タイトル: | 特許公報(B2)_高感度血液学的アッセイ及び試薬 |
出願番号: | 2007512768 |
年次: | 2012 |
IPC分類: | G01N 33/86 |
小泉 隆 山崎 芳伸 JP 4921359 特許公報(B2) 20120210 2007512768 20060328 高感度血液学的アッセイ及び試薬 キッセイ薬品工業株式会社 000104560 小泉 隆 山崎 芳伸 JP 2005106590 20050401 20120425 G01N 33/86 20060101AFI20120405BHJP JPG01N33/86 G01N 33/48-33/98 特開2002−515245(JP,A) 国際公開第2003/078389(WO,A1) 15 JP2006306357 20060328 WO2006106695 20061012 16 20090310 加々美 一恵 本発明は、血液凝固系アッセイに使用するための試薬、キット及びそのアッセイ方法等に関するものである。更に詳しく述べれば、本発明は、活性化血液凝固第X因子(以下、「Xa因子」という)、リン脂質及びカルシウムイオンを含有する、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するための試薬、キット及びそれらを使用したアッセイ方法等に関するものである。 血液凝固系に対する血液凝固因子阻害薬の効果を定量したり、血液や血漿中の血液凝固因子阻害薬濃度を測定する方法(以下、「血液凝固系アッセイ」という)は種々知られている。この血液凝固系アッセイは、発色性合成基質を用いて凝固因子(例えば、Xa因子、トロンビン等)の阻害活性を測定する方法と、凝固時間測定法の2つに分類することができる。 発色性合成基質を用いて凝固因子であるXa因子又はトロンビンの阻害活性を測定する方法は、通常、Xa因子又はトロンビン(必要に応じて、アンチトロンビンも添加される)を含む溶液中に、Xa因子又はトロンビンにより分解される発色性合成基質及び血漿を添加し、生じた発色性合成基質分解物の吸光度等を測定することにより、Xa因子もしくはトロンビン活性、又は血液凝固因子阻害薬の濃度を算出する方法である(例えば、非特許文献1参照)。しかし、この方法は、専用装置を必要とし、作業が煩雑であるなどの理由から、臨床現場においてはあまり広く用いられていない。 また、凝固時間測定法は、血液又は血漿に、種々の活性化剤を添加することにより、凝固系を活性化させ、フィブリン形成までの時間を測定する方法であり、「凝固法」とも呼ばれる。例えば、PT(プロトロンビン時間)法(以下、「PT法」という)、APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)法(以下、「APTT法」という)、TT(トロンビン時間)法、ACT(活性化凝固時間)法、ECT(エカリン凝固時間)法、PiCT(プロトロンビナーゼ誘発凝固時間)法(以下、「PiCT法」という)、ACCUCLOT HEPTEST(商標)を用いた測定法(以下、「ACCUCLOT法」という)等が含まれる。これらの方法は、ヘパリン、低分子ヘパリンのような間接的凝固阻害薬や凝固因子合成阻害薬であるワーファリンによる抗凝固療法の血中薬物モニタリングに使用されている(非特許文献2参照)。 以下に、代表的な凝固時間測定法の例を説明する。 PiCT法は、Prothrombinase Complexにより凝固を惹起する方法である。具体的には、血漿中のアンチトロンビン依存性の血液凝固因子阻害薬と添加されたXa因子とがカルシウムイオン非存在下で結合した後に、塩化カルシウムが添加され、残存するXa因子とRVV−V(ラッセルクサリヘビ毒に由来する第V因子アクチベーター)により十分に活性化されたVa因子とがリン脂質上にカルシウムイオンとの複合体を形成し、その酵素活性に依存する凝固時間(プロトロンビナーゼ誘発凝固時間、PiCT)が測定される(例えば、特許文献1及び非特許文献3)。それゆえ、測定には二段階の試薬(Pefakit PiCT(商標)、ペンタファーマ社、活性化試薬及び開始試薬)添加が必要であり、また、活性化試薬添加後の処理時間によりその値が変動するという問題がある。 ACCUCLOT法は、クエン酸血漿を、Xa因子とインキュベーションした後、RECALMIX(商標)(Haemachem社)(リン脂質、フィブリノーゲン、血液凝固第V因子(以下、「第V因子」という)に富むウシ血漿画分及びカルシウムイオンを含有する)により処理し、凝固時間を測定する方法である(例えば、非特許文献4)。各試薬は、市販のキット(ACCUCLOT HEPTEST(商標)、Trinity Biotech社)を使用する。 PT法は、クエン酸血漿に、トロンボプラスチン及びカルシウムイオン(ネオプラスチン試薬、ロシュ・ダイアグノティクス社)を加えることにより、凝固系を亢進させ、トロンビンにより凝固するまでの時間(プロトロンビン時間、以下、「PT」という)を測定する方法である(例えば、非特許文献5)。 