タイトル: | 特許公報(B2)_抗体精製法 |
出願番号: | 2007500725 |
年次: | 2011 |
IPC分類: | C07K 16/00,C07K 1/18 |
グロンベルグ,アンナ ヨハンソン,ボー−レナート ヨハンソン,ハンス・ジェイ マロワゼル,ジャン・リュック セヴェニン,ニコラス JP 4848356 特許公報(B2) 20111021 2007500725 20050225 抗体精製法 ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ 597064713 荒川 聡志 100137545 小倉 博 100105588 黒川 俊久 100129779 グロンベルグ,アンナ ヨハンソン,ボー−レナート ヨハンソン,ハンス・ジェイ マロワゼル,ジャン・リュック セヴェニン,ニコラス SE 0400501-3 20040227 SE 0402558-1 20041021 20111228 C07K 16/00 20060101AFI20111208BHJP C07K 1/18 20060101ALI20111208BHJP JPC07K16/00C07K1/18 C07K 16/00 C07K 1/18 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特表平11−512442(JP,A) 米国特許第05429746(US,A) 国際公開第03/024588(WO,A1) J. Chromatogr. A, vol. 1016, pages 35-49 (2003) J. Chromatogr. Libr., vol. 61, pages 60-61 (2000) 6 SE2005000293 20050225 WO2005082483 20050909 2007525501 20070906 20 20080222 石丸 聡 本発明は、モノクローナル抗体のような抗体の精製法に関する。さらに具体的には、本発明は抗体捕獲方法、2以上のクロマトグラフィー段階を用いる抗体精製法、本発明の方法を用いる抗体精製用キット、及びクロマトグラフィーカラムに関する。 免疫系は、細菌、寄生虫、真菌、ウイルスの感染及び腫瘍細胞の増殖から身体を共同で保護する多数の相互依存的な細胞型からなる。免疫系の護衛は、宿主の血流を絶えず巡回するマクロファージである。感染又は免疫化に脅かされると、マクロファージは抗原として知られる異分子で標識された侵入者を飲み込むことによって応答する。ヘルパーT細胞で媒介されるこの事象は、一連の複雑な応答を起こしてB細胞を刺激する。すると、これらのB細胞は抗体と呼ばれるタンパク質を産生し、抗体が外来侵入者に結合する。抗体と抗原との結合事象で外来侵入者が標識され、食作用又は補体系の活性化によって破壊される。IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMのように幾つかの異なるクラスの抗体又は免疫グロブリンが存在する。これらは生理学的役割だけでなく構造においても異なる。構造の面では、IgG抗体が、成体の免疫応答において主要な役割を果たすことから、免疫グロブリンの中では最も広範に研究されてきたクラスである。 免疫グロブリンのもつ生物活性は、現在では、ヒト及び動物の診断、健康管理及び治療分野の様々な用途に利用されている。実際この数年において、モノクローナル抗体及び組換え抗体構築物は、現在治療薬及び診断薬として臨床試験で検査され米国医薬品食品局(FDA)の認可を受けたタンパク質として最大のクラスとなっている。発現系及び産生計画を補足するものとして、高純度抗体を簡単かつ経済的に得るための精製プロトコルが設計されている。 免疫グロブリンの従来の単離法は、他のタンパク質群を溶解したまま、免疫グロブリンを含むタンパク質画分を選択的に可逆沈殿させることに基づく。典型的な沈殿剤は、エタノール、ポリエチレングリコール、硫酸アンモニウムやリン酸カリウムのようなリオトロピック塩、及びカプリル酸である。通例、これらの沈殿法は極めて不純な生成物を生じるだけでなく、多大な時間と労力を要する。さらに、原料に沈殿剤を添加すると、上清を他の目的に使用するのが難しくなるだけでなく、廃棄処理の問題を生じる。廃棄処理の問題は、免疫グロブリンの大規模精製では特に重要となる。 免疫グロブリンの単離のための別法はクロマトグラフィーであって、これには密接に関連した一群の分離法が包含される。他の大半の理化学的分離法と区別されるクロマトグラフィーの特徴は、2つの互いに非混和性の相を接触させ、一方の相を固定相とし、他方を移動相とすることである。移動相に導入された試料混合物は、移動相によって系内を運搬される際に固定相と移動相の間で何度も一連の相互作用を受ける。相互作用には、試料中の成分の理化学的性質の差が利用される。こうした差が、固定相を収容したカラム内を移動する移動相の影響下での各成分の移動速度を支配する。分離された成分は、固定相との相互作用の低いものから高いものの順に流出する。遅延の最も少ない成分が最初に溶出し、最も強く保持された物質が最後に溶出する。分離は、試料成分がカラムから溶出する際に、ある成分の流出速度が隣接する溶質のゾーンと重ならないように十分に遅くなった場合に達成される。個々の分離目的に最適な固定相を設計するための努力が絶えずなされている。かかる固定相は、一般に、官能基(つまり結合基)を有するリガンドが結合した担体又はベースマトリックスからなる。各々の種類のクロマトグラフィーは、一般に、利用する相互作用の原理に基づいて記述される。工業用クロマトグラフィープロセスは、最初の捕獲段階(これは粗原料又は清澄化原料からの目標分子の初期精製である。)と、中間精製段階及び最終高度精製段階の2以上の段階を含むことが多い。免疫グロブリンの単離には、イオン交換クロマトグラフィーが多用される。陰イオン交換クロマトグラフィーでは、免疫グロブリンの負に荷電したアミノ酸側鎖がクロマトグラフィーマトリックスの正に荷電したリガンドと相互作用する。他方、陽イオン交換クロマトグラフィーでは、免疫グロブリンの正に荷電したアミノ酸側鎖がクロマトグラフィーマトリックスの負に荷電したリガンドと相互作用する。 疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)も、免疫グロブリンの単離に関して広く記載されている方法である。しかし、疎水性マトリックスは、免疫グロブリンを効率よく結合させるため、原料へのリオトロピック塩の添加を必要とする。連続的又は段階的勾配でリオトロピック塩の濃度を低下させることによって、結合タンパク質はマトリックスから遊離する。高純度製品が目的とされる場合、疎水性クロマトグラフィーを追加の段階と組合せることが推奨される。この方法の短所は、原料にリオトロピック塩を添加する必要があることである。これは、大規模ユーザーでは問題となり、コスト増加をを招く。細胞培養上清以外の原料(例えば、ホエー、血漿及び卵黄)に関しては、原料へのリオトロピック塩の添加は、多くの場合大規模用途での使用が妨げられる。塩を用いると、免疫グロブリン除去後の原料を経済的に使用できなくなるおそれがあるからである。大規模用途での追加の問題は、数千リットルの廃液の処理である。 プロテインA及びプロテインGアフィニティークロマトグラフィーは、使用が容易で得られる純度も高いので、免疫グロブリンの単離及び精製(特にモノクローナル抗体の単離)のための広く普及した方法である。イオン交換段階、疎水性相互作用段階、ヒドロキシアパタイト段階及び/又はゲル濾過段階との併用は、特にプロテインA系の方法は多くの生物製剤製造会社が選択する抗体捕獲方法となっている。