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タイトル:特許公報(B2)_真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)により生じるタマネギのべと病に対する耐性
出願番号:2007544846
年次:2012
IPC分類:A01H 5/00,C12N 15/09,C12Q 1/68,A01H 1/00


特許情報キャッシュ

ハルレウェイン,ヤン レーンデルト ホーゲンブーム,ヨアネス ペトルス フベルトゥス JP 5065905 特許公報(B2) 20120817 2007544846 20051125 真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)により生じるタマネギのべと病に対する耐性 ニッケルソン ズウァーン ベスローテン フェンノートシャップ 507189231 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 中村 和広 100108903 渡辺 陽一 100117019 武居 良太郎 100150810 ハルレウェイン,ヤン レーンデルト ホーゲンブーム,ヨアネス ペトルス フベルトゥス EP 04078320.1 20041208 20121107 A01H 5/00 20060101AFI20121018BHJP C12N 15/09 20060101ALI20121018BHJP C12Q 1/68 20060101ALI20121018BHJP A01H 1/00 20060101ALN20121018BHJP JPA01H5/00 ZC12N15/00 AC12Q1/68 AA01H1/00 Z A01H 1/00-17/00 C12N 15/00-15/90 C12N 5/00- 5/28 C12Q 1/68 BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) CA/CONFSCI/SCISEARCH(STN) AGRICOLA/CABA/CROPU(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) PubMed Plant Breeding,1990年,vol. 105,144-149 Theor. Appl. Genet.,2000年,vol. 100,118-126 Theor. Appl. Genet.,2000年,vol. 100,17-26 Theor. Appl. Genet.,2000年,vol. 100,480-486 Euphytica,1990年,vol. 47,29-31 Euphytica,1992年,vol. 64,131-137 12 NCIMB NCIMB 41249 EP2005013537 20051125 WO2006061256 20060615 2008522602 20080703 40 20081017 名和 大輔 本発明は、真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)(Berk.)Cas.により生じるタマネギのべと病に耐性なアリウム(Allium)属の植物、特に、アリウム・セパ(Allium cepa)又はアリウム・フィツロサム(Allium fistulosum)種の植物に関する。本発明に従って、上記植物のゲノム内にホモ接合又はヘテロ接合で存在することができ、かつ、その座を担持する植物に耐性を提供するために十分なものである耐性座により、耐性が提供される。本発明は、栽培タマネギ又はワケギを取得するために好適な、タマネギのべと病に耐性な上記植物を取得する方法をも提供する。本発明の背景 真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)により生じるべと病は、事実上全世界に分布している。この病原体は、さまざまな種類のタマネギを攻撃するが、一般的なタマネギでありアリウム・セパ(Allium cepa)に対して特に破壊的である。この真菌により引き起こされる損害は、Mukerji(ref5)中に記載されている。条件がこの病気にとって好ましい場合、自然伝染が圃場において発生しうる。この兆候は、葉の黄色化、及び灰色の胞子形成である。経済的観点から、べと病は、世界のほぼ全てのタマネギ栽培地域において、タマネギ及びワケギ(Allium cepa L.)の栽培を脅かす主要な真菌病の内の1つである。 べと病に対する完全な自然耐性は、アリウム・セパ(Allium cepa)及びアリウム・フィツロサム(Allium fistulosum)において存在しないと推定される。しかしながら、べと病に対する完全な耐性が、野生型アリウム・ロイレイ・アテアン(Allium roylei Stearn)において発見された。A.royleiとA.cepaの間の一定の形態学的類似性により示唆されて、A.cepaのための遺伝子移入パートナーとしてA.royleiを使用することが提案された。vander Meer and de Vriesによる刊行物(ref1)中、A.royleiとA.cepaの間の雑種に関する予備的結果、並びにA.cepaへの当該種間雑種の戻し交雑に関する結果が報告されている。上記種間雑種は、雄性及び雌性稔性であることが観察された(Kofoet et al.,ref2)。べと病耐性は、タマネギへの上記雑種のBC1(第1戻し交雑)子孫に優性に遺伝されうることも報告されている。 上記耐性に責任を負う遺伝子移入された配列が存在するところのセパのゲノム内の遺伝子座は、「Pd耐性座」と呼ばれる。広義には、「Pd耐性座」は、それ自身の配列をも指す。 しかしながら、A.royleiとA.cepaの間のF1からのBC1及びF2子孫の中でのべと菌耐性の分離が観察され(de Vries et al.,ref3)、そしてべと病に対する品種改良タマネギ変種は、最初の耐性雑種が得られて以後10年以上の間、未だ得られていない。 したがって、べと病に耐性であり、かつ、自家受粉後未だ100%耐性である、すなわち、耐性特性に分離がない、アリウム・セパ及びアリウム・フィツロサム種の植物に関して農業経済及び経済的観点からの興味が在る。これらの植物は特に価値が高い。なぜなら、それらは、感受性の系統と、実際に、交雑されて、タマネギのべと病に対して耐性である雑種を与えることができるからである。 本発明は、第1に、アリウム・セパ及びアリウム・フィツロサム種の入手しうる耐性材料の全てが、Pd耐性配列に関して実際ヘテロ接合であり、そしてホモ接合耐性植物は、今日まで再現性をもって得られておらず又は開示されていないという観察に在る。 本願発明者らは、ホモ接合耐性植物が得られない理由を明らかにし、そして100%耐性である自家受粉後の子孫を生じさせるアリウム植物(すなわち、ホモ接合耐性植物)を取得することに成功した。 ホモ接合植物が入手可能ではないという驚ろくべき発見を、いくつかの仮定:トランスロケーション、組換え、雑種優先的選択、遺伝子サイレンシング、及び多面発現効果、連鎖障害(drag)、その他は説明できたであろう。本発明は、セパ雑種内に存在し、べと病に対する耐性を付与するアリウム・ロイレイの遺伝子移入断片が、セパ内の染色体の両ホモログ上のその存在が当該植物にとって致死性であるところの「致死因子」と命名される配列をも含むことを決定した。それゆえ、耐性セパ植物が存在し、かつ、成長するためには、耐性を付与し、かつ、致死因子を含む遺伝子移入断片は、必ず、単一の染色体ホモログ上に存在し、これは、先駆者により得られたホモ接合耐性植物の不存在を説明する。致死性に責任を負う上記配列は、Pd耐性座の近傍に存在する。 耐性を付与する配列が致死性配列に連結されていることが同定されたため、本願発明者らは、最初に、両染色体上に存在するとき、致死性に責任を負う配列から、耐性を付与する配列を物理的に分離することに成功した。 組換え事件により引き起こされることができる上記分離ステップは、本発明の重要な点である。実際、耐性を付与する配列は、致死因子から分離されうることは予測されることができなかった。第1に、当該因子は、それ自体致死性である配列であるのか否か、又は内因性の不可欠な配列の、遺伝子移入断片上に存在する配列による、置換の結果として致死が生じるのか否かは、知られていなかった。事実、致死は、A.royleiから導入された断片により補償されない、対応のセパ断片上の不可欠遺伝子のノック・アウトである。それゆえ、以下のさまざまなシナリオが致死を説明することができた: − 耐性配列は、実際、致死因子を構成したかもしれない。なぜなら、それらは、内因性の決定的な配列を置換するからである。したがって、それらは、致死を生じさせずに、両染色体上に存在することは決してできなかったであろう。 − 耐性配列と致死配列は、染色体上、互いに極めて近接し、又は重複さえしたかもしれなかった。この状況においては、両者を分離する組換え事件を取得する可能性はほとんどない。 − 致死因子を構成する配列は、耐性の働きに必要であったかもしれない。この条件では、両者の分離は、耐性能力の喪失を導くであろう。 この点で、本発明者らは、両ホモログ上でのその存在が致死性であるところの配列から、耐性表現型を付与する配列を分離することに、予想外に、成功したのである。 