以上の各種凝固時間測定法の中には、活性化剤としてXa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを用いるものもあるが、それらは同時に、第V因子、活性化血液凝固第V因子(以下、「Va因子」という)又は血液凝固第V因子活性化酵素(以下、「第V因子活性化酵素」という)を含むものである。 ところで、近年、例えば、下記一般式(I)(式中のRは水素原子又は低級アルキル基であり、Zは水素原子又は水酸基である)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体(特許文献2参照)、ラザキサバン(Razaxaban、ブリストルマイヤーズスクイブ社)、DX−9065a(第一製薬)等の直接Xa因子阻害薬が開発された(例えば、非特許文献6参照)。これらの直接Xa因子阻害薬は、ヘパリン、低分子ヘパリン、Fondaparinux(ARIXTRA(商標)、グラクソスミスクライン社)等と異なり、アンチトロンビンを介さず直接に凝固を阻害し、トロンビンを介した血液凝固系を阻害しないことから、出血傾向等の副作用が少ない、血液凝固系疾患の治療薬として注目されている。しかしながら、直接Xa因子阻害薬は、臨床において抗血栓作用を発現する濃度域(治療域)ではPT、APTT等の凝固時間の延長をほとんど示さないため、血液凝固系に対する効果を評価することができない。 従って、直接Xa因子阻害薬の適切な処方のための、簡便かつ臨床使用可能な方法の早期開発が切望されている。国際公開WO01/44819パンフレット国際公開WO02/28827パンフレットTeien, A.N. and Lie, M.: Thromb. Res. 1977年; 第10巻: pp.399-410藤巻道男、福武勝幸編、克誠堂出版、「血液凝固ハンドブック」、1992年、改訂第2版、pp.163-182Calatzis A、他5名、Haemostasis、2000年、第30巻 (Suppl. 2号)、pp.172-174Harenberg J、他3名、Haemostasis、1989年、第19巻、pp.13-20Proctor RR、他1名、Am J Clin Path.、1961年、第41巻、pp.212-219Johannes Ruef、他1名、Expert Opin. Investig. Drugs.、2003年、第12巻、pp.781-797 本発明は、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用し得る試薬、キット及びそのアッセイ方法等を提供することを課題とする。 本発明者らは、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有する混合試薬を調製し、Xa因子を高活性化させた後に、血液サンプルと混合する方法により、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイにおいて、驚くべきことに、高感度で凝固時間の延長を示すことを見出し、本発明を成すに至った。 即ち、本発明は、〔1〕 Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有する、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するための試薬(但し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有するものを除く);〔2〕 溶解したとき水溶液1mLあたり、Xa因子を0.1〜10mU、リン脂質を1〜100μg含有する、前記〔1〕記載の試薬;〔3〕 Xa因子を0.1〜10mU/mL、リン脂質を1〜100μg/mL含有する、前記〔2〕記載の試薬;〔4〕 前記〔3〕記載の試薬を乾燥して製造される試薬;〔5〕 直接Xa因子阻害薬が、ラザキサバン、DX−9065a、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、JTV−803、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、前記一般式(I)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体又はその薬理学的に許容される塩である、前記〔1〕又は〔2〕記載の試薬;〔6〕 Xa因子を含有する試薬、リン脂質を含有する試薬及びカルシウムイオンを含有する試薬を組み合わせた、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するためのキット(但し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有するものを除く);〔7〕 Xa因子及びリン脂質を含有する試薬並びにカルシウムイオンを含有する試薬を組み合わせた、前記〔6〕記載のキット;〔8〕 Xa因子を0.1〜10mU/mL、リン脂質を1〜100μg/mLを含有する前記〔6〕又は〔7〕記載のキット;〔9〕 