タイトル: | 公開特許公報(A)_ヒト全身性強皮症動物モデルの作製方法、ヒト全身性強皮症動物モデル及びその用途 |
出願番号: | 2007275484 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A01K 67/027,C12N 15/09,G01N 33/15,G01N 33/50 |
磯部 健一 石川 英昭 JP 2009100680 公開特許公報(A) 20090514 2007275484 20071023 ヒト全身性強皮症動物モデルの作製方法、ヒト全身性強皮症動物モデル及びその用途 国立大学法人名古屋大学 504139662 萩野 幹治 100114362 磯部 健一 石川 英昭 A01K 67/027 20060101AFI20090417BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090417BHJP G01N 33/15 20060101ALI20090417BHJP G01N 33/50 20060101ALI20090417BHJP JPA01K67/027C12N15/00 AG01N33/15 ZG01N33/50 Z 13 OL 28 2G045 4B024 2G045AA29 2G045AA40 2G045CA25 2G045CB17 2G045CB26 2G045DA36 2G045FA18 2G045FB03 4B024AA01 4B024AA11 4B024CA02 本発明はヒト全身性強皮症の病態を良好に再現する(即ちヒト全身性強皮症類似の病変を呈する)動物モデル、その作製方法、及びその用途などに関する。 全身性強皮症は日本人を含めたアジア人、黒人に多く、極めて難治性の自己免疫疾患である。家族、双子を対象とした研究成果より、全身性強皮症への遺伝的素因の関与が示唆された。その一方で環境因子の影響が強く疑われている。全身性強皮症は死亡率が高く、原因が依然として不明のため、ヒト全身性強皮症の動物モデルの開発が切望されている。 ブレオマイシンはDNAを傷害するため、扁平上皮癌やリンパ腫に対する抗がん剤として使われている。ブレオマイシンは活性酸素を産生し、細胞にアポトーシスを誘導する。これまでに、肺の間質性肺炎動物モデルを作製するためにブレオマイシンが使用されてきた(非特許文献1)。また、ブレオマイシンが皮膚の繊維化を引き起こすことが報告され(非特許文献2)、ブレオマイシンで誘導したヒト皮膚限局性強皮症動物モデルが開発された(非特許文献3)。この動物モデルでは、ブレオマイシンの投与によって皮膚の肥厚、コラーゲン繊維の増大と脂肪組織の結合組織への置換が確認されている(非特許文献3)。尚、ブレオマイシンで誘導したヒト皮膚限局性強皮症動物モデルについては、これまでの経緯を含め詳細な考察が行われている(非特許文献4)。Bowden, D.H. Unraveling pulmonary fibrosis: the bleomycin model. Lab Invest. May;50(5):487-8.(1984)Yamamoto T, Takahashi Y, Katayama I et al. Animal model of sclerotic skin. I: Local injections of bleomycin induce sclerotic skin mimicking scleroderma. J Invest Dermatol Apr;112(4):456-62.(1999)Lakos G. Targeted disruption of TGF-beta/Smad3 signaling modulates skinfibrosis in a mouse model of scleroderma. Am J Pathol. Jul;165(1):203-17.(2004)Yamamoto T, Nishikawa K. Cellular and molecular mechanisms of bleomycin-induced murine scleroderma: current update and future perspective. Exp Dermatol 2005:14:81-95 本発明の課題は、ヒト全身性強皮症の動物モデル及びその用途を提供することにある。 以上の課題に鑑み本発明者らは、ブレオマイシンを連続投与すると皮膚のみでなくヒト全身性強皮症に類似した病変、即ち小血管病変、炎症、及び自己免疫的性質といった3大特徴が現れるとの予想の下、マウスを用いヒト全身性強皮症動物モデルを作製することを試みた。その結果、ブレオマイシン投与終了から3週後における組織学的検討によって、ヒト全身性強皮症に特徴的な所見(様々な器官・組織におえける繊維化、下部食道の傷害、食道平滑筋の萎縮など)が認められた。また、ヒト全身性強皮症に特徴的な自己抗体(抗Scl-70抗体、抗セントロメア抗体、抗SS-A/Ro抗体、抗SS-B/La抗体)の血清抗体価の上昇を認めた。これら自己抗体の中には、組織特異的なものに加え、共通の細胞内分子に対するものも含まれていた。さらに、免疫複合体の組織沈着等も認められた。