生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_グルコースの測定方法及び測定試薬
出願番号:2007511257
年次:2013
IPC分類:C12Q 1/32,C12Q 1/48,C12Q 1/54


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柴田 鈴代 田中 龍彦 征矢 陽代 JP 5286511 特許公報(B2) 20130614 2007511257 20060330 グルコースの測定方法及び測定試薬 株式会社シノテスト 000131474 柴田 鈴代 田中 龍彦 征矢 陽代 JP 2005133006 20050331 20130911 C12Q 1/32 20060101AFI20130822BHJP C12Q 1/48 20060101ALI20130822BHJP C12Q 1/54 20060101ALI20130822BHJP JPC12Q1/32C12Q1/48 ZC12Q1/54 C12Q 1/25−3/00 PubMed CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2000−262299(JP,A) 国際公開第2001/094370(WO,A1) 特開昭57−163498(JP,A) 特開2004−236665(JP,A) 特開2004−313180(JP,A) 3 JP2006307273 20060330 WO2006107094 20061012 11 20090317 池上 文緒 本発明は、グルコースの測定方法及び測定試薬並びにグルコース測定時のフルクトースによる誤差を低減する方法に関するものである。 本発明は、特に、化学、生命科学、分析化学及び臨床検査等の分野において有用なものである。 グルコースは、生体のエネルギー源として最も重要な物質であり、生体試料中のグルコース濃度は、腸管からの糖吸収や肝臓での糖新生とグリコーゲンの合成や分解等の諸因子によって調節されている。 また、生体試料中のグルコースの測定は、糖尿病の診断に最も有力であるとともに、低血糖症の発見や内分泌疾患の診断等にも欠くことのできない検査となっている。 このグルコースの測定方法としては、還元法、縮合法、及び酵素的測定法等が用いられている。これらのうち、酵素的測定法としては、例えば、グルコースオキシダーゼを用いる方法、グルコース脱水素酵素を用いる方法、又はヘキソキナーゼ(以下、HKと略すこともある)とグルコース−6−リン酸脱水素酵素(以下、G6PDHと略すこともある)を用いる方法(以下、HK−G6PDH法と略すこともある)等が挙げられる。 HK−G6PDH法の測定原理は以下の通りである。試料中のグルコースは、アデノシン−5’−三リン酸の存在下でヘキソキナーゼの作用により、グルコース−6−リン酸とアデノシン−5’−二リン酸を生成する。このグルコース−6−リン酸はG6PDHの作用により、6−ホスホグルコン酸となり、同時に酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADと略すこともある)又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADPと略すこともある)が、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(以下、NADHと略すこともある)又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(以下、NADPHと略すこともある)に変化する。この時に生成するNADH又はNADPHの吸光度を測定することによりグルコース濃度を求める。 このHK−G6PDH法は、正確にグルコースを測定できる方法として臨床検査で広く使用されている(例えば、臨床検査法提要 改訂第31版,524〜529頁,1998年)。 また、このHK−G6PDH法においては、正常ヒト血清中のグルコース濃度は3.5〜8mM(65〜105mg/dL)であるのに対し、ヘキソキナーゼのグルコースに対するKm値が数mM程度と小さいため、終末点法が適当な測定方法とされてきた。しかしながら、糖尿病患者等においては、尿中のグルコース濃度が健常人に比べて高濃度となる(約10g/dL程度)ため、このような患者の尿試料を測定する場合には、試料を希釈する必要があった。 このため、HK−G6PDH法においても、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤を使用することにより、ヘキソキナーゼのグルコースに対する見かけのKm値を測定系におけるグルコース濃度よりも大きくし、反応速度法での測定を可能とした方法が開発されている。この方法によれば、グルコース濃度の高い試料でも希釈せずにグルコースを測定することが可能となっている。 しかしながら、このHK−G6PDH法においては、試料中にフルクトースが存在する場合、グルコースの測定値に正誤差を受けるという問題があった。 すなわち、試料中にフルクトースが存在する場合、このフルクトースはヘキソキナーゼの作用によりフルクトース−6−リン酸となる。このフルクトース−6−リン酸は、試料中のイソメラーゼにより、グルコース−6−リン酸に変換される。このグルコース−6−リン酸はG6PDHの作用により、6−ホスホグルコン酸となり、同時にNAD又はNADPがNADH又はNADPHに変化することにより、NADH又はNADPHが増加することになる。このため、見かけのグルコース測定値が上昇し、正誤差を生じるという問題があった。 フルクトースは、輸液等に添加されているため、これらを使用した患者の試料は、フルクトースによる正誤差を受けるおそれがあった。したがって、本発明の課題は、フルクトースを含有する試料でも、グルコース濃度を正確に測定することができる方法及び試薬を提供することである。