直接Xa因子阻害薬が、ラザキサバン、DX−9065a、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、JTV−803、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、前記一般式(I)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体又はその薬理学的に許容される塩である、前記〔6〕〜〔8〕のいずれかに記載のキット;〔10〕 (1)血液サンプルと、Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有する直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するための試薬(但し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有するものを除く)とを混合する工程、(2)血液凝固時間を測定する工程からなる、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイ方法;〔11〕 (1)Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有する直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するための混合試薬(但し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有するものを除く)を調製する工程、(2)(1)の試薬と血液サンプルとを混合する工程、及び(3)血液凝固時間を測定する工程を含む、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイ方法;〔12〕 Xa因子を0.1〜10mU/mL、リン脂質を1〜100μg/mL含有する試薬(但し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有するものを除く)を使用することを特徴とする、前記〔10〕又は〔11〕記載のアッセイ方法;〔13〕 血液サンプルがヒト血漿である、前記〔10〕〜〔12〕のいずれかに記載のアッセイ方法;〔14〕 血液サンプルが直接Xa因子阻害薬を投与したヒトから採取したものである、前記〔13〕記載のアッセイ方法;〔15〕 直接Xa因子阻害薬が、ラザキサバン、DX−9065a、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、JTV−803、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、前記一般式(I)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体又はその薬理学的に許容される塩である、前記〔10〕〜〔14〕のいずれかに記載のアッセイ方法;等に関するものである。 本発明において、直接Xa因子阻害薬とは、アンチトロンビンIII(ATIII)を介さず、Xa因子、トロンビン等の凝固因子を直接阻害する直接凝固因子阻害薬のうち、Xa因子に対して阻害作用を有するものをいい、例えば、ラザキサバン、DX−9065a、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、JTV−803、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、M−55165、M−55551、前記一般式(I)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体その他の特許文献2記載の化合物、3−〔N−(3−アミジノフェニル)−N−〔N−〔4−〔1−(1−イミノエチル)ピペリジン−4−イル〕フェニル〕カルバモイルメチル〕アミノメチル〕フェノキシ酢酸・硫酸塩(以下、「化合物1」という)等が挙げられる。また、経口投与剤として使用し易いもの、又は分子量1000以下の直接凝固因子阻害薬が好ましい。例えば、ラザキサバン、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、前記一般式(I)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体等が好ましい。また、前記一般式(I)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体としては、〔4−〔2−(5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル〕−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ〕酢酸(以下、「化合物2」という)、〔4−〔2−(5−アミジノ−2−ヒドロキシベンゼンスルホニルアミノ)エチル〕−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ〕酢酸 n−ブチル、〔4−〔2−ヒドロキシ−5−(N−ヒドロキシカルバミミドイル)ベンゼンスルホニルアミノ〕エチル〕−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ〕酢酸、〔4−〔2−〔2−ヒドロキシ−5−(N−ヒドロキシカルバミミドイル)ベンゼンスルホニルアミノ〕エチル〕−2’−メタンスルホニルビフェニル−3−イルオキシ〕酢酸 n−ブチル等が好ましい。 