生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_相乗的な抗炎症医薬組成物および使用方法
出願番号:2007501034
年次:2012
IPC分類:A61K 36/18,A61K 31/122,A61P 19/02,A61P 25/04,A61P 29/00,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

バビシュ,ジョン・ジー トリップ,マシュー・エル ブランド,ジェフリー・エス JP 4860600 特許公報(B2) 20111111 2007501034 20050226 相乗的な抗炎症医薬組成物および使用方法 メタプロテオミクス, エルエルシー 503465937 小野 新次郎 100140109 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 野▲崎▼ 久子 100113309 バビシュ,ジョン・ジー トリップ,マシュー・エル ブランド,ジェフリー・エス US 10/789,814 20040227 20120125 A61K 36/18 20060101AFI20120105BHJP A61K 31/122 20060101ALI20120105BHJP A61P 19/02 20060101ALI20120105BHJP A61P 25/04 20060101ALI20120105BHJP A61P 29/00 20060101ALI20120105BHJP A61P 43/00 20060101ALI20120105BHJP JPA61K35/78 CA61K31/122A61P19/02A61P25/04A61P29/00A61P29/00 101A61P43/00 111 A61K31/00-31/80 A61K36/18-36/9068 CA/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) 国際公開第2003/068205(WO,A1) 国際公開第2003/000185(WO,A1) 米国特許出願公開第2003/0008021(US,A1) 9 US2005006216 20050226 WO2005084680 20050915 2007525525 20070906 26 20061214 佐々木 秀次 発明の背景 本発明は、ホップ(Humulus lupulus)抽出物またはその誘導体を含有する医薬組成物に関する。本発明はまた、ホップから単離されたまたは由来する画分を含有する組成物を、炎症を低減するために使用する方法に関する。 プロスタグランジン類(PGs、PG類)は、即時的細胞環境で種々の生理学的変化に影響を及ぼす、パラクリンメディエータおよびオートクリンメディエータの双方として機能する遍在性のホルモンである。PG類の多様な生理学的効果には、例えば慢性関節リウマチおよび変形性関節炎のような炎症反応、血圧のコントロール、血小板の凝集、陣痛の誘発、ならびに疼痛および発熱の悪化が含まれる。アスピリンおよび他の非ステロイド鎮痛薬がPG産生を阻害するという30年前の発見が、PG合成を薬剤開発の標的と結びつけた。PGA〜PGIまで命名された9つの異なる化学的クラスに、少なくとも16の異なるPG類が存在する。PG類は、エイコサノイドと呼ばれる20の炭素を含有する化合物のより大きなファミリーの一部である;それらにはプロスタサイクリン、トロンボキサンおよびロイコトリエンが含まれる。産生されるPG類の陣容は、特定の細胞のタイプに存在する下流の酵素の機構に依存して変わる。例えば内皮細胞は主としてPDI2を産生するが、一方血小板は主にTXA2を産生する。 アラキドン酸は、すべてのPG類の生合成の最初の基質として供される。シクロオキシゲナーゼ(プロスタグランジンエンドペルオキシドシンターゼ、EC 1.14.991, COX)は、アラキドン酸のプロスタグランジンH2 (PGH2)への代謝の律速段階を触媒し、PGH2はさらに様々なプロスタグランジン類、プロスタサイクリン、およびトロンボキサンA2に代謝される(図1を参照のこと)。1990年代初頭、COXは一般にCOX-1およびCOX-2と呼ばれる2つのアイソフォームにて存在することが確証された。COX-1およびCOX-2のタンパク質は、鳥類および哺乳動物以前に明確に分岐した別個の遺伝子に由来することが、次いで決定された。COX-1およびCOX-2の経路を介して生成されるPG類は同一の分子群であり、したがって同一の生物学的効果を有する。しかしCOX-1およびCOX-2は、ユニークなパターンおよび可変的な量のエイコサノイドを生成することができ、従って、これらのアイソザイムの活性の相対的差異が全く似ていない生物学的応答に至らせ得る。COX-1およびCOX-2の組織分布および調節における差異が、COX阻害剤の有益な効果ならびに副作用に関して重大であると現在考えられている。 一般に抱かれている概念(COXの教義(dogma))は、COX-1はほとんどの組織で構成性に発現されているのに対して、COX-2はin vitroの細胞において、そしてin vivoの炎症部位において、マイトジェン、サイトカイン、および細菌のリポ多糖(LPS)を含む炎症誘発性の刺激が引き金となる誘導性の酵素である、というものである。主に、そのような発現の差異に基づいて、COX-1はハウスキーピング酵素として特徴付けられ、そして生理学的機能(例えば胃粘膜の細胞保護作用、腎血流の調節、および血小板の凝集のコントロール)を維持することに関与すると考えられている。COX-2は、脳、腎臓および消化管において構成性の発現が見出されているが、主に炎症を介在すると考えられている。 プロスタグランジン(PG)は、ヒトの胃粘膜のホメオスタシスの維持に重要な役割を担っていると思われている。現在の教義は、COX-1は粘膜のホメオスタシスを維持するために正常な胃粘膜におけるPGの合成の責任を担っており、そしてCOX-2は、正常な胃粘膜により低レベルで発現されているが、エンドトキシンの暴露またはサイトカインの刺激後の潰瘍の治癒中には発現が誘導される、というものもある。COX-1およびCOX-2の双方が、正常な胃粘膜において重要な生理学的役割を有することが、現在明らかである。 COXによるPG類の産生を阻害する化合物は、疼痛および炎症のコントロールにおいて重要な薬剤となってきた。これらの薬剤は集合的に非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)として知られ、それらの主な適用は、変形性骨関節炎および慢性関節リウマチである。しかしNSAIDs、特にアスピリンの使用は、心血管疾患の予防にまで拡大している。過去10年間にわたり、COX-2の酵素活性の直接的な阻害剤である新規分子の開発には、これらの化合物は慢性的な使用に伴う胃への刺激がより低いであろうという推論と共に、かなりの努力が費やされてきた。 COX-2選択性(すなわち胃への低刺激性)を確認することに関連する主要な問題は、アッセイの方法論の違いが、得られる結果に著明な効果を及ぼす可能性があることである。表1に示すのは、COX-1およびCOX-2に対するNSAIDおよび天然化合物の相対的阻害活性を検査および比較するために開発された、多数のin vitro のアッセイの分類である。これらの検査システムは、3つの群:(1)動物の酵素、動物の細胞または細胞株を使用するシステム、(2)ヒトの細胞株、またはヒトの血小板および単球を使用するアッセイ、ならびに(3)NSAIDおよび栄養補助食品の抗炎症効果および副作用に関する標的細胞の代表であるヒトの細胞を使用する現在開発中のモデル、に分類することができる。一般に、ヒトの細胞株またはヒトの血小板および単球を使用するモデルが現在のスタンダードであり、確証された標的細胞モデルは公表されていない。胃への刺激に関する可能性を評価することのできるヒト胃細胞株が、決定的に必要とされている。 使用する酵素は、動物またはヒト由来のものであることができ、それらは天然またはリコンビナントであることができ、そしてそれらはミクロソーム調製物質または全細胞のアッセイのいずれかにおける精製酵素として使用することができる。システムのその他の可変部分には、アラキドン酸の供給源が含まれる。PG合成は、内因的に放出されるアラキドン酸、または外部から添加されるアラキドン酸から測定することができる。後者の場合、異なる濃度が異なる研究室で使用されている。 COX-2選択性に関する理想的なアッセイは、以下の特徴:(1) 発現に関する正常な生理学的コントロール下で天然のヒトの酵素を含有する全細胞を使用すべきである;(2) 細胞はまた、化合物の抗炎症効果および副作用に関する標的細胞であるべきである;(3) COX-2は構成性に発現されているよりむしろ、誘導されてそれにより炎症プロセスを刺激するべきである;そして(4) PG合成は、外部から添加されたアラキドン酸によるのではなく、内在する蓄積から放出されたアラキドン酸により測定されるべきである、を有するものであろう。 COX-2選択性に関する理想的なアッセイを開発した研究室はまだない。