タイトル: | 特許公報(B2)_糸状菌胞子の製造方法 |
出願番号: | 2007513009 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12N 1/14,A01N 63/00,A01P 3/00,A01G 7/00 |
永塚 隆由 三宅 泰司 竪石 秀明 佐久間 米子 JP 4340707 特許公報(B2) 20090710 2007513009 20060411 糸状菌胞子の製造方法 株式会社クレハ 000001100 梅田 慎介 100149076 渡邊 薫 100112874 永塚 隆由 三宅 泰司 竪石 秀明 佐久間 米子 JP 2005113564 20050411 20091007 C12N 1/14 20060101AFI20090910BHJP A01N 63/00 20060101ALN20090910BHJP A01P 3/00 20060101ALN20090910BHJP A01G 7/00 20060101ALN20090910BHJP JPC12N1/14 BA01N63/00 FA01P3/00A01G7/00 605Z C12N 1/14 A01G 7/00 A01N 63/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) 国際公開第03/065812(WO,A1) 特開平09−322759(JP,A) 特開2004−231626(JP,A) 農耕と園芸,2001年,Vol.56, No.11,pp.80-83 J. Gen. Microbiol.,1980年,Vol.117, No.2,pp.405-410 J. Bacteriol. ,1945年,Vol.50, No.3,pp.365-368 Phytopathology,1997年,Vol.87, No.5,pp.50-505 Phytopathology,1984年,Vol.74, No.10,pp.1171-1175 出光技報,2003年10月15日,Vol.46, No.3,pp.86-89 Can. J. Microbiol.,1983年,Vol.29, No.1,pp.325-330 4 FERM BP-08516 JP2006307635 20060411 WO2006109795 20061019 12 20070912 山形 亜希子 本発明は、植物病害の防除に係わる技術に関する。より詳しくは、ペニシリウム属菌の微生物農薬又は資材としての実用化に足りる充分な量の胞子形成を可能とする技術に関する。 化学農薬は、植物の病害虫防除にとって不可欠な手段であり、安定的な食物生産に大きく貢献している。しかしながら、近年、化学農薬の多投与による抵抗性病害虫の発生や環境負荷の問題が取り上げられるようになっている。 これを背景として、近年、前記化学農薬よりも環境への負荷が低いと想定される微生物を利用した、「生物農薬(Biological agrochemicals)」とも称される生物的防除の研究が進展し、その一部は既に実用化に到っている。 前記生物農薬としての利用が期待される微生物として、例えば、ペニシリウム属菌などの糸状菌が知られている。このうち、ペニシリウム属菌の完全世代であるタラロマイセス属(Talaromyces属)は、既にイチゴ炭そ病やうどんこ病用の農業用殺菌剤として利用されている(タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)水和剤、農林水産省第20659号)。特許文献1には、イチゴ炭そ菌に対して拮抗作用を有するタラロマイセス・フラバスが開示されている。 また、特許文献2には、マンゴー炭そ病に対して拮抗作用を有する微生物としてペニシリウム エクスパンサム(Penicillium expansum)が開示され、特許文献3には、灰色かび病菌に防除効果を示すペニシリウム カマンベルティ(Penicillium camemberti)などが開示されている。 これらペニシリウム属菌を微生物農薬又は資材として利用するときは、通常の液体培養によって得られる培養菌糸体を用いることができる。しかし、菌糸体は、耐久性の胞子に比べ生存性に欠けるので実用性に乏しい。このため、耐久性の胞子を大量かつ安価に生産できる技術が望まれている。 従来から、糸状菌の胞子形成方法として、固体培養や液体培養が行われている。固体培養を行う場合には、米、麦、トウモロコシなどの穀物類や、フスマなどの穀物由来の固体成分などが使用されているが、固体培養を滅菌するには長い時間を要すると共に無菌管理も難しく、また、培養中に温度、水分、pH等の環境を制御することも難しい。また、これら固体成分と胞子との分離が困難であるとともに、培養時間も長く、培養コストも割高となる。 一方、液体培養では、多くの汎用性培養装置の利用が可能なため、滅菌も容易であり、また培養中温度、酸素供給量、pH等の環境制御が容易であるという利点があるが、胞子形成が難しいという問題があった。 この問題を解決するために、例えば、炭素源としてガラクトース及び/又はフラクトースを使用する方法(特許文献4参照)、培地中成分としてマグネシウム塩及び/又はカリウム塩を使用する方法(特許文献5参照)、フラクトースを0.1〜5%、塩化カルシウムを0.01〜0.5%、グルタミン酸を0.01〜0.5%添加する糸状菌の液体培養方法(特許文献6参照)がある。 