生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ケルセチン生体吸収促進剤
出願番号:2007326403
年次:2015
IPC分類:A61K 31/352,A23L 1/30,A23L 2/52,A61K 47/36,A61P 1/02,A61P 9/12,A61P 31/04,A61P 31/12,A61P 35/00,A61P 37/08,A61P 39/06,A61P 43/00


特許情報キャッシュ

西嶋 智彦 齋藤 康雄 田村 伸二 松江 一 岩井 邦久 JP 5697834 特許公報(B2) 20150220 2007326403 20071218 ケルセチン生体吸収促進剤 グリコ乳業株式会社 390001270 瀧野 秀雄 100060690 川崎 隆夫 100070002 瀧野 文雄 100134832 田村 公總 100073276 津田 俊明 100165308 鳥野 正司 100110733 朴 志恩 100173978 西嶋 智彦 齋藤 康雄 田村 伸二 松江 一 岩井 邦久 JP 2006343164 20061220 20150408 A61K 31/352 20060101AFI20150319BHJP A23L 1/30 20060101ALI20150319BHJP A23L 2/52 20060101ALI20150319BHJP A61K 47/36 20060101ALI20150319BHJP A61P 1/02 20060101ALI20150319BHJP A61P 9/12 20060101ALI20150319BHJP A61P 31/04 20060101ALI20150319BHJP A61P 31/12 20060101ALI20150319BHJP A61P 35/00 20060101ALI20150319BHJP A61P 37/08 20060101ALI20150319BHJP A61P 39/06 20060101ALI20150319BHJP A61P 43/00 20060101ALI20150319BHJP JPA61K31/352A23L1/30 BA23L2/00 FA61K47/36A61P1/02A61P9/12A61P31/04A61P31/12A61P35/00A61P37/08A61P39/06A61P43/00 111 A61K31/352 CAPlus(STN)、BIOSIS(STN)、REGISTRY(STN)、MEDLINE(STN)、EMBASE(STN) 、JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開昭62−3741(JP,A) 特開2005−145933(JP,A) 特開2004−107295(JP,A) Food Chemistry,2001年,73,p.85−91 1 2008174553 20080731 15 20101005 2013009948 20130530 内田 淳子 増山 淳子 前田 佳与子 本発明は,フラボノイド、特にケルセチンの生体吸収の促進作用を有するケルセチン生体吸収用組成物に関する。 天然にはさまざまな生理活性を持ったフラボノイドが数多く知られている。フラボノイドには,抗酸化作用,抗変異原性,抗ガン性,血圧上昇抑制作用,抗菌・抗ウィルス作用,抗う歯(虫歯)作用,抗アレルギー作用が報告されている。しかしながら,例えばフラボノイドの一種であるバイカレインは投与量の1/300しか吸収されないといったように体内への吸収効率が極めて悪いことが知られている(Y.Wakui, et.al. J.Chromatog., 575, 131-136(1992))。