タイトル: | 公表特許公報(A)_肺気腫の予防又は治療のためのロフルミラストの使用 |
出願番号: | 2007512201 |
年次: | 2007 |
IPC分類: | A61K 31/44,C07D 213/81,A61P 11/00,C07D 213/89 |
シュテファン−ルッツ ヴォリン ロルフ ボイメ ジュセップ ルンガレッラ ピエロ マルトラーナ クリスティアン シュット JP 2007536350 公表特許公報(A) 20071213 2007512201 20050504 肺気腫の予防又は治療のためのロフルミラストの使用 ニコメッド ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング 507229021 Nycomed GmbH 矢野 敏雄 100061815 山崎 利臣 100094798 久野 琢也 100099483 杉本 博司 100110593 アインゼル・フェリックス=ラインハルト 100114890 シュテファン−ルッツ ヴォリン ロルフ ボイメ ジュセップ ルンガレッラ ピエロ マルトラーナ クリスティアン シュット US 60/569,462 20040510 EP 04102136.1 20040514 A61K 31/44 20060101AFI20071116BHJP C07D 213/81 20060101ALI20071116BHJP A61P 11/00 20060101ALI20071116BHJP C07D 213/89 20060101ALN20071116BHJP JPA61K31/44C07D213/81A61P11/00C07D213/89 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,MC,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KP,KR,KZ,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LV,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MZ,NA,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,YU,ZA,ZM,ZW EP2005052067 20050504 WO2005107749 20051117 21 20061101 4C055 4C086 4C055AA01 4C055AA17 4C055BA01 4C055CA03 4C055CA39 4C055DA53 4C055DB04 4C055DB08 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC17 4C086MA01 4C086MA04 4C086NA14 4C086ZA59 4C086ZA60 発明の適用分野 本発明は、肺気腫の予防又は治療のための一定の化合物の使用に関する。 発明の背景 M−P.Pruniaux他は、Am J Resp Crit Care Med 2003,Vol167,A847において、タバコ煙に誘発されるマウスにおける肺気腫発生に対しての選択的ホスホジエステラーゼ4インヒビターCI−1044の効果を記載している。K J.Stebbins他は、Am J Resp Crit Care Med 2003,Vol167,A486において、タバコ煙に誘発される肺炎のマウスモデルにおける種々異なるPDE4インヒビターのエーロゾル活性を記載している。J C Fox他は、Am J Resp Crit Care Med 2003,Vol167,A91において、モルモットにおけるCOPDのタバコ煙モデルにおけるPDE4インヒビターBAY19−8004の効果を記載している。国際特許出願WO03039552号(US2003/092706号)及びWO03097050号において、PDE4インヒビターとDMARDあるいはiNOSインヒビターとの組合せが記載されており、その両方の組合せ適用は、肺気腫の可能な適応として挙げられる。欧州特許出願EP1199074号において、IL−12産生過剰に関連した疾病の予防又は治療のためのPDE4インヒビターの使用が記載されており、ここでも肺気腫は可能な適応として挙げられる。Bundschuh他によるJPET 297,no1,2001,pp280−290では、気道疾患モデルでのロフルミラストのインビボでの効力が記載されている。 発明の開示 肺気腫は、気胞又は気嚢として知られる肺内の構造の過膨張が見られる状態である。この過膨張は、気胞壁の破壊により生じ、それにより呼吸機能の低下がもたらされ、しばしば息切れが引き起こされる。肺気腫の初期症状は、例えば息切れと咳である。 