生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_女性ホルモン物質分解性微生物およびその利用
出願番号:2007504770
年次:2012
IPC分類:C12N 1/20,C12N 1/16,C12N 1/12,C12N 1/14,C02F 3/00,C02F 3/02,C02F 3/10,C02F 3/34,B09B 3/00,B09C 1/10,A62D 3/02,A62D 101/28


特許情報キャッシュ

吉元 健司 長井 冨美子 藤本 淳治 木村 一雅 水越 晴美 渡辺 幸一 牧野 孝 大村 浩 斎野 秀幸 JP 5027649 特許公報(B2) 20120629 2007504770 20060223 女性ホルモン物質分解性微生物およびその利用 株式会社ヤクルト本社 000006884 国土交通省国土技術政策総合研究所長 501198039 特許業務法人 小野国際特許事務所 110000590 小野 信夫 100086324 吉元 健司 長井 冨美子 藤本 淳治 木村 一雅 水越 晴美 渡辺 幸一 牧野 孝 大村 浩 斎野 秀幸 JP 2005046392 20050223 20120919 C12N 1/20 20060101AFI20120830BHJP C12N 1/16 20060101ALI20120830BHJP C12N 1/12 20060101ALI20120830BHJP C12N 1/14 20060101ALI20120830BHJP C02F 3/00 20060101ALI20120830BHJP C02F 3/02 20060101ALI20120830BHJP C02F 3/10 20060101ALI20120830BHJP C02F 3/34 20060101ALI20120830BHJP B09B 3/00 20060101ALI20120830BHJP B09C 1/10 20060101ALI20120830BHJP A62D 3/02 20070101ALI20120830BHJP A62D 101/28 20070101ALN20120830BHJP JPC12N1/20 AC12N1/16 GC12N1/12 CC12N1/14 AC02F3/00 GC02F3/02 AC02F3/10 AC02F3/34 ZB09B3/00 AB09B3/00 EA62D3/02A62D101:28 C12N 1/00-7/08 B09B 3/00 C02F 3/00ー3/34 A62D 3/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) 特開平11−296220(JP,A) 特開2004−261123(JP,A) Appl.Env.Microbiol.,2004年,Vol.70, No.9,p.5283-5289 J.Biol.Chem.,1966年,Vol.241, No.7,p.1587-1595 Appl.Env.Microbiol.,2002年,Vol.68, No.4,p.2057-2060 Water Res.,2004年,Vol.38,p.2323-2330 6 IPOD FERM BP-10519 IPOD FERM BP-10520 IPOD FERM BP-10521 IPOD FERM BP-10522 IPOD FERM BP-10523 IPOD FERM BP-10524 IPOD FERM BP-10525 IPOD FERM BP-10526 IPOD FERM P-20024 JP2006303271 20060223 WO2006090780 20060831 22 20080918 水落 登希子 本発明は女性ホルモン物質分解性微生物およびその利用に関し、更に詳細には、生活排水や、家畜の飼育施設からの排水等に含まれる女性ホルモン物質を分解する能力を有する微生物および当該微生物を利用して女性ホルモン物質を生物学的に分解する方法ならびに装置に関する。 生体の内分泌系を攪乱するとされる内分泌攪乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)は、コルボーンによる「奪われし未来」(Colborn T., "Our Stolen Future"(1996))の発表以来、大きな社会問題となっている。生体における内分泌系は、男性ホルモン、女性ホルモン、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモン等の作用によって、生命体の発生や生殖器の発達、および、身体内諸器官の機能を正常に維持調整するシステムである。内分泌攪乱化学物質は、これら生体における内分泌系に障害を起こす物質群であり、さまざまな人間活動等により、自然界へと大量に排出されており、野生生物に多くの異常を引き起こしている。 内分泌攪乱化学物質には、女性ホルモン物質とともに、有機塩素系の殺虫剤、抗菌剤、除草剤、ビスフェノールAやノニルフェノールに代表される工業用の化学物質が知られている。後者の化学物質群は、その有毒性から水質汚濁防止法、公害関係法規等により使用に対して厳しい規制が設けられ、環境中に放出される物質量は減少傾向を示している。しかし、ヒトや動物の尿中に含まれ環境中に排出される、17β−エストラジオール、エストロン、エストリオール等の女性ホルモン物質は、人口の増加にともない環境中への排出量は増加している。そのため、都市の生活排水が大量に流れ込んでいる河川や湖沼で、棲息する野生生物にメス化の異常が確認され (デボラ・キャドバリー著、井口泰泉監修、「メス化する自然」、集英社(1998))、繁殖不能によって生態系バランスを崩す懸念が示唆されている。 ところで、下記式(I)で示される17β−エストラジオールは、卵巣ろ胞から分泌されるステロイドホルモンであり、これは女性ホルモン物質の中でも、生理活性が最も高い物質である。その分泌は、脳下垂体の卵胞刺激ホルモンおよび黄体形成ホルモンの支配を受けている。またこの17β−エストラジオールは薬剤として、無月経症、月経周期異常、月経困難症、子宮発育不全、更年期障害の治療等に用いられている。 