本発明者らは、既に公表された耐性A.cepaが、同一の遺伝子移入断片上に、(優性である)Pd耐性座と、(劣性遺伝される)致死因子の両者を有するということも発見した。Pd耐性座は優性であるので、植物の表現型は「耐性」であり、そして劣性致死因子は観察されない。しかしながら、感受性植物と交雑されるとき、このような植物の子孫は、分離し、そしてそれゆえ、商業的に使用されることはできない。実際、商業的なタマネギ及びワケギは、一般に、変種であり、これゆえ、系統であるか雑種であるから問わず、均質でなければならない表現型を植物材料であり;着目の形質の分離は、商業的な植物と見ることはできない。 したがって、本発明は、Pd耐性座のそれらのゲノム内での存在に因りペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)により生じるタマネギのべと病に対して耐性であるアリウム・セパ(Allium cepa)及びアリウム・フィツロサム(Allium fistulosum)の植物を提供し、そして当該植物は、ホモ接合耐性植物、すなわち、自家受粉後も100%耐性である子孫を与える植物である。 本発明は、アリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の上述の耐性植物と、べと病に感受性であるアリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の植物とを、交雑することにより得られうる耐性植物をも提供する。 本発明は、上記植物を取得する方法をも提供する。定義 本願の文脈において、以下の用語を、以下のように定義する: 遺伝子移入: 種間交雑のプロセスを介しての1の種の遺伝子から他のものの中への自然導入、その後の、再出現植物への引き続き行われる戻し交雑。それにより、各種は、より変異性となり、そして他の種の一定の特徴を示しうる。 Pd耐性座: 植物に耐性を付与するために十分な、ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)に対する耐性に責任を負う配列により占有される染色体内の場所。Pd耐性座は、1の遺伝子又はおそらく、無関係の配列又は遺伝子により分離される数個の遺伝子を含みうる。広義には、本発明においては、その配列自体もPd耐性座という。可能なPd耐性座は、系統3591−1 NCIMB寄託番号第41249号の植物のゲノム内のA.royleiの遺伝子移入断片である。 感受性である/感受性(susceptible/susceptibility): “Definition of the Terms Describing the Reaction of Plants to Pests or Pathogens for the Vegetable Seed Industry”中2004年5月のthe International Seed Federation, Section Vegetables, Position Paperに従えば、感受性とは、所定の害虫又は病原体の成長及び発達を制限する植物変種の不能力である。しかしながら、用語「感受性(sensitive)」が同一の特性を説明するために過去数十年間広く使用されてきたことに留意すべきである。これに反して、一定程度、及び類似の条件及び害虫又は病原体圧の下での感受性植物変種に対して比較されるとき、特定の害虫又は病原体の成長及び発達を制限することができる植物は、上記特定の害虫又は病原体に対して耐性(抵抗性)としての資格がある。耐性植物は、耐性である、すなわち、感染されているが生存している植物、及び完全に耐性である植物を含む。害虫又は病原体に対して耐性であるけれども、上記害虫又は病原体により攻撃された耐性植物は、感染、低下した成長、早い死、葉の損失等を特徴とする兆候を示すことができる。 近交系: 連続、同系交配及び選択により生産される(全ての特徴に関して)近いホモ接合系。 病原体に対するホモ接合耐性植物: 上記病原体に対してほぼ100%耐性である(自家受粉)後の子孫を与える植物。耐性が植物の染色体内のDNA配列の存在に因る場合、当該配列は、当該染色体のホモログの全ての上に存在する。 致死因子: その因子に晒された植物の生存を妨害する因子、例えば、遺伝的因子。致死因子の存在は、植物が最初から存在することを妨害し、又はその後の段階でその死を引き起こすことができる。 アリウム・セパ(Allium cepa): その丸い食用球根のために世界中で栽培される中空葉をもつ球根植物を含む、アリウム属の種。栽培変種タマネギ(onion)及びワケギ(shallots)はアリウム・セパ種である。 組換え: 細胞分裂の間に生じる交雑。 本発明は、真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)により生じるタマネギのべと病に耐性なアリウム・セパ(Allium cepa)又はアリウム・フィツロサム(Allium fistulosum)の植物である、最初の植物のタイプを提供する。本発明に従えば、べと病に対する耐性は、植物のゲノム内のPd耐性座に因り、ここで、当該耐性座は、ゲノム内にホモ接合で存在し、当該耐性に責任を負う配列は、本発明に係る植物のゲノム内に2個のコピーで存在し、すなわち、両染色体ホモログ上に存在することを特徴とする。 実際、本発明は、両染色体ホモログ上に存在する場合、致死性であると本発明者らにより同定された、連結された致死性配列からべと病に対する耐性に責任を負う配列を分離することに成功した。これら2つのタイプの配列を分離することにより、本発明者らは、有害な配列(致死因子)に関してホモ接合であることを伴わずに、着目の配列(Pd耐性座)に関してホモ接合である植物を取得することに成功した。本発明は、耐性を付与する配列に関してホモ接合である上記生存可能な植物に関する。これらの植物は、存在しうるが単一コピーだけで存在しうる致死配列に関して必ずしもホモ接合ではない。 本発明に係る上記植物は、耐性を付与する着目の配列に関してホモ接合であるので、本発明に係る植物の子孫は、上記特徴を分離せずに、べと病に対して耐性な植物を導くであろう。実際、子孫の植物は、感受性表現型に対して優性であることが知られているPd耐性座をそのゲノム内にもつであろう。 感染を妨害し又は感染後真菌の成長と闘うことにより、ペロノスポラ・デストラクターの成長及び発達を制限することができる場合、植物は耐性であると考えられる。これに反し、ペロノスポラ・デストラクターの成長及び発達を制限することができない植物は、ペロノスポラ・デストラクターに対して感受性であるといえる。本発明に係る上記耐性は、ペロノスポラ・デストラクターによる自然感染に対する耐性、そしてまた、ペロノスポラ・デストラクターによる人工接種に対する耐性を含む。人工試験は、十分に管理された環境下、温室又は空調室内で実施されうる。若い植物及び発芽している球根の両者が試験されうる。ペロノスポラ・デストラクターに対して植物が耐性であるか又は感受性であるかを試験するためのプロトコールは、de Vries et al.(ref3)による文献中に報告されている。 耐性は、植物のゲノム内のPd耐性座の存在をアッセイすることにより、分子マーカーにより遺伝子を試験されることもできる。使用しうる技術は、当業者に周知であり、そして一般に、遺伝子増幅に基づく。 分子タイピングのために使用されうる技術は、制限酵素断片長多型(RFLP)、多座酵素電気泳動、及びランダム増幅多型DNA(RAPD)を含む。植物のゲノム内のPd耐性座の存在を試験するために特に好適な他の技術は、AFLPTM(増幅断片長多型)であり;このような技術は、例えば、Vos et al.(ref4)中に記載されている。この技術は、好適な制限酵素によるゲノムDNAの消化の第1ステップ、それと同時の、特別にデザインされたオリゴヌクレオチド・アダプターとのライゲーションから成る。上記アダプターは、追加の定義された配列に連結された、制限酵素部位に対応する配列を有する。第2のステップにおいて、得られたタグ付制限酵素断片のPCR増幅が、その後、アダプターに相補的な配列と上記タグ付けされた制限酵素断片の間の区別を可能にする1,2又は3個の追加のヌクレオチドを含むプライマーを用いて実行される。 以下の実施例4に、Pd耐性座が存在するときにのみ、所定の長さの増幅された断片を与える4つの特異的プライマー対を与える。植物が、予想される増幅される断片の内の1以上を生成する場合、その植物は全Pd耐性座を有し、そしてそれゆえ、べと病に耐性であると演繹されうる。分子マーカーの使用は、本発明において特によく適合するものである。好ましくは、本発明に係る耐性植物は、ペロノスポラ・デストラクターによる感染に対して耐性である。 本発明に係る上記第1のタイプの植物は、例えば、寄託番号第41249号の下、NCIMBに寄託されている系統3591−1からの植物である。本発明者らが上記植物を得たところの方法を、実施例1に報告する。本発明は、上記Pd耐性座をヘテロ接合で有する、すなわち、染色体ホモログの内の1つだけの上に有する植物である、第2のタイプの植物にも関する。本発明に従えば、上記植物は、上述のホモ接合植物を、アリウム・セパ又はアリウム・フィツロサムの第2の植物であって、タマネギのべと病に対して感受性であるものと、交雑することにより得られうる。 交雑させる植物の種に依存して、本発明は、アリウム・セパとアリウム・フィツロサムの間の雑種、並びにアリウム・フィツロサム種の植物、及びアリウム・セパ種の植物を包含する。 