また,例えばケルセチン(クエルセチンと表記してもよい)を代表とする多くのフラボノイドは,抗酸化作用を呈することによって各種疾病に対する予防効果が期待されているが,一方で生体に対する吸収性が悪いことが知られている。これに対して,例えば脂質類と共に摂取することによって,該吸収性が幾分向上することが報告される一方,例えばプロポリスから調整したフラボノイドについて,ケルセチンとα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液に糖転移酵素を作用させることによって,生体内で容易に加水分解され,該ケルセチンの生理活性作用を発現する新規なα−グリコシルケルセチンを生成する方法乃至これを用いた飲食物等が提案されている。 この場合,α−グルコシル糖化合物との酵素反応が必要であるため,前処理に10時間から24時間程度の酵素反応が必要となるうえ,酵素反応終了液には多くのα−グルコシル糖化合物が含まれるため食品に応用したときには味質に大きく影響を及ぼすことになる。そのため,α−グルコシル糖化合物を除去することも考えられるが,酵素反応をおこなったうえにα−グルコシル糖化合物を除去する工程が加わりコスト高となる。そのため現実的には生体内で効果を発現できる量を配合することは困難であった。また,酵素反応液をそのまま使用するとしても相当程度の生体に対する吸収性を得られることになるが,プロポリスからのフラボノイド,特にプロポリスのケルセチンを対象とするものとされるところである。ケルセチンは,プロポリス以外にも,例えばタマネギ,レタス,ブロッコリ,イチゴ,りんご,茶,そば等の各種野菜や果実に豊富に含まれており,該ケルセチンの他,緑茶,りんご等に含まれるカテキン,大豆等に含まれるイソフラボン等を含めたフラボノイドの吸収性を得ることができれば,各種飲食物を比較的安価に提供し得るとともにその生理活性作用によって各種疾病を予防するに好適なものとすることが可能となる。さらに,プロポリスのケルセチンとα−グルコシル糖化合物とを含有する溶液に糖転移酵素を作用させる方法はケルセチン配糖体のようなそれ自身に糖をもつ所謂配糖体に分類されるフラボノイドに限られており,糖を持たない所謂アグリコンに分類されるフラボノイドには応用できなかった。特開平5−32690号公報 本発明は係る事情に鑑みてなされたもので,その解決課題とするところは,フラボノイド、特にケルセチンの生体吸収を向上促進することが可能なケルセチン生体吸収促進剤を提供するにある。 上記課題に沿って鋭意検討した結果,本発明者らは,ペクチンが,フラボノイド、特にケルセチンの生体吸収に有効に作用することにより,高い生理活性作用を発現するに至るとの事実を見出した。即ち,フラボノイドに限らず生理活性物質は,経口投与後,消化管から吸収され,血液を介して体内を循環し,その薬理的な性質を発揮する。換言すれば体内で生理活性物質の薬理学的な性質を有効利用するためには,消化管から体内に取り込まれなくてはならず,従って効率よく薬理学的性質を発揮する上で,体内への吸収率が高いことが望ましい。また消化管から吸収されたフラボノイド、特にケルセチンの生理活性物質は,血流を循環し,一部が臓器等に蓄積されるが,多くは尿中に排泄され,一部は胆汁を介して便中に排泄される。従って血液中の濃度及び尿中への排泄量は消化管からの吸収率と一定の関係を有している。