また、糸状菌の胞子形成に有効な培地として、モラセスを5〜20 g/l、コーンスティープリカー(CSL)を10〜25 g/l、塩化ナトリウムを5〜15 g/l、硫酸カルシウムを0.1〜0.5 g/l、リン酸二水素カリウムを0.001〜0.01 g/l、硫酸マグネシウム7水和物を0.001〜0.01 g/l、硫酸銅を0.001〜0.005 g/l、硫酸鉄を0.0009〜0.005 g/lに消泡剤や寒天などの固化剤を含む培地(特許文献7参照)などが報告されている。さらには、カルシウム塩の添加がペニシリウム属菌の胞子形成に有効なことが知られている(非特許文献1参照)。特開平10−229872号公報。特開2001−39810号公報。特開2004−231626号公報。特開平9−322759号公報。特開平11−276158公報。特開2000−201669号公報。United State Patent 6593127号公報。Trans.Br.Mycol.Soc., 80(2), pp319-325, 1983。 糸状菌を微生物農薬又は資材として実用化するときに、従来の培養方法では満足な量の胞子形成量を得ることは依然として難しいという技術的課題がある。さらに、BSE問題などから、使用する培地成分の炭素源や窒素源については、動物由来の培地成分から安全な植物由来の培地成分への置き換えが望まれている。 そこで、本発明は、微生物農薬又は資材としての実用化に足りる充分な量の糸状菌胞子の形成が可能であって、かつ安全な技術を提供することを目的とする。 本発明者は、微生物農薬又は資材として用いる糸状菌の胞子を液体培養生産する技術について、鋭意研究を進めた結果、培地の炭素源及び窒素源として好適な植物由来成分を用い、かつこれに好適な無機成分を添加することで、植物病害防除のために利用される微生物農薬又は資材としての実用化に足りる充分量の胞子を生産できることを突き止めた。 まず、本発明は、糸状菌胞子の製造方法を提供する。この製造方法では、多くの汎用性培養装置の利用が可能なため、滅菌も容易であり、また培養中温度、酸素供給量、pH等の環境制御が容易であるなどの利点があることから、液体培養を選択する。 そして、その液体培地には、炭素源及び窒素源として、コーンスティープリカー又は大豆由来のペプトンを含み、かつ炭素源及び窒素源に由来する無機成分の量が、目的糸状菌の液体培養時の胞子形成個数から判断して、必要量に満たない場合には、まず塩化カルシウムを、さらに必要であれば、硫酸マグネシウムを、その上さらに必要であれば、リン酸水素二カリウムを含むように工夫し、この液体培地を用いて糸状菌を培養し、胞子を形成させる。 炭素源及び窒素源としての前記コーンスティープリカー又は前記大豆由来ペプトンが液体培地中に0.1〜10%含まれるようにし、さらには、無機成分としての前記塩化カルシウムが0.2〜5.0%、好ましくは0.4〜3.5%含まれるようにする。 このとき無機成分として、過剰にならない程度に、硫酸マグネシウム、リン酸水素二カリウムを加えてもよい。培地中のマグネシウム塩、カリウム塩の必要量が不足することのないよう補うためである。この場合、硫酸マグネシウムは0.001〜10%、好ましくは0.005〜5.0%含まれるように加えておくことが望ましい。また、リン酸水素二カリウムは、0.001〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%含まれるように加えておくことが望ましい。 前記糸状菌は、ペニシリウム(Penicillium)属の糸状菌であり、一好適例を挙げれば、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)やTalaromyces flavusを採用できる。これら2つの菌において、炭素源及び窒素源に由来する無機成分の量が必要量を満たしていると判断するには、液体培養時の胞子形成個数が約108個以上であることが、胞子製造上有効である。従って、液体培養時の胞子形成個数が約108個を下回る場合は、液体培地に、無機成分としてまず塩化カルシウム、必要であれば硫酸マグネシウム、さらに必要であればリン酸水素二カリウムを加えることが望ましい。 次に、本発明は、炭素源及び窒素源として、コーンスティープリカー又は大豆由来のペプトンを含み、かつ無機成分として、少なくとも塩化カルシウムを含む液体培地を用いて糸状菌を培養することにより形成された胞子を回収し、該胞子を植物体に接触させる植物病害防除方法を提供する。なお、「接触」とは、植物体への散布、浸漬、混合、塗布などの方法を広く含み、また、前記胞子を土壌に混和、灌注した後、植物体種子を播種して「接触」させることも可能であり、狭く解釈されない。このとき、前記液体培地に無機成分として、過剰にならない程度に、リン酸水素二カリウム、硫酸マグネシウムを加えてもよい。培地中のマグネシウム塩、カリウム塩の必要量が不足することのないよう補うためである。この場合、硫酸マグネシウムは0.001〜10%、好ましくは0.005〜5.0%含まれるように加えておくことが望ましい。また、リン酸水素二カリウムは、0.001〜0.3%、好ましくは0.05〜0.2%含まれるように加えておくことが望ましい。 なお、上記本発明において、「コーンスティープリカー(Corn Steep Liquor:略称CSL)」とは、製糖(コーンスターチ)製造過程で生じる有機性副産物である。「大豆由来のペプトン」とは、大豆タンパク質をタンパク質分解酵素や酸で部分的に加水分解して得られるもので、オリゴペプチド、アミノ酸を主成分とする。これはいずれも、糸状菌の培養で炭素源及び窒素源を供給する有機成分として機能する。 本発明の方法に従ってペニシリウム属糸状菌を培養することで、一般に液体培養では形成困難な糸状菌胞子を大量かつ安価に工業的に生産する事ができる。