生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_細胞周期を知らせる細胞系
出願番号:2007522033
年次:2008
IPC分類:C12N 5/10,C12Q 1/02,C12N 15/09


特許情報キャッシュ

ハンコック,スーザン スタッブス,サイモン トーマス,ニコラス ファニング,エレン グー,チンミン JP 2008507265 公表特許公報(A) 20080313 2007522033 20050722 細胞周期を知らせる細胞系 ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド 398048914 ヴァンダービルト ユニバーシティ 591219773 VANDERBILT UNIVERSITY 松本 研一 100093908 小倉 博 100105588 黒川 俊久 100129779 ハンコック,スーザン スタッブス,サイモン トーマス,ニコラス ファニング,エレン グー,チンミン US 60/590,814 20040723 US 60/645,915 20050121 US 60/645,968 20050121 C12N 5/10 20060101AFI20080215BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20080215BHJP C12N 15/09 20060101ALI20080215BHJP JPC12N5/00 BC12Q1/02C12N15/00 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW GB2005002890 20050722 WO2006008547 20060126 15 20070320 4B024 4B063 4B065 4B024AA11 4B024CA04 4B024DA02 4B024EA04 4B024FA02 4B024FA10 4B024GA11 4B024HA11 4B063QA01 4B063QA05 4B063QA18 4B063QQ08 4B063QQ13 4B063QR33 4B063QR59 4B063QR60 4B063QR66 4B063QR77 4B063QR80 4B063QS05 4B063QS36 4B063QX02 4B065AA90X 4B065AA90Y 4B065AB01 4B065BA01 4B065CA46 本発明は、生細胞の細胞周期位置を決定するための非破壊的で動的な手段に関する。 真核細胞分裂は、G1、S、G2及びM期と呼ばれる連続した時期を含む高度に調節された細胞周期に沿って進行する。2つの遷移期G1及びG2は、細胞DNAが複製されるDNA合成(S)期と、各細胞が分裂して2つの娘細胞を形成する有糸分裂(M)期の間に介在する。 細胞周期又は細胞周期制御の破壊の結果、増殖制限細胞を、増殖の正常な制御に対して非応答性である高浸潤性細胞へと形質転換する複数の遺伝的変化から生じる、癌のような病態又は細胞異常が引き起こされうる。正常細胞の癌細胞への移行は、DNA複製及びDNA修復機構における正しい機能の喪失によって惹起されうる。分裂中の細胞はすべて、細胞周期チェックポイントとして知られる多くの制御機構の支配下にあり、これらが異常細胞を停止させるか又は破壊を誘発することによって遺伝的な完全性を維持する。細胞周期の進行及び制御の研究は、結果的に抗癌剤の設計に非常に重要なものである(Flatt PM and Pietenpol JA 2000 Drug Metab Rev 32(3−4):283−305; Buolamwini JK 2000 Current Pharmaceutical Design 6, 379−392)。 細胞周期の状態の正確な決定は、細胞周期に影響するか又は細胞周期位置に依存する細胞プロセスを研究するための重要な要件である。このような測定は、以下のような薬物スクリーニング用途で特に重要である。a)細胞周期の進行を直接的又は間接的に修飾する薬物が、例えば、抗癌治療薬として望まれる場合;b)薬物が、細胞周期の進行に対する望ましくない効果についてチェックされるべき場合;c)ある薬剤が、細胞周期の特定の期で細胞に対して活性又は不活性であることが疑われる場合。 従来、細胞集団に対する細胞周期の状態は、細胞核のDNA含量を染色する蛍光染料を用い、フローサイトメトリーによって決定されている(Barlogie B et al. Cancer Res. 1983 43(9):3982−97)。フローサイトメトリーは、細胞のDNA含量に対する定量的な情報をもたらし、従って細胞周期のG1、S及びG2+M期にある細胞の相対数又は比率の決定が可能になる。しかし、本分析は、破壊的な非動的プロセスであり、経時的に細胞周期の状態を決定するには集団を連続的にサンプリングする必要がある。さらに、標準フローサイトメトリー技術は、試料中の細胞集団全体のみを調べるもので、個々の細胞についてのデータが得られず、このため分析試料の中に存在しうる異なる細胞型の細胞周期の状態の研究が不可能になっている。フローサイトメトリーは従って、一集団内の細胞の全体的な細胞周期分布を調べるのには好適であるが、経時的に個々の細胞の正確な細胞周期の状態をモニターするのに使用することはできない。 従って、細胞周期に対して望ましいか又は望ましくない効果を有する薬剤の効果を研究するのに必要とされるのは、同じ細胞を経時的に繰り返して調べることを可能とする非破壊的な方法によって、単一の生細胞の細胞周期の状態を正確に決定する方法である。さらに、細胞周期位置が、上述のようなDNA含有量、又はその他の細胞周期位置の間接マーカーを通じて間接的に決定されるのでなく、細胞周期制御成分によって直接制御されるプローブから決定されることが好都合であろう。 細胞増殖状態を分析又は活用する手順をもたらす細胞周期制御機構の特定の成分を利用する、数多くの方法が報告されている。 米国特許第6048693号には、細胞周期調節タンパク質に影響を及ぼす化合物をスクリーニングするための方法が記載されており、この方法では、レポーター遺伝子の発現が、サイクリン又はその他の細胞周期制御タンパク質による作用を受ける制御エレメントに結び付けられる。この方法において、レポーター遺伝子産物の一時的な発現が細胞周期特異的に駆動され、1以上の細胞周期制御成分に作用する化合物が発現レベルを増減しうる。そのアッセイシステムは、レポーター遺伝子産物の破壊に備えたエレメントも、レポーター遺伝子から生じる何らかのシグナルの破壊に備えたエレメントも含んでいないので、その方法ではアッセイ中の何れの細胞の細胞周期位置についても情報を与えることができず、細胞周期制御機構の一般摂動について知らせるにすぎないものである。 