これらの観点から,本発明者らは消化管から体内に取り込むことを前提とするとともにペクチンの経口投与後の採血乃至採尿により血漿中代謝物濃度及び尿中代謝物排泄率を評価する等して研究を重ねた結果,(1)ラットを用いた実験によれば,りんご由来のペクチンを投与したラットの血漿への吸収は,非投与の場合に比して約2倍程度となり,ヒト試験によっても70%程度の向上が見られることから,その生体吸収性が高度に向上すること,(2)ペクチン濃度が0.2%を下回ると生体吸収性が得られず,0.2%以上とすることによって生体吸収作用の発現が認められ,0.3%以上とすることによってこれが顕著となること,このときペクチン濃度を3%以上とすると生体吸収作用に変化がみられず,逆にペクチン量が過剰となって増粘剤として作用することにより経口摂取の組成物乃至飲食物として不適当となること,ペクチン濃度が1%を超えるとこの傾向を生じる可能性があり,従ってペクチン濃度は0.3〜1%とするのが適当であること,(3)生体吸収作用の発現は,HM(ハイメトキシ)ペクチンとLM(ローメトキシ)ペクチンのうちHMペクチンに認められる一方,LMペクチンにはHMペクチンの如き生体吸収作用の発現を認め難いこと,(4)由来を異にする多数種のペクチンを検討した結果,それぞれのペクチンにフラボノイド生体吸収作用が認められるも,例えばりんご由来又はシトラス由来のペクチンにおいては生体吸収性が顕著であること等の知見を得るに至った。 本発明は上記知見に基づいてなされたものであって,請求項1に記載の発明を、リンゴ由来又はシトラス由来であって、メチルエステル化度を50%以上とするHMペクチンを有効成分として含有する、経口摂取のケルセチン生体吸収促進剤としたものである。 本発明は以上のとおりに構成したから,請求項1記載の発明は,リンゴ由来又はシトラス由来であって、メチルエステル化度を50%以上とするHMペクチンを有効成分とすることによってペクチンの生体吸収性を向上促進して,その生体吸収作用を有効に発現するようにした経口摂取のケルセチン生体吸収促進剤を提供することができる。 以下更に本発明を具体的に説明すれば,本発明におけるケルセチン生体吸収促進用組成物は,これを,ペクチンを有効成分として含有することによってケルセチンの生体吸収作用を付与したものとし,該組成物は、ペクチンを有効成分として含有することによってケルセチンの生体吸収作用を付与した各種の食品添加物乃至経口飲食物としてあり、また、該飲食物の製造方法は,これを,ペクチンを有効成分として添加することによってフラボノイド、特にケルセチンの生体吸収作用を付与するものとしてあり,上記組成物及び飲食物は,これらはヒトの経口摂取によってその生体吸収作用を有効に発現するように用いるものとしてある。 このとき,ペクチンは,フラボノイド、特にケルセチンの生体吸収に有効に作用し,高い生理活性作用を発現するが,実験によるとペクチン濃度が0.1%ではその発現がみられず,0.3%乃至1%,3%,5%とすることによって有意な吸収促進効果が認められるとともにペクチン濃度0.1%と0.3%との間に吸収促進作用の臨界があるものと認められ,従って吸収促進作用を発現する濃度の下限は概ね0.2%と想定される。従ってペクチン濃度の下限は,0.2%以上,好ましくは0.3%以上である。またペクチン濃度の増加は,フラボノイド、特にケルセチンの生体吸収作用を向上するが,一方でペクチンが増粘剤,ゲル化剤等として使用されるようにペクチンには増粘性乃至凝固性があり,ペクチン濃度を増加することは増粘乃至凝固の可能性を招くことになり,このときペクチン濃度が3%を超えると,増粘乃至凝固により風味,食感が損なわれ,経口摂取の組成物や飲食物として不適当となり,またペクチン濃度が1%を超えると,その傾向が生じる可能性がある。従ってペクチン濃度の上限は,3%以下,好ましくは1%以下とするのが好ましい。 ペクチンは,そのDE値(メチルエステル化度)50%,即ち全ガラクチュロン酸のうち,メチル化ガラクチュロン酸の占める割合によって,その50%以上をHM(ハイメトキシ)ペクチン,50%未満をLM(ローメトキシ)ペクチンとして一般に区分されるところ,実験によれば,その生体吸収性の向上促進効果は,これらのうちHMペクチンにおいて有効に認められる。従ってペクチンは,HMペクチン,即ちDE値50%以上のものを使用するのが好ましい。 