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タイトル:特許公報(B2)_ビワ葉抽出物を含有する飲食品及び医薬品
出願番号:2007524050
年次:2012
IPC分類:A61K 36/73,A61K 36/00,A61P 35/02,A61P 43/00,A23L 1/30,A23L 2/52


特許情報キャッシュ

坂田 祐介 藤井 信 中野 隆之 侯 徳興 橋本 文雄 JP 4974116 特許公報(B2) 20120420 2007524050 20060627 ビワ葉抽出物を含有する飲食品及び医薬品 国立大学法人 鹿児島大学 504258527 農業生産法人 有限会社十津川農場 505243696 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 坂田 祐介 藤井 信 中野 隆之 侯 徳興 橋本 文雄 JP 2005187133 20050627 20120711 A61K 36/73 20060101AFI20120621BHJP A61K 36/00 20060101ALI20120621BHJP A61P 35/02 20060101ALI20120621BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120621BHJP A23L 1/30 20060101ALN20120621BHJP A23L 2/52 20060101ALN20120621BHJP JPA61K35/78 HA61K35/78 YA61P35/02A61P43/00 111A23L1/30 BA23L2/00 F A61K 36/73 A23L 1/30 A23L 2/52 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2000−342229(JP,A) 特開2001−199892(JP,A) 特開2003−204758(JP,A) 特開2002−371002(JP,A) 特開平04−334323(JP,A) 特開2002−095443(JP,A) 特開2002−192734(JP,A) 特開2006−104182(JP,A) 国際公開第2006/013866(WO,A1) Taniguchi, Shoko et al,Production of bioactive triterpenes by Eriobotrya japonica calli,Phytochemistry,2002年,Vol.59,No.3,pp.315-323 Ito, Hideyuki et al,Antitumor activity of compounds isolated from leaves of Eriobotrya japonica, Journal of Agricultural and Food Chemistry,2002年,Vol.50,No.8,pp.2400-2403 Young, Han-Suk et al,Antitumor effects of ursolic acid isolated from the leaves of Eriobotrya japonica,Natural Medicines,1995年,Vol.49,No.2,pp.190-192 Ito H. et al,Polyphenols from Eriobotrya japonica and their cytotoxicity against human oral tumor cell lines,Chemical & pharmaceutical bulletin,2000年,Vol. 48,No. 5,pp.687-693,Fig.3 BELLAKHDAR J,REPERTORY OF STANDARD HERBAL DRUGS IN THE MOROCCAN PHARMAGOPOEA,J ETHNOPHARMACOL,1991年,Vol.35,No.2,pp.123-143,p.138,D326 Jung, Hyun Ah et al,Antioxidant flavonoids and chlorogenic acid from the leaves of Eriobotrya japonica,Archives of Pharmacal Research,1999年,Vol.22,No.2,pp.213-218,Table I-IV Kwon, Hyun Joo,Inhibition of NFkB by methyl chlorogenate from Eriobotrya japonica,Molecules and Cells,2001年,Vol.10,No.3,pp.241-246 田中一成 他,番茶生葉と枇杷葉のじゅう捻加工による発酵茶の糖尿病予防効果,日本栄養・食糧学会総会講演要旨集,2005年 4月 1日,Vol.59th,Vol.59th Page.144 桜又康秀 他,ビワ葉エキス末と白甘藷(Ipomoea batatas L.)の抗糖尿病作用に対する併用効果(Anti-diabetic effects of combination of white skinned sweet potato (Ipomoea batatas L.) with loquat leaf extract ), J.Tradit. Med.,2004年,Vol.21,No.5,pp.237-240 Nozato, Naoko et al,Triterpenes from the leaves of Eriobotrya japonica,Natural Medicines,1994年,Vol.48,No.4,p.336 5 JP2006313197 20060627 WO2007001080 20070104 45 20080912 鶴見 秀紀 本発明は、例えば抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び/又は抗酸化作用を有する飲食品又は医薬品及びその製造方法に関する。 ビワ葉は、ビワ茶の嗜好飲料に利用され、ビワ茶として親しまれているのみならず、古くから漢方に配合される薬として用いられている。 近年、ビワ葉の有する機能性が明らかにされつつある。例えば、ビワ葉に含まれているポリフェノール成分のヒト口腔癌細胞に対する細胞傷害活性(非特許文献1)、ビワ葉に含まれるメガスチグマン配糖体の抗発癌プロモーション作用(非特許文献2)、ビワ葉の抗腫瘍活性作用(非特許文献3)及び抗酸化作用(非特許文献4)などが報告されている。 本出願人が出願した特許文献1には、ビワ葉を利用して風味のあるビワ茶を多量に製造する方法及び製造設備が開示されている。本出願人は特許文献1に記載のビワ茶の製造設備を用いて、トルマリン石焙煎によりねじめびわ茶を製造している。製造したねじめびわ茶については、「糖尿の血糖値が下がった」、「高血圧の血圧が正常になった」などの声が消費者より寄せられているが、その実証的な証拠は確認されていなかった(非特許文献5)。 一方、特許文献1の段落番号「0004」に「従来のビワ茶製造の材料となるビワの葉は、果実の収穫を目的とした果実栽培種が利用されているため、栄養分は果実に集まり、ビワの葉に栄養分が十分に行き渡らないため、薬用として利用しても本来の効果は得られないという欠点がある」という記載があるように、従来では、ビワ葉は薬用として十分に効果を発揮していなかった。 従来において、ビワには以下のような活性又は利用方法があることが開示されている。 特許文献2には、ビワ又はその抽出物がマトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP−1)阻害活性を有することが開示されている。 特許文献3には、ビワの木の葉を焼いて炭にして粉末状食品素材とすることが開示されている。 特許文献4には、ビワの生葉を切断し、蒸気で蒸し、熱風を送りつつ揉み、乾燥させ、整形した後、再度乾燥させることにより香気と旨味とを増すように仕上げることを特徴とした漢方茶の製造方法が開示されている。 特許文献5には、イネ科植物の葉緑健康茶とビワの茶葉を混合し、より多くのγ−アミノ酪酸を含有する健康茶の製造方法が開示されている。 特許文献6には、果実部を除くビワの抽出物がα−グルコシダーゼ阻害活性を有することが開示されている。 特許文献7には、シャキョクとビワ葉を混合した滋養強壮健康増進用組成物が開示されている。 特許文献8には、黄杞の葉を焙煎処理したものをビワ茶と混合してなる健康茶が開示されている。 特許文献9には、甘茶とビワの混合物で構成する健康茶が開示されている。 特許文献10には、バラ科ビワ属の有機抽出物を含む組成物が生物におけるCOX−2活性を阻害することが開示されている。