本方法で得られた胞子は、微生物農薬および生物資材として有用である。また、動物性の有機成分を一切用いないで培養するため、BSE問題もなく、安全である。 以下、本発明に係る実施形態について説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態や実施例によって狭く限定されるものではない。 まず、本発明では、糸状菌胞子の液体培養に用いる炭素源及び窒素源としてコーンスティープリカー、あるいは大豆由来のペプトンを用いる。場合によっては、これらの両方を用いてもよい。大豆粉やきな粉なども用いることができるが、培養後胞子との分離が困難になってしまう。また、動物性ペプトンでは充分な胞子形成量が得られない。 「コーンスティープリカー」は、特に限定されないが、例えば、昭和産業社製、北海道糖業社製、日本食品化工社製、オリエンタル酵母社製(ソルリスAST、ソルリス095MPEなど)などを適宜用いることができる。「大豆由来ペプトン」についても特に限定されないが、例えば、日本製薬社製ポリペプトン−S、などを使用できる。 コーンスティープリカーや大豆由来ペプトンの好適な添加量は、0.1%〜10%、好ましくは0.5〜10%、より好ましくは1〜5%である。過剰量の添加は、不溶物の沈殿が増加し、胞子との分離が困難となる。本発明では、コーンスティープリカーや大豆由来のペプトンの添加だけで、充分量の胞子生産が可能であるが、通常一般に使用される炭素源をさらに添加することも可能である。例えば、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、グリセロール、デンプン、サトウキビやビート由来の廃糖蜜などをさらに添加してもよい。これらの中では、主に安価である理由から、廃糖蜜を採用することが望ましい。例えば、ビート糖蜜を用いた場合、0.5%〜10%を添加した培地を例示することができる。 本発明では、上記炭素源及び窒素源に加え、無機成分として、炭酸やリン酸などの塩類、カリウム、ナトリウム、鉄、マグネシウムなどの金属塩を加えることができる。とくに、ペニシリウム属菌の増殖に必要な要素である理由から、リン酸水素二カリウムおよび硫酸マグネシウムが好ましい。 さらに、胞子形成を促進する成分として、カルシウム塩を添加する。このカルシウム塩としては、主に溶解度の点で、塩化カルシウムが好適である。塩化カルシウム濃度としては、0.2〜5.0%、好ましくは0.4〜3.5%である。過剰な塩化カルシウムの添加は、不溶物の沈殿が増加し、胞子との分離が困難になる。その他、種々の界面活性剤を消泡剤として培地中へ添加することは自由である。 培養は、培養温度約20℃から40℃、好ましくは25℃から35℃、培地の初発pHは4.0から8.0、好ましくは5.0から7.0とし、液体振とう培養、ジャーファーメンターによる通気撹拌培養等によって好気的条件で行なわれる。 培養終了後は、まず培養物をサラシ、ガーゼあるいはガラスウールなどでろ過し、菌糸を除去する。次に、得られたろ液を遠心分離し、胞子を分離する。水を加えて遠心分離し、洗浄を行う。これらの工程を数回繰り返し、洗浄された胞子を回収する。なお、洗浄水には、イオン交換水、蒸留水、各種ろ過膜を用いて調製された純水、水道水などを用いることができる。 当該胞子は、ポテトデキストロース寒天培地(PDA)などの固体培地から得られた胞子と同等の保存性、防除効果を示し、生物農薬、生物資材として使用することができる。 なお、本発明において培養対象とできる糸状菌は、例えば、ペニシリウム属菌糸状菌である。このペニシリウム属菌糸状菌は、特に限定されないが、例えば、Eupenicillium sp.B-408(FERM BP-08517)、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)、Penicillium sp.B-453(FERM BP-08515)、Talaromyces flavus、Penicillium expansum、Penicillium camembertiなどを例示できる。Eupenicilliumsp.B-408(FERM BP-08517)、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)、Penicillium sp.B-453(FERM BP-08515)、Talaromyces flavusが好ましいが、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)やTalaromyces flavusがより好ましい。 Eupenicillium sp.B-408(FERM BP-08517)、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)、Penicillium sp.B-453(FERM BP-08515)は、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(郵便番号305-8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央代6)に寄託されている。実施例1では、菌胞子の培養において、液体培地の組成を変化させたときの培養胞子数の違いを調べた。なお、実験例1から3が、本発明に係る糸状菌胞子の製造方法である。 (実験例1)。 