例えば、国際公開第8400773号及び米国特許第5151350号を参照されたい。 プロテインAクロマトグラフィーを疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)と組合せることも提案されている。米国特許第5429746号(SmithKline Beecham Corp.)は、抗体精製の一段階として疎水性相互作用クロマトグラフィーを応用することに関する。例えばプロテインAを用いたアフィニティークロマトグラフィーと任意段階としての陽イオン交換クロマトグラフィー中間段階で、どのようにHICを使用できるか開示されている。陽イオン交換クロマトグラフィーの例としては弱陽イオン交換体(CM Sepharose(商標)FF)が挙げられるが、これは吸着の際はpH5.5に調整され、40mMクエン酸塩、100mM塩化ナトリウムの溶出緩衝液(pH6)で溶出される。アフィニティークロマトグラフィー及び/又は陽イオン交換クロマトグラフィー後に、HICカラムにかけられる混合物は、免疫グロブリン凝集体、ミスフォールドしたもの、宿主細胞タンパク質、及びアフィニティークロマトグラフィー段階からの残留物のような不純物を含むことがある。かかる方法では、抗体はまずプロテインAクロマトグラフィー担体に吸着させて溶出し、次いで陽イオン交換クロマトグラフィー担体に吸着させて選択的に溶出し、最後にHIC担体に吸着させて溶出する。 タンパク質系アフィニティーカラムの代替物として、互いに異なるが共働的な部位で目標と相互作用するマルチモーダル樹脂のような純化学的な樹脂が抗体精製に提案されている。市販品の一例は、メルカプトベンゾイミダゾールスルホン酸リガンドを含ぬ吸着剤であるMBI Hypercel(登録商標)(BioSepra社)であり、抗体と疎水性及びイオン相互作用を示すと記載されている。疎水性相互作用は芳香環系に由来するものと推測され、イオン相互作用は強陽イオン交換体として知られるSO3−置換基に由来すると思われる。加えて、MBIリガンドの芳香環系の窒素原子は一定の条件下で荷電可能であり、負に荷電した基との相互作用し得る。 米国特許第6498236号(Upfront Chromatography社)には、ハイブリドーマ細胞培養上清、動物血漿又は血清のような溶液から免疫グロブリンの単離又は精製法が開示されている。この方法は、リガンドと免疫グロブリンとの分子量の差が小さいこと及びそれらが本来的に結合しようとする傾向に起因する短所をもつと記載されたプロテインA、プロテインG、合成ペプチドその他の比較的高分子量リガンドを用いる方法の代替法として提案されている。米国特許第6498236号によれば、リガンドに存在する置換基(例えば、ベンゼン環)の種類によって免疫グロブリンの効率的結合が左右される。具体的には、開示された方法で用いられる固相マトリックスは、式M−SP1−X−A−SP2−ACIDで表され、式中、Mはマトリックス骨格を表し、SP1はスペーサーを表し、XはO、S又はNHを表し、Aは適宜置換された単環式又は二環式芳香族又は複素芳香族部分を表し、SP2は任意要素としてのスペーサーを表し、ACIDは酸性基を表す。かかるリガンドは、好ましくは、ベンゾイミダゾール、ベンゾチアゾール及びベンゾオキサゾールからなる群から選択される化合物から誘導される。 国際公開第97/10887号(Novo Nordisk A/S)は、免疫グロブリン、インスリン、第VII因子又はヒト成長ホルモン或いはこれらの類似体、誘導体及びフラグメントのようなタンパク質系材料の精製に有用なアフィニティーリガンド−マトリックスのコンジュゲートに関する。国際公開第97/10887号の発明は、疎水性成分の複雑さ及び立体構造を増すことによって疎水性リガンドの選択率を高めることができるという発想に基づく。この発想から、包括的な一群のアフィニティーリガンドが開発されたが、かかる群は1以上の環形成原子が窒素である複素芳香族部分を有する構造に限られている。 さらに、マルチモーダル陽イオン交換媒体の合成法が国際公開第03/024588号(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))に開示されている。具体的には、2種の官能基を含む足場(好ましくは、ホモシステインチオラクトン)を誘導体化し、固体ベースマトリックスと反応させる。具体的には、2種の官能基の一方(好ましくは硫黄)はマトリックスとの結合に用いられ、第二の官能基はイオン基に変換できるものである。こうして製造されたマルチモーダル媒体は、誘導体化の性質に応じて、イオン相互作用及びさらに別の種類の相互作用(例えば、疎水性相互作用)を示すことができる。実験の部では、製造された陽イオン交換体が、3種のモデルタンパク質(即ち、シトクロムC(Cyt C)、ウシ血清アルブミン(BSA)及び免疫グロブリンG(IgG))を用いて試験されている。国際公開第8400773号明細書米国特許第5151350号明細書米国特許第5429746号明細書米国特許第6498236号明細書国際公開第97/10887号パンフレット国際公開第03/024588号パンフレット 一態様では、本発明は抗体精製のためのロバストな方法を提供する。これは、特許請求の範囲に規定した通り、マルチモーダルリガンドを固定化した担体からなる第一のクロマトグラフィー樹脂に抗体を含む液体を接触させ、樹脂から抗体を遊離させて抗体を溶出させ、溶出液を第二のクロマトグラフィー樹脂に接触させることによって達成できる。 別の態様では、本発明は従来技術の方法よりも少量の原料から抗体を精製することを可能にする。さらに具体的には、本発明はプロセス原料中の塩濃度を希釈する必要なしにプロセス原料から抗体を捕獲することを可能にする。これは、マルチモーダルリガンドが「高塩リガンド」として知られる耐塩性リガンドである上記の方法で達成できる。かかる第一段階に続いて、適宜、陰イオン交換基を含むマルチモーダルリガンドを固定化した担体からなるクロマトグラフィー樹脂を用いる第二のクロマトグラフィー段階が実施される。 特定の態様では、本発明は第二のクロマトグラフィー段階を非結合条件下で実施する方法を提供する。 本発明の他の態様及び利点は、以下の詳しい説明から明らかになろう。 図面の簡単な説明 図1は、マルチモーダル陽イオン交換クロマトグラフィー媒体でのIgG含有原料の精製でのクロマトグラムを示す。 図2は、後記の実施例3に記載の原料の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。13mlのピークが目標MAbであり、残りのピークは凝集体及び/又は宿主細胞タンパク質である。 図3は、実施例3に記載の通り、U1128042から溶出したプール画分9〜16の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。 図4は、本発明に係る方法の段階2、具体的には後記の実施例4に記載のマルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィーを用いる高度精製でのクロマトグラムを示す。 図5は、後記の実施例4に記載の通り、カラム238092からの通過液(画分3〜10)の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。 定義 「抗体」という用語と「免疫グロブリン」という用語は本明細書では同義に用いられる。 「溶出剤」という用語は、当技術分野での通常の意味、つまり分離マトリックスから1種以上の化合物を遊離させるのに適したpH及び/又はイオン強度の緩衝液として使用される。 