また、下記式(II)で示されるエストロンは、卵胞ホルモンの一種で、17β−エストラジオールの代謝産物である。これは強いエストロゲン活性を有し、尿中に出現して生体外へ排出される。このエストロンは女性ホルモン剤として、女性の性機能不全、更年期障害、および、前立腺ガン等の治療に用いられている。 更に、下記式(III)で示されるエストリオールは、生体内では17β−エストラジオールの代謝産物である女性ホルモンで、エストロンを経由して生成され尿中へ出現する。また、このエストリオールは発情作用を有する。 以上に示すような女性ホルモン物質は、ヒトの医療用薬剤にも用いられており、尿中に含まれて体外に排出される。また、これらの物質は家畜にも投与されることがあるため、家畜の飼育施設からも環境中に排出される。そして、これらの女性ホルモン物質が原因で、河川や湖沼で野生生物や魚類が汚染されているため、排水を河川等に放出する前の段階で、例えば、排水中の女性ホルモン物質を排水処理施設で低減させる必要がある。 現在、排水処理施設での排水の処理方法は、物理学的処理、化学的処理、生物学的処理の3つに分けられる。このうち、物理学的処理とは、具体的に示すと、遠心分離法、ろ過法、加圧浮上分離法、吸着法等であり、また、化学的処理とは、化学薬品等の添加による有害物質の無害化処理法、電気透析法、イオン交換法等をさす。その一方で、生物学的処理とは、微生物を用いて、排水中の有機物質を分解し、除去するもので、物理学的処理、化学的処理では処理の困難な物質等の処理にも有効である。 このため生物学的処理は、近年、多くの排水処理施設で利用されている方法であり、一般的に次の3つの段階に分けられる。すなわち、予備処理、生物酸化処理、汚泥の処理である。予備処理には、スクリーン、沈砂池、沈殿池、浮上槽等が含まれ、これらの装置は、排水に含まれる粒径の大きい固形物や無機性の浮遊物等を除去するとともに、更に、生物酸化処理施設への有機物質の負荷を減らすために役立っている。 一方、生物酸化処理では、微生物を使用することになるが、その際の微生物を利用する手法としては、微生物を固体支持体表面に付着させ生育させる方法と、微生物群を液中に懸濁させる方法とがある。前者は、通常、散水ろ床法等の固定床式の装置により、また後者は、活性汚泥法等の流動床式の装置により実施される。 このうち、固定床式の装置を用い、排水を処理する場合には、微生物を固定化する方法として、結合固定化法、包括固定化法等が採用される。結合固定化法とは、共有結合、イオン結合、水素結合、物理的な吸着等により不溶性の担体に微生物を付着させる方法であり、包括固定化法とは、低分子化合物を重合または会合されるか、または高分子化合物を可溶の状態から不溶の状態に変化させることによって生じる高分子ゲルに微生物を包み込んでしまう方法である。前者の素材としては、セラミックス担体、セルロース担体、粒状活性炭等がある。また、後者素材としては、ポリビニルアルコール(PVA)、カラギーナン等が使用されている。 これら活性汚泥処理や散水ろ床処理等は、排水中の汚濁物質を低減するためには非常にすぐれた方法であるため、近年、環境ホルモンの分解にあたっても、こうした生物学的処理によるアプローチが各種なされている。その中では、処理効率の向上や処理の困難な環境ホルモンの分解を目的とした微生物の選別・強化も行われている。これまで、ノニルフェノール分解能を有するスフィンゴモナス属細菌(特許文献1)、ダイオキシン分解能を有するフザリウム属細菌(特許文献2)、合成女性ホルモン物質であるエチニルエストラジオール分解能を有するフザリウム属細菌(特許文献3)等が報告されている。また、本出願人も、17β−エストラジオール等を分解するロドコッカス属細菌およびスフィンゴモナス属細菌を報告している(特許文献4)。 しかしながら、微生物による分解処理が特に困難な女性ホルモン物質をより迅速および効果的に分解することのできる微生物は殆ど発見されておらず、更に高い分解能力を有する微生物を得ることが求められている。 また、本出願人も17−βエストラジオール等を分解するロドコッカス属細菌およびスフィンゴモナス属細菌を報告している。しかしながら、これらの女性ホルモン分解菌は比較的低濃度の女性ホルモンが継続して流入するような状況においては、好適な分解能を示すものの、一次的に高濃度の女性ホルモンが流入するような場合には十分ではなかった。特開2001−333767号公報特開平11−341978号公報特開2003−52356号公報特開2004−65008号公報 本発明は、前述の状況を鑑みなされたものであり、女性ホルモン物質の分解能を有する微生物の提供およびこの微生物を用いて女性ホルモン物質を含む生活排水、家畜養殖場からの排水等から女性ホルモン物質を簡便かつ効率よく分解する方法ならびに装置を提供することを課題とする。 本発明者は鋭意研究の結果、後述する選別方法を用いることにより、女性ホルモン物質を有効に分解する能力を有する微生物を見出した。また、これらを用いることで排水中等に存在する女性ホルモン物質を簡便かつ効率よく分解できることを見出し、本発明を完成した。 すなわち本発明は、シュードアミノバクター(Pseudaminobacter)属、ゴルドニア(Gordonia)属、ノカルディア(Nocardia)属、ズーグレア(Zoogloea)属、パンドレア(Pandoraea)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属またはトリコスポロン(Trichosporon)属に属し、女性ホルモン物質を分解する能力を有することを特徴とする女性ホルモン物質分解性微生物である。 また、本発明は、上記の何れかの微生物を使用し、女性ホルモン物質を生物学的に分解すること特徴とする女性ホルモン物質の分解方法である。 更に、本発明は、上記の女性ホルモン物質分解微生物を担持する手段と当該微生物を排水または土壌と接触させる手段とを具備することを特徴とする女性ホルモン物質分解用装置である。 また更に、本発明は、上記の女性ホルモン物質分解微生物の女性ホルモンの分解のための使用である。 