生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_血圧降下タンパク質加水分解物
出願番号:2007520831
年次:2008
IPC分類:C12P 21/06,A23L 1/305,A23J 3/34,A61K 38/55,A61P 43/00,A61P 9/12,A61P 3/02,A61P 3/04,A61P 3/10,A61P 5/50,A61P 25/00,A61P 3/06,A61K 9/08,A61K 9/107,A61K 9/06,A61K 9/48,A61K 9/20,A61K 38/17,C07K 5/117,C07K 5/103


特許情報キャッシュ

エデンズ, ルッポ ルース, デ, アンドレ レオナルダス ホーヴン, ヴァン デア, ロベルタス アントニウス ミジュンダート ディーン, フィリップス アントニウス JP 2008505653 公表特許公報(A) 20080228 2007520831 20050712 血圧降下タンパク質加水分解物 ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. 503220392 山田 行一 100094318 野田 雅一 100123995 清水 義憲 100128381 エデンズ, ルッポ ルース, デ, アンドレ レオナルダス ホーヴン, ヴァン デア, ロベルタス アントニウス ミジュンダート ディーン, フィリップス アントニウス EP 04077015.8 20040712 EP 04103593.2 20040727 EP 04106859.4 20041222 C12P 21/06 20060101AFI20080201BHJP A23L 1/305 20060101ALI20080201BHJP A23J 3/34 20060101ALI20080201BHJP A61K 38/55 20060101ALI20080201BHJP A61P 43/00 20060101ALI20080201BHJP A61P 9/12 20060101ALI20080201BHJP A61P 3/02 20060101ALI20080201BHJP A61P 3/04 20060101ALI20080201BHJP A61P 3/10 20060101ALI20080201BHJP A61P 5/50 20060101ALI20080201BHJP A61P 25/00 20060101ALI20080201BHJP A61P 3/06 20060101ALI20080201BHJP A61K 9/08 20060101ALI20080201BHJP A61K 9/107 20060101ALI20080201BHJP A61K 9/06 20060101ALI20080201BHJP A61K 9/48 20060101ALI20080201BHJP A61K 9/20 20060101ALI20080201BHJP A61K 38/17 20060101ALI20080201BHJP C07K 5/117 20060101ALN20080201BHJP C07K 5/103 20060101ALN20080201BHJP JPC12P21/06A23L1/305A23J3/34A61K37/64A61P43/00 107A61P9/12A61P3/02A61P3/04A61P3/10A61P5/50A61P25/00A61P3/06A61K9/08A61K9/107A61K9/06A61K9/48A61K9/20A61K37/16C07K5/117C07K5/103 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW EP2005053336 20050712 WO2006005757 20060119 47 20070308 4B018 4B064 4C076 4C084 4H045 4B018LB06 4B018LB07 4B018LB08 4B018MD07 4B018MD20 4B018MD23 4B018ME04 4B018MF12 4B064AG01 4B064CA21 4B064CB05 4B064CC07 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高血圧症の生理学的メカニズムの中で、特に、レニン−アンジオテンシンメカニズムは多くの科学的な注目を受けている。このメカニズムにおいて、アンジオテンシンは肝臓によって分泌され、ペプチダーゼレニンによって切断されて、生物学的に不活性なデカペプチドのアンジオテンシンIをもたらす。アンジオテンシンIが肺の毛細血管を通過する際、アンジオテンシン変換酵素(本明細書ではACEと称される)と呼ばれる別のペプチダーゼは、アンジオテンシンIの最後の2つの残基(His−Leu)を除去することによりアンジオテンシンIに作用し、オクタペプチドのアンジオテンシンIIを形成する。アンジオテンシンIIオクタペプチドは強力な血管収縮活性を示し、従って血圧を上昇させる。低レベルのアンジオテンシンIIにつながるACEの阻害は血管収縮を防止し、従って高血圧を防止する。 アンジオテンシンIを切断することのほかに、ACEは、やはり血圧の調節に関与するノナペプチドのブラジキニンを加水分解することもできる。後者のメカニズムでは、ACEの阻害はブラジキニンレベルの増大をもたらし、これは、血管拡張、そして低血圧も促進する。従って、ACEの阻害は、少なくとも2つの別個のメカニズムによって血圧低下効果をもたらす。 オクタペプチドのアンジオテンシンIIは、副腎皮質によるアルドステロンの放出を刺激することも知られている。アルドステロンの標的器官は腎臓であり、ここでアルドステロンは、腎臓の細管からのナトリウムの増加した再吸収(reabsorbtion)を促進する。この第3のメカニズムによっても、ACEの阻害は血圧を低下させるが、この場合、ナトリウムの再吸収を減少させることによる。 その多数の生理学的効果のために、ACEのタンパク質分解活性を阻害することは、血圧を低下させる有効な方法である。この知見は、カプトプリルおよびエナラプリルなどの多数の有効な血圧降下医薬品をもたらした(M.A.オンデッティ(Ondetti)ら、1977年、Science、ワシントンDC、196、441−444頁)。高血圧症は比較的一般的な病状なので、現代のライフスタイルのこの望ましくない結果を、穏やかな活性の天然成分で打ち消すことは有利であろう。特に、食料品または飲料品に取り込むことができる穏やかな活性の天然成分。何故なら、このような製品は定期的に消費されるからである。あるいは、このような穏やかな活性の天然成分は、食餌サプリメントに取り込まれ得る。この数十年の間に、発酵乳中に存在する特定のペプチドはACE阻害能を有し、高血圧の患者において血圧降下を誘発できることが発見されている。今日では、多数のインビトロ試験およびいくつかの動物試験により、様々なタンパク質源から得られる様々なペプチドのACE阻害効果が実証された。インビトロのACEの阻害アッセイは多くの様々なペプチド配列を明らかにしているが、ACE阻害ペプチドは血液中を循環してインビボ効果を発揮する必要があることを強調しなければならない。効果的なACE阻害ペプチドは、消化管のタンパク質消化系による分解に耐性でなければならず、そしてその後の腸管壁を越える輸送の間、インタクトなままでなければならないことが暗示される。 様々なACE阻害ペプチドの構造−機能研究により、これらは多くの場合、そのC末端配列においてPro−Pro、Ala−ProまたはAla−Hypを有することが示唆されている(S.マルヤマ(Maruyama)およびH.スズキ(Suzuki)、1982年、Agric Biol Chem.46(5)、1393−1394頁)。この発見は、ACEが、プロリンを含むペプチド結合を切断することができないペプチジルジペプチダーゼ(EC3.4.15.1)であるという事実によって部分的に説明される。従って、Xaa−Pro結合は切断されないので、構造Xaa−Pro−Proを有するトリペプチドから、ジペプチドPro−Proを除去することはできない。そのため、比較的高濃度で存在する場合には、Xaa−Pro−Pro構造を有するトリペプチドは、ACE活性を阻害し得ると考えられる。ACEだけでなくほとんど全てのタンパク質分解酵素は、Xaa−ProまたはPro−Pro結合を切断することが困難なので、ペプチドのカルボキシ末端における(多数の)プロリン残基の存在が比較的プロテアーゼ耐性の分子をもたらすという考えはほとんど自明である。同様に、プロリン(prolin)の代わりにヒドロキシプロリン(Hyp)を含有するペプチドは、比較的プロテアーゼ耐性である。このことから、そのカルボキシ末端に1つまたは複数の(ヒドロキシ)プロリン残基を有するペプチドは、消化管内のタンパク質分解から逃れる見込みがあると推論することができる。これらの結論は、特定のACE阻害ペプチドのインビボの血圧降下効果が顕著であることの理解を助けるであろう。これらは、ACEの阻害の構造的要件を満たすだけでなく、消化管のタンパク質消化系による分解にも耐性であり、そしてその後の腸管壁を越える輸送の間もインタクトなままである。 トリペプチドLeu−Pro−Pro(特開平02−036127号公報)、Val−Pro−Pro(EP0583074号明細書)およびIle−Pro−Pro(J.Dairy Sci.78:777−7831995))について、強力なACE阻害活性が報告されている。最初に、全てのACE阻害ペプチドはACE活性におけるそのインビトロ効果に基づいて特徴付けられ、そしてトリペプチドIle−Pro−Pro(以下、IPPと称する)Val−Pro−Pro(以下、VPPと称する)およびLeu−Pro−Pro(以下、LPPと称する)が、その強力なACE阻害効果が比較的低いIC50値をもたらすので突出していた。後で、トリペプチドVPPおよびIPPの推定降圧効果は、自然発症的に高血圧のラットにおいて確認することができた(ナカムラ(Nakamura)ら、J.Dairy Sci.78:12531257(1995年))。これらの実験において、阻害性トリペプチドは乳酸菌発酵乳に由来した。乳発酵の間、望ましいペプチドは、成長する乳酸菌によって産生されるプロテイナーゼによって産生される。この発酵アプローチの欠点は、乳酸菌が生命体であり、排泄される酵素の種類および量を制御するのが困難なことである。そのためACE阻害ペプチドの産生はほとんど再現不可能であり、最適な酵素セットが産生されて、必要とされるペプチドの最大収量が保証される見込みもない。また、必要とされる発酵時間が比較的長く、低収率と組み合わされて、生物活性ペプチドの好ましくないコスト構造を暗示する。さらに、発酵製品は、とりわけ固体食料への直接的な取り込みでは安定性が低く、厳しい1173338477519_0.pl?lang=Japanese&query=%B4%B6%B3%D0%BC%F5%CD%C6&mode=include制限を与える。このような発酵乳製品の低い嗜好性と、このような発酵ブロスからのACE阻害ペプチドの回収中に遭遇される加工上の多くの困難とは、米国特許第6,428,812号明細書に記載されている。これらの不都合にもかかわらず、発酵乳製品は、経口投与される血管拡張薬のように実際の適用に付されている。ACE阻害ペプチドは、電気透析、中空繊維膜透析またはクロマトグラフ法の後に発酵乳製品から濃縮され、錠剤またはロゼンジのような濃縮された食餌サプリメントの形態でのマーケティングを可能にする。 発酵製造経路の上記欠点は、とりわけ、特許出願の国際公開第01/68115号パンフレットおよびEP1231279号明細書において認識された。後者の出願では、トリペプチドVal−Pro−ProおよびIle−Pro−Proを乳カゼインから回収するために純粋に酵素的な方法が記載されている。出願は、乳カゼインを含有する材料をプロテイナーゼおよびペプチダーゼで中間ペプチドを介して消化することによってこれらのトリペプチドを製造するための方法を権利請求の対象とする。これらの酵素インキュベーションはそれぞれ12時間もかかり、そして汚染微生物の増殖に有利な条件下で行われ得る。ペプチダーゼとのインキュベーションの前に中間ペプチドは好ましくは精製され、高最終濃度のACE阻害ペプチドは、中間ペプチドのさらなるクロマトグラフィー精製ステップの後に得られるだけである。これらの様々な不都合を考慮して、降圧性ペプチドの収率が高くかつ再現可能であり、刺激のない風味の製品を生成する、より簡単で微生物学的により信頼性のある酵素経路が必要とされている。 本発明は、タンパク質源からIPPを含む組成物を製造するための方法に関し、それによりタンパク質から製造されるIPP対VPPの比率は少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも20:1(重量/重量)であり、該方法は、好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリルオリゴペプチダーゼの使用を含む。本発明の方法は、さらに、アミノペプチダーゼ活性のないプロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリルオリゴペプチダーゼの使用に関する。プロリン特異的エンドプロテアーゼは、好ましくは、ポリペプチドまたはタンパク質自体のような大きいタンパク質分子を加水分解することができる。本発明に従う方法は、一般に、24時間よりも短いインキュベーション時間を有し、好ましくは、インキュベーション時間は10時間よりも短く、より好ましくは4時間よりも短い。インキュベーション温度は一般に、30℃よりも高く、好ましくは40℃よりも高く、より好ましくは50℃よりも高い。 好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼなどのプロリンの末端で切断するプロテアーゼには、汚染エンドプロテアーゼ活性が存在しない。好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼなどのプロリンの末端で切断するプロテアーゼには、汚染カルボキシペプチダーゼ活性が存在しない。好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼなどのプロリンの末端で切断するプロテアーゼには、汚染アミノペプチダーゼ活性が存在しない。汚染エンドプロテアーゼ活性が存在しないプロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリルオリゴペプチダーゼは、好ましくは1未満、より好ましくは0.01未満のEndo/Prol特異的活性比(Spec act ratio)を有する酵素調製物である。 汚染カルボキシルペプチダーゼ活性が存在しないプロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリルオリゴペプチダーゼは、好ましくは10未満、より好ましくは1未満のCPD/Pro特異的活性比を有する酵素調製物である。 汚染アミノペプチダーゼ活性が存在しないプロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリルオリゴペプチダーゼは、好ましくは1未満、より好ましくは0.1未満のAP/Pro特異的活性比を有する酵素調製物である。 IPPの製造の間、有利に、LPPも形成される。本発明のもう1つの態様は、好ましくは非アスパラギン酸プロテアーゼ、より好ましくはセリンプロテアーゼによって加水分解された加水分解タンパク質からペプチドを精製または単離するための方法である。この加水分解タンパク質は、選択されたpH条件下で沈殿することができる。精製または単離方法は、加水分解タンパク質が沈殿するpHにpHを変更し、沈殿したタンパク質を溶液中のペプチドから分離することを含む。 従って、本発明は、可溶性ペプチド、好ましくはIPPを含む組成物の調製方法に関し、該方法は、適切なタンパク質源の加水分解によって製造される組成物のpHを、加水分解タンパク質の一部が不溶性になるpHに変更することと、不溶性部分を可溶性ペプチドから分離して可溶性ペプチドを含む組成物をもたらすこととを含む。 また本発明は、少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、そしてより好ましくは少なくとも20:1であるIPP対VPPの比率を有するタンパク質の加水分解によって製造され、好ましくはLPPを含むペプチド組成物、あるいは栄養補給食品、好ましくは薬剤として使用するための本発明に従う可溶性ペプチドを含む組成物にも関する。本発明はさらに、健康の改善や、疾患の予防および/または治療のために栄養補給食品、好ましくは薬剤を製造するため、あるいは高血圧(高血圧症)、心不全、前糖尿病または糖尿病、肥満、耐糖能障害またはストレスの治療または予防のために栄養補給食品、好ましくは薬剤を製造するためのこれらのペプチド組成物の使用に関する。 好ましくは、本発明のペプチド組成物は、食餌サプリメントの形で、ローション、ゲルまたはエマルジョンの形の局所用途を含むパーソナルケア用途の形で、あるいは食料、飲料、飼料またはペットフードの成分として使用される。発明の詳細な説明 従来技術によると、有効なACE阻害ペプチドは、ペプチドのカルボキシ末端に1つまたは2つのプロリン残基を取り込んでいると思われる。同一の構造的要件は、タンパク質分解に対する耐性(resistancy)も増大したペプチドを与える。これにより、インタクトなペプチドが最終的に血流中に入る可能性が増大する。少なくとも単一の、しかし好ましくは多数のプロリン残基をそのカルボキシ末端に有するペプチドを得るために、プロリン残基のカルボキシ末端側で切断することができるプロテアーゼの使用は、興味深い選択肢を提供する。いわゆるプロリルオリゴペプチダーゼ(EC3.4.21.26)は、ペプチドをプロリン残基のカルボキシル側で優先的に切断する唯一の可能性を有する。哺乳類および微生物源から単離された全ての適切に特徴付けられたプロリン特異的プロテアーゼにおいて、大きいペプチドを酵素の活性部位から排除する唯一のペプチダーゼドメインが識別されている。事実上、これらの酵素は、約30よりも多いアミノ酸残基を含有するペプチドを分解することができず、これらの酵素は、現在「プロリルオリゴペプチダーゼ」と呼ばれている(フュロップ(Fulop)ら、Cell、第94巻、161−170頁、1998年7月24日)。結果として、これらのプロリルオリゴペプチダーゼは、その加水分解作用を発揮する前に、他のエンドプロテアーゼによる広範な前加水分解を必要とする。