タイトル: | 特許公報(B2)_ポリアミドの解重合方法及びポリアミドのモノマーの製造方法 |
出願番号: | 2007546394 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | C07D 201/12,C07D 223/10,C08J 11/20,C08G 69/46 |
海磯 孝二 杉本 常実 JP 4957555 特許公報(B2) 20120330 2007546394 20061107 ポリアミドの解重合方法及びポリアミドのモノマーの製造方法 宇部興産株式会社 000000206 伊丹 勝 100092820 千且 和也 100103274 海磯 孝二 杉本 常実 JP 2005339752 20051125 20120620 C07D 201/12 20060101AFI20120531BHJP C07D 223/10 20060101ALI20120531BHJP C08J 11/20 20060101ALI20120531BHJP C08G 69/46 20060101ALN20120531BHJP JPC07D201/12C07D223/10C08J11/20C08G69/46 C07D 201/12 C08J 11/20 C08J 11/14 CAplus(STN) CASREACT(STN) REGISTRY(STN) 特表平10−509965(JP,A) 特公昭46−031541(JP,B1) 特開2000−191638(JP,A) 特開2000−034363(JP,A) 1 JP2006322157 20061107 WO2007060828 20070531 8 20080520 谷尾 忍 本発明は、ポリアミドを解重合することにより高収率でモノマーを得ることができるポリアミドの解重合方法、及びその解重合方法を利用したポリアミドのモノマーの製造方法に関する。 モノマー原料であるカプロラクタムを重合することにより得られたナイロン6に代表されるポリアミド製品は、ナイロン繊維、フィルム、エンジニアリングプラスチックスとして各分野で大量に利用されている。利用後のポリアミド製品は、廃棄物として埋立や焼却処分がなされている。しかし、近年環境保護や資源の有効利用の観点から、ポリアミド製品をリサイクルする方法が種々検討されている。 例えば、特許文献1には窒素含有化合物の存在下においてポリアミドを水中で解重合する方法が記載されている。しかし、大量の高温・高圧水を使用した場合、比較的短期間に金属装置の腐食という問題が生じる場合がある。また、解重合反応後に大量の水を分離する際に大量のエネルギーを消費する。また、大量の水を廃棄する際は高度な排水処理設備を要した。特開平8−301843号公報 本発明は、上記問題を解決しポリアミドを解重合することによりモノマーを簡便に効率良く得るための工業的に有利な方法を提供することを目的とする。 発明者は、ポリアミドを解重合するための条件を鋭意検討した結果、炭化水素溶媒中におけるモノマーの回収率が水の場合に比べて大幅に向上することを見出し発明の完成に至った。すなわち、本発明は、ポリアミドを解重合することによりモノマーを得る方法において、炭化水素溶媒の存在下において解重合反応を行なうことを特徴とするポリアミドの解重合方法である。また、本発明は、ポリアミドを炭化水素溶媒の存在下において解重合反応を行なうことによって前記ポリアミドのモノマーを得ることを特徴とするポリアミドのモノマーの製造方法である。 本発明によれば、モノマーの回収率を大幅に向上させることができる。また、炭化水素系の有機溶媒を用いることにより、装置の腐食を防止することができる。さらに、炭化水素溶媒は蒸発潜熱が小さいため、炭化水素溶媒を回収するためのエネルギーコストを低減することができる。また、炭化水素溶媒は繰り返し使用することが可能であり、また廃棄する際も燃料として有効利用が可能である。これにより、従来埋立や焼却処分されていたポリアミド製品のケミカルリサイクルを工業レベルで達成することができる。 以下、本発明について詳細に説明する。 本発明において用いられるポリアミドは、アミド(−C(O)NH−)結合を2個以上結合した重合体である。より具体的には、ジアミンとジカルボン酸がアミド結合によって鎖状となった高分子体や、カプロラクタムのように一分子中にアミノ基とカルボキシル基が脱水縮合して環化した形状のモノマーを開環重合して得られた鎖状高分子体である。また、ポリアミドの重合度は特に制限されるものではなく、低重合物であるオリゴマーでも良い。オリゴマーとしては、鎖状体(アミノカプロン酸の2量体から7量体程度まで)と環状体(2量体から9量体程度まで)が挙げられる。また、ポリアミドは一種においてまたは二種類以上が混合されてあっても良い。例えば、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン11およびナイロン12などが挙げられ、ナイロン6が好ましく使用される。具体例としては、ナイロン6繊維カーペットの廃棄物やカプロラクタムを連続的に重合してナイロン6を製造する際に、製品のグレードを切り替える際に発生する規格外品や、重合物を熱水洗浄した後の洗浄水から水を除去したオリゴマーを含有する残渣物や、モノマーであるカプロラクタムを製造する工程においてカプロラクタムを連続蒸留した際に発生する蒸留残渣物などが挙げられる。 次に、炭化水素溶媒について説明する。本発明において用いられる炭化水素溶媒としては、脂肪族、芳香族を問わず用いることができる。具体例としては、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素や、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。その中で、トルエンが好ましく使用される。 