タイトル: | 公開特許公報(A)_固体分散体のフィルムコーティング方法 |
出願番号: | 2007324830 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 9/36,A61K 47/38,A61K 47/24,A61K 31/4422 |
樋口 祐幸 原 一郎 矢吹 昭 JP 2008081512 公開特許公報(A) 20080410 2007324830 20071217 固体分散体のフィルムコーティング方法 味の素株式会社 000000066 高島 一 100080791 樋口 祐幸 原 一郎 矢吹 昭 JP 2006115811 20060419 A61K 9/36 20060101AFI20080314BHJP A61K 47/38 20060101ALI20080314BHJP A61K 47/24 20060101ALI20080314BHJP A61K 31/4422 20060101ALI20080314BHJP JPA61K9/36A61K47/38A61K47/24A61K31/4422 19 2007110735 20070419 OL 13 4C076 4C086 4C076AA44 4C076BB01 4C076CC11 4C076CC13 4C076DD29U 4C076EE23H 4C076EE32H 4C076FF23 4C086BC26 4C086MA01 4C086MA05 4C086MA35 4C086NA03 4C086ZA36 本発明は、固体分散体のフィルムコーティング方法、及び、薬物の固体分散体を含有する水系フィルムコーティング製剤の製法に関する。 医薬品製剤のうち、錠剤、丸剤、顆粒剤などの固体製剤は、主薬のもつ不快な味や臭気の遮蔽、光や湿気に対する安定性向上、薬塵の発生の防止、腸溶化や徐放化など薬効発現の調節等を目的として、素錠や核をフィルムコーティングすることが行われている。 例えば、フィルムコーティング錠の場合、その製造は、多くの場合、コーティング基剤を有機溶媒に溶解したコーティング剤をスプレーコーティングするなどの方法によって行われている(特許文献1〜3)。しかし、近年、有機溶剤の引火性、排ガスの回収性、経済性、製剤中への残留、などの問題が重視され、これら安全性や経済性の観点から有機溶剤を使用しない水系コーティングが用いられてきている(非特許文献1)。 しかし、コーティングすべき固体製剤が、薬物の固体分散体である場合、分散体中で薬物が非晶質として存在するため水分に対して不安定となりやすく、とくに、水系コーティングなどによる加湿の条件下では薬物が結晶化して、溶解性、溶出率が著しく低下し、吸収率が下がるなどの問題があるため、実用までは至っていない。 例えば、降圧剤として市販されているシルニジピンの固体分散体錠(「アテレック(R)錠」;持田製薬(株)、味の素(株))も、有機溶媒を用いたフィルムコーティング製剤である。コーティング基材としてはエチルセルロースが用いられ、ある程度、薬物放出がコントロールされており、均一なコーティング膜を形成させるという点からも、有機溶剤が必要と考えられてきた。 また、市販の錠剤は、投与量を調節するために病院、薬局等、あるいは患者自らにおいて、2分割以上できるものが求められることがあり、その目的のために割線を有する錠剤が提供されている。前記シルニジピンの固体分散体製剤に割線を設けるために、割線を有する素錠に対して、有機溶媒系のフィルムコーティングを行ったところ、割線部表面にダスティングの起きた錠剤が得られてしまう、という問題が生じた。割線部表面のダスティングは美観を損ね、使用者に品質等への不信感を起こさせる懸念がある。また、割線部表面のダスティングにより、分割時に割線部付近のコーティングの剥離を起こしやすい恐れがあり、これも分割後の美観を損ねることにつながりうる。 特開昭55−129224号公報特開昭63−27423号公報特許第3110794号公報医薬品の開発 第11巻,3.5.2, コーティング法の分類,廣川書店(平成元年) 本発明が解決しようとする課題は、固体分散体製剤について水系フィルムコーティング液を用いたコーティング方法を提供し、該方法により良好な溶出率と表面状態を有する固体分散体のフィルムコーティング製剤を提供すること、特に、割線を有していてもよいシルニジピン固体分散体製剤の水系フィルムコーティング液によるコーティング方法及びコーティング製剤を提供することにある。 本発明者らは、水系コーティングにおける前記課題を解決するべく鋭意検討の結果、意外にも固体分散体が、特にシルニジピンを含有する固体分散体が、水系フィルムコーティングを行っても良好な溶出率を維持しうること、さらに水系コーティング液によるコーティング加工時の温度を適切に管理することによって、コーティング時における製剤表面状態等の品質低下を回避し、安定な水系フィルムコーティング製剤を得ることができることを見出し、本発明を完成した。 すなわち、本発明は、以下のとおりである。