特許第3452351号公報特開2005−008539号公報特開2004−154108号公報特開2004−105036号公報特開2002−065227号公報特開2001−163795号公報特開2001−163792号公報特開平7−274832号公報特開平5−056772号公報特表2004−529079号公報Ito,H.ら,「Chem.Pharm.Bull.」,2000年,第48巻,p.687−693吉田隆志ら,「Bio Industry」,2003年,第20巻,p.27−33Ito,H.ら,「J.Agric.Food Chem.」,2002年,第50巻,p.2400−2403Jung,H.ら,「Arch.Pharm.Res.」,1999年,第22巻,p.213−218農業生産法人有限会社十津川農場,「ねじめびわ茶パンフレット」,2004年 上述したように、従来ではビワ葉に含まれる種々の生物学的活性や活性化合物の存在が明らかにされたものの、ビワ葉が高血糖値の降下作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、抗高脂血症作用等の効果を有することは知られていなかった。これらの効果が確認できれば、ビワ葉を糖尿病、高脂血症、高血圧症、癌等の疾患の予防又は治療に使用できるものと考えられる。 そこで、本発明は、上述した実情に鑑み、ビワ葉を用いた、抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び/又は抗酸化作用を有する飲食品又は医薬品及びその製造方法を提供することを目的とする。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、ビワ茶を熱水抽出に供し、得られた抽出物をモデルマウス又はラットに給餌することで、血糖値を低下させ、またコレステロール及びトリグリセリド等の血清脂質並びに脂肪組織の重量を低下させることを見出した。また、ビワ茶の抽出物から得られた粗製分画物は強い抗酸化作用を有することを見出した。 更に、ビワ茶を熱水抽出に供し、得られた抽出物をモデルマウス又はラットに給餌することで、血圧の上昇を抑制し、また、癌細胞に直接作用させることによってその増殖を抑制し、更にまた、癌細胞に対してアポトーシス誘導すること及び/又は活性酸素種を産生させることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明は以下を包含する。 (1)ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を有効成分として含有し、且つ抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び抗酸化作用から成る群から選択される1以上の作用を有する飲食品又は医薬品。 (2)上記ビワ茶がねじめびわ茶であることを特徴とする、(1)記載の飲食品又は医薬品。 (3)上記精製物がクロロゲン酸、クエルセチン3−サンブビオシド、メチルクロロゲン酸、ケンフェロール3−ラムノシド、クエルセチン3−ラムノシド、2α−ヒドロキシウルソール酸及びウルソール酸から成る群から選択される1以上の化合物を含まないことを特徴とする、(1)記載の飲食品又は医薬品。 (4)上記飲食品が抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び抗酸化作用から成る群から選択される1以上の作用を有する旨の表示を有するものであることを特徴とする、(1)記載の飲食品又は医薬品。 (5)ビワ葉又はビワ茶を熱水抽出又は溶媒抽出に供し、抽出物を得る工程を含むことを特徴とする、抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び抗酸化作用から成る群から選択される1以上の作用を有する飲食品又は医薬品の製造方法。 (6)上記抽出物を精製手段に供し、精製物を得る工程をさらに含むことを特徴とする、(5)記載の製造方法。 (7)上記精製手段がカラムクロマトグラフィーであることを特徴とする、(6)記載の製造方法。 (8)上記ビワ茶がねじめびわ茶であることを特徴とする(5)記載の製造方法。 (9)上記精製物がクロロゲン酸、クエルセチン3−サンブビオシド、メチルクロロゲン酸、ケンフェロール3−ラムノシド、クエルセチン3−ラムノシド、2α−ヒドロキシウルソール酸及びウルソール酸から成る群から選択される1以上の化合物を含まないことを特徴とする、(6)記載の製造方法。 以下、本発明を詳細に説明する。 本発明に係る飲食品又は医薬品は、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を有効成分として含有し、且つ抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び抗酸化作用から成る群から選択される1以上の作用を有するものである。本発明に係る飲食品又は医薬品をヒト等の動物に摂取又は投与することにより、高脂血症や高血圧症を予防又は治療することができる。また、本発明に係る飲食品又は医薬品をヒト等の動物に摂取又は投与することにより、癌細胞の増殖を抑制し、癌細胞にアポトーシスを誘導せしめ、癌細胞に活性酸素種を産生せしめることができる。さらに、本発明に係る飲食品又は医薬品をヒト等の動物に摂取又は投与することにより、血糖値を低下させ、また活性酸素等を取り除くことができる。 ここで、抗高脂血症作用とは、血中のコレステロールやトリグリセリドを低下させることを意味する。また、高血圧抑制作用とは、血圧の上昇を抑えることを意味する。 癌細胞増殖抑制作用とは、癌細胞を死滅させ、その増殖を抑えることを意味する。また、癌細胞アポトーシス誘導作用とは、癌細胞にアポトーシスを誘導せしめ、癌細胞を死滅させることを意味する。さらに、活性酸素種産生作用とは、癌細胞中に活性酸素種を産生し、癌細胞を死滅させることを意味する。 また、高血糖降下作用とは、血糖値を低下させることを意味する。さらに、抗酸化作用とは、体内の活性酸素を取り除くことを意味する。 本発明においては、ビワ葉又はビワ茶を用いる。ビワ葉としては、新鮮葉又は乾燥葉をそのまま使用することができる。ビワ茶としては、いずれのビワ茶であってもよいが、例えばねじめびわ茶(商品名)が挙げられる。ねじめびわ茶は、トルマリン石による高温加熱により焦がしたもので、上述した特許文献1に記載の方法によって調製することができる。なお、ねじめびわ茶(根占枇杷茶)は、鹿児島県農業生産法人有限会社十津川農場から市販されている。 本発明に係る飲食品又は医薬品に使用する抽出物は、ビワ葉又はビワ茶を熱水抽出又は溶媒抽出に供することで得ることができる。例えば、ビワ葉又はビワ茶を、熱湯を用いた抽出に供し、これを1回又は数回(例えば3回)繰り返すことでビワ葉又はビワ茶抽出物を得ることができる。あるいは、例えば、ビワ葉又はビワ茶を水、低級アルコールやアセトンなどの有機溶媒を用いた抽出に供することで、ビワ葉又はビワ茶抽出物を得ることができる。なお、本発明においては、ビワ葉又はビワ茶抽出物とは、上記抽出方法で得られた抽出液もしくは各種溶媒抽出液、その希釈液、その濃縮液又はその乾燥粉末を意味する。 また、本発明においては、上述したビワ葉又はビワ茶抽出物を濾過、遠心分離又は精製処理等の精製手段に供することで、当該抽出物から夾雑物を除去した精製物を用いることができる。精製手段としては、例えば、カラムクロマトグラフィー、順相又は逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー及びゲル濾過が挙げられるが、カラムクロマトグラフィーが特に好ましい。 例えば、ビワ葉又はビワ茶の水抽出溶液を直接、逆相用のゲル(例えば、MCI gel CHP−20P(三菱化学)など)のオープンカラムクロマトグラフィーに付す。移動相にA液として水、B液としてエタノールを用い、A液とB液との比率を100:0、30:70、70:30と変えて、クロマトグラフィーを行う。最後にC液としてアセトンを用い、A液とC液との比率を50:50にしてクロマトグラフィーを行う。A液とB液との比率が70:30で溶出する粗製分画物並びにA液とC液との比率が50:50で溶出する粗製分画物には、強い高血糖降下作用が見られる。従って、これら粗製分画物は、ビワ葉又はビワ茶の精製物として好適に本発明に係る飲食品又は医薬品に使用することができる。 あるいは、80%水性アセトンで抽出したビワ葉又はビワ茶の抽出溶液を減圧エバポレータにて溶媒を留去した後、残差を逆相用のゲル(例えば、MCI gel CHP−2OP(三菱化学)など)のオープンカラムクロマトグラフィーに付す。移動相にA液として水、B液としてメタノールを用い、A液からB液へのリニアーグラジエントによってクロマトグラフィーを行う。最後にC液としてアセトンを用い、A液とC液との比率を50:50にしてクロマトグラフィーを行う。この方法で溶出する粗製分画物には、強い抗酸化作用が見られる。従って、この粗製分画物は、ビワ葉又はビワ茶の精製物として好適に本発明に係る飲食品又は医薬品に使用することができる。