処方薬(Rx)および市販薬(OTC)に関して最も一般的に使用される全細胞システムは、William Harvey Institute (Warner et al., Proc Natl Acad Sci U S A 96: 7563-7568 (1999))により開発されたヒト全血アッセイである。今日まで、このアッセイのフォーマットが、他のいかなる方法より臨床との関連性を裏付けるより多くのデータを開発してきた。しかし正常な胃粘膜におけるCOX-2の構成性の発現の役割に関する新たな研究は、COX-2不在下におけるCOX-1の阻害モデルと血小板の使用との関連性を再検討することを必要としている。血小板の研究を胃への毒性の推断の基礎とすることは、もはや堅実な分子的基盤に基づくとは言えない。シクロオキシゲナーゼ阻害剤の標的組織への可能性のある毒性を確立するためにヒト胃粘膜細胞株を確証することは、安全で効果的な抗炎症薬の開発にとっての決定的な必要性を呈することでもある。 炎症の治療のための理想的な製剤は、胃粘膜細胞においてPGE2の合成を阻害することなく、COX-2の誘導および活性を阻害するだろう。しかし従来の非ステロイド抗炎症薬は、胃のPGE2の合成に影響を与えずにCOX-2を阻害するという特異性に欠けており、長期間使用した場合に消化器系の損傷を引き起こすリスクがある。実際、新規に開発された抗炎症薬、例えばロフェコキシブ(Vioxx(登録商標), Merk & Co., Inc.)およびセレコキシブ(Celebrex(登録商標), Pfizer, Inc.)でさえ、誘導される特発性出血および胃潰瘍の治癒の遅れという形で有害な胃への毒性をきたす。 NSAIDの毒性 NSAIDsは、胃の出血および腎臓の損傷を含む深刻な健康問題を引き起こすことが知られている。米国において、1300万人を上回るNSAIDsの常用者がおり、毎年7000万のNSAIDの処方が書かれ、そして年間300億錠の市販のNSAIDs錠剤が売られている。NSAIDに誘発される疾患が、1年当たり103,000件の入院、および年間推定16,500人の死亡を引き起こす。すべての慢性的NSAID使用者の20%が、消化性潰瘍を発症するだろう。NSAID使用者は、上部消化器の出血、穿孔、または双方への、より高いリスク−3倍〜4倍高い−を有する。重症のNSAID誘発性の合併症で入院した患者の81%は、消化器の症候の既往はなかった。60歳以上の人は、NSAID使用に伴う合併症を経験する、有意に高い可能性を有する。さらに米国における薬剤の副作用全体の21%が、NSAIDの使用による。 新しい選択的COX-2阻害剤、例えばセレコキシブおよびロフェコキシブは、ほとんどのNSAIDsに対するより安全な代替物となることが示された。しかし最近の試験は、選択的COX-2阻害剤が消化器への毒性を完全には排除しないことを指摘している。事実、消化管の炎症または潰瘍形成の場合、処方のCOX-2阻害剤は潰瘍の治癒を遅らせ得る。 それ故、胃粘膜におけるPGE2の合成にほとんどまたは全く影響を及ぼさずに、COX-2によるプロスタグランジンの合成を特異的に阻害または予防するような化合物の天然製剤を同定することは有用であろう。そのような製剤は、関節組織の健康を保持するため、関節炎またはその他の炎症状態を治療するために有用であろう。“特異的または選択的COX-2阻害剤”という用語は、COX-1を上回ってCOX-2を選択的に阻害する化合物または化合物の混合物を包含するよう造られた。しかしその含意が、そのような計算された選択性が胃へのより低い刺激をもたらすだろうということである一方で、検査材料が胃の細胞で評価されなければ、“選択的COX-2阻害剤”という用語が消化器細胞への安全性の保証を与えることはない。標的組織、炎症細胞および胃粘膜細胞における化合物の作用を検査することでのみ、胃への刺激に対する潜在能力の低いそれら薬剤を同定するだろう。 したがって、炎症細胞においてCOX-2酵素活性の発現を特異的に阻害または予防し、一方胃の粘液細胞においてはPGE2合成にほとんどまたは全く影響を及ぼさず、その結果消化器の不調を伴うことなくこれらの製剤を使用することができるような組成物を同定することは有用であろう。さらにそのような製剤は、胃に予め存在している潰瘍性の状態の治癒も許容することができるはずである。本発明はこの必要性に応え、関連する利点も同様に提供する。 発明の概要 本発明は、ホップから単離された還元イソアルファ酸(RIAA)およびイソアルファ酸(IAA)を包含する組成物を提供し、ここで、RIAAおよびIAAは約3:1〜約1:10の比率である。本発明はまた、ホップから単離された還元イソアルファ酸(RIAA)およびイソアルファ酸(IAA)を包含する組成物を投与することによって炎症を低減する方法を提供し、ここで、RIAAおよびIAAは約3:1〜約1:10の比率である。 発明の詳細な説明 本発明は、炎症を低減するための組成物および方法を提供する。特に本発明は、プロスタグランジンE2 (PGE2)を相乗的に阻害する、ホップ(Humulus lupulus)から単離されたまたは由来する成分を提供する。そのような組成物は、炎症を低減する方法に用いることができる。本発明は、患者の炎症を予防的および/または治療的に処置する上で使用するための、ホップ(Humulus lupulus)抽出物またはその誘導体を提供する。例えば、本発明は、炎症を相乗的に阻害する、ホップから単離されたまたは由来する1以上の画分の組み合わせを提供する。特定の実施態様において、本発明は、PGE2を相乗的に阻害する、ホップからのイソアルファ酸および還元イソアルファ酸の組み合わせを投与することによって、炎症を低減する方法を提供する。 ホップ誘導体の急性の毒性は非常に低い。したがって所望であれば、ホップによる毒性の影響を受けずに、比較的高用量のホップ誘導体を使用することができる。毒性のある用量は、本発明に従って意図される治療用量よりかなり高い。 本明細書において使用する場合“栄養補助食品”という用語は、生理機能における構造的または機能的変化に影響を与えるために消費される組成物をいう。“治療組成物”という用語は、疾患を治療もしくは予防するため、または疾患に伴う兆候もしくは症候を寛解させるために、投与される化合物をいう。 本明細書において使用する場合“有効量”という用語は、選択された結果を達成するために必要な量を意味する。そのような量は、過度の実験なしに当業者により容易に決定することができる。 本明細書において使用する場合“実質的な”という用語は、大体は特定されているとおりであるが完全にではないことを意味する。 本明細書において使用する場合“COX阻害剤”という用語は、COX-2酵素の活性もしくは発現を阻害することのできる、または重症の炎症性応答の、疼痛および腫脹を含む重症度を阻害または低減することのできる化合物の組成物をいう。 本明細書において使用する場合、“誘導体”という用語または“由来する”ものは、別の物質と構造的に関連する化学的物質、および該物質から理論的に得られうる化学的物質、すなわち別の物質から作製することのできる物質をいう。誘導体は、化学反応を介して得られる化合物を含むことができる。化合物の誘導体を作製する方法は、当業者に周知である。 本明細書において使用する場合“炎症細胞”という用語は、炎症性のシグナル(例えばインターロイキン、腫瘍壊死因子、ブラジキニン、ヒスタミンまたは細菌由来成分)に応答してのプロスタグランジンの合成に関与する免疫系の細胞のメンバー(例えばBリンパ球およびTリンパ球、好中球またはマクロファージ)をいう。 本明細書において使用する場合“標的細胞”という用語は、そこにおけるPGE2またはその他のプロスタグランジンの合成の阻害が望まれる細胞集団、例えば炎症細胞または腫瘍細胞をいう。あるいは“非標的細胞”は、そこにおけるPGE2またはその他のプロスタグランジンの合成の阻害が望まれない細胞集団、例えば胃粘膜細胞、神経細胞、または腎細胞をいう。 本明細書において使用する場合“ホップ抽出物”という用語は、(1)ホップ植物の生成物を溶媒に暴露する、(2)該ホップ植物の生成物から該溶媒を分離する、(3)該溶媒を除去する、ことから得られる固体材料をいう。 本明細書において使用する場合“溶媒”という用語は、ホップ植物の生成物から固体材料を抽出するために必要な特徴を保有する水性または有機性の性質の液体をいう。溶媒の例は、水、水蒸気、過熱した水、メタノール、エタノール、ヘキサン、クロロホルム、塩化メチレン、液体もしくは超臨界のCO2、液体N2、またはそのような材料の組み合わせを含むであろうがこれに限定されない。 本明細書において使用する場合“CO2抽出物”という用語は、ホップ植物の生成物を液体または超臨界のCO2調製液に暴露させた後、CO2を除去することから得られる固体の材料をいう。 本明細書において使用する場合“ホップ粕(spent hops)”という用語は、ホップの抽出物からの固体および親水性の残渣をいう。 本明細書において使用する場合“アルファ酸”という用語は、集合的にフムロンとして知られている化合物をいい、ホップ植物の生成物から単離することができ、とりわけ、フムロン、コフムロン、アドフムロン、フルポン(hulupone)、およびイソプレフムロン(isoprehumulone)を含む。 