国際公開第03/031612号には、細胞周期に特異的な発現制御エレメント及び破壊制御エレメントによる哺乳類生細胞の細胞周期位置を決定するためのDNAレポーター構築物、及び方法が記載されている。一実施形態では、細胞周期のG2及びM期にわたる細胞性移行を知らせる緑色蛍光タンパク質(GFP)分子の発現及び分解を制御するために、細胞周期制御タンパク質サイクリンB1の充分に特徴付けされたエレメントが使用される。この構築物はサイクリンB1プロモーターの制御下にあるので、G1及びSの間はGFP発現がなく、このため細胞周期のこれらの期にある細胞の分析が妨げられる。 ヒトヘリカーゼB相同体が報告されて、特徴付けがなされている(Taneja et al., J. Biol. Chem., (2002), 277, 40853−40861)。この報告では、G1/S移行を促進するにはG1の間にヘリカーゼ活性が必要であることが示されている。 Gu他(Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332)は、リン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)と命名されたヘリカーゼB遺伝子の小さなC末端領域が、Cdk2/サイクリンEによってリン酸化され、NLS及びNES配列を含むことを示している。Gu他(Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332)は、CMVプロモーターから発現されるEGFP−βGal−PSLD融合体(融合タンパク質全体のサイズが完全体のヘリカーゼBと同様になるよう、ベータ−ガラクトシダーゼ(βGal)が不活性基として構築物に含められたもの)をコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトされた細胞の研究を行った。G1の細胞は、主に核でEGFPシグナルを呈したが、細胞周期の他の期の細胞は、主に細胞質のEGFPシグナルを呈した。これらの研究者らは、PSLDが細胞周期のG1/S期移行のあたりで、核から細胞質へとレポーターの転位置を指向すると結論付けた。米国特許第6048693号明細書国際公開第03/031612号パンフレットFlatt PM and Pietenpol JA 2000 Drug Metab Rev 32(3−4):283−305Buolamwini JK 2000 Current Pharmaceutical Design 6, 379−392Barlogie B et al. Cancer Res. 1983 43(9):3982−97Taneja et al., J. Biol. Chem., (2002), 277, 40853−40861Gu et al., Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332 細胞周期制御機構の成分を用いる以上の方法のいずれも、全細胞周期にわたって、個々の細胞又は細胞の一集団の細胞周期の状態を容易かつ正確に決定するための手段を提供するものではない。従って、細胞周期調節機構の主要なエレメントを、規定の組み合わせで使用し、二重の独立した細胞性レポーターを駆動して、個々の生細胞における細胞周期のすべての期での細胞周期の状態を決定する新規手段を提供する方法を開発し、本明細書に記載するものである。 本発明の第一の特徴によれば、 i)1以上の細胞周期依存性の位置制御エレメントに連結した第一の検出可能な生細胞レポーター分子を含む第一ポリペプチド構築物であって、その構築物の哺乳類細胞内での位置が、細胞周期位置を示すものである構築物;及び ii)破壊制御エレメントに連結した第二の検出可能な生細胞レポーター分子を含む第二ポリペプチド構築物であって、当該第二のレポーターは、哺乳類細胞において細胞周期の所定の位置で検出可能なものである構築物、を発現する安定細胞系が提供され、 第一及び第二のレポーター分子は互いに識別可能であり、安定細胞系は、細胞周期位置を決定するために使用できる。 本発明は、細胞周期成分の一時的で空間的な発現、局在化、及び破壊とのレポーターシグナルの直接的な連関により、検出可能なレポーター分子の細胞周期特異的活性化、転位置、又は破壊を呈するポリペプチド構築物を含む細胞系を提供する。これにより、細胞周期状態の決定の精度が大幅に改善され、個々の細胞において細胞周期進行を継続的にモニターできるようになる。さらに、本発明者らは、これらの主要な制御エレメントが、細胞周期制御機構の機能性エレメントから単離及び抽出できることを発見しており、動的に調節され、しかも内在性細胞周期制御成分と連携するが別々に作動する細胞周期レポーターを設計することができ、このため、細胞周期の自然な進行に影響を及ぼしたり妨げたりすることなく、細胞周期の状態をモニターするための手段を提供することが可能になる。 好適には、細胞周期依存性の位置制御エレメントは、Rag2、Chaf1B、Fen1、PPP1R2、ヘリカーゼB、sgk、CDC6、又はそれらの中に存在するヘリカーゼBのC末端の特殊な制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)のようなモチーフからなるペプチドの群から選択される。 好適には、破壊制御エレメントはサイクリンB1 D−boxを含む。 好適には、第一及び第二生細胞レポーター分子は、蛍光タンパク質及び酵素レポーターからなる群から選択される。 好ましくは、前記蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Emerald、及びJ−Redからなる群から選択される。好ましくは、前記酵素レポーターはハロ−タグ(Promega社)である. 好ましくは、第一のレポーター分子がEGFPで第二のレポーター分子がJ−Redであり、又は第一のレポーター分子がJ−Redで第二のレポーター分子がEGFPである。さらに好ましくは、第一のレポーター分子はJ−Redであって第二のレポーター分子はEGFPである。 本発明の好ましい一実施形態において、第一ポリペプチド構築物は、赤色蛍光タンパク質(RFP)に結合したヘリカーゼBのC末端の空間制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)を含み、第二ポリペプチド構築物は、サイクリンB1プロモーターの制御下に発現される緑色蛍光タンパク質(GFP)に結合したサイクリンB1のアミノ末端の171アミノ酸を含む。 哺乳類細胞で発現される場合、これらの構築物は、GFP構築物の細胞周期特異的発現及び破壊と、RFP構築物の転位置とを呈し、GFP構築物は内在性のサイクリンB1の発現及び分解と平行し、そしてRFP構築物は内在性のヘリカーゼBの転位置と平行する。