なお、この粗製分画物には、クロロゲン酸、クエルセチン3−サンブビオシド、メチルクロロゲン酸、ケンフェロール3−ラムノシド、クエルセチン3−ラムノシド、2α−ヒドロキシウルソール酸及びウルソール酸のうち1以上の化合物が含まれない。従って、本発明に係る飲食品又は医薬品に使用するビワ葉又はビワ茶精製物には、これら化合物が含まれないことが好ましい。 以上のように説明したビワ葉又はビワ茶抽出物又は精製物を有効成分として用いることで、本発明に係る飲食品又は医薬品を製造することができる。 本発明の抽出物又は精製物の有効量を、錠剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ペットボトルなどの任意の形態に添加又は封入するか、あるいは任意の食品に添加することで、本発明に係る飲食品を得ることができる。本発明に係る飲食品は、抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び/又は抗酸化作用を有する飲食品、特に、健康補助食品又は特定保健用食品として使用することができる。好ましくは、錠剤、カプセル、顆粒、ドリンク、ペットボトルなどの形態の健康補助食品又は特定保健用食品とするのがよい。 飲食品には、例えば、菓子類、レトルト食品、ジュース類、お茶類、乳製品などが含まれるが、これらに限定されない。また、飲食品には、必要に応じて甘味剤、調味料、乳化剤、懸濁化剤、防腐剤などを添加してもよいし、あるいはビタミン類、栄養剤、免疫増強剤(例えば、プロポリスやきのこ抽出物など)などを添加してもよい。 本発明に係る飲食品に対するビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の添加量は、摂取する成人体重1kgあたり0.1〜200mgに相当する範囲内の量又は1製品あたり例えば50mg〜1gであるが、この範囲に限定されない。 一方、本発明に係る医薬品は、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の有効量を含む。本発明に係る医薬品は、抗高脂血症用剤、高血圧抑制剤、癌細胞増殖抑制剤、癌細胞アポトーシス誘導剤、活性酸素種産生剤、高血糖降下剤又は抗酸化剤として使用することができる。 本発明に係る医薬品には、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物以外に、さらに製薬上許容可能な担体(賦形剤もしくは希釈剤)並びに結合剤、増量剤、滑沢剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、緩衝剤、懸濁化剤、保存剤、着色剤、風味剤及び甘味剤などから適宜選択される添加剤を含有させることができる。担体及び添加剤は、製剤化のために一般的に使用されるものを、本発明に係る医薬品の製造に使用することができる。例えば、結合剤の例としては、デンプン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどが挙げられる。増量剤の例としては、ラクトース、微結晶セルロースなどが挙げられる。滑沢剤の例としては、タルク、シリカ、ステアリン酸マグネシウムなどが挙げられる。崩壊剤の例としては、デンプン、デンプングリコール酸ナトリウムなどが挙げられる。湿潤剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。乳化剤の例としては、セルロース誘導体、ソルビトールなどが挙げられる。また、保存剤の例としては、メチル−p−ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸などが挙げられる。ただし、本発明に使用できる添加剤は、これら添加剤の例に限定されない。 本発明に係る医薬品は、例えば経口投与又は非経口投与(静脈内、動脈内、腹腔内、経直腸内、皮下、筋肉内、舌下、経鼻腔内、経膣内など)用に製剤化され得る。製剤の形態としては、特に限定されないが、例えば溶液剤、錠剤、粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、座剤、噴霧剤、制御放出剤、懸濁剤及びドリンク剤などが挙げられる。 本発明に係る医薬品に含まれるビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の用量は、患者の年齢、体重、性別、状態、重篤度などの要因によって変化しうる。患者に投与されるビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物の1日用量は、例えば患者の体重1kgあたり0.1〜200mg、好ましくは1〜100mgの範囲であるが、この範囲に限定されない。必要に応じて、用量を数回、例えば2〜3回に分けて分割投与してもよい。また、本発明に係る医薬品は治療用途の同じ又は異なる他の抗高脂血症用剤、高血圧抑制剤、癌細胞増殖抑制剤、癌細胞アポトーシス誘導剤、活性酸素種産生剤、高血糖降下剤及び/又は抗酸化剤と併用して患者に投与することもできる。 本発明に係る飲食品又は医薬品は、例えば、以下のように薬理評価を行うことができる。 本発明に係る飲食品又は医薬品の抗高脂血症作用の薬理評価としては、例えばモデル動物に本発明に係る飲食品又は医薬品を摂取させ、飼育中又は飼育後に、血清脂質分析又は臓器の脂肪組織重量測定を行う方法が挙げられる。本発明に係る飲食品又は医薬品を摂取していない動物と比較して、本発明に係る飲食品又は医薬品を摂取した動物において、血中の総コレステロール、HDLコレステロール及び/又はトリグリセリド量が有意に低下した場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に抗高脂血症作用を有すると判断することができる。また同様に、臓器の脂肪組織重量が有意に低下した場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に抗高脂血症作用を有すると判断することができる。 また、本発明に係る飲食品又は医薬品の高血圧抑制作用の薬理評価としては、例えば、SHRラット(高血圧自然発症ラット)の雄を用いる方法が挙げられる。すなわち、本発明に係る飲食品又は医薬品を当該SHRラットに給餌し、飼育終了後、各ラットの血圧を、無加温型カフ式血圧測定器(室町機械(株))などの血圧測定装置で測定し、本発明に係る飲食品又は医薬品を給餌していないラットと比較して、血圧が下がった場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に高血圧抑制作用を有すると判断できる。 さらに、本発明に係る飲食品又は医薬品の癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用及び活性酸素種産生作用の薬理評価としては、例えば、ヒト急性前骨髄性白血病疾患細胞(HL−60細胞)を用いる方法が挙げられる。すなわち、本発明に係る飲食品又は医薬品存在下でHL−60細胞を培養し、対照群(本発明に係る飲食品又は医薬品不在下)と比較して、その増殖が抑制された場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に癌細胞増殖抑制作用を有すると判断できる。また、本発明に係る飲食品又は医薬品存在下でHL−60細胞を培養し、対照群(本発明に係る飲食品又は医薬品不在下)と比較して、その50%生存率が抑制された場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に癌細胞アポトーシス誘導作用を有すると判断できる。さらに、本発明に係る飲食品又は医薬品存在下でHL−60細胞を培養し、対照群(本発明に係る飲食品又は医薬品不在下)と比較して、細胞内の活性酸素が上昇した場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に癌細胞に対する活性酸素種産生作用を有すると判断できる。 また、本発明に係る飲食品又は医薬品の高血糖降下作用の薬理評価としては、例えば、モデル動物(例えば、II型糖尿病モデルマウスであるKKAyマウスなど)に本発明に係る飲食品又は医薬品を摂取させ、飼育中又は飼育後に、血糖値を測定する方法が挙げられる。本発明に係る飲食品又は医薬品を摂取していない動物と比較して、本発明に係る飲食品又は医薬品を摂取した動物において、血糖値が有意に低下した場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に高血糖降下作用を有すると判断することができる。同様に、モデル動物を用いたブドウ糖負荷試験において、本発明に係る飲食品又は医薬品を摂取した動物において、血糖値又はHbA1C値が有意に低下した場合には、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に高血糖降下作用を有すると判断することができる。 