Pd耐性座が本発明の植物の第2のタイプにおいてヘテロ接合で存在するという事実に因り、自家受粉又はそれらを他の植物と交雑するとき、耐性形質は分離する。 本発明の上記態様に従う植物は、寄託番号第41249号の下、NCIMBに寄託された系統3591−1からの植物を、べと病感受性アリウム・セパ親系統と、交雑することにより得られうる。この親系統は、好ましくは、細胞質雄性不稔のアリウム・セパ近交系である。 本発明に係る植物の第2のタイプは、もちろん、他の方法によっても得られうる。例えば、それらは、既にこのタイプである植物を自家受粉することによっても得られうる。但し、先に説明したように、このような自家受粉の子孫は、べと病に対して100%耐性ではない。 本発明に従えば、Pd耐性座は、好ましくは、本発明の第1のタイプ又は第2のタイプに従う植物のゲノム内に、ホモ接合又はヘテロ接合で、第3染色体上に存在する。アリウム・セパ及びアリウム・フィツロサム種の植物は、実際、相同染色体であると考えられている2n=16の染色体をもつ(特に、文献8を参照のこと)。 本発明の植物は、Pd耐性座に因り真菌ペロノスポラ・デストラクター(Pd)により生じるタマネギのべと病に対して耐性であるアリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の植物であって、当該Pd耐性座を含む染色体の断片が、致死を引き起こさずに子孫においてホモ接合で存在することができる前記植物をも含む。 上述のように、Pd耐性配列又は座の近傍に、致死を引き起こす配列が一般に存在しうる。Pd耐性座及び上記致死配列を含む染色体の部分は、一般に、両染色体ホモログ上に存在し得ない。なぜなら、それは、植物が存在することを妨げるからである。当該致死配列からPd耐性座を分離することにより、本発明者らは、Pd耐性座を含み、当該Pd耐性座を含む染色体の部分が両染色体ホモログ上に存在し又は存在することができる植物を取得することができた。なぜなら致死配列が存在しないからである。 本発明に係るアリウム・フィツロサム種の植物は、(寄託番号第41249号の下、NCIMBに寄託された)系統3591−1の第1の植物と、アリウム・ロイレイ種の植物と交雑させ、そしてその後、得られた雑種を、1又は数回、すなわち、ブリッジング種としてアリウム・ロイレイを使用して、アリウム・フィツロサム種の植物を用いて、戻し交雑することにより、得られうる。 本発明は、真菌ペロノスポラ・デストラクター(Pd)により生じるタマネギのべと病に対して耐性であるアリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の植物であって、第3染色体のホモログの内の少なくとも1つが、Pd耐性座を含み、そして当該Pd耐性座を含む当該染色体の断片が致死を引き起こさずに子孫においてホモ接合で存在することができる前記植物にも関する。 Pd耐性座に関してホモ接合であり、そして致死配列に関してヘテロ接合である植物、すなわち致死配列が第3染色体の1のホモログ上にのみ存在する植物も、本発明の一部であることに留意すべきである。実際、致死配列を伴わずにPd耐性座を含む、第3染色体のホモログの内の少なくとも1つの断片は、致死を引き起こさずに子孫においてホモ接合で存在しうる。 このような植物は、例えば、本願の実験の節の実施例3において例示される植物3591−3,3591−4,3591−5,3591−6,又は3591−8である。 耐性植物を自家受粉することにより、子孫を分析することによって、当該植物が先に与えた定義に一致するか否かを、演繹することができる。実施例5は、このような決定のために実施される分析についての細目を与える。耐性植物は、子孫の少なくとも75%(計測の変動性に因り+/−5%)が耐性である場合、本発明に従う植物である。図1は、上記パーセンテージを導く、ゲノム・レベルでの異なる状況を例示する。 1の染色体ホモログ上にのみ致死配列に連結されたPd耐性をもつ植物は、本発明の一部ではないということに留意すべきである。このような植物は、自家受粉後、遺伝法則に従って、66.7%耐性である、すなわち、75%未満耐性である子孫を与えるであろう。したがって、このような植物は本発明に従う植物から区別されることができる。 このような植物は、例えば、本発明の実験の節の実施例2において例示する系統2348の植物である。好ましくは、Pd耐性座は、本発明に従う植物内でホモ接合で存在する。 本発明の好ましい態様に従えば、ペロノスポラ・デストラクターによる感染に対する耐性を付与するPd耐性座は、遺伝子移入断片上に存在する;それは、タマネギのべと病に対して天然で耐性である植物から、好ましくは、野生型親耐性から、最も好ましくはアリウム・ロイレイに起源をもつ。アリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の植物のゲノム内の遺伝子移入断片の存在は、上記植物と、遺伝子移入パートナーを交雑し、それにより雑種を得ることにより得られうる。上記ハイブリッドは、遺伝子移入断片を最小化するために、アリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の植物を用いて、好ましくは、戻し交雑され、そしてその後、べと病に対する耐性を示す能力に基づいて選択される。実際、本発明に従うアリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の植物における遺伝子移入断片は、好ましくは、耐性形質を除く親植物の着目の特徴の全てを共有する植物をもつために、限定された。 好ましくは、本発明に係る植物のゲノム内の遺伝子移入断片は、第3染色体の1又は両ホモログ内に、そして好ましくは、第3染色体の長腕内にのみ存在する。Pd耐性座を含む遺伝子移入断片は、第3染色体の長腕の長さの50%未満、好ましくは44%未満、より好ましくは35,30,25又は20%未満である。上述のように、遺伝子移入断片は、好ましくは、アリウム・ロイレイのゲノムに起源をもつ。 上記のタイプに従う植物は、寄託番号41249の下、NCIMBに寄託された系統3591−1からの植物である。1,2又はそれ以上の遺伝子移入断片が、例えば、第3染色体の長腕内に存在することができるが、各断片は、互いに区別され、そして分離される。 最も好ましい状況に従えば、本発明に係る植物内に存在する遺伝子移入断片は、べと病に対する耐性のために不可欠な配列のみである。 本発明に係る植物は、Pd耐性を他の農業経済的に価値のある植物内に移入するために使用されうる。但し、当該植物は互いに交雑されることができる。これは、雑種を取得し、そしてその後に、当該雑種を、第2の植物と戻し交雑し、その後に、得られた植物を自家受粉することによりなされうる。ここで、各ステップにおいて、耐性の子孫が選択される。 好ましくは、本発明に係る植物は、着目の特徴、すなわち、タマネギのべと病に対する耐性のために好適であるが、他の形質のためには必ずしも好適でない。本発明に係る植物は、タマネギのべと病に対して耐性である野生型アリウム親(genitor)とアリウム・セパの間の最初の種間交雑から得られうる。この状況に従えば、遺伝子移入断片は、野生型アリウム親に起源をもつ。 本発明に係る、すなわち、アリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種に属する植物を取得するためには、アリウム・セパ又はアリウム・フィツロサム種の親と最大の表現型類似性を共有するがべと病に対して耐性である交雑から得られた雑種植物を選択することが必要である。好ましくは、本発明に係る植物は、上述の最初の種間交雑、その後の、親種の植物との数回の戻し交雑、そして場合により1又は数回の自家受粉の後に、得られうる。 上記戻し交雑及び自家受粉のステップは、得られる植物内の遺伝子移入断片の割合を低下させる。推奨される戻し交雑の数は、少なくとも2回、好ましくは3,4,5又は6であり、7,8〜10回の連続する戻し交雑も企図される。実施されるべき自家受粉の数は、1〜8の間、好ましくは2,3,4又は5である。 本発明の好ましい態様に従えば、上記最初の種間交雑は、タマネギのべと病に対して耐性な野生型親とアリウム・セパの間であり、そして上述の戻し交雑は、アリウム・セパ種の植物を用いて実施される。 野生型アリウム親は、ペロノスポラ・デストラクターにより生じるタマネギのべと病に対して耐性なアリウム属の植物、好ましくは、天然に耐性のものであり、そして好ましいアリウム親は、アリウム・ロイレイ種の植物である。 上述のように、Pd耐性座の存在は、ペロノスポラ・デストラクターによる感染に対する耐性を検出するために周知のプロトコールに従って試験されうる。しかしながら、これらのプロトコールは時間がかかる。したがって、Pd耐性座の存在は、当業者に周知である遺伝子増幅に基づく他の遺伝子技術によって試験されることもできる。 分子タイピングのために使用されうる技術は、制限酵素、断片長多型(RFLP)、多座酵素電気泳動、及びランダム増幅多型DNA(RAPD)を含む。植物のゲノム内Pd耐性座の存在を試験するために特に好適な他の技術は、AFLPTM(増幅断片長多型)であり;このような技術は、例えば、文献4中に記載されている。この技術は、本発明のために、特に好適である。 本発明に従えば、AFLPTMといわれる上記技術は、アリウム属の植物のゲノム内のPd耐性座の存在をアッセイするために使用される。