よって、GFP及びRFP双方の蛍光強度及び局在化の測定により、細胞周期のG1、S、G2及びM期にある細胞の同定が可能となる。一集団の中の各細胞の蛍光特性の経時的な分析の結果、各細胞の細胞周期の状態についての動的な情報が得られる。 本発明の更なる特徴において、培養細胞の細胞周期分布を分析して、細胞周期分布に対する被検薬剤の効果を決定するための方法が提供される。「被検薬剤」なる用語は、電磁放射線の一形態として、又は化学成分として解釈されるべきである。好ましくは、被検薬剤は、薬物、核酸、ホルモン、タンパク質、及びペプチドからなる群から選択される化学成分である。被検薬剤は、細胞に外因的に適用されてもよいし、又は研究対象の細胞において発現されるペプチド若しくはタンパク質であってもよい。 従って、本発明の第二の特徴では、哺乳類細胞の細胞周期位置を決定するための方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定する工程を含む。 本発明の第三の特徴では、哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定する工程を含み、ここで、前記被検薬剤の非存在下及び存在下に測定された発生シグナルの差が、細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果の指標となる。 本発明の第四の特徴では、哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し; c)被検薬剤の存在下に発生するシグナルを、被検薬剤の非存在下に発生するシグナルに対する既知の数値と比較する工程を含み、 ここで、被検薬剤の存在下に測定された発生シグナルと、被検薬剤の非存在下での前記既知の数値との差が、細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果の指標となる。 本発明のさらに別の特徴では、細胞周期位置を知らせる細胞プロセスを細胞内でモニターする手段によって、細胞プロセスの細胞周期依存性を決定するための方法が提供される。 そこで、本発明の第五の特徴によれば、被検薬剤に応答して変動することが知られているプロセスレポーターによってモニターされる細胞プロセスに対する哺乳類細胞周期の効果を決定する方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定し;並びに c)プロセスレポーターが発生するシグナルをモニターする工程を含み、 ここで、プロセスレポーターは、第一及び第二のレポーター分子から識別可能であり、 工程b)で決定された細胞周期位置と、プロセスレポーターが発生するシグナルとの関係は、細胞プロセスが細胞周期依存性であるか否かの指標となる。 図面の簡単な説明 配列番号1は、PSLD−JRED融合タンパク質のアミノ酸配列である。 配列番号2は、pCORON1022−JRed−C1−PSLDの核酸配列である。 配列番号3は、pCORON1020−JRed−C1−PSLDの核酸配列である。 図1は、pCORON1002−EGFP−C1−PSLDのベクターマップである。 図2は、pCORON1022−JRed−C1−PSLD(図2a)及びpCORON1020−JRed−C1−PSLD(図2b)のベクターマップである。 図3は、IN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare社)画像化システムを用いた、サイクリンB1−EGFP及びPSLD−JRed蛍光タンパク質を発現するU2OS細胞の画像である。細胞は、文字/数字の「S」、「G1」及び「G2」によって表記するように、それらの細胞周期の変動する段階にあることがわかる。Hoechst染料の存在は図3aで青色蛍光によって示され、図3bではG2/MサイクリンB1緑色蛍光タンパク質レポーターの発現、図3cではG1/S PSLD赤色蛍光タンパク質レポーターの発現を示す。 PSLD−RFP構築物 全長のヒトDNAヘリカーゼB(HDHB)cDNAを、BglII/NotI断片(Taneja et al., J. Biol. Chem., (2002), 277, 40853−40861)として、pEGFP−C1ベクター(クロンテック)のNotI部位に挿入した。390塩基対のPSLD領域のPCR増幅と、PSLD断片への5’NheI及び3’SalI制限酵素部位の導入を使用して、ベクターpCORON1002−EGFP−C1(GE Healthcare社)へサブクローニングした。この結果得られた6704塩基対のDNA構築物pCORON1002−EGFP−C1−PSLD(図1)は、ユビキチンCプロモーター、細菌アンピシリン抵抗性遺伝子、及び哺乳類ネオマイシン抵抗性遺伝子を含んでいる。このベクターの更なる修飾を、標準PCR及びクローニング技術(Sambrook, J. et al (1989))を用いて行い、EGFPを蛍光タンパク質J−Red(Evrogen社)に置換して、プラスミドをネオマイシン抵抗性からハイグロマイシン抵抗性に変換させ(図2a)、またユビキチンCプロモーターをCMV IE/プロモーターに置換した(図2b)。 二重構築安定細胞系 サイクリンB1−EGFP細胞周期レポーター(国際公開第03/031612号に記載の通りであり、Amersham Biosciences UK Limited/GE Healthcare Biosciences社から製品コード番号25−80−10「G2M細胞周期フェーズマーカー」で供給されている)を安定に発現しているU2OS細胞系を、供給業者の説明書に従って培養した。製造業者の説明書に従ってFugene(Roche社)を用い、PSLD−RFP融合タンパク質(配列番号1)をコードするプラスミド(図2a及び2b)で細胞をトランスフェクトした。細胞をハイグロマイシン(125μg/ml)及びネオマイシン(500μg/ml)選択下に置き、生存クローンを更なる増殖用に選択した。 G1/S及びG2/Mセンサを発現している安定細胞系の画像化 サイクリンB1−EGFP及びPSLD−J Red蛍光融合タンパク質を発現している安定なU2OS細胞系を、96ウェルプレートにおいて、10%血清を追加したMcCoys培地中で標準組織培養条件下に生育した。細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、Hoechstで染色して、青色(Hoechst)、緑色(サイクリンB1−EGFP)及び赤色(PSLD−J Red)蛍光に対する適切な励起及び発光フィルターを備えたINセルアナライザー1000(GE Healthcare社)を用いて画像化した。 