米国肺学会により発表された肺疾患データ報告書2003によれば、概算で3百万人のアメリカ人(ほぼ1.7百万人の男性と1.3百万人の女性)が肺気腫と診断された。典型的な肺気腫は、長年にわたる肺組織の酷使で発生する。肺内の非常に小さな気嚢間壁が破壊され、そしてこれらの区画が異常に拡張する。肺組織の弾性が失われ、そして肺が膨張して、膨張と収縮が正常にいかなくなる。肺気腫の進行として、呼吸に必要な努力が高まり、最終的にはその都度の呼吸に骨が折れるようになる。そうした間に、その患者は、次第に息切れするようになり、最初は最低限の息切れであるが、すぐに些細な身体活動でさえも試みが不可能となり、そして最終的に酸素の連続的な投与に頼ることとなる。その損傷及び疾病は不可逆的であると見なされる。通常、療法は症状の軽減に限られ、その患者の生活の質の向上が試みられる。 肺気腫は、最も一般的には、喫煙によって引き起こされる。従って、禁煙は、全ての肺気腫の段階の患者における結果を左右する唯一の最も重要な道である。近年使用される医薬品は、例えば気管支拡張薬であり、これらを使用することで、肺内の気道の開放を助け、息切れが少なくなる。吸入用ステロイド剤又は経口用ステロイド剤を使用することで、若干の人々では気道内の炎症を減らす助けとなる。しばしば抗生物質を用いて、付加的な感染が治療され、時として去痰薬を使用することで、気道からの粘液を取り除く助けとなる。全てのこれらの薬物療法は、肺気腫の制御の助けとなるが、治療することはできない。 従って、肺気腫の予防又は治療のための更なる医薬品が大いに要求されている。 ここで、ロフルミラストは、前記の適応の他に、肺気腫の予防又は治療のために有用であることが判明した。 従って、本発明は、第一の態様においては、肺気腫の予防又は治療のための医薬組成物の製造におけるロフルミラストの使用に関する。 第二の態様においては、本発明は、患者における肺気腫の予防又は治療のための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法に関する。 第三の態様においては、本発明は、患者における肺気腫の予防又は治療のための方法において、前記患者に、治療学的に有効量のロフルミラストを、β2アドレナリン作動性受容体アゴニスト、特に長期作用型のβ2アドレナリン作動性受容体アゴニスト、例えばサルメテロール、ホルモテロール又は(R,R)−ホルモテロール及びそれらの製剤学的に認容性の塩、ステロイド剤、例えばブデゾニド、フルチカゾン、フルニゾリド、ベクロメタゾン、モメタゾン、メチルプレドニゾロン及びシクレソニド及びそれらの製剤学的に認容性の塩及び抗コリン作動薬、例えばオキシトロピウム、イプラトロピウム及びチオトロピウムの塩、特にそれらの臭化物塩の群から選択される一員の有効量との自由組合せ物又は固定組合せ物において投与することを含む方法に関する。 前記のように、肺気腫は、肺組織の進行性の破壊をもたらし、最終的に呼吸不全をもたらす。組織損傷の主要なターゲットは、弾性線維であると考えられ、それらは喫煙、空気汚染、感染及び他の要因の結果として肺内に蓄積するエラスターゼによって分解される。 肺気腫において破壊される弾性線維は、無定形のエラスチンコアタンパク質の周りにミクロフィブリル層が取り囲んでいる高度に特化した構造を有する。そのエラスチンタンパク質は、架橋構造、特にデスモシン及びイソデスモシン中にリジン側鎖が合着することによって一緒に結合されたポリペプチド網目からなる。 弾性繊維の破壊が増大することで、肺内のデスモシンとイソデスモシンの含分が低下し、デスモシンとイソデスモシンの尿内濃度が高まる。従ってデスモシンとイソデスモシンの尿内濃度は、エラスチン破壊の象徴であると考えられる。尿によるデスモシン排泄は、健康な対照と比較して慢性閉塞性肺疾患の患者において顕著に高いことが研究で示された。肺気腫の形跡がない又は僅かに軽度の肺気腫を伴うCOPD患者において、デスモシン排泄値が、中程度ないし重度の肺気腫を伴う患者の値よりも極めて高かったのは、中程度ないし重度の肺気腫の患者におけるエラスチン、つまりはデスモシン源の枯渇のためである。 タバコ煙に誘発されるマウスにおける肺気腫の慢性モデルにおいて、ロフルミラストの投与は、肺内のデスモシン含分の低下を抑制することができるということが示された。 従って第四の態様において、本発明は、患者における肺内デスモシン含分の低下の抑制又は軽減のための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法に関する。 前記のように、肺内のデスモシンとイソデスモシンの含分の低下は、デスモシンとイソデスモシンの尿内濃度の増大をもたらす。 第五の態様において、本発明は、患者における軽度の肺気腫の治療のための方法において、(a)前記患者の尿内のデスモシン量を測定すること、(b)前記患者の尿内のデスモシン量と、健康な被験体の尿内のデスモシン量とを比較すること、そして前記患者の尿内のデスモシン量が健康な被験体の尿内のデスモシン量より高い場合に、(c)前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法に関する。 