(1)コーティング液として水系コーティング液を用いることを含む、固体分散体のフィルムコーティング方法。(2)固体分散体のフィルムコーティングを、コーティング液として水系コーティング液を用い、コーティング装置の排気温が30℃より高く、かつ60℃より低くなるような温度管理下で行うことを含む、(1)に記載のフィルムコーティング方法。(3)排気温が32℃以上55℃以下である、(2)に記載のフィルムコーティング方法。(4)固体分散体のフィルムコーティングを、コーティング液として水系コーティング液を用い、固体分散体の品温が20℃より高く、かつ56℃より低くなるような温度管理下で行うことを含む、(1)に記載のフィルムコーティング方法。(5)品温が25℃以上50℃以下である、(4)に記載のフィルムコーティング方法。(6)固体分散体の形態が錠剤である、(1)〜(5)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(7)錠剤が割線を有する、(6)に記載のフィルムコーティング方法。(8)水系コーティング液が、溶媒として水、又は水と水溶性有機溶媒を含有する、(1)〜(7)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(9)水系コーティング液が、溶媒として水のみを含有する、(1)〜(8)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(10)水系コーティング液が、水溶性高分子化合物を含有する、(1)〜(9)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(11)水溶性高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はポリエチレングリコールである、(10)に記載のフィルムコーティング方法。(12)水系コーティング液が、水難溶性高分子化合物を含有する、(1)〜(11)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(13)水難溶性高分子化合物が、エチルセルロースである、(12)に記載のフィルムコーティング方法。(14)水系コーティング液が、着色剤を含有する、(1)〜(13)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(15)着色剤が、酸化チタンである、(14)に記載のフィルムコーティング方法。(16)固体分散体がシルニジピンを含有する、(1)〜(15)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(17)固体分散体がシルニジピン、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを含有する、(1)〜(16)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法。(18)前記(1)〜(17)のいずれか1に記載のフィルムコーティング方法によって得られる、固体分散体のコーティング製剤。(19)固体分散体素錠を、水溶性高分子化合物を含有し、水、又は水と水溶性有機溶媒を溶媒とする水系コーティング液でコーティングする工程を含む固体分散体コーティング錠の製造方法。 本発明のコーティング法によれば、水系コーティング液を用いるコーティングでありながら、コーティング時の品質低下をおこさずに、高品質の固体分散体製剤、特にシルニジピンを含有する固体分散体製剤、を提供することができる。また、水系コーティングであるため、有機溶媒を使用することによる製造工程における防災安全衛生上の問題や、製剤後に残留する有機溶媒の問題を回避することができる。さらに本発明の方法は、有機溶媒が不要あるいは低減でき、有機溶媒排出のための設備が不要となるなど、生産時のコストダウンを図ることもできることから、工業的に極めて有用である。 また、特に割線を有するフィルムコーティング錠の場合、割線部の表面状態の良好な錠剤を提供することができる。 本発明において、固体分散体とは、不活性担体中に薬物が非晶質の形態で分散した固体製剤をいい、固体分散体製剤とは、固体分散体がコーティング剤によって被覆された固体製剤をいう。 固体分散体を形成する不活性担体は、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤など、医薬品の製剤において通常に使用される固体担体であればいずれでもよく、ほかに、矯味・矯臭剤を含有していてもよい。 