨 伊藤 亮 磯貝 恵美子 竹原 一明 前原 信敏 JP 2006004526 20060112 20121010 A61K 38/21 20060101AFI20120920BHJP A61P 1/02 20060101ALI20120920BHJP A61K 9/06 20060101ALI20120920BHJP A61K 9/68 20060101ALI20120920BHJP A23K 1/16 20060101ALI20120920BHJP A23K 1/18 20060101ALI20120920BHJP C12N 15/09 20060101ALN20120920BHJP JPA61K37/66 GA61P1/02A61K9/06A61K9/68A23K1/16 304ZA23K1/18 AC12N15/00 A A61K 38/00-21 A23K 1/00-18 A61K 9/00-68 A61P 1/00-02 C12N 15/00-09 CA/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) WPI JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 欧州特許出願公開第01260213(EP,A1) 特表平03−504375(JP,A) 特開2004−018519(JP,A) 特表2005−522203(JP,A) GRIMA, P., et al.,GIORNALE ITALIANO DI CHEMIOTERAPIA,1991年,Vol.38, No.1-3,p.211-212 JORDAN, W.C.,Low-Dose Oral Interferon-α: Effective Prophylaxis For Gingivitis and Aphthous Ulcers in AIDS Patients,JOURNAL OF THE NATIONAL MEDICAL ASSOCIATION,1997年,Vol.89, No.10,p.647 医学書院 医学大辞典,日本,株式会社 医学書院,2003年 3月 1日,第1版,p.1032 SAKUTA, T., et al.,Dual Regulatory Effects of Interferon-α, -β, and -γ on Interleukin-8 Gene Expression by Human Gingival Fibroblasts in Culture upon Stimulation with Lipopolysaccharide from Prevotella intermedia, Interleukin-1α, of Tumor Necrosis Factor-α,Journal of Dental Research,1998年,Vol.77, No.8,p.1597-1605 MATHUR, A., et al.,Interleukin-1 alpha, Interleukin-8 and interferon-alpha levels in gingival crevicular fluid,JOURNAL OF PERIODONTAL RESEARCH,1996年,Vol.31, No.7,p.489-495 KASER, A., et al.,Interferon-α in Inflammation and Immunity,Cellular and Molecular Biology,2001年,Vol.47, No.4,p.609-617 GUTTERMAN, J.U.,Cytokine Therapeutics: Lessons from Interferon α,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America,1994年,Vol.91, No.4,p.1198-1205 PIHLSTROM, B.L., et al.,Periodontal diseases,The Lancet,2005年,Vol.366,p.1809-1820 15 JP2007050281 20070112 WO2007080942 20070719 27 20091008 横井 宏理 本発明は、インターフェロンαを含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための方法、並びに組成物に関する。 高齢化の進行にともない、口腔衛生の重要性が高まっている。たとえば、う蝕(虫歯)や歯周病の予防や治療は、口腔衛生における重要な課題である。高齢化は、ヒトのみならずイヌやネコなどのペット動物においても同様の課題を生んでいる。すなわちペット動物においても、歯周病の予防あるいは治療技術の実現は重要な課題となっている。一般に、歯のブラッシングによって清潔を保つことは、歯周病やう蝕を予防するための大切な生活習慣と位置づけられている。しかし動物の歯のブラッシングは、必ずしも容易でない。したがって、動物の歯周病の予防あるいは治療技術は、ヒト以上に重要な課題であると言うこともできる。 歯肉炎と歯周炎は代表的な口腔疾患であり、総称して歯周病と呼ばれている。歯肉炎は、歯の表面や歯周組織に蓄積したプラーク(歯垢)中の細菌によって引き起こされる疾患である。歯肉に腫れや出血が見られ、歯槽骨の吸収は伴わない。多くの歯肉炎は、治療可能な疾患である。 一方、歯周炎においては、炎症は歯根膜や歯槽骨まで及ぶ。歯周炎は、歯周組織(歯根膜や歯槽骨)が破壊される病変である。現在のところ、破壊された歯周組織を治療によって回復させることは難しい。最終的には歯が脱落してしまう重度の炎症性疾患が、歯周炎である。歯周炎を起こすとその程度により口臭がひどくなり、出血が見られたり、歯を触られることを嫌がるようになる。著しい歯周疾患の場合は、口腔内の病原性細菌が血流によって体内を循環し、心臓や腎臓などに影響が見られることもある。歯周病の原因には複数の因子が指摘されている。しかしプラーク中の病原菌による感染症という点では、ヒトと動物の歯周病は共通の疾患である。 最も一般的な歯周病の原因細菌は、黒色集落形成性グラム陰性嫌気性の細菌である。一群の細菌は、かつてはBacteroides菌属に分類されていたが、現在ではPorphyromonas菌属とPrevotella菌属に分類されている。歯周病の原因となる細菌は、多少の菌種の違いはあるものの、いずれもヒト、イヌ、ネコ、ヒツジ、ラットなどに歯周疾患の原因となる。イヌやネコでは歯垢中の細菌叢でPorphyromonas菌属の割合が80%に及ぶこともある。分離される菌種としては、P. gingivalisの頻度が最も高い。その他にP. endodontalis、P. circumdentaria、P. canoris、P. salivosaなどもしばしば分離される。今後はさらに新菌種が加わると予測される。 一般家庭で飼育される犬の約8割が歯周病を有すると言われている。歯周病を放置すると、歯の痛みや抜歯によって、ペットの生活の質(quality of life;QOL)は著しく低下してしまう。ここ数年、口腔衛生を改善するための成分を含むチュー(ペット用のガム)、トリーツ(おやつ)、ペットフードなどが相次いで商品化されている。飼い主のペットの歯周病に対する関心が高まってきていることが伺える。 このような飼い主の意識を反映して、歯周病の予防を意図した商品が実際に販売されている。たとえば食物繊維を配合したペットフードは、咀嚼による物理的な除去作用を利用して歯垢や歯石の付着を抑制し、歯周病の予防効果があるとされている。「ヒルズの特別療法食t/d」(商品名)は、食物繊維を配合したペットフードである。またプラークコントロールを目的とした酵素配合の犬用ハミガキ等も開発されている。さらにはバイオファーメンティクス、ビタミンC、カキエキス、キシリトール、サンフェノン、カテキン等の有効成分による相乗効果により総合的な口腔内ケアを目的としたサプリメント(商品名「キシリトールC」)、あるいはペット用飲料水も存在する。 現在、獣医診療現場においては、歯周病に対して次のような治療が行われている。1)主病因であるプラークの除去2)スケーリング(歯石の除去)3)抜歯など つまり、歯周病の治療後のケア、あるいは発症予防法としては、歯石の付着防止とプラークコントロールが重要である。そのために、物理的な歯石除去作用を有する特定のドライタイプペットフードの処方は、現在のところ、有効な対策の一つである。また、ペット用の歯磨き粉を利用したブラッシングにも治療や予防効果が期待できる。特開2002-34590特開2002-34577特開2001-342199特開平11-239498特開2005-89301Cummins, M.J., Arthritis Rheum., 2003; 49(4): p585-593Shiozawa, S., J Interferon Cytokine Res., 1998; 18(4): p255-262Ship, J.A., J Interferon Cytokine Res., 1999; 19(8): p943-951Gilger, B.C., J Interferon Cytokine Res., 1999; 19(8): p901-905Satoh, Y., J Interferon Cytokine Res., 1999; 19(8): p887-894Palomba, M., Clin Ter., 2000; 151(1 Suppl 1): p59-61Lecciones, J.A., J Interferon Cytokine Res., 1998; 18(9): p647-652Lecce, J.G., Mol Biother., 1990; 2(4): p211-216Young, A.S., Parasitology., 1990; 101(2): p201-209Tompkins, W. A., J Interferon Cytokine Res., 1999; 19: p817-828Ohtsuka, H., J Vet. Med. Sci., 2006; 68(10): p1063-1067 歯垢や歯石が、歯周病の原因であることは事実である。したがってそれを除去することは、歯周病の治療や予防における重要な課題である。歯垢や歯石の除去には、歯周病の予防効果は期待できる。しかし、歯周病の治療効果については、不十分な点もある。たとえば、既に進行している炎症に対する歯垢の除去の治療効果は間接的である。したがって、より効果的な歯周病の治療方法が実現できれば有用である。 また、歯垢を除去しても、口腔内の歯周病の病原菌を除去できるわけではない。つまり、歯垢や歯石の除去によって、病原菌の"巣"(nest)は取り除かれる。確かに歯垢や歯石は歯周病の大きな原因である。しかし病原菌は、"巣"以外の口腔中にも存在している。