このように、ヒト全身性強皮症に類似の病変を呈するマウスの作製に成功するとともに、ヒト全身性強皮症動物モデルを作製するためには、ブレオマイシンの連続投与に加え、ある程度の時間経過が必要であることが判明した。 一方、ヒト全身性強皮症の病態を誘導した後のマウスの脾臓細胞をヌードマウスに移入する実験によって、CD4+ T細胞がヒト全身性強皮症の病態を形成する際の中心的役割を果たすことが明らかとなった。 さらなる検討の結果、ヒト全身性強皮症の病態を誘導したマウスの血清中に存在する自己抗体と抗原抗体反応を起こし得る抗原タンパク質11種を正常マウスの食道組織に見出すことに成功した。 以上の成果に基づき、以下の発明を提供する。 [1]齧歯目の動物を用意し、所定量のブレオマイシンを連続的に投与するとともに、全身性の繊維化が生ずるのに必要な期間飼育する、ことを特徴とする、ヒト全身性強皮症動物モデルの作製方法。 [2]全身性の繊維化が生ずるのに必要な期間が、ブレオマイシンの初回投与から30日後〜50日後までの期間である、[1]に記載の作製方法。 [3]ブレオマイシンの投与量が0.5mg/kg/回〜15mg/kg/回であり、投与間隔が1日〜3日である、[1]又は[2]に記載の作製方法。 [4]ブレオマイシンの総投与量が7.5mg/kg〜225mg/kgである、[3]に記載の作製方法。 [5]齧歯目の動物がマウスである、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の作製方法。 [6][1]〜[5]のいずれか一項に記載の作製方法で得られる、ヒト全身性強皮症動物モデル。 [7]以下の(a)及び(b)の特徴を呈する齧歯目の動物である、ヒト全身性強皮症動物モデル: (a)皮膚、食道、胃、腎臓、脾臓及び小血管においてコラーゲン繊維の増大が認められる; (b)自己抗体である抗Scl-70抗体、抗SS-A/Ro抗体及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価の上昇が認められる。 [8]齧歯目の動物がマウスである、[7]に記載のヒト全身性強皮症動物モデル。 [9][6]〜[8]のいずれか一項に記載のヒト全身性強皮症動物モデルを用いることを特徴とする、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法。 [10]以下の(a)及び(b)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法: (a)[6]〜[8]のいずれか一項に記載のヒト全身性強皮症動物モデルに試験物質を投与するステップ; (b)皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について評価するステップ。 [11]以下の(a)及び(b)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法、 (a)[6]〜[8]のいずれか一項に記載のヒト全身性強皮症動物モデルに試験物質を投与するステップ、 (b)試験物質を投与しないこと以外は同一の条件で処理したヒト全身性強皮症動物モデル(対照群)との間で、皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について比較・評価するステップ。 [12]以下の(A)〜(D)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法、 (A)齧歯目の動物を用意するステップ、 (B)前記動物に所定量のブレオマイシンを連続的に投与するステップ、 (C)ステップ(B)に並行して又はステップ(B)の後に、前記動物に試験物質を投与するステップ、 (D)皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について評価するステップ。 [13]以下の(A)〜(D)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法、 (A)齧歯目の動物を用意するステップ、 (B)前記動物に所定量のブレオマイシンを連続的に投与するステップ、 (C)ステップ(B)に並行して又はステップ(B)の後に、前記動物に試験物質を投与するステップ、 (D)試験物質を投与しないこと以外は同一の条件で処理した齧歯目の動物(対照群)との間で、皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について比較・評価するステップ。 本発明の第1の局面は、ヒト全身性強皮症の病態を良好に再現する(ヒト全身性強皮症類似の病変を呈する)動物モデルの作製方法に関する。本発明の作製方法は、齧歯目の動物に対して所定量のブレオマイシンを連続的に投与するとともに、全身性の繊維化が生ずるのに必要な期間飼育することを特徴とする。尚、「全身性の繊維化が生ずるのに必要な期間」は、ブレオマイシンの初回投与時を基準として計算される。当該期間は例えばブレオマイシンの初回投与から30日後〜50日後までの期間である。 本発明の作製方法では齧歯類の動物を用いる。齧歯目の動物の例としてマウス、ラット、モルモット、ハムスターを挙げることができる。好ましい齧歯目の動物はマウスである。使用に供するマウスの系統は特に限定されない。