当該植物のゲノムDNAの制限は、好ましくは、制限酵素PstIとMseIを用いて実施され;そしてライゲーションは、以下のアダプター:を用いて実行される。 次いで、以下のプライマー:を用いて、上記アダプターにライゲートされた制限酵素処理断片に対してPCR増幅が実施される。 上記手順に従って、試験された植物内のPd耐性座の存在は、61個のヌクレオチドの増幅された断片の存在から演繹される。実際、かかる断片が先行するステップから得られる場合、それは、実施例4に報告する結果から演繹されることができるように、本発明に従うPd耐性座の存在を指標する。 あるいは、上記方法は、以下の別プロトコールに従って実施されることもできる: − 植物のゲノムDNAの制限を、制限酵素PstIとMseIを用いて実行する;そして − ライゲーションを、以下のアダプター:を用いて実行する; − PCR増幅を、その後、以下のプライマー:を用いて上記アダプターにライゲートされた制限断片に対して実施する。 かかるプロトコールが実施されるとき、実施例4に報告する結果から演繹されることができるように、151個のヌクレオチドの特定断片が、試験された植物のゲノム内のPd耐性座の存在を提示する。 第3の別法に従えば、上記方法は、以下のプロトコールに従って実施されうる: − 上記植物のゲノムDNAの制限を、制限酵素PstIとMseIを用いて実行する;そして − ライゲーションを、以下のアダプター:を用いて実行する; − 以下のプライマー:を用いて、上記アダプターにライゲートされた制限酵素断片に対してPCR増幅を、その後に、実施する。 かかるプロトコールを実施するとき、330個のヌクレオチドの特定の断片は、実施例4に報告する結果から演繹されることができる、試験された植物のゲノム内のPd耐性座の存在を指標する。本願の実施例4は、上記方法の使用を説明する。 本発明は、タマネギのべと病に対して、ホモ接合で耐性なアリウム・セパ種の植物にも関し、すなわち、自家受粉後の当該植物の子孫は、べと病に対し100%耐性であり、これは、以下のプロセスを実施することにより得られうる: a)アリウム・ロイレイとアリウム・セパの間の種間交雑; b)真菌ペロノスポラ・デストラクター(Pd)により生じるタマネギのべと病に対して耐性である、種間雑種の選択; c)アリウム・セパの植物を用いた上記雑種の戻し交雑; d)タマネギのべと病に耐性な植物の選択; e)こうして得られた植物の自家受粉; f)タマネギのべと病にホモ接合で耐性な植物の選択。 上記ステップa)は、雄性および雌性不稔である生存可能な種間雑種を与えることが証明されている。種間交雑は、雄としてのアリウム・ロイレイと雌親としてのアリウム・セパの間、又はその逆で、雌としてのアリウム・ロイレイと雄親としてのアリウム・セパの間で、実行されうる。 上記ステップb)は、真菌ペロノスポラ・デストラクターにより生じるタマネギのべと病に耐性な植物の選択のステップである。先の段落中に述べたように、耐性は、文献中又は本明細書の実験の節中に記載される知られたプロトコールを用いて天然又は人工接種により試験されうる。選択は、上記のAFLPTM法を利用することによっても達成されうる。有用な制限酵素、アダプター、及びPCRプライマーは、Pd耐性座の存在を指標する予想される増幅断片の長さとともに、上記した。 本発明に従って、ステップb)において選択された植物は、タマネギのべと病に耐性であるだけでなく、それらは、有利にはできるだけ多くの形態学的特徴を、アリウム・セパ親と共有する。 ステップc)は、タマネギのべと病に対する耐性についてステップb)において選択された種間雑種とアリウム・セパ種の植物との戻し交雑に関する。この戻し交雑ステップのために使用される上記アリウム・セパ植物は、ステップa)において使用した植物からよりも種間雑種のための親と同じ亜種、変種又は形態からのものであることができるが、必ずしもそうではない。 戻し交雑から生じた植物を得た後、タマネギのべと病に対して耐性な植物を選択する。ステップb)に関して述べたように、この選択は、ペロノスポラ・デストラクターによる感染に抵抗する能力を試験することにより、又は例えば、AFLPTM技術による分子タイピングを達成することにより、達成されうる。 本発明の好ましい態様においては、ステップc)、その後のステップd)は、有利には少なくとも1回繰り返される。すなわち、少なくとも2回の連続した戻し交雑が存在する。戻し交雑の数は、2〜10の間、好ましくは、3,4,5又は6回に変動しうる。 ステップe)は、当業者に周知である自家受粉(self−pollination or selfing)のステップである。 この自家受粉ステップの後に、アリウム種の植物に特徴的な形質を全て共有する、タマネギのべと病に対して耐性な植物の選択が行われる。好ましくは、上記自家受粉と選択のステップは、少なくとも1回繰り返され、すなわち、自家受粉と選択の少なくとも2つのシリーズが達成される。これらのステップは、好ましくは、2,3,4,5又は8回行われ、すなわち、それらは1,2,3,4又は7回繰り返される。 上記プロセスの最後のステップは、ペロノスポラ・デストラクターにより生じるタマネギのべと病に対してホモ接合で耐性である植物の選択に関する。このホモ接合性は、ステップe)を達成し、そして子孫の100%がべと病に耐性であることをチェックすることにより試験されうる。 本発明に従えば、選択の最後のステップは、好ましくは、先の節に記載した分子タイピング技術、例えば、AFLPTM技術を用いることにより、そして好ましくは、先に述べた制限酵素、アダプター、及びプライマーを用いて達成されうる。 本発明は、以下のステップを含む真菌ペロノスポラ・デストラクター(Pd)により生じるタマネギのべと病に耐性なアリウム・セパ種の植物の生産方法にも関する: a)タマネギのべと病に耐性なアリウム・ロイレイの取得; b)上記アリウム・ロイレイとアリウム・セパの間の種間交雑; c)タマネギのべと病に耐性な種間雑種の選択; d)上記雑種とアリウム・セパの植物との戻し交雑; e)タマネギのべと病に耐性な植物の選択; f)ステップe)において得られた耐性植物の自家受粉; g)タマネギのべと病にホモ接合で耐性な植物の選択。 本発明に従えば、タマネギのべと病に耐性な植物を選択するためにステップc),e)、及び/又はg)において分子マーカーが使用される。 上記方法のさまざまなステップは、先の複数の段落中で説明したものと同じである。上記プロセスの好ましい態様も先に述べたものであり、特に、ステップd)とe)、及びステップf)とg)の繰り返しである。上記選択のステップは、先に説明したように達成されることもできる。それらは、好ましくは、分子マーカーを利用する分子タイピング法を用いて達成される。特に好ましい方法は、先の節において記載したAFLPTMである。本発明に従えば、分子マーカーは、選択ステップc)のみ、又はステップe)のみ、又はステップg)のみ、又はこれらステップの内のいずれか、又は3つの内の2つにおいて、使用されうる。 各選択ステップにおいて、選択された植物は、好ましくは、アリウム・セパに特徴的な形質の最大数を共有する植物である。 この手順に従えば、最初のアリウム・ロイレイ親に起源をもつ遺伝子移入断片は、各ステップにおいて最小化される。アリウム・セパに特徴的な形質は、UPOV条約に関連するthe Guidelines for the Conducts of Tests for Distinctness, Uniformity and Stability (reference TG/46/6)中に開示されたものと同じである。 本発明に従えば、上記方法は、ステップg)の終わりに得られた植物と、タマネギのべと病に感受性であるアリウム・セパ種の植物とを、交雑させる追加のステップを含んでもよい。得られる植物はべと病に耐性である。なぜなら、ステップg)の終わりに得られる植物は、べと病に対してホモ接合で耐性であるからである。 上述のように、選択ステップc),e)、及び/又はg)は、AFLPTM技術を用いて実施されうる。本発明において例示されるように、上記技術において使用される制限酵素は、好ましくは、PstIとMseIである。前記ライゲーション・ステップのために好適なアダプター対は:である。 PCR増幅のための、使用されうる好適なプライマー対は:及びである。 数個の断片が増幅され、そして当該PCR増幅の後に、寒天ゲル上で検出されうる。しかしながら、プライマー対(A)を使用するとき、61個のヌクレオチドをもつ断片の存在は、試験された植物のゲノム内のPd耐性座の存在を指標する。あるいは、プライマー対(B)を使用するとき、指標となる増幅された断片の長さは151個のヌクレオチドであり、そしてプライマー対(C)を使用するとき、ヌクレオチド長は330である。 本発明の好ましい態様においては、AFLPTM技術を使用するとき、偽陽性を検出するために、追加のPCR増幅も実施されうる。この手順に従えば、以下のプライマー対:及びの間から選ばれる少なくとも1つのプライマー対を用いて増幅が行われる。 上記追加の増幅から生じる増幅された断片は、ネガティブ・コントロールとして使用される。プライマー対(A),(B)又は(C)を使用するときに予想される断片は、プライマー対(A′),(B′)又は(C′)を使用するときに検出されてはならない。 本発明は、記載された方法、特に好ましい態様に従う方法により得られうるアリウム属の植物をも包含する。 