「アフィニティクロマトグラフィー」という用語は、鍵−鍵穴認識原理による目標生体分子と生体特異的リガンドとの特異的相互作用に基づくクロマトグラフィーを意味する。そこで、目標及びリガンドは抗原/抗体、酵素/受容体などのアフィニティ対をなす。 「芳香族」基という用語は、ヒュッケルの規則に従って式(4n+2)(式中、nは正の整数又は0である。)で定義される基をいう。 本明細書で「クロマトグラフィー樹脂」という用語は、リガンドとして知られる官能基が結合した担体を意味するものとして用いる。担体を表現するのに「マトリックス」という用語を用いることもある。 「マルチモーダルクロマトグラフィーリガンド」という用語は、結合すべき物質と相互作用する2種以上の互いに異なるが共働的な部位を与えることができるリガンドをいう。これらの部位の一方は、リガンドと目標物質とが互いに引きつけ合う電荷−電荷相互作用を与える。他方は、通例、電子受容体−供与体相互作用並びに/或いは疎水性及び/又は親水性相互作用を与える。電子供与体−受容体相互作用には、水素結合、π−π、陽イオン−π、電荷移動、双極子−双極子、誘起双極子などの相互作用がある。マルチモーダルクロマトグラフィーリガンドは、「混成モード」クロマトグラフィーリガンドとしても知られる。本明細書では、電荷−電荷相互作用基が負に荷電したマルチモーダルリガンドをリガンドとするクロマトグラフィー樹脂を「マルチモーダル陽イオン交換樹脂」といい、電荷−電荷相互作用基が正に荷電したマルチモーダルリガンドをリガンドとするクロマトグラフィー樹脂を「マルチモーダル陰イオン交換樹脂」という。 「電子供与体−受容体相互作用」という用語は、自由電子対を有する電気陰性原子が供与体として作用し、供与体の電子対に対する受容体として作用する電子不足原子と結合することを意味する。(例えば、Karger et al.著「An Introduction to into Separation Science」(John Wiley & Sons社(1973年)の42頁を参照されたい。) 本明細書で「陽イオン交換基」という用語は、負に荷電又は荷電し得る基を意味する。 液体クロマトグラフィーに関して「捕獲」という用語は、分離操作の初期段階をいう。最も一般的には、捕獲段階には、可溶性不純物からの清澄化、濃縮、安定化及びかなりの精製が含まれる。捕獲段階の後に中間精製を行ってもよく、宿主タンパク質、DNA、ウイルス及びエンドトキシン、栄養素、培地成分(例えば、消泡剤や抗生物質)並びに産生物関連不純物(例えば、凝集体やミスフォールドしたものや凝集体)のような不純物の残留量が一段と低減する。 液体クロマトグラフィーに関して「高度精製段階」という用語は、微量の不純物を除去して安全な活性生成物を残す最終精製段階をいう。高度精製段階で除去される不純物は、目標分子の配座異性体又は漏出生成物と思われるものであることが多い。 「Fc結合タンパク質」という用語は、抗体の結晶性部分(Fc)に結合し得るタンパク質を意味し、例えば、プロテインA及びプロテインG、或いは上記の結合性を保持したこれらのフラグメント又は融合タンパク質が包含される。 本発明は、液体から1種以上の抗体を捕獲する方法に関する。この方法は、マルチモーダルリガンドを固定化した担体からなるクロマトグラフィー樹脂に上記液体を接触させて抗体を該樹脂に吸着させる段階を含んでなり、各マルチモーダルリガンドは1以上の陽イオン交換基及び1以上の芳香族又は複素芳香族環系を含み、該環系の環形成原子は炭素(C)、硫黄(S)及び酸素(O)原子からなる群から選択される。 本方法の好適な実施形態では、環形成原子は炭素(C)及び硫黄(S)原子からなる群から選択される。特定の実施形態では、環形成原子は炭素(C)原子である。本方法は、好ましくは、例えば濾過して細胞残渣などを除去することによって清澄化された発酵液に関して使用できる。最も普通には、捕獲モードでは、先行するクロマトグラフィーは存在しない。高純度の産生物を得るためには、本方法に続いて、例えばクロマトグラフィー、膜濾過又はその他の慣用精製法による追加の精製を行うことが好ましい。かくして、一実施形態では、マルチモーダルクロマトグラフィー捕獲段階に続いて1以上の精製段階が実施される。 一態様では、本発明は液体から1種以上の抗体を精製する方法に関する。この方法は、マルチモーダルリガンドを固定化した担体からなる第一のクロマトグラフィー樹脂に上記液体を接触させて抗体を該樹脂に吸着させる段階であって、各マルチモーダルリガンドが1以上の陽イオン交換基及び1以上の芳香族又は複素芳香族環系を含む段階、該樹脂から抗体を遊離させるための溶出剤を添加する段階、並びに得られた溶出液を第二のクロマトグラフィー樹脂に接触させる段階を含んでなる。 かくして、捕獲段階である第一段階では、抗体を含む液体を結合条件下でマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂と接触させることによって、抗体及び適宜1種以上の不純物を吸着させる。第一の樹脂に接触させる液体は、有利には所望抗体の当電点より低いpHに緩衝される。吸着段階後、溶出剤として知られる別の液体を樹脂に接触させて抗体を脱着(即ち、遊離)させる。溶出剤は、通常はリン酸緩衝液のような緩衝液である。一実施形態では、溶出はpHを上昇させることによる段階溶出である。しかし、当業者であれば、吸着及び溶出を達成するため条件の変更は、例えば別のやり方でのpH及び/又は塩濃度(即ち、溶液の導電率)の調整などによって当業者が容易になし得る。好適な実施形態では、本方法の第一段階は、例えば重力又はポンプ作用により、充填クロマトグラフィーカラムに液体及び/又は溶出剤を流すことである。必要に応じて、本方法のクロマトグラフィー段階の間に1以上の洗浄段階を適用することができる。第一段階に供される液体は、有利には原料の流れ(即ち、細胞培養液又は発酵ブロス)であり、これは適宜濾過、pH及び/又は導電率の調整によるコンディショニングなどの前処理に付したものである。かくして、第一のクロマトグラフィー捕獲段階は、細胞残渣及びタンパク質、DNA、エンドトキシンなどの宿主細胞残留物を除去する。プロセス原料に対して本方法を直接用いることの利点は、本発明で使用する特定のマルチモーダルリガンドは通常の樹脂よりも高い塩濃度で抗体を吸着することができ、したがって公知のように比較的高い導電率を有するプロセス原料を希釈する必要性が大幅に低減又は排除されることである。プロセス体積の減少はプロセス効率を向上させ、非常に大きくて高価な設備への投資を回避させる。特定の実施形態では、本方法は流動床プロセスとして実施される。 本方法で使用するマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂は、当業者が容易に製造できる。簡単に説明すると、かかる樹脂は、直接に又はスペーサーを介して有機又は無機担体(ベースマトリックスともいう)にマルチモーダルリガンドを結合したものからなる。担体は、粒子(例えば、略球形の粒子)、モノリス、フィルター、膜、表面、毛管などの形態を有し得る。一実施形態では、担体は、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩などの架橋炭水化物材料のような天然ポリマーから製造される。高い吸着容量を得るためには、担体は好ましくは多孔質であり、その場合には外面及び細孔表面の両方にリガンドが結合される。かかる天然ポリマー担体は、逆懸濁ゲル化(S Hjerte’n:Biochim Biophys Acta 79(2),393−398(1964))のような常法で容易に製造される。