尿内のデスモシン量は、種々異なる方法によって、例えばFranca Cocci他のInternational Journal of Biochemistry&Cell Biology 2002 Vol34,pp594−604に記載される間接競合型酵素結合免疫反応吸着測定法によって、Viglio S他のEuropean Respiratory Journal 2000 Vol 15,pp1039−1045に記載される高性能キャピラリー電気泳動法によって、又はStarcher他のRespiration 1995;Vol62,pp252−257によって記載される改変されたラジオイムノアッセイによって測定することができる。 肺気腫の程度についての他の有用な指標は、平均線形切片(mean linear intercept)(Lm)、すなわち検査された各視野に引かれた10本の平行な横線上の平均肺胞壁間距離を測定することである(Thurlbeck他.Am Rev Respir Dis 1967;95:752−64)。タバコ煙に誘発される肺気腫マウスモデルでの研究により、Lmが、タバコ煙に暴露されたマウスにおいて、シャム動物群と比較して顕著に高まることを示している。 ここでも、タバコ煙に誘発されるマウスにおける肺気腫の慢性モデルにおいて、ロフルミラストの投与がLmの増大を抑えることができるということが示された。 従って、第六の態様において、本発明は、患者における平均肺胞間距離[平均線形切片(Lm)]の増大を抑制又は軽減するための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法に関する。 その平均線形切片(Lm)は、高分解能コンピュータ断層撮影法(HRCT)によって測定することができる。 本発明の範囲において、用語"ロフルミラスト"は、ロフルミラスト、ロフルミラストの製剤学的に認容性の塩、ロフルミラストのN−オキシド及び該N−オキシドの製剤学的に認容性の塩を含むと解され、これらは同様に本発明により使用することができる。 ロフルミラストは、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロ−メトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド[式(1.1)の構造]についての国際一般名称(INN)である。3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド、その製剤学的に認容性の塩及びそのN−オキシド[3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド;[式(1.2)の構造]]の製造並びにこれらの化合物のホスホジエステラーゼ(PDE)4インヒビターとしての使用は、WO95/01338号に記載されている。 用語"製剤学的に認容性の塩"の範囲内に含まれる塩は、遊離塩基と好適な有機酸又は無機酸とを反応させるか、又は該酸と好適な有機塩基又は無機塩基とを反応させることによって一般的に製造される無毒の化合物の塩を指す。薬学で慣用に使用される製剤学的に認容性の無機酸及び有機酸のそれが特に挙げられる。これらの好適な塩は、特に、例えば塩酸、臭化水素酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸、クエン酸、D−グルコン酸、安息香酸、2−(4−ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、酪酸、スルホサリチル酸、マレイン酸、ラウリン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、シュウ酸、酒石酸、エンボン酸、ステアリン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸又は1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸のような酸との水溶性及び水不溶性の付加塩である。塩基との製剤学的に認容性の塩の一例としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、アルミニウム塩、マグネシウム塩、チタン塩、アンモニウム塩、メグルミン塩又はグアニジニウム塩を挙げることができる。 前記の有効化合物及びそれらの製剤学的に認容性の塩は、例えば製剤学的に認容性の溶媒和物の形、特にその水和物の形で存在してもよいと解されるべきである。 ロフルミラストは、治療が必要な患者に、当該技術分野で利用できる一般に許容される任意の投与様式で投与することができる。