実施例1 サイクリンB1−EGFP及びPSLD−J Redを発現している安定細胞系の画像(図3)で、細胞周期の異なる期の細胞間で、緑色及び赤色融合タンパク質の差次的な発現及び局在化が示される。各々の細胞の細胞質及び核内の緑色及び赤色蛍光融合タンパク質の有無の決定によって、以下のスキームに従い細胞周期位置を指摘することが可能になった。 1以上の細胞周期依存性の位置制御エレメントに連結した第一の検出可能な生細胞レポーター分子を含むポリペプチド構築物であって、その構築物の哺乳類細胞内での位置が、細胞周期位置を示すものである構築物を発現している安定細胞系の生産に関連する実験の詳細は、「細胞周期フェーズマーカー」の名称の、出願人による同時係属米国仮特許出願第US60/645968号に記載されており、これを引用することによりその開示全体を本明細書で援用する。 以上に記載したのは本発明の例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の例証的ないくつかの実施形態を記載しているが、当業者であれば、本発明の新規教示及び利点を実質的に逸脱することなく、これら例証的な実施形態に多くの修飾を施すことが可能であると容易に理解するであろう。よって、このような修飾のすべてが、特許請求の範囲で定義した本発明の範囲に含まれることを意図する。従って、以上に記載したのは本発明の例示であり、開示された具体的な実施形態に限定されるものと解釈されるべきでなく、また開示された実施形態への修正や、その他の実施形態が、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれるように意図されることは、理解されるべきである。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物もその中に含まれる。pCORON1002−EGFP−C1−PSLDのベクターマップ。pCORON1022−JRed−C1−PSLD(図2a)及びpCORON1020−JRed−C1−PSLD(図2b)のベクターマップ。IN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare社)画像化システムを用いた、サイクリンB1−EGFP及びPSLD−JRed蛍光タンパク質を発現するU2OS細胞の画像。細胞は、文字/数字の「S」、「G1」及び「G2」によって表記するように、それらの細胞周期の変動する段階にあることがわかる。Hoechst染料の存在は図3aで青色蛍光によって示され、図3bではG2/MサイクリンB1緑色蛍光タンパク質レポーターの発現、図3cではG1/S PSLD赤色蛍光タンパク質レポーターの発現を示す。細胞周期位置の決定に使用できる安定細胞系であって、当該安定細系が、 i)1以上の細胞周期依存性の位置制御エレメントに第一の検出可能な生細胞レポーター分子を連結してなる第一ポリペプチド構築物であって、哺乳類細胞内での位置が、細胞周期位置の指標となる第一ポリペプチド構築物と、 ii)破壊制御エレメントに第二の検出可能な生細胞レポーター分子を連結してなる第二ポリペプチド構築物であって、第二のレポーターが哺乳類細胞内で細胞周期の所定位置で検出できる第二ポリペプチド構築物と、を発現し、第一及び第二のレポーター分子が互いに識別可能である、安定細胞系。前記細胞周期依存性の位置制御エレメントが、Rag2、Chaf1B、Fen1、PPP1R2、ヘリカーゼB、sgk、CDC6、又はそれらの中に存在するヘリカーゼBのC末端の特殊制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)のようなモチーフからなるペプチドの群から選択される、請求項1記載の安定細胞系。破壊制御エレメントがサイクリンB1 D−boxを含む、請求項1又は請求項2記載の安定細胞系。第一及び第二の生細胞レポーター分子が蛍光タンパク質及び酵素レポーターからなる群から選択される、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の安定細胞系。前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Emerald及びJ−Redからなる群から選択される、請求項4記載の安定細胞系。第一のレポーター分子がEGFPであって第二のレポーター分子がJ−Redであるか、或いは第一のレポーター分子がJ−Redであって第二のレポーター分子がEGFPである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の安定細胞系。第一ポリペプチド構築物が、赤色蛍光タンパク質(RFP)に結合したヘリカーゼBのC末端の空間制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)を含み、第二ポリペプチド構築物が、サイクリンB1プロモーターの制御下に発現される緑色蛍光タンパク質(GFP)に結合したサイクリンB1のアミノ末端の171アミノ酸を含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の安定細胞系。哺乳類細胞の細胞周期位置を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定する工程を含む方法。哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定する工程を含み、前記被検薬剤の非存在下及び存在下で測定された発生シグナルの差が、前記細胞の細胞周期位置に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し、 c)前記被検薬剤の存在下で発生するシグナルを、前記被検薬剤の非存在下で発生するシグナルの既知の数値と比較する工程を含み、 前記被検薬剤の存在下で測定された発生シグナルと、前記被検薬剤の非存在下での前記既知の数値との差が、前記細胞の細胞周期位置に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。被検薬剤に応答して変動することが知られているプロセスレポーターによってモニターされる細胞プロセスに対する哺乳類細胞周期の効果を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し、 c)前記プロセスレポーターが発生するシグナルをモニターする工程を含み、 前記プロセスレポーターは、第一及び第二のレポーター分子から識別可能であり、 工程b)で決定された細胞周期位置と、前記プロセスレポーターが発生するシグナルとの関係は、前記細胞プロセスが細胞周期依存性であるか否かの指標となる方法。 【課題】細胞周期調節機構の主要なエレメントを、規定の組み合わせで使用し、二重の独立した細胞性レポーターを駆動して、個々の生細胞における細胞周期のすべての期での細胞周期の状態を決定する新規手段を提供すること。【解決手段】本発明は、生細胞の細胞周期位置を決定するための非破壊的で動的な手段に関する。本発明は、細胞周期位置を決定するのに使用することができる安定細胞系を、細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を測定するための方法と共に提供する。【選択図】図1 配列表