しかしながら、国際公開第02/45523号パンフレットに記載されるように、プロリルオリゴペプチダーゼと、このような別のエンドプロテアーゼとを組み合わせても、カルボキシ末端プロリン残基を有するペプチドの割合が著しく高いことを特徴とする加水分解物がもたらされる。このために、このような加水分解物は、インビトロのACE阻害効果ならびに消化管タンパク質分解に対する改善された耐性を有するペプチドの単離の優れた出発点を形成する。これらの潜在的な利点にもかかわらず、本発明者らは、IPPの選択的製造はもちろんのこと、ACE阻害ペプチドの回収のためのプロリン特異的プロテアーゼの使用を明確にする出願を知らない。 本発明は、タンパク質源からIPPを含む組成物を製造するための方法に関し、それによりタンパク質から製造されるIPP対VPPの重量比は少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、より好ましくは少なくとも20:1であり、該方法は、プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性またはプロリルオリゴペプチダーゼ活性を有する酵素活性と、−I−P−P−配列のアミノ末端側の結合を加水分解することができる酵素活性との使用を含む。有利には、プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性またはプロリルオリゴペプチダーゼ活性を有する酵素活性と、−I−P−P−配列のアミノ末端側の結合を加水分解することができる活性とは1つの酵素中に存在し、好ましくは、この酵素はプロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリルオリゴペプチダーゼ(oligopeptdase)であり、より好ましくはこの酵素はプロリン特異的エンドプロテアーゼである。さらに、本発明は、可溶性ペプチド、好ましくはIPPを含む組成物を調製するための方法に関し、該方法は、加水分解条件のpHを加水分解タンパク質の一部が可溶性になるpHに変更することと、可溶性ペプチドから不溶性部分を分離して、可溶性ペプチドを含む組成物をもたらすこととを含む。分離ステップの温度は、好ましくは0℃と20℃の間であり、より好ましくは1℃と10℃の間である。 また本発明は、食品、飲料品または食餌サプリメントを調製することにも関し、上記のようなIPPを含む組成物を製造することと、このIPP含有組成物を食品、飲料品または健康食品中に取り込むこととを含む。 さらに、本発明は、− 最初に、プロリン特異的エンドプロテアーゼによりタンパク質を5〜30%のDHまで加水分解することと、− 任意で、好ましくはプロテアーゼによる第2の酵素処理と、− その後、選択されたpH条件下で、好ましくは酸性pH条件下で、より好ましくは3.5と6の間のpHで、そして最も好ましくは4と5の間のpHで、加水分解タンパク質の不溶性部分を可溶性部分から分離して、可溶性ペプチドを含む組成物をもたらすことと、によって製造される可溶性ペプチドを含む組成物を製造するための方法に関する。 従って、本発明は、後者の方法から得ることができる組成物を提供し、該組成物は可溶性ペプチドを含み、3.5と6の間のpH、好ましくは4と5の間のpH、最も好ましくはpH=4.5において、ペプチドの少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、最も好ましくは少なくとも90重量%が可溶性(4℃で決定)であり、可溶性ペプチドのどの単一のペプチドも、可溶性ペプチドの40重量%よりも多い量で存在せず、好ましくは、可溶性ペプチドのどの単一のペプチドも、可溶性ペプチドの30重量%よりも多い量で存在せず、最も好ましくは、可溶性ペプチドのどの単一のペプチドも、可溶性ペプチドの20重量%よりも多い量で存在しない。 後者の方法および後者の組成物は、プロリン特異的エンドプロテアーゼの使用のためにカルボキシ末端プロリンを有する多量のペプチドも含有する、多量の可溶性ペプチドを有する組成物を得ることができるという洞察の結果である。 上記のように、タンパク質は、初めにプロリン特異的エンドプロテアーゼによって加水分解され得る。加水分解タンパク質が次にさらなる(第2の)プロテアーゼによって加水分解される場合には、カルボキシ末端プロリンを有するペプチドは、第2の酵素によってさらに加水分解され得る。好ましくは、第2の酵素処理は、純粋で選択的な酵素によって実行される。この第2の酵素は、好ましくは、アミノペプチダーゼ(例えば、コロラーゼ(Corolase)LAP、実施例12および13を参照)またはエンドプロテアーゼであり、最も好ましくは、アミノペプチダーゼが使用される。 実施例12および13では、IPPに加えて、選択的にさらなるIPPおよびVPPがカゼインから形成されることが示される。 この第2の酵素の選択は、常に、使用されるタンパク質と関連して行われる。このようにして、問題のタンパク質から可溶性ペプチドを含む、目的に合わせた組成物を製造することが可能である。この第2の酵素処理は、好ましくは、プロリン特異的エンドプロテアーゼによる加水分解の後に行うことができるが、第2の酵素処理は、プロリン特異的エンドプロテアーゼによる加水分解と同時に行われるという別の選択肢もある。本発明のさらなる実施形態によると、この第2の酵素処理は、酸沈殿ステップの後に行うことができる。この場合、可溶性ペプチド組成物はこの第2の酵素によってさらに加水分解され、再度可溶性ペプチド含有組成物をもたらす。 好ましくは、可溶性ペプチドの少なくとも10モル%、より好ましくは少なくとも20モル%、さらにより好ましくは少なくとも30モル%は、カルボキシ末端プロリンを有する。特許出願の国際公開第02/45523号パンフレットには、このモル%をどのようにして決定することができるかが記載されている。 本発明は、栄養補給食品、好ましくは薬剤としての、本発明のペプチドを含有する組成物に関する。また本発明は、栄養補給食品、好ましくは薬剤としての本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、栄養補給食品、好ましくは薬剤の製造のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、健康の改善もしくは疾患の予防および/または治療のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、栄養補給食品、好ましくは薬剤の製造のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、高血圧症および心不全などの心血管疾患の治療のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、前糖尿病または糖尿病の治療のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、肥満の治療または予防のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、血漿インスリンの増大または血漿インスリンに対する感受性の増大のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、血漿インスリンの増大または2型糖尿病または前糖尿病の血漿インスリンに対する感受性の増大のための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、2型糖尿病または前糖尿病の食後の血中グルコース濃度を低下するための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、2型糖尿病または前糖尿病の食後の血中のインスリン分泌を増大するための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、本発明のペプチド含有組成物が食餌サプリメントの形態である本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、ストレスの影響の治療的処置のための機能性食品を製造するための本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、局所用途、好ましくはパーソナルケア用途における本発明のペプチドを含有する組成物の使用と、飼料およびペットフードにおける本発明のペプチドを含有する組成物の使用とに関する。 さらに、本発明は、1型および2型の糖尿病を治療し、前糖尿病または耐糖能障害(IGT)の個体において2型糖尿病を予防するための方法であって、このような治療を必要としている患者に本発明のペプチド含有組成物を投与することを含む方法と、高血圧症または心不全を患う人々の治療またはその予防の方法であって、このような治療を必要とする患者に本発明のペプチド含有組成物を投与し、それにより血圧降下効果を示すことを含む方法とに関する。ACEの阻害は、血管収縮の減少、血管拡張の増強、ナトリウムおよび水の排泄の改善をもたらし、これは次に、抹消血管抵抗および血圧の低下ならびに局所的な血流の改善につながる。従って、ペプチドを含む本発明の加水分解物は、高血圧症、心不全、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、抹消動脈閉塞性疾患、アテローム硬化症、腎症、腎不全、勃起不全、内皮障害、左室肥大、糖尿病性血管症、体液の停滞、および高アルドステロン症を含むが、これらに限定されないACEの阻害により影響を受けることができる疾患の予防および治療のために特に効果的である。また組成物は、消化管疾患(下痢、過敏性腸症候群)、炎症、糖尿病、肥満、痴呆、てんかん、老人性錯乱、およびメニエール病の予防および治療においても有用であり得る。さらに、組成物は、認知機能および記憶(アルツハイマー病を含む)、満腹感を高め、虚血性損傷を制限し、バイパス手術または血管形成術後の動脈の再閉塞を防止することができる。 糖尿病は広く行きわたった慢性疾患であり、これまで治療法がない。糖尿病の発生率および有病率は指数関数的に上昇しており、先進国および発展途上国において最も一般的な代謝性障害の1つである。糖尿病は、多数の原因となる因子から誘発される複雑な疾患であり、インスリン分泌の欠乏および/またはインスリン抵抗性に関連する炭水化物、タンパク質および脂肪の代謝の障害によって特徴付けられる。この結果、空腹時および食後の血清グルコース濃度が上昇し、これは、治療せずに放置すると合併症につながる。インスリン依存性糖尿病(IDDM、T1DM)およびインスリン非依存性糖尿病(NIDDM、T2DM)の2つの主な疾患のカテゴリーが存在する。T1DM=1型糖尿病。T2DM=2型糖尿病。 T1DMおよびT2DMの糖尿病は、高血糖、高コレステロール血症および高脂血症に関連する。T1DMおよびT2DMにおける絶対的なインスリンの欠乏およびインスリンに対する非感受性はそれぞれ、肝臓、筋肉および脂肪組織によるグルコースの利用の減少、ならびに血糖レベルの上昇を導く。制御されない高血糖は、腎症、神経障害、網膜症、高血圧症、脳卒中、および心疾患を含む微小血管および大血管の疾患の危険の増大のために、死亡率の増大および早期の死亡に関連する。最近の証拠により、厳しい血糖コントロールは、T1DMおよびT2DMの両方において、これらの合併症の予防における主要な因子であることが示された。従って、薬物または治療計画による最適な血糖コントロールは、糖尿病の治療のための重要なアプローチである。 T2DMの治療法は、初めに食事およびライフスタイルの変化を必要とし、これらの手段が適切な血糖コントロールを維持することができない場合、患者は、経口血糖降下剤および/または外因性インスリンにより治療される。T2DMの治療のための現在の経口薬理作用物質には、インスリン分泌を増強する(potentate)もの(スルホニル尿素剤)、肝臓におけるインスリンの作用を改善するもの(ビグアナイド剤)、インスリン感作物質(チアゾリジンジオン)およびグルコースの摂取を阻害するように作用する物質(α−グルコシダーゼ阻害薬)が含まれる。しかしながら、現在利用可能な薬剤は、一般に、すい臓細胞機能の進行性の損失から起こる高血糖の進行性の悪化のために、適切な血糖コントロールを長期間維持することができない。目標の血糖レベルを維持することができる患者の割合は、追加/代替の薬理作用物質の投与を必要とする時間とともに著しく減少する。さらに、薬物は不要な副作用を有することがあり、一次的および二次的な高失敗率に関連する。最後に、血糖降下薬の使用は血糖レベルの制御において有効であり得るが、糖尿病の合併症の全てを予防することはできない。従って、全ての型の糖尿病のための現在の治療方法は、正常血糖の理想および糖尿病の合併症の予防を達成することができない。 従って、T1DMおよびT2DMの治療において好まれる治療法は、本質的にインスリンおよび経口血糖降下薬の投与に基づくが、糖尿病の治療および予防のために、最小限の副作用を有する安全で有効な栄養サプリメントが必要とされている。多くの患者は、高用量の薬物に関連する副作用を最小限にし、付加的な臨床的利益をもたらし得る別の治療法に関心を持っている。糖尿病の患者は、穏やかな抗糖尿病効果があるが大きな副作用がなく「自然」であると考えられ、補助的な治療として使用することができる治療に特別な関心を持っている。T2DMは、インスリンの産生に関与するすい臓の細胞(ランゲルハンス島のβ−細胞)に著しい損傷が生じるまで通常は認識されない進行性および慢性の疾患である。そのため、危険のある人々、特にT2DMを発生する危険の高い高齢者では、β−細胞の損傷、従って明白なT2DMへの進行を防止するために使用することができる食餌サプリメントの開発への関心が高まっている。グルコースおよび脂質はβ−細胞に対して損傷作用を及ぼすので、すい臓のβ−細胞の保護は、血中のグルコースおよび/または脂質レベルを低下させることによって達成することができる。血糖レベルの低下は、例えば、インスリン感受性を高めることおよび/または肝臓のグルコース産生を低下させることによって、様々なメカニズムにより達成することができる。また、血中脂質レベルの低下は、例えば、脂質の酸化および/または脂質の貯蔵を高めることによって、様々なメカニズムにより達成することができる。すい臓のβ−細胞を保護するためのもう1つの可能な戦略は、酸化ストレスを低下させることであろう。酸化ストレスもβ−細胞の損傷を引き起こし、その後、インスリン分泌の損失と、明白なT2DMへの進行が生じる。 従って、T2DMは、多数の器官の部位における共存する欠陥:筋肉および脂肪組織におけるインスリン作用に対する耐性、欠陥のあるすい臓のインスリン分泌、無制限の肝臓のグルコース産生から生じる複雑な疾患である。これらの欠陥は、多くの場合、脂質異常および内皮障害に関連する。T2DMにおける多数の病態生理学的な病変を仮定すると、併用療法は、その管理にとって魅力的なアプローチである。 本発明は、本発明のペプチド含有組成物を含む新規の栄養補給組成物に関する。本発明のペプチド含有組成物を含む栄養補給組成物は、糖尿病、またはシンドロームXなどの耐糖能障害に関連する他の状態の治療または予防のための活性成分として非加水分解タンパク質および炭水化物も含むことができる。もう1つの態様では、本発明は、前記治療または予防のための栄養サプリメントとして、例えば、通常の代謝機能を維持するために必須であるが体内では合成されないビタミンおよびミネラルを含むマルチビタミン調製物への添加剤としてのこのような組成物の使用に関する。さらにもう1つの態様では、本発明は、このような治療を必要としている患者に本発明のペプチド含有組成物およびタンパク質加水分解物または非加水分解タンパク質および/または炭水化物を投与することを含む、1型および2型の両方の糖尿病の治療のため、そして前糖尿病、または耐糖能障害(IGT)または肥満の個体におけるT2DMの予防のための方法に関する。 本発明の組成物は、特に、T1DMおよびT2DMの両方の治療のため、そして前糖尿病または耐糖能障害(IGT)の個体におけるT2DMの予防のためのものである。 本発明のペプチド含有組成物は、好ましくは、食後のグルコース濃度を低下させるため、あるいは食後の血中のインスリン分泌を増大させるために、2型糖尿病または前糖尿病のために使用可能であることが分かる。 ペプチドおよび任意で炭水化物を含む組成物はインスリン分泌を刺激し、脂肪組織、骨格筋および肝臓などのインスリン感受性標的組織へのグルコースの処分を増大させ、従って、糖尿病の治療において相乗効果を提供する。 一般に、ストレス関連疾患、および体にかかるストレスの悪影響は、多くの人々に著しい影響を与えることが認識されている。近年、ストレスの影響、およびに様々な疾患および状態の様々な発生に対するその寄与は、医学界および科学界において広く受け入れられてきた。消費者は、現在、これらの潜在的な問題に次第に気付いてきており、その健康に対するストレスの悪影響の可能性を低減または防止することに次第に関心を持ってきている。 本発明のさらなる目的は、体がストレスの悪影響に対処するのを助ける際に使用するのに適切な食品またはそれに取り込むことができる成分を提供することである。 さらなる目的は、体がストレスの悪影響に対処するのを助けるなどの健康上の利益を提供する本発明のペプチド含有組成物を含む食品を提供することである。 本明細書中で使用される栄養補給(nutraceutical)という用語は、栄養および薬剤分野の両方の用途における有用性を示す。従って、新規の栄養補給組成物は、食料および飲料へのサプリメントとして、そしてカプセル剤または錠剤などの固体製剤もしくは溶液または懸濁液などの液体製剤であり得る経腸または非経口用途のための医薬製剤または薬剤としての使用を見出すことができる。上記から明らかであるように、栄養補給組成物という用語は、上記の前記活性成分を含む栄養補助組成物、例えば食餌サプリメントのみでなく、本発明のペプチド含有組成物と、任意で炭水化物とを含む食料および飲料も含む。 本明細書中で使用される食餌サプリメントという用語は、食餌を補うことを目的とする「食餌成分」を含有する口で摂取される製品を示す。これらの製品中の「食餌成分」は、ビタミン、ミネラル、ハーブまたは他の植物性薬品、アミノ酸、ならびに酵素、器官組織、腺(glandular)、および代謝産物などの物質を含むことができる。食餌サプリメントは抽出物または濃縮物でもよく、錠剤、カプセル剤、ソフトゲル、ゲルキャップ(gelcap)、液体、または粉末などの多くの形態で見られる。これらは棒状などの他の形態でもよいが、そうである場合、食餌サプリメントのラベルの情報は、通常、従来の食料もしくは食事または食餌の唯一の品目としての製品を表さないであろう。 