さらに、本発明に係る飲食品又は医薬品の抗酸化作用の薬理評価としては、例えば、Harwat,K.S.M.et al.,Free Radical Res.,36:177−187,2002に記載の方法が挙げられる。すなわち、本発明に係る飲食品又は医薬品にDPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl)を加えて反応させ、吸光度を測定し、その吸光度の値からTroloxの吸光度標準曲線を用いてTrolox濃度を換算する。その換算値より、Troloxのラジカル消去能標準曲線からラジカル消去率を算出する。本発明に係る飲食品又は医薬品のラジカル消去率が、例えば陽性対照であるビタミンC又はEと同程度かそれ以上である場合に、本発明に係る飲食品又は医薬品が良好に抗酸化作用を有すると判断することができる。 焙煎ビワ葉や非焙煎ビワ葉には、抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用又は抗酸化作用は全く認められない。一方、本発明においては、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を用いることで、抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び/又は抗酸化作用を有する飲食品又は医薬品を製造できる。これら飲食品又は医薬品は糖尿病、高脂血症、高血圧症、癌等の疾患の予防又は治療に有用である。 本明細書は本願の優先権の基礎である日本国特許出願2005−187133号の明細書及び/又は図面に記載される内容を包含する。 図1は、実施例1において飼育期間中のコントロール群及びビワ茶群のラットの体重推移を調べた結果を示す。 図2は、実施例1においてコントロール群及びビワ茶群のラットの血中の総コレステロール量を調べた結果を示す。 図3は、実施例1においてコントロール群及びビワ茶群のラットの血中のHDLコレステロール量を調べた結果を示す。 図4は、実施例1においてコントロール群及びビワ茶群のラットの血中のトリグリセリド量を調べた結果を示す。 図5は、実施例1において飼育終了後、コントロール群及びビワ茶群のラットの肝臓、副睾丸周辺及び腎臓周辺の脂肪組織の重量を測定した結果を示す。 図6は、実施例1において飼育期間中のコントロール群及びビワ茶群のマウスの体重推移を調べた結果を示す。 図7は、実施例1において飼育終了後、コントロール群及びビワ茶群のマウスの腎臓周辺及び副睾丸周辺の脂肪組織の重量を測定した結果を示す。 図8は、実施例2において飼育期間中のコントロール群及びビワ茶群のマウスの血糖値の推移を示す。 図9は、実施例2における飼育後のコントロール群及びビワ茶群のマウスの耐糖能試験の結果を示す。 図10は、実施例2における耐糖能試験後のコントロール群及びビワ茶群のマウスの血中HbA1C値の測定結果を示す。 図11は、実施例3における乾燥粗製分画物の薄層クロマトグラフを示す。 図12は、実施例3における飼育期間中のコントロール群及び各ビワ茶群のマウスの血糖値の推移を示す。 図13は、実施例3において飼育後のコントロール群及び分画3と4を給餌したビワ茶群のマウスの耐糖能試験の結果を示す。 図14は、実施例3において耐糖能試験後のコントロール群及び各ビワ茶群のマウスの血中HbA1C値の測定結果を示す。 図15は、実施例4における粗製分画物の薄層クロマトグラフを示す。 図16は、実施例4において粗製分画物の抗酸化作用を調べた結果を示す。 図17は、実施例5において、実施例3で調製した粗製分画物の抗酸化作用を調べた結果を示す。 図18は、実施例5において、実施例3の分画3から更に得られた粗製分画物の抗酸化作用を調べた結果を示す。 図19は、実施例6においてねじめびわ茶抽出物の高血圧抑制作用を調べた結果を示す。 図20は、実施例8におけるアガロースゲル電気泳動写真であり、実施例3の粗製分画物のアポトーシス誘導の作用を調べた結果を示す。 図21は、実施例8におけるアガロースゲル電気泳動写真であり、実施例3の分画3から更に得られた粗製分画物のアポトーシス誘導の作用を調べた結果を示す。 図22は、実施例9において、実施例3の粗製分画物の癌細胞に対する活性酸素種産生の作用を調べた結果を示す。 図23は、実施例9において、実施例3の分画3から更に得られた粗製分画物の癌細胞に対する活性酸素種産生の作用を調べた結果を示す。 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されないものとする。 なお、下記の実施例における抗酸化作用の実験は、以下の文献に記載の方法を用いて行った(Harwat,K.S.M.et al.,Free Radical Res.,36:177−187,2002)。 また、下記の実施例で使用するねじめびわ茶は、鹿児島県農業生産法人有限会社十津川農場から市販されているものである。 さらに、各実施例に伴う図中の結果は、各群の平均値又は平均値±標準偏差で示す。[実施例1]ねじめびわ茶抽出物のダイエット効果(1)ねじめびわ茶の抽出物の調製 市販のねじめびわ茶(50g)を熱湯(400ml)で抽出した。これを3回繰り返した。得られた熱湯抽出液を凍結乾燥(Tokyo Rikakikai Co.,LTD,Freeze Dryer FR−1)に供し、乾燥粉末を得た。 用いたねじめびわ茶の総乾燥重量は346.2gであり、熱湯抽出液の総乾燥粉末量は57.37gであった。従って、ねじめびわ茶に対する熱湯抽出液の乾燥粉末含量は、16.57%であった。(2)動物の準備 Wistar系ラット(日本SLC社製)及びKKAyマウス(日本クレア社製)を用いた。飼養試験には、下記の表1に示す割合となるように各材料を計量したものを混合し、これを蒸留水にて混練した後、凍結乾燥機にて乾燥させたものをコントロール用餌(当該餌を給餌したラット又はマウスを本実施例では「コントロール群」という)として用いた。また、上記(1)で得られた熱湯抽出液の乾燥粉末を1%となるようにコントロール用餌に加え、これをねじめびわ茶群用餌(当該餌を給餌したラット又はマウスを本実施例では「ビワ茶群」という)として用いた。(3)ラットの血清脂質の分析及び臓器重量の測定 Wistar系ラット(日本SLC社製)を12匹用いて実験した。これらラットをコントロール群(6匹)とビワ茶群(6匹)とに分け、コントロール群のラットにはコントロール用餌を自由摂取させた。また、ビワ茶群のラットにはねじめびわ茶群用餌を自由摂取させた。双方の群を、それぞれ1ヶ月間飼育した。 飼育期間中、3日おきにラットの体重測定を行った。また、ラットの給水には両群とも水道水を用い、飼育期間中は自由給水とした。 飼育終了後、各動物をネンブタールで麻酔し、心臓より採血を行い血清脂質の分析を行った。また、各群のラットの臓器を摘出し、その重量を測定した。 ラットの体重測定の結果を図1に示す。図1は、飼育期間中の両群のラットの体重推移を調べた結果である。図1中、黒塗りの丸がコントロール群のラットの結果であり、白抜きの丸がビワ茶群のラットの結果である。 図1に示すように、飼育期間中、両群のラットの体重は増加したが、3週目より両群間で徐々に体重差が現れ、ビワ茶群のラットの体重はコントロール群のラットの体重に比べて、その増加が抑制されることが分かる。 飼育終了後の血清脂質の分析結果を図2〜図4に示す。図2は、血中の総コレステロール量(mg/dl)を調べた結果である。図3は、血中のHDLコレステロール量(mg/dl)を調べた結果である。また、図4は、血中のトリグセリド量(mg/dl)を調べた結果である。なお、図2〜4において、「コントロール」はコントロール群のラットの結果であり、「ビワ茶」はビワ茶群のラットの結果である。 図2及び3に示すように、総コレステロールとHDLコレステロールの値は、コントロール群のラットと比較してビワ茶群のラットはやや低い値になることが分かる。トリグリセリドについて、図4に示すように、コントロール群のラットに比べ、ビワ茶群のラットは低い水準(図4中、*はP<0.01であることを示す)で推移することが分かる。 さらに飼育後の臓器重量を調べた結果を図5に示す。図5は、飼育終了後、ラットの肝臓、副睾丸周辺及び腎臓周辺の脂肪組織の重量を測定した結果である。図5において、「コントロール」はコントロール群のラットの結果であり、「ビワ茶」はビワ茶群のラットの結果である。 図5に示すように、肝臓、副睾丸周辺および腎臓周辺の脂肪組織の重量を比較した結果、コントロール群のラットの重量に比べ、ビワ茶群のラットの重量のほうがより低くなることが分かる。特に、腎臓周辺の脂肪組織の重量については、ビワ茶群のラットの重量は有意に低い(図5中、*はP<0.05であることを示す)ことが分かる。(4)マウスの体重及び臓器重量の測定: KKAyマウス(日本クレア社製)を20匹用いて実験した。これらマウスをコントロール群(10匹)とビワ茶群(10匹)とに分け、コントロール群のマウスにはコントロール用餌を自由摂取させた。