つまり歯垢を除去しても、病原菌そのものの抑制にはつながらない。歯周病の病原菌に直接作用する方法が提供されれば、より高度な予防効果を期待できる。 更に、動物においては、個体によっては、歯垢や歯石の除去に有効なブラッシングが困難な場合もある。したがって、ブラッシングを伴わなくても歯周病の予防や治療を実現することができれば有用である。本発明は、歯周病を予防および/または治療するための、新たな技術の提供を課題とする。 本発明者らは、歯周病の治療あるいは予防に、インターフェロン(以下IFNと省略することもある)が有効なのではないかと考えた。IFNは、抗ウイルス作用、細胞増殖抑制作用、免疫応答調節作用など、多彩な生物活性を有するサイトカインである。臨床的には、既に抗ウイルス剤としてC型慢性肝炎の治療に応用されている。その他、抗腫瘍剤として慢性骨髄性白血病や腎細胞癌などの治療にもIFN-αが使用されてきた。 これらの治療方法においては、IFNαの高用量投与が標準的な投与方法である。たとえば、ヒトにおいては、6〜10MIU/日を最初の2〜3週間毎日注射、その後週3回の注射を22週間続ける誘導療法が採用されている。獣医領域でも注射型のインターフェロン製剤が商品化されている。また、ネコインターフェロンω(オメガ)の注射用製剤「インターキャット」(東レ製、商品名)は、猫カリシウイルス感染症の治療薬である。更に、最近産業動物用の新薬として牛のロタウイルス感染症に対する経口投与型のインターフェロン製剤「ビムロン/BIMURON」(バイオベット社製、登録商標)も実用化された(特開2005-89301)。「ビムロン/BIMURON」は、天然型のヒトIFNαを配合した粉末製剤である。飼料などに配合して、体重1kgあたり0.5IU/日程度の微量投与によって、牛のロタウイルス感染症に伴う下痢症状やウイルスの排泄に対する抑制効果が確認されている。 しかしこれらのIFNα製剤の歯周病に対する効果は未知である。本発明者らは、特にIFNαを口腔内に投与することによって、歯周病の予防、並びに治療しうることを明らかにして本発明を完成した。すなわち、本発明は、以下の組成物並びに方法を提供する。〔1〕インターフェロンαを有効成分として含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための口腔投与用の組成物。〔2〕歯周病が哺乳動物の歯周病である〔1〕に記載の組成物。〔3〕哺乳動物が、イヌまたはネコである〔2〕に記載の組成物。〔4〕哺乳動物がヒトである〔2〕に記載の組成物。〔5〕 インターフェロンαと、咀嚼性の担体を含む〔1〕に記載の組成物。〔6〕 咀嚼性の担体が食品である〔5〕に記載の組成物。〔7〕 咀嚼錠またはチューインガムである〔6〕に記載の組成物。〔8〕インターフェロンαと、ペースト状の担体を含む〔1〕に記載の組成物。〔9〕 体重1kgあたり0.05〜2500LU/日のインターフェロンαが配合されている〔1〕に記載の組成物。〔10〕 体重1kgあたり0.1〜1500LU/日のインターフェロンαが配合されている〔8〕に記載の組成物。〔11〕 インターフェロンαを口腔に投与する工程を含む、哺乳動物の歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のための方法。〔12〕 インターフェロンαと、咀嚼性の担体を含む組成物を口腔に投与する工程を含む、〔11〕に記載の方法。〔13〕インターフェロンαと、ペースト状の担体を含む組成物を口腔内組織に塗布する工程を含む、〔11〕に記載の方法。〔14〕 哺乳動物が非ヒト哺乳動物である〔11〕に記載の方法。〔15〕 哺乳動物が、イヌまたはネコである〔14〕に記載の方法。〔16〕 体重1kgあたり0.05〜2500LU/日のインターフェロンαが投与される、〔11〕に記載の方法。〔17〕 体重1kgあたり0.1〜1500LU/日のインターフェロンαが投与される、〔16〕に記載の方法。〔18〕 インターフェロンαと薬学的に許容される担体を含む、哺乳動物の歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のための、口腔投与用医薬組成物。〔19〕 薬学的に許容される担体が、咀嚼性の担体である〔18〕に記載の医薬組成物。〔20〕 薬学的に許容される担体が、ペースト状の担体である〔18〕に記載の医薬組成物。〔21〕 体重1kgあたり0.05〜2500LU/日のインターフェロンαが配合されている〔18〕に記載の医薬組成物。〔22〕 体重1kgあたり0.1〜1500LU/日のインターフェロンαが配合されている〔21〕に記載の医薬組成物。〔23〕体重1kgあたり0.05〜2500LU/日のインターフェロンαが配合されている食品組成物。〔24〕 体重1kgあたり0.1〜1500LU/日のインターフェロンαが配合されている〔23〕に記載の食品組成物。〔25〕体重1kgあたり0.05〜2500LU/日のインターフェロンαが配合されている飼料組成物。〔26〕 体重1kgあたり0.1〜1500LU/日のインターフェロンαが配合されている〔25〕に記載の飼料組成物。 本発明による歯周病の予防あるいは治療のための口腔組成物を、口腔内へ投与することによって、歯周病を予防並びに治療することができる。具体的には、本発明の口腔組成物の投与によって、歯周病の原因となっている微生物の顕著な抑制効果が確認された。一般に歯周病の予防に有効とされている、歯垢や歯石の除去は、歯周病の原因となる微生物の巣の除去を目的としている。つまり、予防あるいは治療のいずれにおいても、歯垢や歯石の除去の効果は間接的である。本発明では、歯周病の原因となっている微生物の数を抑制することによって、歯周病の予防並びに治療効果が達成される。したがって、本発明に基づく予防効果あるいは治療効果は、歯周病の原因に直接作用していると言うことができる。 実際、本発明の歯周病の治療剤を投与された歯周病モデル動物における、歯周病症状の改善が実施例でも確認された。この結果は、本発明によって、歯周病の積極的な治療方法が実現したことを裏付けている。 以上のように本発明の歯周病の予防あるいは治療のための方法は、ブラッシングとは異なり、歯周病の病原菌を抑制する。したがって、ブラッシングによる歯垢や歯石の除去と、本発明に基づく予防あるいは治療方法を組み合わせることによって、歯周病を、より確実に予防あるいは治療することができる。 また本発明による歯周病の予防あるいは治療のための組成物は、動物に対しても、容易に投与することができる。たとえば、エサに混入されたIFNαは、摂食行動を通じて、容易に動物の口腔に投与することができる。歯や歯肉のブラッシングが、個体によっては困難であるのに対して、本発明の組成物の投与はきわめて容易である。したがって、本発明は、動物の歯周病の予防や治療においても有用である。 更に本発明の口腔組成物は、ごく低用量のIFNαの配合によって、高度な歯周病の予防・治療効果を実現することができる。IFNαの使用量を少なくできるので、IFNαの過剰な投与による副作用の危険を避けることができる。また、最終製品のコストの大部分を占めると考えられるIFNαの使用量が少ないということは、安価な製品を提供するために有利な特徴である。 更に、たとえば抗生物質を投与することによって口腔中の病原菌の数を抑制することは可能かもしれない。しかし、歯周病は動物あるいはヒトが生存する限り、常に予防が必要な疾患である。このような疾患の予防や治療を目的として、ヒト、あるいは産業用の動物に対して、あるいはペット動物においても、抗生物質を恒常的に投与することは現実的でない。抗生物質では、まず安全性の問題が懸念される。一方本発明によれば、わずかな量のIFNαを口腔内に投与することによって予防並びに治療効果を実現できる。微量のIFNαは、たとえば先に実用化されたウシのロタウイルスの治療剤においても安全性が認められた投与方法である。このように、安全性の面でも、本発明の治療剤あるいは予防剤は、有利な特徴を備えている。実施例1においてプラスミドpAcYM1に挿入したcDNA断片の塩基配列と、それによってコードされるアミノ酸配列を示した図である。実線で囲んだ部分はCaIFNα4のシグナルペプチド領域、二重下線は糖鎖付加部位、点線で囲んだ部分はCaIFNα4に付加したヒスチジンタグを示す。A;精製したBacCaIFNα4タンパク質をCBB染色およびウエスタンブロッティングにより検出した写真を示す。B;精製したBacCaIFNα4タンパク質の抗ウイルス活性をCPE抑制法により評価した結果を示す図である。図中、縦軸は570nmにおける吸光度を、横軸はIFNαの抗ウイルス活性(LU/mL)を示す。投与試験(1)における、イヌの黒色集落形成細菌 (BPB)数を示す図である。図中、縦軸は唾液中のBPB数(×105/mL)を、横軸は本発明の治療剤または対照の投与日数を示す。たとえば図中のIFN-2はIFNα投与後2日目の結果、PREは0日の結果、そしてMal-8は対照(マルトース)投与後8日目の結果を示す。各プロットは、5匹の被検イヌの結果に対応している。投与試験(1)における、イヌの唾液中の潜血反応を示す図である。図中、縦軸は潜血反応が検出されたイヌの割合を、横軸はIFNαの投与期間(2〜12日)を示す。Mal投与の結果は、IFNα投与に先立ち、Malを投与したときに潜血反応が検出されたイヌの割合を示す。 本発明は、IFNαを有効成分として含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための口腔投与用の組成物に関する。本発明の口腔組成物は、インターフェロンαと生物学的に許容される担体を配合することによって製造することができる。 インターフェロン(Interferon)は、ウイルス感染などにともなって動物の生体内で分泌される分子量約20kDaの蛋白質である。哺乳動物においては、α、β、およびγの3種類のIFNがある。このうちαとβは構造上の類似性を有している。たとえばヒトやマウスでは、α−βの間で、塩基配列で40%程度、アミノ酸配列で35%程度の相同性がある。これらのIFNは総称してI型IFNと呼ばれる。I型IFNは、抗ウイルス作用の他に、次のような作用を有することが明らかにされている。 細胞増殖抑制効果、 抗腫瘍作用、 マクロファージ等の免疫細胞の活性化作用、 免疫応答調節作用、 ヒトやマウスなどの哺乳動物のIFNαには多型が見られる。たとえばヒトにおいては、15以上の相同性の高い(85%以上)遺伝子群が見出されている。IFNαの遺伝子にはイントロンが無く、ゲノム中にこれらの多型を含む複数の遺伝子が存在しているのが大きな特徴である。 本発明におけるIFNαには、これらの多型によってもたらされるサブタイプの全てが含まれる。