本発明の栄養補給組成物には、ある食餌において欠けている適切な量の必須栄養素を得るために、マルチビタミンおよびミネラルサプリメントが添加されてもよい。また、マルチビタミンおよびミネラルサプリメントは、糖尿病において観察されることもあるライフスタイルパターンおよび一般的な不適切な食餌パターンによる栄養の損失および欠如に対する疾患の予防および保護にも有用であり得る。さらに、酸化ストレスは、インスリン抵抗性の発生に関与している。活性酸素種は、インスリン受容体のシグナル伝達カスケードを妨害することによって、インスリン刺激によるグルコースの摂取を損ない得る。α−トコフェロール(ビタミンE)アスコルビン酸(ビタミンC)などの酸化防止剤による酸化ストレスの制御は、糖尿病の治療において価値があるであろう。従って、マルチビタミンサプリメントの摂取は、よくバランスのとれた栄養分を維持するために上記の活性物質に添加され得る。 さらに、本発明のペプチド含有組成物と、マグネシウム(Mg2+)、カルシウム(Ca2+)および/またはカリウム(K+)などのミネラルとの組み合わせは、健康の改善のため、そして心血管疾患および糖尿病を含むがこれらに限定されない疾患の予防および/または治療のために使用することができる。 本発明の好ましい態様では、本発明の栄養補給組成物は、本発明のペプチド含有組成物を含有する。IPPは、投与を受ける患者の体重1kgあたり約0.001g〜体重1kgあたり約1gの1日の投与量を提供するような量で本発明に従う組成物中に適切に存在する。食料または飲料は、1回の摂取量あたり約0.05g〜1回の摂取量あたり約50gのIPPを適切に含有する。栄養補給組成物が医薬製剤であれば、このような製剤は、投与単位あたり、例えばカプセル剤または錠剤あたり約0.001g〜約1gの量、あるいは液体製剤の1日の用量あたり約0.035g〜1日の用量あたり約70gの量のIPPを含有し得る。本発明のペプチド含有組成物は、投与を受ける患者の体重1kgあたり約0.01g〜体重1kgあたり約3gの1日の投与量を提供するような量で本発明に従う組成物中に適切に存在する。食料または飲料は、1回の摂取量あたり約0.1g〜1回の摂取量あたり約100gのタンパク質加水分解物を適切に含有する。栄養補給組成物が医薬製剤であれば、このような製剤は、投与単位あたり、例えばカプセル剤または錠剤あたり約0.01g〜約5gの量、あるいは液体製剤の1日の用量あたり約0.7g〜1日の用量あたり約210gの量のペプチド含有組成物を含有することができる。 本発明のさらにもう1つの好ましい態様では、組成物は、上記で指定された本発明のペプチドと、任意で炭水化物とを含む。炭水化物は、投与を受ける患者の体重1kgあたり約0.01g〜体重1kgあたり約7gの1日の投与量を提供するような量で本発明に従う組成物中に適切に存在する。食料または飲料は、1回の摂取量あたり約0.5g〜1回の摂取量あたり約200gの炭水化物を適切に含有する。栄養補給組成物が医薬製剤であれば、このような製剤は、投与単位あたり、例えばカプセル剤または錠剤あたり約0.05g〜約10gの量、あるいは液体製剤の1日の用量あたり約0.7g〜1日の用量あたり約490gの量の炭水化物を含有し得る。 投与量の範囲(70kgのヒトに対する) IPP:0.005〜70g/日 タンパク質加水分解物:0.07〜210g/日 非加水分解タンパク質:0.07〜210g/日 炭水化物:0.1〜490g/日 本発明の目的は、消費した患者に健康上の利益を提供するために使用することができる食用材料を提供することである。またさらなる目的は、単独の形態か、あるいは食品に取り込まれるかのいずれかで、便利に摂取することができるこのような食用材料を提供することである。 本発明のさらなる目的は、体重管理計画において使用するのに適切な食品またはそこに取り込むことができる成分を提供することである。 本発明のさらなる目的は、例えばACEの阻害によって、心血管の健康の維持を助けるのに適切な食品またはそこに取り込むことができる成分を提供することである。 本発明のさらなる目的は、許容可能な安定性および/または感覚受容特性、特に、苦味がないことまたは許容可能なレベルであるなどの良好な風味を有する食品またはそこに取り込むことができる成分を提供することである。 さらなる目的は、肥満/体重管理の予防を補助する、および/または心血管の健康の維持を助けるなどの、健康上の利益を提供する高濃度の成分を有する食品を提供することである。 驚くことに、これらの目的の1つまたは複数は、本発明に従って、消費したときに健康上の利益を提供する食品の調製のための本発明のペプチド含有組成物の使用により達成される。 第1の態様によると、本発明は、肥満の予防または体重管理のための機能性食品を製造するための本発明のペプチド含有組成物の使用を提供する。 第2の態様によると、本発明は、心血管の健康維持のための機能性食品を製造するための本発明のペプチド含有組成物の使用を提供する。 本発明によると、心血管の健康維持は、アンジオテンシン変換(ACE)酵素の阻害および/または血糖レベルの制御を含むことが特に好ましい。 第3の態様によると、本発明は、その消費者に健康上の利益を提供することができ、本発明のペプチド含有組成物を含む機能性食品を提供する。前記健康上の利益は、肥満の予防、体重管理および心血管の健康維持から選択される。 本発明に従うペプチド含有組成物のさらなる利点は、このペプチド含有組成物が、その安定性および/または感覚受容特性に許容できない影響を与えることなく、機能性食品を製造するために食品中に便利に取り込み可能なことである。 本発明に従う「健康上の利益のある作用物質(health benefit agent)」は、健康上の利益を提供する、すなわち摂取したときに健康の状況によい影響をもたらすか、あるいは良好な健康の状況を維持するのを助ける材料であり、これらの良好な健康の状況は、肥満の予防、体重管理および心血管の健康維持である。「健康上の利益」は、健康の状況によい影響をもたらすこと、あるいは良好な健康の状況を維持するのを助けることを意味する。 本発明に従う「機能性食品」は、食品の消費者にとって顕著な健康上の利益が得られるように本発明のペプチド含有組成物が有効量の成分として使用され、ヒトが食べるのに適した食品(誤解を避けるために、飲料を含む)であると定義される。 本明細書中で使用される「含む(comprising)」という用語は、その後に記載される要素に対する限定を意味するのでなく、機能的な重要性が大きいまたは小さい非特定の要素を包含することを意味する。言い換えると、列挙されるステップ、要素または選択肢は、徹底的である必要はない。「含む(including)」または「有する(having)」という語が使用される場合はいつでも、これらの用語は上記で定義した「含む(comprising)」と等価であることを意味する。 「ペプチド」または「オリゴペプチド」は、本明細書中では、ペプチド結合により結合された少なくとも2つのアミノ酸の鎖と定義される。「ペプチド」および「オリゴペプチド」という用語は、類義語であると考えられ(一般に認識されるように)、各用語は、文脈の要求に応じて交換可能に使用することができる。「ポリペプチド」は、本明細書では、30よりも多いアミノ酸残基を含有する鎖と定義される。本明細書では、全ての(オリゴ)ペプチドおよびポリペプチドの式または配列は、一般的な習慣に従って、アミノ末端からカルボキシ末端への方向に左から右に記載される。本明細書中で使用されるアミノ酸の一文字コードは当該技術分野では一般に知られており、サムブルック(Sambrook)ら、(分子クローニング(Molecular Cloning):ラボラトリーマニュアル(Laboratory Manual)、第2版、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー(Cold Spring Harbor Laboratory)、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー・プレス、コールド・スプリング・ハーバー、ニューヨーク、1989年)において見ることができる。 IUMBからの全ての酵素の分類および命名のための国際的に認識されたスキームには、プロテアーゼが含まれる。プロテアーゼのEC番号のための最新のIUMBテキストは、インターネットサイトhttp://www.chem.qmw/ac.uk/iubmb/enzyme/EC3/4/11/において見ることができる。このシステムでは、酵素は、単一の反応を触媒するという事実によって定義される。これは、いくつかの異なるタンパク質が全て同一酵素として記載され、2つ以上の反応を触媒するタンパク質は、2つ以上の酵素として扱われるという重要な意味を有する。システムは、プロテアーゼをエンドプロテアーゼおよびエキソプロテアーゼに分類する。エンドプロテアーゼは内部ペプチド結合を加水分解する酵素であり、エキソプロテアーゼは、末端アミノ基に隣接するペプチド結合を加水分解する(「アミノペプチダーゼ」)か、あるいは末端カルボキシル基と最後から2番目のアミノ酸との間のペプチド結合を加水分解する(「カルボキシペプチダーゼ」)。エンドプロテアーゼは、触媒メカニズムに基づいてサブサブクラス(sub−subclass)に分けられる。セリンエンドプロテアーゼ(EC3.4.21)、システインエンドプロテアーゼ(EC3.4.22)、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC3.4.23)、メタロエンドペプチダーゼ(EC3.4.24)およびスレオニンエンドプロテアーゼ(EC3.4.25)のサブサブクラスがある。 アミノペプチダーゼは、クラス3.4.11に入る。細分類は、20の異なるアミノ酸が除去される相対的な効率に基づく。狭い特異性および広い特異性を有するアミノペプチダーゼを区別することができる。アミノペプチダーゼは、単一のアミノ末端アミノ酸をタンパク質およびペプチド基質から順次除去することができる。狭い特異性を有するアミノペプチダーゼは、基質ペプチドから遊離されるP1位におけるアミノ酸残基のタイプに対して強い優先度を示す。広い特異性のアミノペプチダーゼは、N末端またはP1位において様々なアミノ酸を放出することができる(シェクター(Schechter)の命名法による:I.シェクター(Schechter)およびA.バーガー(Berger)、1967年、Biochem Biophys Res Commun 27:157−162頁)。カルボキシペプチダーゼは、単一のカルボキシ末端アミノ酸をタンパク質およびペプチド基質から順次除去することができる。エンドプロテアーゼの状況と同等に、カルボキシペプチダーゼは、触媒メカニズムに基づいてサブサブクラスに分けられる。セリン型カルボキシペプチダーゼはクラスEC3.4.16に入り、メタロカルボキシペプチダーゼはクラスEC3.4.17に入り、システイン型カルボキシペプチダーゼはクラスEC3.4.18に入る。プロテアーゼのECリストの価値は、様々なタイプのプロテアーゼ活性の標準的な用語法の提供、そして特に各プロテアーゼに対する唯一の識別番号および推奨名の割り当てにある。 EP1231279号明細書には、トリペプチドVPPおよびIPPを乳カゼインから回収するための純粋に酵素的な方法が記載されている。後者の出願は、配列−V−P−P−を含有するが、この配列内以外のProを含有しないペプチドと、配列−I−P−P−を含有するが、この配列内以外のProを含有しないペプチドとからなる群から選択されるいわゆる「中間ペプチド」を介して、乳カゼインを含有する材料をプロテイナーゼおよびペプチダーゼで消化することによってトリペプチドを製造するための方法を権利請求の対象とする。EP1231279号明細書の実施例に記載されるように、該方法は2段階の方法を含む。まず、VPPまたはIPPのいずれかを含む中間ペプチドが製造される。これは、カゼインを適切なプロテイナーゼと共にインキュベートすることによって行われる。実施例の1つのよると、摂氏37度で12時間の期間である。次に、使用されるプロテイナーゼは、この第1の加水分解物を摂氏100度で3分間加熱することにより不活性にされ、再度冷却した後、別の酵素調製物(実際には、エキソタンパク質分解活性を持つ調製物)が添加される。摂氏37度でさらに12時間のこの別の酵素調製物とのインキュベーションの後、トリペプチドVPPおよびIPPの存在が実証され得る。これらのACE阻害ペプチドをより高収率で得るために、EP1231279号明細書はさらに、エキソタンパク質分解活性にさらす前に、中間ペプチドを精製および濃縮することを提言している。また、EP1231279号明細書は、中間ペプチドを得た後、そして手順の中で中間ペプチドがペプチダーゼと接触される前に、例えば5000〜20000rpmで3〜10分間の遠心分離による未反応タンパク質の除去などの様々な操作が任意で実行されてもよいことも提言している。そのようにして、産業的にかなり扱いにくい2段階の酵素的方法で所望のトリペプチドが得られる。酵素インキュベーションのそれぞれは、4.5〜7.0のpHおよび摂氏25〜50度の温度で12時間もの時間がかかり得るので、この手順が微生物学的な観点からも許容できないことは明らかである。25〜50℃の低いインキュベーション温度と組み合わせたこれらの長いインキュベーション時間は、タンパク質含有溶液の感染を容易にもたらし得る。 国際公開第02/45524号パンフレットには、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)から得られるプロリン特異的プロテアーゼが記載されている。A.ニガー由来の酵素はプロリンのカルボキシ末端で優先的に切断するが、ヒドロキシプロリンのカルボキシ末端においても切断することができ、アラニンのカルボキシ末端では効率が低い。また、国際公開第02/45524号パンフレットは、このA.ニガー由来の酵素と、他の微生物または哺乳類(mammelian)源からの既知のプロリルオリゴペプチダーゼとの間には明白な相同性は存在しないことも教示する。既知のプロリルオリゴペプチダーゼとは対照的に、A.ニガー酵素は、酸pHの最適条件を有する。既知のプロリルオリゴペプチダーゼおよびA.ニガー由来の酵素はいわゆるセリンプロテアーゼであるが、本発明者らは、本明細書(実施例1)において、A.ニガー酵素は、完全に異なるサブファミリーに属することを示す。分泌されるA.酵素は、ほとんどの細胞質ゾルのプロリルオリゴペプチダーゼが分類されているS9ファミリーではなく、セリンペプチダーゼのファミリーS28のメンバーであると思われる(N.D.ローリング(Rawling)およびA.J.バレット(Barrett)、Biochim.Biophys.Acta1298(1996年)1−3)。実施例2では、本発明者らは、A.ニガー由来のプロリン特異的プロテアーゼのpHおよび温度の最適条件を示す。実施例3では、本発明者らは、純粋なプロリン特異的エンドプロテアーゼに固有のエンドタンパク質分解活性以外の顕著なエンドタンパク質分解活性が存在しないという、本発明の方法において使用されるA.ニガー由来の酵素調製物が本質的に純粋な意味であることを実証する。また、本発明者らは、本発明に従って使用される本発明者らのA.ニガー由来の酵素調製物が、エキソタンパク質分解性、より具体的には、アミノペプチド分解性の副活性を含有しないことを実証する。EP1231279号明細書に記載される、明確に同定された全てのプロテイナーゼサンプルは、異なるタンパク質分解活性を示す様々な酵素の複雑な混合物である。当業者は、EP1231279号明細書に記載されている方法が、エンドタンパク質分解活性と、1つまたは複数のエキソタンパク質分解酵素活性との組み合わせによって決まることを理解するであろう。このようなエキソタンパク質分解活性は、本発明の方法で使用されるA.ニガー由来の酵素調製物中には存在しない。逆も同様に、本発明に従う方法で使用される酵素は、EP1231279号明細書において記載される複雑なプロテイナーゼサンプル中には存在しない。この酵素が非組換え型アスペルギルス株中には本質的に存在しないという考えに対する実験的な証明は、国際公開第02/45524号パンフレットにおいて見ることができる。本発明の方法はプロリン特異的エンドプロテアーゼだけと共に可能なので、温度、pHなどの最適なインキュベーション条件は容易に選択することができ、2つ以上の酵素が適用される場合のように最適以下の条件に固定する必要がない。反応条件の選択においてより多くの自由度があることは、他の基準のより容易な選択を可能にする。例えば、微生物感染に対する感受性の低い条件を今選択し、そしてその後のタンパク質の沈殿ステップに関連するpH条件を最適化することはるかに容易である。実施例4において、本発明者らは、アスペルギルス酵素がオリゴペプチダーゼではないが、補助的なエンドプロテアーゼを必要とせずに、インタクトなタンパク質、大きいペプチドならびにより小さいペプチド分子を加水分解することができる真のエンドペプチダーゼであることを示す。この新しい驚くべき発見は、補助的なエンドプロテアーゼが必要とされないので、カルボキシ末端プロリン残基のあるペプチドを前例のない高い含量で有する加水分解物を調製するためにA.ニガー酵素を用いるという可能性を開く。このような新しい加水分解物は、植物由来でも動物由来でも、様々なタンパク質出発材料から調製することができる。このような出発材料の例は、乳漿タンパク質、乳漿ベータ−ラクトグロブリン、乳漿アルファラクトアルブミン、カゼイン、ゼラチン、魚または卵タンパク質、ジャガイモタンパク質、コムギおよびトウモロコシグルテン、大豆およびエンドウマメタンパク質、米タンパク質ならびにルピナスタンパク質である。当然ながら、出発タンパク質は、少なくとも−I−P−P−配列を有さなければならない。好ましくは、タンパク質は、そのタンパク質配列内に−L−P−P−配列も含む。上記で説明したように、タンパク質は、そのタンパク質中に−V−P−P−配列を有してもよい。プロリンおよびヒドロキシプロリン(hydroyproline)を高い含量で有するゼラチンのような基質から、カルボキシ末端プロリンまたはヒドロキシプロリン残基のいずれかがあるペプチドを前例のない高い含量で有する加水分解物を生成することができる。A.ニガー酵素(既知のプロリルオリゴペプチダーゼのような)酵素はPro−ProまたはPro−Hyp、Hyp−ProまたはHyp−Hyp結合を切断できないので、このアプローチは、2つ、3つまたはそれよりさらに多いカルボキシ末端プロリンまたはヒドロキシプロリン残基を有するペプチドを前例のない高い含量で含有する加水分解物ももたらすであろう。明らかに、タンパク質出発材料の性質およびプロリン含量は、このようなペプチドを生成する可能性を規定する。