本発明の女性ホルモン物質分解性微生物は、17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール等の女性ホルモン物質の分解能を有するものである。 従って、上記微生物を利用した女性ホルモン物質を分解する方法および装置により、女性ホルモン物質に汚染された排水や土壌中の女性ホルモン物質を分解し、環境を改善することができる。 本発明の女性ホルモン分解性微生物(以下、単に「本発明微生物」という)は、前記式(I)〜(III)で示される17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール等の生体内女性ホルモン物質あるいはその代謝産物等の女性ホルモン物質(以下、これらを総称して「女性ホルモン物質」という)を分解する能力を有するものである。これら女性ホルモン物質は、通常の生物酸化処理では、除去が不可能であり、また化学構造的に安定であるため、化学的に処理しにくいものである。 上記性質を有する本発明微生物としては、例えば、シュードアミノバクター(Pseudaminobacter)属、ゴルドニア(Gordonia)属、ノカルディア(Nocardia)属、ズーグレア(Zoogloea)属、パンドレア(Pandoraea)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属またはトリコスポロン(Trichosporon)属に属するものが挙げられる。より具体的には下記A群に属する微生物の1種または2種以上が挙げられる。 [A群] シュードアミノバクター・サリシラトキシダンス(Pseudaminobacter salicylatoxidans) ゴルドニア・テラエ(Gordonia terrae) ゴルドニア・ルブロパルティンクタス(Gordonia rubropertinctus) ゴルドニア・アマラエ(Gordonia amarae) ノカルディア・アステロイデス(Nocardia asteroides) ズーグレア・スピーシーズ(Zoogloea sp.) パンドレア・プノメヌーサ(Pandoraea pnomenusa) クリプトコッカス・スピーシーズ(Cryptococcus sp.) トリコスポロン・ロウビエリ(Trichosporon loubieri) なお、上記した本発明微生物は、下水処理場等の活性汚泥や返送汚泥中に存在する種々の微生物から女性ホルモン物質を用いた多段階のスクリーニングを行うことにより得ることができる。 具体的に、下水処理場等の活性汚泥や返送汚泥中に存在する種々の微生物から本発明微生物を得るには、まず、活性汚泥中に含まれる微生物を、女性ホルモン物質を用いた集積培養を行うことにより、女性ホルモン物質を分解するものと、そうでないものとを分ける。 この集積培養は、活性汚泥や返送汚泥等の汚泥と、例えば、女性ホルモン物質を含む下記表1の組成の各MDG培地(Modified DOMINIC & GRAHAM's medium;トレースエレメントとしては表2のものを使用)とを含む培養液を用いて行うことが好ましい。また培養は、試験管等で激しく振盪させながら、例えば28℃程度で、1代につき1週間で、5代程度行うことが好ましい。 次に、上記で得られた集積培養液について、女性ホルモン物質が分解されているか否かを、例えば薄層クロマトグラフ等を用いて、検討、確認する。そして、女性ホルモン物質が分解されている集積培養液を選択する。 上記のようにして選択された集積培養液に含まれる微生物を、微生物の分離に用いられる一般的な培地、例えば、ISP培地、R2A培地、YM培地等の市販の培地を用いて単離する。 この単離した各微生物を、更に女性ホルモン物質を含む培地中で培養し、培養後の培地中の女性ホルモン物質の残存量を、例えば、薄層クロマトグラフ、ガスクロマトグラフ等で測定することにより、女性ホルモン物質の分解能の高い微生物のスクリーニングを行うことができる。このスクリーニングを複数回行うことにより女性ホルモン物質の分解能の高い微生物を得ることができる。 かくして得られる本発明微生物は、女性ホルモン物質を100mg/Lの濃度で含有する汚泥、汚水、培地等に、前記微生物107〜108個/Lを作用させた場合に、5時間培養した後に、培地に含有する女性ホルモン物質の65%以上、好ましくは80%以上分解するものである。また、特に本発明微生物は、女性ホルモン物質の中でも17β−エストラジオールを8時間で90%以上、好ましくは99%以上分解するものである。なお、本発明微生物を作用させる温度は25〜30℃、好ましくは27〜28℃である。 具体的に上記スクリーニング方法により、伏見下水処理場(京都府京都市)、垂水下水処理場(兵庫県神戸市)、多摩川上流処理場(東京都昭島市)、森ヶ崎水処理センター(東京都大田区)、北部第二下水処理場(神奈川県横浜市)、等々力水処理センター(神奈川県川崎市)、立川富士見処理場(東京都立川市)の活性汚泥および返送汚泥から、女性ホルモン物質分解性微生物として下記の9株の微生物が得られた。なお、これらの微生物の菌種同定は微生物の16SrDNA配列を用いて文献記載(Carl R. Woese, Bacterial Evolution., Microbiological Reviews., 51:221-271(1987)およびE. Stackebrandt and B. M. Goebel, Taxonomic Note: A Place for DNA-DNA Reassociation and 16S rRNA Sequence Analysis in thePresent Species Definition in Bacteriology., International Journal ofSystematic Bacteriology, 44, (4): 846-849 (1994))の分子進化系統解析に基づき行い、その結果、次のように同定された。