本発明者は、上記の課題の解決を目指して鋭意検討を行った結果、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いた試料中のグルコースを測定する方法において、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩を含有させることにより、フルクトースを含有する試料でも、グルコース濃度を正確に測定できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の発明を提供する。(1)ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いてグルコースを測定する測定方法において、フルクトースによる影響回避剤としてホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の共存下で測定を行うことにより、フルクトースによる誤差を低減する方法。(2)グルコースを測定する測定方法が、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤を使用するものであることを特徴とする、前記(1)記載のフルクトースによる誤差を低減する方法。(3)ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩が、ホウ酸又はフェニルボロン酸あるいはこれらの塩であることを特徴とする、前記(1)又は(2)に記載のフルクトースによる誤差を低減する方法。本発明によれば、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いたグルコースを測定する方法において、フルクトースを含有する試料でも、グルコース濃度を正確に測定することができるものである。 本発明は、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いたグルコースを測定する方法において、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩を含有させることを特徴とするグルコースの測定方法、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を含むグルコース測定試薬において、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩を含有することを特徴とするグルコースの測定試薬、並びにフルクトースによる誤差を低減する方法である。(1)ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩 本発明の試料中のグルコースの測定方法、及び測定試薬において使用するホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩としては、例えば、ホウ酸、四ホウ酸、フェニルボロン酸、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸マグネシウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸カルシウム、四ホウ酸ナトリウム、四ホウ酸カリウム、四ホウ酸マグネシウム、四ホウ酸リチウム、四ホウ酸カルシウム、フェニルボロン酸ナトリウム、フェニルボロン酸カリウム、フェニルボロン酸マグネシウム、フェニルボロン酸リチウム、フェニルボロン酸カルシウム等を挙げることができる。 このホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度は、特に限定されないが、例えば、試料と測定試薬を混合した後の測定反応液中において、0.5〜400mMの範囲にあることが好ましく、5〜100mMの範囲が特に好ましい。また、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度は、400mMを超えて含有させても問題はないが、その量までで充分な効果が得られる。 なお、四ホウ酸ナトリウム等の四ホウ酸塩は、水溶液中では4分子のホウ酸に分解することが知られているため、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩として、四ホウ酸塩を使用する場合は、例えば、前記した濃度範囲の4分の1とすることができる。 また、本発明の測定方法及び測定試薬が、1ステップ法(1試薬系)である場合には、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度は、上記の範囲のものとすればよく、2ステップ法(2試薬系)である場合には、試料と第1試薬を試料中のグルコースを測定する際の各々の添加量の比で混合した際、及び試料と第1試薬及び第2試薬を試料中のグルコースを測定する際の各々の添加量の比で混合した際に、この混合後の測定反応液中のホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が上記の範囲となるように、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩を第1試薬又は第2試薬のいずれかに含ませればよい。 また、混合後の測定反応液中のホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の濃度が上記濃度範囲に入るのであれば、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩は第1試薬と第2試薬の両方に含ませてもよい。 これは、測定方法及び測定試薬が多ステップ法(3試薬以上)の場合も同様である。