Xa因子としては、例えば、ヒト血漿由来Xa因子、ウシ血漿由来Xa因子等を挙げることができる。使用時の試薬中のXa因子の濃度は、実用的な凝固時間が得られる0.1〜10m国際単位/mL(以下、「mU/mL」という)の範囲が好ましく、0.5〜5mU/mLの範囲が更に好ましい。 リン脂質としては、例えば、セファリン、又はフォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルコリン及びフォスファチジルセリン等を含有する混合物等を挙げることができ、好ましくは、セファリンが挙げられる。使用時の試薬中のリン脂質の濃度は、実用的な凝固時間が得られる1〜100μg/mLの範囲が好ましく、4〜50μg/mLの範囲が更に好ましい。 カルシウムイオン源としては、塩化カルシウムが好ましい。使用時の試薬中のカルシウムイオンの濃度は、例えば、クエン酸採血による血液又は血漿の凝固を再開しうる量等で適宜決定すればよいが、通常、10〜100mmol/Lの範囲とすることができる。 本発明のキットは、Xa因子を含有する試薬、リン脂質を含有する試薬及びカルシウムイオンを含有する試薬の組合せ;Xa因子及びリン脂質を含有する試薬とカルシウムイオンを含有する試薬との組合せ;Xa因子及びカルシウムイオンを含有する試薬とリン脂質を含有する試薬との組合せ;Xa因子を含有する試薬とリン脂質及びカルシウムイオンを含有する試薬との組合せ;又はXa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有する試薬;のいずれでもよく、Xa因子を含有する試薬、リン脂質を含有する試薬及びカルシウムイオンを含有する試薬の組合せ;又はXa因子及びリン脂質を含有する試薬とカルシウムイオンを含有する試薬との組合せ;が好ましく、Xa因子及びリン脂質を含有する試薬とカルシウムイオンを含有する試薬との組合せが更に好ましい。 本発明の試薬又はキットに用いる試薬には、Xa因子、リン脂質又はカルシウムイオンの各成分のほか、緩衝化剤、pH調整剤(例えば、ヘペス、トリスHCl等)、浸透圧調節剤(塩化ナトリウム、マンニトール等)、アルブミン、保存剤、防腐剤(アジ化ナトリウム等)、溶媒等を適宜含んでいてもよい。 本発明の試薬の形態としては、水溶液、粉末、凍結乾燥した粉末等が挙げられる。 乾燥した試薬は、Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有する溶液を、公知の方法やそれに準拠した方法により真空乾燥又は凍結乾燥することにより、製造することもできる。 本発明の血液凝固系アッセイ方法(以下、「KXaT法」ともいう)において、血液サンプルとしては、血液凝固能の正常、異常を問わず、血液凝固因子阻害薬を投与もしくは未投与のヒトもしくは非ヒト動物から血液凝固系アッセイに使用可能な方法(例えば、クエン酸採血等)により採血された血液もしくはその血漿、及び市販の血液凝固試験用標準ヒト血漿、ヒトコントロール血漿もしくは正常動物血漿等が挙げられる。血液凝固因子阻害薬を投与又は未投与のヒト又は非ヒト動物から、クエン酸採血された血液又はその血漿が好ましく、血液凝固因子阻害薬、特に直接Xa因子阻害薬を投与したヒト又は非ヒト動物から、クエン酸採血された血液の血漿が更に好ましい。 また、ヒト又は非ヒト動物から採取した血液又は血漿は、活性化剤を添加する前に、通常、インキュベーションを行う。インキュベーションは、25〜40°Cで、0〜5分間で適宜行えばよいが、37°Cで60秒間行うのが一般的である。 血液凝固時間の測定は、測定原理が光散乱、透過光、吸光度、磁気センサー又は粘度変化感知方式の完全自動又は半自動の血液凝固測定装置を用いて行うか、用手法で行うこともできる。図1は、各種凝固時間測定法による、化合物2の凝固時間延長効果を示す。横軸は、化合物2の血漿中濃度(nmol/L)を表し、縦軸は、コントロールに対する凝固時間の比を表す。図中、丸はKXaT法、ダイアモンドはACCUCLOT法、四角はPT法、三角はAPTT法による凝固時間をそれぞれ示す。 本発明の内容を以下の参考例、実施例で更に詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。参考例1 PT法、APTT法及びACCUCLOT法を用いて、直接Xa因子阻害薬である化合物2による凝固時間を測定した。測定には血液凝固自動測定装置ST4(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いた。1)PT法による凝固時間の測定 血液凝固試験用標準ヒト血漿(デイドベーリング社)に各種濃度の直接Xa因子阻害薬を添加し、被験薬物添加血漿サンプルを調製した。