・シュードアミノバクター・サリシラトキシダンス (Pseudaminobacter salicylatoxidans) TAA−I3株 (FERM ABP−10519)・ゴルドニア・テラエ (Gordonia terrae) TAI−I5株 (FERM ABP−10521)・ゴルドニア・ルブロパルティンクタス (Gordonia rubropertinctus) TAJ−I4株 (FERM ABP−10520)・ゴルドニア・アマラエ (Gordonia amarae) TAJ−I6株 (FERM P−20024)・ノカルディア・アステロイデス (Nocardia asteroides) TAJ−I7株 (FERM ABP−10522)・ズーグレア・スピーシーズ (Zoogloea sp.) TMJ−I1株 (FERM ABP−10523)・パンドレア・プノメヌーサ (Pandoraea pnomenusa) TMM−Y4株 (FERM ABP−10524)・クリプトコッカス・スピーシーズ (Cryptococcus sp.) TMN−Y2株 (FERM ABP−10525)・トリコスポロン・ロウビエリ (Trichosporon loubieri) FF−Y2株 (FERM ABP−10526) これらの微生物のうち、シュードアミノバクター・サリシラトキシダンスTAA−I3株、ゴルドニア・テラエTAI−I5株、ゴルドニア・ルブロパルティンクタスTAJ−I4株、ノカルディア・アステロイデスTAJ−I7株、ズーグレア・スピーシーズTMJ−I1株、パンドレア・プノメヌーサTMM−Y4株、クリプトコッカス・スピーシーズTMN−Y2株、トリコスポロン・ロウビエリFF−Y2株については平成16年4月26日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)にそれぞれ上記番号で国際寄託した。 また、ゴルドニア・アマラエTAJ−I6株は、平成16年4月26日付で独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(〒305-8566茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に上記番号で国内寄託した。 なお、上記微生物のうちシュードアミノバクター・サリシラトキシダンスTAA−I3株の微生物学的性質について調べたところ、以下の通りであった。 形態: 絶対好気性であり、非運動性、菌糸状に生育する。黄色のコロニーを形成することが多い。グラム陰生菌のα−プロテオバクテリア (Proteobacteria α-subdivision)に含まれる。 生理学的性質: オキシダーゼ、カタラーゼに陽性である。 生育の範囲: 生育温度20〜40℃であり、10℃および45℃では7日間の培養でも生育しない。 糖類の利用性: D−グルコース(Glucose)、D−マンニトール(Mannitol)、ズルシトール(Dulcitol)、メリビオース(Melibiose)、を好気的に利用する。また、D−グルコース(Glucose)、D−マルトース(Maltose)、D−リボース(Ribose)、D−キシロース(Xylose)などに同化作用を示す。 これら性質は、1999年に文献(P. Kampfer, Description of Pseudoaminobacter gen. Nov. with two new species, Pseudaminobacter salicylatoxidans sp. Nov. and pseudaminobacter defluvii sp. Nov., International Journal of Systematic Bacteriology, 49:887-897 (1999))に報告されたシュードアミノバクター・サリシラトキシダンスを含むシュードアミノバクター・スピーシーズ (Pseudaminobacter sp.)と同じであった。 また、上記微生物のうち、ゴルドニア・テラエTAI−I5株、ゴルドニア・ルブロパルティンクタスTAJ−I4株、ゴルドニア・アマラエTAJ−I6株の微生物学的性質について調べたところ、以下の通りであった。 形態: 絶対好気性であり、非運動性、弱抗酸性で短桿菌または擬球菌である。ゴルドニア・アマラエのみ菌糸状の生育を示し、顕微鏡下で観察できる程度の僅かな気菌糸を着生する。赤色および、黄色のコロニーを形成することが多く、土壌や活性汚泥など環境中から分離される。High-GCグラム陽性球菌のコリネバクテリウム(Corynebacterium)に含まれる。 生理学的性質: 細胞壁ペプチドグリカンはA1γタイプでグリコリル型が多く、アラビノース(Arabinose)とガラクトース(Galactose)を含む。さらに、呼吸鎖キノンの主要成分はMK−9(H2)である。菌体脂肪酸は直鎖−モノ不飽和型で10Me−18:0を含む。奇数酸の含量は種によって異なる。リン脂質としてはPEが検出される他、DPG、PG、PI、PIMsといくらかの糖脂質もみられる。 生育の範囲: 生育至適温度は28〜37℃である。 これら性質は、文献(日本放線菌学会編 「放線菌の分類と同定」日本学会事務センター:183-184 (2001))記載のゴルドニア・テラエ、ゴルドニア・ルブロパルティンクタスおよびゴルドニア・アマラエを含むゴルドニア・スピーシーズ(Gordonia sp.)と同じであった。 更に、上記微生物のうち、ノカルディア・アステロイデスTAJ−I7株の微生物学的性質について調べたところ、以下の通りであった。 形態: 絶対好気性であり、非運動性、菌糸状に生育し、弱い抗酸性を示す。胞子は形成せず、伸長した菌糸は培養時間とともに断裂して短桿菌状、または擬球菌状になる。 ミコール酸含有菌群の中では最も顕著に菌糸状の生育を示す。茶色のコロニーを形成することが多い。High-GCグラム陽性球菌であるコリネバクテリウム(Corynebacterium)グループに含まれる。 生理学的性質: カタラーゼには陽性であるが、オキシダーゼには陰性である。細胞壁ペプチドグリカンはA1γタイプでグリコリル型が多く、アラビノース(Arabinose)とガラクトース(Galactose)を含む。菌体脂肪酸は直鎖−モノ不飽和型で16:0、18:0、18:1および、10Me−18:0を含む。リン脂質としてはPEが検出される他、DPG、PG、PI、 PIMsといくらかの糖脂質もみられる。 生育の範囲: 生育温度は20〜37℃である。 