生命科学関連特許情報

タイトル:公表特許公報(A)_赤血球細胞の生産方法
出願番号:2007514152
年次:2008
IPC分類:C12N 5/06,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

ジャラタナ,マリー−カトリーヌ ドゥアイ,ルク JP 2008501333 公表特許公報(A) 20080124 2007514152 20050311 赤血球細胞の生産方法 ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シズエム) 504317743 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 中村 和広 100108903 ジャラタナ,マリー−カトリーヌ ドゥアイ,ルク US 60/576,936 20040604 C12N 5/06 20060101AFI20071221BHJP C12N 5/10 20060101ALI20071221BHJP JPC12N5/00 EC12N5/00 B AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW IB2005000626 20050311 WO2005118780 20051215 26 20070124 4B065 4B065AA93X 4B065AB01 4B065BB03 4B065BB11 4B065BB19 4B065BB23 4B065BB32 4B065BB37 4B065BD14 4B065CA44 本発明は、赤血球細胞の生産方法に関し、より具体的に、脱核赤血球の大量かつ選択的生産のためのin vitro方法に関する。 ヒト赤血球細胞(RBC)の主要な特徴のうちの一つは、核がないにもかかわらず長期間の寿命(120日間)を有する唯一の細胞であるという点である。脱核のメカニズムは推測されていた(Bessis, 1958 ; Lichtman, 1981 ; Qiuら, 1995)が、ex vivoにおけるRBCの大量生成を許容する実験条件がなかったために、正式に確立されていなかった。 成人において、in vivoにおける造血は、骨髄に位置する動的産生プロセス(dynamic production process)からもたらされ、当該プロセスはピラミッド型の細胞ヒエラルキーに従って少数の造血幹細胞(HSC)から開始され(Stem Cell (SC)、 progenitor and maturation compartments) (Ogawa, 1993) 、そして微小環境と密接に関わって実行される(Lemischka, 1997 ; Friedenstein, 1977 ;Verfaillie, 1993)。in vitroの赤血球生成微小環境がin vitroで開発され、造血と接着細胞との間における接触の重要性を示した。(Ohnedaら、1997 ; Yanai. ら、1997 ; Hanspalら、1994 ; Hanspalら、1998))。さらに、赤血球増殖は、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン(IL3)、及びエリスロポエチン(EPO)により積極的に制御されていることが知られている(Zermatiら、2000 ; Satoら、2000 ; Dolznigら、2002)。 ほぼ完全な赤血球分化を得ることは一見簡単である(Fibachら, 1989 ; Wada ら, 1990 ; Panzenbockら, 1998 ; Freyssinierら, 1999)が、それにもかかわらず、これらの文献データーは、提案された様々な培養方法の最終段階に達した際に、最終成熟を伴わずに重要な細胞増殖することを示す(Suiら, 1996 ; von Lindernら, 1999)か、又は約半数の細胞において脱核を示すが、増殖レベルが低いということを示す(Malik et al., 1998)。赤芽細胞の大量増殖及び全ての脱核の両方を得ることを許容する一連のex vivo条件は、未だ報告されていない(Malikら、1998)。 間質細胞を含まない(stroma free)調整培地中で臍帯血(CB)由来のHSCを増殖させる方法は、成長因子を連続添加することに基づき記載された(Neildez-Nguyenら、2002)。当該プロトコルは、CD34+細胞から開始し、脱核細胞への成熟を達成することが未だできない純粋な赤血球前駆細胞を大量産生することを可能にする。 輸液用の赤血球前駆細胞を産生することについての関心は、 L. Douay, 2003,により総説された。 本発明者は、以下の2つのステップ: 成長因子の存在下で細胞増殖及び赤血球増殖を誘導する、培養培地中での第一ステップ、そして、 好ましくは造血成長因子を含まない微小環境の再構成をモデリングする、第二ステップ で造血幹細胞を増殖させ、そして造血幹細胞を脱核赤血球へと分化させるプロトコルを設計した。場合により、当該培養方法は、微小環境及び造血成長因子の両方の存在下における中間ステップを含んでもよい。 本発明者は、本培養方法が、CD34+SCs/前駆細胞を大量増殖させ、そしてそれらを機能的に完全に成熟したRBCへと完全に分化させることの両方を許容するということを示した。ここで当該成熟RBCは、ヒト末梢血由来のRBCと同様にNOD/SCIDマウスにおいてin vivoで生存した。 成熟RBCは、成熟しかつ機能を発揮する天然RBCの特徴の全てを有する。 それゆえ、本方法は、臨床輸血用の成熟赤血球の大量生産に特に有用である。 本発明はこうして、脱核赤血球(網状赤血球及び成熟赤血球細胞を含む)を産生するためのin vitro方法であって、当該方法は以下のステップ: a)少なくとも1つの造血成長因子を含む培養培地中で造血幹細胞を培養し、 b)そのようにして得られた細胞を、実質的にEPOの非存在下で支持細胞と接触させて培養するステップ を含む方法を提供する。 場合により、当該方法は、ステップa)及びステップb)の間において更なる中間ステップ: a') ステップa)において取得される細胞を、少なくとも1の造血成長因子を含む培養培地中で支持細胞と接触させて培養する を含む。 開始細胞 開始細胞は、任意の起源由来である造血幹細胞である。開始細胞は、好ましくはヒト起源である。造血幹細胞は、患者から取得されることもある。開始細胞は、任意の生物学的サンプル、例えば血液、例えば末梢血、骨髄、臍帯血、又は胎児肝臓から調製されうる。例えば、血液サンプルは、G-CSF[白血球搬出法(Leukapheresis)(LK)]で動員された通常の末梢血又は動員されていない通常の末梢血(PB)であってもよい。造血幹細胞は、造血幹細胞表面抗原(例えば、CD34)に結合する市販の抗体を用い、当業者に周知の方法を用いて単離されうる。例えば、当該抗体は、磁性ビーズに結合され、そして免疫学的方法が、所望の細胞型を回収するために利用される。好ましくは、造血幹細胞は、CD34+細胞の形態である。実際、CD34は、Baum ら、(1992)及びMorrisonら、(1995)に記載されるように、造血幹細胞の標準マーカーである。CD34+細胞の分離は、多くの様々な方法により達成されうる。最も広く使用されるものは、固体支持体上に固定された抗-CD34-抗体(Cellpro, Baxter, Myltenyi)に当該細胞を結合させることに基づく陽性免疫学的選別である。他の選別方法は、細胞系列特異的細胞表面抗原の発現に基づいてCD34+細胞から、CD34を発現しない細胞の全てを単離するネガティブ選別を含む。或いは、ステップ a)において培養される造血幹細胞は、肺性幹細胞からex vivoで産生されることもある(例えば、WO 01/34776 ; US 6,613,568を参照のこと)。 ステップa)において培養される造血幹細胞及びステップa)から得られる細胞は、遺伝的に改変された細胞でありうる。当該細胞は、例えば相同組換えによる遺伝子サイレンシングにかけられうる。このことは、当該細胞がもはや内在遺伝子を発現できないこと、または当該遺伝子又はその断片が欠失、つまり「ノックアウト」されることを意味する。遺伝子サイレンシングは、サイレンシングされた遺伝子の機能の研究において特に有用である。造血細胞は、当該造血細胞から血液型の抗原を発現しないように遺伝的に改変されてもよい。或いは、造血細胞は、例えば組換え発現ベクターを用いて遺伝物質を細胞内へ取り込ませることにより遺伝的に改変されてもよい。造血細胞は、関心の外来性ヌクレオチド配列を発現可能であってもよい。例として、関心配列は、ヘモグロビン抗原をコードしてもよい。造血細胞へ導入するための遺伝物質の他の例は、造血幹細胞の維持、組織発達、リモデリング、修復、又は細胞外遺伝子産物のin vivo産生において役割を有する遺伝子産物を発現させる遺伝物質を含む。遺伝的に改変された造血系細胞を使用することにより、脱核細胞の産生が許容される。当該脱核細胞は、当然のことながらもはや分裂できず、そして有限の寿命の間、治療上関心のある特定の表面タンパク質を発現するように遺伝的に改変されものでる。 培養培地 細胞は、好ましくは液体形態である培養培地内で培養される。 本発明において有用である培養培地は、造血細胞を培養するために当業者に知られている任意の培養培地でありうる。例えば、培養培地は、好ましくはヒト又はウシ胎児血清の添加を伴うRPMI、IscoveのMDM又はDMEM、TC199、X-VIVO-10でありうる。血清又は血漿は、1〜50%の濃度で加えられうる。しかしながら、好ましくは無血清培地である。 最も好ましい実施態様では、当該細胞は、1%脱イオン化ウシ血清アルブミン(BSA)又はヒト血清アルブミン(HSA)、120μg/mlの鉄飽和ヒトトランスフェリン、900ng/mlの硫酸鉄、90ng/mlの硝酸鉄、及び10μg/mlインスリンを添加された改変無血清培地(Kobari et al. 2000 ; Giarratana et al. 2000)中で培養される。 ステップ(b)及び (a')の培養培地は、造血成長因子を含む。当該成長因子は、いずれかの又は全てのインターロイキン(IL-1〜IL-16)、インターフェロン(IFN-α、β、及びγ)、エリスロポエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、インスリン様成長因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来成長因子、腫瘍増殖因子、腫瘍壊死因子α、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球−マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ・コロニー刺激因子(M−CSF)、fins様チロシンキナーゼ-3リガンド(Flt3-リガンド)、並びにEGF(上皮成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)、LIF(白血病抑制因子)を含む。トロンボポエチン(TPO)又はMGDF(肥満細胞増殖由来因子)が使用されてもよい。これらの成長因子の多くは市販されている。最も一般的に使用される増殖因子の混合物は、G-CSF、GM-CSF、SCF、IL-1、IL-3、及びIL-6を含む。使用される成長因子の大部分は、組換えDNA技術により産生され、そして様々な程度に精製される。幾つかの成長因子は、標準生化学的技術により、腫瘍細胞系列の培養培地から精製される。広く使用される成長因子は、PIXY321であり、PIXY321は、組換え技術により産生され、そしてGM-CSF及びIL-3活性の両方を示す。 ステップ(a)の培養培地は、好ましくはSCF又はFLT-3リガンドを含む。ステップa)において使用される増殖因子は、IL3、IL6、EPO、及びMGDFからなる群から選ばれるか、又はそれらの混合物でありうる。成長因子の組合せは、ステップa)を通して変化しうる。例えば、ステップa)は、8日間SCF+EPO+IL3で始め、続いて3日間SCF+EPOを続ける。有利なことに、ステップ(a)の成長因子は、エリスロポエチンである。好ましい実施態様では、ステップa)の培養培地は、SCF、IL3、及びエリスロポエチンを含む。 培養物に使用される成長因子の量は、当該因子調製品の活性及び使用される成長因子の組合せに依存する。典型的に、濃度は、0.5〜500ng/mlの範囲である。各成長因子の最適濃度は、幾つかの成長因子が他の成長因子と相乗的に作用するので、個別の培養条件に対して決定されなければならない。 