生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_コリスチン原末の製造法
出願番号:2007528488
年次:2012
IPC分類:C12N 1/20,C12P 21/02,C12P 1/04,C07K 7/06,A61K 38/00,A61P 31/04,C12R 1/12


特許情報キャッシュ

坂本 和幸 宮下 隆 永里 敏秋 川東 正岳 JP 4958781 特許公報(B2) 20120330 2007528488 20060726 コリスチン原末の製造法 Meiji Seikaファルマ株式会社 000006091 小栗 昌平 100105647 本多 弘徳 100105474 市川 利光 100108589 坂本 和幸 宮下 隆 永里 敏秋 川東 正岳 JP 2005219325 20050728 20120620 C12N 1/20 20060101AFI20120531BHJP C12P 21/02 20060101ALI20120531BHJP C12P 1/04 20060101ALI20120531BHJP C07K 7/06 20060101ALI20120531BHJP A61K 38/00 20060101ALN20120531BHJP A61P 31/04 20060101ALN20120531BHJP C12R 1/12 20060101ALN20120531BHJP JPC12N1/20 AC12P21/02 AC12P1/04 AC07K7/06A61K37/02A61P31/04C12N1/20 AC12R1:12 C12N 1/00- 1/38 C07K 7/06 C12P 1/04 C12P 21/02 A61K 38/00 A61P 31/04 C12R 1/12 CA/BIOENG/SCISEARCH(STN) MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus(JDreamII) PubMed 韓国公開特許第2003−0065000(KR,A) 中国抗生素雑誌 (Chinese J. Antibiotics) ,2002年,vol. 27, no. 6,326, 327, 353 3 IPOD FERM P-20553 JP2006314729 20060726 WO2007013487 20070201 9 20090605 中村 正展 本発明は、従来のコリスチン発酵生産に使用される生産菌株と比較して、培養液の着色が大幅に減少した新規な菌株を取得し、これをコリスチン生産菌株として使用することを特徴とする、脱色工程を行うことなく、白色度の高いコリスチン原末を得る製造法に関する。 コリスチンは、グラム陰性菌に広く殺菌的に作用するペプチド系抗生物質である。その作用機序は、細菌の細胞質膜のホスホリパーゼを活性化することによってリン脂質の分解を引き起こし、溶菌させることによる。コリスチンの選択毒性は低く、腸管から吸収されないことから飼料用添加物として広く用いられている。 微生物の発酵生産によるコリスチンの製造法としては、安価に入手できるでんぷん質などを多く含む天然原料を主原料とした、バチルス(Bacillus)属細菌、特にバチルス・ポリミキサ(Bacillus polymyxa)による発酵生産の方法が知られている(特許文献1、2参照)。 安価な天然原料を主原料とした、バチルス属細菌、特にバチルス・ポリミキサによりコリスチンの発酵製造を行う場合、発酵が進行するにつれ培養液の着色も濃くなり、目的物であるコリスチンの生産量が最高値に達する発酵終了時まで着色は増す。その為、コリスチンを含有する培養液から、培地栄養源成分や発酵生成したコリスチン以外の代謝物などを除去し、コリスチンの純度を高める目的で精製工程を実施している。しかし、発酵工程で増加した培養液の着色物質については、上記精製工程で完全に除去できず、製品であるコリスチン原末に残存し、結果として着色の濃いコリスチン原末となる。特に欧州における医薬品(動物用医薬品を含む)に用いられる品質規格である欧州薬局方5版(2004年6月15日発行、2005年1月1日施行)において、コリスチン原末の色の規格は「白色もしくは概ね白色」と規定されている。この規格に合格するコリスチン原末を製造するためには、従来のコリスチン原末の製造法では、精製工程にカーボンを使用するなどの脱色工程が必要であった。カーボンによる脱色工程を行う従来のコリスチン原末の製造法では、製造に要する時間が増し、しかも、目的物質であるコリスチン原末の回収率が低下するなどの問題があった。特開昭58−47493号公報特開昭58−129993号公報 本発明は、従来のコリスチン原末の製造法において必要であった脱色工程を行うことなく、白色度の高いコリスチン原末の製造法を提供することを目的とする。 