これら性質は、文献(日本放線菌学会編 「放線菌の分類と同定」日本学会事務センター:183-184 (2001))記載のノカルディア・アステロイデスを含むノカルディア・スピーシーズ(Nocardia sp.)と同じであった。 また更に、上記微生物のうち、ズーグレア・スピーシーズTMJ−I1株の微生物学的性質について調べたところ、以下の通りであった。 形態: 絶対好気性であり、非運動性である。菌糸状に生育し、白〜うす黄色のコロニーを形成することが多い。グラム陰性菌のβ−プロテオバクテリア(Proteobacteria β-subdivision)に含まれる。汚泥中でフロックを形成して存在する。 生理学的性質: ウレアーゼ(Urease)、オキシダーゼ(Oxidase)、ゲラチナーゼ(Gelatinase)活性を有する。 生育の範囲: 生育温度は20〜37℃である。 これら性質は、文献(Rossello-Mora,R., Ludwig,W. and Schleifer,K.H..Zoogloea ramigera: a phylogenetically diverse species, FEMS Microbiol. Lett. 114, 129-134 (1993)および、R. G. E. Murray.: BERGY’S MANUAL of Systematic Bacteriology, Volume 4,214-219 (1992))記載のズーグレア・スピーシーズ(Zoogloea sp.)と同じであった。 更にまた、上記微生物のうち、パンドレア・プノメヌーサTMM−Y4株の微生物学的性質について調べたところ、以下の通りであった。 形態: 絶対好気性であり、非運動性である。菌糸状には生育せず、粘性を有する。白〜黄色のコロニーを形成することが多い。グラム陰性菌のβ−プロテオバクテリア(Proteobacteria β-subdivision)に含まれる。 生理学的性質: カタラーゼに陽性、アルカリフォスファターゼ活性を有する。フェニルアセテート(Phenylacetate)に同化作用を示す。菌体脂肪酸は環状型で16:0、17:0を含む。 生育の範囲: 生育至適温度は42℃である。 これら性質は、2000年に文献(T. Coenye, Description of Pandoraea gen.Nov. with Pandoraea apista sp. Nov., Pandoraea pulmonicola sp. Nov.,Pandoraea pnomenusa sp. Nov., Pandoraea sputorum sp. Nov. andPandoraea norimbergensis comb. Nov., International Journal of Systematicand Evolutionary Microbiology, 50:887-899 (2000))に報告されたパンドレア・プノメヌーサ(Pandorea pnomenusa)を含むパンドレア・スピーシーズ(Pandraea sp.)と同じであった。 また、クリプトコッカス・スピーシーズTMN−Y2株の微生物学的性質について調べたところ、以下の通りであった。 形態: 有性世代として、担子器を生じ、その上に担子胞子を外生する。白色のコロニーを形成することが多い。コロニーは速やかに発育し、柔らかく、強いまたは鈍い光沢を放つ。出芽型分生子は1細胞性できょう膜に被われ、球形、卵円形、多極性である。 生理学的性質: 糖を発酵しないがイノシトールを利用し、ウレアーゼを産性する。 生育の範囲: 生育温度は20〜37℃である。 これら性質は、文献(Takashima, M. and Nakase, T., Molecular phylogeny of the genus Cryptococcus and related species based on the sequence of18S rDNA and internal transcribed spacer regions, Microbiol. Cult. Coll.,15, 35-47 (1999))記載のクリプトコッカス・スピーシーズと同じであった。 更に、トリコスポロン・ロウビエリFF−Y2株の微生物学的性質について調べたところ、以下の通りであった。 形態: 有性生殖で子嚢中に子嚢胞子を生じる。コロニーは速やかに発育し、表面平滑、皺状、隆起性、無毛性〜ビロード状であり、鈍い光沢を有する。蝋様でもろく、白色または黄色系のクリーム色を呈する。仮性菌糸および菌糸は豊富で発達している。 出芽型分生子は1細胞性で形は多様である。分節型分生子は1細胞性で伸長形を呈する。 生理学的性質: 発酵しないまたは発酵が弱い。シュークロース(Sucrose)、ラクトース(Lactose)、ソルビトール(Sorbitol)、グルコース(Glucose)に陽性であり、ロービリネート(Laevulinate)に陰性を示す。 生育の範囲: 生育温度は20〜37℃である。 これら性質は、文献(Wouter J. Middelhoven, Gloria Scorzetti and Jack W.Fell, Trichosporon porosum comb. nov., an anamorphic basidiomycetousyeast inhabiting soil, related to the loubieri/laibachii group of species that assimilate hemicelluloses and phenolic compounds, FEMS Yeast Research, Vol. 1, 15-22 (2001))記載のトリコスポロン・ロウビエリを含むトリコスポロン・スピーシーズ(Trichosporon sp.)と同じであった。 上記において得られた微生物の大量培養に適した条件を検討したところ、10リットル容量のジャーファーメンターを用いた大量培養については、至適温度は28〜30℃であり、至適pHは6.0〜7.0であった。 以上説明した本発明微生物は、単独または複数種類の組合せにより、排水中または土壌中の女性ホルモン物質を分解するのに使用することができる。 