好ましい実施態様では、ステップa')において使用される培養培地は、ステップa)において使用される培養培地と同じである。好ましくは、ステップa')において使用される成長因子は、ステップ a)において使用される成長因子と同じであるが、これは義務的なものではない。 ステップa')の培養培地は、好ましくはエリスロポエチンを含む。好ましくはエリスロポエチンは、ステップa')において使用される唯一の成長因子である。ステップa')の関心は、ステップa)から得られた細胞の分化ステージに左右される。実際、EPOは培養細胞中に存在する前駆細胞増殖に働きかける。 エリスロポエチンは次に、次のステップb)で取り除かれる。ステップb)では、細胞は実質的にEPOの不存在下で培養される。EPOを取り除くことは、最終的な分化を促進する。好ましくはステップb)において、当該細胞を全ての造血成長因子の不存在下で、最も好ましくは、全ての成長因子の不存在下で培養する。 支持細胞 当該プロトコルのステップb)又はステップa')において、細胞を支持細胞と接触させる。当該ステップは、固体支持体へ接着しているか又は懸濁液中に存在している細胞を用いて行われうる。 これらの支持細胞の目的は、造血幹細胞の増殖を支持する細胞から形成される本来の骨髄微小環境(Lichtman、1981)を真似することである。 本発明の文脈では、支持細胞は、in vitroにおいて造血細胞の増殖を助け、そしてその脱核赤血球への成長を助ける細胞である。 これらの支持細胞は、胚、胎児、又は任意の結合組織(conjunctive tissue)に由来する。 好ましくは、支持細胞は、骨髄微小環境に由来する。 特に、本発明の方法は、本来の骨髄微小環境から得られた標本を利用するか、又は再構成された骨髄微小環境を利用する。 好ましい実施態様では、WO99/64566において記載される様に、支持細胞は、間質細胞であるか、又は間葉細胞である。 間質細胞は、好ましくは、骨髄細胞又は胚性卵黄細胞に由来する。 マウス間質細胞又は間葉幹細胞は、本目的のために使用されてもよい。しかしながら、霊長類及び他の哺乳動物細胞、例えばヒト間質細胞又は間葉細胞はより適している。 「間質細胞」という用語は、骨髄における非造血細胞、並びにマクロファージを指す。 間質細胞は、内皮細胞、無紋血管細胞(線維芽細胞)、含脂肪細胞、及びマクロファージを含む。 間質細胞は、間葉幹細胞に由来する。 従って、哺乳動物、例えばヒト組織から間葉幹細胞(MSC)又は間質細胞を回収するために有用である任意の方法が、主に間葉幹細胞又は間質細胞を含む細胞集合をもたらすために利用されうる。一の態様では、ヒト間葉幹細胞又は間質細胞を単離する方法は、以下の:間葉幹細胞又は間質細胞を含む組織標本を準備し;例えば密度勾配遠心により、当該標本から間葉幹細胞又は間質細胞を単離し;分化をさせることなく間葉幹細胞又は間質細胞を刺激する因子を含み、かつ培養液において間葉幹細胞又は間質細胞の培養における支持体表面への選択的接着を許容する培地に単離された細胞を添加し;標本-培地混合物を培養し;そして支持体表面から接着していない物質を取り除き、間葉幹細胞又は間質細胞の単離された集合をもたらすステップを含む。 MSCの間接濃縮は、特にPittenger,1999に記載された。MSCを精製するための他の具体的な方法が開示された。当該方法は、特異的な膜マーカー、例えばCD49a(Deschaseaux, 2000)及びStro1(Simmons,1991)を発現する細胞を濃縮することにより選択されうる。 CD45及びGlycoAマーカー(Reyes, 2001)のネガティブ選別に基づいて、ネガティブ選別が考慮されることもある。 具体的な実施態様では、支持細胞は、遺伝的に改変された細胞、例えば成長因子及び細胞の接着を促進する因子をコードする外来性遺伝子を発現する支持細胞である。 好ましくは、支持細胞及びステップa)から得られる細胞は、ステップb)及び場合によりステップa')において、当該支持細胞が支持体表面に接着するか又は接着しないような適切な培養条件下でともに培養される。支持細胞は、支持体表面に1cm2あたり200〜5×105個の範囲、好ましくは1cm2あたり103〜約105個の範囲の密度で蒔かれる。 好ましくは、表面に付着する支持細胞の場合、支持細胞はコンフルエントに達した際に共培養に使用される。通常、コンフルエントは、1cm2あたり20000〜約80000細胞で達成され、そして好ましい実施態様では、コンフルエントは、1cm2あたり約40000細胞で達成される。こうして造血幹細胞(HSC)は、好ましくは1cm2あたり約200〜40000細胞の範囲の細胞密度で存在する。ステップa)から得られる細胞は、好ましくは1cm2あたり約103〜約2×106細胞の範囲内の細胞密度で存在する。 支持細胞が支持体表面に接着せず、そして懸濁液の状態である場合、支持細胞は一般的に1ミリリットルあたり20000〜約2.5×106個の細胞の範囲の濃度で懸濁される。造血幹細胞は、1ミリリットルあたり103〜約2×105細胞の範囲の密度で懸濁され、そしてステップa)から得られる細胞は、1mlあたり5000〜約107細胞の範囲の密度で懸濁される。 支持細胞、例えば微小環境、が存在せずかつ成長因子のみが存在する場合、最終成熟、つまり脱核、が特異的に達成されないということが発明者により観察された。 プロトコル 造血細胞数が増加する期間は、少なくとも一部において、細胞型及び使用される特定野培養容器の関数である。当業者に知られる通常の方法は、培養物中の細胞数を、培養細胞のインキュベーション時間の関数として決定するために使用することができる。典型的に、増殖(細胞数の増加)は、血球計数器又は細胞計数器を用いてある色素の取り込みを計測するか、又はヘマトクリット値を測定することにより、細胞数を計数することによって計測される。こうして、細胞培養インキュベーション期間の長さは変化し、そして所望される増殖度に依存する。 一般的に、液体培養における増殖は、インキュベーションの開始からの細胞総数の増加により及び/又はCD34+細胞の割合(%)を測定することにより評価される。 ステップa)は、約6日〜約15日以上、例えば約28日目まで続けられることもある。ステップb)は、約2日〜約14日続けられることもある。 当該方法が3個のステップa)、a')、b)を含む場合、ステップの期間は、およそ以下のとおりであろう: ステップa)は6〜10又は11日間、好ましくは約8日間続けられる。ステップa')は、2〜5日間、好ましくは約3日間続けられることもある。ステップb)は、2日〜14日間続けられる。 当該方法が2個のステップa)及びb)を含み、そしてステップa')が行われない場合、これらのステップの期間はおよそ以下のとおりである: ステップa)は7〜15日間、好ましくは約11日間続けられる。ステップb)は2〜14日間続けられる。 本発明の任意の実施態様では、培養ステップb)は、網状赤血球が得られるまで行われる。網状赤血球は、一般的に培養ステップb)の4日後に生じる。成熟赤血球細胞が得られるまで待つことが好ましい。その場合、ステップb)は、成熟赤血球細胞が得られるまで行われ、成熟赤血球細胞は一般的に培養ステップb)の7日後に生じる。 増殖後、細胞を回収し、そして洗浄し、そして患者へ輸液する前に、好ましくはろ過して白血球を取り除く。 具体的な実施態様では、本発明の方法は、以下のステップ: a)SCF、IL-3、及びエリスロポエチン(EPO)を含む培養培地中で造血幹細胞を8日間培養し、場合によりさらに3日間SCF及びEPOを含む培地中で培養し; a')ステップa)において得られた細胞を、EPOを含む培養培地中で、場合により同じ培養培地のまま、そして間質細胞系列と接触させて、3日間培養し; b)ステップa')において得られた細胞を、間質細胞系列と接触させたままで、全ての成長因子の不存在下で4日間培養し、それにより網状赤血球を取得し、又は7日間培養し、それにより成熟赤血球を得る を含む。 本発明の方法は、脱核赤血球の均一な集合を大量生産することを許容する。 有望な細胞生成物(potential cell yield)は、輸液についての臨床要件に適合する。標準RBC濃縮物は、約2×1012細胞を含む。臍帯血ユニットは、2〜5×106CD34+細胞を含み、そしてG-CSFなどの成長因子で動員した後に行う白血球搬出法は、体重1kgあたり4〜8×106CD34+細胞を通常提供する。一方増幅レベルは、それぞれ105及び3×104倍であり、又は(ステップaの期間が11日間である場合)106及び1×105倍であり、約65%〜約95%の範囲の脱核割合であった。全ての前出のパラメーターを考慮に入れると、幾つかのRBC濃縮物の同等物が、1のドナーからこの方法で産生されうるということが明らかであろう。 供給及び感染安全性の点における輸液についての関心(当該方法は、1のドナー及び/又は自己輸血患者に由来する数ユニットを簡単に産生することを可能にする)とは別に、本発明の方法は、輸液有効性に関しても利益がある。ドナーから得られたRBCの平均半減期が、様々な日齢の細胞が同時に存在するため28日である一方、本発明の方法は、120日に近い寿命を有する均一な日齢の細胞集合の輸液を可能にする。このことは、必要とされる輸液回数を低減するであろう。 本発明はさらに、以下の実施例及び図面により例示される。これらの実施例及び図面は本発明の範囲を制限するものではない。 実施例1:マウス細胞系列MS5を骨髄環境として用いた成熟RBCの産生 材料と方法 細胞培養 通常の骨髄(BM)、G-CSFで動員された通常の末梢血又は動員されていない末梢血(PB) [白血球搬出法(LK)]、及び通常の臨月出産からの臍帯血(CB)を、インフォームドコンセントを行って取得した。CD34+細胞は、Mini-MACSカラム(Miltenyi Biotech, Bergisch Glodbach, Germany)を用いた超磁性マイクロビーズ選別により単離した(純度94±3%超)。 A.1%脱イオン化ウシ血清アルブミン(BSA)、120μg/mlの鉄飽和ヒトトランスフェリン、900ng/mlの硫酸鉄、90ng/mlの硝酸鉄、及び10μg/mlのインスリン(これら全てをSigma, Franceから得た)を添加した改変無血清培地(Kobariら、2000; Giarratanaら、2000)中で細胞を培養した。 細胞培養培地の別の例は、Iscove改変ダルベッコ培地(IMDM, Biochrom,商品番号F0465)であった。以下の表(表1)は、培地100mlについての全ての内容物の例である。 増殖方法は3のステップから構成される。 第一のステップ(0〜8日目)では、104個/mlのCD34+細胞を、10-6Mヒドロコルチソン(OHC)(Sigma)、100ng/ml幹細胞因子(SCF、Amgen, Thousand Oaks, CA, USA)、5ng/mlのIL3(R&D Systems, Abingdon, UK)、及び3IU/mlのEpo(Eprex, Janssen-Cilag, Issy-les-Moulineaux, France)の存在下で培養した。4日目において、1体積の細胞培養物を、OHC、SCF、IL3、及びEpoを含む新たな培地4体積中に希釈した。 第二ステップ(8〜11日目)では、細胞を、(CB、LK、BM、及びPB細胞についてそれぞれ)5×104、105、2×105、又は3×105個/mlで再懸濁し、そしてEpoを加えた新たな培地中でMS-5間質細胞上で共培養した。 第三ステップ(11日目以降)、サイトカインを伴わない新たな培地中で間質細胞(MS5)上で当該細胞を培養した。培養物を5%CO2を含む空気内で37℃にて維持した。(プロトコルAについて)培養物をその開始時から15日以上維持した場合、好ましくは細胞を洗浄し、5〜6×106個/mlで再懸濁し、そして新たな間質細胞層上で共培養した。この培養ステップの間、5〜20%ヒトAB血清を培地に添加することは、培養された赤血球細胞(cRBC)の保存を許容する。細胞は、形態学的分析のためにMay-Grunwald-Giemsa試薬で染色し、一方、脱核細胞を、XE2100automat(Sysmex、Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を用いてMCV(fL)、MCHC(%)、及びMCH(pg/細胞)を含む標準的な血液に関する数値についてモニターした。 B.以下のステップを含む代わりのプロトコルを用いた: 第一ステップ:既に記載された第1ステップの培養(プロトコルA)を3日間(11日目まで)延長する。この場合、8日目の細胞を回収し、洗浄し、そして(CB、LK、BM、及びPB細胞についてそれぞれ)5×104、105、2×105、又は3×105個/mlでSCF及びEpoを含む新たな培地中に再懸濁した。 