本明細書において使用する場合“イソアルファ酸”という用語は、ホップ植物の生成物から単離し、これをその後異性体化した化合物をいう。アルファ酸の異性体化は熱的に(例えば沸騰)起こすことができる。イソアルファ酸の例は、イソフムロン、イソコフムロン、およびイソアドフムロンを含むがこれに限定されない。 本明細書において使用する場合“還元イソアルファ酸”という用語は、ホップ植物の生成物から単離し、これをその後異性体化および還元したアルファ酸をいい、シス型およびトランス型を含む。還元イソアルファ酸(RIAA)の例は、ジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロン、およびジヒドロ-アドフムロンを含むがこれに限定されない。 本明細書において使用する場合“テトラ-ヒドロイソアルファ酸”という用語は、還元イソアルファ酸のある種のクラスをいう。テトラ-ヒドロイソアルファ酸(THIAA)の例は、テトラ-ヒドロ-イソフムロン、テトラ-ヒドロ-イソコフムロン、およびテトラ-ヒドロ-アドフムロンを含むがこれに限定されない。 本明細書において使用する場合“ヘキサ-ヒドロイソアルファ酸”という用語は、還元イソアルファ酸のある種のクラスをいう。ヘキサ-ヒドロイソアルファ酸(HHIAA)の例は、ヘキサ-ヒドロ-イソフムロン、ヘキサ-ヒドロ-イソコフムロン、およびヘキサ-ヒドロ-アドフムロンを含むがこれに限定されない。 本明細書において使用する場合“ベータ酸画分”という用語は、集合的にルプロンとして知られている化合物をいい、とりわけルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロンおよびヘキサヒドロコルプロンを含む。 本明細書において使用する場合“必須オイル画分(essential oil fraction)”という用語は、とりわけミルセン、フムレン、ベータ-カリオフィレン、ウンデカン-2-オン、および2-メチル-ブト-3-エン-オールを含む成分の、複合的(complex)混合物をいう。 本明細書において使用する場合、化合物の“コンジュゲート”は、単糖類または二糖類、アミノ酸、スルフェート、スクシネート、アセテート、およびグルタチオンから成る群から選択されるメンバーと、共有結合またはコンジュゲートした化合物を意味する。単糖類または二糖類は、グルコース、マンノース、リボース、ガラクトース、ラムノース、アラビノース、マルトース、およびフルクトースから成る群より選択されるメンバーとすることができる。 本発明は、炎症を低減するためにホップ抽出物を使用することに関する。1つの形または別の形でのホップの抽出は、水およびエタノール中への抽出が最初に試みられた19世紀初頭まで150年以上さかのぼる。今日もなお、エタノール抽出物はヨーロッパで役立っているが、明らかに主要な抽出物は、有機溶媒抽出物(例えばヘキサン)およびCO2抽出物(超臨界および液体)である。CO2(典型的には60バール圧で50〜10℃)は液体状態にあり、相対的にマイルドな非極性溶媒で、ホップのソフトレジンおよびオイルに対して非常に特異的である。臨界点を超えると、典型的には300バール圧および60℃で、CO2は気体および液体の双方の特性を有し、はるかに強い溶媒である。多様な抽出物の組成を表2に比較する。 最もシンプルな方法ではホップの抽出は、ホップを製粉、ペレット化、そして再度製粉して、リュープリンを分散させ、充填カラムに溶媒を通してレジン成分を集め、最後に溶媒を除去して全抽出物または“純粋な”レジン抽出物を得ることを伴う。 主な有機抽出溶媒は強い溶媒であり、事実上すべてのリュープリン成分に加え、それら溶媒は、植物色素、クチクラワックス、水および水溶性の材料も抽出する。 超臨界CO2は有機溶媒より選択的であり、より少量のタンニンおよびワックス、そしてより少量の水、したがって水溶性成分を抽出する。この溶媒はクロロフィルのような一部の植物色素を確かに抽出するが、有機溶媒の場合よりむしろ少ない。液体CO2は、ホップ用に商業的に使用される最も選択的な溶媒であり、したがって最も純粋な全レジンおよびオイルの抽出物を生成する。この溶媒は、ハードレジンまたはタンニンをほとんど抽出せず、植物ワックスもずっと低レベルで、植物色素は抽出せず、そして水および水溶性の材料もより少量しか抽出しない。 この選択性およびよりマイルドな溶媒の特性の結果として、ホップのユニット重量当たりの液体CO2抽出物の絶対収率は、他の記載した溶媒を使用する場合より低い。加えて液体CO2を用いてのアルファ酸の収率(89-93%)は、超臨界CO2の場合(91-94%)または有機溶媒の場合(93-96%)より低い。抽出後、溶媒を除去する過程があり、有機溶媒に関するこの過程は揮発を引き起こすための加熱を伴う。それにもかかわらず、微量の溶媒が抽出物中にどうしても残る。しかしながら、CO2の除去は、CO2を揮発させるために単に圧を抜くことを伴うだけである。 図3に示したように、ホップのCO2抽出物は、ホップオイル、ベータ酸、およびアルファ酸を含む成分に分画することができる。ホップオイルは、フムレン、ベータ-カリオフィレン、ミクレン(mycrene)、ファルネセン、ガンマ-カジネン、アルファ-セリネン、およびアルファ-カジネンを含むがこれに限定されない。ベータ酸は、集合的にルプロンとして知られている、ルプロン、コルプロン、アドルプロン、テトラヒドロイソフムロン、およびヘキサヒドロコルプロンを含むがこれに限定されない。ベータ酸は異性体化および還元することができる。ベータ酸を還元すると、テトラ-ベータ酸を得られる。アルファ酸は、フムロン、コフムロン、アドフムロン、フルポン、およびイソプレフムロンを含むがこれに限定されない。アルファ酸は異性体化して、イソアルファ酸を得ることができる。イソ-アルファ酸は還元して、還元-イソアルファ酸、テトラ-ヒドロイソアルファ酸、およびヘキサ-ヒドロイソアルファ酸を得ることができる。 骨再吸収の阻害剤としてのホップ抽出物由来のフムロンの同定が、Tobe et al.(Biosci. Biotech. Biochem 61(1): 158-159 (1997))において報告された。同じグループによるその後の研究は、フムロンの作用機序をMC3T3,E1細胞のTNF-α刺激後のCOX-2遺伝子の転写の阻害として特徴付けた(Yamamoto, FEBS Letters 465: 103-106 (2000))。フムロン(humulone、humulonとも表す)の作用はグルココルチコイドのそれと類似するが、フムロンはグルココルチコイド受容体を通しては機能しないと結論された。これらの結果は、フムロンがMC3T3(骨芽細胞)におけるPGE2合成を遺伝子レベルで阻害することを確立するものであるが、当業者はこれらの結果が免疫炎症細胞またはその他の細胞株においては必ずしも起こらないと想定するだろう。本明細書において開示するように、ホップ化合物および誘導体は、標的細胞および非標的細胞において高レベルの組織選択性を示す。さらに、本発明に記載するホップ誘導体は、アルファ酸フムロンとは構造的に異なる。 本発明は、ホップ(Humulus lupulus)から単離されたまたは由来する少なくとも1つの画分を含有する組成物を提供する。ホップから単離されたまたは由来する画分の例は、アルファ酸、イソアルファ酸、還元イソアルファ酸、テトラ-ヒドロイソアルファ酸、ヘキサ-ヒドロイソアルファ酸、ベータ酸、およびホップ粕である。ホップから単離されたまたは由来する画分は、コフムロン、アドフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、ジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロン、ジヒドロ-アドフムロン、テトラ-ヒドロ-イソフムロン、テトラヒドロ-イソコフムロン、テトラヒドロ-アドフムロン、ヘキサヒドロ-イソフムロン、ヘキサヒドロ-イソコフムロン、およびヘキサヒドロ-アドフムロンを含むがこれに限定されない。好ましい化合物はまた、例えばハロゲン、エーテル、およびエステル等の置換基を有することができる。 ホップから単離されたまたは由来する画分の化合物は、以下の上属(supragenus)により表すことができる:式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORから成る群より選択され、式中Rはアルキルである;式中R”は、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、およびCH(CH3)CH2CH3から成る群より選択される;そして式中R、T、X、およびZは独立して、H、F、Cl、Br、I、およびπ軌道から成る群より選択されるが、ただしR、T、X、またはZの1つがπ軌道である場合には、隣接するR、T、X、またはZもまたπ軌道であり、それにより二重結合を形成する。 もう1つの態様において、ホップから単離されたまたは由来する画分の化合物は、以下の属(genus)により表すことができる:式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORから成る群より選択され、式中Rはアルキルである;そして式中R”は、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、およびCH(CH3)CH2CH3から成る群より選択される。