本発明は、べと病に感受性であるアリウム・セパの親系統と、本発明に係るタマネギのべと病にホモ接合で耐性な植物とを交雑させることにより得られうる雑種アリウム・セパ植物にも関する。当該植物は、例えば、先に開示される本発明に係る方法を実施することにより得られうる。 アリウム・セパ親系は、アリウム・セパ種のいずれの系統であってもよく、それは、好ましくは、着目の特徴に関して十分に記載され、かつ、周知の系統である。例えば、それは、その味、速い成長、又は他の農業経済学的に重要な形質に関して知られた栽培変種である。 好ましい態様に従えば、上記親系統は、細胞質雄性不稔アリウム・セパ近交系である。 これまでに記載してきた本発明に係る植物は、本発明の好ましい態様に従えば、栽培されるタマネギ又はワケギである。実施例:実施例1:アリウム・セパのホモ接合耐性系統の取得導入: タマネギにおけるべと病を、真菌ペロノスポラ・デストラクター(Berk.)Casp.(Mukerji,ref5)により引き起こされる。それは、植物組織上でのみ維持されインビトロにおいて寒天又は液体培地上では維持されることができない偏性の病原体である。 病気の耐性についての試験は、さまざまな方法で実施されることができ、例えば、de Vries et al(ref3)を参照のこと。自然伝染は、当該病気にとって条件が好ましい場合、圃場において生じうる。人工試験は、より管理された環境下、温室又は空調室内で行われうる。幼岩植物と発芽球根の両者が試験されうる。兆候は、葉の黄変と灰色の胞子形成である。 本発明者らにより遂行された品種改良プログラムにおいては、ホモ接合系統を得るために、戻し交雑のプロセスの間、及び自家受粉のプロセスの間に、さまざまな方法が適用された。 本報告は、耐性は予想されたように簡単には遺伝しなかった、すなわち1遺伝子優性でなかったという結論をもたらし、そしてべと病に対して完全に耐性である本発明に係る系統3591の生産をもたらした試験について記載するものである。材料及び方法 本試験の出発点は、de Vries et al(ref3)中に開示されるF1BC2といわれる植物である。この植物は、アリウム・セパとアリウム・ロイレイの間の最初の種間交雑(F1)、その後のアリウム・セパへの2回連続した戻し交雑により得られたものであった。本発明者らは、上記植物材料をそれらの品種改良系統に戻し交雑を実施し続け、そしてホモ接合系を取得するためにBC5世代の自家受粉を実施した。S1,S2及びS3は、それぞれ、1,2又は3回連続した自家受粉ステップが実施されたことを示す。 最初の圃場試験は、異なるF2集団の耐性植物(F1BC5S1)の自家受粉から得られたF3系統(F1BC5S2)を用いて実施した。 温室内で先に接種された散布用球根を、圃場内に植えた(Hildebrand et al,ref7)。 接種物は、分生子柄をデミ水(demi−water)中に懸濁させることにより作製した。胞子をもつ葉を、2層のチーズクロスの上でデミ水で洗浄した。懸濁液を5×104胞子/mlに希釈した。胞子を、針つきシリングを用いて、球根の赤道から底板まで、球根内に接種した。球根を、10℃24時間いくつかの湿った紙を入れたプラスチック袋内に入れた。その後、菌糸体の成長を刺激するために温度を15℃まで上昇させた。その後、球根を圃場に植え付けた。 伝染が始まり、そして8月の半ばに、感染された植物をカウントした。成長期の間、及び葉が落ち、球根が実るまで、非感染球根をカウントして、異なる系統の耐性格付け及び分離比を推定した。耐性植物は、兆候を全く示さない。いずれかの病変が認められる場合、その植物は感受性であると考えた。 第2の圃場試験において、4月の最初の週に、品種改良圃場に353個のプロットをドリルした。圃場は、べと病菌の伝染の発展を刺激するために、球根で取り囲んだ。感受性変種Staccatoの対照プロットの100%感染をもたらした重度の感染が始った。感染植物と非感染植物をカウントした。関連する系統の球根を収獲し、そしてさらなる研究及び翌年の種子生産のために使用した。結果 上記最初の圃場試験は、タマネギ植物の重度の感染をもたらした。兆候が信頼性をもった格付けされることができる限り、感染性植物をカウントした。いくつかの初期の系統は、初期の段階で葉が落ち、そして葉の乾燥とべと病の兆候の間を区別することができなかった。これらの系統に関して、感受性植物だけを格付けし、そして耐性植物をカウントしなかった。なぜなら、耐性クラスは、それらの初期の系統において、多くの逸出を含むからである。合計で、20系統が存在した。34系統を、感受性植物と耐性植物の両者についてカウントし、そしてこれらの系統は、かなり遅れて葉が落ち、そして上記耐性についての格付けは、信頼性をもって行うことができなかった。データを表1に与える。 上記第2の圃場試験も、高いべと病菌感染を与えた。感受性変種Staccatoの特別な対照プロットは、100%感染された。353個の異なる品種改良系統の圃場試験において、感染植物を与えないたった1個が見つかった。プロット番号3591の下で播かれたこの品種改良系統第4018282号は、感染されていない140個の植物を与えた。同一F3系統、第3997284号からの自家受粉により得られた21個の他のF4系統(F1BC5S3)は、耐性に関する分離を示した(表2)。討議 圃場試験番号1は、べと病耐性タマネギの品種改良が先に予想された程簡単でなかったことを最初にはっきりと示した。単一遺伝子の優性に遺伝した耐性の場合、当業者は、通常、耐性F2植物の自家受粉後、完全に耐性である系統の少なくとも1/3が存在すると予想したであろう。RR植物だけが完全に耐性な子孫を与え、Rr植物は分離するであろうし、そして、耐性について選択した後のF2植物においては、RR植物は、当該集団の1/3を含む(ここで、「R」は、優性耐性遺伝子を担持する対立遺伝子を表し、「r」は、劣性感受性遺伝子を表す)。 54個の系統を試験し、そして34個は、耐性と感受性の両者について信頼性をもって格付けされることができたが、54個の系統の全てが分離した。これは、1/3とは有意に異なる比を意味する。全系統に対する耐性植物の合計比は、予想されたものよりも低かった(60.65%)。ヘテロ接合植物が自家受粉される場合、単一優性遺伝子の場合には75%の耐性比が予想された。 個々の系統、例えば、第3977307号と第3977358号は、異なる比を与えた。これは、逸出により引き起こされることができる。第3977303号に由来する近交系は、試験され、そして52%〜73%の変動比をもって全て分離した(データは示さず)。感染されなかった植物を耐性として分類したが、兆候を示すように逸出した。これはおそらく、より湿度の低い微小環境あるいは他の病気を導き又は感染を失敗させる初期の葉の枯れ、低い植物数に因る。 上記圃場試験番号2は、系統第4018282号を含む第3591プロットの発見をもたらした。この系統は、重度に感染した圃場において感受性の植物を示さなかった。この圃場は353個の系統を含み、これは、遺伝の複雑さを確認させるものであった。さらに、かなり高い頻度のホモ接合系統が見つかり、そして第4018282号/第3591号系統だけではなかった。 A.roylei遺伝子移入断片についての試験を実施し(実施例3を参照のこと)、そして種子生産目的のために、プロット3591の中からの植物を温室内に移した。実施例3に提示する結果は、上記3591がより小さな遺伝子移入断片を含んでいたことを示した。上記植物の内のいくつかは、小さな遺伝子移入断片と大きな遺伝子移入断片に関してヘテロ接合であり、そして植物3591−1は、小さな遺伝子移入断片に関してホモ接合であった。 上記系統のユニーク性を、表2に与える姉妹系統の結果により説明する。これらの系統は全て、自家受粉により同じF3系統から得られ、そしてそれらのいずれもホモ接合を示さなかった。実施例2: 品種改良系統第2348号、世代F1BC5S3によるゲノミック・イン・サイチュー・ハイブリダイゼーション(GISH)(プロット2348のサンプル番号第4008191号からの品種改良系統第2348号は圃場において66%の耐性を与えた)。 ゲノミック・イン・サイチュー・ハイブリダイゼーション(GISH)の技術は、Khrustaleva and Kik(ref9とref10)によりタマネギにおいて開発されており、そしてアリウム・セパの染色体からゲノム・アリウム・ロイレイ挿入物/セグメントを識別するために本発明において使用された。したがって、この技術は、アリウム・セパ植物のゲノム内の、アリウム・ロイレイ由来の遺伝子移入断片を可視化することを可能にする。 最初の実験セットは、耐性であるが分離性のタマネギ植物に対して、Plant Research International BV,Wageningen(NL)により実施された。当該タマネギ植物は、14個の植物F1BC5S3であり、ここで、F1は、アリウム・ロイレイとアリウム・セパの間の種間雑種であり、BC5は5回連続した戻し交雑を表し、そしてS3は3回連続した自家受粉を表す。導入: GISHは、他の種上の1の種に由来するクロマチン材料の遺伝子移入を検出するための強力な技術である。GISHの利点は、遺伝子移入が、「遺伝子移入されたゲノムの絵」により可視化されることである。この技術により、ゲノムの特定の領域がホモ接合又はヘテロ接合であるか否かを確認することもできる。これは、同時優性である分子細胞遺伝マーカーの使用のおかげである。