好ましい基質は、カゼイン、ゼラチン、コムギおよびトウモロコシグルテンなどの6%よりも多いプロリンを含有する(すなわち、タンパク質100グラムあたりこのアミノ酸が6グラムよりも多い)基質である。このようなカルボキシ末端アミノ酸配列を有するペプチドは、消化管内でのタンパク質分解活性に耐え抜く十分な見込みがあることが期待できるという事実を考慮して、A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼとのインキュベーションにより形成される加水分解物は、既知の生物学的に活性なペプチドの単離のため、そして新しい生物学的に活性なペプチドの同定のために優れた出発材料を提供する。ナトリウムは、高血圧症において重要な役割を果たすことが分かっているので、ACE阻害ペプチドの製造のために好ましい基質は、これらのタンパク質のナトリウム塩ではなくカルシウムおよびカリウム塩である。 A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼのpH最適条件は、4.3付近である(図1を参照)。この低いpH最適条件のために、ウシの乳カゼイン塩をA.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼと共にインキュベートすることは自明のことではない。ウシの乳カゼイン塩は、pHが6.0よりも低くなれば沈殿するであろう。そして、このpH値では、A.ニガー酵素は限られた活性しか持たない。しかしながら、本発明者らは、実施例5において、このかなり好ましくない条件下でさえも、A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼとのインキュベーションはいくつかのACE阻害ペプチドをもたらし得ることを示す。本発明によると、ACE阻害トリペプチドIPPおよびLPPは、理論的にカゼイン中に存在する量のそれぞれ10%およびほとんど60%に相当する収率で製造される。実施例5において提供される説明によると、IPPの収率は、IPPがカッパーカゼインのみから遊離可能であるという事実に起因する。これを考慮に入れると、約40%の収率が得られる。好ましくは、本発明の方法では、酸沈殿されたカゼインが基質として使用される。かなり驚くことに、VPP前駆体のVVVPPがLPPと同様の収率、すなわち理論的に存在するもののほとんど60%の収率で製造されるという事実にもかかわらず、VPPは製造されない。 好ましくは、タンパク質配列内に存在する−L−P−P−配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、あるいはさらにより好ましくは少なくとも40%、そして最も好ましくは少なくとも60%がペプチドLPPに変換される。 好ましくは、タンパク質配列内に存在する−I−P−P−配列の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、あるいはさらにより好ましくは少なくとも40%、そして最も好ましくは少なくとも60%が、ペプチドIPPに変換される。プロリン特異的プロテアーゼは、好ましくは、基質タンパク質自体のような大きいタンパク質分子を加水分解することができる。 これらの結果は、簡単な1段階の酵素的方法でA.ニガー由来のエンドプロテアーゼと共にカゼイン塩をインキュベートする際に得られる。タンパク質を含有する水溶液は、特に5.0よりも高いpH値および摂氏50度以下の温度で何時間も保持されると、微生物感染の影響を非常に受けやすい。特に、このように長くかかるインキュベーションステップの間に産生可能であり、次の加熱ステップに耐える見込みがある微生物の毒素は、食品グレードの方法にとって潜在的な脅威となる。EP1231279号明細書に記載される条件とは違って、本発明に従う方法は、好ましくは、摂氏50度よりも高いインキュベーション温度を用いる。酵素インキュベーションが、24時間よりも短い、好ましくは8時間よりも短い、より好ましくは4時間よりも短い時間で実行される1段階の酵素的方法との組み合わせで、本発明に従う方法は、改善された微生物学的安定性という利点を提供する。 ウシの乳カゼインには、ベータ−カゼインおよびカッパー−カゼインを含む多数の異なるタンパク質が取り込まれている。既知のアミノ配列によると、ベータ−カゼインは、ACE阻害性トリペプチドIPP(Ile−Pro−Pro)、VPP(Val−Pro−Pro)およびLPP(Leu−Pro−Pro)を包含する。カッパー−カゼインは、IPPのみを包含する。実施例5において、本発明者らは、A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼと共にカゼインカリウムをインキュベートすることにより、既知のACE阻害ペプチドIPPおよびLPPが高収率で生成されることを示す。高温条件と組み合わせて本発明の酵素−基質比を用いて、IPPおよびLPPの切除は3時間以内のインキュベーション時間で完了される。かなり驚くことに、著しい量のトリペプチドVPPの付随的な(concommittant)産生は実証することができない。A.ニガー由来の酵素は測定可能なアミノペプチダーゼ活性を含有しないという事実は、形成されるIPPが、カッパー−カゼイン中に存在する−A107−I108−P109−P110−配列から放出されることを強く示唆する。おそらく、IPPのカルボキシ末端ペプチド結合は、A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼの主活性によって切断されるのに対して、先行するAla−Ile結合の切断は、そのAla特異的な副活性によって達成される。従って、本発明は、製造されるIPP対VPPの比率が少なくとも5、好ましくは少なくとも10、そしてより好ましくは少なくとも20である、タンパク質源からIPPを製造するための方法を提供し、該方法は、プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性を有する酵素と、IPPのアミノ末端側で結合を加水分解することができる酵素との使用を含む。好ましくは、−I−P−P−のアミノ末端結合を加水分解することができる酵素は、同時に、−V−P−P−のアミノ末端結合を加水分解することができないか、あるいはそのための活性が低い。2つの酵素活性が本発明の目的のために言及されているが、それぞれプロリン特異的エンドプロテアーゼ活性および−I−P−P−のアミノ末端結合の加水分解活性の両方の活性を同時に有する酵素も本発明において使用することができ、その例は、好ましくは、A.ニガーに由来する、本明細書中に記載されるようなプロリン特異的エンドプロテアーゼである。 本発明に従う選択された加水分解方法のために、従来技術の方法よりも少数の水溶性ペプチドが形成されるであろう。これらの中に、水溶性ペプチドIPPおよび任意でLPPが多量に存在する。これは、活性が低いことが多い多数の他の化合物なしに、高濃度のIPPおよび任意でLPP化合物が必要とされる場合に特に重要である。 本発明の方法によると、タンパク質中に存在する−A−I−P−P−または−A−L−P−P−配列の好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、最も好ましくは少なくとも40%が、IPPまたはLPPにそれぞれ変換される。さらに、本発明の方法によると、タンパク質中に存在する−P−L−P−P−または−P−I−P−P−配列の好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%、さらにより好ましくは少なくとも40%、そして最も好ましくは少なくとも50%が、LPPまたはIPPにそれぞれ変換される。 実施例6では、本発明者らは、新しい驚くべき精製ステップによるIPPの5倍の精製効果を説明する。この方法では、加水分解物は、摂氏55度、pH6.0において短い酵素インキュベーション時間の間に形成され、次に摂氏80度よりも高い温度に加熱され、全ての汚染微生物を殺して、A.ニガー由来のプロリルエンドペプチダーゼを不活性化する。続いて、加水分解物は酸性にされ、4.5あるいは少なくとも5.0より低いpHへのpH降下を実現する。酵素の最適条件を示すので、A.ニガー由来のプロリルエンドペプチダーゼを不活性化するために使用することができないこのpH値では、カゼイン塩からの全ての大きいペプチドは沈殿し、より小さいペプチドだけが溶液中に残る。沈殿したカゼイン塩はデカンテーションまたはろ過ステップもしくは低速(すなわち、5000rpmより低い)遠心分離によって容易に除去することができるので、水相は、存在するタンパク質の量に対して高い割合の生物活性ペプチドを含有する。ケルダール(Kjeldahl)データによると、カゼイン塩タンパク質の80〜70%は低速遠心分離ステップによって除去され、これにより、ACE阻害ペプチドの4〜5倍の精製が暗示される。本発明者らは、この精製原理が、カゼイン以外のタンパク質材料から得られる生物学的に活性なペプチドを得るためにも有利に適用され得ることを発見した。また、酵素的に製造される加水分解物だけでなく、適切な微生物により発酵される(fermentated)タンパク質も、本発明の方法に従って分離におよび精製することができる。基質が沈殿することができ、酵素がまだ活性であるpHに近いpH値で酵素および基質をインキュベートすると、この精製ステップが可能にされるであろう。A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼのpH最適条件が低いために、pHが1.5と6.5の間の範囲の基質の沈殿を考慮することができる。その特異的な沈殿挙動を考慮して、pH3.5よりも高いグルテン沈殿物、pH3.5よりも高くpH6.0よりも低い乳漿タンパク質沈殿物、pH3.5よりも高くpH5.0よりも低い卵白沈殿物は、それによって加水分解タンパク質沈殿物そして沈殿したタンパク質を加水分解タンパク質またはペプチドから分離することができる条件の例を成す。加水分解物のこの可溶性画分は、加水分解物という表現によっても含まれる。この酸可溶性加水分解物は、本発明に従うタンパク質を加水分解し、その後不溶性の加水分解部分を可溶性ペプチドから分離できるように酸性条件を修正することによって形成される。この分離は、例えば不溶性部分の沈降または遠心分離によって行なうことができる。グルテン加水分解物では、酸性分離条件は好ましくはpH=4であり、乳漿加水分解物では、酸性条件は好ましくはpH=4.5であり、カゼイン加水分解物では、酸性条件は好ましくはpH=4.5であり、そして卵白では、酸性条件は好ましくはpH=5.0である。一般に、分離のための好ましい酸性条件は、pH=4.5である。 加水分解物とは、タンパク質の加水分解によって形成される生成物(あるいは簡単に、タンパク質加水分解物または加水分解タンパク質)を意味し、酸可溶性加水分解物は、本明細書中では可溶性ペプチド含有組成物または可溶性ペプチドを含む組成物としても記載されているタンパク質加水分解物の可溶性画分、またはタンパク質加水分解物および酸可溶性加水分解物の混合物である。 栄養補給食品用途ならびに食料および飲料用途では、本発明の加水分解物は有利に使用される。タンパク質加水分解物、酸可溶性加水分解物およびその混合物は、栄養補給食品用途、食料用途または飲料において使用することができる。好ましくは、高含量の活性ペプチドが存在するため、酸可溶性加水分解物は栄養補給食品用途、食料用途または飲料において使用される。チーズの製造方法においてカゼイン凝乳を乳漿タンパク質から分離するために同様の原理が用いられるが、チーズの製造方法では、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC3.4.23)のみが使用される。この酵素の種類(EC3.4.23)には、キモシンや、哺乳類の(mammelian)ペプシンならびにアスペルギロペプシンおよびムコールペプシンのような様々な微生物のペプシンなどの様々なペプシンのようなよく知られたチーズ製造酵素が組み入れられる。本出願では、チーズ製造方法における凝乳または乳漿は、加水分解物ではないと定義される。さらに、本発明の加水分解方法では、有利に、アスパラギン酸エンドプロテアーゼ(EC3.4.23)は使用されない。さらに、上記のように、本発明に従う精製方法は、非アスパラギン酸エンドプロテアーゼにより製造される加水分解物のためには知られていない。 チーズ製造方法または凝乳/乳漿分離方法は本発明の精製方法から排除され、従って、本発明の精製方法は、この方法がチーズ製造方法または凝乳/乳漿分離方法の一部ではないことを条件として、可溶性ペプチドを得ることに関する。 この精製ステップとチーズ製造方法とは、表面的な類似にもかかわらず完全に異なる。チーズの製造では、凝乳の形成は、酵素ステップ(「レンネッティング(renneting)」)または酸性化ステップのいずれかによって開始される。しかしながら、レンネッティング方法が酸性化とは無関係に進行するのに対して、酸性化によるチーズ凝乳の凝固は酵素とは無関係に進行する。 別の精製方法では、ペプチドは、エタノール、アセトン、プロパノール−1、プロパノール−2、メタノールまたはこれらの混合物などの水に混和性の溶媒を用いて、本発明の方法に従って加水分解タンパク質から便利および効率的に回収される。このアプローチでは、タンパク質加水分解物は、好ましくは、選択されたpH条件下で、30〜60%(v/v)の水に混和性の溶媒と注意深く混合され、その結果、より大きいタンパク質は沈殿し、IPPなどの小さいペプチドは溶液中に残る。 分離、例えばデカンテーション、ろ過または低速遠心分離の後、生物学的に活性なペプチドを含有する上澄みは、精製した状態で回収することができる。この得られたペプチド含有組成物(または可溶性ペプチド含有組成物)は、例えば活性ACE阻害ペプチドのレベルを上昇させるために(実施例12および13を参照)さらなる酵素により任意で処理されるか、あるいはペプチド組成物は、活性炭、アンバーライト(Amberlite)XAD系列(ローム(Rohm))からのクロマトグラフィー樹脂またはファルマシア(Pharmacia)により供給されるようなブチル−セファロース樹脂などの選択的なバインダーと接触されてもよい。次の蒸発および任意のスプレー乾燥ステップは、高生物活性を有する食品グレードのペーストまたは粉末を得るための経済的な経路をもたし得る。カゼイン塩の消化において、IPPおよびLPPが豊富な高濃度のACE阻害ペプチドを有する白色無臭の粉末が得られる。正確なトリペプチド濃度に適切に希釈されれば、全ての種類の食料および飲料にACE阻害特性を与えるために適切な、優れた嗜好性を有する多用途の出発材料が得られる。必要であれば、生物活性成分の濃度は、ペプチドIPPおよびLPPの疎水特性を用いる次の精製によってさらに増大させることができる。好ましい精製方法には、ナノろ過、例えばヘキサンまたはブタノールによる抽出の後、蒸発/沈殿、もしくは活性炭またはアンバーライトXAD系列(ローム(Roehm))からのクロマトグラフィー樹脂のようなバインダーと、得られた酸性化加水分解物との接触が含まれる。また、ファルマシアにより供給されるようなブチル−セファロース樹脂を使用することもできる。このような材料からのACE阻害ペプチドの脱離は、メタノール/エタノール混合物またはプロパノールのような有機溶媒を用いて行うことができる。 さらなる(例えば、クロマトグラフィー)精製ステップの前または後のいずれかに得られるようなペプチドは、定期的に広く消費される食料または飲料品に取り込むために使用され得る。このような製品の例は、マーガリン、スプレッド、バターまたはヨーグルトなどの様々な酪農製品、もしくは牛乳または乳漿含有飲料、好ましくはヨーグルトおよび牛乳などのヨーグルトまたは牛乳ベースの製品である。また、果実飲料または大豆飲料などの他の飲料においても、本発明の加水分解物を用いることができる。別の選択肢は、果実バー、タンパク質バー、エネルギーバー、シリアルベースの製品、例えば朝食用シリアルなどの健康製品における加水分解物の使用である。 本発明のもう1つの態様は、本明細書において前に記載した方法または記載したプロセスによって得ることができる食品、飲料品または食餌サプリメントに関し、食料または飲料品を調製するための前記方法は、(a)タンパク質から製造されるIPP対VPPの重量比が少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、そしてより好ましくは少なくとも20:1であり、プロリン特異的エンドプロテアーゼの使用を含む、タンパク質源からIPP含有組成物を製造するステップと、(b)前記IPP含有組成物を食品、飲料品または食餌サプリメント中に取り込むステップとを含む。好ましくは、本発明に従う前記食品、飲料品または食餌サプリメントは、0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、最も好ましくは0.2〜4重量%の前記IPP含有組成物またはタンパク質加水分解物を含む。また好ましくは、本発明に従う食料または飲料品または食餌サプリメントは、100グラムの製品あたり、0.05〜50mgのIPP、より好ましくは0.1〜40mgのIPP、最も好ましくは0.2〜30mgのIPPを含む。また好ましくは、本発明の食料または飲料品または食餌サプリメントにおいて、IPP対VPPの重量比は、5:1〜100:1、より好ましくは5:1〜48:1である。また好ましくは、本発明に従う食品、飲料品または食餌サプリメントはIPPおよびLPPの両方を含み、IPP対LPPの重量比は、1:10〜1:1、より好ましくは1.5:7.1〜4.8:7.1である。 好ましくは、食料または飲料品または食餌サプリメントは、マーガリン、スプレッド、バター、酪農製品または乳漿含有飲料、好ましくはヨーグルトまたは牛乳などのヨーグルトまたは牛乳ベースの製品の群から選択され、前記食料または飲料品または食餌サプリメントは、前述の量のタンパク質加水分解物または前述の量のIPPを含む。 特に好ましいのは、ヒトの高血圧症の軽減に使用するための本明細書中の上記の食料または飲料品または食餌である。食料または飲料または食餌サプリメントの好ましい1回の摂取分量は、例えば、1回の摂取量あたり5〜350グラム、例えば5〜150グラムである。好ましくは、1日あたりの摂取の回数は1〜10回、例えば2〜5回である。 このような組成物は通常ヒトに投与されるが、高血圧症を軽減するために動物、好ましくは哺乳類に投与されてもよい。さらに、得られる製品中のACE阻害薬または他の生物学的に活性なペプチドが高濃度であれば、これらの製品は、丸薬、錠剤または高濃度の溶液またはペーストまたは粉末の形態の食餌サプリメント中に取り込むために非常に有用になる。ACE阻害ペプチドまたは他の物学的に活性なペプチドの連続的な放出を保証できる緩効性の食餌サプリメントは特に関心がもたれている。