具体例としての属Aの構造は、イソアルファ酸(例えばイソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、等)、および還元イソアルファ酸(例えばジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロン、ジヒドロアドフムロン)、およびエーテルもしくはエステルのコンジュゲートまたは二重結合のハロゲン化修飾を含む。 なおもう1つの態様において、ホップから単離されたまたは由来する画分の化合物は、以下の属により表すことができる:式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORから成る群より選択され、式中Rはアルキルである;そして式中R”は、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、およびCH(CH3)CH2CH3から成る群より選択される。具体例としての属Bの構造は、テトラ-ヒドロイソアルファ酸(例えばテトラ-ヒドロ-イソフムロン、テトラ-ヒドロ-イソコフムロン、テトラ-ヒドロ-アドフムロン、等)、およびヘキサ-ヒドロイソアルファ酸(例えばヘキサ-ヒドロ-イソフムロン、ヘキサ-ヒドロ-イソコフムロン、およびヘキサ-ヒドロ-アドフムロン)、およびエーテルまたはエステルのコンジュゲートを含む。 図3に示すように、ホップから単離されたまたは由来する成分の化合物の例は、フムロン、コフムロン、アドフムロン、イソフムロン、イソコフムロン、イソアドフムロン、ジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロン、ジヒドロ-アドフムロン、テトラヒドロ-イソフムロン、テトラヒドロ-イソコフムロン、テトラヒドロ-アドフムロン、ヘキサヒドロ-イソフムロン、ヘキサヒドロ-イソコフムロン、およびヘキサヒドロ-アドフムロンを含むがこれに限定されない。これらの化合物は、上の式で示したような置換基を有することができる。 ホップ誘導体は、植物中に天然に生ずる公知の化合物であり、食品および飲料中に見出せる。これら化合物は、当該技術分野において公知の抽出法および加工法のいずれかにより調製し得る。ホップ誘導体は、あらゆる公知の様式で植物材料から直接調製することができる。ホップ誘導体は、当該技術分野における公知の方法、例えば水溶性有機溶媒(例えばアルコール水溶液)からの再結晶により精製し得る。ホップ誘導体の合成による修飾は、医薬技術分野において公知の薬剤の修飾の方法に従って調製し得る。 また、本発明に従って、ホップ誘導体の有効量を、所望により医薬的希釈剤またはアジュバントと組み合わせて包含する医薬組成物が提供される。 投与 本発明に従ってさらに、公知の製剤技術によって、例えば除放性錠剤により、消化管の所望の部位で、例えば胃および/または十二指腸のいずれかにおいて活性成分を放出するため、ホップ誘導体の有効量を包含する経口投与剤形の医薬製剤が提供される。本発明に従ってなおさらに、ホップ誘導体の有効な耐薬量を包含する医薬組成物を提供する。その低い毒性のため、所望される特定の効果に依存して、高投与量のホップ誘導体を有用な結果を得るために使用することができる。 ホップ誘導体は特に経口投与に適する。したがってホップ誘導体は経口使用として、すなわち:錠剤、コーティング錠剤、糖衣錠、カプセル、粉末、顆粒、および水溶性錠剤、ならびに液体の剤形、例えば懸濁液、分散液(dispersions)、または溶液として、所望により付加的な活性成分と合わせて製剤化することができる。 本発明は、本明細書において記載したような医薬組成物を調製する方法、およびそのように調製した場合の組成物にも拡大する。当該組成物はホップ誘導体を医薬的に受容可能な担体または補助剤と共に、そして所望により鎮痛剤および/または抗炎症剤、ならびに/または別の化合物(1つまたは複数)と共に混合して包含する方法により製造してよい。医薬組成物を調製する方法は当業者に周知である(例えばGenarro, ed., Remington’s Pharmaceutical Sciences, 18th ed., Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania (1990)を参照のこと)。 選択される投与量レベルは、特定の組成物の活性、投与経路、治療または予防する状態の重症度、ならびに治療する患者の状態およびこれまでの病歴に依存することになる。しかし所望される治療効果を達成するために必要とされるより低いレベルで組成物の用量を開始すること、そして所望される効果を達成するまで投与量を漸増することは、当該分野の技術の範疇である。所望であれば有効な1日の用量を、投与の目的のため複数回の用量に、例えば1日当たり2〜4回の個別の用量に分割してもよい。しかしあらゆる特定の患者のための具体的な用量レベルは、体重、全身の健康状態、食事、投与時間および投与経路、他の組成物との組み合わせ、ならびに治療または予防する特定の状態の重症度に依存することになることは、理解されるだろう。 本発明は、ホップ画分、ホップ化合物、またはホップ誘導体の有効量を、本明細書中で開示するように、単独でまたは付加的な活性成分と組み合わせて、送達することを含む方法を提供する。例えば本発明の組成物の1日の用量を、1日当たり約0.5〜約10,000mgのホップ画分、例えばアルファ酸、イソアルファ酸、還元イソアルファ酸、テトラ-ヒドロイソアルファ酸、ヘキサ-ヒドロイソアルファ酸、ベータ酸、ホップ粕、またはその他のホップ画分を送達するように製剤化することができる。特に組成物の有効な1日の用量は、1日当たり約50〜約7500mgのホップ画分、例えばアルファ酸、イソアルファ酸、還元イソアルファ酸、テトラ-ヒドロイソアルファ酸、ヘキサ-ヒドロイソアルファ酸、ベータ酸、ホップ粕、またはその他のホップ画分を送達するように製剤化することができる。例えば組成物の有効な1日の用量は、1日当たり約100mg〜約5000mg、約200mg〜約3000mg、約300mg〜約2000mg、約500mg〜約1000mgのホップ画分を送達するように製剤化することができる。1つの態様において、有効な1日の用量を1日に1回または2回投与する。ある種の態様は、1日当たり約0.5mg〜約500mgのイソアルファ酸または還元イソアルファ酸、例えば約50mg〜約300mg、または約100mg〜約200mgのイソアルファ酸または還元イソアルファ酸を包含する組成物を提供する。もう1つの態様において本発明は、1日当たり約10mg〜約3000mgの還元イソアルファ酸、テトラ-ヒドロイソアルファ酸、またはヘキサ-ヒドロイソアルファ酸、例えば約50mg〜約2000mg、約100mg〜約1000mg、約200mg〜約750mg、約250mg〜約500mgの還元イソアルファ酸、テトラ-ヒドロイソアルファ酸、またはヘキサ-ヒドロイソアルファ酸を包含する組成物を提供する。なおもう1つのある種の態様は、1日当たり約50mg〜約7500mgのホップ粕、例えば1日当たり約100mg〜約6000mg、約200mg〜約5000mg、約300mg〜約3000mg、約500mg〜約2000mg、または1000約mg〜約1500mgのホップ粕を包含する組成物を提供する。 局所投与に関する態様の組成物は、約0.001〜約10重量パーセント、例えば約0.01〜約5重量パーセント、または約0.1〜約1重量パーセントのホップ誘導体を含有することができる。そのような組成物は、約0.0001〜約10μM、例えば約0.001〜約5μM、約0.01〜約1μM、または約0.1〜約0.5μMの範囲のホップから単離されたまたは由来する画分またはそのコンジュゲートの血清濃度を得ることができる。 ホップから単離されたまたは由来する1つ以上の画分を組み合わせる本発明の組成物において、1つ以上の画分の比率は、所望の効果を最適化するように変えることができる。例えば本明細書に開示するように、RIAAおよびIAAの組み合わせによるPGE2阻害の相乗作用が、RAW 264.7マクロファージ細胞において観察された(実施例6を参照のこと)。RIAAおよびIAA間の相乗作用は、3:1、3:2、1:1および1:10の組み合わせでそれぞれ観察された。特に有効な相乗作用は、RIAA:IAA比率1:1および1:10で観察された。本発明は、PGE2を相乗的に阻害する、ホップから単離されたまたは由来する1つ以上の画分を含有する組成物を提供する。1つの態様において、本発明は、PGE2を相乗的に阻害するために有効な量および比率での、RIAAおよびIAAの組み合わせを提供する。RIAAおよびIAAを、PGE2を相乗的に阻害するための有効な比率で、例えばRIAA:IAA比率、約3:1、約3:2、または約1:1〜約1:10で、特に約1:1、約1:2、約1:3、約1:4、約1:5、約1:6、約1:7、約1:8、約1:9、または約1:10で組み合わせる。 製剤 本発明の組成物は、栄養補助食品または治療用組成物という形で投与することができる。