別法として、担体は、架橋合成ポリマー(例えば、スチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルエステル、ビニルアミドなど)のような合成ポリマーから製造される。かかる合成ポリマーは常法で容易に製造される。例えば、「懸濁重合で開発されたスチレン系ポリマー担体」(R Arshady:Chimica e L’Industria 70(9),70−75(1988))を参照されたい。多孔質の天然又は合成ポリマー担体は、Amersham Biosciences社(ウプサラ、スウェーデン)のような商業的供給源からも入手できる。マルチモーダルリガンドを用いる抗体精製のために有用な樹脂の具体例は、流動床吸着用の樹脂、即ち高密度充填材(好ましくはステンレス鋼充填材)を含むポリマー担体である。 上述のように、本方法で使用するクロマトグラフィー樹脂のマルチモーダルリガンドは、1以上の陽イオン交換基及び1以上の芳香族又は複素芳香族環系を含む。別の実施形態では、第一段階で使用する樹脂はマルチモーダルであり、2種の異なるリガンド(即ち、陽イオン交換基及び芳香族又は複素芳香族環系)を好ましくは実質的に等しい量で含む。目標分子との疎水性相互作用し得る芳香族環系は、1又は2つの環状構造からなり得るとともに、2つの環状構造は1以上の原子で隔てられるか、又は(例えば)ナフチル基として存在し得る。さらに、環系は例えばメトキシ基のようなアルキルオキシ基で任意に置換される。一実施形態では、芳香族又は複素芳香族環系は環状構造の構成原子として窒素原子を全く含まず、炭素原子、硫黄原子及び/又は酸素原子に限定される。その結果、この実施形態では、第一段階の接触は、環形成位置に窒素を有しない芳香族又は複素芳香族環系を含むマルチモーダル陽イオン交換体との間で行われる。このように、一実施形態では、芳香族又は複素芳香族部分の環形成原子は炭素(C)、硫黄(S)及び酸素(O)原子からなる群から選択される。好適な実施形態では、芳香族又は複素芳香族部分の環形成原子は炭素(C)及び硫黄(S)からなる群から選択される。特定の実施形態では、芳香族又は複素芳香族部分の環形成原子は炭素(C)原子である。 一実施形態では、本方法の第一段階で使用する樹脂は以下の通り表される。 Sup−スペーサー−X−陽イオン交換基−スペーサー−芳香族又は複素芳香族環式中、Supは担体であり、スペーサーは任意であり、XはO、S又はNのような結合原子である。好適なスペーサー及びかかるスペーサーをもたらす化学的結合作用は、当技術分野で公知である。したがって、この実施形態は、陽イオン交換基として作用する酸性基が芳香族部分に対する置換基である上述の米国特許第6498236号と異なる。かくして、本実施形態で使用する樹脂は、その構造が芳香族官能基と陽イオン官能基との間に追加の距離をもたらすので、目標化合物に対して空間的に拡大した異なる種類の結合を提供するものと期待できる。 陽イオン交換基は、好ましくは弱陽イオン交換体、即ち一定のpH値でプロトン付加し得る基である。弱陽イオン交換体とは異なり、強陽イオン交換基はすべてのpH値で電荷を維持する基からなる。かくして、一実施形態では、マルチモーダルリガンドは1又は2つのカルボキシル基のようなカルボキシル基を含む。 しかし、当業者には自明であろうが、上述のようなマルチモーダルリガンドは、さらに水素結合のような追加の相互作用し得る。上述の基に加えて、本方法で使用するマルチモーダルクロマトグラフィーリガンドは1以上のスルホニル基、アミン又はカルボニル基を含んでいてもよいが、これらは不純物及び抗体のそれぞれとの相互作用に寄与することもあれば寄与しないこともある。 本方法で使用するマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂を製造するため上述の担体に結合されるリガンドは、例えば、上述の国際公開第03/024588号(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))に記載されているようにして合成できる。その場合には、ホモシステインチオラクトンから出発して、弱陽イオン官能基を含むマルチモーダルリガンドが合成される。マルチモーダルリガンドの合成に関するさらに詳しい説明については、例えば国際公開第02/059059号(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))を参照されたい。かかるリガンドは、スペーサーとして知られる適当な隔離原子を介して担体に結合できる。この目的のために有用な結合方法に関する総説としては、例えば、「Immobilized Affinity Ligand Techniques」(Hermanson et al、Greg T.Hermanson、A.Krishna Mallia及びPaul K.Smith、Academic Press,INC、1992)を参照されたい。当技術分野で公知の通り、リガンドの密度又は置換度、担体の細孔径などのパラメーターを変化させることによって、所望の性質を有するクロマトグラフィー樹脂を得ることができる。 本方法の第二段階は、第一段階から得られた溶出液を第二のクロマトグラフィー樹脂に接触させることを含む。一実施形態では、第二のクロマトグラフィー段階は、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)及びアフィニティークロマトグラフィーからなる群から選択される。前記方法及びその使用はいずれも当業者に公知であり、簡便には市販クロマトグラフィー樹脂が使用される。担体及びリガンドの固定化に関する述の原理は、この段階にも当てはまる。一実施形態では、第二段階は微細な不純物を除去して高純度の産生物を得るための高度精製である。別の実施形態では、第二段階は中間段階であり、この場合には本発明に係る方法は後続の高度精製も含む。好適な実施形態では、第二段階はイオン交換クロマトグラフィー段階、好ましくは陰イオン交換クロマトグラフィー段階である。陰イオン交換樹脂は、Q基のような正に荷電したリガンドを含んでいてもよい。 特定の実施形態では、本方法の第二段階は、第一段階から得られた溶出液をマルチモーダル陰イオン交換樹脂に接触させることを含む。具体的には、マルチモーダル陰イオン交換樹脂は、陰イオン交換基と共に、目標抗体との共働的相互作用し得る1以上の追加基を含む。かかるマルチモーダル陰イオン交換樹脂は、目標化合物の負に荷電した部位との相互作用し得る第一の基、及び前記目標化合物との電荷−電荷相互作用以外の1種以上の相互作用し得る第二の基を含む。これについて説明すると、分離マトリックスの基の異なるモードの相互作用は同一の目標化合物に向けられること、即ち各目標化合物は理想的には2以上のモードの相互作用で吸着されることが理解される。当業者には自明であろうが、かかる官能基は同一リガンドに存在する(この場合、各リガンドはマルチモーダルである)か、或いは異なるリガンドに存在し得る(この場合、分離マトリックスは全体としてマルチモーダルである)。一実施形態では、マルチモーダル陰イオン交換樹脂の陰イオン交換基は強イオン交換体である。別の実施形態では、マルチモーダル陰イオン交換樹脂の陰イオン交換基は弱イオン交換体である。特定の実施形態では、マルチモーダル陰イオン交換樹脂は芳香族基を含む。別の実施形態では、リガンドはN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、2−アミノベンゾイミダゾール及びチオミカミンからなる群から選択される。本方法で使用するマルチモーダル陰イオン交換樹脂は、上述の担体及び固定化に関する説明に基づいて、当業者が容易に製造できる。