測定用キュベットに各種濃度の被験薬物添加血漿サンプルを50μL入れ、37°Cで60秒間プレインキュベートした後に、ネオプラスチン試薬(ロシュ・ダイアグノスティックス社)100μLを加えて凝固を開始させ、凝固時間を測定した。2)APTT法による凝固時間の測定 測定用キュベットに上記PT法と同様にして調製した各種濃度の被験薬物添加血漿サンプルを50μL入れ、37°Cで40秒間プレインキュベートした後に、PTT試薬「RD」(ロシュ・ダイアグノスティックス社)50μLを加えて180秒間インキュベートした。これに、50μLの 25mmol/L塩化カルシウム水溶液を加えて凝固を開始させ、凝固時間を測定した。3)ACCUCLOT法による凝固時間の測定 測定用キュベットに上記PT法と同様にして調製した各種濃度の被験薬物添加血漿サンプルを50μL入れ、37°Cで60秒間プレインキュベートした後に、ACCUCLOT HEPTEST(商標)のXa因子溶液(ウシXa因子、ウシ血清アルブミン、塩化ナトリウム、PEG及びトリスマレエート含有)を加えた。120秒後に、同ACCUCLOT HEPTESTのRECALMIX(商標)(ウサギ脳セファリン、塩化カルシウム、フィブリノーゲン、第V因子等含有)を100μL添加して凝固を開始させ、凝固時間を測定した。 結果を、表1及び図1に示す。PT法、APTT法、ACCUCLOT法の各方法で、それぞれコントロールに対し、化合物2濃度の上昇に伴って凝固時間の延長が認められた。しかしながら、低濃度域での薬物濃度の変化に対し、凝固時間の延長時間が短く、十分な感度は得られなかった。参考例21)PiCT法による凝固時間の測定 PiCT法を用いて、直接Xa因子阻害薬である化合物1、化合物2、ラザキサバン塩酸塩及びDX−9065aによる凝固時間を測定した。測定には血液凝固自動測定装置ST4(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いた。測定用キュベットに、参考例1記載のPT法と同様にして調製した各種濃度の被験薬物添加血漿サンプルを50μL入れ、37°Cで60秒間プレインキュベートした後に、Pefakit PiCT(商標、Penta Pharma社)の活性化試薬(試薬1)(Xa因子、RVV−V、リン脂質、ヘペス、マンニトール含有)を加えて、37°Cで180秒間、更にインキュベーションした。次いで、これに開始試薬(試薬2)(25mM塩化カルシウム含有)100μLを加えて凝固を開始させ、凝固時間を測定した。 結果を、表2に示す。 直接Xa因子阻害薬である化合物1、化合物2、ラザキサバン塩酸塩、DX−9065aのいずれに対しても、被験薬物濃度と凝固時間に相関性が認められず、明らかに異常な凝固時間の挙動を示した。従って、PiCT法は、これらの直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイには、使用できないと考えられる。参考例31)PT法及びPiCT法による凝固時間の測定 参考例1記載のPT法及び参考例2記載のPiCT法と同様にして、血液凝固自動測定装置ST4(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いて、化合物2による各凝固時間を測定した。 その結果、表3に示すように、PT法では、十分な感度は得られなかった。すなわち、化合物2濃度の上昇に伴って、凝固時間の延長が認められたが、低濃度域での薬物濃度の変化に対し、延長幅が小さかった。また、PiCT法では、用いた濃度範囲において化合物2の濃度と凝固時間に相関が認められなかった。 実施例1 試薬の調製 KXaT法に使用する凝固促進試薬(以下、「KXaT凝固試薬」という)を、以下の方法で調製した。 1)PTT試薬[RD](ロシュ・ダイアグノスティックス社)のPTT試薬(セファリン含有)1バイアルを5mLのSTA塩化カルシウム(25mmol/L)に溶解した。 2)Coagulation Factor Xa, human plasma(商標)(カルビオケム社)10Uバイアルを1mLの蒸留水に溶解し、10U/mL溶液を調製した。 3)2)で調製したFactor Xa、human plasma 10U/mL溶液を100μL取り、1)で調製した液9900μLに加えた。 4)3)の液を、1)で調製した液で更に、100倍に希釈して、下記組成例1のKXaT凝固試薬を調製した。 組成例1 Factor Xa:1mU/mL 塩化カルシウム:25mmol/L リン脂質: フォスファチジルエタノールアミン(PE):24μg/mL フォスファチジルコリン(PC):10μg/mL フォスファチジルセリン(PS):12μg/mL pH:7.0 実施例2 Xa因子濃度 実施例1記載と同様の方法で、表4に記載の0〜10mU/mLの異なる濃度のXa因子を含むKXaT凝固試薬を調製した。この時、その他の組成は、組成例1と同じになるようにした。測定用キュベットに、0(コントロール)、20、200、2000nmol/Lの濃度の化合物2を添加した標準ヒト血漿(デイドベーリング社)をそれぞれ50μL入れ、37°Cで60秒間プレインキュベートした後に、各濃度のKXaT凝固試薬をそれぞれ100μL加えて凝固を開始させ、凝固時間(秒)を測定した。