コーンスティープリカー(オリエンタル酵母社製)3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、塩化カルシウム2水和物1%(pH7.0)の組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。PDA培地で前培養したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)、又はTalaromyces flavusに滅菌水を加えて、胞子濃度が1 X 106個/mlとなるよう調製した。上記液体培地にTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150 rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。なお、Talaromyces flavusは、市販されている農薬製剤より分離して用いた。 (実験例2)。 コーンスティープリカー(昭和産業社製)3%、ビート糖蜜(北海道糖業社製)0.5%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、塩化カルシウム2水和物1%(pH7.0)の組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。実験例1に準じて調整したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150 rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。 (実験例3)。 大豆由来ペプトン(ポリペプトン-S、日本製薬社製)3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、塩化カルシウム2水和物1%(pH7.0)の組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。実験例1に準じて調整したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150 rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。 (比較実験例1)。 ビート糖蜜(北海道糖業社製)0.75%、コーンスティープリカー(昭和産業社製)2%、塩化ナトリウムを1%、硫酸カルシウムを0.025%、リン酸二水素カリウム0.0006%、硫酸マグネシウム7水和物を0.0005%、硫酸銅0.0001%、硫酸鉄0.0002%(pH7.0)の組成の培地50mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。実験例1に準じて調整したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150 rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。 (比較実験例2)。 ガラクトース2%、塩化カルシウム2水和物2.5%、硝酸ナトリウム0.6%、リン酸二水素カリウム0.15%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%(pH7.0)の組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。実験例1に準じて調整したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。 (比較実験例3)。 フラクトース1%、脱脂粉乳2%、塩化カルシウム2水和物0.2%、グルタミン酸0.1%(pH7.0)の組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。実験例1に準じて調整したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150 rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。 (比較実験例4)。 ポテトデキストロースブロス(Difco社製)2.4%(pH7.0)の組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。実験例1に準じて調整したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150 rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。 (比較実験例5)。 ポリペプトン(日本製薬社製)3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、塩化カルシウム2水和物1%(pH7.0)の組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。実験例1に準じて調整したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液、又はTalaromyces flavus胞子液を0.5 ml接種し、振とう培養機(150rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、胞子数を血球計算盤で測定した。 上記した実験例1〜3、並びに比較実験例1〜5で得られた培養液中の胞子濃度を、以下の「表1」に示す。 