ポリアミドを炭化水素溶媒の存在下において解重合反応を行なう際に、炭化水素溶媒とともに水を存在させて解重合反応を行なうことも可能である。これにより、解重合に要する反応時間を短縮することができる。この際、炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合は、0を超え30質量%以下、好ましくは、1質量%以上20質量%以下である。炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合が30質量%を超えると、比較的短期間に金属装置の腐食が生じ易くなるので好ましくない。 ポリアミドと炭化水素溶媒と水の総質量に対するポリアミドの割合は、0を超え50質量%以下、好ましくは10質量%以上40質量%以下である。 本発明におけるポリアミドの解重合反応においては、酸やアルカリなどの触媒を用いることができる。しかし、触媒を用いることなく高いモノマーの回収率を達成することができる。これにより、触媒の供給設備が不要となり、また解重合反応系がシンプルになり、さらに触媒の除去・回収工程が不要となるため、工業的に優れたプロセスとなり得る。 解重合反応を行なう温度は、300℃以上420℃以下であり、好ましくは300℃以上400℃以下であり、特に好ましくは350℃以上370℃以下である。300℃より低い温度は、ポリアミドの解重合反応が充分に進行しないため好ましくない。一方、420℃を超えると、解重合されたモノマーがさらに熱分解しモノマーの回収率が低下するため好ましくない。 解重合反応の時間は、5分以上4時間以下、好ましくは1時間以上2時間以下である。これにより、従来と比べモノマーを高い回収率で回収することができる。 解重合反応後の処理液は、炭化水素溶媒回収工程において炭化水素溶媒が回収される。炭化水素溶媒回収手段としては、単蒸留装置、フラッシュドラム等からなるフラッシュ分離装置、蒸留塔等の(減圧)蒸留装置などが挙げられる。密封状態において解重合反応を行なう場合、反応容器内は高温高圧の状態にある。よって、反応後に圧力調整弁を用いて炭化水素溶媒の沸点以上の温度になるように反応容器内を降圧するという簡便な方法によって、炭化水素溶媒をフラッシュさせて回収することができる。これにより、エネルギーコストを低減することができる。フラッシュさせた炭化水素溶媒は、凝縮器によって凝縮される。凝縮された炭化水素溶媒は、再び解重合反応用に再利用される。 炭化水素溶媒を回収した後の残留物は、モノマー回収工程においてモノマーが回収される。モノマー回収手段としては、単蒸留装置、蒸留塔等の(減圧)蒸留装置、薄膜蒸発装置などが挙げられる。この中で、薄膜蒸発装置がモノマーの熱劣化を防止するために好ましく用いられる。例えば、ナイロン6を解重合することにより得られたカプロラクタムを薄膜蒸発装置において処理する場合、留出温度は、80から120℃であり、塔頂の圧力は、0.05から2.66kPaA(Aは絶対圧であることを示す)である。回収されたモノマーは、そのまま、または精留や再結晶や昇華手段によって更に精製した後、再度ポリアミドの製造に供することができる。 一方、モノマー回収工程においてモノマーが回収された後の解重合されなかった未反応物を含む残留物は、再び解重合反応容器に供給する。これにより、モノマーの回収率を更に向上させることができる。 以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施することができる。(実施例1) 反応器として、容積が10mLのSUS316(ステンレス鋼)製の反応管を用いた。反応管内に、0.3gのナイロン6(宇部興産製ナイロンチップ1022B)と4gのトルエン(和光純薬製有機合成用(脱水)、水分量は10ppm)を加えた。次に、反応管内のヘッドスペース内の空気をアルゴン置換してから封緘した。封緘した反応管を370℃に加熱された電気炉内に静置して6時間加熱した。このときの反応管内の圧力は7.6MPaG(Gはゲージ圧を示す)であった。加熱後に反応管を電気炉から取出し、反応管を水に浸漬することにより大気温度まで冷却した。冷却した反応管から内容物を取出し、含有するε-カプロラクタムの定量を行なった。 ε-カプロラクタムの定量は、ガスクロマトグラフィー(島津製作所製GCー14B)によって行なった。ε-カプロラクタムの回収率は、以下の式に従って算出した。結果を表1に示す。カプロラクタムの回収率は74.1重量%であった。これは、下記に示す比較例1および2における水の場合と比べて、回収率がさらに向上したことを示す。また、反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢を維持していた。[ε-カプロラクタムの回収率(質量%)]=[(反応混合物中のε-カプロラクタム(質量%))×(反応前のナイロン6と溶媒と触媒の総質量(g))]/(反応前のナイロン6の質量(g))×100 尚、触媒を使用しない場合は触媒の質量はゼロ(g)である。(比較例1および2) トルエンの代わりに水を用い、加熱時間を1時間(比較例1)と2時間(比較例2)に変更した以外は、実施例1と同様な方法により解重合反応を行ない、カプロラクタムの回収率を求めた。反応管内の圧力は24.8MPaGであった。結果を表1に示す。その結果、カプロラクタムの回収率は実施例1と比べて低いものとなった。また、反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢が部分的に消失し、若干黒色を帯びていた。(実施例2から31) 表1に示すとおり、種々の条件を変更した以外は実施例1と同様な方法により解重合反応を行なった。反応管内の圧力は、実施例6から8は10MPaG、実施例13および14は8.4MPaG、実施例15および16は11.3MPaG、実施例17および18は12.9MPaG、実施例19および20は14.8MPaG、実施例21および22は17.9MPaG、実施例28は20.7MPaGであった。