上記課題を解決するため、本発明者らは鋭意検討した結果、従来の生産菌株を変異処理することにより、着色度の減少した菌株を取得し、本菌株を使用することにより、脱色工程を行うことなく、白色度の高いコリスチン原末が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち、本発明は、以下のとおりのものである。(1)独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM P−20553として寄託された、バチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウス M50株。(2)上記(1)に記載のバチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウスを培養し、培養物をイオン交換樹脂に吸着させ、溶出した後、濃縮して、乾燥することを特徴とする、400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度が0.15以下であるコリスチン原末の製造法。(3)上記(2)に記載の製造法によって得られる、400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度が0.15以下であるコリスチン原末。 本発明により、コリスチン原末の製造法に有用な新規な生産菌株を提供できる。さらに本発明の菌株を生産菌株として用いることにより、従来のコリスチン原末の製造方法に必須であった脱色工程を行うことなく、白色度の高いコリスチン原末の製造法を提供できる。実施例1で得られた202−71株由来の培養濾液およびM50株由来の培養濾液の300〜600nmにおける吸光度を示す。実施例3で得られたM50株由来のコリスチン原末を脱イオン水に溶解した液を液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析したチャートを示す。微生物の寄託 バチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウス(Bacillus polymyxa var. colistinus) M50株は、独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に、受託番号FERM P−20553として平成17年5月31日付けにて寄託された。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明では、従来のコリスチン発酵生産に使用される生産菌株に対し、人工的な突然変異処理を行い、目的とする生産菌株を取得した。 人工的な突然変異処理方法としては、人工的な変異処理であれば特に限定されないが、例えば、N−メチル−N’−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(NTG)、エチルメタンスルホネートなどの変異剤による化学的方法;紫外線照射、X線照射などの物理的方法;遺伝子組換え、トランスポゾンなどによる生物学的方法などの変異処理方法を用いることができる。 突然変異処理を行い得られた菌群は、フラスコを用いて液体培養し、培養液の着色度およびコリスチンの生産能を指標にしてスクリーニングした。ここで、着色度は、培養液の濾紙濾過液の400nmにおける吸光度を測定した値を指標とする。また、コリスチン生産能は、培養液の濾紙濾過液をHPLCにより分析した値を指標とする。 このようにして、当該着色度が従来の生産菌株に比べて大幅に減少し、且つコリスチン生産能が同等以上の生産菌株バチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウス(Bacillus polymyxa var. colistinus)を取得した。 本発明においては、バチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウスのコリスチンの生産で得られるコリスチン原末の白色度が明らかに高い株を用いることができる。具体的には、400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度が0.15以下、好ましくは0.087以下、更に好ましくは0.070以上0.087以下であるコリスチン原末が得られるバチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウスであれば、本発明に用いることができる。さらに、本発明に使用できる生産菌株としては、これらの菌株の継代培養株、変異株、遺伝子組み替え株などが挙げられる。 本発明の生産菌株の一例であるM50株を生産菌株として発酵生産した培養液からカーボンなどによる脱色工程を行うことなく製造したコリスチン原末の色調は、従来の生産菌株由来の培養液から脱色工程を行い製造したコリスチン原末の色調と比較して、明らかに白色度が高いものである。