適当な投与様式の概略的な例は、経口、静脈内、経鼻、非経口、経皮及び直腸内での送達並びに吸引による投与である。ロフルミラストの最も好ましい投与様式は経口である。もう一つの好ましい実施態様では、ロフルミラストは、静注又は注射によって投与される。 該医薬組成物は、自体公知の方法及び当業者に公知の方法によって製造される。医薬組成物としては、ロフルミラスト(=有効化合物)はそれ自体で、又は有利には適当な医薬品助剤及び/又は賦形剤と組み合わせて、例えば錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、カプレット剤、坐剤、乳剤、懸濁剤、ゲル剤又は液剤の形で使用され、その際、有効化合物の含有率は有利には0.1〜95%であり、かつ助剤及び/又は賦形剤の適当な選択によって、有効化合物に厳密に適合された、及び/又は作用の所望の開始に厳密に適合された医薬品投与形(例えば遅延放出形又は腸溶形)を達成できる。 当業者はその専門知識により所望の医薬品製剤に適した助剤又は賦形剤に精通している。溶剤、ゲル形成剤、軟膏基材及び他の有効化合物の他に、賦形剤、例えば酸化防止剤、分散剤、乳化剤、保存剤、溶解剤、着色剤、錯化剤又は侵透促進剤を使用してよい。 ロフルミラストの好適な経口剤形は、国際特許出願WO03/070279号に記載されている。 またロフルミラストは、エーロゾルの形で投与することもでき、その際、固体、液体又は混合組成のエーロゾル粒子は0.5〜10μm、有利には2〜6μmの直径を有する。エーロゾルの発生は、例えば圧力駆動のジェット噴霧器又は超音波噴霧器によるか、噴射剤駆動の定量噴霧式エーロゾルによるか、又は吸入カプセルからの微粉化有効化合物の噴射剤不使用の投与によって実施できる。 使用される吸入系に依存して、有効化合物の他に該投与形は付加的に所望の助剤、例えば噴射剤(例えば定量噴霧式エーロゾルの場合にFrigen)、界面活性剤、乳化剤、安定化剤、保存剤、フレーバー又は増量剤(例えば粉末吸入器の場合にラクトース)又は、適宜更なる有効化合物を含有する。 吸入の目的のために、多くの装置を利用でき、それを用いて最適な粒度を有するエーロゾルを発生させ、かつ患者にできる限り正しい吸入技術を使用して投与できる。アダプタ(スペーサ、エキスパンダ)及び洋ナシ型容器(例えばNebulator(登録商標)、Volumatic(登録商標))並びに計量供給エーロゾルのための、特に粉末吸入器の場合に吹き付け噴霧(puffer spray)を放出する自動装置(Autohaler(登録商標))を使用する他に、種々の技術的解決策(例えばDiskhaler(登録商標)、Rotadisk(登録商標)、Turbohaler(登録商標)又はEP0505321号に記載される吸入器)が利用でき、それを用いて有効化合物の最適な投与を達成できる。 有効化合物の最適用量は、患者の体重、年齢及び全身状態並びにその患者の有効化合物に対する応答挙動に相関して変化しうることは当業者に知られている。 3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンズアミド(ロフルミラスト)を経口投与する場合、成人の日用量は、有利に1回の1日投与につき、50〜1000μgの範囲内、有利に250〜500μgの範囲内である。 3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンズアミド(ロフルミラスト)を静脈内投与する場合、成人の日用量は、50〜600μgの範囲内、有利に150〜300μgの範囲内である。 薬理学 タバコ煙暴露のマウスにおける慢性モデルでのロフルミラストの効果 動物 80匹の6週齢の系統C57BI/6Jの雄のマウス(供給元Harlan−Italy社(イタリア・ウディネ在))を本研究に用いた。それらのマウスを7ないし10のグループでマクロロン製ケージに収容した。室温を22℃〜24℃に保ち、相対湿度を40〜50%に保ち、食物と水を無制限に供給した。全ての動物実験は、シエナ大学の地方倫理委員会によって認可された。 ロフルミラスト処理 10〜20匹の動物の5つのグループそれぞれを以下の通りとした: 1)無処理/空気暴露 N=13 2)ロフルミラスト5mg/kg/空気暴露 N=15 3)無処理/煙暴露 N=15 4)ロフルミラスト1mg/kg/煙暴露 N=20 5)ロフルミラスト5mg/kg/煙暴露 N=20 ロフルミラストを、空気又は煙へのいずれかの暴露の60分前に、強制栄養によって10μl懸濁液/g(体重)の容量で経口的に与えた。 1mg/kgの使用について、10mgのロフルミラストを、1.3mlのポリエチレングリコール400(Merck−Schuchhard社(ドイツ・ホーヘンハイム在))と2滴(約50μl)のAntifoam C(ジメチコンエマルジョン30%)とを含有する4%メトセル溶液(メチルヒドロキシプロピルセルロース2910.15CPS、ダウ・ケミカルズ社(米国・メリーランド州・ミッドランド在))100.3ml中に懸濁させた。