更に、これらのサブタイプを構成するアミノ酸配列において、1あるいは複数のアミノ酸配列が、付加、欠失、置換、あるいは挿入されたアミノ酸配列を含み、かつIFNαと同等、あるいはそれ以上の生物学的活性を有する蛋白質も、本発明におけるIFNαとして利用することができる。本発明におけるIFNαとして、任意の動物種に由来するIFNαを利用することができる。好ましくは、投与される動物種に応じて、同じ動物種由来のIFNαを用いることができる。 あるいは、歯周病に対する予防あるいは治療効果を有する限り、他の生物種に由来するIFNαを利用することもできる。たとえば、以下の生物種に由来するIFNαのサブタイプが公知である。これらの天然のIFNαの各サブタイプについては、いずれも以下に記載のGenBankアクセッションナンバーで、その塩基配列およびアミノ酸配列を参照することができる。いずれの生物種においても、これらのサブタイプに加え、新たなサブタイプが新たに見出される可能性がある。今後新たに見出されるサブタイプも、必要な活性を有している限り、本発明におけるIFNαとして利用することができる。 なお通常これらのアクセッションナンバーによって特定されるアミノ酸配列は、シグナル配列を含んでいる。アミノ酸配列がシグナル配列を含む場合、通常は、当該シグナル配列が除かれた成熟蛋白質が、本発明におけるIFNαとして利用される。シグナル配列の全て、あるいは一部を伴ったアミノ酸配列からなる前駆蛋白質が、IFNαの生物学的活性を有する場合には、前駆蛋白質をIFNαとして用いることもできる。更に、投与後に、シグナル配列の全て、あるいは一部が除かれることで、IFNαの生物学的活性を獲得することができる前駆蛋白質も、本発明のIFNαとして利用することができる。 イヌIFNα(8種のサブタイプ) CaIFN-a1:M28624 CaIFN-a2:M28625 CaIFN-a3:O97945 CaIFN-a4:AB102731 CaIFN-a5:AB125934 CaIFN-a6:AB125935 CaIFN-a7:AB125936 CaIFN-a8:AB125937 ネコIFNα(14種のサブタイプ) FeIFN-w:E02521 FeIFN-a1:AY117395 FeIFN-a2:AY117394 FeIFN-a3:AY117393 FeIFN-a5:AY117392 FeIFN-a6:AY117391 FeIFN-a7:AB094996 FeIFN-a8:AB094997 FeIFN-a9:AB094998 FeIFN-a10:AB094999 FeIFN-a11:AB095000 FeIFN-a12:AB095001 FeIFN-a13:AB095002 FeIFN-a14:AB095003 げっ歯類IFNα(8種のサブタイプ) D00460, M13660, M13710, X01969, X01971, X01972, X01973, X01974 ウシIFNα(8種のサブタイプ) M10952, M10953, M10954, M10955, M11001, X93087, X93088, X93089 ブタIFNα IFN-a1:X57191.1 ヒトIFNα(21種のサブタイプ) HuIFN-a1:DQ185447 HuIFN-a2:NM000605 HuIFN-a3:E00176 HuIFN-a4:NM021068 HuIFN-a5:NM002169 HuIFN-a6:NM021002 HuIFN-a7:NM021057 HuIFN-a8:NM002170 HuIFN-a10:NM002171 HuIFN-a13:NM006900 HuIFN-a14:NM002172 HuIFN-a16:NM002173 HuIFN-a17:NM021268 HuIFN-a21:NM002175 HuIFN-a2a:AAS92248 HuIFN-a2b:AAP20099 HuIFN-a1b:AAL35223 HuIFN-a4b:CAA26701 HuIFN-aI':AAA52725(=HuIFN-a17subtype) HuIFN-aI1:CAA01748(=HuIFN-a17subtype) HuIFN-a-j:CAA23792 HuIFN-aT:I79343 HuIFN-aO:I79344 HuIFN-aN:I58999 HuIFN-aB:0902162A たとえば次のようなヒト由来IFN製剤が実用化されている。これらはいずれも天然型のIFNαで、いずれも本発明における好適なIFNαに含まれる。 オーアイエフ(大塚製薬製、BALL-1) スミフェロン(住友製薬製、NAMALWA) Wellferon(Glaxo-Wellcome、α-n1) Alferon(Purdue Frederick Co.、α-n3) なお、上記の天然型IFNαの由来として併記した、BALL-1、NAMALWA、α-n1、およびα-n3は、いずれも各IFNαが由来する細胞株の名前である。 天然型とは、遺伝子組み換えによらず、生体から樹立された細胞株が産生するIFNαを言う。天然型のIFNαは、たとえば由来として記載した上記の細胞株を培養することによって、その培養物から回収することができる。これらの細胞株の培養と、培養物からのIFNαの回収のための方法は公知である。 これに対してリコンビナントIFNαも同様に、本発明における好ましいIFNαに含まれる。リコンビナントIFNαとは、IFNαのアミノ酸配列をコードするDNAを人為的に発現させることによって得られたIFNαである。更に、本発明におけるIFNαには、これら天然に存在するIFNαのアミノ酸配列を含む蛋白質に加え、当該アミノ酸配列が改変された蛋白質を利用することができる。具体的には、たとえば以下のような蛋白質を、本発明におけるIFNαとして示すことができる。(a) 前記天然のIFNαのアミノ酸配列を含む蛋白質;(b) 前記天然のIFNαのアミノ酸配列において、1もしくは複数のアミノ酸残基が、置換、欠失、付加、または挿入されたアミノ酸配列を含み、天然のIFNαと同等の生物学的活性を有する蛋白質;(c) 前記天然のIFNαをコードする塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件においてハイブリダイズするDNAによってコードされ、天然のIFNαと同等の生物学的活性を有する蛋白質;および(d) 前記天然のIFNαのアミノ酸配列と90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を含み、天然のIFNαと同等の生物学的活性を有する蛋白質; 本発明において、天然のIFNαの生物学的活性とは、当該蛋白質の口腔への投与によって、口腔内の歯周病の病原菌の菌数が抑制されることを言う。ある蛋白質がこのような活性を有することは、実際に、被験動物の口腔内に蛋白質を投与することによって確認することができる。具体的には唾液を7%馬脱繊維素血液加ブルセラHK寒天培地に接種し、嫌気培養(70%N2、15%H2、15%CO2)すれば、歯周病原細菌を黒色コロニー形成細菌(BPB)として計数することができる。蛋白質の投与によってBPBが減少すれば、その蛋白質が天然のIFNαと生物学的に同等であることが確認できる。BPBの減少は対照と比較することによって確認することができる。たとえば、活性を確認すべきタンパク質を溶解した媒体のみを投与した群におけるBPBの計数結果を対照とすることができる。病原菌の細菌数は、計数すべき細菌に特異的なプライマーを利用したPCRによって確認することもできる。 あるいはIFNαの抗ウイルス活性を指標として、生物学的活性を比較することもできる。一般に、IFNαの抗ウイルス活性は、ウイルスによるウイルス感受性細胞の変性を指標として定量的に評価されている。このような評価方法として、たとえば実施例2に示したCPE抑制法を利用することができる。すなわち、被験タンパク質によるウイルス感受性細胞の変性抑制作用を定量的に評価することで、被験タンパク質の抗ウイルス活性が決定される。こうして決定された抗ウイルス活性は、たとえば、細胞変性率を50%防ぐことができるIFN試料の希釈倍数の逆数などで表すことができる。 本明細書においては、実施例2に記載の方法に基づいて決定した抗ウイルス活性を単位"LU"で表した。天然のIFNαと比較して、たとえば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、あるいは90%以上の抗ウイルス活性を有するタンパク質は、本発明における生物学的に同等な蛋白質に含まれる。本発明において、天然のIFNαと生物学的に同等なタンパク質は、天然のIFNαの抗ウイルス活性の80〜150%、より好ましくは90〜120%、更に好ましくは95〜100%の抗ウイルス活性を有するタンパク質と定義することもできる。 このようなアミノ酸配列が改変されたIFNαは、IFNαの「バリアント」(改変体)と呼ぶことができる。与えられたアミノ酸配列を改変するためのさまざまな手法が公知である。たとえば、IFNαをコードするポリヌクレオチドの塩基配列に変異を導入し、それによってコードされるアミノ酸配列を改変することができる。アミノ酸配列の改変によって、その生物学的な活性を調節することができる。たとえば、IFNαの生物学的な活性を増強したり、生体中における安定性を改善することができる。あるいは、IFNαの抗原性を改変することもできる。具体的には、異種由来のIFNαのアミノ酸配列を改変することによって、異種動物に対する抗原性を小さくすることができる。 アミノ酸配列を改変するための多くの手法が公知である。例えば、「モレキュラークローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、J. Sambrook, et al., eds., Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989、「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」、F.M. Ausubel, et al., eds., John Wiley & Sons, Inc., New Yorkなどに記載された方法を利用することができる。 アミノ酸配列の改変は、アミノ酸残基の置換、欠失、付加、および挿入によってもたらされる。アミノ酸残基の置換、欠失、付加、および挿入は、それぞれ単独で施すこともできるし、2つ、3つ、あるいは全ての修飾を与えることもできる。更に、天然のIFNαのアミノ酸配列の中の、1または複数の位置において、アミノ酸残基の置換、欠失、付加、および挿入からなる群から選択される任意の修飾を施すことができる。このような改変体には、IFNαアミノ酸配列の全体または部分を含む融合タンパク質も含まれる。アミノ酸配列の変化がタンパク質の構造に与える影響を予測するための方法が知られている。したがって、既知の方法に従って、IFNαの改変体を設計することができる。