本発明に従うACE阻害ペプチドまたは他の生物学的に活性なペプチドは、例えば丸薬、錠剤、顆粒、サシェまたはカプセル剤において乾燥粉末として調剤することができる。あるいは、本発明に従う酵素は、例えばシロップ剤またはカプセル剤において液体として調剤されてもよい。様々な製剤において使用され、本発明に従う酵素を含有する組成物は、パッケージング、送達、吸収、安定化、あるいは補助剤の場合には酵素の生理学的効果を高めることを助ける生理学的に許容可能なキャリア、補助剤、賦形剤、安定剤、緩衝剤および希釈剤(これらの用語は物質を表すためにその普通の意味で使用される)からなる群の少なくとも1つの化合物も取り込むことができる。粉末形態の本発明に従う酵素と組み合わせて使用することができる様々な化合物の関連のある背景は、「医薬剤形(Pharmaceutical Dosage Forms)」、第2版、第1、2および3巻、ISBN0−8247−8044−2、マーセル・デッカー社(Marcel Dekker,Inc.)において見ることができる。乾燥粉末として調剤された本発明に従うACE阻害ペプチドはかなり長期間保存することができるが、水蒸気または湿った空気との接触は、例えばアルミニウムブリスターなどの適切なパッケージングを選択することによって回避しなければならない。比較的新しい経口適用形態は、様々なタイプのゼラチンカプセル剤またはゼラチンベースの錠剤の使用である。 高血圧症に対抗するための天然ACE阻害ペプチドの関連性を考慮して、本発明の費用効果の高い新しい経路は、穏やかな降圧性の栄養製品、あるいはまさに獣医製品のための魅力的な出発点を提供する。また本発明の経路は驚くほど簡単な精製ステップを含むので、血圧を低下させる濃縮食餌サプリメントの可能性も拡大される。 本発明に従う方法は、プロリン特異的オリゴ−またはエンドプロテアーゼを用いて達成することができる。本発明に従うかあるいは本発明に従って使用されるプロリン特異的オリゴペプチダーゼは、EC3.4.21.26に属する酵素を意味する。 本発明に従うかあるいは本発明に従って使用されるプロリン特異的エンドプロテアーゼは、好ましくは、国際公開第02/45524号パンフレットの請求項1〜5、11および13において言及されるようなポリペプチドを意味する。従って、このプロリン特異的エンドプロテアーゼは、プロリン特異的エンドタンパク質分解活性を有するポリペプチドであり、(a)配列ID番号2のアミノ酸1〜526またはその断片と少なくとも40%のアミノ酸配列の同一性を有するアミノ酸配列を有するポリペプチドと、(b)低ストリンジェンシー条件下で、(i)60、好ましくは100のヌクレオチドにわたって少なくとも80%または90%同一であり、より好ましくは200ヌクレオチドにわたって少なくとも90%同一である配列ID番号1の核酸配列またはその断片、もしくは(ii)配列ID番号1の核酸配列と相補的な核酸配列とハイブリッド形成するポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドと、からなる群から選択される。配列ID番号1および配列ID番号2は国際公開第02/45524号パンフレットに示される。好ましくは、ポリペプチドは単離された形である。 本発明に従って使用される好ましいポリペプチドは、配列ID番号2のアミノ酸1〜526と少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、好ましくは少なくとも65%、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらにより好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%、そしてさらに最も好ましくは少なくとも約97%の同一性を有するアミノ酸配列を有するか、あるいは配列ID番号2のアミノ酸配列を含む。 好ましくは、ポリペプチドは、低ストリンジェンシー条件、より好ましくは中ストリンジェンシー条件、最も好ましくは、高ストリンジェンシー条件下で、(i)配列ID番号1の核酸配列またはその断片、あるいは(ii)配列ID番号1の核酸配列と相補的な核酸配列とハイブリッド形成するポリヌクレオチドによってコードされる。 「ハイブリッド形成できる」という用語は、本発明の標的のポリヌクレオチドが、バックグラウンドよりも著しく高いレベルでプローブ(例えば、配列ID番号1で示されるヌクレオチド配列、またはその断片、または配列ID番号1の相補体)として使用される核酸とハイブリッド形成可能であることを意味する。また本発明は、本発明のプロリン特異的エンドプロテアーゼをコードするポリヌクレオチド、およびそれと相補的なヌクレオチド配列も含む。ヌクレオチド配列はRNAでもDNAでもよく、ゲノムDNA、合成DNAまたはcDNAが含まれる。好ましくは、ヌクレオチド配列はDNAであり、最も好ましくはゲノムDNA配列である。通常、本発明のポリヌクレオチドは、選択的な条件下で配列ID番号1のコード配列またはコード配列の相補体とハイブリッド形成することができるヌクレオチドの近接する配列を含む。このようなヌクレオチドは、当該技術分野においてよく知られた方法に従って合成することができる。 本発明のポリヌクレオチドは、バックグラウンドよりも著しく高いレベルで配列ID番号1のコード配列またはコード配列の相補体とハイブリッド形成することができる。バックグラウンドハイブリダイゼーションは、例えば、cDNAライブラリに存在する他のcDNAにより発生し得る。本発明のポリヌクレオチドと、配列ID番号1のコード配列またはコード配列の相補体との間の相互作用によって発生されるシグナルレベルは、通常、他のポリヌクレオチドと配列ID番号1のコード配列との間の相互作用の強さの少なくとも10倍、好ましくは少なくとも20倍、より好ましくは少なくとも50倍、さらにより好ましくは少なくとも100倍である。相互作用の強度は、例えば、プローブを例えば32Pで放射標識することによって測定され得る。選択的なハイブリダイゼーションは、通常、低ストリンジェンシー(約40℃において0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)、中ストリンジェンシー(例えば、約50℃において0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)、または高ストリンジェンシー(例えば、約60℃において0.3M塩化ナトリウムおよび0.03Mクエン酸ナトリウム)の条件を用いて達成され得る。 UWGCGパッケージは、同一性を計算するために使用することができるBESTFITプログラムを提供する(例えばそのデフォルト設定において使用される)。 PILEUPおよびBLAST Nアルゴリズムも、配列の同一性を計算するため、または配列を並べるため(例えばそのデフォルト設定において等価または対応する配列を同定するなど)に使用することができる。 BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、ナショナル・センター・フォア・バイオテクノロジー・インフォメーション(National Center for Biotechnology Information)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)により公に利用可能である。このアルゴリズムは、まず、データベース配列内の同じ長さのワードと整列させたときにある正の値のしきい値スコアTと一致するか、あるいは満足させるクエリー配列内の長さWのショートワードを同定することによって、スコアの高い配列対(HSP)同定することを含む。Tは、近隣ワードスコアしきい値と称される。これらの初期の近隣ワードヒットは、検索を開始してこれらを含むHSPを見つけるための種の役割を果たす。ワードヒットは、累積アライメントスコアが増大され得る限りは、各配列に沿って両方向に拡張される。累積アライメントスコアがその最大達成値から量Xだけ低下するか、1つまたは複数の負のスコアの残基アライメントの蓄積のために累積スコアがゼロまたはそれ以下になるか、あるいはいずれかの配列の端部に到達したら、各方向のワードヒットの拡張は中止される。BLASTアルゴリズムのパラメータW、TおよびXは、アライメントの感度および速度を決定する。BLASTプログラムは、デフォルトとして、11のワード長(W)、50のBLOSUM62スコアリング行列アライメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=4、および両方のストランドの比較を用いる。 BLASTアルゴリズムは、2つの配列間の類似性の統計的分析を実行する。BLASTアルゴリズムにより提供される類似性の1つの尺度は最小和の確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列間の一致が偶然に発生し得る確率の表示を提供する。例えば、第2の配列に対する第1の配列の比較における最小和の確率が約1未満、好ましくは約0.1未満、より好ましくは約0.01未満、最も好ましくは約0.001未満であれば、配列はもう1つの配列に類似していると考えられる。 アスペルギルス属の株は食品グレードの状態を有し、これらの微生物に由来する酵素は、疑いなく食品グレードの源からのものであることが知られている。もう1つの好ましい実施形態によると、酵素はその産生細胞により分泌され、分泌されないいわゆる細胞質ゾル酵素ではない。このようにして、酵素は、高価な精製ステップなしに、細胞ブロスから本質的に純粋な状態で回収することができる。好ましくは、酵素は、広いpHおよび温度条件下でその基質に対する高親和性を有する。材料および方法材料 食用カゼインカリウムスプレー(88%)は、オランダのDMVインターナショナル(DMV International)から入手した。合成色素ペプチドは、オランダのペプスキャン・システムズ社(Pepscan Systems B.V.)またはスイスのバヒェム(Bachem)のいずれかから入手した。 フレーバーザイム(Flavourzyme)1000LバッチHPN00218は、ノボザイムズ(Novozymes)(デンマーク)から入手し、スミチーム(Sumizyme)FPはシンニホン(Shin Nihon)(日本)から入手し、コロラーゼLAP Ch.:4123はABエンザイムズ(AB Enzymes)(UK)から入手した。A.ニガーからのプロリン特異的エンドプロテアーゼ アスペルギルス・ニガーからのプロリン特異的エンドプロテアーゼの過剰産生は、国際公開第02/45524号パンフレットに記載されるように達成した。酵素の活性は、クエン酸/リン酸二ナトリウム緩衝液pH4.6中、摂氏37度で合成ペプチドZ−Gly−Pro−pNAにおいて試験した。反応性生物を405nMで分光光度的に監視した。単位は、これらの試験条件下で1分につき1μmolのp−ニトロアニリドを遊離する酵素の量と定義される。A.ニガー由来のエンドプロテアーゼのクロマトグラフィー精製 プロテアーゼのクロマトグラフィー精製のためにA.ニガー株を過剰産生することから得られる培養ブロスを使用して、汚染エンド−およびエキソタンパク質分解活性を除去した。そのために、発酵ブロスをまず遠心分離して真菌量の大部分を除去し、次に低下していく細孔サイズを有する多数のフィルターに上澄みを通過させて全ての細胞断片を除去した。最後に、20ミリモル/リットルの酢酸ナトリウムpH5.1で、得られた限外ろ過液を10倍に希釈し、Q−セファロース(Sepharose)FFカラムに適用した。20ミリモル/リットルの酢酸ナトリウムpH5.1中、0〜0.4モル/リットルのNaClでタンパク質をグラジエント溶出させた。World Journal of Microbiology & Biotechnology 11、209−212頁(1995年)に記載される手順に従って、しかしわずかに変更したアッセイ条件下で、Z−Gly−Pro−pNAの切断に対する活性を示すピークフラクションを捕集および貯蔵した。A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼの酸性pH最適条件を考慮して、37℃のクエン酸/二リン酸緩衝液中pH4.6で酵素アッセイを実行した。活性フラクションの貯蔵後に濃縮し、SDS−PAGEにおいて単一のバンドのみを示すと共にHP−SECにおいて1つのピークを示す調製物を最終的にもたらした。疎水性相互作用クロマトグラフィーによるさらなる分析で、得られた酵素調製物の純度を確認した。LC/MS/MS分析 P4000ポンプ(オランダ、ブレダのサーモ・エレクトロン(Thermo Electron))に結合されたイオントラップ質量分析計(オランダ、ブレダのサーモ・エレクトロン)を用いるHPLCを使用して、関心のあるペプチド、特に本発明に従う方法で製造された酵素的タンパク質加水分解物中のペプチドIPP(M=325.2)、LPP(M=325.2)、VPP(M=311.2)、VVVPP(M=509.3)およびVVVPPF(M=656.4)を定量した。形成されたペプチドを、溶離のためのミリQ水中0.1%のギ酸(米国マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア(Millipore)、溶液A)およびアセトニトリル中0.1%のギ酸(溶液B)のグラジエントと組み合わせてイナートシル(Inertsil)3ODS3、3μm、150*2.1mmカラム(ベルギー、ベルギーのバリアン(Varian))を用いて分離した。グラジエントは100%の溶液Aで開始し、そこで5分間保持し、5%のBまで10分で直線的に増大させた後、45%の溶液Bまで30分で直線的に増大させ、直ちに出発条件まで戻し、そして安定させるためにそこで15分間保持した。使用した注入体積は50マイクロリットル、流速は200マイクロリットル/分であり、カラム温度は55℃に保持した。注入サンプルのタンパク質濃度は、約50マイクログラム/ミリリットルであった。 約30%の最適衝突エネルギーを用いて、関心のあるペプチドのための専用のMS/MSを使用することにより個々のペプチドの詳細な情報を得た。内部較正を用い、イソロイシンN15、C13標識IPP(M=332.2)を全体的に用い、分析した全ての関連のあるペプチドのためのMS/MSモードにおいて観察された最も豊富な断片イオンを用いることによって、個々のペプチドの定量を実施した。使用した全てのペプチドは、ペプスキャン(Pepscan)(オランダ、レリスタッド)により合成された。 トリペプチドLPP(M=325.2)を用いて、5μg/mlの一定の注入を行いながらMSモードにおける最適感度、およびMS/MSモードにおける最適断片化を調整し、MSモードにおいてプロトン化分子が得られ、MS/MSモードにおける約30%の最適衝突エネルギーはB−およびY−イオン系列を発生した。 LC/MS/MSの前に、酵素的タンパク質加水分解物を周囲温度および13000rpmで10分間遠心分離し、0.22μmフィルターによりろ過し、上澄みをミリポア(Millipore)水ろ過装置によりろ過した脱塩水(ミリ(Milli)Q水)で1:100に希釈した。加水分解度 様々なタンパク質分解混合物とのインキュベーション中に得られる加水分解度(DH)を、高速OPA試験を用いて監視した(P.M.ニールセン(Nielsen)、D.ピーターセン(Petersen)、C.ダンブマン(Dambmann)、食品タンパク質の加水分解度を決定するための改善された方法、Journal of Food Science、2001年、第66巻、642−646頁)。ケルダール窒素 全ケルダール窒素をフローインジェクション分析により測定した。TKNメソッド・カセット(Method Cassette)5000−040を備えたテカトール(Tecator)フィアスター(FIASTAR)5000フローインジェクションシステム、SOFIAソフトウェアを有するペンティアム(Pentium、登録商標)4コンピュータ、およびテカトール5027オートサンプラーを用いて、タンパク質含有溶液から放出されたアンモニアを590nmで定量した。方法のダイナミックレンジに対応するサンプル量(0.5〜20mgN/l)を95〜97%硫酸およびケルタブ(Kjeltab)と一緒に消化管内に置き、摂氏200度で30分、その後摂氏360度で90分の消化プログラムを受けさせた。フィアスター5000システムに注入した後、窒素ピークを測定し、それから測定されたタンパク質の量を推定することができる。栄養補給製品 本発明に従う栄養補給製品は、どんな食品のタイプでもよい。これらは食品に加えて、適切な量のフレーバー、糖、果実、ミネラル、ビタミン、安定剤、増粘剤などの普通の食品成分を含むことができる。 好ましくは、栄養補給製品は、50〜200mmol/kgのK+および/または15〜60mmol/kgのCa2+および/または6〜25mmol/kgのMg2+、より好ましくは100〜150mmol/kgのK+および/または30〜50mmol/kgのCa2+および/または10〜25mmol/kgのMg2+、そして最も好ましくは110〜135mmol/kgのK+および/または35〜45mmol/kgのCa2+および/または13〜20mmol/kgのMg2+を含む。これらのカチオンは、本発明に従う栄養補給製品中に取り込まれたときに血圧をさらに低下させるという有益な効果を有する。 有利に、栄養補給製品は、1つまたは複数のB−ビタミンを含む。 B−ビタミン葉酸は、ヒトの食餌におけるアミノ酸であるホモシステインの代謝に関与することが分かっている。何年もの間、高ホモシステインレベルは、心血管疾患の高発生率と関連付けられている。ホモシステインを低下させると、心血管疾患の危険が低減され得ると教示されている。 ビタミンB6およびB12はプリンおよびチアミンの生合成を妨害して、メチオニンを産生するためのホモシステインのメチル化の過程およびいくつかの成長過程でメチル基の合成に関与することが分かっている。ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩)は既知のビタミンサプリメントである。ビタミンB12(シアノバラミン)は神経系の健康に寄与し、赤血球の産生に関与する。食品サプリメント中のビタミンとしても知られている。 心血管疾患の危険の低減に対するこれら組み合わされたよい影響のために、本発明に従う製品は、ビタミンB6およびビタミンB12および葉酸を含むことが好ましい。 栄養補給製品中のB−ビタミンの量は、本明細書中で与えられるこれらのB−ビタミンの1日の量に基づいて当業者により計算され得る。