また、ビワ茶群のマウスにはねじめびわ茶群用餌を自由摂取させた。双方の群を、それぞれ7週間飼育した。 飼育期間中、3日おきにマウスの体重測定を行った。また、マウスの給水には両群とも水道水を用い、飼育期間中は自由給水とした。 飼育終了後、各動物をネンブタールで麻酔し、各群のマウスの臓器を摘出し、その重量を測定した。 マウスの体重測定の結果を図6に示す。図6は、飼育期間中の両群のマウスの体重推移を調べた結果である。図6中、黒塗りの丸がコントロール群のマウスの結果であり、白抜きの丸がビワ茶群のマウスの結果である。なお、図6において、*はP<0.05を示し、**はP<0.01を示す。 図6に示すように、飼育期間中、両群のマウスの体重は増加したが、ビワ茶群のマウスの体重はコントロール群のマウスの体重に比べて、その増加が有意に(P<0.01)抑制されることが分かる。 飼育後の臓器重量を調べた結果を図7に示す。図7は、飼育終了後、マウスの腎臓周辺及び副睾丸周辺の脂肪組織の重量を測定した結果である。図7において、「コントロール」はコントロール群のマウスの結果であり、「ビワ茶」はビワ茶群のマウスの結果である。 図7に示すように、腎臓周辺及び副睾丸周辺の脂肪組織の重量を比較した結果、コントロール群のマウスの重量に比べ、ビワ茶群のマウスの重量のほうがより低くなることが分かる。特に、腎臓周辺の脂肪組織の重量については、ビワ茶群のマウスの重量は有意に低い(図7中、*はP<0.05であることを示す)ことが分かる。[実施例2]ねじめびわ茶抽出物の高血糖値抑制効果(1)ねじめびわ茶の抽出物の調製 市販のねじめびわ茶(50g)を熱湯(400ml)で抽出した。これを3回繰り返した。得られた熱湯抽出液を凍結乾燥(Tokyo Rikakikai Co.,LTD,Freeze Dryer FR−1)に供し、乾燥粉末を得た。 用いたねじめびわ茶の総乾燥重量は300.0gであり、熱湯抽出液の総乾燥粉末量は51.73gであった。従って、ねじめびわ茶に対する熱湯抽出液の乾燥粉末含量は、17.24%であった。(2)動物の準備 高血糖の(II型糖尿病モデル)マウスとしてKKAyマウス(日本クレア社製)を用いた。飼養試験には上記の表1に示す割合となるように各材料を計量したものを混合し、これを蒸留水にて混練した後、凍結乾燥機にて乾燥させたものをコントロール用餌(当該餌を給餌したマウスを本実施例では「コントロール群」という)として用いた。また、上記(1)で得られた熱湯抽出液の乾燥粉末を1%となるようにコントロール用餌に加え、これをねじめびわ茶群用餌(当該餌を給餌したマウスを本実施例では「ビワ茶群」という)として用いた。(3)II型糖尿病モデルマウスの血糖値の測定 II型糖尿病モデルマウスとしてKKAyマウス(日本クレア社製)を20匹用いて実験した。マウスをコントロール群(10匹)とビワ茶群(10匹)とに分け、コントロール群のマウスにはコントロール用餌を自由摂取させた。また、ビワ茶群のマウスにはねじめびわ茶群用餌を自由摂取させた。双方の群をそれぞれ7週間飼育した。マウスの給水には両群とも水道水を用い、飼育期間中は自由給水とした。 飼育期間中、1週間おきにマウスの血糖値を測定した。血糖値の測定には酵素電極法を用いた。 飼育期間中の血糖値の推移を図8に示す。図8中、黒塗りの丸がコントロール群のマウスの結果であり、白抜きの丸がビワ茶群のマウスの結果である。 図8に示すように、血糖値は両群の動物とも徐々に上昇し、実験開始1週目より血糖値に差が現れることが分かる。すなわち、コントロール群のマウスに比べ、ビワ茶群のマウスは血糖値の上昇が抑えられたことが分かる。特に、3、5、6週目の血糖値については、コントロール群のマウスに比べ、ビワ茶群のマウスの血糖値は有意(図8中、*はP<0.05であることを示す)に低くなることが分かる。(4)II型糖尿病モデルマウスのブドウ糖負荷試験 上記(3)での飼育終了後、各群のマウスを14時間絶食させ、これにブドウ糖を投与した。ブドウ糖の投与量は、マウス体重×1/200(ml)のブドウ糖4g/10ml(蒸留水)であった。この投与量をステンレス製ゾンデにて各マウスの胃に直接注入し、強制的に投与した。投与後、経時的に血糖値を測定した。 測定後、マウスをネンブタールで麻酔し、心臓より採血を行い、HbA1Cの値を測定した。 飼育後の耐糖能試験の結果を図9に示す。図9中、黒塗りの丸がコントロール群のマウスの結果であり、白抜きの丸がビワ茶群のマウスの結果である。なお、図9中、*はP<0.05であることを示す。 図9に示すように、血糖値はブドウ糖投与により、両群とも速やかな上昇を示し、15分後にはおよそ400mg/dlの高い値となった。30分後、コントロール群のマウスの血糖値はさらに上昇を続け、その後は減少することが分かる。これに対して、ビワ茶群のマウスの血糖値については、30分後の値がコントロール群の値に比べて低く抑えられ(P<0.05水準で有意差あり)、その後はコントロール群の値と同様に血糖値は低下することが分かる。また、各測定時間におけるビワ茶群のマウスの血糖値は、コントロール群の血糖値に比べて、常により低い値をとって推移していくことが分かる。 さらに、耐糖能試験後の血中HbA1C値の測定結果を図10に示す。図10において、「コントロール」はコントロール群のマウスの結果であり、「ビワ茶」はビワ茶群のマウスの結果である。 図10に示すように、コントロール群のマウスの血中HbA1C値に比べ、ビワ茶群のマウスの血中HbA1C値が有意に(図10中、**はP<0.01であることを示す)低いことが分かる。[実施例3]ねじめびわ茶の粗製分画物の血糖値上昇の抑制効果(1)ねじめびわ茶の粗製分画物の調製 市販のねじめびわ茶(50g)を熱湯(400ml)で抽出した。これを3回繰り返した。得られた熱湯抽出液を凍結乾燥(Tokyo Rikakikai Co.,LTD,Freeze Dryer FR−1)に供し、乾燥粉末を得た。なお、用いたねじめびわ茶の総乾燥重量は950.0gであった。 得られた熱湯抽出液を、冷後、順次、MCI gel CHP−20Pのオープンカラムクロマトに付した。なお、ゲルの量は乾燥重量として、1kg前後量を使用することが好ましい。また、使用したガラスカラムのサイズは内径8cmであった。本実施例では、ガラスカラムを使用したが、カラムの材質はガラス、アクリル材質などに限定されなくても良い。溶媒を、水(2L)、30%エタノール水溶液(2L)、70%エタノール水溶液(2L)及び水−アセトン(1:1の比率)(2L)をそれぞれ用いて溶出させ、4つの分画を得た。4つの乾燥粗製分画物の収量は、水(2L)で溶出した乾燥粗製分画物(以下、「分画1」という)が98.0g、30%エタノール水溶液(2L)で溶出した乾燥粗製分画物(以下、「分画2」という)が45.3g、70%エタノール水溶液(2L)で溶出した乾燥粗製分画物(以下、「分画3」という)が18.3g、水−アセトン(1:1の比率)(2L)で溶出した乾燥粗製分画物(以下、「分画4」という)が2.1gであった。 これら分画1〜4の薄層クロマトグラフ(Thin Layer Chromatography、以下「TLC」という)を図11に示す。図11中、1〜4の番号はそれぞれ分画1〜4の結果を示す。なお、TLCに用いた展開溶媒は、ベンゼン−ギ酸エチル−ギ酸の3種の溶媒を用い、その比率を3:6:1の溶液用量で混合したものを用いた。発色試薬は、塩化第二鉄(FeCl3)を5%程度メタノールに溶解したものを用い、TLCへ直接噴霧することにより、化合物を発色検出した。 図11に示すように、分画1及び2には、クロロゲン酸様の物質が、Rf値約0.1付近にあることが分かる。また、分画3及び4には、有機酸及びクロロゲン酸様の物質があまり含まれていないことが分かる。(2)動物の準備 高血糖の(II型糖尿病モデル)マウスとしてKKAyマウス(日本クレア社製)を用いた。飼養試験には、上記の表1に示す割合となるように各材料を計量したものを混合し、これを蒸留水にて混練した後、凍結乾燥機にて乾燥させたものをコントロール用餌(当該餌を給餌したマウスを本実施例では「コントロール群」という)として用いた。また、上記(1)で得られた分画1、分画2又は分画3と4をコントロール用餌に対して1%となるようにそれぞれ加え、ねじめびわ茶群用餌(当該餌をそれぞれ給餌したマウスを本実施例では合わせて「ビワ茶群」という)として用いた。(3)II型糖尿病モデルマウスの血糖値の測定 II型糖尿病モデルKKAyマウス(日本クレア社製)を32匹用いて実験した。マウスをコントロール群(8匹)、分画1を含有するねじめびわ茶群用餌を与えるビワ茶群(8匹)、分画2を含有するねじめびわ茶群用餌を与えるビワ茶群(8匹)、分画3と4を混合して含有するねじめびわ茶群用餌を与えるビワ茶群(8匹)、の4群に分け、コントロール群のマウスには1日1回、1.5gのコントロール用餌を給餌し、不足分はマウス用市販餌を飽食状態となるよう与えた。