具体的に本発明微生物を用いて排水中の女性ホルモン物質を分解するには、本発明微生物を排水処理における最初沈殿池から最終沈殿池の間に使用することが好ましく、中でも生物酸化処理中の2次処理工程で使用することが特に好ましい。2次処理工程で使用する場合には、微生物を液中に懸濁させる方式よりも固体支持体表面に付着生育させて用いる方式が好ましい。これは、微生物を固体支持体表面に付着させることにより、微生物の流出を防ぐことができ、より濃厚な菌液を得られることが出来るためである。本発明微生物を付着成育させるための固体支持体としては、PVA(ポリビニルアルコール)や多孔性セルロース等が挙げられるが、2次処理工程で使用する場合には、多孔性セルロースが好ましい。固体支持体に微生物を固定化するには、ポリプロピレンやセラミック等を用いた結合固定化法およびPVA−冷凍法等の包括固定化法等が挙げられ、中でも結合固定化法が好ましい。 上記排水処理において本発明微生物は、大量培養により108から109個/mLに増殖させた微生物培養液を直接排水処理層に投入するか、微生物を固定化した担体を処理層に投入することで使用できる。固定化担体は、ジャーファーメンター等で大量培養した装置に、担体を一定量直接投入し、2〜3日間そのまま培養装置を運転し、攪拌して微生物を担体に固着させることにより作製される。この固定化担体は処理槽投入時に培養液から引き上げ、攪拌している処理層にいれればよい。 一方、具体的に本発明微生物を用いた土壌中の女性ホルモン物質の分解は、ジャーファーメンターによる大量培養で108から109個/mLに増殖させた微生物を、遠心分離後、必要により生理食塩水等に懸濁させ、直接汚染土壌に散布して接触させることにより行うことができる。この場合、処理すべき土壌の表面および掘り起こした部分に本発明微生物を1m3当たり109〜1010個程度になるように調整して散布すればよい。 なお、本発明微生物を用いて効率よく女性ホルモン物質を分解するためには、本発明微生物を担持する手段と、当該微生物を排水または土壌と接触させる手段とを具備している装置の利用を挙げることができる。具体的な装置としては、エアリフトタイプやカラム充填タイプ、ラグフロータイプ等のバイオリアクター装置を用いることができる。このような装置は排水処理の2次処理工程中においても使用でき、排水や土壌中の女性ホルモン物質を効率よく分解することができる。 以下、実施例について本発明を更に詳細に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。実 験 例 1 女性ホルモン物質分解微生物の分離: (1)集積培養 下記のMDG培地1ないし4の各々を10mLづつ試験管に取り、これに女性ホルモン物質として17β−エストラジオールを0.1%となるように加え、4培地で1群となる集積培養培地を得た。各集積培養培地中に、各々、伏見下水処理場(略記号F;京都府京都市)、垂水下水処理場(略記号TM;兵庫県神戸市)、多摩川上流処理場(略記号TJ;東京都昭島市)、森ヶ崎水処理センター(略記号M;東京都大田区)、北部第二下水処理場(略記号H;神奈川県横浜市)、等々力水処理センター(略記号TO;神奈川県川崎市)または立川富士見処理場(略記号TA;東京都立川市)の処理行程中の活性汚泥または返送汚泥をそれぞれ1mL添加して、計56の集積培養液を調製した。次に、この集積培養液を28℃で1週間振とう培養を実施した。培養終了後、培養液から1mLを採取し、これを新たなMDG培地10mLとともに試験管中に加え、1週間振とう培養した。これを5回繰り返し、5代継代を行った。 (2)微生物の単離と1次スクリーニング 上記(1)で集積培養を行った後、各培養液の100μLをISP培地(Difco277010)、R2A培地(Difco218263)またはYM培地(Difco271120:いずれもDifco製)の入ったシャーレに滴下し、培養した。これにより単一コロニーをそれぞれのスラントに単離した。 上記ISP培地には1L当り、酵母抽出物4g、モルト抽出物10g、デキストロース4gを添加し、pHを7.2とした。R2A培地には1L当り、酵母抽出物0.5g、プロテオースペプトン0.5g、カザミノ酸0.5g、デキストロース0.5g、可溶性スターチ0.5g、ピルビン酸ナトリウム0.3g、リン酸ニカリウム0.3g、硫酸マグネシウム0.05gを添加し、pHを7.2とした。YM培地には1L当り酵母抽出物3g、モルト抽出物3g、ペプトン5g、デキストロース10gを添加し、pHを6.2とした。 一方、微生物の単離と並行して、上記(1)の集積培養液を直接薄層クロマトグラフ(TLC)で展開させ分析し、基質のエストラジオール(以下、「E2」ということもある)を消費している培養液を選択した(1次スクリーニング)。薄層クロマトグラフは、以下の条件で実施した。<クロマトグラフ条件> 使用TLCプレート:MERCK社(No.13727) 展開溶媒:エタノール−ベンゼン(1:9) 展開溶媒液量:5mL 展開時間:約16分/10cm サンプル量:5μL 発色試薬:重クロム酸カリウム−硫酸(必要時) それぞれの集積培養液について、TLCで展開させた際のE2の分解活性と分離株数を表5および表6に示した。 なお、分解活性の強さは以下の基準で評価した。(評価) (内容) ○ : 強い分解活性あり(E2のスポットなし) △ : 比較的強い分解活性あり(E2のスポットが極薄く確認できる) 空欄 : 活性なし(E2のスポットあり) 1次スクリーニングの結果、FF、TMI、TMJ、TMM、TMN、MM、TOA、TOI、TON、TAA、TAI、TAJの集積培養液が17β−エストラジオールを分解していることが明らかとなり、これらの集積培養液から分離された合計111株を選択した。 (3)2次スクリーニング 上記(2)の1次スクリーニングで選択した微生物111株について、17β−エストラジオールを基質とする培養で、培養後の培地中の残存する17β−エストラジオールの量が少ない菌株を次の手順で選択した。 まず、微生物111株のそれぞれをYM平板培地に画線培養した。次いで、その白金耳1画を、17β−エストラジオールが100mg/Lとなるように加えた各培養液に植菌した。