マルチモーダル陰イオン交換基は開示されており、例えば、米国特許第6702943号(Amersham Biosciences社)(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)を参照されたい。最良の実施形態では、本方法の第二段階は、非結合条件下においてマルチモーダル陰イオン交換樹脂で実施される陰イオン交換段階である。かくして、この段階では、第一段階から得られた溶出液を非結合条件下で第二のクロマトグラフィー樹脂に適用することによって、不純物を吸着させながら抗体を通過液(フロースルー)から回収する。 本方法は、マウス、齧歯類、霊長類及びヒトのような哺乳類ホストに由来する抗体、又はハイブリドーマのような培養細胞に由来する抗体のようなモノクローナル又はポリクローナル抗体の回収に有用である。一実施形態では、回収される抗体はヒト抗体又はヒト化抗体である。かかる抗体はどのクラスのものでもよく、IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMからなる群から選択できる。一実施形態では、精製すべき抗体は、プロテインA或いはFc含有抗体フラグメント又は融合タンパク質に結合し得る抗体である。特定の実施形態では、回収される抗体は免疫グロブリンG(IgG)である。これについて説明すると、「抗体」という用語は、抗体フラグメント及び抗体又は抗体フラグメントを含む融合タンパク質も包含することを理解すべきである。かくして、本発明は、上述の抗体のいずれか1種のフラグメント並びにかかる抗体を含む融合タンパク質の精製も包含する。本発明に従って単離される抗体は、特定の個人の治療のために設計された薬剤を提供するため、パーソナライズドメディスン用のような医薬品として有用である。本発明に従って単離される抗体は、研究及び診断分野でも有用である。 上述の通り、本明細書に記載されるマルチモーダル陽イオン交換樹脂のマルチモーダルリガンドは、通常、陽イオン交換基(即ち、負に荷電又は荷電し得る基)及び1以上の芳香族又は複素芳香族環系を含む。しかし、当業者には自明であろうが、2種以上のリガンドを担体に結合することによって同等の樹脂を製造できる。この場合、一方の種類のリガンドは陽イオン交換基を含むのに対し、他方の種類は芳香族又は複素芳香族環系を含む。このように、本明細書に記載される官能基は単一の結合基を介して担体に結合するか、或いは異なる結合基を介して担体に結合することができる。かくして、一実施形態では、本発明は液体から1種以上の抗体を捕獲する方法に関する。この方法は、リガンドを固定化した担体からなるマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂に上記液体を接触させて抗体をリガンドに吸着させる段階を含んでなり、該樹脂は同一リガンド又は異なるリガンドに存在する陽イオン交換基及び芳香族又は複素芳香族環系を含み、該環系の環形成原子は炭素(C)、硫黄(S)及び酸素(O)原子からなる群から選択される。別の実施形態では、本発明は液体から1種以上の抗体を精製する方法に関する。この方法は、リガンドを固定化した担体からなるマルチモーダル第一のクロマトグラフィー樹脂に上記液体を接触させて抗体をリガンドに吸着させる段階であって、該樹脂が同一リガンド又は異なるリガンドに存在する陽イオン交換基及び芳香族又は複素芳香族環系を含む段階、該樹脂から抗体を遊離させるための溶出剤を添加する段階、並びに得られた溶出液を第二のクロマトグラフィー樹脂に接触させる段階を含んでなる。第二のクロマトグラフィー段階がマルチモーダル陰イオン交換樹脂上で実施される実施形態では、上述の説明がマルチモーダル陰イオン交換樹脂にも等しく当てはまる。 第二の態様では、本発明は、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂、第二のクロマトグラフィー樹脂、2種以上の緩衝液、及び抗体の精製法を記載した使用説明書を別々の区画内に含んでなるキットである。この場合、マルチモーダルリガンドは1以上の陽イオン交換基及び1以上の芳香族又は複素芳香族環系を含む。一実施形態では、芳香族又は複素芳香族部分の環形成原子は炭素(C)、硫黄(S)及び酸素(O)からなる群から選択される。別の実施形態では、異種の基は異なるリガンドに存在しているが、それでもクロマトグラフィー樹脂はほぼ等しい割合の各基を含み、実質的にすべての基が目標との相互作用に利用できる。本キットは、上述の抗体精製法のいずれかに使用できる。好適な実施形態では、樹脂は生体適合性プラスチック(例えば、ポリプロピレン)又はガラスのような慣用材料で作られたカラム内に存在する。カラムは、抗体の実験室規模精製又は大規模精製のために適したサイズのものであり得る。特定の実施形態では、カラムにはルアーアダプター、チューブコネクター及びドームナットが備わっている。好適な実施形態では、マルチモーダルクロマトグラフィー樹脂は使い捨て型のクロマトグラフィーカラム内に存在している。使用後に樹脂を処分することによって、異なるプロセス間での相互汚染の危険が排除される。 最後に、本発明は抗体精製用の使い捨てクロマトグラフィーカラムを包含し、この使い捨てクロマトグラフィーカラムは同一リガンド又は異なるリガンドに陽イオン交換基並びに芳香族及び/又は複素芳香族環系を含むマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂を含んでなる。一実施形態では、使い捨てクロマトグラフィーカラムは、各リガンドが1以上の陽イオン交換基及び1以上の芳香族又は複素芳香族環系を含むマルチモーダルクロマトグラフィー樹脂を含んでなる。使い捨てカラムの特定の実施形態では、マルチモーダルリガンドの芳香族又は複素芳香族環系の環形成原子が炭素(C)、硫黄(S)及び酸素(O)原子からなる群から選択される。本発明の使い捨てクロマトグラフィーカラムには、通常の液体クロマトグラフィー用の樹脂が充填されていてもよいし、或いは流動床吸着(即ち、作業中に樹脂を流動化する方法)に適した形態の樹脂を供給してもよい。最後に述べた場合には、リガンドを担持する担体には若干の常用高密度充填材(例えば、鋼又はガラス)が供給されている。 図面の詳しい説明 図1は、後記の実施例3に記載の通り、マルチモーダル陽イオン交換クロマトグラフィー媒体(U1128042)でのIgG含有原料の精製のクロマトグラムを示す。ゲル濾過による分析のため、画分9〜16を捕集してプールした。回収率は>95%であることがわかった。280nmでのUV吸光度を実線で示し、導電率を破線で示し、pHを点線で示す。 図2は、後記の実施例3に記載の原料(カラムU1128042での出発原料)の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。試料は0mlで注入され、IgGピークは13mlに現われる。13mlのピークは目標MAbであり、残りのピークは凝集体及び/又は宿主細胞タンパク質である。 図3は、実施例3に記載の通り、U1128042から溶出したプール画分9〜16の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。13mlのピークが目標MAbであり、残りのピークは溶出試料中の凝集体及び/又は宿主細胞タンパク質である。 図4は、本発明に係る方法の段階2、具体的には後記の実施例4に記載のマルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィーを用いる高度精製から得られたクロマトグラムを示す。