ペクチンは,果実,野菜等の植物細胞壁の構成成分として,セルロース等と結合した天然の高分子多糖類であるから,ペクチンの由来について,これを特に限定して特定のものとすべき必要はないと考えられるが,実験によると,ペクチンをりんご由来又はシトラス由来のものとすることによって,フラボノイド、特にケルセチンの生体吸収を向上促進して生体吸収効果を高度に確保することができ,従ってペクチンは,りんご由来又はシトラス由来のものとするのが好ましく,これによってフラボノイド、特にケルセチンの生体吸収作用を有効に発現する組成物又は飲食物を可及的簡易且つ確実に得ることができる。 りんご由来ペクチンは,バラ科果樹の果実として,またシトラス由来ペクチンは,ミカン科果樹の果実として,それぞれその品種や改良品種についても,これを特に限定する必要はないものと考えられ,これらペクチンは,例えばりんご又はシトラスのプロトペクチンに酸乃至アルカリを作用することによって得られるが,一般には市販のりんごペクチン又はシトラスペクチンを用いるのが簡便であるとともにそのフラボノイド生体吸収作用を有効に発現することができる。またペクチンは通常高分子化合物であるが,ペクチナーゼやペクチン酸リアーゼのような分解酵素で分解し低分子化したペクチンやペクトオリゴ糖を用いることも好適であると考えられる。 りんごペクチン又はシトラスペクチンを有効成分とすることによってフラボノイド、特にケルセチンの生体吸収作用を付与したケルセチン生体吸収促進用組成物は,これを水溶液,粉末等適宜の形態としてケルセチン含有食品に添加してなるものとし,またケルセチンを併用含有することによってその余の食品に添加する食品添加物として市場に提供することができる。フラボノイド、特にケルセチン生体吸収促進用飲食物は,上記組成物を、清涼飲料水、菓子、加工食品又はサプリメントとしてあり、例えばりんごペクチン又はシトラスペクチンやその上記食品等添加物を使用した,フラボノイド、特にケルセチンを含有した清涼飲料水やサプリメント,調味料,さらにチョコレート,クッキー,ビスケット,ぐみ,ガム,ゼリー等の菓子類,アイスクリーム,氷菓,ヨーグルト,チーズ及びカレー,レトルト食品,ラーメン等の加工食品,ハム,ソーセージ,惣菜等を含む一般に飲食される加工食品分野の飲食物として同じく市場に提供することができる。一方該生体吸収促進用飲食物の製造方法は,その工場における製造に際して,上記ペクチン乃至りんご由来又はシトラス由来のペクチン或いはその上記食品添加物を原料として使用するか,その製造工程の中間段階でこれを添加使用するようにすればよく,またその生体吸収促進用組成物の製造方法にあっても,上記ペクチン乃至りんご由来又はシトラス由来のペクチンを原料として使用するか,同様にその製造工程の中間段階で添加使用するようにすればよい。 このときりんごペクチン又はシトラスペクチンには,上記組成物や飲食物の性状に合せて,この種飲食物に添加含有するように併用してこれに添加することを妨げない。 ペクチン,例えば上記りんごペクチン又はシトラスペクチンを有効成分とすることによって吸収促進作用を付与するフラボノイドは,ケルセチンの他,緑茶,りんご等に含まれるカテキン,大豆等に含まれるイソフラボン等であり,従って上記フラボノイド生体吸収促進用の飲食物の例としては,例えば経口摂取に適した緑茶飲料,野菜果汁飲料,果汁飲料等の各種清涼飲料,野菜や果実を用いたサプリメントやその他の加工食品が,これらにフラボノイドを豊富に含有し,りんごペクチンによるフラボノイド生体吸収作用を高度に発現することによって,特に好ましい。従ってフラボノイドを含有する上記緑茶飲料,野菜果汁飲料,果汁飲料等に該ペクチンを含有するようにすることは,ペクチン摂取の手段として推奨される。