当該組成物は、経口、局所、経皮、経粘膜、非経口等により、適当な投与ユニットで、所望されるように投与してよい。食品としての適用のための組成物は、様々な添加物、例えば中間代謝物のその他の天然成分、ビタミンおよびミネラル、ならびに例えば錠剤およびカプセルの製造における標準的な賦形剤であるタルクおよびステアリン酸マグネシウムのような不活性成分を含んでよい。例えば1つの態様は、本発明の組成物の活性成分を、グルコサミンまたはコンドロイチン硫酸と組み合わせて包含する。 本明細書において使用する場合“医薬的に受容可能な担体”は、個体への投与に適する溶媒、分散媒体、コーティング剤、等張剤および吸収遅延剤、甘味剤等を含む。これらの医薬的に受容可能な担体は、希釈剤、結合剤および接着剤、滑剤、崩壊剤、着色剤、膨張剤、芳香剤、甘味剤、ならびに種々の材料、例えば特定の治療組成物を調製するために必要であると思われるバッファーおよび吸収剤を含むがこれに限定されない広範囲な材料から調製してよい。医薬的に活性な物質のためのそのような媒体および賦形剤の使用は、当該技術分野において周知である。製剤が活性成分と矛盾のない構成要素を含有することは理解されよう。1つの態様において、タルクおよびステアリン酸マグネシウムを製剤中に含む。食品用のバー(dietary bar)または機能食品としての本発明の組成物の製造に影響のあることが知られているその他の成分は、芳香剤、糖、アミノ糖、タンパク質およびまたは修飾スターチ、ならびに油脂およびオイルを含むことができる。 本発明の態様の栄養補助食品、ローション、または治療用組成物は、当業者に公知のあらゆる様式で製剤化することができる。1つの態様において当該組成物は、当業者に利用可能な技術を用いてカプセルまたは錠剤に製剤化する。カプセルまたは錠剤の剤形において、成体のヒトまたは動物に対して推奨される1日の用量を、1〜6個のカプセルまたは錠剤中に含有させることができる。当該組成物はまた、他の使い勝手のよい剤形、例えば注入可能な溶液または懸濁液、スプレー用の溶液または懸濁液、ローション、ガム、ロゼンジ、食品またはスナックの品目に製剤化することができる。食品、スナック、ガムまたはロゼンジの品目は、甘味剤、芳香剤、オイル、スターチ、タンパク質、果物または果物の抽出物、野菜または野菜の抽出物、穀物、動物性脂肪またはタンパク質を含む、あらゆる摂取可能な成分を含むことができる。それ故本発明の組成物は、シリアル、スナック品目、例えばチップス、バー、ガムドロップ、チューイングキャンディー、またはゆっくり溶けるロゼンジ中に製剤化することができる。本発明の組成物は、急性および慢性双方の炎症に基づく疾患の治療に使用することができる。本発明の組成物の特に有用な製剤は、炎症応答を低減し、それにより患部組織の治癒を促進する、またはさらなる損傷を予防することができる。医薬的に受容可能な担体をまた、本発明の組成物および製剤中に使用することができる。 本発明の組成物は、例えば対象における炎症の治療のため、および炎症に伴う他の障害の治療のため、例えば疼痛および頭痛の治療における鎮痛薬、または発熱の治療のための解熱剤として使用することができる。本発明の組成物は、慢性関節リウマチ、脊椎関節症(spodyloathopathies)、痛風性関節炎、変形性関節炎、全身性紅斑性狼瘡、および若年性関節炎を含むがこれに限定されない関節炎を治療するために使用することができる。 1つの態様において、本発明は、ホップから単離された還元イソアルファ酸(RIAA)およびイソアルファ酸(IAA)を包含する組成物を提供し、ここで、RIAAおよびIAAは約3:1〜約1:10の比率である。そのような組成物において、該イソアルファ酸は、イソフムロン、イソコフムロンおよびイソアドフムロンから選択することができる。該還元イソアルファ酸は、ジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロンおよびジヒドロ-アドフムロンから選択することができる。 本発明はまた、ホップから単離された還元イソアルファ酸(RIAA)およびイソアルファ酸(IAA)を包含する組成物を投与することによって、炎症を低減する方法を提供し、ここで、RIAAおよびIAAは約3:1〜約1:10の比率である。該イソアルファ酸は、イソフムロン、イソコフムロンおよびイソアドフムロンから選択することができる。該還元イソアルファ酸は、ジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロンおよびジヒドロ-アドフムロンから選択することができる。 本発明はさらに、少なくとも2つの、以下の式を有する属Aの化合物: [式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、OR、およびOCORから成る群より選択され、式中Rはアルキルであり;そして式中R”は、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、およびCH(CH3)CH2CH3から成る群より選択される]を投与することによって炎症を低減する方法であって、ここで該2つの化合物が約10:1〜約1:10の比率である、前記方法を提供する。 ヒトの治療に有用である他に、本発明の態様はまた、ウマ、イヌ、ネコ、鳥類、ヒツジ、ブタ、等を含むその他の動物の治療のために有用である。炎症の治療用の製剤は、胃粘膜のPGE2の合成にほとんど影響を及ぼさずにCOX-2の誘導および活性を阻害することができる。歴史的には炎症の治療用として使用されるNSAIDsは、胃粘膜細胞のPGE2合成に影響を与えずにCOX-2を阻害する特異性に欠けていた。したがってこれらの薬剤は、長期間使用した場合に消化器系を刺激し損傷を与えた。そのような禁忌を本発明は伴わず、したがって限定された胃疾患を伴うかまたは胃疾患を伴うことなく長期間使用してよい。投与は、当業者に利用可能なあらゆる方法、例えば経口、局所、経皮、経粘膜、または非経口の経路によることができる。 本発明はまた、ホップから単離されたイソアルファ酸および還元イソアルファ酸を投与することにより、炎症を低減する記組み合わせは、炎症細胞モデルにおいて、PGE2合成を相乗的に阻害する(実施例6)。 本明細書において使用する場合“炎症を低減すること”は、炎症応答を低下、寛解、または阻害することをいう。当業者は、炎症応答に伴う徴候または症候の低減を容易に認識できるだろう。炎症を低減することとは、炎症に伴う徴候または症候の重症度を低減させること、並びに結果として炎症に伴う症候がほとんどまたは全く存在しないよう炎症を阻害すること、ということができる。 本発明において開示するように、様々なアッセイを、ホップから単離されたまたは由来する1つ以上の画分の有効性を示すために利用することができる(実施例を参照のこと)。ホップから単離されたまたは由来する画分は、本明細書において開示するように、本明細書において例示する方法を含む当業者に周知の様々なアッセイを用いて、炎症の低減における活性について評価することができることを、当業者は理解するだろう。 以下の実施例は、本発明を説明することを意図しており、その範囲を限定する意図はない。 実施例1 刺激および無刺激のネズミマクロファージにおける、ホップ(Humulus lupulus)化合物および誘導体によるPGE2合成の阻害 概要-本実施例は、RAW 264.7ネズミマクロファージモデルにおいて、ホップ画分および誘導体がCOX-1のPGE2合成を上回って優先的にCOX-2のPGE2合成を阻害することを例証する。 (化学薬品および試薬)-細菌のリポ多糖(LPS; B E. coli 055: B5)はSigma (St. Louis, MO)より入手した。ホップ画分である(1)アルファホップ(1%アルファ酸;AA)、(2)アロマホップ OE (10%ベータ酸および2%異性体化アルファ酸)、(3)イソホップ(異性体化アルファ酸;IAA))、(4)ベータ酸溶液(ベータ酸;BA)、(5)ヘキサホップゴールド(ヘキサヒドロ異性体化アルファ酸;HHIAA)、(6)レジホップ(redihop)(還元異性体化-アルファ酸;RIAA)、(7)テトラホップ(テトラヒドロ-イソ-アルファ酸;THIAA)および(8)ホップ粕は、Betatech Hops Products (Washington, D.C., U.S.A.)より入手した。ホップ粕は等容量の無水エタノールで2回抽出した。エタノールは、濃厚な褐色の残渣しか残らなくなるまで40℃で加熱することにより除去した。この残渣をRAW 264.7細胞における検査用のDMSOに溶解させた。プロスタグランジンE2 EIAキットモノクローナルは、Cayman Chemical(Ann Arbor, MI)より購入した。抗COX-1および抗COX-2のウサギポリクローナル抗血清は、Upstate Biotechnology (Lake Placid, NY)より入手した;ロバ抗ヤギIgG-HRPは、Santa Cruz Biotchnology (Santa Cruz、CA)より調達した。加熱不活性化したウシ胎児血清(FBS-HI Cat. #35-011CV)、およびダルベッコ変法イーグル培地 (DMEM Cat# 10-013CV)はMediatech (Herndon, VA)より購入した。