第二ステップ: 既に記載された培養の第二ステップ(プロトコルA)から3日間遅らせる。通常11〜14日目である。(通常プロトコルAの8日目の細胞ではなく、プロトコルBの11日目の)細胞を、(CB、LK、BM、及びPB細胞についてそれぞれ)105、2×105、3〜4×105、又は4〜6×105個/mlで再懸濁し、そしてEpoを加えた新たな培地中でMS-5間質細胞系列上で共培養した。細胞を通常14日目で洗浄して、因子及び代謝産物を取り除いた。 第三ステップ: 既に記載された培養の第三ステップ(プロトコルA)から4日間遅らせる。通常14〜18日目である。培養物が開始から18日間(プロトコルBについて)を超えて維持される場合、細胞を好ましくは洗浄し、5〜6×106個/mlで再懸濁し、そして新たな間質細胞層上で共培養した。この培養ステップの間、5〜20%ヒトAB血清を培地へと加えることは、培養された赤血球細胞(cRBC)の保存を許容する。 使用されうる成分の例として詳細をさらに以下に記載する(表1を参照のこと)。 ペニシリン及びストレプトマイシン:ストック溶液は、5000U/mlのペニシリンと5000μg/mlのストレプトマイシンの混合液である。 イノシトール:20mgの粉末イノシトール(室温保存)を5mlのIMDM中に溶解し、そして4℃で最大一週間貯蔵できる。 葉酸:20mgの粉末葉酸(室温保存)を20mlの予め暖められたIMDM中に溶解し、そして4℃で一週間貯蔵できる。使用前に溶液を予め温めることが好ましい。 モノチオグリセロール:10μlの11.56Mストック溶液(Sigma、11.56M、d=1.25、純度98%、MW=108.16)を712μlのIMDM中に溶解する。モノチオグリセロールの0.16M溶液を得る。 ホロ-トランスフェリン:トランスフェリン1グラムあたり1200〜1600μgの鉄で飽和されたホロ-トランスフェリン(Sigma)を、150mM・NaCl、0.8mM・Na2HPO4、0.2mM・NaH2PO4、pH7.5の溶液中に15mg/mlで溶解し;10mlの当該溶液に、340μlのFeCl310mMを含む1mM・HCl溶液を加えた。溶液を滅菌ろ過(0.2μm)し、そして4℃で貯蔵する。 インスリン:粉末インスリン(-20℃で貯蔵)を5mM・HCl中に1mg/mlで溶解する。当該溶液を-20℃で貯蔵する。 硝酸鉄:塩複合体の形成を避けるために、最初に硝酸鉄粉末を1.8mg/mlで蒸留水に溶解することができる。この第一溶液をIMDMで1/100に希釈し(第二溶液、0.018mg/ml)、そして4℃で貯蔵する。 硫酸鉄:塩複合体の形成を避けるために、最初に硫酸鉄を18mg/mlで蒸留水中に溶解する。この第一溶液をIMDMで1/100に希釈し(第二溶液、0.18mg/ml)、そして4℃で貯蔵する。 ヒドロコルチソン:培養の第一ステップの間、ヒドロコルチソン(OHC)を加えてもよい(終濃度10-6M)。20mgのヒドロコルチソン塩(Sigma ref H2270, MW=484.5、-20℃貯蔵)を4.12mlのIMDM中に溶解し、次に同じ培地で1/100に希釈し10-4M溶液を生成する。当該溶液を0.22μmのフィルターを通してろ過し、そして+4℃で1週間貯蔵することができる。1mlの10-4M・OHC溶液を100mlの最終培養培地に加える。 間質細胞 MS-5を接着層として使用する。 MS-5間質細胞系列を、リボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシド、並びにGlutamax(Invitrogen, ref32571-028)を含み、そして10%胎児ウシ血清(FCS)を添加されたαMEM培地中で増殖させる。 コンフルエントになった後に、37℃でトリプシン-EDTA 1×(Invitrogen, ref25300-54)により7〜10分処理したのちに接着細胞を回収した。106細胞/cm2を通常回収する。細胞の剥離を倒立顕微鏡のもとで制御する。25cm2フラスコあたり0.5ml・FCSを加えることにより反応を止める。細胞を洗浄し、そしてαMEM+glutamax+10%FCS培地中に4000細胞/cm2で再び蒔いた。細胞を37℃、5%CO2下でインキュベーションする。接着は通常1週間の後に達成される。 通常、赤血球細胞と共培養するために、MS-5をトリプシン処理後2週間以内に使用する。 半固体培養アッセイ BFU-E、CFU-E、及びCFU-GM前駆細胞を、Giarratana, M. C.ら、(1998)に前に記載されるように、5%CO2を含む空気中で37℃にてインキュベーションされたメチルセルロース培養物中でアッセイした。 フローサイトメトリー 細胞を標識未結合抗体、又はフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)結合抗体、又はフィコエリトリン(PE)結合抗体で標識した。CD71についての抗体(Dako、Carpinteria, CA)並びにCD45及びCD34に対する抗体(Immunotech, Marseilles, France)を表現型検査に使用し、そして細胞を生きている核酸についての色素LDS-751で染色した。分析を、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)上で、Cell Questソフトウェアを用いて行った。 変形能計測 15日目の培養物から得られた網状赤血球を、白血球除去フィルター(Leucolab LcG2, Macopharma, Tourcoing, France)を通過させることにより有核細胞から分離し、そしてエクタサイトメトリー(ektacytometry)、レーザー回折法により脱核細胞を試験した。エクタサイトメーター(ektacytometer)(Technicon, Bayer Corp.)において、4%ポリビニルピロリドン溶液中に懸濁された細胞を、浸透圧増加勾配(60〜450mosM)に暴露し、そしてそのレーザー回折パターンの変化を記録する。光度測定法は、変形能指数(DI)と名付けられるシグナルをもたらす。DI曲線の分析は、一定にかけられた170dynes/cm2のせん断応力(shear stress)における浸透圧の関数として、細胞膜の動的な変形能を計測することを提供する。DIの最大値として定量されるDImaxは、通常生理学的に適切な浸透圧で達成され、赤血球の平均表面積に関連する。 グルコース-6-ホスフェート・デヒドロゲナーゼ、及びピルビン酸キナーゼ活性 白血球を除いた後に得られる赤血球にジギトニン(0.2%)を加え、そしてDrabkin試薬を用いて、分光光度法によりヘモグロビンを定量した。Synchron CX4 Beckman光度計並びにRandox Laboratories(Crumlin, UK)及びRoche Diagnosticsのそれぞれから販売される試薬を用いて、340nmでNADPH吸光の増加率を計測することによりG6PD及びPK活性を測定した。結果をヘモグロビン1グラムあたりのユニットで表した。 ヘモグロビン分析 様々なHb分画の割合を、Bio-Rad VariantII Hb分析器(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を用いてCE-HPLCを行うことにより計測した。グロビン鎖の組成を、RP-HPLCにより、以前に記載されたように測定した(Pic, Ducrocqら、1994 ; Papassotiriou, Ducrocqら、 1998)。 機能特性 メトヘモグロビン分画を、近紫外領域(350〜450nm)で分光光度的に測定した。サンプルを純粋なCO下で平衡化し、そして終濃度200μMのシアン化カリウムをヘモグロビンの緩衝溶液に加えた。標準に対する総ヘム濃度は、200μMの亜ジチオン酸カリウムの添加後に、420nmにおけるCOスペクトルの最大吸収から計算された。 ヘモグロビンの結合特性を、1mm光学キュベット中での閃光光分解により試験した。簡潔に記載すると、細胞内ヘモグロビン四量体へのCOの再結合の反応速度論は、Mardenら(1988)において以前記載されるように、532nmにて10nsパルスで閃光光分解した後に、436nmで分析された。 NOD/SCIDマウスモデルにおける検証 全ての実験及び方法は、動物実験についてのフランスの農業省の基準(1987)に沿って行った。NOD/SCID-LtSz-scid/scid(NOD/SCID)マウスを滅菌条件で飼育した。細胞注射前に137Cs源(2.115Gy/min)からの2.5グレイを亜致死的に6〜8週齢のマウスに照射した。細網内皮系を飽和させるために、ヒトO型RBCを腹腔内に注射した (マウス一匹あたりi.p.4〜5×109細胞)。24時間後、19日目の培養物からin vitroで生成させたRBC(マウス一匹あたり4〜5×109細胞)であって、洗浄され、そしてCFSE(Lyonsら、(1994))で標識されたRBCをマウスにi.p.で注射した。対照は、同じ条件下でヘパリン化された末梢血を与えられた。各実験群において3匹の動物を使用した。ヒトRBCの排除を、後眼窩静脈穿刺により様々な時間で各マウスから採取されたヘパリン化血液の5μlサンプルにおいてフローサイトメトリーによりCFSE標識細胞を追跡することにより測定した。各群において、マウス血液中のCFSE標識細胞の割合から回帰線を作成した。 結果 赤血球細胞の大量増殖 細胞を調整無血清培地中で、成長因子の組合せの存在下で、そしてマウス間質細胞系列MS5上で共培養することで増幅した。当該細胞系列MS5は、in vivoにおいて存在する微小環境を模倣する微小環境をex vivoで作り出す(Suzuki, 1992)。骨髄(BM)又は末梢血(PB)由来のCD34+細胞について16500倍(9200〜25500倍)、G-CSFで動員した後に白血球搬出法により得られるCD34+細胞について31200倍(23700〜34000倍)、そして臍帯血に由来するCD34+細胞について140000倍(93000〜277000倍)の平均細胞増幅におけるプラトーを15日目に得ることができる(図1A)。 赤血球細胞系列への傾向は、8日目に形態学的に明らかであった(95〜98%の赤芽細胞)。続く最終分化は早くおこり、脱核細胞の割合は11日目では1〜5%であり、そして15日目には65〜80%になる(図1B)。この段階で、98±1%の細胞が、平均細胞体積(MCV)130±5μm3、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)18±1%、及び平均赤血球ヘモグロビン(MCH)23±1pgを有する網状赤血球(図2B)であった。 網状赤血球の成熟RBCへの分化は、核物質の消失及びトランスフェリン受容体CD71の発現の進行性消失及びレーザースチリル色素での染色により示されるように、15日目〜18日目にかけて継続した。この段階では、90〜100%の細胞が脱核した(図2A)。これらの赤血球は、天然のRBCの特徴に近い特徴、つまり、113±3fLのMCV、33±2pgのMCH、及び29±2%のMCHCを示した。15日目に対する18日目の細胞収率は77±5%であり、18±4%の平均網状赤血球含量であった。共焦点顕微鏡により観察される成熟の異なる形態学的段階は、図3に示される。当該純粋な赤血球系細胞の大量分化は、赤血球前駆細胞(BFU-E及びCFU-E)の増殖を標的誘導することに原因があり、8日目及び11日目において急速に消失する顆粒球-マクロファージ前駆細胞(CFU−GM)の減少に原因がある。 これらの培養条件は、その結果(i)液体培地中における最初の8日間の間、SCF及びIL3の存在下で始原HSCの強力な増殖を誘導し、そして排他的な赤血球分化がEpoにより標的誘導され、(ii)第二ステップの3日間の間、微小化環境と単一の成長因子Epoの組合せ効果を通して、高レベルの増殖を維持して最終成熟を開始し、そして(iii)微小環境のみの存在下で細胞分化及び最終脱核を完了することを許容する。 機能性の網状赤血球及び赤血球 ex vivoで生成された網状赤血球及びRBCは、ヘモグロビン1グラムあたり42±1.4ユニットのグルコース-6-ホスフェート・デヒドロゲナーゼ(G6PD)含量及び83±1.8ユニットのピルビン酸キナーゼ(PK)含量を有し、均一な性質及び生成された若い細胞集合に一致するものであった(Jansenら、1985)。これにより、グルタチオンを低減し、ATPレベルを維持し、そうしてヘモグロビンの親和性を低減する2,3-ジホスホグリセレート(2,3-DPG)の増加を避けることができるといことが示唆される。