第一の精製段階(実施例3)での溶出で得られたプール画分9〜16を、pH6に調整した後にカラムに適用した。分析用ゲル濾過によれば、通過液からの画分3〜10中のIgG純度は非常に高いと推定された(図5参照)。pH6を用いれば、IgGはすべて通過液中に集まると予測された。しかし、クロマトグラムの形状は若干のタンパク質がカラムに結合することを示している。これは、このクロマトグラフィー操作後の回収率が80%と計算されたことでも確認された。流動緩衝液による洗浄の開始時に見られる余分のピークは、恐らくはゆるく結合したタンパク質がカラムから脱離したものであろう。 図5は、後記の実施例4に記載の通り、カラム238092からの通過液(画分3〜10)の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。13のピークがIgGであり、10のピークが凝集体である。この分析方法では、宿主細胞タンパク質汚染物はほとんど検出できない。目盛は図2及び3と同じでなく、さらに拡大してある。 以下の実施例はもっぱら例示目的のために示され、特許請求の範囲の範囲で定義される本発明の技術的範囲を限定するものと決して解釈すべきでない。本明細書で以下に及びその他の箇所に示すすべての参考文献の開示内容は、援用によって本明細書の内容の一部をなす。 実施例1:マルチモーダル陽イオン交換樹脂の製造(第一段階) 以下に示すマトリックスの体積は、沈降層の体積をいう。グラム単位で示すマトリックスの重量は、(水ポンプによる)減圧乾燥後の重量をいう。これらのマトリックスはなお水和材料であることに注意すべきである。以下に述べる攪拌は吊り下げた電動式攪拌機で行ったが、これは棒磁石攪拌機の使用がビーズを傷つけやすいからである。官能基の分析及びビーズ上のイオン交換基のアリル化度、エポキシ化度又は置換度の測定は、当業者に公知の慣用法による。以下の方法は、最後には、特に硫黄原子に関するゲルの元素分析によって補完された。 実施例1(a):マルチモーダルリガンドプロトタイプU1012054 この実施例では、3−アミノ−4−(プロピルスルホニル)チオフェン−2−カルボン酸をいかにしてNHS−活性化アガロースキャリヤーに結合したかを説明する。 チオプロピオン酸Sepharose(商標)の製造:100mlのアリル活性化(0.3mmolアリル/ml)Sepharose(商標)6 Fast Flowゲル(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))、4gのAcONa及び100mlの蒸留水からなる攪拌懸濁液に、持続的な黄色が得られるまで臭素を添加した。次いで、懸濁液が完全に脱色されるまでギ酸ナトリウムを添加した。反応混合物を濾過し、ゲルを500mlの蒸留水で洗った。次いで、活性化ゲルを直ちに反応器に移し、添加前に50%NaOH水溶液でpH11.5に調整した、17.5mlのチオプロピオン酸(アリル基当たり6当量)及び12gのNaClの水溶液(50ml蒸留水)で処理した。反応混合物を攪拌しながら50℃で18時間放置した。反応混合物を濾過し、500mlの蒸留水で洗ったところ、ゲル1ml当たりのCO2Hが0.29mmolの置換度を有するチオプロピオン酸Sepharose(商標)が得られた。 N−ヒドロキシスクシンイミドによるゲルの活性化:次に、得られたチオプロピオン酸Sepharose(商標)100mlを300mlの1M NaCl、500mlの0.1M HCl、500mlの50%アセトン水溶液、500mlのアセトンで順次に洗った。洗った後、ゲルをアセトン中で沈降させ、上清をサイホンで吸い出し、沈降したビーズを20mlのアセトンを用いて反応器に移した。次いで、80mlのアセトン中に15.2gのN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)を溶解した溶液、及び80mlのアセトン中にジシクロヘキシルカルボジイミドを溶液した別の溶液を共に添加した。反応スラリーを攪拌しながら30℃で18時間放置した。濾過後、丸1日の作業により、ゲルを150mlのイソプロパノールでゆっくりと(重力流れにより)10回洗った。NH4OHとの反応後にNHS活性化度を測定したところ、約80%であったが、これはゲル1ml当たりのNHS官能基が約0.23mmolの活性化に相当していた。 NHS活性化チオプロピオン酸Sepharose(商標)へのマルチモーダルリガンドの結合:国際公開第02/05959号(リガンド12)に記載されているようにして、3−アミノ−4−(プロピルスルホニル)チオフェン−2−カルボン酸を製造した。2mlの蒸留水中に565mgの3−アミノ−4−(プロピルスルホニル)チオフェン−2−カルボン酸(2.27mmol)を溶解した溶液、2mlの1M NaHCO3及び2mlのエタノールの可溶性混合物を調製し、50%NaOHを注意深く添加することでpH8.5に調整した。 NHS活性化チオプロピオン酸Sepharose(商標)(10ml)を20mlの氷冷1mM HCl溶液で手早く洗った。次いで、ゲルを三角フラスコに移し、そこにチエニルセリン溶液を添加した。反応混合物を室温で振盪テーブル上に18時間放置した。 反応混合物の濾過後、ゲルを40mlの蒸留水、20mlのエタノール、20mlの0.25Mエタノールアミン水溶液、20mlの蒸留水、20mlの1M NaCl水溶液、及び20mlの蒸留水で順次に洗った。 実施例1(b)〜(d) 以下の実施例1(b)〜(d)では、国際公開第03/024588号に記載されているように、D,L−ホモシテインチオラクトンを足場として用いてマルチモーダルリガンドプロトタイプU790P65、U790P71及びU790P73を製造した。簡単に説明すると、ホモシテインチオラクトンをアシルクロリド又はアンヒドリドと反応させてアミド結合を形成した後、塩基性加水分解でチオラクトンの開環を行い、得られた化合物をさらに活性化Sepharose(商標)6FF(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))に結合した。 実施例1(b):マルチモーダルリガンドプロトタイプU790P73:ジクロロメタン(DCM、120ml)中にD,L−ホモシテインチオラクトン(11.5g、75mmol)及びジイソプロピルアミン(DIPEA)(26ml、150mmol)を溶解した0℃の溶液に、30mlのDCM中にベンゾイルクロリド(8.7ml、75mmol)を溶解した溶液を滴下した。混合物を室温で1晩攪拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、反応残留物を酢酸エチル(300ml)で抽出した。有機相を10%クエン酸水溶液(w/w、200ml)、10%K2CO3水溶液(200ml)、水(200ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を除去して白色固体(13.8g、83%)を得た。0℃で、276mg(1.25mmol)の白色固体に5N水酸化ナトリウム溶液(5ml)を添加し、混合物をさらに室温で2時間攪拌した。アリル化Sepharose(商標)6 Fast Flow(250μmol/ml)から出発して公知手順で得た臭素化Sepharose(商標)6 Fast Flow(10ml)(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))を、(上述の)リガンドのアルカリ溶液と混合して1晩にわたり50℃まで温めた。反応後、ゲルを濾過し、水(2×150ml)、エタノール(2×150ml)、0.2M酢酸(2×150ml)及び水(2×150ml)で洗った。