マウスの系統として、BALB/c系統、C57BL/6系統、DBA/1系統、DBA/2系統、C3H/He系統、B10.A系統、B10.D2系統を例示できる。日本チャールス・リバー株式会社(横浜、日本)や日本クレア株式会社(東京、日本)等から様々な系統のマウスを容易に入手可能である。 好ましくは成体の動物を用いる。成体の動物の方が、ブレオマイシンによる、ヒト全身性強皮症類似の病態の誘導(以下、説明の便宜上、「ヒト全身性強皮症類似の病態の誘導」のことを「目的の誘導」ともいう)に適するからである。また、ブレオマイシンの投与による致死性の影響を回避するためである。マウスであれば約6週齢以降のもの(例えば6週齢〜10週齢)を用いるとよい。 オスの動物を用いることも可能であるが、ヒト全身性強皮症と性差との関係(ヒト全身性強皮症の患者は女性が多い)を考慮すれば、メスの動物を用いることが好ましい。 「ブレオマイシン」とは、放線菌が産生する抗生物質として発見された物質である。ブレオマイシンは分子量約1,500の等ペプチドであり、現在、扁平上皮癌や悪性リンパ腫などの治療薬(塩酸ブレオマイシン製剤や硫酸ブレオマイシン製剤)として世界的に使用されている。 ブレオマイシンの投与量は例えば0.5mg/kg/回〜15mg/kg/回、好ましくは1.0mg/kg/回〜10mg/kg/回、更に好ましくは2.5mg/kg/回〜7.5mg/kg/回である。総投与量としては例えば7.5mg/kg〜225mg/kg、好ましくは15mg/kg〜150mg/kg、更に好ましくは30mg/kg〜90mg/kgである。尚、投与量が少なすぎると目的の誘導が行えず、投与量が多すぎると致死性の影響を与えるおそれが生ずる。 本発明の作製方法ではブレオマイシンの投与は連続的に実施される。即ち、所定の間隔を置いて複数回にわたりブレオマイシンが投与される。投与回数は特に限定されず、例えば5回〜40回、好ましくは7回〜30回、更に好ましくは10回〜20回である。投与間隔も特に限定されない。例えば、1日数回(例えば2回〜5回)投与、1日1回投与、隔日投与、3日に1回投与、4日に1回投与などの投与スケジュールを採用することができる。ブレオマイシンを投与する期間(投与期間)とそれに続く非投与期間を設定するようにしてもよい。この態様では、齧歯目の動物に対してブレオマイシンを連続的に投与した後、投与処理後の動物を所定期間飼育することになる。例えば投与期間を5日間〜30日間として、非投与期間を10日間〜40日間とする。尚、投与期間の途中に休息(投与しない日)を挟んでもよい。休息は例えば1日〜3日である。休息を複数回行うことにしてもよい。 ここでの「投与期間」とは、初回投与時から最終投与時までの期間をいう。従って、投与回数を20回、投与間隔を1日(即ち1日1回投与)とした場合、第0日目(初回投与日)から第19日目(最終投与)までの20日間が投与期間となる。他の具体例として、投与回数を15回、投与間隔を2日(即ち隔日投与)とした場合、第0日目(初回投与日)から第28日目(最終投与日)までの29日間が投与期間となる。 尚、必ずしも非投与期間を設ける必要はない。この場合、全身性の繊維化を生ずるまでの期間と投与期間が一致することになる。 ブレオマイシンの投与経路は特に限定されない。投与経路として皮下、皮内、静脈内、筋肉内又は腹腔内注射を例示できる。好ましくは皮下又は皮内注射を採用する。注射部位としては背、手、足等を例示できる。 本発明の作製方法によれば、ヒト全身性強皮症の病態を良好に再現した動物モデルが得られる。そこで本発明の第2の局面は、ヒト全身性強皮症の病態を良好に再現した動物モデルを提供する。本発明の動物モデルは、以下の(a)及び(b)の特徴を呈する齧歯目の動物である。 (a)皮膚、食道、胃、腎臓、脾臓及び小血管においてコラーゲン繊維の増大が認められる。 (b)自己抗体である抗Scl-70抗体、抗SS-A/Ro抗体及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価の上昇が認められる。 コラーゲン繊維量については例えば、アザン染色法、マッソン(Masson trichrome)染色法、コラーゲン特異的抗体を用いた免疫染色法等を利用して測定・算出することができる。 特定の自己抗体の血中抗体価については例えば、ELISA法(Enzyme-linked Immunosorbent assay)やウエスタン・ブロット法等を利用して評価すればよい。尚、用語「血清抗体価」及び「血漿抗体価」をも包含する表現として用語「血中抗体価」を使用する。 典型的には、本発明の動物モデルでは更なる特徴として、食道の傷害、食道平滑筋の萎縮、食道粘膜における平滑筋様線維芽細胞数の上昇、食道粘膜の潰瘍、胃粘膜の潰瘍、小腸粘膜の潰瘍などが認められる。これらの特徴の有無の確認には、各種の染色法が利用できる。染色法を例示すると、HE染色(hematoxylin-eosin staining)、PAS染色(Periodic acid Schiff stain)、アルシアンブルー染色(Alcian blue stain)、ムチカルミン染色(Mucicarmine stain)、コロイド鉄染色(Colloidal iron stain)、アルシアンブルー・PAS重染色(Alcian blue-PAS double stain)である。 