これらの網状赤血球及びRBCの変形能は、エクタサイトメトリーにより評価されると、天然の赤血球の変形能に匹敵するものであった(図4)(Cynoberら、1996)。 in vitroにおいて生成されるRBCのヘモグロビンの機能は、閃光光分解により研究された。異なるサブユニット間の協調が観察され、四量体ヘモグロビンのアロステリック挙動特徴を確認する。当該分子は、天然のヘモグロビンについて予期されるように酸素を固定及び放出できた。メトヘモグロビン(Met-Hb)は、分析サンプルにおいて検出されなかった。これは、cRBCが酵素学的にHb酸化を逆行できるということを示唆した。 培養ヒトRBCのin vivoにおける結末 in vivoでの発生を追跡するために、白血球搬送法から生成されるCFSE標識網状赤血球を、NOD-SCIDマウスに腹腔内注射した。注射後、cRBCは天然RBCと同程度まで血液循環系内に存続した:CFSE+細胞は、輸液された動物の両群において3日間検出された。CFSE+/LDS-細胞の外見により示されるように、輸液された網状赤血球は、in vivoにおいてRBCに完全に成熟した(図6):それぞれ1日目、2日目、及び3日目において36%、73%、及び96%が成熟RBCであり、これはin vitroで得られた結果に沿うものであった。RhD抗原表面発現は、ヒト起源のCFSE+細胞を確認した。 赤血球の最終成熟におけるex vivo微小環境の影響 微小環境がなく、そして成長因子のみが存在する状態で、細胞増殖及び赤血球分化能は変わらなかった(15日目において5.6×105倍の増幅、99%の赤血球)。しかしながら、実質的に最終的な成熟、つまり脱核は達成されなかった(2±1%)。こうして、接着細胞と非接着細胞とのあいだに0.45μmのトランスウォールを配置することは、脱核を全て防止し、そして次なる細胞溶解を誘導した。 さらに、赤血球前駆細胞(CFU-E、BFU-E)の生成動態により、間質細胞が存在しないことが最終分化を助けないということが確認された。これらの前駆細胞の11日目における数が、MS5細胞上での共培養した際よりも20〜700倍多かったためである。 ヘモグロビンの合成研究: 合成されたヘモグロビンの性質がCD34+細胞の起源及び培養条件の両方に依存するということを本発明者は観察した。PB又は成人BMに由来するcRBCは、ヘモグロビンA(HbA)(それぞれ94±1.7%及び95%±0.6%)と類似のモジュレーションであるヘモグロビンF(HbF)(γA:γGの比はそれぞれ53:47及び52:48である)を含む。CBに由来するCD34+細胞から得たcRBCは、実質的に胎児のヘモグロビン(64±13%)と部分的なモジュレーションであるHbF (γA:γGの平均比は59:41である) とを含み、CBサンプル中の80±7%のHbFから開始した。これらの観察は、F細胞から非F細胞へのex vivo変換が生じた可能性を反映する。以前の研究(Neildez-Nguyenら、2002)において、微小環境が存在しない条件で10日間培養した後に得られた赤芽細胞始原細胞/前駆細胞が、NOD/SCIDマウスに注射した後にin vivoにおいて機能型HbA(96%)と、完全なモジュレーションであるHbF (γA:γGの比は35:65である) とを含む成熟RBCを生じさせることが分かったので、cRBCによるHbFのex vivo合成は、培養条件と県警を有する。重篤な異常血色素症(鎌状赤血球貧血症、β-サラセミア)を患う患者においてHbFの発現を刺激することは、本明細書において取り扱われうる興味あるex vivo治療アプローチである。 実施例2:間葉細胞を骨髄環境として用いた成熟RBCの生産 MS5間質細胞を間葉間質細胞(MSC、Prockop D. J, 1997)に置き換えて、実施例1のプロトコルを繰り返した。 間質細胞の選別及び増殖: 間葉間質細胞(MSC)を通常の成人骨髄全体から樹立した。 第一ステップ、間葉間質細胞の選別: リボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシドを含まず、そしてGlutamax(Invitrogen, ref32561-029 Paisley, Scotland)を含み、そして10%ウシ胎児血清(FCS)±1ng/mlβFGFを添加したαMEM培地中に細胞を50000細胞/cm2で蒔いた。3〜5日後、非接着細胞を取り除く。接着細胞をコンフルエントになるまで週二回培地交換する(約10〜20日)。第一ステップの終わりにおいて、間質細胞は、その接着性質のため骨髄細胞の全体から高度に選別されるということが考慮される。 第二ステップ、間葉間質細胞の増殖: 接着細胞は、室温にてトリプシン-EDTA1×で5〜6分処理した後に回収する。細胞の剥離を、倒立顕微鏡下で制御する。25cm2フラスコあたり0.5mlFCSを加えることにより反応を止める。細胞を洗浄し、そして10%FCS±βFGFを加えられた新たな培地中で1000〜3000細胞/cm2で蒔く。細胞をコンフルエントになるまで週一回又は二回培地交換する。コンフルエントになるまで細胞を37℃5%CO2下でインキュベーションする。接着MSCを増殖させ、そして第二ステップの後から少なくとも2回の連続継代を通して精製した。 細胞培養の結果: 以下のプロトコル:ステップa)8日間、ステップ a')3日間、及びステップb)4日間に従って、骨髄(BM)又は末梢血(PB)由来のCD34+細胞について13100倍(8000〜23000倍)の平均細胞増殖、及び臍帯血(CB)に由来するCD34+について57300倍(32000〜73000倍)の平均細胞増殖のプラトーを15日目に得ることが可能である。 赤血球細胞系列への傾向及びRBCへの最終成熟は、MS-5層上で観察されたものに正確に類似した。 参考文献 - Baumら、89 PNAS USA 2804-2808 (1992) - Bessis, M., [Erythroblastic island, functional unity of bone marrow.]- Rev Hematol, 1958. 13(1): p. 8-ll - Beutler, E.ら、International Committee for Standardization in Haematology: recommended methods for red-cell enzyme analysis. 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Exp Hematol, 2000. 28(8): p. 885-94赤血球細胞の大量増殖。臍帯血(CB)、骨髄(BM)、末梢血(PB)、又は白血球搬出法(LK)に由来するヒトCD34+細胞を、三層プロトコル(実施例1の材料と方法を参照のこと)にしたがって、マウス起源の間質細胞(MS5)の層上で液体培地中で培養し、そして生存している非接着性の細胞の総数を時間を変えて測定した。7ユニットのCB、5ユニットのBM、1ユニットのPB、及び3ユニットのG-CSFで動員された白血球搬出法から得た培養物についての平均値を示す。May-Grunwald-Giemsa染色後の0、8、11、15、及び18日目の培養物における細胞の写真。半固体培養物中の前駆細胞の数。CB培養物由来の細胞を用いた4の独立した実験における赤血球前駆細胞(CFU-E、BFU-E)及び顆粒球-マクロファージ前駆細胞(CFU-GM)についての(蒔いた細胞104個あたりの)平均数である。様々な時間点において、前駆細胞の評価のために、非接着細胞の一定分量をSCF、GM-CSF、G-CSF、IL-3、及びEpoの存在下でメチルセルロース中で増殖させた。網状赤血球のRBCへの成熟。BM培養物から得たサンプルを用いた1の代表的な実験の15日目〜18日目における、レーザースチリル色素(LDS)で染色されたトランスフェリン受容体(CD71)の発現についてのFACS分析。15日目と18日目においてCresyl Brilliant Blueで染色された網状赤血球の写真(倍率×500)。15日目では、65%の細胞が脱核しておりその98%が網状赤血球であった。18日目では、100%の細胞が脱核しており、そして82%がRBCであった。共焦点顕微鏡画像。in vitroで生成された脱核細胞を、CFSE(カルボキシフルオレセイン・ジアセテート・スクシンイミジル・エステル、細胞内巨大分子と共有結合を形成する)で標識し、そして共焦点レーザー走査顕微鏡(倍率×400)により分析した。成熟の様々なステージを示す。上段:特徴的なしわの寄った外見を有する未成熟な網状赤血球。中段:成熟網状赤血球、カップ型細胞。下段:成熟赤血球、両凹面円盤に近い。図は:外形図(A)、正面図(B)、及び側面図(C)である。変形能プロファイル。脱核赤血球の伸張を計測するために浸透圧勾配におけるエクタサイトメトリー(Ektacytometry)を使用した。曲線は等張培地における最大変形指数(IDmax)を規定する。IDmaxは、分析された細胞型の全てについて、対照と同じ範囲であり(0.41〜0.53)、変形について等しい能力を示す。SC前駆細胞由来の網状赤血球(A)及びSC前駆細胞由来のRBC(B)の代表的な曲線を生来のRBC(C)についての曲線に比較する。ヘモグロビンのCO再結合反応速度論。18日目の培養物からex vivoで得られたRBCのヘモグロビン含有物の閃光光分解後のCO再結合(灰色曲線)を、新鮮なRBC懸濁液由来のヘモグロビンの閃光光分解後のCO再結合(黒色曲線)に比較した。2個のサンプルは、類似の結合性及びアロステリック特性を示す。光解離収率が低下すると、T状態分子の存在のため遅いCO再結合段階が減少する。フローサイトメトリーによるNOD/SCIDマウスモデル中のCFSE標識cRBCの追跡。一の代表的な実験を示す。(A):NOD/SCIDマウスの末梢血、由来の細胞におけるCFSE/LDSマーカーの発現のキネティクス。x軸:CFSE検出量;y軸:LDSの検出量を示す。(B)3日目において、細胞をPE-抗RhD抗体(色つきのヒストグラム)又はその対照アイソタイプ(無色のヒストグラム)で共標識された。結果を、CFSE+細胞内のRh割合について示す。 脱核赤血球を生産するin vitro方法であって、以下のステップ: a) 少なくとも1の造血成長因子を含む培養培地中で造血幹細胞を培養し、 b) 得られた細胞を、実質的にエリスロポエチン(EPO)の非存在下で支持細胞と接触させて培養する を含む、前記方法。 前記ステップa)及びステップb)の間に追加の中間ステップ: a') ステップa)において得られた細胞を、少なくとも1の造血成長因子を含む培養培地中で、支持細胞と接触させて培養する を含む、請求項1に記載の方法。 前記ステップa')中の培養培地がエリスロポエチンを含む、請求項2に記載の方法。 前記細胞が、全ての造血成長因子の非存在下でステップb)に従って培養される、請求項1に記載の方法。 前記支持細胞が、骨髄微小環境である、請求項1に記載の方法。 前記支持細胞が、間質細胞又は間葉幹細胞である、請求項1に記載の方法。 前記支持細胞が、遺伝子改変された細胞である、請求項1に記載の方法。 ステップa)において培養された造血幹細胞が、遺伝子改変細胞である、請求項1に記載の方法。 前記細胞が、関心の外来ヌクレオチド配列を発現できる、請求項8に記載の方法。 前記関心配列が、ヘモグロビン抗原をコードする、請求項9に記載の方法。 ステップa)の成長因子が、SCF、FLT-3リガンド、IL3、IL6、EPO、及びMGDFからなる群から選ばれるか、又はそれらの混合である、請求項1に記載の方法。 前記ステップa)の培養培地が、SCF、IL3、及びエリスロポエチンを含む、請求項1に記載の方法。 ステップa)が6〜15日間続けられる、請求項1に記載の方法。 ステップa)が6〜10日間続けられる、請求項2に記載の方法。 ステップa')が2〜5日間続けられる、請求項2に記載の方法。 ステップb)が2〜14日間続けられる、請求項1に記載の方法。 ステップb)が網状赤血球が得られるまで行われる、請求項1に記載の方法。 ステップb)が成熟赤血球が得られるまで行われる、請求項1に記載の方法。 前記方法が以下のステップ: a) SCF、IL-3、及びエリスロポエチンを含む培養培地中で造血幹細胞を8日間培養し、 a') ステップa)において得られた細胞を、エリスロポエチンを含む培養培地中で、かつ間質細胞系列と接触させて3日間培養し、 b) ステップa')において得られた細胞を、さらに間質細胞と接触させて、全ての成長因子の非存在下で4日間培養し、それにより網状赤血球を得るか、又は7日間培養し、それにより成熟赤血球細胞を得る、 を含む、請求項1に記載の方法。 本発明は、二つのステップ:細胞増殖及び赤血球分化が成長因子の存在下で誘導される培養培地中での第一ステップ、そして実質的にエリスロポエチン(EPO)を伴わない微小環境の再構成をモデリングする第二ステップで、増幅し、そして造血幹細胞を脱核赤血球に分化させる方法に関する。