測定には血液凝固自動測定装置ST4(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いた。 結果を、表4に示す。Xa因子の添加濃度が、0.1〜10mU/mLの範囲で、化合物2の濃度依存的に凝固時間の延長が認められた。一般に、コントロールの凝固時間が長すぎると待ち時間が長くなり、逆に、短すぎると測定の誤差が生じやすくなる。いずれの濃度においても測定は可能であったが、特に、0.5mU/mL〜5mU/mLの範囲では、コントロールでの凝固時間が約30秒〜1分30秒であり、例えば、200nmol/Lの化合物2に対して、約30秒〜70秒の凝固時間の延長が認められ、低濃度域でも感度のよい血液凝固系アッセイが可能であった。 実施例3 リン脂質濃度 実施例1記載と同様の方法で、各種濃度のリン脂質を含むKXaT凝固試薬を調製した。この時、PE 24μg/mL、PC 10μg/mL及びPS 12μg/mLのリン脂質を基準量(1倍)として、その0.05倍〜2倍濃度のリン脂質を含有するKXaT凝固試薬を調製した。Xa因子、塩化カルシウムの濃度は、組成例1と同じにした。測定用キュベットに、0(コントロール)、20、200、2000nmol/Lの濃度の化合物2を添加した標準ヒト血漿(デイドベーリング社)をそれぞれ50μL入れ、37°Cで60秒間プレインキュベートした後に、各種濃度のリン脂質濃度に調製したKXaT凝固試薬を、それぞれ100μLを加えて凝固を開始させ、KXaT法による凝固時間(秒)を測定した。測定には血液凝固自動測定装置ST4(ロシュ・ダイアグノスティックス社製)を用いた。 結果を、表5に示す。基準量の0.05〜2倍の範囲のリン脂質の濃度において、化合物2の濃度に依存して凝固時間の延長が認められた。一般に、コントロールの凝固時間が長すぎると待ち時間が長くなり、逆に、短すぎると測定の誤差が生じやすくなる。基準量の0.1倍以上のリン脂質の濃度において測定は可能であったが、特に、基準量の0.1倍〜1倍の範囲では、コントロールでの凝固時間が約30秒〜60秒であり、例えば、200nmol/Lの化合物2に対して、約30秒〜60秒の凝固時間の延長が認められ、実用的で感度のよい血液凝固系アッセイが可能であった。 実施例4 同時再現性 組成1のKXaT凝固試薬、及び0(コントロール)、0.02、0.06、0.2、0.6、2μmol/Lの濃度の化合物2を添加した標準ヒト血漿(デイドベーリング社)を用いて、実施例2記載の方法と同様にして、同一サンプルにつき、KXaT法による凝固時間(秒)を各3回測定した。表6に示す通り、極めて優れた同時再現性を示した。 実施例5 日間再現性 組成1のKXaT凝固試薬、及び0(コントロール)、0.02、0.06、0.2、0.6、2μmol/Lの濃度の化合物2を添加した標準ヒト血漿(デイドベーリング社)を用いて、実施例2記載の方法と同様にして、1日1回ずつ調製したサンプルにつき、3日間、KXaT法による凝固時間(秒)を測定した。表7に示す通り、優れた日間再現性を示した。 実施例6 組成1のKXaT凝固試薬、及び0(コントロール)、0.02、0.06、0.2、0.6、2μmol/Lの濃度の化合物2、ラザキサバン塩酸塩又はDX−9065aを添加した正常ヒトクエン酸血漿(コスモバイオ社)を用いて、実施例4記載の方法と同様にして、KXaT法による凝固時間(秒)を測定した。表8に示す通り、いずれの被験薬においても、濃度に依存して凝固時間の延長が認められ、また、各化合物のXa因子阻害活性と凝固時間延長効果に相関性がみられた。 実施例7 組成1のKXaT凝固試薬、及び0(コントロール)、0.02、0.06、0.2、0.6、2μmol/Lの濃度の化合物2を添加した種々のロットの正常ヒトクエン酸血漿(コスモバイオ社)を用いて、実施例4記載の方法と同様にして、KXaT法による凝固時間(秒)を測定した。表9に示す通り、いずれのロットにおいても、濃度依存的に凝固時間の延長が認められ、反応性は同等であった。 参考例4 0(コントロール)、6、20、60、200、600ng/mLの濃度のFondaparinuxを用いて、参考例2及び実施例4記載の方法と同様にして、それぞれPiCT法及びKXaT法による凝固時間(秒)を測定した。表10に示す通り、アンチトロンビン依存性の間接Xa因子阻害薬であるFondaparinuxでは、PiCT法に比して、KXaT法における凝固時間の延長効果は弱かった。 実施例8 組成1のKXaT凝固試薬、及び0(コントロール)、0.02、0.06、0.2、0.6、2μmol/Lの濃度の化合物2を添加した標準ヒト血漿(デイドベーリング社)を用いて、実施例2記載の方法と同様にして、KXaT法による凝固時間(秒)を測定した。表11に示す通り、薬物濃度依存的に、凝固時間が延長した。 この結果を、参考例1に記載したPT法、PiCT法及びACCUCLOT法の結果と併せて、図1に示す。図1から、直接Xa因子阻害剤である化合物2に対して、低濃度域での測定感度が、KXaT法では、他の方法に比して、顕著に高いことがわかる。 