他に記述してなければ、すべての標準的な試薬はSigma (St. Louis, MO)より入手し、市販により入手可能な最も高純度のものとした。 本実施例に使用する装置は以下を含む:OHAS Model #E01140分析天秤、Forma Model #F1214安全キャビネット(biosafety cabinet)(Marietta, Ohio)、0.1〜100μLを送達するための多様なピペット(VWR, Rochester, NY)、細胞の手動カウンター(VWR, Catalog #23609-102, Rochester, NY)、Forma Model #F3210 CO2インキュベーター(Marietta, Ohio)、血球計(Hausser Model #1492, Horsham, PA)、Leica Model #DM IL 倒立顕微鏡(Wetzlar, Germany)、PURELAB Plus Water Polishing System (水洗浄システム)(U.S. Filter, Lowell, MA)、4℃冷蔵庫(Forma Model #F3775, Marietta, Ohio)、ボルテックス攪拌器(VWR Catalog # 33994-306, Rochester, NY)、および37℃水浴(Shel Lab Model #1203, Cornelius, OR)。 (細胞培養)-American Type Culture Collection (Catalog #TIB-71, Manassas, VA)より入手したRAW 264.7細胞は、ダルベッコ変法イーグル培地 (DMEM, Mediatech , Herndon, VA)中で増殖させ、対数増殖期に維持した。DMEM増殖培地は、DMEM 500mLのビンに、加熱不活性化したFBS 50mLおよびペニシリン/ストレプトマイシン 5mLを加えることにより作成し、4℃で保存した。増殖培地は、使用前に水浴中で37℃に温めた。 実験第1日、午前中に、対数増殖期のRAW 264.7細胞を96ウェル組織培養プレートにおいて1ウェル当たり0.2 mLの増殖培地中に1ウェル当たり8×104細胞にて蒔いた。その日の最後に(プレーティング後6〜8時間)、各ウェルから増殖培地100μLを抜き取り、新鮮な培地100μLに置換した。 RAW 264.7細胞におけるCOX-2の発現を誘導するために使用する、LPSの1.0mg/mLストック溶液は、1mL DMSO中に1.0mg LPSを溶かすことにより調製した。これを溶解するまでボルテックスで攪拌し、4℃で保存した。使用前、室温にてまたは37℃水浴中で融解させた。 実験第2日、検査材料はDMSO中の1000倍ストックとして調製した。1.7 mLミクロチューブ(microfuge tube)中に、FBSを含まないDMEM 1mLを、0.05、0.10、0.5および1.0μg/mLの検査濃度用に加えた。検査材料の1000倍DMSOストック 2μLを、FBSを含まない培地 1mLに加えた。チューブには検査材料の最終濃度の2倍濃度を含有するものとし、これをインキュベーター中に10分間置き、37℃に平衡化させた。 COX-2に伴うPGE2合成に関して、第1日に調製した細胞プレートの各ウェルから培地 100μLを抜き取り、平衡化した最終濃度の2倍の検査化合物 100μLと置換した。その後細胞を90分間インキュベーションした。LPS 20μLを、刺激する細胞の各ウェルに加えて、最終濃度 10ng LPS/mLとし、細胞を4時間インキュベーションした。LPSの刺激後、細胞の外観を観察し、細胞の生存度を3-(4,5‐ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)に基づいた比色分析(Sigma, St. Louis, MO)により評価した。MTT溶液は、PGE2決定のためのサンプル採取後ウェルに直接加えた。各ウェルの吸光度を、ELISAプレートリーダーを用いて580nmで読んだ。いずれの化合物についても、検査した最も高濃度でも毒性は観察されなかった。各ウェルからの培地上清25μLを、培地中に放出されたPGE2を決定するための清浄なミクロチューブに移した。 PGE2の定量のための市販の非放射性の方法 (Caymen Chemical, Ann Arbor, MI)を利用してPGE2をアッセイし、製造業者の推奨する方法を変更を加えずに使用した。手短には、PGE2スタンダードサンプルの段階希釈を含む培地 25μLを、適当な量のアセチルコリンエステラーゼ標識トレーサーおよびPGE2抗血清と共に混合し、室温で18時間インキュベーションした。ウェルを空にしてバッファーですすいだ後、アセチルコリンエステラーゼの基質を含有するエルマン試薬 200μLを加えた。反応は、緩やかな振盪機上で、室温で1時間行い、415nmの吸光度を決定した。PGE2濃度は、105細胞当たりのピコグラムとして表した。 COX-1に伴うPGE2合成に関して、第1日に調製した細胞プレートの各ウェルから培地 100μLを抜き取り、平衡化した最終濃度の2倍の検査化合物 100μLと置換した。その後細胞を90分間インキュベーションした。次にLPSによる刺激の代わりに、細胞を100μM アラキドン酸と共に15分間インキュベーションした。各ウェルからの培地上清25μLを、培地中に放出されたPGE2を決定するための清浄なミクロチューブに移した。細胞の外観を観察し、細胞の生存度を上に記載したように決定した。いずれの化合物についても、検査した最も高濃度でも毒性は観察されなかった。各ウェルからの培地上清25μLを、培地中に放出されたPGE2を決定するための清浄なミクロチューブに移した。PGE2は、上記に記載したように決定し、報告した。COX-1およびCOX-2の双方からのPGE2合成に関する50%抑制濃度(IC50)は、以下のように算出した。 PGE2合成に関する50%抑制濃度(IC50)は、CalcuSyn (BIOSOFT, Ferguson, MO)を用いて算出した。この統計学的パッケージは、Chou and Talaly, Adv. Enzyme Regul. 22: 27-55. (1984) により記載されたmedian effect(半数効果、50%効果)法を用いて多剤の用量-効果の算出を行う。上記文献を本明細書に参照として援用する。 手短には、この分析は最もシンプルな可能な式:fa/fu=(C/Cm)mにおいて“用量”および“効果”を相関させる。式中、Cは化合物の濃度または用量であり、Cmは、効力を示す有効な用量の中央値である。Cmは、median-effectプロットのx切片から決定される。検査材料の濃度により影響を受ける分画はfaであり、濃度により影響を受けない分画はfuである(fu=1-fa)。指数部mは、用量-効果曲線のシグモイド性(sigmoidicity)または形を示すパラメータである。このパラメータは、median-effectプロットの傾きにより見積もられる。 median-effectプロットは、x=log(C) 対 y=log(fa/fu)のグラフであり、Chouのmedian-effect式の対数の形を基本とする。median-effect式に対するデータの適合度は、median-effectプロットの線形相関の相関係数rにより表される。通常、酵素または受容体系からの実験データはr>0.96、組織培養からはr>0.90、動物系からはr>0.85を有する。本明細書に報告した、細胞に基づく試験において、すべての線形相関の相関係数は0.90より大きかった。実験は異なる3日間にて3回繰り返した。各用量の阻害のパーセントは、3回の独立した実験全体の平均とし、この値を使用して報告した50%抑制濃度を算出した。 表3に見られるようにすべてのホップ画分および誘導体は、この標的マクロファージモデルにおいてCOX-1を上回ってCOX-2を選択的に阻害した。このことは新規のそして予想外の発見であった。ホップ誘導体であるIAAおよびRIAAに関するCOX-2の選択性の程度、それぞれ144倍および87倍は、予想外であった。このRAW 264.7細胞モデルにおいて、属Aの化合物は属Bの化合物より高いCOX-2選択性を示し、それぞれ平均して116倍 対 16倍の、より高いCOX-2選択性を示した。アルファ酸、ベータ酸、およびホップ粕もまた、COX-1/COX-2比、それぞれ30、54および24を有する高い選択的COX-2阻害剤であった。低い50%抑制濃度と組み合わせてのこのような高いCOX-2選択性は、他の供給源由来の天然生成物についてはこれまでに報告されていない。アロマホップは、COX-1/COX-2比 2.6を有する、最も低いCOX-2選択性であった。 実施例2 胃粘膜細胞におけるホップ(Humulus lupulus)化合物および誘導体によるPGE2合成の阻害の欠如 概要-本実施例は、AGSヒト胃粘膜細胞株におけるホップ画分によるPGE2合成の阻害の欠如を明らかにし、これらの化合物の、低い胃刺激の可能性を暗示する。 化学薬品および試薬は、実施例1に記載したように使用した。PGE2は、実施例1について既に記載したように決定し、報告した。