次いで、酸基の滴定でゲルのイオン容量を測定したところ、ゲル1ml当たり103μmolであった。 実施例1(c):マルチモーダルリガンドプロトタイプU790P65:ジクロロメタン(DCM、6ml)中にD,L−ホモシテインチオラクトン(1.58g、10.3mmol)及びジイソプロピルアミン(DIPEA)(3.58ml、20.6mmol)を溶解した0℃の溶液に、4mlのDCM中に3,4,5−トリメトキシベンゾイルクロリド(2.37g、10.3mmol)を溶解した溶液を滴下した。混合物を室温で1晩攪拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、反応残留物を酢酸エチル(50ml)で抽出した。有機相を10%クエン酸水溶液(w/w、30ml)、10%K2CO3水溶液(30ml)、水(30ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後、溶媒を除去して白色固体(2.21g、69%)を得た。0℃で、389mg(1.25mmol)の白色固体に5N水酸化ナトリウム溶液(5ml)を添加し、混合物をさらに室温で2時間攪拌した。アリル化Sepharose(商標)6 Fast Flow(250μmol/ml)から出発して公知手順で得た臭素化Sepharose(商標)6 Fast Flow(10ml)(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))を、(上述の)リガンドのアルカリ溶液と混合して1晩にわたり50℃まで温めた。反応後、ゲルを濾過し、水(2×150ml)、エタノール(2×150ml)、0.2M酢酸(2×150ml)及び水(2×150ml)で洗った。次いで、ゲルのイオン容量を測定したところ、ゲル1ml当たり59μmolであった。 実施例1(d):マルチモーダルリガンドプロトタイプU790P71 ジクロロメタン(DCM、6ml)中にD,L−ホモシテインチオラクトン(1.58g、10.3mmol)及びジイソプロピルアミン(DIPEA)(3.58ml、20.6mmol)を溶解した0℃の溶液に、4mlのDCM中にフェニルグルタル酸無水物(1.96g、10.3mmol)を溶解した溶液を滴下した。混合物を室温で1晩攪拌した。溶媒を真空下で蒸発させ、反応残留物を直ちに5N水酸化ナトリウム溶液(10ml)で処理し、さらに室温で2時間攪拌した。アリル化Sepharose(商標)6 Fast Flow(250μmol/ml)から出発して公知手順で得た臭素化Sepharose(商標)6 Fast Flow(10ml)(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ))を、上述のリガンドのアルカリ溶液1.4mlと混合して1晩にわたり50℃まで温めた。反応後、ゲルを濾過し、水(2×150ml)、エタノール(2×150ml)、0.2M酢酸(2×150ml)及び水(2×150ml)で洗った。次いで、ゲルのイオン容量を測定したところ、ゲル1ml当たり110μmolであったが、これはゲル1ml当たり55μmolのリガンド置換度に相当していた。 実施例2:マルチモーダル陰イオン交換樹脂の製造(第二段階) 概説 マトリックスの体積は、沈降層の体積をいう。 グラム単位で示すマトリックスの重量は、減圧乾燥後の重量をいう。これらのマトリックスはなお水和材料であることに注意すべきである。 大規模反応については、攪拌は吊り下げた電動式攪拌機によるが、これは棒磁石攪拌機の使用がビーズを傷つけやすいからである。(ゲル20ml又はgまでの)小規模反応は密閉バイアル中で実施し、攪拌は振盪テーブルの使用による。 官能基の分析及びビーズ上のイオン交換基のアリル化度、エポキシ化度又は置換度の測定は、通常の方法による。 1.マトリックスへのアリル基の導入 典型的な手順では、アリルグリシジルエーテルを用いてアリル化を行ったが、固形担体へのアリル基の導入は臭化アリルを用いても容易に達成できることに注意されたい。 アリルグリシジルエーテルによるSepharose(商標)の活性化 100gのSepharose(商標)6FFを80gに減圧乾燥し、0.4gのNaBH4、12gのNa2SO4及び45mlの50%NaOH水溶液と混合した。混合物を50℃で1時間攪拌した。100mlのアリルグリシジルエーテルの添加後、懸濁液を激しく攪拌しながら50℃でさらに20時間放置した。混合物の濾過後、ゲルを500mlの蒸留水、500mlのエタノール、200mlの蒸留水、200mlの0.2M酢酸及び500mlの蒸留水で順次に洗った。 滴定の結果、ゲル1ml当たり0.32mmolの置換度が得られた。 2.マトリックスへのリガンドの結合 マトリックスとの結合は、アリル基の臭素化及び塩基性条件下での求核置換によって選択的に実施した。 臭素化によるアリルSepharose(商標)の活性化 100mlのアリル活性化Sepharose(商標)6FF(排水したゲル1ml当たり0.32mmolのアリル基)、4gのAcONa、及び100mlの蒸留水からなる攪拌懸濁液に、持続的な黄色が得られるまで臭素を添加した。次いで、懸濁液が完全に脱色されるまでギ酸ナトリウムを添加した。 反応混合物を濾過し、ゲルを500mlの蒸留水で洗った。次いで、活性化ゲルを直ちに反応器に移し、さらに適当なマルチモーダル陰イオン交換リガンドと反応させた。 2−アミノベンゾイミダゾール−Sepharose(商標) 上述のようにして得た臭素活性化ゲル(排水したゲル1ml当たり0.32mmolのアリル基)10gを、水(6ml)及びエタノール(3ml)中に2−アミノベンゾイミダゾール(2g)を溶解して50%NaOH水溶液の添加でpH12に調整した溶液を含む反応バイアルに移した。 反応混合物を攪拌しながら55℃で17時間放置した。反応混合物の濾過後、ゲルを3×10mlの蒸留水、3×10mlの0.5HCl水溶液及び最後に3×10mlの蒸留水で順次に洗った。ゲル1ml当たりアミン基0.17mmolの置換度を有する2−アミノベンゾイミダゾール−Sepharose(商標)ゲルが得られた。 実施例3:マルチモーダル陽イオン交換体への抗体の捕獲 材料及び方法 クロマトグラフィーカラムTricorn(商標)5/50内で、上記実施例1に記載したようにして製造したリガンドU790P73(N−(2−オキソ−テトラヒドロ−チオフェン−3−イル)ベンズアミド)を含むプロトタイプ樹脂を、ゲル1ml当たり40μmolの置換度となるようにSepharose(商標)6FFに結合し、1mlのカラム容積に充填した。 出発原料は、常法で調製したチャイーズハムスター卵巣(CHO)細胞清澄化原料であった。この原料は、塩基性であって9.1のpI値及び1.7の吸光係数(ε)を示すヒト化IgG1を0.8g mAb/Lの濃度に含んでいた。 原料のpHを濃酢酸の添加で6に調整した後、25mlの原料をマルチモーダル陽イオン交換カラムにロードした。50mMリン酸緩衝液、pH6をローディング緩衝液として使用し、ロード中の流速は100cm/hであった。14カラム体積の洗浄期間後、25mMリン酸緩衝液、pH7.5を用いるpH階段で結合タンパク質を溶出させた。洗浄及び溶出からの通過画分及び2ml画分を捕集した。 分析用ゲル濾過 分析用ゲル濾過は、溶出画分の純度の推定値を得るために実施した。出発原料並びにクロマトグラフィー操作からの通過液及びプール溶出液を分析した。10mMリン酸緩衝液、0.14M NaCl、pH7.4を0.5ml/分の流量で流動緩衝液として用いるSuperdex(商標)200 10/300GLカラムに50μlの試料を適用した。 