本発明の動物モデルは好ましくはマウスである。特に好ましくはメスのマウスである。 本発明の動物モデルはヒト全身性強皮症の病態を良好に再現する。従って、ヒト全身性強皮症の発症機構ないし進展機構の解明などに有用である。また、本発明の動物モデルを用いれば、「ヒト全身性強皮症に有効な物質」の探索及び効果の検証などが行える。そこで本発明の更なる局面は、本発明の動物モデルを用いることを特徴とする、ヒト全身性強皮症に有効な物質のスクリーニング方法を提供する。 「ヒト全身性強皮症に有効な物質」とは、ヒト全身性強皮症に対して薬効(治療的又は予防的効果)を発揮する物質をいう。 本発明のスクリーニング方法の一態様では、本発明の動物モデルに試験物質を投与するステップ(ステップ(a))を実施した後、皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について評価する(ステップ(b))。 ステップ(a)では本発明の動物モデルに試験物質を投与する。試験物質の投与経路は特に限定されない。試験物質の投与経路として経口投与、経鼻投与、経気管投与、静脈内、動脈内、皮下、皮内、筋肉内又は腹腔内注射を例示することができる。試験物質の投与回数に特に制限はない。例えば、投与回数を1回〜10回の範囲内で設定することができる。試験物質を複数回投与する場合、各回の投与量は同一であっても異なっていても良い。 試験物質としては様々な分子サイズの有機化合物又は無機化合物を用いることができる。有機化合物の例として、核酸、ペプチド、タンパク質、脂質(単純脂質、複合脂質(ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、グリコシルグリセリド、セレブロシド等)、プロスタグランジン、イソプレノイド、テルペン、ステロイド、ポリフェノール、カテキン、ビタミン(B1、B2、B3、B5、B6、B7、B9、B12、C、A、D、E等)を例示できる。試験物質は天然物由来であっても、或いは合成によるものであってもよい。後者の場合には例えばコンビナトリアル合成の手法を利用して効率的なスクリーニング系を構築することができる。尚、細胞抽出液、培養上清などを試験物質として用いてもよい。また、既存の薬剤を試験物質としてもよい。 ステップ(b)では、ヒト全身性強皮症に対する効果の指標について評価する。ここでの「指標」の例は、特定の器官又は組織(皮膚、食道、胃、腎臓、脾臓又は小血管)のコラーゲン量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、特定の器官又は組織(食道、胃又は小腸)の粘膜潰瘍の程度、特定の自己抗体(抗Scl-70抗体、抗SS-A/Ro抗体又は抗SS-B/La抗体)の血中抗体価である。これらの指標は互いに排他的なものではない。即ち、このステップにおいて、2以上の指標に対する評価を行うことにしてもよい。 各指標の評価については、本発明の第2の局面の欄で言及した手法を利用すればよい。即ち、コラーゲン繊維量であればアザン染色法等を利用して評価できる。また、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、特定の器官又は組織の粘膜潰瘍の程度であればHE染色等を利用して評価できる。一方、特定の自己抗体の血中抗体価であればELISA法(Enzyme-linked Immunosorbent assay)等を利用して評価できる。 好ましくは、試験物質を投与する動物モデル(試験群)に加え、試験物質を投与しないこと以外は同一の条件で処理した動物モデル(対照群)を用意し、試験群と対照群との間で特定の指標について比較・評価する。対照群を用いることによって、より客観的かつ的確な評価を下すことができる。 ここで、特定の器官又は組織におけるコラーゲン繊維量を指標とした場合、試験群の方が対照群よりもコラーゲン繊維量が少ないときに「試験物質がヒト全身性強皮症に有効である」と評価することができる。食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、或いは特定の器官又は組織の粘膜潰瘍の程度を指標とした場合、試験群の方が対照群よりも症状が軽微なときに「試験物質がヒト全身性強皮症に有効である」と評価することができる。食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数を指標とした場合、試験群の方が対照群よりも細胞数が少ないときに「試験物質がヒト全身性強皮症に有効である」と評価することができる。特定の自己抗体の血中抗体価を指標とした場合、試験群の方が対照群よりも血中抗体価が低いときに「試験物質がヒト全身性強皮症に有効である」と評価することができる。 試験群及び対照群に含まれる個体数は特に限定されない。一般に使用する個体数が多くなるほど信頼性の高い結果が得られるが、多数の個体を同時に取り扱うことは使用する個体の確保や操作(飼育を含む)の面で困難を伴う。そこで例えば各群に含まれる個体数を1〜50、好ましくは2〜30、さらに好ましくは3〜20とする。 本発明のスクリーニング方法によって選択された物質が十分な薬効を有する場合には、当該物質をそのまま医薬の有効成分として使用することができる。