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特許公報(B2)_細胞周期を知らせる細胞系

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_細胞周期を知らせる細胞系
出願番号:2007522033
年次:2012
IPC分類:C12N 5/10,C12Q 1/02,C12N 15/09


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ハンコック,スーザン スタッブス,サイモン トーマス,ニコラス ファニング,エレン グー,チンミン JP 5080252 特許公報(B2) 20120907 2007522033 20050722 細胞周期を知らせる細胞系 ジーイー・ヘルスケア・ユーケイ・リミテッド 398048914 ヴァンダービルト ユニバーシティ 591219773 VANDERBILT UNIVERSITY 荒川 聡志 100137545 小倉 博 100105588 黒川 俊久 100129779 ハンコック,スーザン スタッブス,サイモン トーマス,ニコラス ファニング,エレン グー,チンミン US 60/590,814 20040723 US 60/645,915 20050121 US 60/645,968 20050121 20121121 C12N 5/10 20060101AFI20121101BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20121101BHJP C12N 15/09 20060101ALI20121101BHJP JPC12N5/00 101C12Q1/02C12N15/00 A C12N 5/10 C12N 15/09 C12Q 1/02 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) PubMed 国際公開第2003/031612(WO,A1) Mol. Biol. Cell.,2004年,Vol.15, No.7,pp.3320-3332 8 GB2005002890 20050722 WO2006008547 20060126 2008507265 20080313 12 20080715 西村 亜希子 本発明は、生細胞の細胞周期位置を決定するための非破壊的で動的な手段に関する。 真核細胞分裂は、G1、S、G2及びM期と呼ばれる連続した時期を含む高度に調節された細胞周期に沿って進行する。2つの遷移期G1及びG2は、細胞DNAが複製されるDNA合成(S)期と、各細胞が分裂して2つの娘細胞を形成する有糸分裂(M)期の間に介在する。 細胞周期又は細胞周期制御の破壊の結果、増殖制限細胞を、増殖の正常な制御に対して非応答性である高浸潤性細胞へと形質転換する複数の遺伝的変化から生じる、癌のような病態又は細胞異常が引き起こされうる。正常細胞の癌細胞への移行は、DNA複製及びDNA修復機構における正しい機能の喪失によって惹起されうる。分裂中の細胞はすべて、細胞周期チェックポイントとして知られる多くの制御機構の支配下にあり、これらが異常細胞を停止させるか又は破壊を誘発することによって遺伝的な完全性を維持する。細胞周期の進行及び制御の研究は、結果的に抗癌剤の設計に非常に重要なものである(Flatt PM and Pietenpol JA 2000 Drug Metab Rev 32(3−4):283−305; Buolamwini JK 2000 Current Pharmaceutical Design 6, 379−392)。 細胞周期の状態の正確な決定は、細胞周期に影響するか又は細胞周期位置に依存する細胞プロセスを研究するための重要な要件である。このような測定は、以下のような薬物スクリーニング用途で特に重要である。a)細胞周期の進行を直接的又は間接的に修飾する薬物が、例えば、抗癌治療薬として望まれる場合;b)薬物が、細胞周期の進行に対する望ましくない効果についてチェックされるべき場合;c)ある薬剤が、細胞周期の特定の期で細胞に対して活性又は不活性であることが疑われる場合。 従来、細胞集団に対する細胞周期の状態は、細胞核のDNA含量を染色する蛍光染料を用い、フローサイトメトリーによって決定されている(Barlogie B et al. Cancer Res. 1983 43(9):3982−97)。フローサイトメトリーは、細胞のDNA含量に対する定量的な情報をもたらし、従って細胞周期のG1、S及びG2+M期にある細胞の相対数又は比率の決定が可能になる。しかし、本分析は、破壊的な非動的プロセスであり、経時的に細胞周期の状態を決定するには集団を連続的にサンプリングする必要がある。さらに、標準フローサイトメトリー技術は、試料中の細胞集団全体のみを調べるもので、個々の細胞についてのデータが得られず、このため分析試料の中に存在しうる異なる細胞型の細胞周期の状態の研究が不可能になっている。フローサイトメトリーは従って、一集団内の細胞の全体的な細胞周期分布を調べるのには好適であるが、経時的に個々の細胞の正確な細胞周期の状態をモニターするのに使用することはできない。 従って、細胞周期に対して望ましいか又は望ましくない効果を有する薬剤の効果を研究するのに必要とされるのは、同じ細胞を経時的に繰り返して調べることを可能とする非破壊的な方法によって、単一の生細胞の細胞周期の状態を正確に決定する方法である。さらに、細胞周期位置が、上述のようなDNA含有量、又はその他の細胞周期位置の間接マーカーを通じて間接的に決定されるのでなく、細胞周期制御成分によって直接制御されるプローブから決定されることが好都合であろう。 細胞増殖状態を分析又は活用する手順をもたらす細胞周期制御機構の特定の成分を利用する、数多くの方法が報告されている。 米国特許第6048693号には、細胞周期調節タンパク質に影響を及ぼす化合物をスクリーニングするための方法が記載されており、この方法では、レポーター遺伝子の発現が、サイクリン又はその他の細胞周期制御タンパク質による作用を受ける制御エレメントに結び付けられる。この方法において、レポーター遺伝子産物の一時的な発現が細胞周期特異的に駆動され、1以上の細胞周期制御成分に作用する化合物が発現レベルを増減しうる。