回収率測定のためのプール溶出液中のタンパク質濃度の分析 溶出で得られた全プールを溶出緩衝液で5倍に希釈した。280nmでの吸光度を分光光度計で測定し、3つの反復測定した吸光度の平均値を用いることで、式1に従ってタンパク質濃度を求めた。溶出したタンパク質の総量を計算し、カラムに適用したIgGの総量で割って回収率を計算した。式1: C=A*希釈比/(l×ε)式中、C=IgGの濃度(mg/ml)A=280nmでの吸光度l=光路長(cm)ε=MAbに関するモル吸光係数。 結果 IgGは、pH6の結合緩衝液を用いてカラムに結合し、pH7.5を用いて溶出することができた。溶出で得られたプール画分(9〜16)は、出発原料のIgG純度に比べて高い純度でIgGを含んでいた。目標タンパク質は通過液中にほとんど見出されず(<5%)、回収率は>95%であると推定された。マルチモーダル陽イオン交換体での精製で得られたクロマトグラムを図1に示し、出発原料(原料)及び捕獲段階で得られたプール溶出液に関する分析用ゲル濾過で得られたクロマトグラムを図2及び図3に示す。 具体的には、最初に、CHO細胞清澄化原料をpH6に調整した後にマルチモーダル陽イオン交換クロマトグラフィー媒体(U1128042)にロードした。50mMリン酸塩、20mM Naスクシネート、pH6を結合緩衝液として使用し、pH段階を用いて結合タンパク質を溶出した。溶出のためには、25mMリン酸緩衝液、pH7.5を使用した。画分9〜16を捕集してプールし、ゲル濾過で分析した。回収率は>95%であることがわかった。図1では、280nmでのUV吸光度を実線で示し、導電率を破線で示し、pHを点線で示す。 原料(カラムU1128042での出発原料)の分析用ゲル濾過クロマトグラムに関しては、試料体積は50μlであり、溶出剤は0.5ml/分の流量のPBS緩衝液、pH7.4であった。試料は0mlで注入され、IgGピークは13mlに現われる。図2では、10mlのピークはIgG凝集体であり、残りのピークは宿主細胞タンパク質である。 U1128042から溶出したプール画分9〜16の分析用ゲル濾過クロマトグラムを図3に示す。第一のクロマトグラフィー段階後、汚染タンパク質は大幅に低減した。試料は0mlで注入され、13mlのピークはIgGであり、10mlのピークはIgG凝集体である。他のピークは溶出試料中の宿主細胞タンパク質である。 実施例4:陰イオン交換による高度精製 材料及び方法 クロマトグラフィーカラムHR5/5内で、リガンドとしての2−アミノベンゾイミダゾールをゲル1ml当たり170μmolの置換度となるようにSepharose(商標)6FFに結合したものからなる媒体(238092)を1mlのカラム容積に充填した。 この精製段階では、実施例2からのプール溶出液(画分9〜16)を出発原料として使用した。溶出液のpHは、10%酢酸の添加で6に調整した。25mMリン酸塩、pH6をローディング緩衝液として用いて、pH調整済みの溶出液8ml(約10mgのIgGに相当)をカラム238092に適用した。緩衝液条件(pH及び導電率)は、IgGに関する非結合条件となるように選択した。0.5ml/分の流量を使用し、試料適用及び洗浄中に1ml画分を捕集した。 通過液からのプール画分(3〜10)中のIgG純度を分析用ゲル濾過で分析した。溶出タンパク質の量を測定し、回収率を計算した。分析用ゲル濾過の方法並びにタンパク質濃度の測定及び回収率の計算は、実施例2の「材料及び方法」中に記載されている。 結果 マルチモーダル陽イオン交換クロマトグラフィーを用いる捕獲段階での精製で得られた溶出IgG画分を、さらに陰イオン交換クロマトグラフィーで精製した。この高度精製では、非結合条件を用いてカラムにIgGをロードした。分析用ゲル濾過によれば、この高度精製での通過液からのプール画分中のIgG純度はは非常に高いと推定された。非結合条件を使用したものの、若干のIgGはカラムに結合し、回収率は80%と計算された。 マルチモーダル陰イオン交換体での精製で得られたクロマトグラムを図4に示し、通過画分に関する分析用ゲル濾過で得られたクロマトグラムを図5に示す。 図6を得るためには、第一の精製段階(実施例3)での溶出で得られたプール画分(9〜16)を、pH6に調整した後にカラムに適用した。分析用ゲル濾過によれば、通過液からの画分3〜10中のIgG純度は非常に高いと推定された(図5参照)。pH6を用いれば、IgGはすべて通過液中に集まると予測された。しかし、クロマトグラムの形状は若干のタンパク質がカラムに結合することを示している。これは、このクロマトグラフィー操作後の回収率が80%と計算されたことでも確認された。流動緩衝液による洗浄の開始時に見られる余分のピークは、恐らくはゆるく結合したタンパク質がカラムから脱離したものであろう。 図7を得るためには、カラム238092に適用することで通過液(画分3〜10)の分析用ゲル濾過クロマトグラムを得た。13のピークがIgGであり、10のピークが凝集体である。この分析方法では、宿主細胞タンパク質汚染物はほとんど検出できない。目盛は図2及び3と同じでなく、さらに拡大してある。マルチモーダル陽イオン交換クロマトグラフィー媒体でのIgG含有原料の精製でのクロマトグラムを示す。上記実施例3に記載の原料の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。13mlのピークが目標MAbであり、残りのピークは凝集体及び/又は宿主細胞タンパク質である。実施例3に記載のU1128042から溶出したプール画分9〜16の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。本発明に係る方法の段階2、具体的には上記実施例4に記載のマルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィーを用いた高度精製でのクロマトグラムを示す。上記実施例4に記載のカラム238092からの通過液(画分3〜10)の分析用ゲル濾過クロマトグラムを示す。 液体から1種以上の抗体を精製する方法であって、マルチモーダルリガンドを固定化した担体からなる第一のクロマトグラフィー樹脂に上記液体を接触させて抗体を該樹脂に吸着させる段階であって、各マルチモーダルリガンドが1以上の陽イオン交換基及び1以上の芳香族又は複素芳香族環系を含む段階、該樹脂から抗体を遊離させるための溶出剤を添加する段階、並びに得られた溶出液を第二のクロマトグラフィー樹脂に接触させて、抗体を第二のクロマトグラフィー樹脂の通過液(フロースルー)から回収する段階を含んでなり、第二のクロマトグラフィー段階が陰イオン交換クロマトグラフィー又はマルチモーダル陰イオン交換クロマトグラフィーである、方法。 第1のクロマトグラフィー樹脂に接触させる液体が細胞培養液又は発酵ブロスである、請求項1記載の方法。 第1のクロマトグラフィー樹脂のマルチモーダルリガンドの芳香族又は複素芳香族環系の環形成原子が炭素(C)、硫黄(S)及び酸素(O)原子からなる群から選択される、請求項1又は請求項2記載の方法。 第1のクロマトグラフィー樹脂のマルチモーダルリガンドの陽イオン交換基が弱陽イオン交換体である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。 抗体がモノクローナル抗体である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。 抗体がポリクローナル抗体である、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。