1日後、増殖した培養液全量を、C18固相カラム(Waters製)で固相抽出し、薄層クロマトグラフにスポティングした。そして、17β−エストラジオールが完全に分解されている23株を選択した。 (4)3次スクリーニング 上記(3)の2次スクリーニングで選択した微生物23株について、より強く迅速に17β−エストラジオールを分解する菌株を選定するとともに、他の天然女性ホルモン物質 (エストロン、エストリオール)の低減能力を次の手順で検討した。 まず、微生物23株をそれぞれYM平板培地に画線培養し、1次スクリーニングと同様の手法で試験管を用いて培養した。培養開始から0、3、5、8、24時間で培養を終了させ、それぞれを即時、固相抽出を行った。次に、各培養液の全量を、C18固相カラム(Waters製)に保持させ、その後、メタノールで溶出させた。溶出液を適当量分取し、サロゲート物質(17β−エストラジオール−d4)を添加した。更に、窒素気流により乾固させた後、BSTFA(N,O−ビストリメチルシリルトリフルオロアセトマイド)によりTMS(トリメチルシリル)化体を誘導し、再び乾固させ、n−ヘキサンに溶解させ、その検液をガスクロマトグラフィー質量分析計(GC−MS)で分析した。培養開始から各時間培養後の女性ホルモン物質の濃度を測定し、分解量を測定した。GC−MSの分析条件は、表4に示した。 本スクリーニングの結果から、5時間で17β−エストラジオールを65%以上まで分解する9株を選択した。その選択した微生物のうち、TAA−I3株、TAI−I5株、FF−Y2株による17β−エストラジオール、エストロン、エストリオールの分解による残存量の経時変化を図1〜図3に、全9株の5時間後における各女性ホルモン物質の残存率(%)を表8に示した。実 験 例 2 女性ホルモン物質分解能を有する微生物の同定: (1)16S rDNA配列を用いた菌種同定 3次スクリーニングで選択した女性ホルモン物質分解性微生物9株について、以下の手順に従い、16Sあるいは18S rDNA配列を用いた系統樹を作製し、菌種同定を行った。 (イ)微生物からのDNA抽出 上記の9株の純培養微生物のそれぞれから、塩化ベンジル法を用いてDNAを抽出した。すなわち、YM斜面寒天培地を用いて3日間、30℃で培養後、集菌した微生物と250μLのDNA抽出バッファー(100mmol/LのTris−HCl、40mmol/LのEDTA、pH9.0)、200μLのベンジルクロライド、50μLの10%SDSを加え、50℃で、激しく30分間振とうした。150μLの3mol/L 酢酸ナトリウムを加えた後、遠心し、上清を別のチューブに移し、イソプロパノール沈殿、70%エタノール洗浄を順に行い、風乾して最後に100μLのTEバッファー(10mmol/LのTris−HCl(pH8.0)、1mmol/LのEDTA)に溶解した。 (ロ)16Sあるいは18S rDNA増幅PCR反応 増幅プライマーは、16Sの場合、下記の8Fと15Rを、18Sの場合には下記のY1FとY1770Rを用いた。総量を50μLとし、10mmol/LのTris−HCl(pH8.3)、50mmol/LのKCl、1.5mmol/LのMgCl2、200μLのdNTP mixture、1UのTaqDNAポリメラーゼ(タカラ社製)50ngの鋳型DNAと増幅プライマーを0.4μmol/L含む反応液で、DNAサーマルサイクラーPTC200 (MJ Research社)により、94℃で20秒、55℃で15秒、72℃で180秒を25サイクル、PCR反応を行った。その後、増幅産物は、マイクロコン−PCR(Millipore社)を用いて精製した。 <増幅プライマー> 8F:(5’−AGAGTTTGATCMTGGCTCAG−3’) 15R:(5’−AAGGAGGTGATCCARCCGCA−3’) Y1F:(5’−TATCTGGTTGATCCTGCCAGT−3’) Y1770R:(5’−CTACGGAAACCTTGTTACGAC−3’) (ハ)16Sあるいは18S rDNA配列の決定 16Sあるいは18S rDNA塩基配列の解読は、ABI PRISMTM DyeTerminator Kit(Perkin Elmer社)を用いて、ABI PRISM 373Asequencer(ABI社)を使用して行った。16Sおよび18Sの解読に使用したプライマーを表9に示した。配列のアライメントには、AutoAssemblerTM (Perkin Elmer社)を用いた。 (ニ)16Sあるいは18S rDNA配列の系統解析 上記で得られた16Sあるいは18S rDNA配列とDDBJ等の遺伝子データベースより得られる近縁な細菌の16S rDNA塩基配列をもちいて、系統解析ソフト(Clustul X)を使用して分子進化系統解析を行った。 (ホ)同定結果 菌形態から酵母と思われた菌株に関しては18S rDNA配列を、それ以外の菌株は16S rDNA配列を用いて配列を決定した。決定した配列をデータベース上の配列と相同性検索したところ、分離した23菌株のうち4菌株がグラム陽性High G+Cグループに、1菌株がα−Proteobacteriaに、2菌株がβ−Proteobacteriaに、そして2菌株が酵母であることが判明した(表10)。そこで、それぞれのグループで系統樹を作製した(図4、図5、図6、図7および図8)。実 施 例 3 活性汚泥を用いた女性ホルモン物質の分解: 強い女性ホルモン物質分解活性を示し、安全性のレベルが比較的高いと考えられるゴルドニア・テラエ(Gordonia terrae)TAI−I5株について、実際の稼動下水処理場から生の活性汚泥を入手し、その汚泥中での活性を測定した。 (1)微生物固定化担体の選択 市販されている微生物固定化担体を入手し、それぞれの担体にTAI−I5株がどの程度固着されるかを検討した。固定化担体の材質は、ポリプロピレン、セラミック、アルミナ・シリカ、ポリビニルアルコール固定化活性炭を用いた。まず、TAI−I5株をジャーファーメンターによる大量培養で107個/mLに増殖させた後、1リットルあたり約150gの上記担体をそれぞれ投入し、24時間振とうさせて担体にTAI−I5株を固着させた。