そのアッセイシステムは、レポーター遺伝子産物の破壊に備えたエレメントも、レポーター遺伝子から生じる何らかのシグナルの破壊に備えたエレメントも含んでいないので、その方法ではアッセイ中の何れの細胞の細胞周期位置についても情報を与えることができず、細胞周期制御機構の一般摂動について知らせるにすぎないものである。 国際公開第03/031612号には、細胞周期に特異的な発現制御エレメント及び破壊制御エレメントによる哺乳類生細胞の細胞周期位置を決定するためのDNAレポーター構築物、及び方法が記載されている。一実施形態では、細胞周期のG2及びM期にわたる細胞性移行を知らせる緑色蛍光タンパク質(GFP)分子の発現及び分解を制御するために、細胞周期制御タンパク質サイクリンB1の充分に特徴付けされたエレメントが使用される。この構築物はサイクリンB1プロモーターの制御下にあるので、G1及びSの間はGFP発現がなく、このため細胞周期のこれらの期にある細胞の分析が妨げられる。 ヒトヘリカーゼB相同体が報告されて、特徴付けがなされている(Taneja et al., J. Biol. Chem., (2002), 277, 40853−40861)。この報告では、G1/S移行を促進するにはG1の間にヘリカーゼ活性が必要であることが示されている。 Gu他(Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332)は、リン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)と命名されたヘリカーゼB遺伝子の小さなC末端領域が、Cdk2/サイクリンEによってリン酸化され、NLS及びNES配列を含むことを示している。Gu他(Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332)は、CMVプロモーターから発現されるEGFP−βGal−PSLD融合体(融合タンパク質全体のサイズが完全体のヘリカーゼBと同様になるよう、ベータ−ガラクトシダーゼ(βGal)が不活性基として構築物に含められたもの)をコードするプラスミドで一過性にトランスフェクトされた細胞の研究を行った。G1の細胞は、主に核でEGFPシグナルを呈したが、細胞周期の他の期の細胞は、主に細胞質のEGFPシグナルを呈した。これらの研究者らは、PSLDが細胞周期のG1/S期移行のあたりで、核から細胞質へとレポーターの転位置を指向すると結論付けた。米国特許第6048693号明細書国際公開第03/031612号パンフレットFlatt PM and Pietenpol JA 2000 Drug Metab Rev 32(3−4):283−305Buolamwini JK 2000 Current Pharmaceutical Design 6, 379−392Barlogie B et al. Cancer Res. 1983 43(9):3982−97Taneja et al., J. Biol. Chem., (2002), 277, 40853−40861Gu et al., Mol. Biol. Cell., (2004), 15, 3320−3332 細胞周期制御機構の成分を用いる以上の方法のいずれも、全細胞周期にわたって、個々の細胞又は細胞の一集団の細胞周期の状態を容易かつ正確に決定するための手段を提供するものではない。従って、細胞周期調節機構の主要なエレメントを、規定の組み合わせで使用し、二重の独立した細胞性レポーターを駆動して、個々の生細胞における細胞周期のすべての期での細胞周期の状態を決定する新規手段を提供する方法を開発し、本明細書に記載するものである。 本発明の第一の特徴によれば、 i)1以上の細胞周期依存性の位置制御エレメントに連結した第一の検出可能な生細胞レポーター分子を含む第一ポリペプチド構築物であって、その構築物の哺乳類細胞内での位置が、細胞周期位置を示すものである構築物;及び ii)破壊制御エレメントに連結した第二の検出可能な生細胞レポーター分子を含む第二ポリペプチド構築物であって、当該第二のレポーターは、哺乳類細胞において細胞周期の所定の位置で検出可能なものである構築物、を発現する安定細胞系が提供され、 第一及び第二のレポーター分子は互いに識別可能であり、安定細胞系は、細胞周期位置を決定するために使用できる。 本発明は、細胞周期成分の一時的で空間的な発現、局在化、及び破壊とのレポーターシグナルの直接的な連関により、検出可能なレポーター分子の細胞周期特異的活性化、転位置、又は破壊を呈するポリペプチド構築物を含む細胞系を提供する。これにより、細胞周期状態の決定の精度が大幅に改善され、個々の細胞において細胞周期進行を継続的にモニターできるようになる。さらに、本発明者らは、これらの主要な制御エレメントが、細胞周期制御機構の機能性エレメントから単離及び抽出できることを発見しており、動的に調節され、しかも内在性細胞周期制御成分と連携するが別々に作動する細胞周期レポーターを設計することができ、このため、細胞周期の自然な進行に影響を及ぼしたり妨げたりすることなく、細胞周期の状態をモニターするための手段を提供することが可能になる。 好適には、細胞周期依存性の位置制御エレメントは、Rag2、Chaf1B、Fen1、PPP1R2、ヘリカーゼB、sgk、CDC6、又はそれらの中に存在するヘリカーゼBのC末端の特殊な制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)のようなモチーフからなるペプチドの群から選択される。 好適には、破壊制御エレメントはサイクリンB1 D−boxを含む。 好適には、第一及び第二生細胞レポーター分子は、蛍光タンパク質及び酵素レポーターからなる群から選択される。 好ましくは、前記蛍光タンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Emerald、及びJ−Redからなる群から選択される。好ましくは、前記酵素レポーターはハロ−タグ(Promega社)である. 好ましくは、第一のレポーター分子がEGFPで第二のレポーター分子がJ−Redであり、又は第一のレポーター分子がJ−Redで第二のレポーター分子がEGFPである。さらに好ましくは、第一のレポーター分子はJ−Redであって第二のレポーター分子はEGFPである。 本発明の好ましい一実施形態において、第一ポリペプチド構築物は、赤色蛍光タンパク質(RFP)に結合したヘリカーゼBのC末端の空間制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)を含み、第二ポリペプチド構築物は、サイクリンB1プロモーターの制御下に発現される緑色蛍光タンパク質(GFP)に結合したサイクリンB1のアミノ末端の171アミノ酸を含む。 