結果を表1に示す。その結果、カプロラクタムの回収率はいずれも極めて高いことが明らかとなった。また、反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢を維持していた。(実施例32から35) ナイロン6の代わりに、オリゴマーを用いて解重合反応を行なった。ここでいうオリゴマーとは、ε-カプロラクタムを重合した後に熱水洗浄を行ない、洗浄水から水を除去した後の残渣物をいい、未反応のε-カプロラクタムやε-カプロラクタムのオリゴマーを含有する。具体的なオリゴマーの組成は、ε-カプロラクタムが22.5質量%、アミノカプロン酸が3.1質量%、環状2量体が16.6質量%、環状3量体が21.1質量%、環状4量体が13.4質量%、環状5量体が7.3質量%、環状6量体が1.8質量%、環状7量体を1.4質量%、鎖状のオリゴマーを含むその他が12.8質量%であった。表1に示すように条件を変更した以外は、実施例1と同様な方法により解重合反応を行なった。反応管内の圧力は、実施例32から34は14.8MPaG、実施例35は20.7MPaGであった。結果を表1に示す。その結果、カプロラクタムの回収率は極めて高いことが明らかとなった。また、反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢を維持していた。(実施例36) トルエンの代わりにノルマルヘキサン(和光純薬工業株式会社製、水分量は10ppm)を用い、さらに表1に示すように条件を変更した以外は、実施例1と同様な方法により解重合反応を行なった。反応管内の圧力は、14.9MPaGであった。結果を表1に示す。その結果、カプロラクタムの回収率は極めて高いことが明らかとなった。また、反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢を維持していた。(実施例37から69) 次に、表2に示すように炭化水素溶媒の種類を変えてナイロン6の解重合を行なった。トルエン以外の炭化水素溶媒を用いたこと及び加熱時間を1及び2時間以外に3時間行なった以外は、炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合が10質量%である実施例19及び20と同様な方法により解重合反応を行なった。トルエン以外の炭化水素溶媒として、ノルマルヘキサン、シクロヘキサン、ノルマルドデカン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、シクロオクタン、ノルマルトリデカン、ノルマルテトラデカン、ノルマルペンタデカン、流動パラフィン(和光純薬製特級)、テトラヒドロナフタレン(和光純薬製1級)を用いた。なお、実施例64の反応管内の圧力は、5.1MPaGであった。その結果、表2に示すように、トルエン以外の炭化水素溶媒を用いた場合であっても、カプロラクタムの回収率は極めて高いことが明らかとなった。また、反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢を維持していた。(実施例70から74) 次に、表3に示すように炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合を変えてナイロン6の解重合を行なった。炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合を変えた以外は、370℃で1時間加熱を行なった実施例3、6、11、19及び28と同様な方法により解重合反応を行なった。その結果、表3に示すように、炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合が0を超えて30質量%以下で、極めて高いカプロラクタムの回収率が得られることが明らかとなった。さらに、炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合が1質量%以上20質量%以下で、カプロラクタムの回収率は特に高いことが明らかとなった。また、炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合が30質量%以下である実施例3、6、11、19、28及び70について反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢を維持していた。(実施例75から77) 次に、表4に示すように解重合反応を行う温度を変えてナイロン6の解重合を行なった。解重合反応を行う温度を変えた以外は、炭化水素溶媒と水の総質量に対する水の割合が10質量%である実施例13、15、17、19及び21と同様な方法により解重合反応を行なった。その結果、表4に示すように、解重合反応を行なう温度を変化させても極めて高いカプロラクタムの回収率が得られることが明らかとなった。さらに、解重合反応を行なう温度が300℃以上420℃以下で特に高いカプロラクタムの回収率が得られ、350℃以上370℃以下ではカプロラクタムの回収率が極めて高いことが明らかとなった。また、反応後の反応容器内を目視で確認したところ、ステンレスの光沢を維持していた。 本発明は、ポリアミド製品を解重合することにより高い回収率でモノマーを回収する際に利用可能である。 触媒を用いることなく、トルエンとともに水を存在させてナイロン6を解重合することによりカプロラクタムを製造する方法であって、前記解重合におけるトルエンと水の総質量に対する水の割合は0を超えて30質量%以下であり、前記解重合は、封緘し、300℃以上420℃以下で行なうことを特徴とするカプロラクタムの製造方法。