この技術により、どの染色体内に、着目の遺伝子移入された遺伝子が存在するかを決定することもできる。植物材料: 出発材料は、品種改良系統第2348号、世代F1BC5S3である。幼岩根の先端を集め、そして100個までのスライドを、中期分配分析のために作製した(当該方法の説明については、Khrustaleva and Kik(ref9とref10)を参照のこと)。十分に分配された中期をもち、そして染色体の全セット(2n=2×=16)を含むスライドを、GISH実験のために選択する。方法: ゲノムDNAを、Rogers and Bendich(ref13)のCTAB法を用いて、A.cepaとA.royleiの若い葉から抽出する。 A.royleiのゲノムDNAを、標準的なニック−トランスレーション・プロトコール(Boehringer,Manheim,Germany)によりDig−11−dUTP(Digoxigenin−11−2′−deoxy−uridine−5′−triphosphate)で標識する。A.cepaのゲノムDNAを、ブロックDNAとして使用する。インサイチュー・ハイブリダイゼーション、免疫学的検出、及び顕微鏡手順は、Khrustaleva and Kik(ref9とref10)により先に記載されたものと同じである。核型分析を、Kalkman(ref12)により提案され、そしてFourth Eucarpia Allium Symposium by de Vries(ref12)により確認された標準的なタマネギの命名システムに従って実施する。各寄託番号当り3〜5個の中期からの染色体計測を、Colorado State University:(http://www.colostate.edu/Depts/Micro Measure)からの、Windows(登録商標)用フリーのソフトウェア・プログラムを用いて実行した。結果: 品種改良系統第2348号、世代F1BC5S3からの14個の耐性植物のGISH分析は、全ての植物が、べと病耐性の遺伝子を宿すA.royleiセグメントを有することを示した(図2A,2B、及び2C)。核型分析は、S.royleiセグメントを担持する組換え染色体が第3染色体(動原体指数:41.7;相対染色体長:13.8)であることを現した。13個の植物は、第3染色体上にたった1つのA.royleiセグメントを有しており、他の相同染色体は、A.cepaのクロマチンだけから構成されることが証明された。疑いもなく、これらの結果は、品種改良系統第2348号の13個の植物の全てが、べと病耐性遺伝子を含むセグメントに関してヘテロ接合であることを証明した。寄託番号第2348−5号は、2つのA.royleiセグメント:べと病耐性遺伝子を担持する第3染色体の長腕上に存在するセグメント、と第4染色体の長腕上に存在する追加のセグメント(動原体指数:39.3;相対染色体長:12.6)を有している。両セグメントは、ゲノム内でヘテロ接合で存在する。 GISH分析は、A.cepa染色体内へのA.royleiからの第3染色体の長腕上の遺伝子移入されたセグメントのサイズ決定をも可能にする。上記セグメントの平均は、染色体全長の25.2%、及び長腕の長の43.9%である。討議 上記の方法により、タマネギのゲノム内への、べと病耐性遺伝子を担持するA.royleiクロマチン材料の遺伝子移入が首尾良く検出された。本データは、品種改良系統第2348号、世代F1BC5S3におけるべと病耐性遺伝子のヘテロ接合の性質を証明するものである。圃場において耐性であるとして選択された14個の植物の全てにおいて、第3染色体のたった1つのホモログ内にA.royleiセグメントが発見された。上述の結果は、A.cepaの発達のために、例えば、種子の発達のために必要であり、かつ、べと病耐性遺伝子の近くに位置する遺伝子(又は致死因子)がホモ接合植物の不存在の原因であるということを仮定することにより説明されうる。実際、遺伝子移入の間、対応のA.roylei遺伝子により必須のA.cepa遺伝子を置換することにより、A.cepa細胞質バックグラウンドに置かれるとき、植物の発達、例えば、種子の発達の重度の妨害が導かれることが想定されうる。生存可能なホモ接合耐性タマネギは、可能である場合には、べと病耐性遺伝子と致死因子の間に組換えが生じる場合にのみ得られうる。 A.cepaへの戻し交雑及びべと病耐性についての選択の間、べと病耐性遺伝子を宿すA.royleiセグメントを含む植物だけが維持されるであろう。これは、A.cepaのクロマチンとA.royleiのセグメントだけから成る植物を、最終的に導く。しかしながら、上述の仮定に従えば、このセグメントは、発達のために必要なA.cepaの遺伝子と入れ替わっている。ヘテロ接合条件下では、種子は発達し、そして植物は得られるであろうが、ホモ接合条件下では、植物は形成されない。実施例3:品種改良系統第3591号、世代F1BC5S3を用いたゲノミック・インサイチュー・ハイブリダイゼーション導入: 品種改良系統第2348号、世代F1BC5S3からの14個のべと病耐性植物を分析した後、全ての植物が、Pd耐性座に関してヘテロ接合であったことが示された。べと病耐性のための遺伝子を宿すA.oyleiのセグメントは、第3染色体のホモログの1つの上にのみ検出され、他のホモログは、A.cepaのクロマチンだけから構成されていた。このさらなる分析は、圃場においてべと病耐性に関して分離が全く生じていない品種改良系統第3591号に関する。これを考えると、GISHを介して、この集団内に、べと病耐性座を宿す第3染色体の領域に関してホモ接合である植物が発見されることが予想される。植物材料: 6個の別個の植物、品種改良系統第3591号、世代F1BC5S3から、若い根の先端を集め、そして50個までのスライドを、中期分配分析のために作製した(方法の説明に関しては、Khrustaleva and Kik,ref9を参照のこと)。よく分配された中期をもち、そして染色体の完全なセット(2n=2×=16)を含むスライドを、GISH実験のために選択する。方法: 詳細は、先の実施例の「方法」の節の下で与える。結果: Plant Research International BV,Wageningen,NLは、品種改良系統第3591号、世F1BC5S3からの6個の耐性植物のGISH分析を実施し、これは、全ての植物が、べと病耐性座を宿す領域に関してホモ接合のA.royleiであることを示した(図3A〜3Fを参照のこと)。核型分析は、第3染色体の両ホモログ上にA.royleiセグメントの存在を現す(動原体指数:41.7;相対染色体長13.8)。6個の分析された植物の中で、寄託番号第3591−1号は、第3染色体の両ホモログの上に2つの小さなセグメントを有している(図3Aを参照のこと)。A.royleiの遺伝子移入されたセグメントのサイズは、両ホモログ上で同じであり、そして平均、長腕の長さの17.9±0.78%である。5個の植物、すなわち、寄託番号第3591−3号、同第3591−4号、同第3591−5号、同第3591−6号、及び同第3591−8号は、サイズが異なる2つのA.royleiの遺伝子移入されたセグメントを有している(図3B,3C,3D,3E、及び3Fを参照のこと)。大きい方のセグメントのサイズの平均は、長腕の長さの42.8±1.09%であり、そして小さい方のサイズの平均は、17.9±0.78%である。討議: 本結果は、品種改良系統第2348号におけるべと病耐性座のヘテロ接合の性質を説明するために提案された仮説を確信させるものである。植物の発達のために有害であり、かつ、べと病耐性遺伝子の近くに位置する致死因子が、ホモ接合耐性植物の不存在の原因であるということ、又は植物の発達のために必要な必須A.cepa遺伝子が、遺伝子移入によりノックアウトされ、そしてホモ接合耐性植物の不存在の原因であるということが、実際に仮定されることができた。 A.roylei遺伝子移入セグメントが、A.cepaの細胞質だけでは機能しない(すなわち、核−細胞質相互作用)対応の遺伝子をも有することが提案される。ホモ接合A.roylei条件下では、上記必須A.cepa遺伝子は対応のA.roylei遺伝子により完全に置換され、その結果、生存可能な種子を全く与えないであろう。べと病耐性遺伝子と必須遺伝子(又は致死因子)の間に組換えが生じる場合にだけ、生存可能なホモ接合耐性植物が得られるであろう。品種改良系統第3591号のGISHは、ホモ接合耐性植物(第3591−1号)が、耐性遺伝子と致死因子の間の組換え事件に因り得られうることを証明するものである。他の5個の寄託物は、A.roylei遺伝子移入セグメントの小さいものと大きなものを有しており、これは、これらの植物が、耐性遺伝子に関してホモ接合であり、そしてA.royleiの致死因子に関してヘテロ接合であることを意味する。 上述の仮説から予想されるように、2つの大きなA.roylei遺伝子移入セグメントを有する植物は発見されていないことに留意しなければならない。なぜなら、この遺伝子構成は、種子の発達をもたらさないからである。実施例4:(A.royleiに由来する)ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)耐性座に結合されたマーカーの同定植物材料(個体の数): 1×Allium roylei(ホモ接合耐性) 4×(AcA〜AcDと命名した)、及び24×(Ac01〜Ac24と命名した)Allium cepa(ホモ接合感受性) 1×第3591−1号(ホモ接合耐性、小さな遺伝子移入断片) 1×第3591−3号(ホモ接合耐性、小さな遺伝子移入断片と大きな遺伝子移入断片) 14×第2348−*(ヘテロ接合耐性、大きな断片)。