因みにペクチンとフラボノイド、特にケルセチンは,双方を含有するものを経口摂取することによって同時摂取しても,これらを別途に経口摂取することによって各単独摂取しても,その双方が可能であり,同時摂取,単独摂取のいずれによってもその生体吸収効果を発揮することができる。 またペクチンのフラボノイド、特にケルセチンの生体吸収の向上促進作用は,単回の摂取によっても,継続した摂取によってもそれぞれ有効に認められ,従ってその生体吸収を促進するために,組成物又は飲食物を継続的に摂取することは必ずしも必要ではない。即ち実験によれば,ペクチンのフラボノイド、特にケルセチンの生体吸収作用の発現は,継続した摂取について確認されるとともに,例えば摂取の当日においても確認され,従って単回の摂取も有効であると認められる。 フラボノイドには例えば血圧降下作用,コレステロール低下作用,抗がん作用,糖尿病予防作用が知られている,ヘスペリジン,ルチン,などのビタミンP類,ディオスミン,苦味成分としてナリンジンなどもある。ここでいうフラボノイドはフラボノール,フラバノン,フラバノノール,フラバン,フラボン,フラバノール,アントシアニジン,カルコンなどのいわゆるフラボノイド類だけではなく,イソフラボンも含まれる。フラボノイドはそれ自身配糖体であっても糖を持っていないアグリコンであってもよい。例えば,エリオシトリン,ネオエリオシトリン,ナリルチン,ナリンギン,ヘスペリジン,ヘスペレチン,ネオヘスペリジン,ネオポンシリン,ポンシリン,ルチン,ケルセチン,イソロイフォリン,ロイフォリン,ディオスミン,ネオディオスミン,シネンセチン,ノビレチン,タンジェレチン,カテキン,カテキンガレート,エピガロカテキン,エピガロカテキンガレート,ウーロン茶重合ポリフェノール,アントシアニンおよびヘプタメトシキフラボンなどがある。本願発明ではフラボノイド、特にケルセチンとペクチンを混合する手法であるので,ケルセチンは,単独で使用しても2種類以上のフラボノイドとの混合で使用してもよい。さらにフラボノイドは配糖体であってもアグリコンであってもよい。 7週齢のWistar系雄性ラットを標準固形飼料(オリエンタル酵母工業株式会社製MF)で1週間予備飼育した後,各群の平均体重が等しくなるように分けた各5匹の2群のうちPQ群5匹に,表1PQ欄に示すとおり,ペクチン(リンゴ由来ペクチン,シグマアルドリッチジャパン社製)をセルロースと置換する形で5%W/W含有するように作成した試験飼料を42日間自由摂取させ,43日目に17時間絶食させ,1%W/Wカルボキシメチルセルロースナトリウムとともに蒸留水に懸濁したケルセチン懸濁液(ケルセチン50mg/kg体重/3mL)を胃ゾンデにより経口投与した。投与0,1,2,4,8,24時間後にそれぞれ尾動脈より採血し,PQ群5匹の血漿を回収した。血漿のケルセチン量を以下の方法で測定した。β−グルクロニダーゼで脱抱合化反応を120分間行い,アセトンで抽出した後,抽出液を減圧下で乾固した。これを溶媒(0.5%リン酸水溶液:アセトニトリル=65:35)に再溶解し,HPLC−UV(370nm)によって測定した。該血漿中のケルセチン量は,ケルセチン及びイソラムネチン代謝物の総和として濃度−時間曲線で示し,投与後24時間までの吸収量は,濃度−時間曲線下面積(AUC,μM・hr)として算出した。有意差検定についてはStudent′s t−testにより実施した。危険率5%未満で有意差があるものを*印で示した。結果を図1及び図2に示す。比較例1 上記2群のうちCQ群5匹に,表1CQ欄に示すとおり,ペクチンを0%W/Wとするように作成した試験飼料を用いた以外,実施例1と同様にした。結果を同じく図1及び図2に示す。 実施例1の結果を比較例1と対比すると,5%W/Wのりんごペクチン含有飼料を摂取したPQ群5匹は,非摂取の比較例に対してケルセチン吸収量が約2倍であり,りんごペクチンによる生体のケルセチン吸収促進作用,即ちフラボノイド生体吸収促進作用が確認された。 