前掲した「表1」の結果から明らかなように、いずれの菌についても、実験例1〜3での胞子生産量は、比較実験例1〜5の胞子生産量に比べて顕著に多かった。なお、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)を使用したときの比較実験例4、5、及びTalaromyces flavusを使用したときの比較実験例1、4、5では、胞子形成が困難で、菌糸状であった(表1参照)。 実施例2では、本発明に係る糸状菌胞子の製造方法に用いる最適な塩化カルシウムの濃度を調べた。 実施例1の実験例1と同様の方法で、塩化カルシウム2水和物の濃度のみを、0.1%,0.5%,3.0%と変化させて、培養されたTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子数を調べた。結果を表2に示す。 実施例3では、本発明に係る糸状菌胞子の製造方法における培養時間ごとの胞子数の推移を調べた。 コーンスティープリカー(日本食品化工社製)3%、リン酸水素二カリウム0.1%、硫酸マグネシウム7水和物0.05%、塩化カルシウム2水和物1%(pH7.0)の組成の培地2 lを3 lジャーファーメンターに分注して滅菌(120℃、60分間)した。同培地を用いて5日間三角フラスコで前培養したTalaromycesp.B-422(FERM BP-08516)の培養液を0.1%接種し、攪拌速度300 rpm、温度25℃、通気量0.5 vvmで培養を行った。経時的にサンプリングし、胞子数を血球計算盤で測定した。培養時間ごとの胞子数の推移を、図面代用グラフである図1に示す。この図1に示された結果からもわかるように、培養3日で胞子数は、ほぼ1×108個/mlに達した。 実施例4では、上記実施例3で用いた培地を使用して、胞子の生存性の確認を行った。 実施例4で使用した組成の培地50 mlを300 ml三角フラスコに分注して滅菌(120℃、20分間)した。PDA培地で前培養したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液を0.5ml接種し、振とう培養機(150 rpm、25℃)で7日間培養した。培養終了後、培養液をサラシでろ過して菌糸を除去した。得られたろ液を遠心分離し、胞子を集めた。蒸留水を加えて遠心分離し、洗浄を行った。これを2回繰り返して、洗浄された胞子を回収し、水道水に顕微鏡下でカウントした胞子数が、約2×108個/mlとなるように調製した。 比較のための固体培地で形成された胞子は、PDA培地で、25℃、10日間培養したものを用いた。シャーレに蒸留水を加えて筆で表面をかきとった後、液体培養の場合と同様の操作を行って同じ濃度の胞子液を調整した。5℃、20℃で保持して、3ヶ月後の生菌数を測定した。得られた結果を次の「表3」に示す。 前掲した「表3」に示された結果からわかるように、液体培養で得られた胞子は、固体培地で得られた胞子と同等の生存性を示した。 実施例5では、Talaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)液体培養胞子液および固体培養胞子液の、イネばか苗病に対する防除効果を検証した。 実施例3と同様にして得られたTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)液体培養胞子液および固体培養胞子液を、5℃で1ヶ月間保存しておいたものを本試験に用いた。 イネばか苗病多発圃場で自然感染したイネ罹病種子(2001年産、品種:短銀坊主)を調製したTalaromyces sp.B-422(FERM BP-08516)胞子液に浴比1:1で24時間浸漬し、次いで15℃で4日間浸種(浴比1:1)、30℃で1日間催芽を行った後、市販の育苗用粒状培土(商品名:くみあい粒状培土、株式会社クレハ製)を詰めた育苗用箱(10×15cm)に箱当たり乾籾5g相当を播種した(1区3反復)。 その後、出芽器中で、30℃で3日間出芽させ、以降はガラス温室内で育苗した。播種14日後に各試験区の徒長苗率を調査し、防除価を求めた。この結果を次の「表4」に示した。なお、防除価は、次の数式1で算出した。 前掲する「表4」に示された結果からわかるように、液体培養で得られた胞子は、固体培地で得られた胞子と同等の効果(防除価)を示した。 本発明は、植物病害防除のための生物農薬や資材に使用できる糸状菌胞子を製造する技術、あるいは植物病害技術として利用できる。実施例3の結果を示す図であって、培養時間ごとの胞子数の推移を示す図面代用グラフである。 炭素源及び窒素源として、コーンスティープリカー及び/又は大豆由来のペプトンを1〜5%、塩化カルシウムを0.75〜3.5%、リン酸水素二カリウムを0.05〜0.2%及び、硫酸マグネシウムを0.005〜5.0%を含む液体培地を用いて、糸状菌タラロマイセス エスピー B−422(Talaromyces sp.B−422(FERM BP−08516))を培養して胞子を形成させる糸状菌胞子の製造方法。 前記液体培地は、さらにビート糖蜜を0.5〜10%含有することを特徴とする請求項1記載の糸状菌胞子の製造方法。 炭素源及び窒素源として、コーンスティープリカーを1〜5%、塩化カルシウムを0.75〜3.5%、リン酸水素二カリウムを0.05〜0.2%及び、硫酸マグネシウムを0.005〜5.0%を含む液体培地を用いて、糸状菌タラロマイセス フラバス(Talaromyces flavus)を培養して胞子を形成させる糸状菌胞子の製造方法。 前記液体培地は、さらにビート糖蜜を0.5〜10%含有することを特徴とする請求項3記載の糸状菌胞子の製造方法。