(2)ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素 本発明においては、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を使用して、試料中のグルコースの測定を行う。 ここで、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素は、どの様な起源、由来のものでもよく、例えば、以下のものを使用することができる。 ヘキソキナーゼとしては、例えば、酵母またはサッカロマイセス属、アスペルギルス属、ロイコノストック属等の微生物等から採取されたものを挙げることができる。また、これらの遺伝子を大腸菌等の微生物等に組み込む遺伝子組み換え技術により製造したもの、又は遺伝子の改変等により性質を改良したものも含まれる。 また、ヘキソキナーゼの濃度は、酵素の起源等によっても最適濃度は異なるが、試料と測定試薬を混合した後の測定反応液中において、50〜5000U/Lの範囲にあることが好ましく、200〜2700U/Lの範囲が特に好ましい。 また、グルコース−6−リン酸脱水素酵素としては、例えば、ロイコノストック属、バチルス属、ペディオコッカス属、サッカロマイセス属等の微生物等から採取されたものを挙げることができる。また、これらの遺伝子を大腸菌等の微生物等に組み込む遺伝子組み換え技術により製造したもの、又は遺伝子の改変等により性質を改良したものも含まれる。 また、グルコース−6−リン酸脱水素酵素の濃度は、酵素の起源等によっても最適濃度は異なるが、試料と測定試薬を混合した後の測定反応液中において、300〜10000U/Lの範囲にあることが好ましく、600〜4800U/Lの範囲が特に好ましい。(3)ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤 本発明においては、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤を使用することにより、試料中のグルコースを反応速度法で測定してもよい。 ここで、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤とは、ヘキソキナーゼのグルコースに対する見かけのKm値を測定系におけるグルコース濃度よりも大きくできるものであればよい。本発明で使用される、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤としては、例えば、N−ベンゾイルグルコサミン、N−アセチルグルコサミン等を挙げることができる。 また、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤の濃度は、試料と測定試薬を混合した後の測定反応液中において、10〜300mMの範囲にあることが好ましく、30〜100mMの範囲が特に好ましい。(4)測定における他の構成成分 本発明で使用される、アデノシン−5’−三リン酸の濃度は、試料と測定試薬を混合した後の測定反応液中において、0.5〜50mMの範囲にあることが好ましく、1〜15mMの範囲が特に好ましい。 また、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸の濃度は、試料と測定試薬を混合した後の測定反応液中において、0.1〜20mMの範囲にあることが好ましく、0.5〜4mMの範囲が特に好ましい。 更に、本発明においては、前記の成分の他に、マグネシウム塩、公知の防腐剤、又は安定化剤等を必要に応じて適宜使用することができる。(5)グルコース測定時のpH 本発明において、グルコース測定時のpHは、pH5〜10の範囲にあることが好ましく、pH7〜9の範囲が特に好ましい。 また、前記のpH範囲となるように使用する緩衝液としては、前記のpH範囲に緩衝能がある従来公7知の緩衝液を適宜使用することができる。 このような緩衝液として使用できるものとしては、例えば、リン酸、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、イミダゾール、グリシルグリシン、MES、Bis−Tris、ADA、ACES、Bis−Trisプロパン、PIPES、MOPSO、MOPS、BES、HEPES、TES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPPS、HEPPSO、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、CAPSO、若しくはCAPS又はこれらの塩等の各緩衝剤を挙げることができる。(6)試薬等の構成、及び構成成分の濃度等 本発明の測定方法及び測定試薬は、1ステップ法(1試薬系)で実施、構成してもよく、又は2ステップ法(2試薬系)等の多ステップ法(多試薬系)で実施、構成してもよい。 また、本発明の測定方法及び測定試薬が1ステップ法(1試薬系)である場合は、前記した各構成成分の濃度、及びpH等は前記の範囲のものとすればよく、多ステップ法(多試薬系)である場合には、前記構成成分をグルコースを測定する際の各々の添加量の比で混合した時に、前記した各構成成分の濃度範囲、及びpH範囲等となるように各試薬の構成成分の濃度等を定めればよい。(7)試料 本発明において、グルコースの測定を行う試料は特に限定されない。 このような試料としては、例えば、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、髄液、唾液、汗等の体液、ヒト若しくは動物の腎臓、心臟、肺、脳等の臓器等の抽出液;骨格筋、骨髄、皮膚、又は神経組織等の抽出液;毛髪等の抽出液、ヒト又は動物の糞便の抽出液又は懸濁液;細胞の抽出液等が挙げられる。