また、各ビワ茶群のマウスには1日1回、1.5gのコントロール用餌に15mgの各分画を含むねじめびわ茶群用餌を給餌し、不足分はマウス用市販餌を飽食状態となるよう与えた。各群をそれぞれ7週間飼育した。マウスの給水には各群とも水道水を用い、飼育期間中は自由給水とした。 飼育期間中、1週間おきにマウスの血糖値を測定した。血糖値の測定には酵素電極法を用いた。 飼育期間中の血糖値の推移を図12に示す。図12中、黒塗りの丸がコントロール群のマウスの結果であり、白抜きの四角が、分画1を含有するねじめびわ茶群用餌を給餌したビワ茶群のマウスの結果である。また、白抜きの三角が、分画2を含有するねじめびわ茶群用餌を給餌したビワ茶群のマウスの結果であり、白抜きの丸が、分画3と4を含有するねじめびわ茶群用餌を給餌したビワ茶群のマウスの結果である。 図12に示すように、飼育期間中、血糖値はコントロール群及び各ビワ茶群のマウスの血糖値は上昇した。しかし、分画3と4を給餌したビワ茶群の血糖値は実験開始3週目より上昇が頭打ちとなり、コントロール群の血糖値に比べて低い値で推移することが分かる。(4)II型糖尿病モデルマウスのブドウ糖負荷試験 上記(3)での飼育終了後、各4群のマウスを14時間絶食させ、これにブドウ糖を投与した。ブドウ糖の投与量は、マウス体重×1/200(ml)のブドウ糖4g/10ml(蒸留水)であった。この投与量をステンレス製ゾンデにて各マウスの胃に直接注入し、強制的に投与した。投与後、経時的に血糖値を測定した。 測定後、マウスをネンブタールで麻酔し、心臓より採血を行い、HbA1Cの値を測定した。 分画3と4を給餌したビワ茶群について、飼育終了後に耐糖能試験を行った結果を図13に示す。図13中、黒塗りの丸がコントロール群のマウスの結果であり、白抜きの丸が、分画3と4を含有するねじめびわ茶群用餌を給餌したビワ茶群のマウスの結果である。 図13に示すように、分画3と4を給餌したビワ茶群の血糖値はブドウ糖投与により、コントロール群と同様に投与直後から速やかな上昇が認められ、15分後にはおよそ500mg/dlと上昇した。30分後には、コントロール群はさらに上昇を続け、その後、減少することが分かる。これに対し、分画3と4を給餌したビワ茶群では、30分後既に血糖値の低下が始まり、その後、速やかに下降することが分かる。特に、30、60分後では有意に(図13中、*はP<0.05であることを示す)低いことが分かる。 さらに、耐糖能試験後の血中HbA1C値の測定結果を図14に示す。図14において、「コントロール」はコントロール群のマウスの結果であり、「ビワ茶1」は、分画1を含有するねじめびわ茶群用餌を給餌したビワ茶群のマウスの結果である。また、「ビワ茶2」が、分画2を含有するねじめびわ茶群用餌を給餌したビワ茶群のマウスの結果であり、「ビワ茶(3+4)」が、分画3と4を含有するねじめびわ茶群用餌を給餌したビワ茶群のマウスの結果である。 図14に示すように、コントロール群のマウスの血中HbA1C値に比べ、分画3と4を給餌したビワ茶群のマウスの血中HbA1C値が有意に(図14中、*はP<0.05であることを示す)低いことが分かる。[実施例4]ねじめびわ茶の粗製分画物の抗酸化作用の効果(1)ねじめびわ茶の粗製分画物の調製 市販のねじめびわ茶(1247g)を80%水性アセトン(5000ml)で抽出した。これを3回繰り返した。得られた80%水性アセトン抽出液は、減圧下で溶媒を留去することで、シロップ状のエキス(448.2g)を得た。得られたエキスの一部(278g)を分取し、MCI gel CHP−20Pのカラムクロマトに付した。なお、ゲルの量は乾燥重量として、1kg前後量を使用することが好ましい。また、使用したガラスカラムのサイズは内径8cmであった。本実施例では、ガラスカラムを使用したが、カラムの材質はガラス、アクリル材質などに限定されなくても良い。移動相にA液として水、B液としてメタノールを用い、A液からB液へのリニアーグラジエントによってクロマトグラフィーを行った。より詳しくは、A液とB液とを1:0の比率(300ml)及び95:5の比率(300ml)で溶出した分画溶液をまとめたものを粗製分画1とした。A液とB液とを9:1の比率(300ml)、8:2の比率(300ml)及び7:3の比率(300ml)で溶出した分画溶液をまとめたものを粗製分画2とした。A液とB液とを6:4の比率(300ml)で溶出した分画溶液を粗製分画3とした。A液とB液とを5:5の比率(300ml)で溶出した分画溶液を粗製分画4とした。A液とB液とを4:6の比率(300ml)で溶出した分画溶液を粗製分画5とした。A液とB液とを3:7の比率(300ml)で溶出した分画溶液を粗製分画6とした。A液とB液とを2:8の比率(300ml)で溶出した分画溶液を粗製分画7とした。A液とB液とを1:9の比率(300ml)で溶出した分画溶液を粗製分画8とした。A液とB液とを0:1の比率(300ml)で溶出した分画溶液を粗製分画9とした。最後にC液としてアセトンを用い、A液とC液との比率を50:50(1L)にしてクロマトグラフィーを行った。なお、このA液とC液との比率を50:50(1L)にしてクロマトグラフィーを行い、得ることができる分画溶液は、上記の粗製分画9と混合した。この結果、粗製分画1〜9と称する9つの粗製分画物を得た。9つの粗製分画物の収量は、粗製分画1が12.3g、粗製分画2が12.8g、粗製分画3が0.4g、粗製分画4が2.9g、粗製分画5が8.3g、粗製分画6が6.7g、粗製分画7が19.9g、粗製分画8が5.0g、粗製分画9が4.9g、であった。 これら9つの粗製分画物のうち粗製分画2〜8のTLCを図15に示す。図15中、2〜8の番号はそれぞれ粗製分画2〜8の結果を示す。なお、TLCに用いた展開溶媒は、ベンゼン−ギ酸エチル−ギ酸の3種の溶媒を用い、その比率を3:6:1の溶液用量で混合したものを用いた。発色試薬は、塩化第二鉄(FeCl3)を5%程度メタノールに溶解したものを用い、TLCへ直接噴霧することにより、化合物を発色検出した。 図15に示すように、緑色から青色に発色するものはフェノール性の物質であることが分かる。(2)抗酸化作用の実験 抗酸化作用の実験は、以下の文献に記載の方法を用いて行った(Harwat,K.S.M.et al.,Free Radical Res.,36:177−187,2002)。 サンプルは、上記(1)で得られた9つの粗製分画物をそれぞれ10μg/mlの濃度で調整したもの、コントロールとしてビワ茶の熱湯抽出物の乾燥粉末を10μg/mlの濃度で調整したもの、標準品として、ビタミンC(アスコルビン酸)を5μg/mlの濃度で調整したもの、ビタミンEを5μg/mlの濃度で調整したものを用いた。 これらのサンプルを平底のプレート(96well)に加え、さらにDPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl、マイクロモーラーの濃度で調整したもの)を190μl加え、10秒間混合した後、遮光して30分間放置した。この反応後、各ウエルの反応溶液を、490nmの波長の吸光度を用いてマイクロプレートリーダーで測定し、その吸光度の値からTroloxの吸光度標準曲線を用いてTrolox濃度を換算した。その換算値より、Troloxのラジカル消去能標準曲線からラジカル消去率を算出した。 抗酸化作用の実験結果を図16に示す。図16中、1〜9のサンプルナンバーは、それぞれの粗製分画1〜9に対応する。また、サンプルナンバー10はビワ茶の熱湯抽出物の乾燥粉末である。VCはビタミンCであり、VEはビタミンEを示す。 図16に示すように、粗製分画6、8及び9に強い抗酸化作用があることが分かる。その程度は、ビタミンEと同程度かそれ以上であり、ビタミンCの2分の1程度である。また、粗製分画6、8及び9の抗酸化作用は、ビワ茶の熱湯抽出物の乾燥粉末に比べ3倍程度強くなることが分かる。[実施例5]ねじめびわ茶の粗製分画物の抗酸化作用の効果2(1)実施例3で調製した分画1〜4の抗酸化作用の実験 抗酸化作用の実験は、以下の文献に記載の方法を用いて行った(Harwat,K.S.M.et al.,Free Radical Res.,36:177−187,2002)。 サンプルは、実施例3で得られた4つの粗製分画物:分画1〜4をそれぞれ10μg/mlの濃度で調整したもの、コントロールとして実施例1で得られたねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末を10μg/mlの濃度で調整したものを用いた。 これらのサンプルを平底のプレート(96well)に加え、さらにDPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl、マイクロモーラーの濃度で調整したもの)を190μl加え、10秒間混合した後、遮光して30分間放置した。この反応後、各ウエルの反応溶液を、490nmの波長の吸光度を用いてマイクロプレートリーダーで測定し、その吸光度の値からTroloxの吸光度標準曲線を用いてTrolox濃度を換算した。