一方で十分な薬効を有しない場合には化学的修飾などの改変を施してその薬効を高めた上で、医薬の有効成分として使用することができる。勿論、十分な薬効を有する場合であっても、更なる薬効の増大を目的として同様の改変を施してもよい。 以上の態様では、ヒト全身性強皮症類似の病態を誘導した後に(即ち本発明の動物モデルを作製した後に)試験物質を投与してその作用・効果を評価する。これに対して本発明の他の態様では、本発明の動物モデルを作製する過程をスクリーニング方法の一部として取り込む。即ち、この態様のスクリーニング方法は、齧歯目の動物を用意するステップ(ステップ(A))、前記動物に所定量のブレオマイシンを連続的に投与するステップ(ステップ(B))、ステップ(B)に並行して又はステップ(B)の後に、前記動物に試験物質を投与するステップ(ステップ(C))、及び皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について評価するステップ(ステップ(D))を実施する。 ステップ(A)及び(B)は、本発明の動物モデルの作製方法(第1の局面)と同様である。従って、当該ステップの詳細については第1の局面における説明が援用される。また、ステップ(D)は上記態様におけるステップ(b)と同様であり、その詳細についてはステップ(b)における説明が援用される。 一方、この態様のステップ(C)は、上記態様のステップ(a)に対応する。但し、ステップ(C)では、ステップ(B)に並行して又はステップ(B)の後に試験物質の投与を行う。即ち、ヒト全身性強皮症類似の病態を誘導する際、又は誘導した後に試験物質を投与する。この条件を満たす限りにおいて試験物質を投与するタイミングは任意に設定可能である。ヒト全身性強皮症類の病態を誘導する際に試験物質を投与するのであれば、ブレオマイシンの投与と同時に試験物質を投与することにしても、ブレオマイシンの投与に前後して試験物質を投与することにしてもよい。ヒト全身性強皮症類似の病態を誘導した後に試験物質を投与するのであれば、誘導直後に試験物質を投与することにしても、誘導後、所定時間経過した後に試験物質を投与することにしてもよい。この態様においても試験物質の投与回数に特に制限はない。例えば、投与回数を1回〜10回の範囲内で設定することができる。試験物質を複数回投与する場合、各回の投与量は同一であっても異なっていても良い。 この態様においても対照群を用いて比較・評価することが好ましい。即ち、好ましくは、試験物質の投与後、試験物質を投与しないこと以外は同一の条件で処理した齧歯目の動物(対照群)との間で、特定の指標(皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量等)について比較・評価するステップを実施する。 後述の実施例に示す通り本発明者らは、作製に成功したヒト全身性強皮症マウスモデルの血清と正常マウスの食道組織との反応性を調べた。その結果、ヒト全身性強皮症モデルマウスの血清中に存在する自己抗体と抗原抗体反応を起こし得る抗原タンパク質11種を正常マウスの食道組織に見出すことに成功した。当該成果に基づき、本発明は更なる局面として、当該11種の抗原タンパク質、そのヒト相同タンパク質、及びこれらのタンパク質に特異的な抗体の用途を提供する。当該タンパク質及び抗体は、ヒト全身性強皮症の診断マーカーの開発や、ヒト全身性強皮症に対する薬剤の探索ないし開発、ヒト全身性強皮症の研究などに利用されることが期待される。 以下、本発明者らが見出した抗原タンパク質11種及びそのヒト相同タンパク質の情報を列挙する。<抗原タンパク質1> サイトケラチン13(配列番号1) NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 13 (Cytokeratin-13) (CK-13) (Keratin-13) (K13) (47 kDa cytokeratin); ACCESSION P08730<抗原タンパク質1のヒト相同タンパク質> サイトケラチン13(配列番号2) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 13 (Cytokeratin-13) (CK-13) (Keratin-13) (K13).; ACCESSION P13646<抗原タンパク質2> クレアチンキナーゼ(M型)(配列番号3) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase M-type (Creatine kinase M chain) (M-CK).; ACCESSION P07310<抗原タンパク質2のヒト相同タンパク質> クレアチンキナーゼ(M型)(配列番号4) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase M-type (Creatine kinase M chain) (M-CK).; ACCESSION P06732<抗原タンパク質3> キチナーゼ3様タンパク質4前駆体(配列番号5) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Chitinase 