(8)グルコースの測定方法 本発明のグルコースの測定方法及び測定試薬を用いてグルコースを測定する場合の例を具体的に説明する。 グルコースを測定する場合には、例えば、試料にアデノシン−5’−三リン酸の存在下でヘキソキナーゼを作用させると、グルコース−6−リン酸とアデノシン−5’−二リン酸を生成する。次いで、生じたグルコース−6−リン酸をG6PDHを用いて、6−ホスホグルコン酸に変化させ、同時に、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又は酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADP)が、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)又は還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)に変化する。この時に生成するNADH又はNADPHの吸光度を測定することによりグルコース濃度を求めることができる。 また、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤を使用し、反応速度法によりグルコースを測定する場合には、生成するNADH又はNADPHの増加速度を、紫外部(330〜350nm)の波長における吸光度変化量により、グルコース濃度を求めることができる。 なお、本発明においては、グルコースの測定を反応速度法により行うことが好ましい。(9)フルクトースによる誤差を低減する方法 本発明における、グルコース測定時のフルクトースによる誤差を低減する方法は、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いてグルコースを測定する測定方法において、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の共存下で測定を行うことによるものである。 このヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いてグルコースを測定する測定方法において、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の共存下でグルコースの測定を行うことにより、試料中にフルクトースが含まれる場合であっても、測定値にこのフルクトースによる誤差が生じることを抑制でき、精度が高いグルコース測定値を得ることができる。 なお、本発明においては、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤を使用し、反応速度法によりグルコースを測定する場合において好適である。 以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。(フルクトースによる影響の回避効果の実証−1) ホウ酸濃度を変化させた測定試薬を用いて、試料に含まれるフルクトースによる影響の回避効果を確かめた。1.測定試薬の調製(1)本発明・グルコース測定用第1試薬Aの調製 下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを7.0(20℃)に調整し、ホウ酸濃度が20mMの本発明・グルコース測定用第1試薬Aを調製した。 トリス緩衝液 12.5mM 塩化ナトリウム 35mM N−ベンゾイルグルコサミン 75mM NADP 3mM ホウ酸 20mM(2)本発明・グルコース測定用第1試薬Bの調製 前記1の本発明・グルコース測定用第1試薬Aのホウ酸濃度を40mMとすること以外は、前記1の試薬成分及び濃度の通りに本発明・グルコース測定用第1試薬Bの調製を行った。(3)本発明・グルコース測定用第1試薬Cの調製 前記1の本発明・グルコース測定用第1試薬Aのホウ酸濃度を80mMとすること以外は、前記1の試薬成分及び濃度の通りに本発明・グルコース測定用第1試薬Cの調製を行った。(4)本発明・グルコース測定用第1試薬Dの調製 前記1の本発明・グルコース測定用第1試薬Aのホウ酸濃度を160mMとすること以外は、前記1の試薬成分及び濃度の通りに本発明・グルコース測定用第1試薬Dの調製を行った。なお、ホウ酸濃度は、ホウ酸100mMと四ホウ酸ナトリウム15mMを加えることにより調整を行った。(5)本発明・グルコース測定用第1試薬Eの調製 前記1の本発明・グルコース測定用第1試薬Aのホウ酸濃度を180mMとすること以外は、前記1の試薬成分及び濃度の通りに本発明・グルコース測定用第1試薬Eの調製を行った。なお、ホウ酸濃度は、ホウ酸100mMと四ホウ酸ナトリウム20mMを加えることにより調整を行った。(6)本発明・グルコース測定用第1試薬Fの調製 前記1の本発明・グルコース測定用第1試薬Aのホウ酸濃度を320mMとすること以外は、前記1の試薬成分及び濃度の通りに本発明・グルコース測定用第1試薬Fの調製を行った。なお、ホウ酸濃度は、ホウ酸100mMと四ホウ酸ナトリウム55mMを加えることにより調整を行った。(7)本発明・グルコース測定用第1試薬Gの調製 前記1の本発明・グルコース測定用第1試薬Aのホウ酸濃度を640mMとすること以外は、前記1の試薬成分及び濃度の通りに本発明・グルコース測定用第1試薬Gの調製を行った。なお、ホウ酸濃度は、ホウ酸100mMと四ホウ酸ナトリウム135mMを加えることにより調整を行った。(8)対照・グルコース測定用第1試薬の調製 前記1の本発明・グルコース測定用第1試薬のホウ酸を含有させないこと以外は、前記1の試薬成分及び濃度の通りに対照・グルコース測定用第1試薬の調製を行った。(9)グルコース測定用第2試薬の調製 下記の試薬成分をそれぞれ記載の濃度になるように純水に溶解し、pHを8.0(20℃)に調整し、グルコース測定用第2試薬を調製した。 