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特許公報(B2)_赤血球細胞の生産方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_赤血球細胞の生産方法
出願番号:2007514152
年次:2013
IPC分類:C12N 5/078,C12N 5/10


特許情報キャッシュ

ジャラタナ,マリー−カトリーヌ ドゥアイ,ルク JP 5139799 特許公報(B2) 20121122 2007514152 20050311 赤血球細胞の生産方法 ユニベルシテ ピエール エ マリー キュリー(パリ シズエム) 504317743 青木 篤 100099759 石田 敬 100077517 福本 積 100087871 古賀 哲次 100087413 中村 和広 100108903 ジャラタナ,マリー−カトリーヌ ドゥアイ,ルク US 60/576,936 20040604 20130206 C12N 5/078 20100101AFI20130117BHJP C12N 5/10 20060101ALI20130117BHJP JPC12N5/00 202JC12N5/00 102 C12N 5/078 - 5/0789 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CA/BIOSIS/MEDLINE(STN) WPI PubMed Exp. Hematol.,31(7 Suppl 1)(2003),p.138, 233 Nat. Biotechnol.,20(5)(2002),p.467-472 Blood Cells Mol. Dis. ,28(2)(2002),p.169-180 J. Exp. Med.,183(3)(1996),p.837-845 Leukemia,6(5)(1992),p.452-458 13 IB2005000626 20050311 WO2005118780 20051215 2008501333 20080124 21 20080306 上條 肇 本発明は、赤血球細胞の生産方法に関し、より具体的に、脱核赤血球の大量かつ選択的生産のためのin vitro方法に関する。 ヒト赤血球細胞(RBC)の主要な特徴のうちの一つは、核がないにもかかわらず長期間の寿命(120日間)を有する唯一の細胞であるという点である。脱核のメカニズムは推測されていた(Bessis, 1958 ; Lichtman, 1981 ; Qiuら, 1995)が、ex vivoにおけるRBCの大量生成を許容する実験条件がなかったために、正式に確立されていなかった。 成人において、in vivoにおける造血は、骨髄に位置する動的産生プロセス(dynamic production process)からもたらされ、当該プロセスはピラミッド型の細胞ヒエラルキーに従って少数の造血幹細胞(HSC)から開始され(Stem Cell (SC)、 progenitor and maturation compartments) (Ogawa, 1993) 、そして微小環境と密接に関わって実行される(Lemischka, 1997 ; Friedenstein, 1977 ;Verfaillie, 1993)。in vitroの赤血球生成微小環境がin vitroで開発され、造血と接着細胞との間における接触の重要性を示した。(Ohnedaら、1997 ; Yanai. ら、1997 ; Hanspalら、1994 ; Hanspalら、1998))。さらに、赤血球増殖は、幹細胞因子(SCF)、インターロイキン(IL3)、及びエリスロポエチン(EPO)により積極的に制御されていることが知られている(Zermatiら、2000 ; Satoら、2000 ; Dolznigら、2002)。 ほぼ完全な赤血球分化を得ることは一見簡単である(Fibachら, 1989 ; Wada ら, 1990 ; Panzenbockら, 1998 ; Freyssinierら, 1999)が、それにもかかわらず、これらの文献データーは、提案された様々な培養方法の最終段階に達した際に、最終成熟を伴わずに重要な細胞増殖することを示す(Suiら, 1996 ; von Lindernら, 1999)か、又は約半数の細胞において脱核を示すが、増殖レベルが低いということを示す(Malik et al., 1998)。赤芽細胞の大量増殖及び全ての脱核の両方を得ることを許容する一連のex vivo条件は、未だ報告されていない(Malikら、1998)。 間質細胞を含まない(stroma free)調整培地中で臍帯血(CB)由来のHSCを増殖させる方法は、成長因子を連続添加することに基づき記載された(Neildez-Nguyenら、2002)。当該プロトコルは、CD34+細胞から開始し、脱核細胞への成熟を達成することが未だできない純粋な赤血球前駆細胞を大量産生することを可能にする。 輸液用の赤血球前駆細胞を産生することについての関心は、 L. Douay, 2003,により総説された。 本発明者は、以下の2つのステップ: 成長因子の存在下で細胞増殖及び赤血球増殖を誘導する、培養培地中での第一ステップ、そして、 好ましくは造血成長因子を含まない微小環境の再構成をモデリングする、第二ステップ で造血幹細胞を増殖させ、そして造血幹細胞を脱核赤血球へと分化させるプロトコルを設計した。場合により、当該培養方法は、微小環境及び造血成長因子の両方の存在下における中間ステップを含んでもよい。 本発明者は、本培養方法が、CD34+SCs/前駆細胞を大量増殖させ、そしてそれらを機能的に完全に成熟したRBCへと完全に分化させることの両方を許容するということを示した。ここで当該成熟RBCは、ヒト末梢血由来のRBCと同様にNOD/SCIDマウスにおいてin vivoで生存した。 成熟RBCは、成熟しかつ機能を発揮する天然RBCの特徴の全てを有する。 それゆえ、本方法は、臨床輸血用の成熟赤血球の大量生産に特に有用である。 本発明はこうして、脱核赤血球(網状赤血球及び成熟赤血球細胞を含む)を産生するためのin vitro方法であって、当該方法は以下のステップ: a)少なくとも1つの造血成長因子を含む培養培地中で造血幹細胞を培養し、 b)そのようにして得られた細胞を、実質的にEPOの非存在下で支持細胞と接触させて培養するステップ を含む方法を提供する。 場合により、当該方法は、ステップa)及びステップb)の間において更なる中間ステップ: a') ステップa)において取得される細胞を、少なくとも1の造血成長因子を含む培養培地中で支持細胞と接触させて培養する を含む。 開始細胞 開始細胞は、任意の起源由来である造血幹細胞である。開始細胞は、好ましくはヒト起源である。造血幹細胞は、患者から取得されることもある。開始細胞は、任意の生物学的サンプル、例えば血液、例えば末梢血、骨髄、臍帯血、又は胎児肝臓から調製されうる。例えば、血液サンプルは、G-CSF[白血球搬出法(Leukapheresis)(LK)]で動員された通常の末梢血又は動員されていない通常の末梢血(PB)であってもよい。造血幹細胞は、造血幹細胞表面抗原(例えば、CD34)に結合する市販の抗体を用い、当業者に周知の方法を用いて単離されうる。例えば、当該抗体は、磁性ビーズに結合され、そして免疫学的方法が、所望の細胞型を回収するために利用される。好ましくは、造血幹細胞は、CD34+細胞の形態である。実際、CD34は、Baum ら、(1992)及びMorrisonら、(1995)に記載されるように、造血幹細胞の標準マーカーである。CD34+細胞の分離は、多くの様々な方法により達成されうる。最も広く使用されるものは、固体支持体上に固定された抗-CD34-抗体(Cellpro, Baxter, Myltenyi)に当該細胞を結合させることに基づく陽性免疫学的選別である。他の選別方法は、細胞系列特異的細胞表面抗原の発現に基づいてCD34+細胞から、CD34を発現しない細胞の全てを単離するネガティブ選別を含む。或いは、ステップ a)において培養される造血幹細胞は、肺性幹細胞からex vivoで産生されることもある(例えば、WO 01/34776 ; US 6,613,568を参照のこと)。 ステップa)において培養される造血幹細胞及びステップa)から得られる細胞は、遺伝的に改変された細胞でありうる。当該細胞は、例えば相同組換えによる遺伝子サイレンシングにかけられうる。このことは、当該細胞がもはや内在遺伝子を発現できないこと、または当該遺伝子又はその断片が欠失、つまり「ノックアウト」されることを意味する。遺伝子サイレンシングは、サイレンシングされた遺伝子の機能の研究において特に有用である。造血細胞は、当該造血細胞から血液型の抗原を発現しないように遺伝的に改変されてもよい。或いは、造血細胞は、例えば組換え発現ベクターを用いて遺伝物質を細胞内へ取り込ませることにより遺伝的に改変されてもよい。造血細胞は、関心の外来性ヌクレオチド配列を発現可能であってもよい。例として、関心配列は、ヘモグロビン抗原をコードしてもよい。造血細胞へ導入するための遺伝物質の他の例は、造血幹細胞の維持、組織発達、リモデリング、修復、又は細胞外遺伝子産物のin vivo産生において役割を有する遺伝子産物を発現させる遺伝物質を含む。遺伝的に改変された造血系細胞を使用することにより、脱核細胞の産生が許容される。当該脱核細胞は、当然のことながらもはや分裂できず、そして有限の寿命の間、治療上関心のある特定の表面タンパク質を発現するように遺伝的に改変されものでる。 培養培地 細胞は、好ましくは液体形態である培養培地内で培養される。 本発明において有用である培養培地は、造血細胞を培養するために当業者に知られている任意の培養培地でありうる。例えば、培養培地は、好ましくはヒト又はウシ胎児血清の添加を伴うRPMI、IscoveのMDM又はDMEM、TC199、X-VIVO-10でありうる。血清又は血漿は、1〜50%の濃度で加えられうる。しかしながら、好ましくは無血清培地である。 最も好ましい実施態様では、当該細胞は、1%脱イオン化ウシ血清アルブミン(BSA)又はヒト血清アルブミン(HSA)、120μg/mlの鉄飽和ヒトトランスフェリン、900ng/mlの硫酸鉄、90ng/mlの硝酸鉄、及び10μg/mlインスリンを添加された改変無血清培地(Kobari et al. 2000 ; Giarratana et al. 2000)中で培養される。 ステップ(b)及び (a')の培養培地は、造血成長因子を含む。当該成長因子は、いずれかの又は全てのインターロイキン(IL-1〜IL-16)、インターフェロン(IFN-α、β、及びγ)、エリスロポエチン(EPO)、幹細胞因子(SCF)、インスリン様成長因子、線維芽細胞増殖因子、血小板由来成長因子、腫瘍増殖因子、腫瘍壊死因子α、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球−マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)、マクロファージ・コロニー刺激因子(M−CSF)、fins様チロシンキナーゼ-3リガンド(Flt3-リガンド)、並びにEGF(上皮成長因子)、VEGF(血管内皮成長因子)、LIF(白血病抑制因子)を含む。トロンボポエチン(TPO)又はMGDF(肥満細胞増殖由来因子)が使用されてもよい。これらの成長因子の多くは市販されている。最も一般的に使用される増殖因子の混合物は、G-CSF、GM-CSF、SCF、IL-1、IL-3、及びIL-6を含む。使用される成長因子の大部分は、組換えDNA技術により産生され、そして様々な程度に精製される。幾つかの成長因子は、標準生化学的技術により、腫瘍細胞系列の培養培地から精製される。広く使用される成長因子は、PIXY321であり、PIXY321は、組換え技術により産生され、そしてGM-CSF及びIL-3活性の両方を示す。 ステップ(a)の培養培地は、好ましくはSCF又はFLT-3リガンドを含む。ステップa)において使用される増殖因子は、IL3、IL6、EPO、及びMGDFからなる群から選ばれるか、又はそれらの混合物でありうる。成長因子の組合せは、ステップa)を通して変化しうる。例えば、ステップa)は、8日間SCF+EPO+IL3で始め、続いて3日間SCF+EPOを続ける。