賦形剤としては、例えば、乳糖、マンニトール、ブドウ糖、コーンスターチ、結晶セルロース、天然又は合成ケイ酸アルミニウム塩(メタケイ酸アルミン酸マグネシウムなど)、タルク、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなどが、結合剤としては、アルファー化デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、プルラン、デキストリン、アラビアゴム、トラガントゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ポリエチレングリコールなどが、崩壊剤としては、アラビアゴム、アルギン酸塩(ナトリウムなど)、カルボキシメチルセルロース塩(ナトリウム、カルシウムなど)、デンプン類、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース(L−HPC)、グルコン酸塩(カルシウムなど)などが、滑沢剤としてはタルク、ステアリン酸塩(マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等)、アラビアゴム、カルバナロウ、カルメロース塩(カルシウム、ナトリウム等)、含水二酸化ケイ素、含水無晶形二酸化ケイ素、グリセリン脂肪酸エステル、ケイ酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、結晶セルロース、ショ糖脂肪酸エステルなどが挙げられる。 薬物は、水難溶性の薬物であればいずれでもよく、例えば、シルニジピン、ニフェジピン、ニソルジピン、ニカルジピン、ニルバジピン、ニモジピン、ニトレンジピン、マニジピン、オキサシリン、クロキサシリン、シクロキサリン、イブプロフェン、ジフェンヒドラミンなどが挙げられる。 水難溶性の薬物として好ましくは、水に対する溶解度が第十四改正日本薬局方・通則、溶解性の分類の中で極めて溶けにくい、ほとんど溶けないに分類されるものである。つまり、薬物の水に対する溶解度が1mg/mL以下に分類されるものである。 固体分散体の形態は、細粒、顆粒、錠剤のいずれでもよく、錠剤の場合は、分割を容易にするための1ないし2の割線を設けてもよい。なお、錠剤の形状は特に限定されず、例えば、丸形、楕円形(正円を除くあらゆる長円形:オーバル形、卵形、楕円胴形、小判形など)、ひし形、三角形等、が挙げられる。割線の形状は平溝型、U字溝型あるいはV字溝型のいずれでもよく、錠剤が楕円形状である場合には、短軸に沿って形成することが好ましい。 固体分散体は通常の方法によって製造されるが、例えば、薬物及び必要に応じて結合剤を有機溶媒に溶解し、固体分散体のその他の構成成分と混合した後、溶媒を留去、乾燥して固体分散体造粒物を得る方法が例示される。固体分散体のその他の構成成分との混合は、薬物の溶液をその他の構成成分に噴霧(スプレー)する方法、あるいは、薬物の溶液とその他の構成成分を混合攪拌する方法が例示される。 有機溶媒としては、メタノール、エタノールなどの低級アルコール、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素、あるいはこれらの混合物が挙げられる。 得られた造粒物は、必要に応じて、通常の方法により滑沢剤を加えるなどして打錠し、任意の素錠とする。 例えば、シニルジピンの固体分散体は特許文献3記載の方法に従い調製できる。 本発明において、水系コーティング液とは、コーティング剤の水系分散液あるいは溶液をいい、水、あるいは水/水溶性有機溶媒の混合溶液を媒体として含有するコーティング液を意味する。 コーティング剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどのセルロース誘導体、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリプロピレングリコールポリ酢酸ビニル部分けん化物などの合成高分子化合物、澱粉、プルラン、グアガムなどの多糖類、などの水溶性高分子化合物を主成分とし、これに、エチルセルロース、セルロースアセテートなどの水難溶性高分子化合物、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチルセロソルブ、グリセリン、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、クエン酸トリエチル、トリアセチンなどの可塑剤、シリコーンオイル、ステアリン酸などのワックス類、大豆油、ヒマシ油などの油脂類、及び、食用色素、酸化チタンなど有機・無機系着色剤、糖類や香料などの矯味矯臭剤を配合してもよい。 また、コーティング剤は、オパドライのような予めコーティング基剤をプレミックスしたようなものも使用することができる。 コーティング液中の水分量は、各成分の種類及び配合量、さらには水溶性有機溶媒の添加量に応じて適宜に設定されるが、好ましい水分量は、水溶性高分子化合物の1重量部に対し、5〜1000重量部の、さらに好ましくは7〜100重量部の、特に好ましくは8〜50重量部の水を媒体として添加することにより実現される。 コーティング液中に添加してもよい水溶性有機溶媒としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、アセトニトリル等が挙げられる。