3-like protein 4 precursor (Secreted protein Ym2).; ACCESSION Q91Z98<抗原タンパク質4> カルボニック・アンヒドラーゼ3(配列番号6) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Carbonic anhydrase 3 (Carbonic anhydrase III) (Carbonate dehydratase III) (CA-III).; ACCESSION P16015<抗原タンパク質4のヒト相同タンパク質> カルボニック・アンヒドラーゼ3(配列番号7) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Carbonic anhydrase 3 (Carbonic anhydrase III) (Carbonate dehydratase III) (CA-III).; ACCESSION P07451<抗原タンパク質5> ユビキノール−チトクロームc還元酵素複合体コアタンパク1(配列番号8) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Ubiquinol-cytochrome-c reductase complex core protein 1, mitochondrial precursor (Core I protein).; ACCESSION Q9CZ13<抗原タンパク質5のヒト相同タンパク質> ユビキノール−チトクロームc還元酵素複合体コアタンパク1(配列番号9) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Ubiquinol-cytochrome-c reductase complex core protein 1, mitochondrial precursor (Core I protein).; ACCESSION P31930<抗原タンパク質6> トランスゲリン(配列番号10) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Transgelin (Smooth muscle protein 22-alpha) (SM22-alpha)(Actin-associated protein p27).; ACCESSION P37804<抗原タンパク質6のヒト相同タンパク質> トランスゲリン(配列番号11) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Transgelin (Smooth muscle protein 22-alpha) (SM22-alpha) (WS3-10)(22 kDa actin-binding protein).; ACCESSION Q01995<抗原タンパク質7> クレアチンキナーゼ(B型)(配列番号12) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase B-type (Creatine kinase B chain) (B-CK).; ACCESSION Q04447<抗原タンパク質7のヒト相同タンパク質> クレアチンキナーゼ(B型)(配列番号13) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase B-type (Creatine kinase B chain) (B-CK).; ACCESSION P12277<抗原タンパク質8> フルクトース−ビスホスフェート・アルドラーゼA(配列番号14) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fructose-bisphosphate aldolase A (Muscle-type aldolase) (Aldolase 1).; ACCESSION P05064<抗原タンパク質8のヒト相同タンパク質> フルクトース−ビスホスフェート・アルドラーゼA(配列番号15) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fructose-bisphosphate aldolase A (Muscle-type aldolase) (Lung cancer antigen NY-LU-1).; ACCESSION P04075<抗原タンパク質9> クレアチンキナーゼ(配列番号16) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase, sarcomeric mitochondrial precursor (S-MtCK).; ACCESSION Q6P8J7<抗原タンパク質9のヒト相同タンパク質> クレアチンキナーゼ(配列番号17) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase, sarcomeric mitochondrial precursor (S-MtCK)(Mib-CK) (Basic-type mitochondrial