有利なことに、ステップ(a)の成長因子は、エリスロポエチンである。好ましい実施態様では、ステップa)の培養培地は、SCF、IL3、及びエリスロポエチンを含む。 培養物に使用される成長因子の量は、当該因子調製品の活性及び使用される成長因子の組合せに依存する。典型的に、濃度は、0.5〜500ng/mlの範囲である。各成長因子の最適濃度は、幾つかの成長因子が他の成長因子と相乗的に作用するので、個別の培養条件に対して決定されなければならない。 好ましい実施態様では、ステップa')において使用される培養培地は、ステップa)において使用される培養培地と同じである。好ましくは、ステップa')において使用される成長因子は、ステップ a)において使用される成長因子と同じであるが、これは義務的なものではない。 ステップa')の培養培地は、好ましくはエリスロポエチンを含む。好ましくはエリスロポエチンは、ステップa')において使用される唯一の成長因子である。ステップa')の関心は、ステップa)から得られた細胞の分化ステージに左右される。実際、EPOは培養細胞中に存在する前駆細胞増殖に働きかける。 エリスロポエチンは次に、次のステップb)で取り除かれる。ステップb)では、細胞は実質的にEPOの不存在下で培養される。EPOを取り除くことは、最終的な分化を促進する。好ましくはステップb)において、当該細胞を全ての造血成長因子の不存在下で、最も好ましくは、全ての成長因子の不存在下で培養する。 支持細胞 当該プロトコルのステップb)又はステップa')において、細胞を支持細胞と接触させる。当該ステップは、固体支持体へ接着しているか又は懸濁液中に存在している細胞を用いて行われうる。 これらの支持細胞の目的は、造血幹細胞の増殖を支持する細胞から形成される本来の骨髄微小環境(Lichtman、1981)を真似することである。 本発明の文脈では、支持細胞は、in vitroにおいて造血細胞の増殖を助け、そしてその脱核赤血球への成長を助ける細胞である。 これらの支持細胞は、胚、胎児、又は任意の結合組織(conjunctive tissue)に由来する。 好ましくは、支持細胞は、骨髄微小環境に由来する。 特に、本発明の方法は、本来の骨髄微小環境から得られた標本を利用するか、又は再構成された骨髄微小環境を利用する。 好ましい実施態様では、WO99/64566において記載される様に、支持細胞は、間質細胞であるか、又は間葉細胞である。 間質細胞は、好ましくは、骨髄細胞又は胚性卵黄細胞に由来する。 マウス間質細胞又は間葉幹細胞は、本目的のために使用されてもよい。しかしながら、霊長類及び他の哺乳動物細胞、例えばヒト間質細胞又は間葉細胞はより適している。 「間質細胞」という用語は、骨髄における非造血細胞、並びにマクロファージを指す。 間質細胞は、内皮細胞、無紋血管細胞(線維芽細胞)、含脂肪細胞、及びマクロファージを含む。 間質細胞は、間葉幹細胞に由来する。 従って、哺乳動物、例えばヒト組織から間葉幹細胞(MSC)又は間質細胞を回収するために有用である任意の方法が、主に間葉幹細胞又は間質細胞を含む細胞集合をもたらすために利用されうる。一の態様では、ヒト間葉幹細胞又は間質細胞を単離する方法は、以下の:間葉幹細胞又は間質細胞を含む組織標本を準備し;例えば密度勾配遠心により、当該標本から間葉幹細胞又は間質細胞を単離し;分化をさせることなく間葉幹細胞又は間質細胞を刺激する因子を含み、かつ培養液において間葉幹細胞又は間質細胞の培養における支持体表面への選択的接着を許容する培地に単離された細胞を添加し;標本-培地混合物を培養し;そして支持体表面から接着していない物質を取り除き、間葉幹細胞又は間質細胞の単離された集合をもたらすステップを含む。 MSCの間接濃縮は、特にPittenger,1999に記載された。MSCを精製するための他の具体的な方法が開示された。当該方法は、特異的な膜マーカー、例えばCD49a(Deschaseaux, 2000)及びStro1(Simmons,1991)を発現する細胞を濃縮することにより選択されうる。 CD45及びGlycoAマーカー(Reyes, 2001)のネガティブ選別に基づいて、ネガティブ選別が考慮されることもある。 具体的な実施態様では、支持細胞は、遺伝的に改変された細胞、例えば成長因子及び細胞の接着を促進する因子をコードする外来性遺伝子を発現する支持細胞である。 好ましくは、支持細胞及びステップa)から得られる細胞は、ステップb)及び場合によりステップa')において、当該支持細胞が支持体表面に接着するか又は接着しないような適切な培養条件下でともに培養される。支持細胞は、支持体表面に1cm2あたり200〜5×105個の範囲、好ましくは1cm2あたり103〜約105個の範囲の密度で蒔かれる。 好ましくは、表面に付着する支持細胞の場合、支持細胞はコンフルエントに達した際に共培養に使用される。通常、コンフルエントは、1cm2あたり20000〜約80000細胞で達成され、そして好ましい実施態様では、コンフルエントは、1cm2あたり約40000細胞で達成される。こうして造血幹細胞(HSC)は、好ましくは1cm2あたり約200〜40000細胞の範囲の細胞密度で存在する。ステップa)から得られる細胞は、好ましくは1cm2あたり約103〜約2×106細胞の範囲内の細胞密度で存在する。 支持細胞が支持体表面に接着せず、そして懸濁液の状態である場合、支持細胞は一般的に1ミリリットルあたり20000〜約2.5×106個の細胞の範囲の濃度で懸濁される。造血幹細胞は、1ミリリットルあたり103〜約2×105細胞の範囲の密度で懸濁され、そしてステップa)から得られる細胞は、1mlあたり5000〜約107細胞の範囲の密度で懸濁される。 支持細胞、例えば微小環境、が存在せずかつ成長因子のみが存在する場合、最終成熟、つまり脱核、が特異的に達成されないということが発明者により観察された。 プロトコル 造血細胞数が増加する期間は、少なくとも一部において、細胞型及び使用される特定野培養容器の関数である。当業者に知られる通常の方法は、培養物中の細胞数を、培養細胞のインキュベーション時間の関数として決定するために使用することができる。典型的に、増殖(細胞数の増加)は、血球計数器又は細胞計数器を用いてある色素の取り込みを計測するか、又はヘマトクリット値を測定することにより、細胞数を計数することによって計測される。こうして、細胞培養インキュベーション期間の長さは変化し、そして所望される増殖度に依存する。 一般的に、液体培養における増殖は、インキュベーションの開始からの細胞総数の増加により及び/又はCD34+細胞の割合(%)を測定することにより評価される。 ステップa)は、約6日〜約15日以上、例えば約28日目まで続けられることもある。ステップb)は、約2日〜約14日続けられることもある。 当該方法が3個のステップa)、a')、b)を含む場合、ステップの期間は、およそ以下のとおりであろう: ステップa)は6〜10又は11日間、好ましくは約8日間続けられる。ステップa')は、2〜5日間、好ましくは約3日間続けられることもある。ステップb)は、2日〜14日間続けられる。 当該方法が2個のステップa)及びb)を含み、そしてステップa')が行われない場合、これらのステップの期間はおよそ以下のとおりである: ステップa)は7〜15日間、好ましくは約11日間続けられる。ステップb)は2〜14日間続けられる。 本発明の任意の実施態様では、培養ステップb)は、網状赤血球が得られるまで行われる。網状赤血球は、一般的に培養ステップb)の4日後に生じる。成熟赤血球細胞が得られるまで待つことが好ましい。その場合、ステップb)は、成熟赤血球細胞が得られるまで行われ、成熟赤血球細胞は一般的に培養ステップb)の7日後に生じる。 増殖後、細胞を回収し、そして洗浄し、そして患者へ輸液する前に、好ましくはろ過して白血球を取り除く。 具体的な実施態様では、本発明の方法は、以下のステップ: a)SCF、IL-3、及びエリスロポエチン(EPO)を含む培養培地中で造血幹細胞を8日間培養し、場合によりさらに3日間SCF及びEPOを含む培地中で培養し; a')ステップa)において得られた細胞を、EPOを含む培養培地中で、場合により同じ培養培地のまま、そして間質細胞系列と接触させて、3日間培養し; b)ステップa')において得られた細胞を、間質細胞系列と接触させたままで、全ての成長因子の不存在下で4日間培養し、それにより網状赤血球を取得し、又は7日間培養し、それにより成熟赤血球を得る を含む。 本発明の方法は、脱核赤血球の均一な集合を大量生産することを許容する。 有望な細胞生成物(potential cell yield)は、輸液についての臨床要件に適合する。標準RBC濃縮物は、約2×1012細胞を含む。臍帯血ユニットは、2〜5×106CD34+細胞を含み、そしてG-CSFなどの成長因子で動員した後に行う白血球搬出法は、体重1kgあたり4〜8×106CD34+細胞を通常提供する。一方増幅レベルは、それぞれ105及び3×104倍であり、又は(ステップaの期間が11日間である場合)106及び1×105倍であり、約65%〜約95%の範囲の脱核割合であった。全ての前出のパラメーターを考慮に入れると、幾つかのRBC濃縮物の同等物が、1のドナーからこの方法で産生されうるということが明らかであろう。 供給及び感染安全性の点における輸液についての関心(当該方法は、1のドナー及び/又は自己輸血患者に由来する数ユニットを簡単に産生することを可能にする)とは別に、本発明の方法は、輸液有効性に関しても利益がある。ドナーから得られたRBCの平均半減期が、様々な日齢の細胞が同時に存在するため28日である一方、本発明の方法は、120日に近い寿命を有する均一な日齢の細胞集合の輸液を可能にする。このことは、必要とされる輸液回数を低減するであろう。 本発明はさらに、以下の実施例及び図面により例示される。これらの実施例及び図面は本発明の範囲を制限するものではない。 実施例1:マウス細胞系列MS5を骨髄環境として用いた成熟RBCの産生 材料と方法 細胞培養 通常の骨髄(BM)、G-CSFで動員された通常の末梢血又は動員されていない末梢血(PB) [白血球搬出法(LK)]、及び通常の臨月出産からの臍帯血(CB)を、インフォームドコンセントを行って取得した。CD34+細胞は、Mini-MACSカラム(Miltenyi Biotech, Bergisch Glodbach, Germany)を用いた超磁性マイクロビーズ選別により単離した(純度94±3%超)。 A.1%脱イオン化ウシ血清アルブミン(BSA)、120μg/mlの鉄飽和ヒトトランスフェリン、900ng/mlの硫酸鉄、90ng/mlの硝酸鉄、及び10μg/mlのインスリン(これら全てをSigma, Franceから得た)を添加した改変無血清培地(Kobariら、2000; Giarratanaら、2000)中で細胞を培養した。 細胞培養培地の別の例は、Iscove改変ダルベッコ培地(IMDM, Biochrom,商品番号F0465)であった。以下の表(表1)は、培地100mlについての全ての内容物の例である。 増殖方法は3のステップから構成される。 第一のステップ(0〜8日目)では、104個/mlのCD34+細胞を、10-6Mヒドロコルチソン(OHC)(Sigma)、100ng/ml幹細胞因子(SCF、Amgen, Thousand Oaks, CA, USA)、5ng/mlのIL3(R&D Systems, Abingdon, UK)、及び3IU/mlのEpo(Eprex, Janssen-Cilag, Issy-les-Moulineaux, France)の存在下で培養した。4日目において、1体積の細胞培養物を、OHC、SCF、IL3、及びEpoを含む新たな培地4体積中に希釈した。 第二ステップ(8〜11日目)では、細胞を、(CB、LK、BM、及びPB細胞についてそれぞれ)5×104、105、2×105、又は3×105個/mlで再懸濁し、そしてEpoを加えた新たな培地中でMS-5間質細胞上で共培養した。 第三ステップ(11日目以降)、サイトカインを伴わない新たな培地中で間質細胞(MS5)上で当該細胞を培養した。培養物を5%CO2を含む空気内で37℃にて維持した。(プロトコルAについて)培養物をその開始時から15日以上維持した場合、好ましくは細胞を洗浄し、5〜6×106個/mlで再懸濁し、そして新たな間質細胞層上で共培養した。この培養ステップの間、5〜20%ヒトAB血清を培地に添加することは、培養された赤血球細胞(cRBC)の保存を許容する。細胞は、形態学的分析のためにMay-Grunwald-Giemsa試薬で染色し、一方、脱核細胞を、XE2100automat(Sysmex、Roche Diagnostics, Basel, Switzerland)を用いてMCV(fL)、MCHC(%)、及びMCH(pg/細胞)を含む標準的な血液に関する数値についてモニターした。 