以上の結果から、KXaT法は、PT法、APTT法、PiCT法、ACCUCLOT法等の既存の方法に比べ、化合物1、化合物2、ラザキサバン、DX−9065a等、種々の直接Xa因子阻害薬に対して極めて鋭敏な反応を示すことが確認された。また、同時再現性、日間再現性、ヒトクエン酸血漿のロット間再現性においても、KXaT法は、極めて優れた再現性を示した。従って、本発明の試薬及び方法は、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに極めて有用である。 本発明により、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用し得る試薬、キット及びそのアッセイ方法等を提供することができる。 Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有しない、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するための試薬。 溶解したとき水溶液1mLあたり、Xa因子を0.1〜10mU、リン脂質を1〜100μg含有する、請求項1記載の試薬。 Xa因子を0.1〜10mU/mL、リン脂質を1〜100μg/mL含有する、請求項2記載の試薬。 請求項3記載の試薬を乾燥して製造される試薬。 直接Xa因子阻害薬が、ラザキサバン、DX−9065a、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、JTV−803、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、一般式(I)(式中のRは水素原子又は低級アルキル基であり、Zは水素原子又は水酸基である)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体又はその薬理学的に許容される塩である、請求項1又は2記載の試薬。 それぞれ第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有せず、Xa因子を含有する試薬、リン脂質を含有する試薬及びカルシウムイオンを含有する試薬を組み合わせた、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するためのキット。 Xa因子及びリン脂質を含有する試薬並びにカルシウムイオンを含有する試薬を組み合わせた、請求項6記載のキット。 Xa因子を0.1〜10mU/mL、リン脂質を1〜100μg/mLを含有する請求項6又は7記載のキット。 直接Xa因子阻害薬が、ラザキサバン、DX−9065a、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、JTV−803、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、一般式(I)(式中のRは水素原子又は低級アルキル基であり、Zは水素原子又は水酸基である)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体又はその薬理学的に許容される塩である、請求項6〜8のいずれかに記載のキット。 (1)血液サンプルと、Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有しない、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するための試薬とを混合する工程、(2)血液凝固時間を測定する工程からなる、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイ方法。 (1)Xa因子、リン脂質及びカルシウムイオンを含有し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有しない、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイに使用するための混合試薬を調製する工程、(2)(1)の試薬と血液サンプルとを混合する工程、及び(3)血液凝固時間を測定する工程を含む、直接Xa因子阻害薬の血液凝固系アッセイ方法。 Xa因子を0.1〜10mU/mL、リン脂質を1〜100μg/mL含有し、第V因子、活性化第V因子又は第V因子活性化酵素を含有しない試薬を使用することを特徴とする、請求項10又は11記載のアッセイ方法。 血液サンプルがヒト血漿である、請求項10〜12のいずれかに記載のアッセイ方法。 血液サンプルが直接Xa因子阻害薬を投与したヒトから採取したものである、請求項13記載のアッセイ方法。 直接Xa因子阻害薬が、ラザキサバン、DX−9065a、YM−150、DU−176b、ZK807834(CI−1031)、JTV−803、BAY−59−7939、Otamixaban、Fidexaban、BIBT−986、Apixaban、一般式(I)(式中のRは水素原子又は低級アルキル基であり、Zは水素原子又は水酸基である)で表されるベンゼンスルホンアミド誘導体又はその薬理学的に許容される塩である、請求項10〜14のいずれかに記載のアッセイ方法。