葉酸では、200〜800μg/日、好ましくは200〜400μg/日であり、ビタミンB6では、0.2〜2mg/日、好ましくは05〜1mg/日であり、そしてビタミンB12では、0.5〜4μg/日、好ましくは1〜2μg/日である。 好ましくは、栄養補給製品は、3〜25重量%のステロール、より好ましくは7〜15重量%のステロールを含む。ステロールを取り込むことの利点は、ヒトの血液中のLDL−コレステロールのレベルの低下を引き起こし、その結果心血管の危険が低減し得ることである。 ステロールについて言及する場合、これには、飽和スタノールおよびステロール/スタノールのエステル化誘導体またはこれらのいずれかの混合物が含まれる。 本出願では、ステロールエステルについて言及する場合、これには、その飽和誘導体、スタノールエステル、およびステロールエステルとスタノールエステルの組み合わせも含まれる。 ステロールもしくは植物ステロールまたはベジタブルステロールとしても知られるフィトステロールは、4−デスメチルステロール、4−モノメチルステロールおよび4,4’−ジメチルステロールの3つのグループに分類することができる。油の中で、これらは、主に、遊離ステロールおよび脂肪酸のステロールエステルとして存在するが、ステロールグルコシドおよびアシル化ステロールグルコシドも存在する。3つの主要なフィトステロール、すなわちベータ−シトステロール、スチグマステロールおよびカンプエステロールがある。意図される構成要素の概略図は、「食用植物性油のステロールにおける処理の影響」、S.P.コチャール(Kochhar)、Prog.Lipid Res.第22巻、161−188頁において与えられる。 シトスタノール、カンプエスタノールおよびエルゴスタノールならびにその誘導体などのそれぞれの5アルファ−飽和誘導体は、本明細書ではスタノールと称される。好ましくは、(任意でエステル化された)ステロールまたはスタノールは、β−シトステロール、β−シトスタノール、カンプエステロール、カンプエスタノール、スチグマステロール、ブラシカステロール、ブラシカスタノールまたはこれらの混合物の脂肪酸エステルを含む群から選択される。 ステロールまたはスタノールは、任意で、少なくとも部分的に脂肪酸でエステル化される。好ましくは、ステロールまたはスタノールは、1つまたは複数のC2〜22脂肪酸でエステル化される。本発明の目的のために、C2〜22脂肪酸という用語は、C2〜22主鎖と、少なくとも1つの酸基とを含む分子を指す。本発明の関係においては好ましくないが、C2〜22主鎖は部分的に置換されていてもよく、あるいは側鎖が存在してもよい。しかしながら好ましくは、C2〜22脂肪酸は、1つまたは2つの酸基を末端基として含む線状分子である。最も好ましいのは、天然油中に存在するので、線状のC8〜22脂肪酸である。 このような脂肪酸の適切な例は、酢酸、プロピオン酸、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸である。他の適切な酸は、例えば、クエン酸、乳酸、シュウ酸およびマレイン酸である。最も好ましいのは、ミリスチン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、セトレイン酸、エルカ酸、エライジン酸、リノール酸およびリノレン酸である。 所望される場合、ステロールまたはスタノールのエステル化のために脂肪酸の混合物が使用されてもよい。例えば、脂肪酸源として天然に存在する脂肪または油を使用すること、そしてエステル交換反応によりエステル化を実行することが可能である。 心血管の健康の増進に寄与する上記の栄養補給成分、K+、Ca2+およびMg2+、B−ビタミン(葉酸、B6、B12)ならびにステロールは、本明細書中では、集合的に心臓の健康成分(heart health ingredient)と称される。実施例1A.ニガーから得られる酵素は、新しい種類のプロリン特異的酵素を表す。 国際公開第02/45524号パンフレットにおいて提供されるようなA.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼの全コード配列から、526アミノ酸タンパク質配列を決定することができる。SwissProt、PIRおよびtrEMBLなどのデータベースのBLAST検索によって酵素の新規性を確認した。驚くことに、A.ニガー酵素と、既知のプロリルオリゴペプチダーゼとの間に、明白な相同性は検出できなかった。しかしながら、アミノ酸配列をさらに精密に検査すると、Pro−Xカルボキシペプチダーゼ(EC3.4.16.2)、ジペプチジルアミノペプチダーゼI(EC3.4.14.2)、および胸腺(thymus)特異的セリンプロテアーゼに対して、低いが有意な相同性が明らかになった。これらの酵素は全て、セリンペプチダーゼのクラン(clan)SCのファミリーS28に割り当てられている(タンパク質分解酵素のハンドブック、A.J.バレット(Barrett)、N.D.ローリングス(Rawlings)、J.F.ウェスナー(Woessner)編、アカデミック・プレス(Academic Press)、英国ロンドン、1998年、369−415頁)。また、活性部位セリンのまわりのGxSYxG配置は、これらの酵素とA.ニガー由来のエンドプロテアーゼとの間で保存される。さらに、ファミリーS28のメンバーは酸性pHの最適条件を有し、プロリン残基のカルボキシ末端側での切断に対する特異性を有し、そしてA.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼと同様のシグナル配列およびプロペプチドを用いて合成される。また、A.ニガー酵素のサイズは、ファミリーS28のメンバーと類似している。従って、A.ニガープロリン特異的エンドプロテアーゼは、フラボバクテリウム・メニンゴセプチカム(flavobacterium meningosepticum)から得られる酵素を含むほとんどの細胞質ゾルのプロリルオリゴペプチダーゼが分類されるS9ファミリーではなく、セリンプロテアーゼのファミリーS28のメンバーであると思われる。これらの構造的および生理学的な特徴に基づいて、本発明者らは、A.ニガー酵素は、セリンプロテアーゼのクラン(clan)SCのS9ファミリーではなくS28に属すると結論を出した。S9ファミリーに属するプロリルオリゴペプチダーゼからA.ニガー由来の酵素を区別するさらなる特徴は、前者のファミリーに属する細胞質ゾルのプロリルエンドプロテアーゼとは違って、新しく同定されたA.ニガー酵素は、成長培地中に分泌されるという事実である。実施例2A.ニガーから得られるプロリン特異的エンドプロテアーゼのpHおよび温度の最適条件 A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼのpH最適条件を確立するために、様々なpH値を有する緩衝液を調製した。0.05モル/lの酢酸Naおよび0.02MのCaCl2を用いてpH4.0−4.5−4.8−5.0−5.5および6.0の緩衝液を作製し、0.02MのCaCl2を含有する0.05MのTris/HCl緩衝液を用いてpH7.0および8.0の緩衝液を作製した。酢酸およびHClをそれぞれ用いてpH値を調整した。基質として色素性合成ペプチドZ−Gly−Pro−pNAを用いた。「pNA」(p−ニトロアニリド)基質は、X−pNAペプチド結合が切断されると色の変化を引き起こす。緩衝溶液、基質溶液およびプロリルエンドプロテアーゼ前希釈物(0.1U/mLの活性)を水浴中で正確に37.0℃に加熱した。混合した後、405nmにおいて37.0℃で3.5分間、0.5分毎に測定しながら反応を分光光度的に追跡した。図1に示される結果から、A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼは、4付近でpH最適条件を有することが明らかである。 また、プロリルエンドプロテアーゼの温度最適条件を確立した。そのために、基質としてカゼイレ・リゾルフィン(Caseine Resorufine)(オランダ、アルメアのロシュ・ダイアグノスティックス(Roche Diagnostics)を用いて、異なる温度において、0.02mol/lのCaCl2を含有する0.1モル/lの酢酸Na中、pH5.0で2時間、精製した酵素調製物をインキュベートし、そして574nmで測定することにより酵素活性を定量した。得られた結果によると、A.ニガーからのプロリン特異的エンドプロテアーゼは、摂氏50度付近で温度最適条件を有する。実施例3A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼの特異性 発現カセットの多数のコピーを含有するA.ニガー株から得られたクルードサンプルおよびクロマトグラフィー精製した酵素サンプル(国際公開第02/45524号パンフレットを参照)を、色素ペプチド基質の捕集に対して試験して、コード化エンドプロテアーゼの特異性を確立した。AAXpNA基質において酵素のエンドタンパク質分解活性を試験した。ここで「X」は、異なる天然アミノ酸残基を表す。 AAX−pNA基質のストック溶液(150mmol/l)を、20CaCl2を含有する0.1Mの酢酸緩衝液pH4.0中で100×に希釈した。テカン・ジェニオス(TECAN Genios)MTPリーダー(ザルツブルク、ウィーン)において405nmで、摂氏40度で10分の反応速度測定は、光学濃度の増大を記録した。生成したデータをさらにエクセル(Excel)で処理して、図2に示される絵をもたらした。結果から、A.ニガー由来のエンドプロテアーゼは、アラニル結合に対する副活性と共に、プロリルペプチド結合に対して非常に特異的であることが明らかである。クルード調製物およびクロマトグラフィー精製した調製物は、同様の活性プロファイルを示した。実施例4A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼは、大きいタンパク質も小さいペプチドも加水分解することができ、従って真のエンドプロテアーゼである。 特異的な構造上の特徴により、セリンプロテアーゼのクラン(clan)SCのS9ファミリーに属するプロリルオリゴペプチダーゼは、30アミノ酸よりも大きいペプチドを消化することができない。この制限は、できるだけ速くかつ効率的に様々なタンパク質を加水分解すべき酵素にとって明らかな不都合である。A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼが、基質分子のサイズに関して同じ制限を示すかどうかを見るために、本発明者らは、A.ニガーからのクロマトグラフィー精製したプロリルエンドペプチダーゼを、小さい合成ペプチドおよび大きいオボアルブミン分子と共にインキュベートして、これらの基質分子の分解速度論を研究した。使用した合成ペプチドは、配列NH2−FRASDNDRVIDPGKVETLTIRRLHIPR−COOHの27−merであり、ペプスキャン・カンパニー(Pepscan company)(オランダ、レリスタッド)から得られた。そのアミノ酸配列により示されるように、このペプチドは2つのプロリン残基を含有し、1つはペプチドの中央にあり、1つは最後にある。 使用したインタクトなオボアルブミン分子(ピアス・イムジェクト(Pierce Imject)、20mgの凍結乾燥材料を含有するバイアル)は385のアミノ酸からなり、42750Daの分子量を有する。この分子は14個のプロリン残基を含有し、その1つは分子の最後のC末端部に位置し、プロリン特異的エンドプロテアーゼによって切断されることができない。 オボアルブミンおよびオリゴペプチドを、精製したA.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼと共に50℃で別々にインキュベートした。いくつかの時間間隔で、サンプルを採り、SDS−PAGEを用いて分析した。 4.5単位/mlの活性を有するクロマトグラフィー精製したA.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼを、20mMのCaCl2を含有する0.1Mの酢酸緩衝液pH4で100倍に希釈した。オボアルブミンを酢酸緩衝液pH4中に溶解して、1mg/ml(22μM)の濃度にした。27−merを同じ緩衝液中に溶解して、0.48mg/ml(152μM)の濃度を得た。オボアルブミンおよび27−mer溶液のモル濃度は、両方の溶液が切断可能なプロリン残基において同じモル濃度を含有するように選択した。オボアルブミンが13個の潜在的なプロリン切断部位を含有するのに対して、27−merペプチドは2つだけ有する。両基質溶液のうち0.5mlを、エッペンドルフ・サーモミキサー(Eppendorf thermomixer)中50℃で、10μl(0.45milliU)の酵素溶液と共にインキュベートした。いくつかの時間間隔で、インキュベーション混合物から10μlのサンプルを回収し、SDS−PAGEまで20℃で保持した。SDS−PAGEおよび染色のために使用した全ての材料は、インビトロジェン(Invitrogen)(オランダ、ブレダ)から購入した。サンプルは、製造業者の指示に従ってLDS緩衝液を用いて調製し、製造業者の指示に従ってMES−SDS緩衝系を用いて12%のBis−Trisゲルにおいて分離した。染色は、シンプリー・ブルー・セーフ・ステイン(Simply Blue Safe Stain)(コロイダル・クーマシー(Collodial Coomassie)G250)を用いて実行した。 図3において分かるように、オボアルブミンは、アスペルギルス由来の酵素によって、最初の4.75時間のインキュベーションで約35〜36kDの別々のバンドに切断される(レーン3)。長期のインキュベーション時間の結果、さらに、様々な分子量を有する小さい生成物に破壊される(レーン7)。 また、27−merペプチドおよび酵素とのインキュベーションは、レーン4、6および8におけるいくらかぼやけて、よりファジーなバンドから判断できるように、急速な分解をもたらす。27−merペプチドは、はるかに大きいオボアルブミン分子と同じペースで破壊されるので、S9ファミリーに属する既知のプロリルオリゴペプチダーゼとは違って、A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼは、はるかに大きいタンパク質よりも小さいサイズのペプチドを切断するための特異的な優先度を持たないと結論することができる。この観察により、A.ニガー由来の酵素が真のエンドプロテアーゼを表し、様々なタイプのタンパク質を加水分解する好ましい酵素であることが実証される。この発見は、以下の実施例で説明されるように、酵素の驚くべき使用を導く。実施例5A.ニガーからのプロリン特異的エンドプロテアーゼと共にカゼインカリウムをインキュベートすると、IPPおよびLPPが急速に生じるが、VPPは生じない。 この実験では、過剰産生した本質的に純粋なA.ニガーからのプロリン特異的エンドプロテアーゼをカリウムカゼイン塩と共にインキュベートして、ACE阻害ペプチドIPP、VPPおよびLPPの遊離を試験した。使用したエンドプロテアーゼは、純粋なプロリン特異的エンドプロテアーゼに固有のエンドタンパク質分解活性(すなわち、プロリンおよびアラニン残基のカルボキシ末端の切断)以外の顕著なタンパク質分解活性が存在しない(実施例7を参照)という本質的に純粋な意味であった。ACE阻害ペプチドの摂取の結果としてのナトリウムの摂取をできるだけ制限するために、このインキュベーションではカゼインカリウムを基質として使用した。 10%(w/w)タンパク質の濃度でカゼイン塩を摂氏65度の水中に懸濁させ、その後、リン酸を用いてpHを6.0に調整した。次に、懸濁液を摂氏55度に冷却し、4単位/グラムタンパク質の濃度のA.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼを添加した(単位定義については材料および方法セクションを参照)。連続的に攪拌しながら、この混合物を24時間インキュベートした。この期間中、さらなるpH調整は実行しなかった。インキュベーションの1、2、3、4、8および24時間後にサンプルを採った。各サンプルについて、サンプルを摂氏90度に5分間迅速に加熱することによって酵素活性を終了させた。冷却後、リン酸を用いて各サンプルのpHを4.5まで急速に低下させ、その後、ヘレウス(Hereaus)卓上遠心分離機において、懸濁液を3000rpmで5分間遠心分離した。LC/MS/MS分析のために完全に透明な上澄みを用いて、上澄み中のペプチドVPP、IPP、LPP、VVVPPおよびVVVPPFを定量した(材料および方法セクションを参照)。 ウシの乳カゼインは、ベータ−カゼインおよびカッパー−カゼインを含む多数の異なるタンパク質を取り込んでいる。既知のアミノ配列によると、ベータ−カゼインは、ACE阻害性トリペプチドIPP、VPPおよびLPPを包含する。ベータ−カゼイン中に、IPPは配列−P71−Q72−N73−I74−P75−P76−で含有され、VPPは配列−P81−V82−V83−V84−P85−P86−で含有され、そしてLPPは配列−P150−L151−P152−P153−で含有される。ベータ−カゼイン濃度のほとんど50%のモル濃度で酸沈殿カゼイン塩調製物中に存在するカッパー−カゼインは、IPPのみを包含する。カッパー−カゼイン中に、IPPは、配列−A107−I108−P109−P110−で含有される。カゼインの他のタンパク質成分は、IPP、VPPまたはLPPのいずれも含有しない。 表1および2は、酸性化して遠心分離した上澄み中に存在し、LC/MS/MSによって定量されたペプチドの濃度を示す。これらの表において、様々なペプチドの濃度は、インキュベーション混合物に添加されたカゼインカリウムのグラムあたりで計算されて与えられる。表1に示されるように、IPPは、インキュベーションの1時間後にその最大濃度に到達する。それを超えると、IPP濃度はこれ以上増大しない。ペンタペプチドVVVPPの形成は、IPPの生成と同じ速度論を示す。理論的に予期されるように、VVVPPのモル収率は、LPPペプチドのモル収率と同様である。LPPおよびVVVPPの両方の収率は、理論的に実現可能なもののほとんど60%に達する。インキュベーションのわずか3時間後にLPPの最大濃度に達するという事実は、ベータ−カゼイン分子のその特定の部分の切断が、おそらく、いくらかより困難であることを示唆する。VVVPPとは対照的に、ヘキサペプチドVVVPPFはまったく形成されない。この観察は、プロリン特異的エンドプロテアーゼが−P−F−結合を効率的に切断し、それによりVVVPPが生成されることを示唆する。トリペプチドIPPは即座に形成されるが、そのモル収率は、VVVPPまたはLPPのいずれかの最大モル収率の約3分の1以下である。