このような方法の一例は、Dahiyat and MayoによってScience 278:8287, 1997に記載されている。Dahiyat and Mayoの方法を適用することにより、IFNαのアミノ酸配列を改変したときに、活性の維持に必要な構造を保っているか否かを解析することができる。 また、生物学的活性を維持したまま、アミノ酸配列のみを改変することもできる。たとえば、望ましくないジスルフィド結合を防ぐために、システイン残基を置換または除去することができる。同様に、アミノ酸配列の改変によってIFNαのプロテアーゼ感受性を調節することもできる。プロテアーゼ耐性を付与すれば、発現系におけるプロテアーゼによるタンパク質分解を防ぐことによってIFNαの発現を増強することもできる。 IFNαのアミノ酸配列の改変において、性質が似ているアミノ酸残基への置換が、蛋白質の構造や活性の維持に有用であることが知られている。性質が似ているアミノ酸残基の置換は、保存的置換と呼ばれる。「保存的置換」とは、蛋白質の三次構造および/または活性を大きく変化させないアミノ酸置換を言う。たとえば次に示したグループに含まれるアミノ酸の、グループ内の他のアミノ酸残基への置換は、保存的置換に含まれる。(1)中性疎水性側鎖(アラニン、トリプトファン、バリン、フェニルアラニン、プロリン、メチオニン、ロイシン);(2)中性極性側鎖(アスパラギン、グリシン、グルタミン、システイン、セリン、チロシン、トレオニン);(3)塩基性側鎖(アルギニン、ヒスチジン、リシン);(4)酸性側鎖(アスパラギン酸、グルタミン酸);(5)脂肪族側鎖(アラニン、イソロイシン、グリシン、バリン、ロイシン);(6)脂肪族水酸基側鎖(セリン、トレオニン);(7)アミン含有側鎖(アスパラギン、アルギニン、グルタミン、ヒスチジン、リシン);(8)芳香族側鎖(チロシン、トリプトファン、フェニルアラニン);および(9)硫黄含有側鎖(システイン、メチオニン) アミノ酸の置換には、当業者に知られたさまざまな方法を利用することができる。具体的には、Kunkelらの部位特異的変異誘発法(Kunkel, Proc. Nat. Acad. Sci. U.S.A. 82: 488-492, 1985)を、アミノ酸の置換に利用することができる。あるいは想定されたアミノ酸配列をコードする塩基配列からなるポリヌクレオチドを化学的に合成することもできる。 本発明において、置換、欠失、付加、または挿入されるアミノ酸残基の数は、得られる改変体が必要なIFNαの生物学的な活性を維持する限り制限されない。先に述べたとおり、ここで言う生物学的な活性の維持には、生物学的活性の増強が含まれる。本発明におけるIFNαの改変体を得るための、置換、欠失、付加、または挿入されるアミノ酸残基の数は、通常50残基以内、たとえば30残基以内、好ましくは20残基以内、より好ましくは10残基以内、特に好ましくは5以内、更に好ましくは1〜3残基である。 更に、アミノ酸配列の改変によってIFNαの生物学的な活性を増強することができる。生物学的な活性を増強されたIFNαも、本発明におけるIFNαに含まれる。生物学的な活性の増強には、重量当たりのIFNαの活性の増強と、生体内における滞留時間の延長、あるいは生理的な分解の抑制が含まれる。たとえば、IFNαのアミノ酸配列を、いくつかのサブタイプの間で保存されたアミノ酸配列に改変することによって、IFNαの生物学的な活性を増強できることが明らかにされている (US4695623, US4897471, US5985265)。このような改変体を本発明におけるIFNαとして利用することもできる。 IFNαの改変体をコードするポリヌクレオチドを、ハイブリダイゼーションによって得ることもできる。たとえば前記の天然のIFNαをコードするDNAのコード領域からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドは、IFNαと同様の生物学的活性を有する蛋白質をコードしている可能性が高い。本発明において、「ストリンジェントな条件下」とは、当技術分野で周知のパラメーターによって特定される。具体的には、DNAのハイブリダイゼーション条件は、低イオン強度、およびDNAハイブリッド複合体の融解温度(Tm)をわずかに下回る温度において、一般にストリンジェントであると言われる。具体的には、Tmよりも約3℃低い条件は、ストリンジェントな条件に含まれる。ストリンジェンシーが高いほど、プローブ配列と標的配列との間の同一性は高い。 このような条件は、この種の方法をまとめた参考文献で参照することができる。具体的には、例えば、先に示した「モレキュラークローニング:実験マニュアル」や「分子生物学における最新プロトコール(Current Protocols in Molecular Biology)」などに記載されている。これらの方法によって、前記天然のIFNαのDNAをプローブとして、未だIFNαが単離されていない生物のcDNAライブラリーをスクリーニングすれば、当該生物のIFNαをコードするcDNAを得ることができる。あるいは既にIFNαが単離されている生物種のcDNAライブラリーからは、更に新たなサブタイプを単離できる可能性がある。 たとえば、65℃の、6×SSC中でのハイブリダイゼーションをストリンジェントな条件として例示することができる。あるいは、65℃の、3.5×SSC、0.02% Ficoll、0.02%ポリビニルピロリドン、0.02%ウシ血清アルブミン、2.5mM NaH2PO4[pH7]、0.5% SDS、2mM EDTAからなるハイブリダイゼーション緩衝液中でのハイブリダイゼーションを、ストリンジェントな条件として示すこともできる。なおSSCは、pH7の0.15M塩化ナトリウム/0.15Mクエン酸ナトリウムである。ストリンジェントな条件においては、ハイブリダイゼーションの後に、DNAを転写したメンブレンを2×SSCにて室温で洗浄し、その後に0.1×SSC/0.1×SDSにて最高68℃までの温度で洗浄する。 あるいは、水性ハイブリダイゼーション溶液に代えて、ホルムアミドハイブリダイゼーション溶液を用いることもできる。すなわち、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件を、例えば、42℃の50%ホルムアミド溶液を用いることによって得ることができる。当業者は、同程度のストリンジェンシーを得るために、他の条件や、試薬類を利用することができる。また、改変体の発現のために細胞およびライブラリーをスクリーニングし、それらを単離し、更に目的とするDNAをクローニングおよびシークエンシングするための方法も周知である。たとえば、単離すべきDNAの塩基配列に基づいて、当該DNAを増幅するためのプライマーをデザインすることができる。プライマーを利用して、PCR法などの遺伝子増幅法によって、目的とするDNAが増幅される。 本発明においてIFNαの改変体のアミノ酸配列と天然のアミノ酸配列との同一性は、一般に、少なくとも65%、通常75%、好ましくは90%、より好ましくは95%以上、更に好ましくは99%以上である。アミノ酸配列の相同性は、NCBI(Bethesda, Maryland)によって開発された、さまざまな公開ソフトウエアツールによって算出することができる。塩基配列やアミノ酸配列の解析ツールには、Altschul SF, et al.,のヒューリスティックアルゴリズム(J Mol Biol, 1990, 215: 403-410)が含まれる。このツールは、BLASTとして知られている。 本発明において、IFNαは、その生物学的活性を維持する限り、他の分子によって修飾することもできる。具体的には、IFNαと他のタンパク質との融合タンパク質を、本発明におけるIFNαとして利用することができる。その他、非蛋白性の高分子化合物によるIFNαの修飾も許容される。たとえば、ポリエチレングリコール等の高分子化合物で修飾されたIFNαが血中への投与用製剤として利用されている(US5382657, US5559213,US6177074, US5951974, US5981709)。高分子化合物による修飾によって、IFNαは血液中での滞留性が改善される。 本発明に用いるIFNαは、そのアミノ酸配列にしたがって、化学的に、あるいは遺伝子工学的に合成することができる。あるいは天然のIFNαを本発明に利用することもできる。天然のIFNαは、生体や生体材料から抽出することができる。あるいはIFNαを産生する細胞を培養し、その培養物から天然のIFNαを回収することもできる。中でも遺伝子工学的な合成方法は、均質なIFNαを容易に、かつ大量に得るための方法として好ましい。合成すべきアミノ酸配列が明らかであれば、当業者はそれをコードする塩基配列を予測し、合成することができる。あるいは天然のcDNAやその改変体を調製し、蛋白質に翻訳させることができる。アミノ酸配列をコードするDNAをもとに、in vivoで、あるいはin vitroで蛋白質に翻訳するための多くの手法が公知である。たとえばin vivoにおいて蛋白質に翻訳するためには、一般的には、必要に応じて、それぞれ転写および翻訳の開始にかかわる5'非転写配列および5'非翻訳配列などを組み合わせることができる。より具体的には、5'非転写調節配列として、遺伝子の転写制御のためのプロモーター配列を遺伝子に連結することができる。転写調節配列として、エンハンサーを付加することもできる。 発現のために必要な要素のすべてを含む発現ベクターが市販されている。公知のベクターは、たとえば、Sambrook et al., 「分子クローニング:実験マニュアル(Molecular Cloning:A Laboratory Manual)」、Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989等にも記載されている。一般にこれらの市販のベクターには、アミノ酸配列をコードするDNAを挿入するためのマルチクローニングサイトが用意されている。発現させるべきDNAは、適当な制限酵素で切断し、当該クローニングサイトに挿入することで、発現ベクターとすることができる。必要な制限酵素サイトは、合成オリゴヌクレオチドとしてライゲーションすることもできる。融合タンパク質発現用ベクターを利用すれば、IFNαを融合タンパク質として発現させることもできる。たとえば、mycタグやHisタグなどを付加することができるベクターも公知である。 こうして作製された発現ベクターは、当該ベクターを導入し、目的とするタンパク質への翻訳が可能な宿主細胞に形質転換される。宿主細胞としては、たとえば次のような細胞を利用することができる。 原核細胞(例えば、大腸菌) 真核細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、酵母発現システム、および昆虫細胞) 本発明に利用するIFNαが糖鎖付加部位を含むと予測される場合には、真核細胞を宿主として利用するのが好ましい。