すなわち、本発明で得られたM50株を生産菌株として用いることで、従来のコリスチン原末の製造法に必須であった脱色工程を行うことなく、白色度の高いコリスチン原末を得ることが可能となる。 本発明においては、バチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウスを培養し、培養物をイオン交換樹脂に吸着させ、溶出した後、濃縮して、乾燥することで、脱色工程を行うことなく、400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度が0.15以下であるコリスチン原末を製造することができる。これにより、欧州における医薬品(動物用医薬品を含む)に用いられるコリスチン原末の品質規格である欧州薬局方の色規格「概ね白色」に合格するコリスチン原末を製造することが可能となる。また、通常、活性炭などのカーボンを添加して攪拌し濾過するなどの脱色工程が必要であったが、本発明の製造法では、脱色工程を省略できるため、コリスチン原末の製造に要する時間を約半日間短縮することが可能である。さらに、脱色に使用するカーボンなどによるコリスチン原末の損失を低減できるとともに、従来のコリスチン原末の製造法の脱色工程で使用していたカーボンなどの廃棄をも回避することができる。 尚、本発明におけるコリスチン原末は、ポリミキシン系ペプチド抗生物質として一般に知られているコリスチンを含有する。コリスチンは、下記構造のコリスチンA、同様のアミノ酸構成を有するコリスチンBが知られている。 本発明のコリスチン原末とは、コリスチンを医薬品として使用できる程度に含有する粗抽出物であり、上述したように脱色工程を経ることなく得られるものである。コリスチン原末の使用方法は特に制限されず、そのまま使用することもできるし、更に処理してコリスチン製剤として使用してもよい。 以下実施例および試験例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例および試験例に限定されるものではない。また、各実施例および試験例における吸光度の測定は、日本分光社製の分光高度計V−560を用いて行った。また、特に定義の無い場合、%は重量対容量百分率(W/V)を表す。<実施例1> 従来からコリスチン原末の製造に使用しているバチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウス202−71株に対して、濃度10〜1000μg/mgのNTGで、温度25〜30℃、1分〜24時間静置もしくは振盪して突然変異処理を行い、トリプトン2%、イーストエキス0.2%、グルコース1%からなる寒天培地プレート上にコロニーを生育させた。各々のコロニー(菌株)を普通ブイヨン2%、イーストエキス0.2%および塩化ナトリウム0.3%からなる液体シード培地へ植菌し、28℃で約24時間培養後、約0.1mLをコーンフラワー4.5%、コーンミール1.5%、小麦胚芽0.2%、脱脂大豆0.2%、硫酸アンモニウム1%、リン酸一カリウム0.05%、硫酸第一鉄0.005%、炭酸カルシウム0.05%および水飴1.5%からなる液体培地30mL入の250mL容三角フラスコへ植菌した。28℃で約120時間振とう培養後、培養液を濾紙を用いて濾過し、得られた濾液の色調およびコリスチンの生産性を比較した。これら菌群から202−71株のコリスチン生産能と同等以上で、且つ濾液の色調が明らかに202−71株のそれより薄い菌株として、M50株を選択した。202−71株とM50株の培養濾液について、分光光度計で300〜600nmの吸光度を測定し、結果を図1に示した。400nmの吸光度は202−71株由来の培養濾液で3.61に対して、M50株由来の培養濾液では1.42であり、明らかな差が認められた(表1)。<実施例2> 実施例1で得られた培養液の着色が薄いM50株および従来からコリスチン発酵生産に使用している培養液の着色が濃い202−71株を、普通ブイヨン2%、イーストエキス0.2%および塩化ナトリウム0.3%からなる液体シード培地へ植菌し、28℃で約24時間培養した後、各々約15mLをコーンフラワー4.5%、コーンミール1.5%、小麦胚芽0.2%、脱脂大豆0.2%、硫酸アンモニウム1%、リン酸一カリウム0.05%、硫酸第一鉄0.005%、炭酸カルシウム0.05%および水飴1.5%からなる液体培地4L入の5L容ジャーファメンターに植菌した。各々、通気・攪拌しながらpH5.0〜7.0で30℃にて約120〜144時間培養した。得られた培養液を濾紙を用いて濾過し400nmの吸光度を測定したところ、202−71株由来の培養濾液では4.50に対して、M50株由来の培養濾液では1.39であり、実施例1のフラスコでの試験結果と同様に明らかな差が認められた(表2)。