該懸濁液をウルトラ−ツラックス(ultra-thurrax)で10分間撹拌した。この懸濁液(4℃で1週間安定)は、使用前にマグネティックスターラーで撹拌した。 5mg/kgの使用について、75mgのロフルミラストを、2mlのPEGと2滴のAntifoam Cとを含有する4%のメトセル溶液150ml中に懸濁させた。この懸濁液を、ウルトラ−ツラックスで10分間撹拌し、使用前にマグネティックスターラーで撹拌した。 タバコ煙への慢性的暴露 慢性的煙暴露のための方法は、既に詳細に記載されている(Cavarra他;Am J Respir Crit Care Med 2001;Vol164,pp886−890)。簡潔には、マウスを、3本のタバコ煙/日(市販のVerginiaフィルタータバコ:12mgのタールと0.9mgのニコチン)に5日/週か又は室内空気(対照)に7ヶ月間のいずれかで、特別に設計されたマクロロン製ケージ(Tecniplast社(イタリア・ブグッジャーテ在))中で暴露を行った。これらのケージ(42.5×26.6×19cm)は、空気をケージから流出することで連続的に入れ替えることができる使い捨てのフィルタカバーを備えている。煙はタバコの燃焼によって生成し、そして機械的ベンチレータ(7025 Rodent Ventilator、Ugo Basile、Biological Research Instruments社(イタリア・コメリオ在))により発生した気流をもってチャンバ中に33ml/分の速度で導入した。第二の機械的ベンチレータを用いて、室内空気を煙流の希釈(1:8)のために提供した。この方法では、マウスを、3本のタバコに由来する煙に一日一回90分の時間にわたって暴露させた。予備実験において、煙送達システムの効率を、12匹のマウスで、COオキシメトリによって血中HbCOの測定により試験した。 光学鏡検:形態論、形態計測 室内空気又はタバコ煙への慢性暴露の7ヶ月後(最終暴露の24時間後)に、各グループの5ないし12匹の動物にエーテルで麻酔し、次いで腹部大動脈の切断によって全採血した。肺を摘出し、そして気管内で、緩衝ホルマリン(5%)を用いて20cmH2Oの定圧で少なくとも24時間にわたり固定した。固定後の肺容量(VL)を水置換法によって測定した。次いで全ての肺から排水させ、トルエン中で清浄化し、そして真空下でパラフィン中に包埋した。7μm横切片を2つ作製し、そしてヘマトキシリン・エオジン及び/又は過ヨウ素酸シッフ(PAS)で染色した。暴露プロトコールが伏せられた2人の病理学者が、形態学的評価と形態計測的評価を行った。 肺気腫 肺気腫の形態計測的評価は、平均肺胞間距離(平均線形切片:Lm)の測定と、固定後肺容量でのLm法により見積もられる内表面積の測定とを含んだ。各肺の対についてのLmの測定のために、40個の組織学的視野を垂直と水平の両方で評価した。これらの視野数の検査は、事実上全体の肺領域を評価したことを意味する。肺の内表面積(ISA)は、式ISA=4VL/Lmに従うことによって計算した。 生化学 肺試料の肺内デスモシン含分の準備 肺内のデスモシン濃度を、高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、主にCumiskey他(J Chromatogr B 1995,Vol668.pp199−207)に従って測定した。簡潔には、肺試料を、5%TCA中で均質化(1:9(質量:容量))し、そして4℃で4000gで10分間遠心分離した。次いでそのペレットを、蒸留水で2回洗浄し、そして6NのHCl中で130℃で16時間加水分解した。 加水分解後に、それらの試料を2000gで10分間遠心分離し、そしてFP030/3型の0.2μmフィルタ(Schleicher&Schuell)を通して濾過した。それらの試料のアリコート(0.5ml)を液体窒素下で乾燥させ、次いで0.1Mのリン酸ナトリウム(pH3.73)0.6ml中に懸濁した。 処理された生物学的試料のHPLC分析 HPLC装置は、定組成移動相を送達する単一のポンプ(Pro−Star210、Varian)を構成として含み、その移動相のうち80%は、リン酸でpH3.75に調整された0.1Mの二塩基性のリン酸ナトリウムであり、残りの20%はアセトニトリルである。ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を添加して、最終濃度10mMとした。アセトニトリルとSDSの添加後にpHを再調整した。流速は、C18(逆相MSORV 100A、Varian)を通じて0.8ml/分であった。0.1Mのリン酸ナトリウムバッファー(pH3.75)中で希釈した注入容量100μlの試験試料を用いて、デスモシン濃度を検出した。デスモシンの検出は、275nmでの吸収によるものであった。