哺乳類細胞で発現される場合、これらの構築物は、GFP構築物の細胞周期特異的発現及び破壊と、RFP構築物の転位置とを呈し、GFP構築物は内在性のサイクリンB1の発現及び分解と平行し、そしてRFP構築物は内在性のヘリカーゼBの転位置と平行する。よって、GFP及びRFP双方の蛍光強度及び局在化の測定により、細胞周期のG1、S、G2及びM期にある細胞の同定が可能となる。一集団の中の各細胞の蛍光特性の経時的な分析の結果、各細胞の細胞周期の状態についての動的な情報が得られる。 本発明の更なる特徴において、培養細胞の細胞周期分布を分析して、細胞周期分布に対する被検薬剤の効果を決定するための方法が提供される。「被検薬剤」なる用語は、電磁放射線の一形態として、又は化学成分として解釈されるべきである。好ましくは、被検薬剤は、薬物、核酸、ホルモン、タンパク質、及びペプチドからなる群から選択される化学成分である。被検薬剤は、細胞に外因的に適用されてもよいし、又は研究対象の細胞において発現されるペプチド若しくはタンパク質であってもよい。 従って、本発明の第二の特徴では、哺乳類細胞の細胞周期位置を決定するための方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定する工程を含む。 本発明の第三の特徴では、哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定する工程を含み、ここで、前記被検薬剤の非存在下及び存在下に測定された発生シグナルの差が、細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果の指標となる。 本発明の第四の特徴では、哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し; c)被検薬剤の存在下に発生するシグナルを、被検薬剤の非存在下に発生するシグナルに対する既知の数値と比較する工程を含み、 ここで、被検薬剤の存在下に測定された発生シグナルと、被検薬剤の非存在下での前記既知の数値との差が、細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果の指標となる。 本発明のさらに別の特徴では、細胞周期位置を知らせる細胞プロセスを細胞内でモニターする手段によって、細胞プロセスの細胞周期依存性を決定するための方法が提供される。 そこで、本発明の第五の特徴によれば、被検薬剤に応答して変動することが知られているプロセスレポーターによってモニターされる細胞プロセスに対する哺乳類細胞周期の効果を決定する方法が提供され、この方法は、 a)上述の安定細胞系を培養し; b)第一及び第二のレポーター分子が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定し;並びに c)プロセスレポーターが発生するシグナルをモニターする工程を含み、 ここで、プロセスレポーターは、第一及び第二のレポーター分子から識別可能であり、 工程b)で決定された細胞周期位置と、プロセスレポーターが発生するシグナルとの関係は、細胞プロセスが細胞周期依存性であるか否かの指標となる。 図面の簡単な説明 配列番号1は、PSLD−JRED融合タンパク質のアミノ酸配列である。 配列番号2は、pCORON1022−JRed−C1−PSLDの核酸配列である。 配列番号3は、pCORON1020−JRed−C1−PSLDの核酸配列である。 図1は、pCORON1002−EGFP−C1−PSLDのベクターマップである。 図2は、pCORON1022−JRed−C1−PSLD(図2a)及びpCORON1020−JRed−C1−PSLD(図2b)のベクターマップである。 図3は、IN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare社)画像化システムを用いた、サイクリンB1−EGFP及びPSLD−JRed蛍光タンパク質を発現するU2OS細胞の画像である。細胞は、文字/数字の「S」、「G1」及び「G2」によって表記するように、それらの細胞周期の変動する段階にあることがわかる。Hoechst染料の存在は図3aで青色蛍光によって示され、図3bではG2/MサイクリンB1緑色蛍光タンパク質レポーターの発現、図3cではG1/S PSLD赤色蛍光タンパク質レポーターの発現を示す。 PSLD−RFP構築物 全長のヒトDNAヘリカーゼB(HDHB)cDNAを、BglII/NotI断片(Taneja et al., J. Biol. Chem., (2002), 277, 40853−40861)として、pEGFP−C1ベクター(クロンテック)のNotI部位に挿入した。390塩基対のPSLD領域のPCR増幅と、PSLD断片への5’NheI及び3’SalI制限酵素部位の導入を使用して、ベクターpCORON1002−EGFP−C1(GE Healthcare社)へサブクローニングした。この結果得られた6704塩基対のDNA構築物pCORON1002−EGFP−C1−PSLD(図1)は、ユビキチンCプロモーター、細菌アンピシリン抵抗性遺伝子、及び哺乳類ネオマイシン抵抗性遺伝子を含んでいる。このベクターの更なる修飾を、標準PCR及びクローニング技術(Sambrook, J. et al (1989))を用いて行い、EGFPを蛍光タンパク質J−Red(Evrogen社)に置換して、プラスミドをネオマイシン抵抗性からハイグロマイシン抵抗性に変換させ(図2a)、またユビキチンCプロモーターをCMV IE/プロモーターに置換した(図2b)。 二重構築安定細胞系 サイクリンB1−EGFP細胞周期レポーター(国際公開第03/031612号に記載の通りであり、Amersham Biosciences UK Limited/GE Healthcare Biosciences社から製品コード番号25−80−10「G2M細胞周期フェーズマーカー」で供給されている)を安定に発現しているU2OS細胞系を、供給業者の説明書に従って培養した。製造業者の説明書に従ってFugene(Roche社)を用い、PSLD−RFP融合タンパク質(配列番号1)をコードするプラスミド(図2a及び2b)で細胞をトランスフェクトした。細胞をハイグロマイシン(125μg/ml)及びネオマイシン(500μg/ml)選択下に置き、生存クローンを更なる増殖用に選択した。 G1/S及びG2/Mセンサを発現している安定細胞系の画像化 サイクリンB1−EGFP及びPSLD−J Red蛍光融合タンパク質を発現している安定なU2OS細胞系を、96ウェルプレートにおいて、10%血清を追加したMcCoys培地中で標準組織培養条件下に生育した。