特にエタノールが好ましい。水溶性有機溶媒の添加量は、各成分の種類及び配合量にもよるが、水1重量部に対し0〜8.0重量部が好ましく、0〜2.4重量部がより好ましく、0〜1.3重量部、あるいは0〜0.4重量部がさらに好ましい。なかでも、水溶性有機溶媒は添加せずに媒体は水のみであるものが特に好ましい。ここで媒体は水のみであるとは、実質的に水のみであればよく、若干の(例えば水1重量部に対し0.03重量部以下の)有機溶剤の混入は許容される。 コーティングの手法は、パンコーティング装置、ドラムタイプコーティング装置、流動コーティング装置による通常の方法のいずれでもよい。これらは通気式のコーティング装置であるのが好ましい。 本発明において好ましくは、コーティング工程中のコーティング装置の排気温が30℃より高く、かつ60℃より低くなるように温度管理される。ここで、コーティング工程とは、固体分散体に対するコーティング液のスプレー等による付与の工程であり、この際、給気及び排気が行われる。 上記排気温は、好ましくは32℃以上55℃以下であり、より好ましくは35℃以上45℃以下である。 上記排気温を、30℃以下、また60℃以上とすると、被膜の剥離が生じやすく、またザラツキが大きくなるなど、良好な被膜が形成されない。 あるいは本発明において好ましくは、コーティング工程中の品温が20℃より高く、かつ56℃より低くなるように温度管理される。ここで、コーティング工程中の品温とは、コーティング工程中の固体分散体の温度である。品温は赤外線式温度計で測定される。 上記品温は、好ましくは25℃以上50℃以下であり、より好ましくは35℃以上45℃以下である。 上記品温を、20℃以下、また56℃以上とすると、被膜の剥離が生じやすく、またザラツキが大きくなるなど、良好な被膜が形成されない。 排気温や品温の管理において、排気温や品温の調節は、例えば、給気温度、給気風量、あるいはコーティング液の付加速度(スプレー速度等)を調節することにより行うことができる。特に給気温度を調節することによるのが好ましい。 コーティング液の付加は注加によってもスプレーによってもよいが、スプレーが好ましい。 コーティングは、例えば、1kgの素錠(250mg/錠)をハイコーター(フロイント産業社)等の通気式コーティング装置を用いてスプレーコーティングする場合、送風温度を排気温度基準に基づいて設定し、風量は1.5〜3.5m3、スプレー速度5g/min〜50g/minで行われる。 固体分散体に対するコーティング被膜の量は、固体分散体100重量部に対して0.1〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、さらに好ましくは2〜10重量部とする。 固体分散体に対するコーティング被膜は、異なるコーティング液を用いることにより2層以上となってもよいが、1層あるいは2層が好ましい。 コーティング工程後、得られたフィルムコーティング製剤は、さらに送風や加温により十分に乾燥させてもよい。 次に実施例、参考例及び試験例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。[参考例] 特許第3110794号公報(特許文献3)の製造法に準じて、すなわち以下に示す方法によって、1錠(250mg)あたり10mgのシルニジピンを含有し、図1に示すV字型の割線溝を有する楕円形の素錠及び直径約9mm、厚み約3.7mmの丸形の素錠を調製した。 1)特許文献3の実施例2に準じて、シルニジピン、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、乳糖、結晶セルロース、マクロゴール400、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びクロスカルメロースナトリウムを含有する固体分散体顆粒(HPC・SD顆粒)を得る。 2)特許文献3の実施例4に準じて、シルニジピン、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP55)、乳糖、結晶セルロース、マクロゴール400、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、及びクロスカルメロースナトリウムを含有する固体分散体顆粒(HP55・SD顆粒)を得る。 3)1)及び2)で得られたHPC・SD顆粒とHP55・SD顆粒を、特許文献3の実施例5に準じて3/7(重量/重量)となるように混合し、ステアリン酸マグネシウムとタルクを加えて、打錠(打錠圧約1.5t〜2.5t)することにより、1錠あたり10mgのシルニジピンを含有する素錠(250mg)を得る。[実施例1〜12、比較例1]A:コーティング液の調製 コーティング液は以下の方法によって調製した。1)実施例1〜5、9〜12のコーティング液 i)カラー層コーティング液 水約3528gとポリエチレングリコール600 19.92gを攪拌機で混合する。