その換算値より、Troloxのラジカル消去能標準曲線からラジカル消去率を算出した。 抗酸化作用の実験結果を図17に示す。図17中、縦軸はDPPHラジカル消去率を%として表示し、横軸の分画1〜分画4のサンプルは、実施例3で調製したそれぞれの分画1〜4に対応する。また、ビワ茶は実施例1で得られたねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末である。 図17に示すように、分画2、分画3及び分画4に強い抗酸化作用があることが分かる。その程度は、実施例1で得られたねじめびわ茶熱湯抽出液の効果より大きいことがわかる。また、分画3の抗酸化作用は、実施例1で得られたねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末に比べ1.6倍程度強いことが分かる。(2)ねじめびわ茶の粗製分画物の調製 実施例3によって得られた分画3の乾燥粉末5.0gを秤量し、これを適量の水に溶解した後、オープンカラムクロマトグラフィーに付した。オープンカラムクロマトグラフィーの条件は、固定相にクロマトレックスODS(Chromatorex ODS、富士シリシア化学株式会社、Fuji Silysia Chemical LTD.)を用い、移動層にA液として蒸留水(H2O)、B液としてメタノール(MeOH)を用い、A液からB液の含量を増やすことによって各種クロマトグラフィーを行った。具体的には、溶媒を、80%H2O−20%MeOH(400ml)、70%H2O−30%MeOH(400ml)、60%H2O−40%MeOH(400ml)、50%H2O−50%MeOH(400ml)、40%H2O−60%MeOH(400ml)、30%H2O−70%MeOH(400ml)、20%H2O−80%MeOH(400ml)、10%H2O−90%MeOH(400ml)、100%MeOH(400ml)で溶出させ、各400ml溶出画分を分取し、3−1から3−9までの計9個の分画を得た。各分画の収量と収率は次のとおりであった。分画3−1(0.19g、3.9%)、分画3−2(0.28g、5.7%)、分画3−3(0.57g、11.6%)、分画3−4(0.85g、17.3%)、分画3−5(0.64g、13.1%)、分画3−6(0.79g、16.1%)、分画3−7(0.54g、11.0%)、分画3−8(0.78g、15.9%)、分画3−9(0.17g、3.5%)。(3)実施例3の分画3から更に得られた分画3−1〜3−9の抗酸化作用の実験 抗酸化作用の実験は、以下の文献に記載の方法を用いて行った(Harwat,K.S.M.et al.,Free Radical Res.,36:177−187,2002)。 サンプルは、上記(2)で得た9つの粗製分画物:分画3−1〜3−9をそれぞれ10μg/mlの濃度で調整したものと、コントロールとして実施例3で得られた分画3の乾燥粉末を10μg/mlの濃度で調整したものを用いた。 これらのサンプルを平底のプレート(96well)に加え、さらにDPPH(1,1−diphenyl−2−picrylhydrazyl、マイクロモーラーの濃度で調整したもの)を190μl加え、10秒間混合した後、遮光して30分間放置した。この反応後、各ウエルの反応溶液を、490nmの波長の吸光度を用いてマイクロプレートリーダーで測定し、その吸光度の値からTroloxの吸光度標準曲線を用いてTrolox濃度を換算した。その換算値より、Troloxのラジカル消去能標準曲線からラジカル消去率を算出した。 抗酸化作用の実験結果を図18に示す。図18中、縦軸にはDPPHラジカル消去率を%の値として表示し、横軸の3−1〜3−9のサンプルは、調製したそれぞれの分画3−1〜3−9に対応する。また、分画3は実施例3で調製した分画3である。 図18に示すように、分画3−1、3−2及び3−4に強い抗酸化作用があることが分かる。その程度は、実施例3で調製した分画3の効果より大きいことがわかる。特に、分画3−1の抗酸化作用は、分画3の乾燥粉末に比べ1.37倍程度強いことが分かる。[実施例6]ねじめびわ茶抽出物の高血圧抑制の効果(1)動物の準備 SHRラット(高血圧自然発症ラット)の雄(5週齢)を12匹(日本SLC社製)用いた。飼養試験には、下記の表2に示す割合となるように各材料を計量したものを混合し、これを蒸留水にて混練した後、凍結乾燥機にて乾燥させたものをコントロール用餌(当該餌を給餌したラットを本実施例では「コントロール群」という)として用いた。また、実施例1で得られた熱湯抽出液の乾燥粉末を0.2%となるようにコントロール用餌に加え、これをねじめびわ茶群用餌(当該餌を給餌したラットを本実施例では「ビワ茶群」という)として用いた。(2)ラットの血圧の測定 SHRラット(高血圧自然発症ラット)雄(5週齢)(日本SLC社製)を12匹用いて、血圧を測定した。これらラットをコントロール群(6匹)とビワ茶群(6匹)とに分け、コントロール群のラットにはコントロール用餌を自由摂取させた。また、ビワ茶群のラットにはねじめびわ茶群用餌を自由摂取させた。双方の群を、それぞれ50日間飼育した。 飼育期間中、飼料、飲水は自由摂食、自由飲水とした。また飼育室は23℃とし、12時間照明(7:00〜19:00)とした。 飼育終了後、各動物の血圧を測定するために、血圧測定装置として無加温型カフ式血圧測定器(室町機械(株))を用いた。 ラットの血圧測定の結果を図19に示す。図19は、飼育期間中の両群のラットの血圧推移を調べた結果である。図19中、白抜きの丸がコントロール群のラットの結果であり、黒塗りの丸がビワ茶群のラットの結果である。また、血圧(最大血圧)は一定時刻(午前中10時頃)より測定した。測定は各個体について平均10回繰り返し、その平均値で表記した。縦棒は標準誤差を示す。血圧測定の実験的な困難さとして、血圧の値は大変容易に変動し、ラットの精神状態、環境条件で極めて容易に変動することがあるので、実験はラットを出来るだけ落ち着かせ、静かな環境下で行った。 図19に示すように、スタート時にはコントロール群とビワ茶群の最大血圧の平均値はともに134mmHg程度であった。コントロール群の血圧は飼育期間の経過に伴って10日過ぎより上昇し、20日以降はかなり高めに推移した。それに対し、ビワ茶群は21日までほとんど上昇せず、特に21日ではコントロール群と有意差が認められた(P<0.05)。その後は実験日数の進展に伴って上昇していくが、コントロール群に較べて10mmHg以下低い血圧を示し、ねじめびわ茶抽出物の高血圧を抑制する効果が認められた。この結果、ねじめびわ茶抽出物は血圧の上昇を抑制することがわかる。[実施例7]ねじめびわ茶の粗製分画物の癌細胞増殖抑制作用の効果(1)実施例3で調製した分画1〜4の癌細胞増殖抑制効果 ヒト急性前骨髄性白血病疾患細胞(HL−60細胞)の50%生存率は以下の文献記載の方法で測定した(Mosmann,T.,J.Immunol.Methods,65:55−63,1983)。HL−60細胞は、10%の牛胎児血清を含むRPMI1640培地を用いて培養した。実施例1で得たねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末と、実施例3で調製した分画1〜4を、0、25、50、75、100、125、150μg/mlの濃度で含むように、0.1%DMSO(ジメチルスルフォキシド)溶液に溶解し、HL−60細胞を6時間処理した。 処理後、細胞を遠心分離法により回収し、細胞溶解緩衝液により細胞膜を取り除き、RNA分解酵素によりRNAを分解し、さらにタンパク質分解酵素によりタンパク質を除去した。得られたDNA断片を2%アガロースゲル電気泳動法により分離し、染色後、UVトランスイルミネーターにより検出し、DNAの断片率を算出した。48時間後のHL−60細胞生存率に対する50%抑制濃度(IC50)を算出した。その結果を表3に示した。なお、表3における抽出物は、実施例1で得たねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末の結果である。 表3に示すように、ねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末に対して、分画2〜4は比較的強いHL−60細胞増殖抑制効果を有した。中でも、分画4は最も強いHL−60細胞増殖抑制効果を有することが分かる。(2)実施例5で調製した分画3−1〜3−9の癌細胞増殖抑制効果 上記(1)と同様の方法で、実施例5で調製した分画3−1〜3−9のHL−60細胞増殖抑制効果を検討した。 HL−60細胞の50%生存率は以下の文献記載の方法で測定した(Mosmann,T.,J.Immunol.Methods,65:55−63,1983)。HL−60細胞は、10%の牛胎児血清を含むRPMI1640培地を用いて培養した。