トリス緩衝液 150mM 酢酸マグネシウム 60mM G6PDH(ロイコノストック属由来) 7200U/L ヘキソキナーゼ(酵母由来) 4000U/L ATP2Na 16mM2.試料の調製 ヒト血清にフルクトースを、添加濃度が400、800、1200、1600、又は2000mg/dLになるように添加したものを試料とした。 更に、フルクトースの代わりに生理食塩水を添加したものをフルクトース無添加試料(フルクトース添加濃度が0mg/dL)とした。3.試料の測定 前記2の各試料中のグルコース濃度を、前記1で調製した第1試薬及び第2試薬にて測定した。 本発明の測定試薬におけるグルコースの測定は、日立製作所社製7170S形自動分析装置にて行い、前記2で調製した試料の各10μLに各々前記1の(1)〜(7)で調製した本発明・グルコース測定用第1試薬(A〜G)200μLを添加して、混和後37℃で5分間反応させた後、前記1の(9)で調製したグルコース測定用第2試薬100μLを添加し、波長340nmにおける単位時間当たりの吸光度変化量を測定した。そして、グルコース濃度が既知の試料について、前記の通り測定を行い、この測定値と前記の5種類の試料の測定値を比較することにより、前記5種類の試料中のグルコース濃度を求めた。 また、第1試薬を前記1の(8)で調製した対照・グルコース測定用第1試薬に変えて同様に測定を行った。4.測定結果 試料の測定結果を図1に示した。図1から明らかなように、第1試薬にホウ酸を含有させていない対照・グルコース測定用第1試薬を用いた場合は、試料中のフルクトースの影響を受けてグルコースの測定値に正誤差が生じていることが分かる。また、試料中の添加フルクトース濃度が高くなるにつれてグルコースの測定値が上昇しており、正誤差の程度が大きくなっていることが分かる。 これに対し、第1試薬にホウ酸、又はホウ酸及び四ホウ酸ナトリウムを含有させた本発明・グルコース測定用第1試薬A〜Gを用いた場合は、この測定値の正誤差が減少し改善されていることが分かる。また、この試料に含まれるフルクトースの影響の回避効果は第1試薬中のホウ酸の濃度が高くなるにつれて大きくなっていることが分かる。 これらのことより、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いた試料中のグルコースを測定する方法において、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩を含有させた本発明の測定方法及び測定試薬は、試料に含まれるフルクトースの影響を回避する効果のあることが確かめられた。すなわち、フルクトースが含まれた試料であっても正確にグルコース濃度を測定できることが確かめられた。(フルクトースによる影響の回避効果の実証−2) ホウ酸濃度を変化させた測定試薬を用いて、試料に含まれるフルクトースによる影響の回避効果を確かめた。1.測定試薬の調製(1)本発明・グルコース測定用第1試薬A〜Gの調製 実施例1の1の(1)〜(7)で調製した本発明・グルコース測定用第1試薬A〜Gをそのまま使用した。(2)対照・グルコース測定用第1試薬の調製 実施例1の1の(8)で調製した対照・グルコース測定用第1試薬をそのまま使用した。(3)グルコース測定用第2試薬の調製 pHを9.0(20℃)に調整すること以外は、実施例1の1の(9)で調製したグルコース測定用第2試薬と同じ試薬成分及び濃度の通りに調製を行った。2.試料の調製 実施例1の2で調製した試料をそのまま使用した。3.試料の測定 前記2の各試料中のグルコース濃度を、前記1で調製した第1試薬A〜G及び第2試薬にて実施例1の3と同様にして測定を行った。4.測定結果 試料の測定結果を図2に示した。図2から明らかなように、第1試薬にホウ酸を含有させていない対照・グルコース測定用第1試薬を用いた場合は、試料中のフルクトースの影響を受けてグルコースの測定値に正誤差が生じていることが分かる。また、試料中の添加フルクトース濃度が高くなるにつれてグルコースの測定値が上昇しており、正誤差の程度が大きくなっていることが分かる。 これに対し、第1試薬にホウ酸、又はホウ酸及び四ホウ酸ナトリウムを含有させた本発明・グルコース測定用第1試薬A〜Gを用いた場合は、この測定値の正誤差が減少し改善されていることが分かる。また、この試料に含まれるフルクトースの影響の回避効果は第1試薬中のホウ酸の濃度が高くなるにつれて大きくなっていることが分かる。 これらのことより、ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いた試料中のグルコースを測定する方法において、ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩を含有させた本発明の測定方法及び測定試薬は、試料に含まれるフルクトースの影響を回避する効果のあることが確かめられた。すなわち、フルクトースが含まれた試料であっても正確にグルコース濃度を測定できることが確かめられた。 図1及び図2は、フルクトースによる影響の回避効果を確認した図である。ヘキソキナーゼ及びグルコース−6−リン酸脱水素酵素を用いてグルコースを測定する測定方法において、フルクトースによる影響回避剤としてホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩の共存下で測定を行うことにより、フルクトースによる誤差を低減する方法。グルコースを測定する測定方法が、ヘキソキナーゼに対する拮抗阻害剤を使用するものであることを特徴とする、請求の範囲第1項記載のフルクトースによる誤差を低減する方法。ホウ酸又はその誘導体あるいはこれらの塩が、ホウ酸又はフェニルボロン酸あるいはこれらの塩であることを特徴とする、請求の範囲第1項又は請求の範囲第2項に記載のフルクトースによる誤差を低減する方法。


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