ピーク純度を、Pro−Star330型のホトダイオードアレイ検出器(Varian)を用いて200nmから400nmまで走査することで確認した。イソデスモシンは、約9分で溶出し、そしてデスモシンは、約12分で溶出した。ピーク高さ、近似的外部校正曲線及び内部標準を用いて、未知の試料中のデスモシンを定量した。デスモシン標準の出所は、Elastin Co.(米国)であった。 統計分析 全てのデータは、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad Software(米国・カリフォルニア州・サンディエゴ在))を用いて分析した。各パラメータについて、個々の動物の値の平均をとって、SEMを計算した。差の有意性は、パラメトリック一元配置分散分析(ANOVA)を用いて、引き続き選択したペアについてボンフェローニ多重比較事後試験で計算した。p値<0.05を、有意性があると見なした。 結果: 死亡率 本研究の過程では動物は死亡しなかった。 ロフルミラスト5mg/kgの煙暴露グループの3匹の動物の形態計測分析は、技術的理由により実施できなかった。 肺気腫 第1表に示されるデータは、煙に暴露されて未処理の動物の肺が、空気暴露の動物とは大きく異なることを明らかにした。これは、慢性的なタバコ煙への暴露が、重大な肺気腫性の肺胞腔拡大とともにLmの増大とISAの減少を誘発したことを意味する。煙暴露されてロフルミラスト1mg/kgで処理された動物に同様の変化がみられ、このことは、低用量のロフルミラストは、肺気腫形成を阻害することができなかったことを示している。しかしながら、空気暴露された動物、空気暴露されてロフルミラスト5mg/kg処理された動物、煙暴露されてロフルミラスト5mg/kg処理された動物の全ては、LmとISAの両者に関しては同様の値を有しており、このことは、ロフルミラストによる肺気腫形成の顕著な阻害を指摘している。 第1表:慢性的なタバコ煙暴露に対する2種の用量でのロフルミラストの効果(肺気腫) データは平均±SEMとして示す。 略語:N=動物の匹数;Lm=平均線形切片;ISA=肺の内表面積;R1=ロフルミラスト1mg/kg用量;R5=ロフルミラスト5mg/kg用量 *=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001 "空気暴露"に対して #=p<0.05、##=p<0.01、###=p<0.001 "タバコ煙暴露"に対して 肺内のデスモシン含分 様々なグループにおける肺内のデスモシン含分の評価の結果を第2表に示す。煙暴露された動物の肺と煙暴露されてロフルミラスト1mg/kg処理された動物の肺は、空気暴露された動物の肺と空気暴露されてロフルミラスト5mg/kg処理された動物の肺と比較して顕著に低い肺内のデスモシン含分を示しており、このことは、実質組織と肺胞壁との弾性線維融解性のタンパク質分解性破壊がタバコ煙により誘発されることを反映している。煙暴露されてロフルミラスト5mg/kg処理されたグループにおける肺内のデスモシン含分が空気暴露されたグループと比較して変化がないことは、タバコ煙暴露による肺実質組織と肺胞の破壊がロフルミラストで処理された動物において顕著に阻害されたことを反映している。これらの結果は、肺気腫の形態計測的評価の結果と完全に一致している。 第2表:慢性的なタバコ煙暴露に対する2種の用量でのロフルミラストの効果(肺内のデスモシン) データは平均±SEMとして示す。 略語:N=動物の匹数;R1=ロフルミラスト1mg/kg用量;R5=ロフルミラスト5mg/kg用量 *=p<0.05 "空気暴露"に対して #=p<0.05、##=p<0.01 "タバコ煙暴露"に対して ロフルミラストを肺気腫の予防又は治療のための医薬組成物の製造において用いる使用。 ロフルミラストを肺気腫の予防のための医薬組成物の製造において用いる使用。 ロフルミラストを肺気腫の治療のための医薬組成物の製造において用いる使用。 患者における肺気腫の予防又は治療のための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法。 患者における肺気腫の予防のための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法。 患者における肺気腫の治療のための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法。 患者における肺内のデスモシン含分の低下の抑制又は軽減のための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法。 