この混合液にエチルセルロース47.52g、ポリエチレングリコール6000 19.92gとヒドロキシプロピルメチルセルロース159.72gを加え攪拌機で混合して得られた混合液(カラー層1液)と、別に水約386gと酸化チタン95.04gをホモジナイザーで混合させた液(カラー層2液)を、良く混合し、100メッシュの篩でろ過し、カラー層コーティング液を得る。 ただし、実施例4についてはカラー層1液の水約3528gを半量の約1764gとする。 ii)クリア層コーティング液 水約4194g、ポリエチレングリコール600 26.4g、ポリエチレングリコール6000 26.4gとヒドロキシプロピルメチルセルロース214.2gを攪拌機で混合する。この液を100メッシュの篩でろ過し、クリア層コーティング液を得る。2)実施例6〜8のコーティング液 i)カラー層コーティング液 上記1)のi)と同様に調製する。ただし、カラー層1液の水約3528gを水約1058g及びエタノール約2470g、カラー層2液の水約386gをエタノール約386g、とする。 ii)クリア層コーティング液 上記1)のii)と同様に調製する。ただし、水約4194gを、水約1260g及びエタノール約2934gとする。3)比較例1のコーティング液 i)カラー層コーティング液 上記1)のi)と同様に調製する。ただし、カラー層1液の水約3528gを、ジクロロメタン約1411.2g及びメタノール約2116.8g、カラー層2液の水約386gをメタノール約386gとする。 ii)クリア層コーティング液上記1)のii)と同様に調製する。ただし、水約4194gを、ジクロロメタン2519g及びメタノール1675gとする。B:コーティング錠の調製 参考例で得たシルニジピン固体分散体素錠(丸形錠及び割線錠)合計1.2kgをハイコーター48N(フロイント産業社製)中に投入し、前記Aのコーティング液と表1に示した条件を用いる以下の工程を経て、フィルムコーティング錠を得た。 工程1)原料投入 工程2)加温 給気温度:70℃、排気温度:55℃以下、パン回転数:5rpm、加温時間:排気温度が50℃以上になるまで加温 工程3)コーティング工程1 コーティング液:カラー層コーティング液、スプレー速度:表1参照、排気温度:表1参照、パン回転数:10〜15rpm、スプレー時間:被膜18mgまで、風量:3m3、アトマイズエアー:100L/min、パターンエアー:50L/min 工程4)コーティング工程2 工程3)と同様。ただし、コーティング液:クリア層コーティング液、スプレー時間:被膜2mg(トータル20mg)までとする。 実施例1〜12及び比較例1で得られたコーティング錠の素錠(250mg)当たりのコーティング被膜の組成は、次のとおりである。 ヒドロキシプロピルメチルセルロース 10mg エチルセルロース 2.5mg ポリエチレングリコール600 1.25mg ポリエチレングリコール6000 1.25mg 酸化チタン 5mg 表1中、排気温はコーティング工程中に、ハイコーター48N(フロイント産業社製)において排気温として測定された温度であり、品温は、コーティング工程中に、THERMO-HUNTER(OPTEX社製)により、測定された錠剤温度である。品温測定の際はコーティング液が直接噴霧される部位に存在する錠剤は対象としない。 [試験例1](溶出率の測定) 上記フィルムコーティング錠(丸形錠)に関して、溶出率の測定を第十四改正日本薬局方溶出試験第2法を用いて、下記条件で実施した。試験液:0.1%(W/V)ポリソルベート80・pH6.8リン酸塩緩衝液900mLパドル回転数:75rpm試験液温度:37±0.5℃ 結果: 実施例1〜12の錠剤(丸形錠)はいずれも90分後、120分後の溶出率が、それぞれの時点の比較例1の錠剤の溶出率±10%、の範囲に収まっていた。(錠剤の表面状態の観察) 上記フィルムコーティング錠(丸形錠及び割線付楕円形錠)に関して、錠剤の表面状態の観察を行った。結果を表2に示す。 評価基準: 良好:目視によりコーティング表面が滑らかと認められる 不良:目視によりコーティング表面が、ザラザラ状である、剥離を有する等、滑らかでないと認められる 実施例1〜12の錠剤は、有機溶媒系(比較例1)と同程度の溶出率を得、さらに排気温及び品温が本願発明の好ましい範囲内である実施例1〜10の錠剤は表面状態について、丸形錠も割線付楕円形錠も良好であり、割線部のダスティングも特に見られなかった。一方、実施例11及び実施例12では、錠剤の丸形錠も割線付楕円形錠も表面状態が悪く、コーティング液の溶媒が有機溶媒である比較例1では、割線付楕円形錠について割線部表面のダスティングの程度が高かった。[実施例13] 以下の製造法によって、図1に示す楕円型割線錠(V字型の割線溝を有する)のフィルムコーティング錠を調製した。 