たとえば配列番号:4に示したイヌIFNαのアミノ酸配列には、少なくとも3箇所の糖化部位が予測される(図1)。したがって、配列番号:4に示すイヌIFNαの発現には、真核細胞を利用することができる。 真核細胞発現系として、たとえば昆虫細胞を利用することができる。バキュロウイルス発現系を利用して、昆虫細胞において外来性のDNAを発現させるための方法が公知である。たとえば、実施例に記載したような手法により、昆虫細胞で外来性のDNAを発現させることができる。 天然のIFNαは、分泌タンパク質である。したがってIFNαをコードする生体由来のcDNAには、通常シグナル配列もエンコードされている。たとえば配列番号:3に示すイヌIFNαは、そのN末端23残基はシグナル配列である。このことは、たとえば昆虫細胞における発現産物が、成熟蛋白質に相当する分子量のタンパク質を含むことからも裏付けられる。 上記のような遺伝子工学的な手法によって本発明に用いるIFNαを合成する場合、シグナル配列として、外来性のシグナル配列を利用することもできる。たとえば、ヒトIFNαをヒト以外の細胞で発現させるとき、実際の発現に用いる細胞が由来する生物種において機能するシグナル配列を利用することができる。この場合、ヒトIFNαの成熟タンパク質のアミノ酸配列に、ヒト以外の種において機能するシグナル配列が付加された、キメラタンパク質が発現する。発現した組み換えタンパク質は、細胞外への分泌の過程でシグナル配列が除去される。その結果、ヒトの成熟タンパク質が分泌される。あるいは、細胞外への分泌を必要としないのであれば、成熟タンパク質のアミノ酸配列をコードするDNAを発現させることもできる。シグナル配列の欠損によって開始コドンを失う場合には、5'末端に人為的に開始コドン(atg)を付加することもできる。 シグナル配列を含むアミノ酸配列を発現させた場合には、培養上清中にIFNαが蓄積される。あるいはシグナル配列を持たないアミノ酸配列として発現させた場合には、細胞内にIFNαの成熟タンパク質が蓄積する。これらの遺伝子組み換えによって発現したIFNαは、培養物から回収し精製して本発明の組成物に利用することができる。培養物からIFNαを回収し、精製するための手法は公知である。あるいは、発現産物を含む培養物そのもの、あるいは粗精製物を本発明の組成物に利用することもできる。たとえば、酵母を宿主として発現させたIFNαを、酵母菌体を含んだまま凍結乾燥し、本発明の組成物に配合することができる。 更に、本発明の口腔組成物に配合するためのIFNαとして、植物を宿主として発現させたIFNαを利用することもできる。この場合、IFNαを発現する形質転換植物の植物体あるいは植物細胞を本発明の口腔組成物の原料として利用することができる。すなわち、本発明は、IFNαをコードする遺伝子を発現可能に保持する形質転換植物を含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための口腔投与用の組成物を提供する。あるいは本発明は、IFNαをコードする遺伝子を発現可能に保持する形質転換植物に由来するIFNα含有分画を含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための口腔投与用の組成物に関する。 たとえば、形質転換植物のIFNαを含む組織を、破砕して、本発明の口腔組成物に配合することができる。植物組織を乾燥させた後に粉砕することもできる。あるいは破砕した植物組織を乾燥させることもできる。また、形質転換植物のIFNαを含む組織をホモジェナイズし、必要に応じてろ過して得られたIFNα含有溶液をそのまま、あるいは更に乾燥した後に、本発明の口腔組成物に配合することもできる。これらの形質転換植物に由来するIFNαを含む分画は、いずれも本発明における「形質転換植物」に含まれる。 形質転換植物として、現在、飼料やペットフードの原料とされている植物を利用すれば、現行の製造工程を大きく変えることなく、本発明の口腔組成物を製造することができる。 このような植物として、具体的には、ジャガイモ、トマト、豆類、穀類、イチゴ等の果実類ならびに牧草類などが挙げられる。豆類としては、ダイズおよび小豆等を利用することができる。穀類としては、イネ、コムギおよびトウモロコシ等を示すことができる。 本発明に用いる形質転換植物細胞は、IFNα(あるいはIFNαと同等な生物学的活性を有するタンパク質)をコードする遺伝子を含むベクターを植物細胞に導入し、発現させることで作製できる。植物細胞におけるIFNαの発現にあたり、IFNαのC末端に、小胞体保持シグナル(endoplasmic reticulum retention signal)を付加することもできる。小胞体保持シグナルとは、たとえば次のようなアミノ酸配列からなる。小胞体保持シグナルを有する分泌タンパク質は、発現後、小胞体内に留まり安定に保持される。 KDEL (Lys-Asp-Glu-Leu)/配列番号:7 RDEL (Arg-Asp-Glu-Leu)/配列番号:8 すなわち本発明は、C末端に小胞体保持シグナルを付加されたIFNαをコードする遺伝子を発現可能に保持する形質転換植物を含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための口腔投与用の組成物を提供する。あるいは本発明は、C末端に小胞体保持シグナルを付加されたIFNαをコードする遺伝子を発現可能に保持する形質転換植物に由来するIFNα含有分画を含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための口腔投与用の組成物に関する。 植物細胞における遺伝子発現に用いるベクターとしては、植物細胞で転写可能なプロモーターと転写産物の安定化に必要なポリアデニレーション部位を含むターミネーター配列を含んでいれば特に制限されない。利用可能なベクターとしては、例えば、プラスミド「pBI121」、「pBI221」、「pBI101」(いずれもClontech社製)などが挙げられる。植物細胞で転写可能なプロモーターとしては、例えば、植物細胞内での恒常的な遺伝子発現を行うためのプロモーターや外的な刺激により誘導的に活性化されるプロモーターを用いることができる。恒常的に発現させるためのプロモーターとしては、次のようなプロモーターが公知である。 カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモーター(Odell et al. 1985 Nature 313:810); イネのアクチンプロモーター(Zhang et al.1991 Plant Cell 3:1155); トウモロコシのユビキチンプロモーター(Cornejo et al. 1993 Plant Mol.Biol. 23:567) これらプロモーターに機能的に結合したIFNαをコードする遺伝子を含むベクターを植物細胞に導入することにより、植物細胞内でIFNαを発現させることができる。ここで「機能的に結合」とは、植物細胞内でIFNαが発現するように、プロモーターとIFNαをコードする遺伝子とが結合していることを意味する。形質転換される「植物細胞」には、種々の形態の植物細胞が含まれる。例えば、懸濁培養細胞、プロトプラスト、葉の切片、カルスなどにベクターを導入し形質転換体とすることができる。 ベクターをこれらの植物細胞に導入するための方法は公知である。具体的には、アグロバクテリウムを介する方法、ポリエチレングリコール法、電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、パーティクルガン法など当業者に公知の種々の方法を用いることができる。 形質転換された植物細胞を再分化させることにより、植物体を再生させることができる。植物種に応じた再分化の方法が確立されている。以下に各植物種の再分化のための方法を列挙する。 ジャガイモ: Visserらの方法(Theor.Appl.Genet 78:594 (1989)); チユーバーディスク法 イネ等の単子葉穀類: Hieiらの方法(Hiei Y, Komari T, Kubo T :Transformation of rice mediated by Agrobacterium tumefaciens. Plant Mol Biol 1997 35:1-2 205-18); Ishidaらの方法(Ishida Y, Saito H, Ohta S, Hiei Y, Komari T, Kumashiro T :High efficiency transformation of maize (Zea mays L.) mediated by Agrobacterium tumefaciens. Nat Biotechnol 1996 Jun 14:6 745-50); エレクトロポレーション法(Shimamoto,K., Terada, R., Izawa, T.et al. :Fertile transgenic rice plants regenerated from transformed protoplasts. Nature 338,274-276(1989))など イチゴ: Asaoらの方法(Asao,H.,Y.Nishizawa,S.Arai,T.Sato,M.Hirai,K.yoshida,A.Shinmyo and T.Hibi. :Enhanced resistance against a fungal pathogen Sphaerotheca humuli in transgenic strawberry expressing a rice chitinase gene. Plant Biotechnology.14(3):145-149(1997)) 一旦、ゲノム(染色体)内にIFNαをコードする遺伝子が導入された形質転換植物体が得られれば、該植物体から有性生殖または無性生殖により子孫を得ることができる。また、該植物体やその子孫あるいはクローンから繁殖材料を得て、それらを基に該植物体を量産することもできる。例えば、種子、果実、切穂、塊茎、塊根、株、カルス、プロトプラスト等を繁殖材料とすることができる。 更に、植物ウイルスベクターによって、植物において、目的のタンパク質を発現させる技術も公知である。ゲノムに組み込まれない植物ウイルスベクターを用いた場合、通常、外来性遺伝子は子孫には伝達されない。しかし現在のところ、植物ウイルスベクターを用いた外来性遺伝子の植物における発現レベルは、アグロバクテリウム法等に代表される染色体組換え法よりも高いことが知られている。植物ウイルスベクターとしてはタバコモザイクウイルスベクターが実用可能なウイルスベクターとして公知である。