患者における軽度の肺気腫の治療のための方法において、(a)前記患者の尿内のデスモシン量を測定すること、(b)前記患者の尿内のデスモシン量と、健康な被験体の尿内のデスモシン量とを比較すること、そして前記患者の尿内のデスモシン量が健康な被験体の尿内のデスモシン量より高い場合に、(c)前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法。 患者における平均肺胞間距離[平均線形切片(Lm)]の増大を抑制又は軽減するための方法において、前記患者に治療学的に有効量のロフルミラストを投与することを含む方法。 請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)を表す使用。 請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)を表す使用。 請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)の製剤学的に認容性の塩を表す使用。 請求項1から3までのいずれか1項記載の使用であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)の製剤学的に認容性の塩を表す使用。 請求項4から9までのいずれか1項記載の方法であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)を表す方法。 請求項4から9までのいずれか1項記載の方法であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)を表す方法。 請求項4から9までのいずれか1項記載の方法であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)の製剤学的に認容性の塩を表す方法。 請求項4から9までのいずれか1項記載の方法であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)の製剤学的に認容性の塩を表す方法。 請求項10又は12記載の使用であって、成人患者についての3−シクロプロピルメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)の日用量が500μgである使用。 請求項11又は13記載の使用であって、成人患者についての3−シクロプロピルメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)の日用量が500μgである使用。 請求項14又は16記載の方法であって、成人患者についての3−シクロプロピルメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)の日用量が500μgである方法。 請求項15又は17記載の方法であって、成人患者についての3−シクロプロピルメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)の日用量が500μgである方法。 本発明は、肺気腫の予防のためのロフルミラストの使用に関する。20070618A16333全文3 ロフルミラストを含有することを特徴とする肺気腫の予防又は治療のための医薬組成物。 ロフルミラストを含有することを特徴とする肺内のデスモシン含分の低下の抑制又は軽減のための医薬組成物。 ロフルミラストを含有することを特徴とする平均肺胞間距離[平均線形切片(Lm)]の増大を抑制又は軽減するための医薬組成物。 請求項1から3までのいずれか1項記載の医薬組成物であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)を表す医薬組成物。 請求項1から3までのいずれか1項記載の医薬組成物であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)を表す医薬組成物。 請求項1から3までのいずれか1項記載の医薬組成物であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)の製剤学的に認容性の塩を表す医薬組成物。 請求項1から3までのいずれか1項記載の医薬組成物であって、ロフルミラストが、3−シクロプロピルメトキシ−4−ジフルオロメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)の製剤学的に認容性の塩を表す医薬組成物。 請求項4又は6記載の医薬組成物であって、成人患者についての3−シクロプロピルメトキシ−N−(3,5−ジクロロピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト)の日用量が500μgである医薬組成物。 請求項5又は7記載の医薬組成物であって、成人患者についての3−シクロプロピルメトキシ−N−(3,5−ジクロロ−1−オキシド−ピリド−4−イル)ベンザミド(ロフルミラスト−N−オキシド)の日用量が500μgである医薬組成物。