1)カラー層コーティング液の調製 水154kgにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 12.6kg、エチルセルロース3.75kg、マクロゴール600 1.58kg、マクロゴール6000 1.58kg及び酸化チタン7.50kgを撹拌混合し、カラー層コーティング液を得る。 2)クリア層コーティング液の調製 水60kgにヒドロキシプロピルメチルセルロース2910 3.07kg、マクロゴール6000 0.38kg、及びマクロゴール600 0.38kgを撹拌混合し、クリア層コーティング液を得る。 3)コーティング 参考例で得たシルニジピン固体分散体素錠をコーティング機(ハイコーター170、フロイント産業)に入れ、カラー層コーティング液を1ガンあたりスプレー速度50〜100ml/分で皮膜重量18mg/錠までスプレーする。その後、クリア層コーティング液をスプレー速度50〜100ml/分で皮膜重量2mg/錠までスプレーする。 4)乾燥 排気温度50℃で12〜95時間乾燥を行う。[試験例2] 実施例13で得られたフィルムコーティング錠について、上記溶出率の測定と同様にして、市販「アテレック(R)錠10」(丸形錠、有機溶媒コーティング)と溶出プロファイルを比較した。以下に示すように同等の結果が得られた。また、錠剤表面状態も良好であった。楕円型割線錠の外観斜視図である。符号の説明 1 錠剤 2a、2b V字型割線溝 3a、3b 表面 4a へり部(平坦部) コーティング液として水系コーティング液を用いることを含む、固体分散体のフィルムコーティング方法。 固体分散体のフィルムコーティングを、コーティング液として水系コーティング液を用い、コーティング装置の排気温が30℃より高く、かつ60℃より低くなるような温度管理下で行うことを含む、請求項1に記載のフィルムコーティング方法。 排気温が32℃以上55℃以下である、請求項2に記載のフィルムコーティング方法。 固体分散体のフィルムコーティングを、コーティング液として水系コーティング液を用い、固体分散体の品温が20℃より高く、かつ56℃より低くなるような温度管理下で行うことを含む、請求項1に記載のフィルムコーティング方法。 品温が25℃以上50℃以下である、請求項4に記載のフィルムコーティング方法。 固体分散体の形態が錠剤である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 錠剤が割線を有する、請求項6に記載のフィルムコーティング方法。 水系コーティング液が、溶媒として水、又は水と水溶性有機溶媒を含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 水系コーティング液が、溶媒として水のみを含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 水系コーティング液が、水溶性高分子化合物を含有する、請求項1〜9のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 水溶性高分子化合物が、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び/又はポリエチレングリコールである、請求項10に記載のフィルムコーティング方法。 水系コーティング液が、水難溶性高分子化合物を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 水難溶性高分子化合物が、エチルセルロースである、請求項12に記載のフィルムコーティング方法。 水系コーティング液が、着色剤を含有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 着色剤が、酸化チタンである、請求項14に記載のフィルムコーティング方法。 固体分散体がシルニジピンを含有する、請求項1〜15のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 固体分散体がシルニジピン、ヒドロキシプロピルセルロース及び/又はヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレートを含有する、請求項1〜16のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法。 請求項1〜17のいずれか1項に記載のフィルムコーティング方法によって得られる、固体分散体のコーティング製剤。 固体分散体素錠を、水溶性高分子化合物を含有し、水、又は水と水溶性の有機溶媒を溶媒とする水系コーティング液でコーティングする工程を含む固体分散体コーティング錠の製造方法。 【課題】水系フィルムコーティング液による固体分散体の優れたコーティング方法を提供する。【解決手段】固体分散体のフィルムコーティングを、コーティング液として水系コーティング液を用い、コーティング装置の排気温が30℃より高く、かつ60℃より低くなるような温度管理下で行うことを含む、フィルムコーティング方法。【選択図】なし