7週齢のWistar系雄性ラット24匹を6匹ずつに分けた4群のうちSHM群及びUHM群の各6匹に表2のペクチン群欄に示すとおり,HMペクチン(りんご由来ペクチン,シグマアルドリッチジャパン社製,ユニテックフーズ株式会社製UNIPECTIN HM‐1)をセルロースと置換する形で5%W/W含有するように作成した試験飼料を投与してそれぞれ自由摂取させた。投与21日目に腹部大動脈から採血し,血漿を得た,実施例1と同様に血漿中のケルセチン代謝物量をHPLC−UVによって同様に測定した。結果を図3に示す。比較例2 上記4群のうちコントロール群6匹に表2のコントロール群欄に示すとおりペクチンを0%W/Wとした試験飼料を,ULM群6匹に同じく表2のULM群欄に示すとおりLMペクチン(りんご由来ペクチン,ユニテックフーズ株式会社UNIPECTIN LMSN325)5%W/W含有した試験飼料を投与した以外,実施例2と同様とした。結果を同じく図3に示す。 実施例2の結果を比較例2と対比すると,SHM群,UHM群において血漿中のケルセチン代謝物濃度が,ペクチン非投与のコントロール群,LMペクチン投与のULM群に比較して有意に高値であった。以上の結果,りんごペクチンはケルセチンと同時投与することによって,その吸収率を向上できることが判明し,またDE値が50%以上のHMペクチンに効果が認められる一方,LMペクチンに投与による効果が認められなかった。従ってりんごペクチンによるケルセチン吸収率の向上メカニズムにはペクチン中のメチル基が何らかの作用を及ぼしている可能性が推察される。 7週齢のWistar系雄性ラット12匹を6匹ずつに分けた2群のうちペクチン群6匹に,1日8時間,表3のペクチン群欄に示すとおり,0.2%W/Wケルセチンと5%W/Wりんごペクチンを含む試験試料を投与する制限給餌方法で7日間試験飼育を行い,毎日試験試料摂取前後に尾動脈血漿と摂取後24時間の尿を採取し,それぞれ投与開始時,及び投与開始8時間後における血漿及び尿中のケルセチン代謝物量をHPLC−UVによって同様に測定した。試験飼料摂取期間中の体重,摂取量に群間で差はなく,またいずれの試験日においても摂取時間8時間内に摂取したケルセチン量に差は見られなかった。投与開始時及び8時間後の結果を図4に,投与ケルセチンの累積尿中排泄率を図5に示す。比較例3 2群のうちコントロール群に0.2%W/Wケルセチンと5%W/Wセルロースを含む表3のコントロール群に示す試験試料を投与した以外,実施例3と同様とした。結果を同じく図4及び図5に示す。 実施例3の結果を比較例3と対比すると,摂取1日目(投与開始8時間後)の時点で血漿中代謝物濃度が有意に高く,同じく摂取1日目(投与開始24時間後)の尿中代謝物排泄率についても有意に高かった。ペクチン群の血漿中代謝物濃度及び尿中代謝物排泄率は,摂取日数の経過と共に増加し,比較例3のコントロール群との差が拡大した。以上の結果,りんごペクチンの同時摂取によるケルセチン吸収率向上の効果は,小腸の環境変化など,効果発現に摂取期間が必要なメカニズムによるものではなく,単回の摂取でも有意差がみられるとおり,即効性があることが示唆された。 7週齢のWistar系雄性ラット12匹を3匹ずつに分けた4群のうちペクチン0.3%群,ペクチン5.0%群に,セルロースの一部もしくは全部を置換する形で,それぞれりんごペクチン濃度が0.3%W/W,5.0%W/Wとなるようにし,更にケルセチンを0.2%W/W加えた表4に示すペクチン0.3%群,ペクチン5.0%群の各試験飼料を,毎日午前9時〜午後5時の8時間投与する制限給餌方法で3日間飼育した。試験試料摂取前後(午前9時及び午後5時)に尾動脈から採血し,血漿サンプルを得て,その血漿中のケルセチン代謝物濃度をHPLC−UVで測定した。