具体的には、植物体を育成し、接種可能時期に構築した発現遺伝子から転写させた感染性RNAを植物体に接種することにより、目的物質を植物体内で生産させることができる。 本発明の組成物は、哺乳動物の歯周病の、予防および治療の、いずれか、または両方のために有用である。本発明において、予防とは、歯周病症状の進行を抑制することを言う。症状が出ていない状態においては、症状の発生を遅らせることが予防である。また歯周病の治療とは、歯周病の症状の少なくとも一つを軽減することを言う。本発明において、予防あるいは治療すべき歯周病の症状には、歯肉の腫れや痛み、歯肉からの出血が含まれる。これらの症状は、歯肉の炎症に起因している。したがって、歯肉の炎症も、歯周病の症状に含まれる。 更に、歯周病の原因が特定の口腔細菌によってもたらされていることから、これらの病原菌の菌数を抑制することも、治療あるいは予防に含まれる。本発明における歯周病の病原菌には、黒色集落形成性グラム陰性嫌気性の細菌が含まれる。このような微生物は、たとえば馬脱繊維素血液加ブルセラHK寒天培地において、嫌気培養によって、黒色コロニーを形成する細菌として確認することができる。具体的には、Porphyromonas属やPrevotella属の微生物が歯周病の病原菌として公知である。実際に分離される菌種としては、P. gingivalisの頻度が最も高い。その他にP. endodontalis、P. circumdentaria、P. canoris、P. salivosaなどもしばしば分離される。 本発明の組成物を投与するための好ましい哺乳動物は、ヒトである。その他、イヌやネコなどのペット動物、あるいは動物園で飼育されている哺乳動物も、本発明における哺乳動物として好ましい。このような哺乳動物には、ブタ、イノシシ、ヤギ、ヒツジ、ウマ、ウシ、シカ、ロバ、トナカイ、ウサギ、サル、ゴリラ、オランウータン、チンパンジー、ナマケモノ、ゾウ、キリン、サイ、カバ、バク、オオカミ、ハイエナ、クマ、パンダ、レッサーパンダ、ハクビシン、キツネ、タヌキ、アライグマ、トラ、ライオン、ヒョウ、チータ、カワウソ、アザラシ、オットセイ、トド、アシカ、イルカ、シャチ、およびクジラなどが含まれる。 本発明において、口腔組成物は、哺乳動物の口腔に投与するための組成物を言う。本発明の口腔組成物は、インターフェロンαと生物学的に許容される担体を配合することによって製造することができる。生物学的に許容される担体とは、配合されるインターフェロンα、および当該組成物が投与される生物に対して、不活性な担体が含まれる。生物に対して不活性な担体とは、担体が正常な生物の機能に干渉しないことを言う。正常な生物の機能には、代謝機能、生殖機能、運動機能、神経作用などが含まれる。たとえば、生物の正常な代謝機能によって代謝される成分は、生物学的に許容される担体に含まれる。あるいは消化や代謝が行われない成分や、行われにくい成分であって、生物の機能に干渉しない成分は、いずれも生物学的に許容される担体に含まれる。 たとえば、IFNαが配合された食品は、本発明の口腔組成物の好ましい態様を構成する。本発明の組成物は、食品以外に、口腔組織への塗布や噴霧によって口腔に投与することもできる。本発明の組成物は、歯周病の予防あるいは治療を目的とする医薬組成物として投与することもできる。 すなわち本発明は、インターフェロンαを有効成分として含有する、歯周病の治療、および予防の、いずれか、または両方のための医薬組成物に関する。あるいは本発明は、インターフェロンαと薬学的に許容される担体を含む、歯周病の治療、および予防の、いずれか、または両方のための医薬組成物に関する。更に本発明は、インターフェロンαの歯周病の治療、および予防の、いずれか、または両方のための医薬組成物の製造における使用に関する。また本発明は、インターフェロンαの歯周病の治療、および予防の、いずれか、または両方のための方法における使用に関する。 特に、従来の技術においては歯周病に対する積極的な治療方法は知られていなかった。本発明においては、実施例でも確認されたとおり、本発明の歯周病の治療剤を投与することによって、既に進行している歯周病の治療効果が確認された。すなわち本発明は、インターフェロンαを有効成分として含有する、歯周病の治療剤を提供した。あるいは本発明は、インターフェロンαと薬学的に許容される担体を含む、歯周病の治療用医薬組成物に関する。更に本発明は、インターフェロンαの歯周病の治療のための医薬組成物の製造における使用に関する。また本発明は、インターフェロンαの歯周病の治療における使用に関する。 続いて本発明におけるインターフェロンαを含有する口腔用組成物の具体的な態様について説明する。 インターフェロンαを含む食品組成物: 通常、哺乳動物の食品(food)あるいは飼料(feed)として摂取される成分にインターフェロンαを配合することによって、本発明の組成物とすることができる。飼料が特にペット動物に与えられる場合には、ペットフードと呼ばれる。ペットフードは、本発明における食料あるいは飼料に含まれる。なおペット動物とは、鑑賞や愛玩を目的として飼育されている非ヒト動物を言う。したがって、たとえば、食肉、卵、毛、乳汁などの出荷や使役を目的として飼育されている動物は、通常家畜に含まれ、ペットとは区別される。ただし、警察犬や盲導犬などの、使役を目的として飼育される動物(使役動物;working animal)に対して、愛玩動物と同じ飼料が与えられる場合もある。飼育の目的が使役であっても、ペットと同じ動物種に対してペットと同じ飼料が与えられる場合には、当該飼料は本発明でいうペットフードに含まれる。 一般に、食品あるいは飼料は、炭水化物、タンパク質、ミネラル、脂肪、水分、あるいは繊維などを含む。その原料の多くは、動物や植物の組織、微生物菌体、ならびにそれらの加工品である。加工品とは、これらの素材を原料として、加熱、乾燥、凍結乾燥、あるいは抽出などによって得られた製品を言う。一連の加工品を得るための工程には、複数の異なる工程を組み合わせることもできる。 食品あるいは飼料には、保存剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、香料、保湿剤、調味料などを配合することもできる。また食品の形態に合わせて、増量剤、結合剤、あるいは粘度調整剤等の成分が添加されることもある。これらの成分には、天然由来の成分や、合成された成分が利用されている。したがって、これらの、一般の食品あるいは飼料素材に、IFNαを配合することによって、本発明に基づく食品組成物とすることができる。更に、一般のIFNαを含まない食品あるいは飼料の摂取時に、IFNαを混入することによって、本発明の口腔組成物とすることもできる。続いて、本発明の口腔投与用組成物の具体的な例を示す。 本発明の食品組成物、あるいは飼料組成物は、一般に食品あるいは飼料として利用される素材に、インターフェロンαを添加することによって得ることができる。本発明による食品組成物あるいは飼料組成物に添加されるインターフェロンαの量は、通常体重1kgあたり0.1〜1500LU/日、好ましくは体重1kgあたり0.05〜2500LU/日である。つまり、1日の標準的な食品あるいは飼料の摂取量に対して、体重1kg当たり、0.1〜1500LU、好ましくは0.05〜2500LU/のインターフェロンαを配合することができる。食品組成物が、チューインガム(chewing gum)などの嗜好性食品(nonessential food)の場合には、インターフェロンαの配合量に応じて、1日当たりの当該食品の摂取量を表示することで、インターフェロンの投与量を制御することもできる。たとえば、チューインガム1枚に1日分の投与量を配合したときには、1日当たりのチューインガムの摂取量が1枚であることが推奨される。 インターフェロンαを含む咀嚼性組成物(chewable composition): 本発明におけるIFNαを含む組成物は、咀嚼性の担体と配合して、咀嚼性の口腔組成物とすることができる。すなわち本発明は、IFNαと咀嚼性の担体(chewable carrier)を含む、口腔組成物を提供する。本発明において、咀嚼性の担体とは、動物の口腔に投与したときに、咀嚼される成分を言う。咀嚼性の担体は、噛み砕かれる素材であることもできるし、咀嚼によって小さな破片に砕かれにくい素材であることもできる。 具体的には、たとえば、グルコース、シュクロース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、トレハロース、でんぷん、ゼラチン、アルギン酸、アルギン酸塩、セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアガム(guar gum;ポリガラクトマンナン)、グルコマンナン、キサンタンガム、カーボポール等を示すことができる。 あるいは、各種のガムベースも本発明における咀嚼性の担体に含まれる。一般にガムベースには、口の中で長時間咀嚼しても、なお一定の体積が維持される担体が利用される。ガムベースとしては、たとえば、植物性樹脂、チクル、酢酸ビニル樹脂、エステルガム、ポリイソブチレン、炭酸カルシウム、あるいはジェルトン(ポンチアナック)等を利用することができる。ガムベースは、本発明における咀嚼性組成物を、特にヒト口腔への投与用に加工する場合に好適な咀嚼性担体である。 本発明における咀嚼性組成物が、医薬品として利用される場合には、咀嚼性の医薬組成物であり、食品として供される場合には、咀嚼性食品である。あるいは、本発明の組成物を咀嚼性の飼料とする場合には、咀嚼性の飼料組成物となる。なお、非ヒト動物においては、咀嚼行動を誘導するために、咀嚼性組成物の大きさを調節することができる。すなわち、一口で飲み込まれない程度の大きさに加工することによって、非ヒト動物において咀嚼行動を誘導することができる。更に、硬さを動物に合わせて高めることにより、より多くの咀嚼行動を誘導することもできる。 インターフェロンαを含むペースト状の組成物(paste type composition): 本発明におけるIFNαを含む組成物は、ペースト状の担体と配合して、ペースト状の口腔組成物とすることもできる。すなわち本発明は、IFNαとペースト状の担体(paste carrier)を含む、口腔組成物を提供する。本発明において、ペースト状の担体とは、半固形状(semi-solid consistency)を有する担体と言うこともできる。あるいはペースト状の担体には、ゲル状の担体が含まれる。 ペースト状の組成物は、たとえば水溶性の多糖類あるいは高分子化合物に、水などの溶媒を加えることで調製することができる。水溶性の多糖類あるいは高分子化合物には、グルコース、シュクロース、マルトース、ソルビトール、キシリトール、でんぷん、ゼラチン、ペクチン、アルギン酸、アルギン酸塩、セルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、グアガム(guar gum;ポリガラクトマンナン)、グルコマンナン、カラギーナン、キサンタンガム、タマリンドガム、カーボポール、アガロース、寒天等が含まれる。