IPPトリペプチドはベータ−カゼインとカッパー−カゼインの両方に含有されるので、この結果は予想外である。この観察に対する適当な説明は、プロリン特異的プロテアーゼがIPPを生成できるが、カゼイン塩のカッパー−カゼイン部分からだけであるということである。カッパー−カゼインの関連のアミノ酸配列を考慮すると、これは、−A107−I108−ペプチド結合は酵素のアラニン特異的活性によって切断されることを示唆する。本当であれば、遊離されるIPPの量は、カッパー−カゼイン中に存在する量の約40%に達するが、ベータ−およびとカッパー−カゼイン中に理論的に存在するIPPの約10%以下である。IPPの放出のこの切断メカニズムは、何故VPPをその前駆体分子VVVPPから形成することができないかも説明し、単に必要とされるエンドタンパク質分解(またはアミノペプチダーゼ)活性が、使用されるA.ニガー由来の酵素調製物中に存在しない。実施例6酸カゼイン沈殿ステップの取り込みが5倍濃度のACE阻害ペプチドをもたらす。 実施例5で説明したように、10%(w/w)タンパク質の濃度のカゼインカリウムを、A.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼと共にpH6.0でインキュベーションにさらした。様々なインキュベーション時間の後、サンプルを加熱してさらなる酵素活性を停止し、その後pHを4.5に低下させ、カゼイン溶解度を最小限にした。低速遠心分離によって、不溶性カゼイン分子を除去した。表1および2において、本発明者らは、10%タンパク質の出発濃度に基づいて計算されたACE阻害ペプチドの濃度を提供した。しかしながら、酸性化およびその後の遠心分離ステップの結果として、添加したタンパク質の大部分が除去されている。酸性化した上澄みのこれらの低下したタンパク質含量を考慮するために、窒素(ケルダール)分析を実行した。後者のデータによると、様々な上澄みは、以下のタンパク質レベルを含有することが分かった。 これらのデータを考慮して、本発明者らは、各上澄み中に存在するACE阻害ペプチドの濃度を再計算したが、今回はこれらの実際のタンパク質含量を用いた。これらの再計算したデータは表4に示される。 表2および4に与えられるデータの比較は、簡単な酸性化ステップ、そしてその後の産業的に実現可能なデカンテーション、ろ過または低速遠心分離ステップの結果、特異的ACE阻害ペプチドの濃度の5倍の増大が得られることを明らかに示す。後者の実験では、酸性化した懸濁液をデカンテーション、ろ過または低速遠心分離の前に一晩貯蔵することによって、酸沈殿ステップの効力がさらに改善されたことが示されるであろう。実施例7ACE阻害ペプチドの製造における汚染酵素活性の定量 本発明によると、ACE阻害性ペプチドは、適切なタンパク質基質とプロリン特異的エンドプロテアーゼとのインキュベーションによって簡単な一段階法で得ることができる。その後の水溶性ACE阻害性ペプチドの濃縮は、より大きい分子量のタンパク質断片を酸性化により沈殿させることによって達成される。後者の酸濃縮法の効力は、基質分子の非常に選択的な切断次第である。タンパク質分解活性が多く存在するほど、多くの水溶性ペプチドが形成され、これによりACE阻害ペプチドの濃縮係数が低下する。例えば、基質とのインキュベーション中にさらなる非プロリンまたは非アラニン特異的エンドプロテアーゼが存在すると、より多くの非生物活性ペプチドの可溶化がもたらされ、これにより最終濃縮物中のIPPおよびLPPの相対的な濃度が薄くなる。さらに、例えばカルボキシペプチダーゼまたはアミノペプチダーゼなどの汚染エキソプロテアーゼの存在は、遊離アミノ酸の放出をもたらす。これらの余分な遊離アミノ酸もACE阻害性ペプチドの相対的な濃度を薄くし、さらにメイラード反応の増大の結果としてブロスのない風味(brothy off taste)を与える。これらの望ましくない副反応全てを最小限にするために、本質的に純粋なプロリン特異的プロテアーゼの使用が好ましい。本質的に純粋とは、使用されるインキュベーション条件下で汚染エンドプロテアーゼおよび汚染エキソプロテアーゼの活性が最小限であるか、あるいは好ましくは存在しないことを意味する。このような汚染活性を定量するために以下の試験手順を考案した。 試験手順の基礎は、様々な選択的色素ペプチドの捕集によって形成される。これらの全ての色素ペプチドにおいて、「Z」はベンジルオキシカルボニルを表し、「pNA」は、発色団パラ−ニトロアニリドを表す。プロリン特異性オリゴ−およびエンドプロテアーゼのみが、そのN末端において「Z」基でブロックされたペプチドから着色pNAを放出できるので、所望のプロリン特異的エンドタンパク質分解活性を定量するためにペプチドZ−AAAP−pNAを用いた。多くのエンドプロテアーゼは、ペプチドZ−AAAF−pNAおよびZ−AAAR−pNAからpNAを放出できるので、汚染非プロリン特異的エンドタンパク質分解活性を定量するためにこれらの2つのペプチドを用いた。ペプチドQNIPPおよびVVVPPのIPPおよびVPPへのそれぞれの変換は、Gln(Q)およびVal(V)残基を効率的に除去することができるアミノペプチダーゼを必要とするので、このような汚染アミノペプチダーゼ活性を定量するためにペプチドQ−pNAおよびV−pNAを用いた。多くのカルボキシペプチダーゼは、ペプチドからPhe(F)およびArg(R)残基を放出できるので、これらの残基を含有するペプチドを選択して、汚染カルボキシペプチダーゼ活性を定量した。しかしながら、カルボキシペプチダーゼ活性を測定するために適切な色素基を利用することができないので、合成ペプチドZ−AFおよびZ−ARを用いる別の方法を開発しなければならなかった。この別の方法は、下に提供される。 全ての色素ペプチドは、ペプスキャン(Pepscan)(オランダ、レリスタッド)から入手した。ペプチドZ−AFおよびZ−ARは、バヒェム(Bachem)(スイス)から購入した。全てのインキュベーションは、40℃で実行した。方法を説明するために、市販の酵素調製物フレーバーザイム1000L(ノボザイムズ(デンマーク)から得られるバッチHPN00218)、シンニホン(Shin Nihon)(日本)からのスミチームFP、およびABエンザイムズ(UK)からのコロラーゼLAP(Ch.:4123)を試験し、そしてA.ニガーからのプロリン特異的エンドプロテアーゼと比較した。試験した市販の酵素調製物を希釈して最適なインキュベーション条件を作成したが、最終データの提示において市販の製品の濃度に再計算した(表5を参照)。汚染アミノペプチダーゼ活性の測定 100%DMSO中の150mmol/lのV−pNAおよびQ−pNAのストック溶液を、0.1MのBisTris緩衝液pH6中に80倍で希釈して、V−pNAおよびQ−pNAを1:1の比で含有する3.75mmol/lのV−pNA+Q−pNA−基質溶液を作製した。このアミノペプチダーゼ基質溶液の200μlの一定分量を、マイクロタイタープレート(MTP)の別々のウェル内にピペットで取った。MTPは、マゼラン(Magellan)4ソフトウェアで実行されるテカン・ジェニオス(Tecan Genios)MTP(ザルツブルク、ウィーン)において、40℃でプレインキュベートされる。50μlの適切な酵素溶液を添加することによって、インキュベーションが3mMの基質濃度で行なわれるように反応を開始させた。通常、液体酵素サンプルのフレーバーザイム、コロラーゼLAPおよびプロリン特異的エンドプロテアーゼの1:50の希釈物を用いた。乾燥スミチームFP製品については、1%溶液を用いた。 アミノ酸−pNA結合の切断の結果として生じるテカン・ジェニオスMTPにより405nmで測定される黄色は、次に、少なくとも20回のカイネティックサイクル(約10分)が行なわれる。ソフトウェアは、OD405/分で得られたデータを生成した。プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性の測定 この測定はアミノペプチダーゼアッセイと本質的に同じに実行したが、この場合は、唯一の基質として3mmol/lの最終濃度のZ−AAAP−pNAを用いた。pH6緩衝液中の懸濁液を50〜55℃に加熱することによってこの基質を可溶化し、室温で透明な溶液が得られた。測定は、40℃で実行した。 通常、液体酵素サンプルフレーバーザイムおよびコロラーゼLAPの1:50の希釈物を用いた。スミチームFPは、1%溶液で使用した。プロリン特異的エンドプロテアーゼは、通常、1:5000希釈物で使用される。ソフトウェアは、OD405/分でデータを生成した。汚染非プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性の測定 この測定も、アミノペプチダーゼアッセイについて記載したのと本質的に同じに実行したが、この試験では、1:1の比率および3mmol/lの最終濃度のZ−AAAF−pNAおよびZ−AAAR−pNAを基質として用いた。基質Z−AAAF−pNAは、使用したpH6.0の試験条件下で可溶性が低いことが分かったが、サブチリシンによる試験インキュベーションは、pNAの放出と同時に基質の急速な可溶化もたらした。測定は、40℃で実行した。しかしながら、この低い溶解度を補うために、MTPリーダーをカイネティックサイクルの間に振動するようにプログラムした。この場合も、ソフトウェアは、OD405/分でデータを生成した。汚染カルボキシペプチダーゼ活性の測定 カルボキシペプチダーゼ活性を測定するために感受性の色素ペプチドは利用できないので、カルボキシペプチダーゼCを定量するためにベーリンガー(Boehringer)手順に基づく方法を用いた。 エタノール中の2つの150mmol/lのZ−A−FおよびZ−A−Rのストック溶液を、0.1mol/lのBisTris緩衝液pH6中で80倍に希釈し、Z−A−FおよびZ−A−Rを1:1の比率で含有する3.75mmol/lのZ−A−F+Z−A−R基質溶液を作製した。次に、200μlの基質溶液を、ピペットでエッペンドルフ(eppendorf)バイアル中に取り、40℃でプレインキュベートした。50μlの適切な酵素希釈物を添加することによって、反応を開始させた。通常、フレーバーザイムおよびコロラーゼLAPおよびプロリン特異的エンドプロテアーゼの1:50の希釈物が使用される。スミチームFPでは1%溶液を使用した。250μlのニンヒドリン試薬を添加することによって5分後に反応を停止させた。15mlのDMSO中に溶解された400mgのニンヒドリン(メルク(Merck))および60mgのヒドリンダンチンのニンヒドリン試薬を作製し、これに、5mlの4.0mol/lの酢酸リチウム緩衝液pH5.2を添加した。LiOH(シグマ(Sigma))を溶解することによって、4.0mol/lの酢酸リチウム緩衝液を作製し、その後、氷酢酸(メルク)を用いて溶液のpHをpH5.2に調整した。 反応を停止した後、各サンプルを95℃で15分間加熱して色の形成を容易にし、そして次に純粋なエタノールで10倍に希釈した。形成された色を、ユビコン(Uvikon)分光光度計において578nmで測定した。活性サンプルと同じようにしてブランクを作製したが、ニンヒドリン試薬および酵素の添加を逆にした。カルボキシペプチダーゼ活性により生じた遊離アミノ酸の量を定量するために、アミノ酸L−フェニルアラニンを用いて較正曲線を作成した。0.1875、0.375、0.75、1.5および3.0mmol/lのL−フェニルアラニン(シグマ)を含有する緩衝液pH6中の溶液を、サンプルと同じようにして処理した(すなわちバイアル中に250μl)。得られたOD578値から、エクセル(Excel)において曲線を構築した。サンプル中に存在し、Z−A−FおよびZ−A−R基質を含有する遊離アミノ酸の濃度は、この曲線を用いて計算した。得られた値から、試験酵素の量あたり、1分あたりのマイクロモルでカルボキシ−ペプチダーゼ活性を計算した。活性比の計算 本発明に従う方法に対する様々な酵素調製物の適合性を確立するために、関係のある酵素活性の商を計算した。MTPリーダーベースのアッセイにおいて、時間に対するpNAの放出によって、すなわちΔOD405/分で酵素活性を特徴付けた。MTPリーダーによって得られる酵素活性の商は、同一量の酵素について得られたΔOD/分の値を単に割ることによって計算した。 しかしながら、カルボキシ−ペプチダーゼアッセイの場合、MTP−pNAベースのアッセイにより生成されるΔOD/分に直接比較することができないODが生成される。ここで、測定されたODを、まず1分あたりに放出されるμmolアミノ酸(μmol/分)に変換した。次に、放出されたpNAのΔOD/分をμmol/分に変換した。そのために、MTPリーダーにおいて較正曲線を生成し、ここで純粋なpNA(シグマ(Sigma))の希釈液0.25、0.125、0.0625、0.0312および0.015mmol/lならびにウェルあたり250μlが測定される。得られたデータから、較正曲線をエクセルにおいて構成した。この較正曲線から、ΔOD/分をμmol/分に変換し、pNAベースの測定が、ニンヒドリンベースの測定と比較され得る。 上記の試験で生成されるデータに基づいて、使用される様々な酵素調製物を、望ましいプロリン特異的および汚染エンドプロテアーゼ、アミノペプチダーゼおよびカルボキシペプチダーゼ活性に関して特徴付けた。各酵素調製物中に存在する望ましいプロリン特異的活性は、表5の「Prol Spec活性」の欄に示される。汚染アミノペプチダーゼ活性(AP/Prol Spec Act)および汚染カルボキシペプチダーゼ(CPD/Prol Spec Act)およびエンドタンパク質分解活性(Endo/Prol Spec Act)のデータは、存在するプロリン特異的活性に対して示される。各調製物中に存在する汚染カルボキシペプチダーゼ活性に対する汚染アミノペプチダーゼ活性は、(AP/CPD)として示される。 明白なのは、試験した市販の酵素調製物はどれも、著しいプロリン特異的オリゴ−またはエンドタンパク質分解活性を含有しないことである。さらに、試験した全ての市販の酵素調製物は、汚染エンド−およびエキソタンパク質分解活性を含有する。 A.医薬組成物は、以下に指定される成分を用いて従来の製剤手順によって調製され得る。実施例8ソフトゼラチンカプセル剤 ソフトゼラチンカプセル剤は、以下に指定される成分を用いて従来の手順によって調製される。活性成分:タンパク質加水分解物 0.3g他の成分:グリセロール、水、ゼラチン、植物油実施例9ハードゼラチンカプセル剤 ハードゼラチンカプセル剤は、以下に指定される成分を用いて従来の手順によって調製される。活性成分:タンパク質加水分解物 0.7g他の成分:充填剤:ラクトースまたはセルロースまたはセルロース誘導体 適量潤滑剤:必要であればステアリン酸マグネシウム(0.5%)実施例10錠剤 錠剤は、以下に指定される成分を用いて従来の手順によって調製される。活性成分:タンパク質加水分解物 0.3g、非加水分解タンパク質 0.4g他の成分:微結晶性セルロース、二酸化ケイ素(SiO2)、ステアリン酸マグネシウム、クロスカルメロースナトリウム B.食品は、以下に指定される成分を用いて従来の製剤手順によって調製され得る。実施例1130%のジュースを有するソフトドリンク典型的な1回の摂取量:240ml活性成分:タンパク質加水分解物および炭水化物源としてのマルトデキストリンがこの食品に取り込まれる:タンパク質加水分解物:1.5〜15g/1回の摂取量マルトデキストリン:3〜30g/1回の摂取量I. ソフトドリンク化合物は、以下の成分から調製される。ジュース濃縮物および水溶性フレーバー[g]1.1 オレンジ濃縮物60.3°Brix,5.15%酸性 657.99レモン濃縮物43.5°Brix,32.7%酸性 95.96オレンジフレ−バ−、水溶性 13.43アプリコットフレ−バ−、水溶性 6.71水 26.461.2 色β-カロテン10%CWS 0.89水 67.651.3 酸および酸化防止剤アスコルビン酸 4.11クエン酸無水物 0.69水 43.181.4 安定剤ペクチン 0.20安息香酸ナトリウム 2.74水 65.601.5 油溶性フレ−バ−オレンジフレ−バ−、油溶性 0.34蒸留したオレンジオイル 0.341.6 活性成分 活性成分(これは、上記の活性成分:上記濃度のタンパク質加水分解物およびマルトデキストリンを意味する。 果実ジュース濃縮物および水溶性フレーバーは、空気を取り込むことなく混合される。色は脱イオン水中に溶解される。アスコルビン酸およびクエン酸は、水中に溶解される。安息香酸ナトリウムは、水中に溶解される。ペクチンは攪拌下で添加され、沸騰しながら溶解される。溶液は冷却される。オレンジオイルおよび油溶性フレーバーは予め混合される。1.6で言及した活性成分は乾燥混合され、次に好ましくは、果実ジュース濃縮混合物中に攪拌される(1.1). ソフトドリンク化合物を調製するために、全ての部分3.1.1〜3.1.6は一緒に混合された後、ターラックス(Turrax)を用いて均質化され、次に高圧ホモジナイザーで均質化される(p1=200バール、p2=50バール)。II.瓶詰めシロップは、以下の成分から調製される。 [g]ソフトドリンク化合物 74.50水 50.00糖シロップ60°Brix 150.00 瓶詰めシロップの成分は一緒に混合される。瓶詰めシロップは1lの水ですぐに飲める飲料に希釈される。変形例 安息香酸ナトリウムを用いる代わりに、飲料は殺菌されてもよい。また飲料は、炭化され(carbonized)てもよい。実施例12様々な市販の酵素調製物のアミノペプチド分解活性 ベータ−カゼインにおいて、IPPは配列−P71−Q72−N73−I74−P75−P76−において含有され、VPPは配列−P81−V82−V83−V84−P85−P86−において含有され、LPPは配列−P150−L151−P152−P153−において含有される。カゼインの他のタンパク質成分のうち、カッパー−カゼインのみがIPP含有配列を取り込んでいる。プロリン特異的エンドプロテアーゼの特異性から、ベータ−カゼインをA.ニガー由来の酵素と共にインキュベートすると、ペプチドQ72−N73−I74−P75−P76−、V82−V83−V84−P85−P86−およびL151−P152−P153−が形成され得ると推測することができる。LPPとは対照的に、形成される2つのペンタペプチドは、低いACE阻害活性しか示さない。例えばEP0583074号明細書は、873マイクロモル/lのVVVPPのIC50値を報告するが、切断型VPP分子は、9マイクロモル/lのIC50値を有する。従って、カゼイン加水分解物の十分なACE阻害の可能性を生じるために、プロリン特異的エンドプロテアーゼとのインキュベーションで形成されるペンタペプチドVVVPPおよびQNIPPが、それぞれトリペプチドVPPおよびIPPに転換されなければならないことは明白である。