導入: AFLPTM技術についての補足情報に関しては、4番目の参考文献を参照のこと。 本実施例の目的は、タマネギにおけるペロノスポラ・デストラクターの耐性座に結合したAFLPTMマーカーを同定することである。この耐性座は、Allium royleiに由来する。実施例2に示したように、大きな遺伝子移入断片が、いくつかの個体において同定された(個体第2348−*)。これらの個体の他に、小さな遺伝子移入断片を有する2個の個体も得られた(第3591−1号、小さな断片、及び第3591−3、小さな断片と大きな断片)。耐性座に関連するマーカーを同定し、そして特に、小さな遺伝子移入断片上に位置するマーカーを得るために、改作されたBulked Sogregant Analysis(BSA,Michelmore,ref11を参照のこと)戦略を、4個の個体/プールに対して実行した: I:個体第2348−6号;ヘテロ接合耐性;大きな遺伝子移入断片、 II:個体第3591−1号;ホモ接合耐性;小さな遺伝子移入断片、 III:個体Allium roylei;ホモ接合耐性、 IV:4個のA.cepa個体(AcA〜AcD)のプール;ホモ接合感受性。 上記4個の別個のAllium cepa個体、13個の残りの第2348号個体、及び個体第3591−3号を、結合されたマーカーの確認のために使用した。着目の形質に関連付けられることが分っているマーカーを、偽陽性マーカーを同定するために、24個のAllium cepaの個体のセット(Ac01〜Ac24)について最終的にチェックした。結果: 生物学的材料:DNAを、31個体の葉材料(28×Allium cepa、並びに個体第3591−1号、同第3591−3号、及びAllium roylei)、及び14×第2348号個体からのDNAから抽出し、そして全ての個体に関して、PstI/MseIテンプレートを作製した。個体第2348−4号、同第2348−5号、同第2348−11号、及び同第3591−3号に関しては、信頼できるAFLPTMフィンガープリントは作製することができなかった。それゆえ、これらの個体は、さらなる分析から除外した。マーカーの同定及び確認: 先に記載したように、4つの個体又はプールI,II,III,IVに対して改作BSAアプローチを実施した。 BSAを、PstI+3/MseI+3マトリックス中96個のプライマーの組合せを用いて実施し、使用したプライマーの組合せの概要を表3に与え、そして表6は、AFLPTMプライマー酵素の組合せの命名法を与える。 BSAは、34個の候補マーカーの同定をもたらし、その内の8個の候補マーカーは、おそらく小さな遺伝子移入断片に連結されている。これらの34個の候補マーカーから、おそらく小さな遺伝子移入マーカーに連結されている8個のマーカーを含む13個のマーカーを選択した。この13個のマーカーの選択を、より多くの個体についての確認のために使用した。確認のために、4個のAllium cepa個体、13個の残りの第2348号個体、及び個体第3591−3号を使用した。 上記の確認に基づき、3個の候補マーカー(その内の2個は、おそらく小さな遺伝子移入断片に連結されている)は、着目の形質との明らかな連鎖を示さなかった。しかしながら、全部で4個の、各々6個の候補マーカーは、大きな、個々小さな遺伝子移入断片と明らかな連鎖を示した。しかしながら、小さな遺伝子移入断片に連結された、上記候補マーカーの内の2つは、上記4個のAllium cepa個体の内の1つにも存在する。それゆえ、これらのマーカーは、さらなる分析のために有用ではないことが分った。確認の結果を表4に示す。 マーカーP32/M62−061,P33/M32−151,P35/M51−330、及びP43/M35−190は、小さな遺伝子移入断片に連結されていることが分った。24個のAllium cepa個体についてのさらなる確認: 偽陽性マーカーを克服するために、小さな遺伝子移入断片に連結された4つの候補マーカー(P32/M62−061,P33/M32−151,P35/M51−330、及びP43/M35−190)を、24個のさらなるAllium cepa個体(Ac01〜Ac24)に対してチェックした。得られたマーカーの格付けは、予想された格付けに従った(表5を参照のこと)。討議及び結論: タマネギにおけるペロノスポラ・デストラクター耐性座に関連するマーカーを同定し、そして特に、小さな遺伝子移入断片上に位置するマーカーを取得するために、4個の個体/プールに対して、改作Bulked Segregant Analysis(BSA)戦略を実行した。(4個の個体/プールに対してスクリーニングされた)全部で96個のPstI/MseIプライマー組合せ物を用いてBSAを実施した。 BSAは、34個の候補マーカーの同定をもたらし、その内8個の候補マーカーは、おそらく小さな遺伝子移入断片内に位置していた。確認後、(その上に、ペロノスポラ・デストラクターの耐性座が位置するところの)小さな遺伝子移入断片内に位置する全部で4個のマーカーが同定された。 偽陽性マーカーを克服するために、小さな遺伝子移入断片に連結された4つの候補マーカー(P32/M62−061,P33/M32−151,P35/M51−330、及びP43/M35−190)を、24個のさらなるAllium cepa個体に対してチェックした。得られたマーカーの格付けは、予想された格付けに従う。それゆえ、これらのマーカーは、着目の小さな遺伝子移入断片に連結していることが分かり、そしてさらなる選択手順のために使用されうる。実施例5:致死を生じさせずにホモ接合で存在しうる、タマネギのべと病に対する耐性を付与するA.royleiの遺伝子移入断片の、Allium属の植物における、存在の決定 第1のステップにおいて、タマネギのべと病に対するPd耐性座の存在を、試験下の植物においてアッセイする。この座の存在は、先の実施例において例示したようなAFLPTMを使用して又はペロノスポラ・デストラクターによる天然又は人工接種に対する当該植物の耐性をアッセイすることにより、アッセイされることができる。 上記植物が、そのゲノム内に、Pd耐性座を有する場合、当該植物の第3染色体のホモログは、(致死配列との連鎖を伴って又は伴わずに)図1に示す4つの可能性の内の1つに必ず対応する。 本発明の一部である最初の3つのゲノムを、第4のものから区別するために、試験下の植物の自家受粉を実施する。次いで、自家受粉の子孫を、Pd耐性座の存在について試験する。図1から分るように、最初の3つのゲノムだけが、理論的に少なくとも75%耐性である子孫を与え、一方、第4の図示するゲノム(本発明の一部ではない)は、タマネギのべと病に対して67%未満の耐性である子孫を与える。 自家受粉後の耐性子孫のパーセンテージを知ることによって、試験された植物が図示する最初の3つのカテゴリーの内の1つにあるのか又は第4のものにあるのかどうか、すなわち、それが本発明の範囲内にあるか否かを演繹することができる。実施例6: それらが全てホモ接合耐性であり、そして耐性座を担持する2つの小さな遺伝子移入断片をもつ点で第3591−1号に類似する系統第3591号からの植物を、3方向品種改良スキームにおいて雑種と交雑させる(この3方向の交雑は、雌親として1つの雑種、及び雄親として第3591号からの植物を有する)。 この交雑から得られた雑種、第37−1001号を圃場で試験した。この雑種は、中長期保存に好適な、初期中間の極長日タイプのタマネギである。それは、中強葉生長力、極均質落葉、均質丸平丸型球根(3.8ユニット/he)、良好収量力、黄褐色の良好な皮、良好な堅さ(3.4mm)を示す。Nickerson Zwaanからの商業化されたタマネギ雑種であるTascoとDragoと第37−1001号を比較する、表7に、圃場試験データを示す。この表から分かるように、農業経済的利益の特徴は、全ての植物において類似している。 本発明にとって最も重要なことは、2連において2年連続して保持された病気圃場試験において、試験された植物第37−1001号の全ては、耐性であり、一方、感受性チェックとしての変種、Staccato(Nickerson Zwaan雑種)は、べと病に感染された植物を100%有する。実施例7: 以下、系統第3591号又は植物第3591号は、小さな遺伝子移入断片を担持するホモ接合耐性植物であし、それらは全て、第3591−1号に類似する植物である。なぜなら、それらは、ホモ接合条件下でも小さな遺伝子移入断片を含み、そして同一の品種改良系統に属するからである。 第3591号植物は、タマネギのべと病に耐性である新たな商業的なタマネギ雑種の生産において有用である新たな親品種改良系統の開発のための出発材料として首尾よく使用された。第3591号植物は、まず近交系タマネギと交雑されてF1雑種が作られる。 実際、他の花粉供給系統への戻し交雑を通じて、べと病耐性遺伝子は、多くの異なるタマネギのタイプの他の花粉供給系統内に導入されうる。 最初の交雑は、耐性座を担持する2つの小さな遺伝子移入断片をもつ耐性植物と、感受性系統との間で行われる。この交雑は、ヘテロ接合で小さな遺伝子移入断片を含む雑種(Fls)を生じさせる。これらのヘテロ接合耐性F1植物は、感受性系統又は上記F1耐性植物を作製するために使用された感受性系統との、その後の戻し交雑のために使用される。