このほか、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドンなどの高分子化合物も、ゲル状の担体として本発明の組成物に配合することができる。 ペースト状あるいはゲル状の本発明の組成物は、たとえば口腔内の組織に塗布することによって投与することができる。口腔内の組織とは、歯肉、歯牙、舌下、頬側口腔(buccal cavity)、あるいは頬側粘膜(buccal mucosa)等を含む。たとえば歯肉への塗布は、歯周病の病巣に直接投与することができるので好ましい。あるいは、頬側口腔への塗布も、好ましい投与方法である。口腔内組織へのペースト状組成物の塗布は、非ヒト動物においても応用可能な投与方法である。あるいは主にヒトに対する投与方法として、本発明の組成物を歯磨き剤(tooth paste)として投与することもできる。すなわち、IFNαを配合した歯磨き剤を本発明の組成物として利用するのである。もちろん、歯磨きを受け入れる個体であれば、非ヒト動物に対しても歯磨き剤として本発明の組成物を投与することができることは言うまでもない。 本発明の組成物は、固形状、ゲル状、液状など任意の形状を選択することができる。IFNαの活性を維持するためには、乾燥された状態で流通させるのが望ましい。あるいは、組成物の摂取時に水などの適当な溶媒を加えることによって、乾燥した組成物をゲル状や液状にすることもできる。更に、本発明の組成物を凍結状態で流通させることもできる。 また本発明の組成物は、香料、色素、矯味剤、甘味料、調味料などの成分を付加的に含むことができる。また、歯周病の治療効果や予防効果が知られている公知の成分を本発明の組成物に組み合わせることができる。更に咀嚼性担体を配合した組成物においては、更に植物繊維などを配合して、歯牙のブラッシング効果を期待することもできる。 本発明の口腔組成物において、IFNαの含有量は、体重1kgあたり通常0.05〜2500LU/日、たとえば体重1kgあたり0.1〜1500LU/日、より具体的には0.2〜500LU/日、通常0.2〜50LU/日、好ましくは0.2〜1LU/日程度となるように配合することができる。血液中に抗ウイルス効果を期待して投与されるIFNαの投与量が、数MIU〜10MIU(1MIU=1000IU)ときわめて高用量であるのに対して、本発明においては低用量で課題を達成することができる。IFNαの使用量を低く抑えることによって、本発明におけるIFNα投与による副作用の危険は無視しうるほどに小さい。本発明の組成物におけるIFNαの配合割合は、当該組成物の摂取量に基づいて決定することができる。たとえば飼料に配合する場合には、本発明の組成物を投与すべき動物の体重と、1日当たりの飼料の摂取量に基づいて、飼料に配合すべきIFNαの量を決定することができる。 なお、本発明における1LUは、ヒト天然型IFNαの1IUに相当する。一般に、抗ウイルス効果の決定のためには、被験タンパク質のIFNα様作用に応答性を有する細胞が利用される。そのため実施例2ではイヌの細胞が利用された。一方ヒトIFNαの抗ウイルス効果の決定には、一般にヒトの細胞が利用される。したがって、両者の活性を直接比較することは困難である。しかし抗ウイルス活性を測定した原理は両者で共通であることから、1LUは1IUに相当するということができる。 あるいは、本発明の口腔組成物に含まれるIFNαの含有量に基づいて、当該組成物を体重1kg当たり、一日に何gを摂取すればよいのかを、指示書において説明することもできる。すなわち本発明は、(1)インターフェロンαと生物学的に許容される担体とを含む口腔組成物と、(2)当該組成物の歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のために有効な投与量を記載した指示書を含む、歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のためのキットを提供する。 本発明において、IFNαの力価(LU)は、次のようにして決定される。 力価を決定すべきタンパク質の希釈系列を作製する。各希釈段階の抗ウイルス活性を、たとえばCPE抑制法(J Vet Med Sci. 1996, 58(1), 23-27)などによって評価する。具体的には、実施例2で用いたような、水疱性口炎ウイルス(VSV)をウイルスとして、そしてイヌ由来A-72細胞(ATCC CRL-1542)をウイルス感受性細胞として利用することができる。A-72細胞の細胞変性は、クリスタルバイオレット染色によって定量的に評価することができる。VSVによるA-72細胞の細胞変性率を50%防ぐことができるIFN試料の希釈倍数の逆数を抗ウイルス活性(LU)とした。 本発明の口腔組成物は、動物の口腔に投与することによって、歯周病の予防、および治療のいずれか、または両方の効果を実現することができる。すなわち本発明は、インターフェロンαを口腔に投与する工程を含む、哺乳動物の歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のための方法を提供する。特に、インターフェロンαをヒトあるいは非ヒト動物の口腔内に投与する工程を含む歯周病の治療方法は、本発明における好ましい態様である。 本発明の組成物は、固形状、ペースト状、ゲル状、液状などの任意の形状として、哺乳動物の口腔に投与することができる。固形製剤は、咀嚼あるいは嚥下行為を介して、投与することができる。あるいは、口中錠(いわゆるトローチ剤)として固形製剤を口腔内に投与することもできる。ペースト状あるいはゲル状製剤は、咀嚼や嚥下行為に加え、口腔組織への塗布によって投与することができる。液状製剤は、嚥下行為に加え、口腔内への噴霧、口内洗浄やうがい行為を介して投与することができる。 本発明の口腔組成物を、医療行為として投与する場合には、口腔組成物は、医薬組成物として利用される。すなわち本発明は、インターフェロンαと薬学的に許容される担体を含む、哺乳動物の歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のための、口腔投与用医薬組成物を提供する。本発明において、薬学的に許容される担体とは、通常、薬剤の製剤に利用されている不活性な担体を利用することができる。 以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明する。 なお本明細書において引用された全ての先行技術文献は、参照として本明細書に組み入れられる。〔実施例1〕バキュロウイルス発現イヌIFNα4(BacCaIFNα4)の調製 CaIFNα遺伝子は、イヌ細胞由来のcDNAライブラリーから、次の塩基配列からなるプライマーを用いるPCR法によって増幅した。cDNAライブラリーは、紫外線で不活化したニューカッスル病ウイルスB1株で刺激したMDCK細胞のmRNAを鋳型として作製した。 センスプライマー(配列番号:5): 5'-gcaggatccacgATGGCCCTGC-3'(小文字部分のggatccはBam HI配列) アンチセンスプライマー(配列番号:6): 5'-gctggatccgtca[atgatgatgatgatgatgatg]TTTCCTCCTCCTTACTCTTC-3' (小文字部分のggatccはBam HI配列、[]内はHis-Tagをコードする塩基配列) PCR法により得られた増幅断片をpCR2.1ベクターへTAクローニングし、大腸菌に形質転換した。形質転換体を増殖し、菌体から調製したプラスミドを用いて挿入されたcDNAの塩基配列を確認した。このとき確認された挿入断片の塩基配列と、それによってコードされるアミノ酸配列を図1に示した。塩基配列を確認後、プラスミドのBam HI断片をバキュロウイルストランスファーベクターpAcYM1(J.Gen.Virol. 1987, 68, p1233-1250)にリクローニングし、コトランスフェクションにより組換えウイルスを作製した。得られた組換えウイルスを昆虫細胞Sf9に接種した。発現産物を回収し、Niカラム法により精製して約0.2 mg/ml のBacCaIFNα4を得た。 精製BacCaIFNα4をSDS-PAGEにより分離しCBB染色した結果、約27、25、23kDaの3つのバンドが検出された(図2A)。精製BacCaIFNα4を免疫して得られた抗BacCaIFNα4ウサギ血清(第1抗体)、およびホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)標識した抗ウサギIgGヤギ血清(第2抗体)を用いてウエスタンブロッティングを行った結果、CBB染色で検出された3つのバンドのサイズと一致するバンドが検出された。塩基配列から計算した推定分子量はPre BacCaIFNα4が22.2kDa、シグナルペプチド領域(図1、アミノ酸配列中二重線で囲んだ部分)を欠いたMature BacCaIFNα4が19.8kDaである。バキュロウイルス発現系で発現、精製したIFNタンパク質中には、Pre型とMature型との違い、及び糖鎖の付加(糖鎖付加部位は図1、アミノ酸配列中二重下線部分、3箇所)数の違いによって数パターンの目的IFNタンパク質が存在することが知られている。現在のところ具体的な検討は行っていないが、BacCaIFNα4についても上記のような現象が起きているためにCBB染色像やウエスタンブロッティング像で3本のメジャーバンドが検出されたと推定される。〔実施例2〕BacCaIFNα4の生理活性評価 〔実施例1〕で調製した精製BacCaIFNα4試料を段階希釈し、CPE抑制法(J Vet Med Sci. 1996, 58(1), 23-27)により抗ウイルス活性を測定した(図2B)。ウイルスには水疱性口炎ウイルス(VSV)、感受性細胞としてイヌ由来A-72細胞(ATCC CRL-1542)を用いた。具体的には、A72細胞を増殖培地に浮遊させ、96穴プレートに1×104/wellとなるように撒き、CO2インキュベーターで37℃、2日間培養した。実施例に用いた培地の組成は次のとおりである。 維持培地:L-グルタミン、NaHCO3を添加したイーグルMEM培地 増殖培地:最終濃度5%のFCSを加えた維持培地 2日後、サンプルウェルには、維持培地で16000倍から4倍階段希釈したIFNα希釈液を100μL/wellとなるように添加した。また、ウイルスコントロールウェルには維持培地のみを添加した。CO2インキュベーターで37℃、1日間培養した。サンプルウェル、ウイルスコントロールウェルに100TCID50/mLに調製したVSVを10μL/well接種した。