上記投入後24時間で担体を取り出し、ろ紙上で軽く水分を拭き取った後、担体の重量を測定した。次いで、その担体を生理食塩水に投入し、ボルテックスで十分に撹拌後、超音波で5分程度処理を行い、担体からTAI−I5株を溶出させた。この溶出物を生理食塩水で適宜希釈を行い、YG培地(表11)で作製した寒天培地(シャーレ)に塗布して28℃で培養し、担体重量当りの生菌数を測定した。その結果を表12に示した。 固着試験の結果、市販の担体製品の中で、ポリプロピレン製のものがTAI−I5株をよく固着することが明らかになった。 (2)微生物固定化担体による有効性試験 上記(1)と同様の方法で、TAI−I5株を固着させたポリプロピレン製担体を作製し、実際に茨城県で稼動している処理場の活性汚泥を用い、17b−エストラジオール分解活性を調べた。 ポリプロピレン製担体は121℃で10分間滅菌し、107個/mLに培養したTAI−I5株に1リットル当たり150gの割合で投入した。そして24時間振とう培養し、TAI−I5株をポリプロピレン製担体に固着させた。この微生物固定化担体を汚泥1リットル当たり50gとなるように調整して汚泥槽に投入した。 このポリプロピレン製担体を含む汚泥槽に17β−エストラジオールを0.1mg/Lとなるように濃度を調製して添加し、8時間後の17β−エストラジオール濃度を測定した。その結果を表13に示した。8時間後の測定濃度は、添加量のほぼ100%を分解していることが明らかになった。 本発明の女性ホルモン物質分解性微生物は、女性ホルモンを短時間で効率よく分解することができる。 従って、この微生物を利用すれば、生活排水、家畜養殖場からの排水等に含まれる女性ホルモン物質を短時間に効率よく分解することができる。図1は、17β−エストラジオール残存量の経時変化を示す図面である。図2は、エストロン残存量の経時変化を示す図面である。図3は、エストリオール残存量の経時変化を示す図面である。図4は、分離菌株と分離菌株に近縁なグラム陽性High G+Cグループに属する菌種の16S rDNA塩基配列(約1450塩基)に基づく、近隣結合法を用いた系統樹を示す図面である(数字は、100回の反復によるBootstrap値。左下のバーは5%の塩基置換距離を示す。)。図5は、分離菌株と分離菌株に近縁なProteobacteria α−subdivisionに属する菌種の16S rDNA塩基配列(約1450塩基)に基づく、近隣結合法を用いた系統樹を示す図面である(数字は、100回の反復によるBootstrap値。左下のバーは5%の塩基置換距離を示す。)。図6は、分離菌株と分離菌株に近縁なProteobacteria β−subdivisionに属する菌種の16S rDNA塩基配列(約1450塩基)に基づく、近隣結合法を用いた系統樹を示す図面である(数字は、100回の反復によるBootstrap値。左下のバーは5%の塩基置換距離を示す。)。図7は、分離菌株と分離菌株に近縁な酵母の18S rDNA塩基配列(約1750塩基)に基づく、近隣結合法を用いた系統樹を示す図面である(数字は、100回の反復によるBootstrap値。左下のバーは3%の塩基置換距離を示す。)。 17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール100mg/Lに、107〜108個/Lを作用させた場合に、5時間で17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオールの80%以上を分解する微生物であって、下記の微生物の1種または2種以上であることを特徴とする17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール分解性微生物。 シュードアミノバクター・サリシラトキシダンス TAA−I3株(FERM B P−10519) ゴルドニア・テラエ TAI−I5株(FERM BP−10521) ズーグレア・スピーシーズ TMJ−I1株(FERM BP−10523) クリプトコッカス・スピーシーズ TMN−Y2株(FERM BP−10525 ) トリコスポロン・ロウビエリ FF−Y2株(FERM BP−10526) 請求項1に記載の17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール分解性微生物を使用し、17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオールを生物学的に分解することを特徴とする17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオールの分解方法。 排水中または土壌中の17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオールを分解するものである請求項2記載の17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオールの分解方法。 固体支持体表面に付着生育させた17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール分解性微生物を使用するものである請求項2または3記載の17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオールの分解方法。 請求項1に記載の17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール分解性微生物を担持する手段と、当該微生物を排水または土壌と接触させる手段とを具備することを特徴とする17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール分解用装置。 請求項1に記載の17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール分解性微生物の17β−エストラジオール、エストロンまたはエストリオール分解のための使用。配列表


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