AGS細胞からのPGE2合成に関する50%抑制濃度(IC50)は、実施例1[2]に記載したように計算した。 ヒト胃粘膜細胞株AGSはAmerican Type Culture Collection (ATCC番号CRL-1739; Manassas, VA)より入手し、供給元の指示に従って継代培養した。細胞は、37℃、5%CO2にて、50ユニット ペニシリン/mL、50μg ストレプトマイシン/mL、5% ピルビン酸ナトリウム、および5% L-グルタミンを含む10% FBS含有RPMI 1640中でルーチン培養した。指数関数的に増殖する細胞を6ウェルプレートに蒔き、集密化するまで増殖させた。培地上清の20μLアリコートを、PGE2含有量を決定するためサンプル採取した。その後細胞をPBSで洗浄し、イムノブロット法のため掻きとり、溶解させた。 AGS細胞モデルにおける、ホップ誘導体の、PGE2合成に関しての50%阻害濃度を、表4に示す。属Bの構造の物質は、一般に、属Aの構造の物質およびアルファ酸よりも、低阻害であった。属Bの群において、THIAAおよびHHIAAに関するIC50値は、それぞれ、51および34μg/mLであった。属Aの群からの、IAA、イソリッチ(Isorich)およびRIAAに関するIC50値は、それぞれ、16、9.2および21μg/mLであり、属Bの種からのIC50値よりも、平均して63%低い値であった。比較的高いIC50値のホップ誘導体、ベータスタブ(BetaStab)(73μg/mL)、タンニン抽出物 #4411(59μg/mL)、アロマホップ(43μg/mL)およびホップ粕 #1115(35μg/mL)は、胃粘膜に対し非刺激性として評価されるだろう。予期せぬことに、全てのホップ誘導体は、AGS胃粘膜細胞に対し、いずれのNSAID(より新しい、高選択性COX-2薬物、ロフェコキシブおよびセレコキシブを含む)よりも、実質的に低阻害であった。 実施例3 ラットにおける、属Aおよび属Bホップ誘導体の、急性毒性 ホップ誘導体の急性毒性を、ラットにおいて調べた。平均100gの、Fisher 344雄ラット幼体10匹に、検査材料5000mg/kg体重を経口投与し、14日間観察した;死んだラット数を測定した。検査材料5000mg/kg体重をラットに経口投与した場合の、ホップ誘導体の低い急性毒性が、致死性の欠如から実証された。 実施例4 RAW 264.7細胞における還元異性体化アルファ酸および異性体化アルファ酸の組み合わせにより得られるPGE2阻害の相乗性の評価 本実施例は、リポ多糖(LPS)-刺激RAW 264.7炎症モデルにおけるプロスタグランジンE2 (PGE2)産生の阻害への、還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の組み合わせの効果を記載する。 これらの実験で使用する標準的な装置は、実施例1で記載している。化学薬品および試薬は以下のように入手した。細菌のリポ多糖(LPS; B E. coli 055:B5)はSigma (St. Louis, MO)より得た。プロスタグランジンE2モノクローナル抗体キットは、Cayman Chemical (Ann Arbor, MI)より購入した。加熱不活性化したウシ胎児血清(FBS-HI Cat. #35-011CV)、およびダルベッコ変法イーグル培地 (DMEM Cat# 10-1013CV)はMediatech (Herndon, VA)より購入した。他に記述してなければ、すべての標準的な試薬はSigma (St. Louis, MO)より入手し、市販により入手可能な最も高純度のものとした。検査物質には、Betatech Hops Products (Washington, DC)より入手したRIAA (レジホップ(rho-イソ-アルファ酸(RIAA)、29.5-30.5%、<0.2% イソ-アルファ酸)、およびIAA(イソホップ(イソ-アルファ酸(IAA)、29.5-30.5%)を含んだ。 (細胞培養、および検査材料による処理)- RAW 264.7細胞(ATTC #TIB-71)は、American Type Culture Collection (Manassas, VA)より入手し、供給元の指示に従って継代培養した。検査用の調製において細胞は、ペニシリン/ストレプトマイシンを含む10% FBS-HIを含む増殖DMEM培地で増殖させ、実験開始前、対数増殖期に維持した。実験の第2日に、1ウェル当たり200μL 増殖培地を含む96ウェル組織培養プレートにおいて1ウェル当たり8×104細胞にて細胞を蒔いた。 一晩37℃、5% CO2でインキュベーション後、増殖培地を吸引し、ウシ胎児血清(FBS)またはペニシリン/ストレプトマイシンを含まないDMEM 200μLで置換した。検査材料はジメチルスルホキシド(DMSO)中に250倍ストック溶液として溶解させた。この250倍ストック検査材料調製液 4μLをDMEM 1mLに加え、この溶液の200μLを、検査材料の各用量についてダブルでウェルに加えた。検査材料の最終濃度は10、1、0.1および0.01μg/mLとした。表5は、検査材料およびLPS刺激により処理したRAW 264.7細胞に関する用量マトリックスを示す。 (PGE2の決定)-PGE2定量用の市販の非放射性の方法 (Caymen Chemical, Ann Arbor, MI)をPGE2の決定のために利用し、製造業者の推奨する方法を変更を加えずに使用した。手短には、培地上清 50μLを適当な量のアセチルコリンエステラーゼ標識したトレーサーおよびPGE2抗血清で希釈し、室温で18時間インキュベーションした。その後PGE2アッセイマイクロプレートのウェルを空にして洗浄バッファーですすぎ、次いで、アセチルコリンエステラーゼの基質を含有するエルマン試薬 200μLを加えた。反応は、緩やかな振盪機上で、室温で1時間維持し、Bio-tek Instruments (Model #Elx800, Winooski, VT)ELISAプレートリーダーにて、415nmの吸光度を決定した。このアッセイに関する製造業者の規格は、<10%のアッセイ内変動係数、1%未満のPGD2およびPGF2αとの交差反応性、および10-1000pg mL-1の範囲にわたる直線性を含む。PGE2濃度は、以下に記載するように105細胞当たりのpgPGE2としてコンピュータにより算出した。 PGE2アッセイに関連する算出として、PGE2合成に関する50%抑制濃度(IC50)を、CalcuSyn (BIOSOFT, Ferguson, MO)を用いて算出した。この統計学的パッケージは、Chou and Talaly (Adv. Enzyme Regul. 22: 27-55. (1984))により記載されたmedian effect法を用いて多剤の用量-効果の算出を行う。 手短には、この分析は最もシンプルな可能な式:fa/fu=(C/Cm)mにおいて“用量”および“効果”を相関させる。式中、Cは化合物の濃度または用量であり、Cmは、効力を示す有効な用量の中央値である。Cmは、median-effectプロットのx切片から決定される。検査材料の濃度により影響を受ける分画はfaであり、濃度により影響を受けない分画はfuである(fu=1-fa)。指数部mは、用量-効果曲線のシグモイド性または形を示すパラメータである。このパラメータは、median-effectプロットの傾きにより見積もられる。 Median-effectプロットは、x=log(C) 対 y=log(fa/fu)のグラフであり、Chouのmedian-effect式の対数の形を基本とする。median-effect式に対するデータの適合度は、median-effectプロットの線形相関の相関係数rにより表される。通常、酵素または受容体系からの実験データはr>0.96、組織培養からはr>0.90、動物系からはr>0.85を有する。本明細書に報告した、細胞に基づく試験において、すべての線形相関の相関係数は0.90より高かった。最も確かな結果を得るため、実験は異なる3日間にて最低3回繰り返す。各用量の阻害のパーセントは、3回の独立した実験全体の平均とし、この値を使用して報告した50%抑制濃度を算出する。 検査化合物の相乗作用はcombination index (CI)パラメータを用いて定量した。Chou-TalalyのCIは、多剤の用量-効果を基本としており、酵素の動力学的モデル(Chou and Talaly, J. Biol. Chem. 252: 6438-6422 (1977))から導かれている。この等式は相乗作用または拮抗作用よりむしろ相加的効果のみを決定する。しかし、本分析において、相乗作用は、Chou and Talalyにより提案されたような予想される相加的効果より高い効果として、そして拮抗作用は予想される相加的効果より低い効果として定義する。相加的効果としてCI=1と表記することを使用して、同じ作用様式を有する相互に排他的な化合物に関して、または全体として独立した作用様式を有する相互に非排他的な薬剤に関して、以下の関係が得られる:CI<1、=1、および>1は、それぞれ相乗作用、相加作用、および拮抗作用を示す。 (細胞の生存度)-細胞の生存度は、PGE2アッセイ用に培地からサンプル採取する前、またはサンプル採取した直後に目視により評価した。