非感染コントロールウェルには維持培地のみ10μL/well添加した。CO2インキュベーターで37℃、3日間培養した。IFNαを添加後3日目に0.5%クリスタルバイオレット染色液を80μL/well添加し、UV照射下に30分間静置した。流水洗浄、風乾後、プレートリーダーにより各ウェルの吸光度値(570nm)を測定した。VSVによるA-72細胞の細胞変性率を50%防ぐことができるIFN試料の希釈倍数の逆数を抗ウイルス活性とした。細胞変性率を50%防ぐことができるIFN試料の希釈倍数については以下のように求めた。 ウイルスコントロールウェル、あるいは非感染コントロールウェルにおける570nmにおける吸光度をそれぞれA、Bとした時に(A+B)/2で求められる値を50%細胞変性の状態における570nmにおける吸光度とし、グラフからその吸光度に対応する希釈倍率を求めた。ウイルスコントロールウェル、非感染コントロールウェルの吸光度値はそれぞれ0.21、1.168だったことから、(0.21+1.168)/2=0.689を50%細胞変性の状態における吸光度とした。グラフから、測定したBacCaIFNα4試料の抗ウイルス活性は1024×104LU/mL(比活性は5×104LU/μg)だった。〔実施例3〕投与試験(1) BacCaIFNα4をビーグル犬に微量経口投与した。実験用のイヌとしてはビーグル犬(8-9ヶ月齢、雌、体重9-10 kg)5頭を用いた。一頭あたりの投与量は2.5LUとした。投与剤はパテ状マルトースとして、舌下に塗布した。投与剤は、マルトース1 gに滅菌蒸留水390 μLを加え、BacCaIFNα4(2,500LU/mL)10 μLを加えて調製した。投与は5日間の連続投与とした。投与後日数としては2、5、および8日まで調べた。BacCaIFNα4を投与前にマルトース1 gに滅菌蒸留水400 μLを加えて調製したものを投与した実験群を対照群とした。投与後日数としては2、5、8、12日とした。潜在的な炎症が進行していることを示す所見として、潜血反応を調べた。潜血反応は採取した唾液を用いて唾液検査用試験紙サリバスター(昭和薬品化工株式会社、商品名)により調べた。 唾液10 μLを採取し、BHI液体培地で希釈系列を作成した。ここから、10 μLを7%馬脱繊維素血液加ブルセラHK寒天培地に接種し、嫌気培養(70%N2、15%H2、15%CO2)を5日間行った。歯周病原細菌である黒色集落形成細菌(BPB)数および総嫌気性細菌数を調べた。すべてのイヌにおいて、実験開始前(Pre)、マルトース投与群(Mal)、IFN投与群(IFN)における歯肉の炎症所見は認められなかった。図3に示したようにIFN投与群ではBPB数は有意に減少した。一方、Mal群では変わらないか、増えるかであった。 図4に示したように唾液中の潜血はMal群のイヌ4/5(80%)に認められた。IFN投与後2日目ではこれらのイヌで唾液中の潜血は同率同レベルで認められたが、IFN投与後5日目では1/5(20%)に減少した。IFN投与後8および12日目ではすべてのイヌで唾液中の潜血は検出できなかった。以上の結果から、BacCaIFNα4の微量経口投与は歯周病原細菌の抑制効果を示し、初期段階での歯肉の炎症を抑えると考えられた。〔実施例4〕投与試験(2) BacCaIFNα4を歯肉炎を発症しているビーグル犬(雌、15ヶ月齢、体重9〜13 Kg)に微量経口投与した。投与量は体重1 Kg当たり0.25LUとした。BacCaIFNα4を当該量含むように調製したパテ状マルトースを、1日1回、7日間連続で食後にイヌ口腔内、特に頬側の歯肉を中心に塗布した。投与剤は、マルトース2 gに滅菌蒸留水790 μLを加え、BacCaIFNα4(5,000LU/mL)10 μLを加えて調製した。パテ状マルトース14 mg中に0.25LUのBacCaIFNα4が含まれる。よって一頭のイヌへの投与量は、体重(kg)×14 mg BacCaIFNα4含パテ状マルトースとなる。 IFN投与群、および対照群のイヌ、それぞれ6頭に、次のスケジュールにしたがって、BacCaIFNα4を含むパテ状マルトース、またはBacCaIFNα4を含まないパテ状マルトースをそれぞれ投与した。 IFN投与群の投与スケジュール: (1)BacCaIFNα4を含まないパテ状マルトースを1日1回食後に投与(7日間連続); (2)7日間のインターバル; (3)BacCaIFNα4を含むパテ状マルトースを1日1回食後に投与(7日間連続) 対照群の投与スケジュール: (1)BacCaIFNα4を含まないパテ状マルトースを1日1回食後に投与(7日間連続); (2)7日間のインターバル; (3)BacCaIFNα4を含まないパテ状マルトースを1日1回食後に投与(7日間連続) 前記スケジュール(1)-(3)を通じて歯肉炎指数としてGingival Index (GI)をそれぞれのイヌについて測定し、歯肉の炎症の経時的変化を調べた。結果は表1に示す。n=6, (a)平均値±S.D., (b)対照群についてはIFNaは加えずMaltoseのみ, (c)投与前と投与7日後の差を表す, * :数値間の差が統計的に有意であることを示す P<0.01,MAL:マルトース, IFNα:BacCaIFNα4 一般的に知られているL¨oeとSillnessの方法(Acta Odont. Scand. 1963, 21: 533-551)に改良点を加えた以下の方法によって炎症の程度を評価した。炎症の程度は以下の4段階に分類し点数をつけた。 0:炎症のみられない健康な歯肉; 0.5:歯肉溝に沿ってわずかな炎症がみられる歯肉; 1:歯肉溝に沿って帯状の炎症がみられる歯肉; 2:歯肉溝全体に沿って帯状の炎症、あるいは歯肉の広範囲に炎症がみられ、且つプロービング時に出血がみられる歯肉。 全ての歯について頬側の歯肉部分のみを検定対象とし、その合計値を検定した歯数で割った値をGIとした。IFNα投与群ではIFNα投与開始前に0.621±0.042だったGIが投与開始後7日後までに0.452±0.078まで減少した。GIの減少は歯肉の炎症の軽減を意味する。同期間の対照群のGI変化量と比較して、この減少は有意だった。また、マルトースのみを投与した場合と比較してIFNαを投与した時のGIの減少は有意だった。 したがって、BacCaIFNα4の微量経口投与により歯肉の炎症の程度が改善されたといえる。この結果から、ある程度歯肉炎が進行した対象(イヌ)に対してもBacCaIFNα4の微量経口投与は歯肉炎を抑制するのに有効であると考えられる。微量経口投与の期間をさらに延長することによって長期間にわたって歯肉炎の進行を予防することが可能であると考えられる。〔実施例5〕投与試験(3) BacCaIFNα4を歯肉炎を発症しているビーグル犬(雌、17ヶ月齢、体重9〜13 Kg)に微量経口投与した。投与量は体重1Kg当たり0LU(対照群)、0.25LU(IFN0.25群)、25LU(IFN25群)とした。BacCaIFNα4を当該量含むように調製したパテ状マルトースを、1日1回、30日間連続で食後にイヌ口腔内、特に頬側の歯肉を中心に塗布した。IFN25群に投与する投与剤の調製はマルトース1 gに滅菌蒸留水395 μLを加え、BacCaIFNα4(5×105LU/mL)5 μLを加えた。パテ状マルトース14 mg中に25LUのBacCaIFNα4が含まれる。よって一頭のイヌへの投与量は、体重(kg)×14 mg BacCaIFNα4含パテ状マルトースとなる。IFN0.25群に投与する投与剤は同様にBacCaIFNα4(5×103LU/mL)5 μLを加えて調製した。対照群にはBacCaIFNα4を含まないパテ状マルトースを1日1回食後に、30日間連続で投与した。全ての群について、IFN投与開始後30日目まで、歯肉炎指数としてGIを測定して、歯肉の炎症の経時的変化を調べた。結果を表2に示した。n=6, (a) 平均値±S.D., (b) 括弧内の数値は投与前との差を表す,*:数値間の差が統計的に有意であることを示す P<0.01, **:P<0.05,IFNα:BacCaIFNα4 〔実施例4〕の投与試験と同様、投与期間中は暫時GI値が減少し、対照群と比較して有意に低い値を示した。投与量0.25LU/Kgと25LU/Kgでは炎症の改善に顕著な差はみられなかった。この結果から、BacCaIFNα4の微量経口投与は歯肉炎の抑制に有効であり、微量経口投与の期間を延長することによって長期間にわたって歯肉炎の進行を予防することが可能であるといえる。 本発明は、動物の歯周病の予防あるいは治療に有用である。ヒトにおいては高齢化社会の進行に伴って、歯周病の予防や治療は重要な課題となっている。イヌやネコなどのペット動物、あるいは動物園で飼育されている観賞用の動物においても、飼育環境の改善などによってヒトと同じように高齢化が進んでいる。その結果、歯周病の予防や治療は、動物においても重要な課題となりつつある。本発明に基づく歯周病の予防あるいは治療のための技術は、ヒトのみならず、動物においても有効である。特に、本発明に基づく口腔組成物は、口腔に投与することで、その効果を得ることができる。本発明の口腔組成物は、エサなどに配合することによって、動物へも容易に投与することができる。 体重1kgあたり0.2〜1LU/日のインターフェロンαを有効成分として含む、歯周病の予防および治療の、いずれか、または両方のための口腔投与用の組成物。 歯周病が哺乳動物の歯周病である請求項1に記載の組成物。 哺乳動物が、イヌまたはネコである請求項2に記載の組成物。 哺乳動物がヒトである請求項2に記載の組成物。 インターフェロンαと、咀嚼性の担体を含む請求項1に記載の組成物。 咀嚼性の担体が食品である請求項5に記載の組成物。 咀嚼錠またはチューインガムである請求項6に記載の組成物。 インターフェロンαと、ペースト状の担体を含む請求項1に記載の組成物。 体重1kgあたり0.2〜1LU/日のインターフェロンαを口腔に投与する工程を含む、非ヒト哺乳動物の歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のための方法。 インターフェロンαと、咀嚼性の担体を含む組成物を口腔に投与する工程を含む、請求項9に記載の方法。 インターフェロンαと、ペースト状の担体を含む組成物を口腔内組織に塗布する工程を含む、請求項9に記載の方法。 哺乳動物が、イヌまたはネコである請求項9に記載の方法。 体重1kgあたり0.2〜1LU/日のインターフェロンαと薬学的に許容される担体を含む、哺乳動物の歯周病の予防および治療のいずれか、または両方のための、口腔投与用医薬組成物。 薬学的に許容される担体が、咀嚼性の担体である請求項13に記載の医薬組成物。 薬学的に許容される担体が、ペースト状の担体である請求項13に記載の医薬組成物。配列表


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る