このような戻し交雑ステップは、50%耐性、及び50%感受性植物をもつ集団を生じさせるであろう。この1:1の分離は、優性Pd耐性座の遺伝に因る各戻し交雑世代とともに生じるであろう。感受性植物は全て、べと病感受性として表現型分類され、そして除外されることができる。F1雑種を作製するための親材料として有用である新たなタマネギの近交系統は、数段階の戻し交雑、その後の当業者に知られているような自家受粉を通じて得られる。 この遺伝は、圃場データにより確認され;交雑sy108a*3591により作製された9個の植物の内、9個の植物が耐性である。同様に、交雑fra*3591により作製された4個の植物の内、4個全ての植物が耐性である。同様に、交雑syt*3591から作製された3個の植物も全て、タマネギのべと病に対して耐性である。次いで、これらの植物を、以下に述べるように戻し交雑させる。実施例8: 本発明に開示するマーカーにより、全ての植物の遺伝子型も分類されうる;耐性座を担持する2つの小さな遺伝子移入断片をもつ第3591号植物を、さまざまな他の近交親系統と交雑させるときに作製される16個のF1雑種の内、全てが、プライマー対(A)(小さな遺伝子移入断片に連結されたマーカーP32/M62−061が使用されたとき予想される61ヌクレオチド断片を示したが、マーカーP32/M62−079(プライマー対(B′))が使用されるとき、大きな遺伝子移入断片の存在を通常強調する79ヌクレオチド断片を示さなかった。図1は、4つの異なる耐性Alliumに関する自家受粉の子孫へのPd耐性座と致死配列の可能な伝達方法の概要を図示する。右の欄は、子孫における耐性のパーセンテージを与え、そして親植物が、致死配列を伴わずに耐性座を担持する第3染色体のホモログを少なくとも有するか否かを示す。図2は、実施例2に記載したプロトコールに従って分析された集団第2348号からの14個のべと病耐性植物についてのGISH核型を示す。第2348−1号、第2348−3号、第2348−4号、第2348−5号、第2348−6号、第2348−7号、第2348−8号、第2348−11号、第2348−13号、第2348−14号、第2348−15号、第2348−16号、第2348−18号、及び第2348−19号は、同一の親系統第2348号からの異なる植物である。図3は、実施例2に記載したプロトコールに従って分析された集団第3591号からの6個のべと病耐性植物についてのGISH核型を示す。第3591−1号(図3A)、第3591−3号(図3B)、第3591−4号(図3C)、図3591−5号(図3D)、図3591−6号(図3E)、及び図3591−8号(図3F)は、同一の親系統第3591号からの異なる植物である。 ゲノム内にホモ接合で存在する真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)耐性座に因り当該Pdにより生じるタマネギのべと病(downy mildew)に対して耐性であるアリウム・セパ(Allium cepa)又はアリウム・フィツロサム(Allium fistulosum)種の植物であって、該Pd耐性座は、アリウム・ロイレイ(Allium roylei)からの遺伝子移入断片上に在り、以下のステップ: a)制限酵素PstI及びMseIによる該植物からのゲノムDNAの制限酵素処理; b)以下のオリゴヌクレオチド・アダプター:によるライゲーション;及び c)制限酵素処理断片のセットの選択的増幅;を実行する際、前記Pd耐性座の存在は、ステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、61個のヌクレオチド増幅産物を特徴とし、又はステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、151個のヌクレオチド増幅産物を特徴とし、又はステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、330個のヌクレオチド増幅産物を特徴とする、前記植物。 前記Pd耐性座が前記植物のゲノム内の第3染色体上にホモ接合で存在する、請求項1に記載の植物。 真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)耐性座に因り当該Pdにより当該Pdにより生じるタマネギのべと病(downy mildew)に耐性であるアリウム・セパ(Allium cepa)又はアリウム・フィツロサム(Allium fistulosum)種の植物であって、該Pd耐性座は、アリウム・ロイレイ(Allium roylei)からの遺伝子移入断片上に在り、当該Pd耐性座を含む染色体断片は、致死を引き起こさずに子孫においてホモ接合で存在することができ、かつ、以下のステップ: a)制限酵素PstI及びMseIによる該植物からのゲノムDNAの制限酵素処理; b)以下のオリゴヌクレオチド・アダプター:によるライゲーション;及び c)制限酵素処理断片のセットの選択的増幅;を実行する際、前記Pd耐性座の存在は、ステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、61個のヌクレオチド増幅産物を特徴とし、又はステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、151個のヌクレオチド増幅産物を特徴とし、又はステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、330個のヌクレオチド増幅産物を特徴とする、前記植物。 真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)により生じるタマネギのべと病に耐性であるアリウム・セパ(Allium cepa)又はアリウム・フィツロサム(Allium fistulosum)種の植物であって、ここで、第3染色体のホモログの内の少なくとも1つは、Pd耐性座を含み、該Pd耐性座は、アリウム・ロイレイ(Allium roylei)からの遺伝子移入断片上に在り、該Pd耐性座を含む染色体断片は、致死を引き起こさずに子孫においてホモ接合で存在することができ、かつ、以下のステップ: a)制限酵素PstI及びMseIによる該植物からのゲノムDNAの制限酵素処理; b)以下のオリゴヌクレオチド・アダプター:によるライゲーション;及び c)制限酵素処理断片のセットの選択的増幅;を実行する際、前記Pd耐性座の存在は、ステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、61個のヌクレオチド増幅産物を特徴とし、又はステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、151個のヌクレオチド増幅産物を特徴とし、又はステップc)において、以下のプライマー:を使用するとき、330個のヌクレオチド増幅産物を特徴とする、前記植物。 前記Pd耐性座はホモ接合で存在する、請求項3又は4に記載の植物。 第3染色体のホモ接合体の内の1又は両者の長腕内を除き、アリウム・ロイレイ(Allium roylei)からの遺伝子移入セグメントは存在しない、請求項1〜5のいずれか1項に記載の植物。 前記Pd耐性座を含む断片が、第3染色体の長腕の長さの44%未満である、請求項6に記載の植物。 前記Pd耐性座の存在は、以下のステップ: a)制限酵素PstI及びMseIによる前記植物からのゲノムDNAの制限酵素処理; b)以下のオリゴヌクレオチド・アダプター:によるライゲーション; c)以下のプライマー:による制限酵素処理断片のセットの選択的増幅;を実行する際、61個のヌクレオチド増幅産物を特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物。 前記Pd耐性座の存在は、以下のステップ: a)制限酵素PstI及びMseIによる前記植物からのゲノムDNAの制限酵素処理; b)以下のオリゴヌクレオチド・アダプター:によるライゲーション; c)以下のプライマー:による制限酵素処理断片のセットの選択的増幅;を実行する際、151個のヌクレオチド増幅産物を特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物。 前記Pd耐性座の存在は、以下のステップ: a)制限酵素PstI及びMseIによる前記植物からのゲノムDNAの制限酵素処理; b)以下のオリゴヌクレオチド・アダプター:によるライゲーション; c)以下のプライマー:による制限酵素処理断片のセットの選択的増幅;を実行する際、330個のヌクレオチド増幅産物を特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の植物。 真菌ペロノスポラ・デストラクター(Peronospora destructor)(Pd)により生じるべと病感受性アリウム・セパ(Allium cepa)親系と、請求項1又は5に記載の植物との交雑により得られうる雑種アリウム・セパ(Allium cepa)植物。 前記親系が、細胞質雄性不稔アリウム・セパ近交系である、請求項11に記載の雑種アリウム・セパ植物。配列表


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