試験飼料摂取期間中の体重,摂取量に群間で差はなく,またいずれの試験日においても摂取時間8時間内に摂取したケルセチン量に差は見られなかった。各群間の差が最も明確となった試験開始後56時間(摂取3日目の午後5時)でのケルセチン代謝物濃度を図6に示す。比較例4 4群のうちペクチン0%群に,りんごペクチン濃度を0%W/W,ペクチン0.1%群にりんごペクチン濃度を0.1%W/Wとして,更にケルセチンを0.2%W/W加えた表4に示すペクチン0%群,ペクチン0.1%群の試験飼料を投与した以外,実施例4と同様とした。結果を同じく図6に示す。 実施例4の結果を比較例4と対比すると,試験飼料摂取期間における尾動脈血漿中のケルセチン代謝物濃度は,ペクチン0.3%群及び5.0%群は比較例4のペクチン0%群,ペクチン0.1%群より高く推移した。以上の結果,ケルセチン吸収促進効果は0.1%と0.3%間にその臨界があり,その下限は約0.2%であり,従ってケルセチン吸収促進効果が発現するに必要なりんごペクチンの摂取は0.2%以上,好ましくは0.3%以上であると認められる。 7週齢のWistar系雄性ラット21匹を3匹ずつに分けた7群のうちPC群,C90群,C60群の3群に,食物繊維と置換する形でペクチンを5%W/Wとなるようにし,更にケルセチン0.2%W/Wを加えた表5のPC(ペクチンはシグマアルドリッチジャパン社製りんご由来ペクチン,HMペクチン),C90(ペクチンはシグマアルドリッチジャパン社製シトラス由来ペクチン,ペクチン(エステル化度90%)),C60(ペクチンはシグマアルドリッチジャパン社製シトラス由来ペクチン(エステル化度60%))の表5に示す各混合飼料を投与する以外,実施例4と同様とした。試験飼料摂取期間中の体重,摂取量に群間で差はなく,またいずれの試験日においても摂取時間8時間内に摂取したケルセチン量に差は見られなかった。群間の差が最も明確となった試験開始後56時間(摂取3日目の午後5時)でのケルセチン代謝物濃度を図7に示す。比較例5 7群のうちNC群に,りんごペクチン濃度を0%W/Wにしてセルロース(オリエンタル酵母工業株式会社製)5%,LM群にセルロースに置換する形でりんご由来LMペクチン(ユニテックフーズ株式会社UNIPECTIN LMSN325)5%W/W,C30群に同じくシトラスペクチン(シグマアルドリッチジャパン社製シトラス由来ペクチン(エステル化度30%))5%W/W,Dex群に同じく難消化性デキストリン(松谷化学製)5%W/W加え,更にケルセチンを0.2%W/W加えた表5に示すNC,C30,Dexの試験飼料を投与した以外,実施例5と同様とした。結果を同じく図7に示す。 実施例5の結果を比較例5と対比すると,りんごHMペクチンに置換したPC群,シトラスHMペクチンに置換したC90群,C60群がそれぞれ比較例より高く推移した。以上の結果から,りんご,シトラスともにそのHMペクチンには,比較例のもの(LMペクチン,食物繊維)に比して有意なケルセチン吸収効果が認められた。 20〜30代の成人男子6名(平均年齢32.2±2.5,平均体重72.5±8.3kg,BMI23.6±2.9)を被験者としてヒト採取試験を実施した。試験は後述の比較例6の試験サイクル前の3名及び比較例6の試験サイクル終了後の3名に終了後2日以上の間隔をあけてそれぞれ実施した。即ち,70mgのケルセチンアグリコンを,1%W/Wりんごペクチンを含んで,表6の試験飲料P200mLに懸濁した状態で摂取させ,摂取後24時間に排泄された尿全量を回収して,尿中に含まれるケルセチン代謝物量をHPLC−UVによって定量し,その吸収量を評価した。被験者には摂取日前日の夕食から野菜,果物類のポリフェノール類を多量に含まれる食品を避けてもらい,当日は水以外の摂取を禁止した。