細胞を2%パラホルムアルデヒドで固定し、Hoechstで染色して、青色(Hoechst)、緑色(サイクリンB1−EGFP)及び赤色(PSLD−J Red)蛍光に対する適切な励起及び発光フィルターを備えたINセルアナライザー1000(GE Healthcare社)を用いて画像化した。 実施例1 サイクリンB1−EGFP及びPSLD−J Redを発現している安定細胞系の画像(図3)で、細胞周期の異なる期の細胞間で、緑色及び赤色融合タンパク質の差次的な発現及び局在化が示される。各々の細胞の細胞質及び核内の緑色及び赤色蛍光融合タンパク質の有無の決定によって、以下のスキームに従い細胞周期位置を指摘することが可能になった。 1以上の細胞周期依存性の位置制御エレメントに連結した第一の検出可能な生細胞レポーター分子を含むポリペプチド構築物であって、その構築物の哺乳類細胞内での位置が、細胞周期位置を示すものである構築物を発現している安定細胞系の生産に関連する実験の詳細は、「細胞周期フェーズマーカー」の名称の、出願人による同時係属米国仮特許出願第US60/645968号に記載されており、これを引用することによりその開示全体を本明細書で援用する。 以上に記載したのは本発明の例示であり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の例証的ないくつかの実施形態を記載しているが、当業者であれば、本発明の新規教示及び利点を実質的に逸脱することなく、これら例証的な実施形態に多くの修飾を施すことが可能であると容易に理解するであろう。よって、このような修飾のすべてが、特許請求の範囲で定義した本発明の範囲に含まれることを意図する。従って、以上に記載したのは本発明の例示であり、開示された具体的な実施形態に限定されるものと解釈されるべきでなく、また開示された実施形態への修正や、その他の実施形態が、添付の特許請求の範囲の範囲に含まれるように意図されることは、理解されるべきである。本発明は、以下の特許請求の範囲によって定義され、特許請求の範囲の均等物もその中に含まれる。pCORON1002−EGFP−C1−PSLDのベクターマップ。pCORON1022−JRed−C1−PSLD(図2a)及びpCORON1020−JRed−C1−PSLD(図2b)のベクターマップ。IN Cell Analyzer 1000(GE Healthcare社)画像化システムを用いた、サイクリンB1−EGFP及びPSLD−JRed蛍光タンパク質を発現するU2OS細胞の画像。細胞は、文字/数字の「S」、「G1」及び「G2」によって表記するように、それらの細胞周期の変動する段階にあることがわかる。Hoechst染料の存在は図3aで青色蛍光によって示され、図3bではG2/MサイクリンB1緑色蛍光タンパク質レポーターの発現、図3cではG1/S PSLD赤色蛍光タンパク質レポーターの発現を示す。 細胞周期位置の決定に使用できる安定細胞系であって、当該安定細胞系が、 i)ヘリカーゼBのC末端の特殊制御領域のリン酸化依存性細胞内局在化ドメイン(PSLD)に第一の蛍光タンパク質を連結してなる第一ポリペプチド構築物であって、哺乳類細胞内での位置が、細胞周期位置の指標となる第一ポリペプチド構築物と、 ii)サイクリンB1プロモーターの制御下に発現される第二の蛍光タンパク質に結合したサイクリンB1のアミノ末端の171アミノ酸を含む第二ポリペプチド構築物であって、第二の蛍光タンパク質が哺乳類細胞内で細胞周期の所定位置で検出できる第二ポリペプチド構築物と、を発現し、第一及び第二の蛍光タンパク質分子が互いに識別可能である、安定細胞系。 前記蛍光タンパク質が緑色蛍光タンパク質(GFP)、増強型緑色蛍光タンパク質(EGFP)、Emerald及びJ−Redからなる群から選択される、請求項1記載の安定細胞系。 第一の蛍光タンパク質がEGFPであって第二の蛍光タンパク質がJ−Redであるか、或いは第一の蛍光タンパク質がJ−Redであって第二の蛍光タンパク質がEGFPである、請求項1又は請求項2記載の安定細胞系。 第一ポリペプチド構築物の第一の蛍光タンパク質が赤色蛍光タンパク質(RFP)であり、第二ポリペプチド構築物が、サイクリンB1プロモーターの制御下に発現される緑色蛍光タンパク質(GFP)に結合したサイクリンB1のアミノ末端の171アミノ酸を含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の安定細胞系。 哺乳類細胞の細胞周期位置を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二の蛍光タンパク質が発生するシグナルをモニターすることによって細胞周期位置を決定する工程を含む方法。 哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二の蛍光タンパク質が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定する工程を含み、前記被検薬剤の非存在下及び存在下で測定された発生シグナルの差が、前記細胞の細胞周期位置に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。 哺乳類細胞の細胞周期位置に対する被検薬剤の効果を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二の蛍光タンパク質が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し、 c)前記被検薬剤の存在下で発生するシグナルを、前記被検薬剤の非存在下で発生するシグナルの既知の数値と比較する工程を含み、 前記被検薬剤の存在下で測定された発生シグナルと、前記被検薬剤の非存在下での前記既知の数値との差が、前記細胞の細胞周期位置に対する前記被検薬剤の効果の指標となる方法。 被検薬剤に応答して変動することが知られているプロセスレポーターによってモニターされる細胞プロセスに対する哺乳類細胞周期の効果を決定する方法であって、 a)請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の安定細胞系を培養し、 b)第一及び第二の蛍光タンパク質が発生するシグナルをモニターすることによって、細胞周期位置を決定し、 c)前記プロセスレポーターが発生するシグナルをモニターする工程を含み、 前記プロセスレポーターは、第一及び第二の蛍光タンパク質から識別可能であり、 工程b)で決定された細胞周期位置と、前記プロセスレポーターが発生するシグナルとの関係は、前記細胞プロセスが細胞周期依存性であるか否かの指標となる方法。配列表


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