実施例1で得たねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末と、実施例5で調製した分画3−1〜3−9を、0、25、50、75、100、125、150μg/mlの濃度で含むように、0.1%DMSO(ジメチルスルフォキシド)溶液に溶解し、HL−60細胞を6時間処理した。 処理後、細胞を遠心分離法により回収し、細胞溶解緩衝液により細胞膜を取り除き、RNA分解酵素によりRNAを分解し、さらにタンパク質分解酵素によりタンパク質を除去した。得られたDNA断片を2%アガロースゲル電気泳動法により分離し、染色後、UVトランスイルミネーターにより検出し、DNAの断片率を算出した。48時間後のHL−60細胞生存率に対する50%抑制濃度(IC50)を算出した。その結果を表4に示した。なお、ねじめびわ茶熱湯抽出液の乾燥粉末についての結果は、表3に示す結果である。 表4に示すように、分画3−1、3−2及び3−4は比較的強いHL−60細胞増殖抑制効果を有した。中でも、分画3−4は最も強いHL−60細胞増殖抑制効果を有することが分かる。[実施例8]ねじめびわ茶の粗製分画物の癌細胞アポトーシス誘導作用の効果(1)実施例3で調製した分画1〜4の癌細胞アポトーシス誘導効果 ヒト急性前骨髄性白血病疾患細胞(HL−60細胞)のDNA断片化については以下の文献記載の方法で測定した(Hou,D.X.et al.,Int.J.Oncol.,23:705−712,2003)。実施例3で調製した各分画2、分画3及び分画4を250、500、750μg/mlの3つの濃度に調整し、HL−60細胞を6時間処理し、細胞核からDNAを抽出した。得られたDNAについてアガロースゲル電気泳動を行い、その結果を図20に示した。 図20中、MはDNAマーカー、Cは濃度0μg/mlのコントロールを示す。この結果、分画3の500μg/mlと750μg/mlの濃度にDNAラダーが観察され、アポトーシスを誘導することが分かる。(2)実施例5で調製した分画3−1〜3−9の癌細胞アポトーシス誘導効果 上記(1)と同様の方法で、実施例5で調製した分画3−1〜3−9の癌細胞アポトーシス誘導効果を検討した。 HL−60細胞のDNA断片化については以下の文献記載の方法で測定した(Hou,D.X.et al.,Int.J.Oncol.,23:705−712,2003)。実施例5にて調製した各分画3−1〜3−9を500μg/mlの濃度に調整し、HL−60細胞を6時間処理し、細胞核からDNAを抽出した。得られたDNAについてアガロースゲル電気泳動を行い、その結果を図21に示した。 図21中、MはDNAマーカー、Cは濃度0μg/mlのコントロールを示す。この結果、分画3−1、3−2、3−4及び3−6にDNAラダーが観察され、アポトーシスを誘導することが分かる。特に、分画3−2と3−4には強いDNAラダーが観察され、アポトーシスを強く誘導することが分かる。[実施例9]ねじめびわ茶の粗製分画物の活性酸素種産生作用の効果(1)実施例3で調製した分画1〜4の活性酸素種産生効果 ヒト急性前骨髄性白血病疾患細胞(HL−60細胞)を2.0×106cells/mlで継代した。これをRPMI1640培地で4倍に希釈し、2.0×105cells/400μlとした。必要量は1wellあたり400μl細胞液であり、従って、1plateあたり20mlの細胞液を準備した。プレートを軽く振って細胞の偏りを防ぎながら、これを、37℃、5%CO2気流下で24時間培養した。 24時間の培養後、この培養液に、実施例3で調製した分画1〜4を500μg/mlの濃度になるように添加した。また、比較のために、実施例1で調製したねじめびわ茶熱湯抽出液を同様に添加した。これを37℃、5%CO2のインキュベーターで15分間培養した。培養後、それぞれのwellにMTT液(5mM DCFH−DA:DCFH−DAの1mgをエタノール413μlで溶かしたもの;DCFA−DA、ジクロロフルオレシン2酢酸)を1.6μlずつ分注し、引き続き、37℃、5%CO2気流下のインキュベーターでさらに30分間培養した。 培養後、各wellをマイクロプレートリーダー(excitation波長:485nm,emission波長:530nm)により測定し、コントロールと比較して、吸光度からHL−60細胞内で産生された活性酸素の量を算出した。その結果を図22に示す。なお、コントロールはHL−60細胞のみで試験を行った場合の結果である。 図22中、コントロールは対照を示す。また、図22において、抽出物は、実施例1で調製したねじめびわ茶熱湯抽出液である。この結果、分画3はHL−60細胞内に対して強い活性酸素産生能を有することが分かる。(2)実施例5で調製した分画3−1〜3−9の活性酸素種産生効果 上記(1)と同様の方法で、実施例5で調製した分画3−1〜3−9の活性酸素種産生効果を検討した。 HL−60細胞を2.0×106cells/mlで継代した。これをRPMI1640培地で4倍に希釈し、2.0×105cells/400μlとした。必要量は1wellあたり400μl細胞液であり、従って、1plateあたり20mlの細胞液を準備した。プレートを軽く振って細胞の偏りを防ぎながら、これを、37℃、5%CO2気流下で24時間培養した。 24時間の培養後、この培養液に、実施例5で調製した分画3−1〜3−9を500μg/mlの濃度になるように添加した。これを37℃、5%CO2のインキュベーターで15分間培養した。培養後、それぞれのwellにMTT液(5mM DCFH−DA:DCFH−DAの1mgをエタノール413μlで溶かしたもの;DCFA−DA、ジクロロフルオレシン2酢酸)を1.6μlずつ分注し、引き続き、37℃、5%CO2気流下のインキュベーターでさらに30分間培養した。 培養後、各wellをマイクロプレートリーダー(excitation波長:485nm,emission波長:530nm)により測定し、コントロールと比較して、吸光度からHL−60細胞内で産生された活性酸素の量を算出した。その結果を図23に示す。なお、コントロールはHL−60細胞のみで試験を行った場合の結果である。 図23中、コントロールは対照を示す。この結果、分画3−1、3−2、3−3及び3−5がコントロールより強い活性酸素産生能を有することが分かる。特に、分画3−1はHL−60細胞内に対してコントロールと比較して約2.6倍程度強い活性酸素産生能を有することが分かる。 本発明によれば、抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び/又は抗酸化作用を有し、ビワ葉又はビワ茶の抽出物又は精製物を含有する飲食品又は医薬品が提供される。本発明に係る飲食品(特に、健康補助食品もしくは特定保健用食品)又は医薬品は、抗高脂血症作用、高血圧抑制作用、癌細胞増殖抑制作用、癌細胞アポトーシス誘導作用、活性酸素種産生作用、高血糖降下作用及び/又は抗酸化作用を有することから、抗高脂血症用剤、高血圧抑制剤、癌細胞増殖抑制剤、癌細胞アポトーシス誘導剤、活性酸素種産生剤、高血糖降下剤、抗酸化剤として使用できる。 本明細書で引用した全ての刊行物、特許及び特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。 (a) ねじめびわ茶を熱水抽出に供し、抽出物を得る工程であって、該抽出物が濃縮物又は乾燥粉末である、前記工程と、 (b) 工程(a)の熱水抽出物をカラムクロマトグラフィーに供し、30%エタノール水溶液、70%エタノール水溶液又は1:1の比率で水とアセトンとを含有する混合液を用いた抽出により分画物を得る工程と、を含む、癌細胞増殖抑制剤又は癌細胞アポトーシス誘導剤の製造方法。 (a) ねじめびわ茶を熱水抽出に供し、抽出物を得る工程であって、該抽出物が濃縮物又は乾燥粉末である、前記工程と、 (b) 工程(a)の熱水抽出物をカラムクロマトグラフィーに供し、70%エタノール水溶液を用いた抽出により分画物を得る工程と、 (c) 工程(b)の分画物をカラムクロマトグラフィーに供し、80%:20%、70%:30%又は50%:50%の割合で水とメタノールとを含有する混合液を用いた抽出により分画物を得る工程と、を含む、癌細胞増殖抑制剤又は癌細胞アポトーシス誘導剤の製造方法。 分画物がクロロゲン酸、クエルセチン3-サンブビオシド、メチルクロロゲン酸、ケンフェロール3-ラムノシド、クエルセチン3-ラムノシド、2α-ヒドロキシウルソール酸及びウルソール酸から成る群から選択される1以上の化合物を含まないことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。 請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法により得られた分画物を有効成分として含有する癌細胞増殖抑制剤又は癌細胞アポトーシス誘導剤。 癌細胞がヒト急性前骨髄性白血病疾患細胞であることを特徴とする、請求項4記載の癌細胞増殖抑制剤又は癌細胞アポトーシス誘導剤。


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