<実施例3> 実施例2で得られたM50株および202−71株の5L容ジャーファメンター培養液を、濾過助剤(ボディミックス)を敷いたヌッチェで濾過した後、カラムに充填したイオン交換樹脂(アンバーライトIRC−50(Na+型)ロームアンドハース社製、300mL)へ吸着させた。イオン交換樹脂から約0.4mol/L硫酸でコリスチンを溶離させた後600mLの脱イオン水で洗浄し、得られた溶離液、洗浄液の混合液を約5%濃度(W/V)まで濃縮させ、コリスチン高含有液を得た。コリスチン高含有液の400nmにおける吸光度は、202−71株由来のコリスチン高含有液が0.359に対して、M50株由来のコリスチン高含有液が0.07であり、明らかにM50株由来のコリスチン高含有液の着色は薄かった(表3)。 さらに、各コリスチン高含有液をスプレードライして、目的とするコリスチン原末を得た。202−71株由来のコリスチン原末は、茶色を帯びた色調であった。これに対し、M50株由来のコリスチン原末はやや黄色味がかった白色であり、明らかにM50株由来コリスチン原末の着色は、202−71株由来のコリスチン原末と比較して薄く、より白色であった。各々コリスチン原末を5%濃度(W/V)となるよう脱イオン水に溶解し、5%濃度(W/V)水溶液を得た。400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度を測定したところ、202−71株由来のコリスチン原末では0.479に対して、M50株由来のコリスチン原末では0.087であり、明らかな差が認められた(表4)。<試験例1> 実施例3で得られたM50株由来コリスチン原末を脱イオン水に溶解した液を液体クロマトグラフィー(HPLC)にて分析し、その結果を図2に示した。HPLCの測定条件は下記のとおりである。測定条件 検出器:吸光度検出器(測定波長:215nm) カラム:YMC−Pack ODS−AM(AM−312)(ワイエムシー社製) 150mm×Φ4.6mm カラム温度:30℃ 移動相: 4.46gの無水硫酸ナトリウムを900mlの純水に溶解し、2.5mlのリン酸を加え、100mlにメスアップする(pH2.3〜2.5)。この溶液78にアセトニトリルを22の割合で混合する。 流量:1.0ml/min<試験例2> 実施例3で得られた202−71株由来のコリスチン高含有液を、実施例3で得られたM50株由来のコリスチン高含有液の色調にするために必要な脱色カーボン量について試験した。202−71株由来のコリスチン高含有液の固形分換算量に対し、2%、5%、10%(それぞれW/V)に相当するカーボン(精製白鷺、武田薬品工業社製)を添加して30分間撹拌した後、桐山ロートで濾過し、得られた濾液をスプレードライした。各スプレードライ粉末を脱イオン水に溶解し、5%濃度(W/V)水溶液を得た。400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度を測定した結果、最も脱色カーボン量が多い10%(W/V)カーボン添加水溶液でも吸光度は0.135であり、実施例3で得られた脱色カーボン処理を行っていないM50株由来のコリスチン高含有液の吸光度0.087に達しなかった(表5)。 また、10%(W/V)カーボン添加における、脱色工程によるコリスチンの収率ロスは約27%であり(表5)、脱色工程を含むコリスチンの製造法におけるコリスチンの収率は明らかに低下していた。従来の生産菌株で白色度の高いコリスチン原末を得るためには、多量の脱イオン水でイオン交換樹脂を洗浄するか、イオン交換樹脂からの溶離液を多量のカーボンで処理する脱色工程を経なければならなかったが、培養液の着色が薄くカーボンによる脱色工程を必要としないM50株を用いたコリスチン原末の製造法は非常にメリットが大きい。 本発明により、コリスチン原末の製造法に有用な新規な生産菌株を提供できる。さらに本発明の菌株を用いることにより、従来のコリスチン原末の製造法に必須であった脱色工程を経ることなく、効率的なコリスチン原末の製造法を提供できる。 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに、受託番号FERM P−20553として寄託された、バチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウス M50株。 請求項1に記載のバチルス・ポリミキサ・バー・コリスチニウスを培養し、培養物をイオン交換樹脂に吸着させ、溶出した後、濃縮して、乾燥することを特徴とする、400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度が0.15以下であるコリスチン原末の製造法。 請求項2に記載の製造法によって得られる、400nmにおける5%濃度(W/V)水溶液の吸光度が0.15以下であるコリスチン原末。


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