B.以下のステップを含む代わりのプロトコルを用いた: 第一ステップ:既に記載された第1ステップの培養(プロトコルA)を3日間(11日目まで)延長する。この場合、8日目の細胞を回収し、洗浄し、そして(CB、LK、BM、及びPB細胞についてそれぞれ)5×104、105、2×105、又は3×105個/mlでSCF及びEpoを含む新たな培地中に再懸濁した。 第二ステップ: 既に記載された培養の第二ステップ(プロトコルA)から3日間遅らせる。通常11〜14日目である。(通常プロトコルAの8日目の細胞ではなく、プロトコルBの11日目の)細胞を、(CB、LK、BM、及びPB細胞についてそれぞれ)105、2×105、3〜4×105、又は4〜6×105個/mlで再懸濁し、そしてEpoを加えた新たな培地中でMS-5間質細胞系列上で共培養した。細胞を通常14日目で洗浄して、因子及び代謝産物を取り除いた。 第三ステップ: 既に記載された培養の第三ステップ(プロトコルA)から4日間遅らせる。通常14〜18日目である。培養物が開始から18日間(プロトコルBについて)を超えて維持される場合、細胞を好ましくは洗浄し、5〜6×106個/mlで再懸濁し、そして新たな間質細胞層上で共培養した。この培養ステップの間、5〜20%ヒトAB血清を培地へと加えることは、培養された赤血球細胞(cRBC)の保存を許容する。 使用されうる成分の例として詳細をさらに以下に記載する(表1を参照のこと)。 ペニシリン及びストレプトマイシン:ストック溶液は、5000U/mlのペニシリンと5000μg/mlのストレプトマイシンの混合液である。 イノシトール:20mgの粉末イノシトール(室温保存)を5mlのIMDM中に溶解し、そして4℃で最大一週間貯蔵できる。 葉酸:20mgの粉末葉酸(室温保存)を20mlの予め暖められたIMDM中に溶解し、そして4℃で一週間貯蔵できる。使用前に溶液を予め温めることが好ましい。 モノチオグリセロール:10μlの11.56Mストック溶液(Sigma、11.56M、d=1.25、純度98%、MW=108.16)を712μlのIMDM中に溶解する。モノチオグリセロールの0.16M溶液を得る。 ホロ-トランスフェリン:トランスフェリン1グラムあたり1200〜1600μgの鉄で飽和されたホロ-トランスフェリン(Sigma)を、150mM・NaCl、0.8mM・Na2HPO4、0.2mM・NaH2PO4、pH7.5の溶液中に15mg/mlで溶解し;10mlの当該溶液に、340μlのFeCl310mMを含む1mM・HCl溶液を加えた。溶液を滅菌ろ過(0.2μm)し、そして4℃で貯蔵する。 インスリン:粉末インスリン(-20℃で貯蔵)を5mM・HCl中に1mg/mlで溶解する。当該溶液を-20℃で貯蔵する。 硝酸鉄:塩複合体の形成を避けるために、最初に硝酸鉄粉末を1.8mg/mlで蒸留水に溶解することができる。この第一溶液をIMDMで1/100に希釈し(第二溶液、0.018mg/ml)、そして4℃で貯蔵する。 硫酸鉄:塩複合体の形成を避けるために、最初に硫酸鉄を18mg/mlで蒸留水中に溶解する。この第一溶液をIMDMで1/100に希釈し(第二溶液、0.18mg/ml)、そして4℃で貯蔵する。 ヒドロコルチソン:培養の第一ステップの間、ヒドロコルチソン(OHC)を加えてもよい(終濃度10-6M)。20mgのヒドロコルチソン塩(Sigma ref H2270, MW=484.5、-20℃貯蔵)を4.12mlのIMDM中に溶解し、次に同じ培地で1/100に希釈し10-4M溶液を生成する。当該溶液を0.22μmのフィルターを通してろ過し、そして+4℃で1週間貯蔵することができる。1mlの10-4M・OHC溶液を100mlの最終培養培地に加える。 間質細胞 MS-5を接着層として使用する。 MS-5間質細胞系列を、リボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシド、並びにGlutamax(Invitrogen, ref32571-028)を含み、そして10%胎児ウシ血清(FCS)を添加されたαMEM培地中で増殖させる。 コンフルエントになった後に、37℃でトリプシン-EDTA 1×(Invitrogen, ref25300-54)により7〜10分処理したのちに接着細胞を回収した。106細胞/cm2を通常回収する。細胞の剥離を倒立顕微鏡のもとで制御する。25cm2フラスコあたり0.5ml・FCSを加えることにより反応を止める。細胞を洗浄し、そしてαMEM+glutamax+10%FCS培地中に4000細胞/cm2で再び蒔いた。細胞を37℃、5%CO2下でインキュベーションする。接着は通常1週間の後に達成される。 通常、赤血球細胞と共培養するために、MS-5をトリプシン処理後2週間以内に使用する。 半固体培養アッセイ BFU-E、CFU-E、及びCFU-GM前駆細胞を、Giarratana, M. C.ら、(1998)に前に記載されるように、5%CO2を含む空気中で37℃にてインキュベーションされたメチルセルロース培養物中でアッセイした。 フローサイトメトリー 細胞を標識未結合抗体、又はフルオレセイン・イソチオシアネート(FITC)結合抗体、又はフィコエリトリン(PE)結合抗体で標識した。CD71についての抗体(Dako、Carpinteria, CA)並びにCD45及びCD34に対する抗体(Immunotech, Marseilles, France)を表現型検査に使用し、そして細胞を生きている核酸についての色素LDS-751で染色した。分析を、FACSCaliburフローサイトメーター(Becton Dickinson)上で、Cell Questソフトウェアを用いて行った。 変形能計測 15日目の培養物から得られた網状赤血球を、白血球除去フィルター(Leucolab LcG2, Macopharma, Tourcoing, France)を通過させることにより有核細胞から分離し、そしてエクタサイトメトリー(ektacytometry)、レーザー回折法により脱核細胞を試験した。エクタサイトメーター(ektacytometer)(Technicon, Bayer Corp.)において、4%ポリビニルピロリドン溶液中に懸濁された細胞を、浸透圧増加勾配(60〜450mosM)に暴露し、そしてそのレーザー回折パターンの変化を記録する。光度測定法は、変形能指数(DI)と名付けられるシグナルをもたらす。DI曲線の分析は、一定にかけられた170dynes/cm2のせん断応力(shear stress)における浸透圧の関数として、細胞膜の動的な変形能を計測することを提供する。DIの最大値として定量されるDImaxは、通常生理学的に適切な浸透圧で達成され、赤血球の平均表面積に関連する。 グルコース-6-ホスフェート・デヒドロゲナーゼ、及びピルビン酸キナーゼ活性 白血球を除いた後に得られる赤血球にジギトニン(0.2%)を加え、そしてDrabkin試薬を用いて、分光光度法によりヘモグロビンを定量した。Synchron CX4 Beckman光度計並びにRandox Laboratories(Crumlin, UK)及びRoche Diagnosticsのそれぞれから販売される試薬を用いて、340nmでNADPH吸光の増加率を計測することによりG6PD及びPK活性を測定した。結果をヘモグロビン1グラムあたりのユニットで表した。 ヘモグロビン分析 様々なHb分画の割合を、Bio-Rad VariantII Hb分析器(Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)を用いてCE-HPLCを行うことにより計測した。グロビン鎖の組成を、RP-HPLCにより、以前に記載されたように測定した(Pic, Ducrocqら、1994 ; Papassotiriou, Ducrocqら、 1998)。 機能特性 メトヘモグロビン分画を、近紫外領域(350〜450nm)で分光光度的に測定した。サンプルを純粋なCO下で平衡化し、そして終濃度200μMのシアン化カリウムをヘモグロビンの緩衝溶液に加えた。標準に対する総ヘム濃度は、200μMの亜ジチオン酸カリウムの添加後に、420nmにおけるCOスペクトルの最大吸収から計算された。 ヘモグロビンの結合特性を、1mm光学キュベット中での閃光光分解により試験した。簡潔に記載すると、細胞内ヘモグロビン四量体へのCOの再結合の反応速度論は、Mardenら(1988)において以前記載されるように、532nmにて10nsパルスで閃光光分解した後に、436nmで分析された。 NOD/SCIDマウスモデルにおける検証 全ての実験及び方法は、動物実験についてのフランスの農業省の基準(1987)に沿って行った。NOD/SCID-LtSz-scid/scid(NOD/SCID)マウスを滅菌条件で飼育した。細胞注射前に137Cs源(2.115Gy/min)からの2.5グレイを亜致死的に6〜8週齢のマウスに照射した。細網内皮系を飽和させるために、ヒトO型RBCを腹腔内に注射した (マウス一匹あたりi.p.4〜5×109細胞)。24時間後、19日目の培養物からin vitroで生成させたRBC(マウス一匹あたり4〜5×109細胞)であって、洗浄され、そしてCFSE(Lyonsら、(1994))で標識されたRBCをマウスにi.p.で注射した。対照は、同じ条件下でヘパリン化された末梢血を与えられた。各実験群において3匹の動物を使用した。ヒトRBCの排除を、後眼窩静脈穿刺により様々な時間で各マウスから採取されたヘパリン化血液の5μlサンプルにおいてフローサイトメトリーによりCFSE標識細胞を追跡することにより測定した。各群において、マウス血液中のCFSE標識細胞の割合から回帰線を作成した。 結果 赤血球細胞の大量増殖 細胞を調整無血清培地中で、成長因子の組合せの存在下で、そしてマウス間質細胞系列MS5上で共培養することで増幅した。当該細胞系列MS5は、in vivoにおいて存在する微小環境を模倣する微小環境をex vivoで作り出す(Suzuki, 1992)。骨髄(BM)又は末梢血(PB)由来のCD34+細胞について16500倍(9200〜25500倍)、G-CSFで動員した後に白血球搬出法により得られるCD34+細胞について31200倍(23700〜34000倍)、そして臍帯血に由来するCD34+細胞について140000倍(93000〜277000倍)の平均細胞増幅におけるプラトーを15日目に得ることができる(図1A)。 赤血球細胞系列への傾向は、8日目に形態学的に明らかであった(95〜98%の赤芽細胞)。続く最終分化は早くおこり、脱核細胞の割合は11日目では1〜5%であり、そして15日目には65〜80%になる(図1B)。この段階で、98±1%の細胞が、平均細胞体積(MCV)130±5μm3、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)18±1%、及び平均赤血球ヘモグロビン(MCH)23±1pgを有する網状赤血球(図2B)であった。 網状赤血球の成熟RBCへの分化は、核物質の消失及びトランスフェリン受容体CD71の発現の進行性消失及びレーザースチリル色素での染色により示されるように、15日目〜18日目にかけて継続した。この段階では、90〜100%の細胞が脱核した(図2A)。これらの赤血球は、天然のRBCの特徴に近い特徴、つまり、113±3fLのMCV、33±2pgのMCH、及び29±2%のMCHCを示した。15日目に対する18日目の細胞収率は77±5%であり、18±4%の平均網状赤血球含量であった。共焦点顕微鏡により観察される成熟の異なる形態学的段階は、図3に示される。当該純粋な赤血球系細胞の大量分化は、赤血球前駆細胞(BFU-E及びCFU-E)の増殖を標的誘導することに原因があり、8日目及び11日目において急速に消失する顆粒球-マクロファージ前駆細胞(CFU−GM)の減少に原因がある。 これらの培養条件は、その結果(i)液体培地中における最初の8日間の間、SCF及びIL3の存在下で始原HSCの強力な増殖を誘導し、そして排他的な赤血球分化がEpoにより標的誘導され、(ii)第二ステップの3日間の間、微小化環境と単一の成長因子Epoの組合せ効果を通して、高レベルの増殖を維持して最終成熟を開始し、そして(iii)微小環境のみの存在下で細胞分化及び最終脱核を完了することを許容する。 機能性の網状赤血球及び赤血球 ex vivoで生成された網状赤血球及びRBCは、ヘモグロビン1グラムあたり42±1.4ユニットのグルコース-6-ホスフェート・デヒドロゲナーゼ(G6PD)含量及び83±1.8ユニットのピルビン酸キナーゼ(PK)含量を有し、均一な性質及び生成された若い細胞集合に一致するものであった(Jansenら、1985)。