アミノペプチダーゼは、ペプチドのN末端側からアミノ酸を連続して除去することができるので、アミノペプチド分解酵素活性は、VPP配列に先行する2つのバリン(「V」)残基ならびにIPP配列に先行するグルタミン(「Q」)およびアスパラギン(「N」)残基を効率的に遊離できることが必要とされる。XPPトリペプチドに存在するX−PおよびP−Pペプチド結合は酵素による切断に耐えることが分かっているので、このようなアミノペプチド分解活性は、2つのペンタペプチドを所望のVPPおよびIPPトリペプチドに転換し得ると思われる。 3つの市販の酵素調製物、すなわち、フレーバーザイム1000LバッチHPN00218(デンマークのノボザイムズ)、スミチームFP(日本のシンニホン(Shin Nihon))およびコロラーゼLAP Ch.4123(UKのABエンザイムズ)を、そのアミノペプチド分解活性について試験した。フレーバーザイムおよびスミチームFPは両方とも、特定化されないエンドタンパク質分解活性およびカルボキシペプチド分解活性に加えて、いくつかのアミノペプチド分解酵素活性を含有する複雑な酵素調製物であることが分かっている。コロラーゼLAPは、アスペルギルスからクローン化および過剰発現された比較的純粋なロイシンアミノペプチダーゼ活性を表す。 これらの3つの市販の調製物中に存在するアミノペプチド分解活性を、色素基質F−pNA(リファレンス)、Q−pNAおよびV−pNAを用いて試験した。そのために、DMSO中の150mMのX−pNAのストック溶液をBis−Tris緩衝液pH6中で100×に希釈した。マイクロタイタープレートにウェルあたり200μlの緩衝基質溶液を充填し、マゼラン4ソフトウェアで制御されるテカン・ジェニオスMTPリーダーにおいて40℃でプレインキュベートした。反応は、50μlの適切な酵素溶液を添加することによって開始させた(使用の前に、スミチームFP粉末を100mg/mlの濃度でBis−Tris緩衝液pH6中に溶解した)。次に、405nmで10分間、黄色のpNAの遊離が起こる。ソフトウェアによりOD/分が計算される。様々な基質に対する各酵素調製物の活性を、F−pNAに対するその活性に関して標準化した。得られたデータは、図4に示される。明らかに、3つ全ての酵素調製物は、F−pNAに対して最も高い活性を呈するが、Q−pNAおよびV−pNAも、これらの酵素の基質を形成する。これらの結果は、アミノペプチダーゼの活性がプロリン特異的プロテアーゼにより形成されるペプチドQNIPPおよびVVVPPを、それぞれIPPおよびVPPに変換し得るので、プロリン特異的プロテアーゼと組み合わせられると、市販の調製物のそれぞれは、所望のACE阻害トリペプチドIPP、VPPおよびLPPを形成できるはずであることを示す。実施例13に記載される実験においてこの仮説を試験した。実施例13様々なアミノペプチド分解酵素調製物と一緒にカゼイン塩とA.ニガーからのプロリン特異的エンドプロテアーゼとをインキュベートすると、高収率のIPP、LPPおよびVPPが生成される。 この実施例では、本発明者らは、単一のインキュベーションステップにおいてA.ニガーからのプロリン特異的プロテアーゼとアミノペプチド分解活性とを組み合わせることが、様々なACE阻害ペプチドの形成に与える効果を研究した。そのために、50グラムのカゼインナトリウムを506グラムの摂氏70度の水中に溶解することによってカゼイン塩溶液を調製し、1lあたり81グラムタンパク質を含有する溶液を得た。この溶液を摂氏50度まで冷却し、その後リン酸を用いてpHを6.0(20℃で測定)まで低下させ、その後、様々な酵素の組み合わせを添加した。全てのサンプル(それぞれ10ml)に、プロリン特異的プロテアーゼを添加して、タンパク質1グラムあたり4単位の濃度を達成した(単位定義については材料および方法セクションを参照)。サンプルA1は、このプロリン特異的プロテアーゼのみを含有した。サンプルB1は、プロリン特異的プロテアーゼと、5グラムの水中に希釈した1140mgの濃縮フレーバーザイム液体を含有する38マイクロリットルの溶液とを含有した。サンプルB2では、プロリン特異的プロテアーゼと、8マイクロリットルのこのフレーバーザイム溶液とを組み合わせた。サンプルC1では、プロリン特異的プロテアーゼと、100マイクロリットルのコロラーゼLAP液とを組み合わせた。サンプルC2では、プロリン特異的プロテアーゼと、10マイクロリットルの10倍に希釈したコロラーゼLAP液のサンプルとを組み合わせた。5つのサンプルすべてにおいて、インキュベーションを、摂氏50度で6時間進行させた。混合物を摂氏90度で5分間加熱することによって、酵素反応を終了させた。エッペンドルフ(eppendorf)遠心分離機において10分間の遠心分離後に得られた透明な上澄みを捕集して、LC/MS/MS分析まで冷凍で保持した。LC/MS/MS分析後に得られたデータは、表5に示される。 以前に実証したように、サンプルA1のインキュベーション条件(ただプロリン特異的プロテアーゼだけが存在)は、LPPおよびVVVPPを効率的に生成するが、あまりたくさんの量のVPPは生成しない。ペプチドVVVPPFの不在は、プロリン特異的プロテアーゼが、適用される条件下で、プロリン残基のカルボキシ末端を効率的に切断することを説明する。サンプルA1では、IPPの収率は、VVVPPの収率のだいたい3分の1である。しかしながら、プロリン特異的プロテアーゼと、フレーバーザイム(サンプルB1およびB2)またはコロラーゼLAP(サンプルC1)のいずれかとを組み合わせることは、IPPの収率に対して明白な促進効果を有する。サンプルC2(低濃度のコロラーゼLAPを有する)では、IPPの収率は増大されなかった。これはおそらく、アミノペプチダーゼ活性の濃度が、プロリン特異的プロテアーゼにより形成された全てのQNIPPを変換するのに不十分であったためである。1グラムのカゼインは、理論的には6.9mg(21.1マイクロモル)のIPP(ベータ−カゼインおよびカッパー−カゼインから)をもたらすことができるので、サンプルB1およびC1中に存在するIPPレベルはそれぞれ、獲得可能な最大収率の70%および55%を表す。本発明者らの期待と一致して、アミノペプチド分解活性を増大させた結果、VVVPP濃度が低下し、VPP濃度が増大した。サンプルB2およびC2において少量の中間ペプチドVVPPが検出可能であるという事実は、これらのサンプルでは、アミノペプチド分解活性が、プロリン特異的プロテアーゼにより形成されたVVVPPをVPPに完全に変換するために不十分であることを示す。1グラムカゼインは、理論的には4.58mg(14.7マイクロモル)のVPPをもたらすことができるので、サンプルB1、B2およびC1では、最大VPP収率が得られる。結論として、この実験は、プロリン特異的プロテアーゼと、適切なアミノペプチド分解活性との組み合わせは、高濃度のACE阻害ペプチドを効率的に生成可能であることを明白に実証する。プロリン特異的エンドプロテアーゼと、アミノペプチダーゼとのこの組み合わせは、プロリン特異的酵素とのインキュベーション後に行われるのが最もよい。特定の方法の要件次第では、余分な酵素とのインキュベーションは、低pH条件または水と混和性の溶媒を用いる精製ステップの前または後に行うことができる。さらに、インキュベーションは、ACE阻害効果を有するアミノ酸配列に先行する望ましくないアミノ酸残基を除去することができるアミノペプチダーゼ活性と共に実行することができる。あるいは、適切なエンドタンパク質分解活性を用いて実行することもできる。このようなエンドタンパク質分解活性の適切な例は、パパイン(オランダ、デルフトのDSMフード・スペシャリティーズ(DSM Food Specialities)からコラパリン(Collupulin)で入手可能)により与えられ、Asn(N)およびVaI(V)残基のカルボキシ末端を効率的に切断することができる。余分な酵素とのインキュベーションが酸またはエタノール沈殿ステップの前に実行されれば、インキュベーションは、コロラーゼLAPなどの比較的純粋なアミノペプチダーゼと共に実行されるのが最もよい(実施例7を参照)。A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼのpH最適条件を示す図。A.ニガー由来のプロリルエンドプロテアーゼの特異性プロファイル。クロマトグラフィー精製したA.ニガー由来のプロリン特異的エンドプロテアーゼと共にインキュベートした後のインタクトなオボアルブミン及び合成27−merペプチドのSDS−PAGE。合成基質F−pNA、Q−pNA及びV−pNAにおいてpH6で試験した3つの市販アミノペプチダーザ含有酵素調製物の相対的な活性。 タンパク質からIPPを含む組成物を製造するための方法であって、前記タンパク質から製造されるIPP対VPPの重量比が少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、そしてより好ましくは少なくとも20:1であり、プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性またはプロリルオリゴペプチダーゼ活性を有する酵素活性と、−I−P−P−配列のアミノ末端側で結合を加水分解することができる酵素活性との使用を含む方法。 プロリン特異的エンドプロテアーゼ活性またはプロリルオリゴペプチダーゼ活性を有する前記酵素活性と、−I−P−P−配列のアミノ末端側で結合を加水分解することができる前記活性とが1つの酵素中に存在し、好ましくはこの酵素がプロリン特異的エンドプロテアーゼまたはプロリルオリゴペプチダーゼであり、より好ましくはこの酵素がプロリン特異的エンドプロテアーゼである請求項1に記載の方法。 前記プロリン特異的エンドプロテアーゼには、アミノペプチダーゼ活性および/またはカルボキシペプチダーゼ活性が存在しない請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。 インキュベーション時間が24時間未満であり、好ましくは10時間未満、そしてより好ましくは4時間未満である請求項1または2に記載の方法。 インキュベーション温度が30℃よりも高い、好ましくは40℃よりも高い、そしてより好ましくは50℃よりも高い請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。 LPPも製造される請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。 牛乳タンパク質、好ましくはカゼインが使用される請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。 タンパク質配列内に存在する−A−I−P−P−および/または−P−I−P−P−配列が、ペプチドIPPに少なくとも30%変換される請求項7に記載の方法。 タンパク質配列内に存在する−P−L−P−P−および/または−A−L−P−P−配列が、ペプチドLPPに少なくとも40%変換される請求項6に記載の方法。 可溶性ペプチド、好ましくはIPPを含む組成物を調製するための方法であって、適切なタンパク質源の加水分解によって製造され、好ましくは請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって製造される組成物のpHを、加水分解タンパク質の一部が不溶性になるpHに変更することと、不溶性部分を可溶性ペプチドから分離して可溶性ペプチドを含む組成物をもたらすこととを含む方法。 最初に、タンパク質をプロリン特異的エンドプロテアーゼにより5〜30%のDHまで加水分解することと、 任意で、第2の酵素処理と、 その後、選択されたpH条件下で、好ましくは酸性pH条件下で、より好ましくは3.5と6の間のpHで、そして最も好ましくは4と5の間のpHで、加水分解タンパク質の不溶性部分を可溶性部分から分離して、可溶性ペプチドを含む組成物をもたらすことと、によって製造される可溶性ペプチドを含む組成物を製造するための方法。 可溶性ペプチドを含む組成物であって、ペプチドの少なくとも70重量%、好ましくは少なくとも80重量%、そして最も好ましくは少なくとも90重量%が3.5と6の間のpH、好ましくは4と5の間のpHで可溶性であり、前記可溶性ペプチドのどの単一のペプチドも前記可溶性ペプチドの40重量%よりも多い量で存在せず、好ましくは前記可溶性ペプチドのどの単一のペプチドも前記可溶性ペプチドの30重量%よりも多い量で存在せず、そして最も好ましくは、前記可溶性ペプチドのどの単一のペプチドも前記可溶性ペプチドの20重量%よりも多い量で存在せず、請求項11に記載の方法によって得ることができる組成物。 タンパク質からIPPを製造するためのプロリン特異的エンドプロテアーゼの使用であって、VPPよりも少なくとも5倍(重量)多いIPPが製造される使用。 タンパク質の加水分解により製造される組成物であって、前記組成物がIPPを含み、前記組成物中のIPP対VPPの重量比が少なくとも5:1、好ましくは少なくとも10:1、そしてより好ましくは少なくとも20:1である組成物。 さらに、LPPを含む請求項14に記載の組成物。 栄養補給食品として、好ましくは薬剤としての請求項14または15に記載の組成物。 請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法によって製造される請求項12〜16のいずれか一項に記載の組成物。 請求項12および14〜17のいずれか一項に記載の組成物、または請求項1〜11のいずれか一項に従って製造される組成物の、栄養補給食品、好ましくは薬剤としての使用、健康の改善もしくは疾患の予防および/または治療のために栄養補給食品、好ましくは薬剤を製造するための使用、あるいは高血圧(高血圧症)、心不全、前糖尿病または糖尿病、肥満、耐糖能障害またはストレスなどの疾患の治療または予防のために栄養補給食品、好ましくは薬剤を製造するための使用。 前記組成物が、食餌サプリメントの形であるか、ローション、ゲルまたはエマルジョンの形の局所用途を含むパーソナルケア用途の形であるか、あるいは食料、飼料またはペットフードの成分としての請求項18に記載の使用。 肥満の予防または体重管理のために機能性食品を製造するための請求項12および14〜17のいずれか一項に記載の組成物の使用。 心血管の健康維持のために機能性食品を製造するための請求項12および14〜17のいずれか一項に記載の組成物の使用。 前記心血管の健康維持が、アンジオテンシン変換酵素の阻害を含む請求項21に記載の使用。 前記心血管の健康維持が、血液のコレステロールレベルの制御を含む請求項21に記載の使用。 健康上の利益をその消費者に提供することができる機能性食品であって、前記健康上の利益が肥満の予防、体重管理および心血管の健康維持から選択され、請求項12および14〜17のいずれか一項に記載の組成物を含む機能性食品。 前記心血管の健康維持の利益が、アンジオテンシン変換酵素の阻害および/または血液のコレステロールレベルの制御を含む請求項24に記載の機能性食品。 50〜200mmol/kgのK+および/または15〜60mmol/kgのCa2+および/または6〜25mmol/kgのMg2+を含む請求項24または25に記載の機能性食品。 110〜135mmol/kgのK+および/または35〜45mmol/kgのCa2+および/または13〜20mmol/kgのMg2+を含む請求項26に記載の機能性食品。 1つまたは複数のB−ビタミンを含む請求項24〜27のいずれか一項に記載の機能性食品。 葉酸、ビタミンB6およびビタミンB12を含む請求項28に記載の機能性食品。 3〜25重量%のステロール、より好ましくは7〜15重量%のステロールを含む請求項24〜29のいずれか一項に記載の機能性食品。 (a)請求項1〜9のいずれか一項に記載のIPPを含む組成物を製造することと、 (b)前記IPP含有組成物を食品、飲料品または食餌サプリメント中に取り込むことと、を含む、食品、飲料品または食餌サプリメントの調製方法。 前記ステップaにおいて、牛乳タンパク質、好ましくはカゼインが使用される請求項31に記載の方法。 前記ステップaにおいて、タンパク質配列内に存在する−A−I−P−P−または−P−I−P−P−配列がペプチドIPPに少なくとも10%、より好ましくは少なくとも30%変換される請求項32に記載の方法。 前記ステップaにおいて、タンパク質配列内に存在する−P−L−P−P−または−A−L−P−P−配列がペプチドLPPに少なくとも10%、より好ましくは少なくとも40%変換される請求項32に記載の方法。 c)好ましくは非アスパラギン酸プロテアーゼによって、より好ましくはセリンプロテアーゼによって加水分解された加水分解タンパク質からペプチドを精製するステップも含み、選択されたpH条件下で前記加水分解タンパク質が沈殿することができ、加水分解タンパク質が沈殿するpHにpHを変更することと、沈殿したタンパク質を加水分解タンパク質から分離することとを含む、請求項31に記載の方法。 前記ステップcが、ステップa)の後、そしてステップb)の前に行われる請求項35に記載の方法。 前記食品、飲料品または食餌サプリメントが、マーガリン、スプレッド、バター、酪農製品または乳漿含有飲料、好ましくはヨーグルトまたは牛乳などのヨーグルトまたは牛乳ベースの製品の群から選択される請求項31に記載の方法。 請求項31〜37のいずれか一項に記載の方法によって得られる食品、飲料品または食餌サプリメント。 0.05〜10重量%、より好ましくは0.1〜5重量%、最も好ましくは0.2〜4重量%の前記IPP含有組成物を含む請求項38に記載の食品、飲料品または食餌サプリメント。 製品100グラムあたり0.05〜50mg、より好ましくは0.1〜40mg、最も好ましくは0.2〜30mgのIPPを含む請求項38または39に記載の食品、飲料品または食餌サプリメント。 IPP対VPPの重量比が、5:1〜100:1、より好ましくは5:1〜48:1である請求項38〜40のいずれか一項に記載の食品、飲料品または食餌サプリメント。 IPPおよびLPPを含み、IPP対LPPの重量比が、1:10〜1:1、より好ましくは1.5:7.1〜4.8対7.1である請求項38〜41のいずれか一項に記載の食品、飲料品または食餌サプリメント。 ヒトの高血圧症の軽減に使用するための請求項38〜42のいずれか一項に記載の食品、飲料品または食餌サプリメント。 本発明にはタンパク質源からIPPを製造するための方法が記載されており、それによりタンパク質から製造されるIPPとVPPの比率は少なくとも5であり、好ましくは少なくとも10、そしてより好ましくは少なくとも20であり、該方法はプロリン特異的エンドプロテアーゼの使用を含む。 配列表


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