午前10時に試験飲料200mLを摂取してもらい,その後帰宅するまでの間に排泄された尿を,排泄毎に分けて250mL容(125mgアスコルビン酸添加)に全量採取し,重量測定後に一部を分注し,−80℃で保存した。帰宅後に排泄した尿は,1L容プラボトル(500mgアスコルビン酸添加)にまとめて,翌日午前9時半〜10時に回収した。更に午前10時頃採尿し,採取試験を終了した。摂取日の昼食は試験担当者が準備して,被験者全員に同時間,同内容の食事(寿司10貫,おにぎり1個)を食べてもらい,更にミネラルウオーター1Lを配布し,午前10時から午後6時までに全量を飲んでもらった。採取した尿サンプルについて,尿中ケルセチン代謝物量をHPLC−UVにより測定し,ケルセチンアグリコン換算で排泄量を計算した。ケルセチン摂取後24時間の排泄量から計算した吸収率(%,排泄量/摂取量)から,ペクチン含有飲料のケルセチン吸収に対する影響を評価した。結果を図8に示す。比較例6 6名のうち実施例6の試験サイクル前の3名,その終了後の3名に終了後2日以上の間隔をあけて実施した。りんごペクチンを含まない表6の試験飲料Wを用いた以外,実施例6と同様とした。結果を同じく図8に示す。 実施例6の結果を比較例6と対比すると,飲料Pでケルセチンを摂取した場合,尿中へのケルセチン代謝物の排泄率,即ち吸収率は平均約70%高まることが確認され(P<0.05,対応のあるt検定),ヒトに対してもペクチンがケルセチン吸収促進作用を有効に発現することが確認された。 20代及び30代の成年男子2名に,70mgのケルセチンアグリコンを0.3%W/W,1%W/W及び3%W/Wのりんごペクチンを含む表7に示す0.3%,1%及び3%の試験飲料200mLに懸濁した状態で摂取してもらい,その余は実施例6と同様として,ケルセチン代謝物量をHPLC−UVにより測定し,排泄量を評価した。結果を図9に示す。 ペクチンを含まない表7の0%W/Wの欄に示す試験飲料を用いた以外,実施例7と同様とした。結果を同じく図9に示す。 実施例7の結果を比較例7と対比すると,りんごペクチン0.3%W/W,1%W/W及び3%W/Wのりんごペクチンを含む試験飲料を摂取することによって,りんごペクチン0%W/Wの場合と比較して,尿中へのケルセチン代謝物の排泄量が高まることが確認された。以上の結果,ケルセチン吸収促進効果が発現するに必要なりんごペクチンの摂取は0.2%以上,好ましくは0.3%以上であると認められる。なおペクチンを含む飲料の摂取は,ペクチン摂取量及び濃度に関して,200gのりんご1個(ペクチン含有量0.6g,(五訂増補日本食品栄養成分表))と同等であることから,りんご以上に高濃度のペクチンを含むようにすることによってフラボノイド生体吸収促進作用を発現することができる。ケルセチン投与後の血漿中ケルセチン及びイソラムネチン代謝物濃度の推移を示すグラフである。ケルセチン吸収量を示すグラフである。腹部大動脈血(解剖血)の血漿中のケルセチン代謝物濃度を示すグラフである。尾動脈血漿中のケルセチン代謝物濃度を示すグラフである。投与ケルセチンの累積尿中排泄率(%)を示すグラフである。種々の濃度のペクチンを含む試験飼料を投与した場合の尾動脈血漿中ケルセチン代謝物濃度を示すグラフである。種々のペクチンを含む試験飼料を投与した場合の尾動脈血漿中ケルセチン代謝物濃度を示すグラフである。ペクチン濃度0%及び1%の飲料でケルセチンを摂取した時の吸収率を示すグラフである。尿中へのケルセチン排泄量を示すグラフである。 リンゴ由来又はシトラス由来であって、メチルエステル化度を50%以上とするHMペクチンを有効成分として含有する、経口摂取のケルセチン生体吸収促進剤。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る