これにより、グルタチオンを低減し、ATPレベルを維持し、そうしてヘモグロビンの親和性を低減する2,3-ジホスホグリセレート(2,3-DPG)の増加を避けることができるといことが示唆される。これらの網状赤血球及びRBCの変形能は、エクタサイトメトリーにより評価されると、天然の赤血球の変形能に匹敵するものであった(図4)(Cynoberら、1996)。 in vitroにおいて生成されるRBCのヘモグロビンの機能は、閃光光分解により研究された。異なるサブユニット間の協調が観察され、四量体ヘモグロビンのアロステリック挙動特徴を確認する。当該分子は、天然のヘモグロビンについて予期されるように酸素を固定及び放出できた。メトヘモグロビン(Met-Hb)は、分析サンプルにおいて検出されなかった。これは、cRBCが酵素学的にHb酸化を逆行できるということを示唆した。 培養ヒトRBCのin vivoにおける結末 in vivoでの発生を追跡するために、白血球搬送法から生成されるCFSE標識網状赤血球を、NOD-SCIDマウスに腹腔内注射した。注射後、cRBCは天然RBCと同程度まで血液循環系内に存続した:CFSE+細胞は、輸液された動物の両群において3日間検出された。CFSE+/LDS-細胞の外見により示されるように、輸液された網状赤血球は、in vivoにおいてRBCに完全に成熟した(図6):それぞれ1日目、2日目、及び3日目において36%、73%、及び96%が成熟RBCであり、これはin vitroで得られた結果に沿うものであった。RhD抗原表面発現は、ヒト起源のCFSE+細胞を確認した。 赤血球の最終成熟におけるex vivo微小環境の影響 微小環境がなく、そして成長因子のみが存在する状態で、細胞増殖及び赤血球分化能は変わらなかった(15日目において5.6×105倍の増幅、99%の赤血球)。しかしながら、実質的に最終的な成熟、つまり脱核は達成されなかった(2±1%)。こうして、接着細胞と非接着細胞とのあいだに0.45μmのトランスウォールを配置することは、脱核を全て防止し、そして次なる細胞溶解を誘導した。 さらに、赤血球前駆細胞(CFU-E、BFU-E)の生成動態により、間質細胞が存在しないことが最終分化を助けないということが確認された。これらの前駆細胞の11日目における数が、MS5細胞上での共培養した際よりも20〜700倍多かったためである。 ヘモグロビンの合成研究: 合成されたヘモグロビンの性質がCD34+細胞の起源及び培養条件の両方に依存するということを本発明者は観察した。PB又は成人BMに由来するcRBCは、ヘモグロビンA(HbA)(それぞれ94±1.7%及び95%±0.6%)と類似のモジュレーションであるヘモグロビンF(HbF)(γA:γGの比はそれぞれ53:47及び52:48である)を含む。CBに由来するCD34+細胞から得たcRBCは、実質的に胎児のヘモグロビン(64±13%)と部分的なモジュレーションであるHbF (γA:γGの平均比は59:41である) とを含み、CBサンプル中の80±7%のHbFから開始した。これらの観察は、F細胞から非F細胞へのex vivo変換が生じた可能性を反映する。以前の研究(Neildez-Nguyenら、2002)において、微小環境が存在しない条件で10日間培養した後に得られた赤芽細胞始原細胞/前駆細胞が、NOD/SCIDマウスに注射した後にin vivoにおいて機能型HbA(96%)と、完全なモジュレーションであるHbF (γA:γGの比は35:65である) とを含む成熟RBCを生じさせることが分かったので、cRBCによるHbFのex vivo合成は、培養条件と県警を有する。重篤な異常血色素症(鎌状赤血球貧血症、β-サラセミア)を患う患者においてHbFの発現を刺激することは、本明細書において取り扱われうる興味あるex vivo治療アプローチである。 実施例2:間葉細胞を骨髄環境として用いた成熟RBCの生産 MS5間質細胞を間葉間質細胞(MSC、Prockop D. J, 1997)に置き換えて、実施例1のプロトコルを繰り返した。 間質細胞の選別及び増殖: 間葉間質細胞(MSC)を通常の成人骨髄全体から樹立した。 第一ステップ、間葉間質細胞の選別: リボヌクレオシド及びデオキシリボヌクレオシドを含まず、そしてGlutamax(Invitrogen, ref32561-029 Paisley, Scotland)を含み、そして10%ウシ胎児血清(FCS)±1ng/mlβFGFを添加したαMEM培地中に細胞を50000細胞/cm2で蒔いた。3〜5日後、非接着細胞を取り除く。接着細胞をコンフルエントになるまで週二回培地交換する(約10〜20日)。第一ステップの終わりにおいて、間質細胞は、その接着性質のため骨髄細胞の全体から高度に選別されるということが考慮される。 第二ステップ、間葉間質細胞の増殖: 接着細胞は、室温にてトリプシン-EDTA1×で5〜6分処理した後に回収する。細胞の剥離を、倒立顕微鏡下で制御する。25cm2フラスコあたり0.5mlFCSを加えることにより反応を止める。細胞を洗浄し、そして10%FCS±βFGFを加えられた新たな培地中で1000〜3000細胞/cm2で蒔く。細胞をコンフルエントになるまで週一回又は二回培地交換する。コンフルエントになるまで細胞を37℃5%CO2下でインキュベーションする。接着MSCを増殖させ、そして第二ステップの後から少なくとも2回の連続継代を通して精製した。 細胞培養の結果: 以下のプロトコル:ステップa)8日間、ステップ a')3日間、及びステップb)4日間に従って、骨髄(BM)又は末梢血(PB)由来のCD34+細胞について13100倍(8000〜23000倍)の平均細胞増殖、及び臍帯血(CB)に由来するCD34+について57300倍(32000〜73000倍)の平均細胞増殖のプラトーを15日目に得ることが可能である。 赤血球細胞系列への傾向及びRBCへの最終成熟は、MS-5層上で観察されたものに正確に類似した。 参考文献 - Baumら、89 PNAS USA 2804-2808 (1992) - Bessis, M., [Erythroblastic island, functional unity of bone marrow.]- Rev Hematol, 1958. 13(1): p. 8-ll - Beutler, E.ら、International Committee for Standardization in Haematology: recommended methods for red-cell enzyme analysis. 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Exp Hematol, 2000. 28(8): p. 885-94赤血球細胞の大量増殖。臍帯血(CB)、骨髄(BM)、末梢血(PB)、又は白血球搬出法(LK)に由来するヒトCD34+細胞を、三層プロトコル(実施例1の材料と方法を参照のこと)にしたがって、マウス起源の間質細胞(MS5)の層上で液体培地中で培養し、そして生存している非接着性の細胞の総数を時間を変えて測定した。7ユニットのCB、5ユニットのBM、1ユニットのPB、及び3ユニットのG-CSFで動員された白血球搬出法から得た培養物についての平均値を示す。May-Grunwald-Giemsa染色後の0、8、11、15、及び18日目の培養物における細胞の写真。半固体培養物中の前駆細胞の数。CB培養物由来の細胞を用いた4の独立した実験における赤血球前駆細胞(CFU-E、BFU-E)及び顆粒球-マクロファージ前駆細胞(CFU-GM)についての(蒔いた細胞104個あたりの)平均数である。様々な時間点において、前駆細胞の評価のために、非接着細胞の一定分量をSCF、GM-CSF、G-CSF、IL-3、及びEpoの存在下でメチルセルロース中で増殖させた。網状赤血球のRBCへの成熟。BM培養物から得たサンプルを用いた1の代表的な実験の15日目〜18日目における、レーザースチリル色素(LDS)で染色されたトランスフェリン受容体(CD71)の発現についてのFACS分析。15日目と18日目においてCresyl Brilliant Blueで染色された網状赤血球の写真(倍率×500)。15日目では、65%の細胞が脱核しておりその98%が網状赤血球であった。18日目では、100%の細胞が脱核しており、そして82%がRBCであった。共焦点顕微鏡画像。in vitroで生成された脱核細胞を、CFSE(カルボキシフルオレセイン・ジアセテート・スクシンイミジル・エステル、細胞内巨大分子と共有結合を形成する)で標識し、そして共焦点レーザー走査顕微鏡(倍率×400)により分析した。成熟の様々なステージを示す。上段:特徴的なしわの寄った外見を有する未成熟な網状赤血球。中段:成熟網状赤血球、カップ型細胞。下段:成熟赤血球、両凹面円盤に近い。図は:外形図(A)、正面図(B)、及び側面図(C)である。変形能プロファイル。脱核赤血球の伸張を計測するために浸透圧勾配におけるエクタサイトメトリー(Ektacytometry)を使用した。曲線は等張培地における最大変形指数(IDmax)を規定する。IDmaxは、分析された細胞型の全てについて、対照と同じ範囲であり(0.41〜0.53)、変形について等しい能力を示す。SC前駆細胞由来の網状赤血球(A)及びSC前駆細胞由来のRBC(B)の代表的な曲線を生来のRBC(C)についての曲線に比較する。ヘモグロビンのCO再結合反応速度論。18日目の培養物からex vivoで得られたRBCのヘモグロビン含有物の閃光光分解後のCO再結合(灰色曲線)を、新鮮なRBC懸濁液由来のヘモグロビンの閃光光分解後のCO再結合(黒色曲線)に比較した。2個のサンプルは、類似の結合性及びアロステリック特性を示す。光解離収率が低下すると、T状態分子の存在のため遅いCO再結合段階が減少する。フローサイトメトリーによるNOD/SCIDマウスモデル中のCFSE標識cRBCの追跡。一の代表的な実験を示す。(A):NOD/SCIDマウスの末梢血、由来の細胞におけるCFSE/LDSマーカーの発現のキネティクス。x軸:CFSE検出量;y軸:LDSの検出量を示す。(B)3日目において、細胞をPE-抗RhD抗体(色つきのヒストグラム)又はその対照アイソタイプ(無色のヒストグラム)で共標識された。結果を、CFSE+細胞内のRh割合について示す。 脱核赤血球を生産するin vitro方法であって、以下のステップ: a) SCF、IL3及びEPOである造血成長因子を少なくとも含む培養培地中で造血幹細胞を培養し、 a') ステップa)で得られた細胞を、少なくともEPOを含む培養培地中で、支持細胞と接触させて培養し、 b) ステップa’)で得られた細胞を、支持細胞と接触させて、全ての造血成長因子の非存在下で、網状赤血球、成熟赤血球、及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる脱核赤血球が得られるまで培養する を含み、ここで上記支持細胞が、間質細胞又は間葉幹細胞である、前記方法。 前記支持細胞が、骨髄微小環境である、請求項1に記載の方法。 前記支持細胞が、遺伝子改変された細胞である、請求項1に記載の方法。 ステップa)において培養された造血幹細胞が、遺伝子改変細胞である、請求項1に記載の方法。 前記細胞が、関心の外来ヌクレオチド配列を発現できる、請求項4に記載の方法。 前記関心配列が、ヘモグロビン抗原をコードする、請求項5に記載の方法。 ステップa)が6〜15日間続けられる、請求項1に記載の方法。 ステップa)が6〜10日間続けられる、請求項1に記載の方法。 ステップa')が2〜5日間続けられる、請求項1に記載の方法。 ステップb)が2〜14日間続けられる、請求項1に記載の方法。 ステップb)が、網状赤血球が得られるまで行われる、請求項1に記載の方法。 ステップb)が、成熟赤血球が得られるまで行われる、請求項1に記載の方法。 前記方法が以下のステップ: a) SCF、IL-3、及びエリスロポエチンを含む培養培地中で造血幹細胞を8日間培養し、 a') ステップa)において得られた細胞を、エリスロポエチンを含む培養培地中で、かつ間質細胞系列と接触させて3日間培養し、 b) ステップa')において得られた細胞を、さらに間質細胞と接触させて、全ての成長因子の非存在下で4日間培養し、それにより網状赤血球を得るか、又は7日間培養し、それにより成熟赤血球細胞を得る、 を含む、請求項1に記載の方法。


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