細胞の致死率は、観察時に記録した。 統計的方法のため、最低4つの濃度(表5)を使用して、CalcuSyn (BIOSOFT, Ferguson, MO)を用いて用量-応答曲線、および50%抑制濃度(IC50)とその95%信頼区間をコンピュータにより算出した。この統計学的パッケージは、Chou and Talaly(上記、1984)により記載されたmedian effect法を用いて、多剤の用量-効果の算出を行う。すべての用量-応答データから50%抑制濃度を得た(Appendix B)。2つのデータ変換を正当な理由がある場合に適用した。最初の変換は、低い用量でのPGE2産生がLPS刺激コントロールでのPGE2産生を上回っている場合に、最も低い検査濃度から得られた最も高いPGE2産生から、阻害のパーセントをコンピュータで計算することをから成る。この方法は、プレートを通しての応答の変動および勾配について調節する。第2のデータ変換は、段階的用量での応答における変動について調整した。ウェル間での過去の変動を用いてのMonte Carloシミュレーションは、4ポイントの用量-応答曲線において1濃度当たりダブルのウェルを使用する場合、用量-応答曲線は40%しか段階的には現れない、と予測した。それ故、応答が段階的に現れない状態については、IC50を算出する前に濃度による応答の選別を行った。 結果−本試験において得られたRIAA及びIAAの50%阻害濃度(IC50)値、それぞれ0.24μg/mL (95%信頼限界(CL)0.060-0.94μg/mL)および0.56μg/mL(95%CL 0.28-1.1)は、LPS-RAW 264.7一晩プロトコルを用いての、本研究室における以前の結果と一致した。 LPSに刺激されたRAW 264.7細胞に関するRIAA、IAA、およびRIAA:IAAの組み合わせについての50%抑制濃度を、各組み合わせについてコンピュータにより算出された相乗作用の領域と共に、表6に示す。驚くべきことに、相乗作用は、用量-応答曲線の異なる区域ではあるものの、すべてのRIAA:IAAの組み合わせについて認められた。相乗作用の領域は、10:1、1:1および1:100のRIAA:IAAの組み合わせでは用量応答曲線の低用量領域に見られ、RIAA濃度2.5x10-8〜0.26μg/mLをカバーした。相乗作用は、100:1、3:1、3:2、2:3および1:10の比率のRIAA:IAAの組み合わせでは、RIAA濃度0.31〜68,261μg/mLについて、用量応答曲線の高用量末端に見られた。したがって、投与される製剤中の成分の比率にかかわりなく、RIAAおよびIAA双方の広範囲な用量にわたりin vivoで相乗作用が起こることを期待することは、妥当である。 RAW 264.7細胞は、LPSの刺激60分前に検査材料にて処理し、一晩インキュベーションした。LPS刺激の18時間後に、PGE2決定のため培地上清をサンプル採取した。50%抑制濃度は、2回の独立した実験にわたる最低4つの濃度からコンピュータにより算出した。CIは上に記載したようにコンピュータにより算出した。 図4は、コンピュータにより算出したCombination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)、異性体化アルファ酸(IAA)、およびRIAA:IAA比率 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H) の濃度について、グラフで表したものを示す。 これらの結果は、RIAAおよびIAA間の相乗作用が、4つの組み合わせ-3:1、3:2、1:1および1:10で観察されたことを示す。特に意味のある相乗作用は、RIAA:IAA比率1:1および1:10で起こった。これらの製剤に関して、相乗作用はそれぞれ、RIAA濃度<0.58μg/mLおよびRIAA濃度>0.31μg/mLにおいて見られた。 本出願を通して、様々な公開文献を参照してきた。本発明の属する技術分野の状態をより完全に記載するため、これら公開文献のそれらの全内容における開示を、本明細書により本出願における参照として援用する。本発明は上に提供した実施例を参照して記載してきたが、本発明の精神から離れることなく様々な修飾を行うことができることは、理解されなければならない。図1は、シクロオキシゲナーゼ-2の誘導、およびシクロオキシゲナーゼ酵素によるアラキドン酸からプロスタグランジンおよびその他のエイコサノイドへの代謝を示す。非ステロイド抗炎症薬の作用は、シクロオキシゲナーゼ酵素の直接阻害による。図2は、ホップから得ることのできる画分および化合物の概略を示す。図3は、ホップから単離されたまたは由来する画分の例を図示する。図3Aは、アルファ酸属(AA)、および代表的な種であるフムロン(R= -CH2CH(CH3)2)、コフムロン(R= -CH(CH3)2)、およびアドフムロン(R= -CH(CH3)CH2CH3)を示す;図3Bは、イソアルファ酸属(IAA)、および代表的な種であるイソフムロン(R= -CH2CH(CH3)2)、イソコフムロン(R= -CH(CH3)2)、およびイソアドフムロン(R= -CH(CH3)CH2CH3)を示す;図3Cは、還元異性体化イソアルファ酸属(RIAA)、および代表的な種であるジヒドロ-イソフムロン(R= -CH2CH(CH3)2)、ジヒドロ-イソコフムロン(R= -CH(CH3)2)、およびジヒドロ-アドフムロン(R= -CH(CH3)CH2CH3)を示す;図3Dは、テトラ-ヒドロイソアルファ酸属(THIAA)、および代表的な種であるテトラ-ヒドロ-イソフムロン(R= -CH2CH(CH3)2)、テトラ-ヒドロ-イソコフムロン(R= -CH(CH3)2)、およびテトラ-ヒドロ-アドフムロン(R= -CH(CH3)CH2CH3)を示す;図3Eは、ヘキサ-ヒドロイソアルファ酸(HHIAA)属を、代表的な種であるヘキサ-ヒドロ-イソフムロン(R= -CH2CH(CH3)2)、ヘキサ-ヒドロ-イソコフムロン(R= -CH(CH3)2)、およびヘキサ-ヒドロ-アドフムロン(R= -CH(CH3)CH2CH3)と共に示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。図4は、コンピュータにより、Combination Indexパラメータ 対 還元異性体化アルファ酸(RIAA)および異性体化アルファ酸(IAA)の濃度を、RIAA:IAA比 100:1 (図4A)、10:1 (図4B)、3:1 (図4C)、3:2 (図4D)、1:1 (図4E)、2:3 (図4F)、1:10 (図4G)、1:100 (図4H)について、グラフで表したものを示す。 還元イソアルファ酸(RIAA)およびイソアルファ酸(IAA)を含む組成物であって、RIAAおよびIAAが3:1〜1:10の比率であり、前記RIAAおよびIAAが個別に、該組成物の少なくとも0.1%を構成し、RIAAおよびIAAのコンビネーションインデックス(combination index (CI))が1未満である、前記組成物。 前記イソアルファ酸が、イソフムロン、イソコフムロンおよびイソアドフムロンから選択される、請求項1の組成物。 前記還元イソアルファ酸が、ジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロンおよびジヒドロ-イソアドフムロンから選択される、請求項1の組成物。 PGE2介在炎症を低減するための医薬組成物であって、還元イソアルファ酸(RIAA)およびイソアルファ酸(IAA)を含み、ここでRIAAおよびIAAが3:1〜1:10の比率であり、前記RIAAおよびIAAが個別に、該組成物の少なくとも0.1%を構成し、RIAAおよびIAAのコンビネーションインデックス(combination index (CI))が1未満である、前記医薬組成物。 前記イソアルファ酸が、イソフムロン、イソコフムロンおよびイソアドフムロンから選択される、請求項4の医薬組成物。 前記還元イソアルファ酸が、ジヒドロ-イソフムロン、ジヒドロ-イソコフムロンおよびジヒドロ-イソアドフムロンから選択される、請求項4の医薬組成物。 PGE2介在炎症を低減するための医薬組成物であって、少なくとも2つの、以下の式を有する属Aの化合物(該少なくとも2つの化合物は、少なくとも1つのRIAAおよび少なくとも1つのIAAを含む): [式中R’は、カルボニル、ヒドロキシル、ORおよびOCORから成る群より選択され、式中Rはアルキルであり;そして式中R”は、CH(CH3)2、CH2CH(CH3)2、およびCH(CH3)CH2CH3から成る群より選択される]を含み、ここで該2つの化合物が10:1〜1:10の比率であり、前記RIAAおよびIAAが個別に、該組成物の少なくとも0.1%を構成し、RIAAおよびIAAのコンビネーションインデックス(combination index (CI))が1未満である、前記医薬組成物。 前記RIAAおよびIAAがホップに由来する、請求項1の組成物。 前記RIAAおよびIAAがホップに由来する、請求項4又は7の医薬組成物。


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