creatine kinase).; ACCESSION P17540<抗原タンパク質10> サイトケラチン14(配列番号18) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 14 (Cytokeratin-14) (CK-14)(Keratin-14) (K14).; ACCESSION Q61781<抗原タンパク質10のヒト相同タンパク質> サイトケラチン14(配列番号19) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 14 (Cytokeratin-14) (CK-14)(Keratin-14) (K14).; ACCESSION P02533<抗原タンパク質11> 脂肪酸結合タンパク質(配列番号20) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fatty acid-binding protein, adipocyte (AFABP) (Adipocyte lipid-binding protein) (ALBP) (A-FABP) (P2 adipocyte protein)(Myelin P2 protein homolog) (3T3-L1 lipid-binding protein) (422 protein) (P15).; ACCESSION P04117<抗原タンパク質11のヒト相同タンパク質> 脂肪酸結合タンパク質(配列番号21) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fatty acid-binding protein, adipocyte (AFABP) (Adipocyte lipid-binding protein) (ALBP) (A-FABP).; ACCESSION P15090 特に記載のない限り、本明細書における遺伝子工学的操作は例えばMolecular Cloning(Third Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)或いはCurrent protocols in molecular biology(edited by Frederick M. Ausubel et al., 1987)を参考にして行うことができる。<ヒト全身性強皮症(SSc)動物モデルの作製>1.方法(1)動物 C3H/HeJマウス、BALB/cマウス、BALB/cヌードマウスは日本エスエルシー株式会社(静岡、日本)から購入し、名古屋大学医学部の動物実験施設で飼育した。動物の取り扱いは名古屋大学の指針に従った。(2)ブレオマイシンの投与 ブレオマイシン(日本化薬株式会社、東京、日本)をPBSで1mg/mlに調整し、マウス(C3H、BALB/c)の背中皮下に26ゲージの注射針で100μl(ブレオマイシン100μg)ずつ1日1回のペースで5日間連続で注射した。その後、2日間の休息をとった。このサイクルを合計3回行った(3週間、合計15回の注射)。(3)組織学的検討 ブレオマイシン投与終了日から3週後にマウスの組織(皮膚、肺、心臓、食道、胃、小腸、肝臓、腎臓、脾臓)を採取し、HE(ヘマトキシン・エオシン)染色に供した。また、脾臓と腎臓のコラーゲン繊維の染色にはマッソン染色(Masson trichrome stain)を行った。(4)免疫染色 ブレオマイシン投与終了日から3週後にマウスの組織(皮膚、脾臓、胃、小腸)を採取し、クリオスタットで組織切片を作製した。アセトン固定後、各種抗体(抗マウスCD4、CD8、B220、CD11c、CD11b(ベクトン・ディッキンソン)、MHC II(eBioscience)など)で染色し、共焦点顕微鏡(バイオ・ラッド)で撮影した。(5)ウエスタン・ブロット 組織又は細胞をサンプルバッファー(62.5 mM トリス塩酸, pH 6.8, 2% SDS, 10% グリセロール, 5% 2-メルカプトエタノール, 5% ブロモフェノールブルー)に溶解した後、SDS-PAGEに供した。電気泳動後のゲルをPVDF膜(ミリポア)に転写した。その後、抗体(血清)と反応させ、ECL(enhanced chemiluminescence)法(アマシャム・ファルマシア)で反応するタンパクを検出した。(6)活性酸素の測定 フローサイトメトリーを使用して細胞内活性酸素(ROS:reactive oxygen species)を測定した。細胞をブレオマイシン処理後、最後の30分間にCM-H2DCFDA(Molecular Probes Invitrogen Japan)を細胞内に取り込ませた。その後、FACSCaliber (BD Biosciences)を用い、励起波長485nm、発光波長535nmの条件で蛍光を測定した。データの処理はCellQuestプログラム(BD Bioscience)で行った。活性酸素の抑制はNAC処理によって行った。(7)細胞死の測定 細胞をAnnexin V (FITC)と7AAD(PE)で染色し、フローサイトメトリーを使用して測定した。(8)自己抗体の測定 ブレオマイシン処理後の様々な時点で血清を採取した。100倍希釈した血清を1次抗体としてHep-2細胞、NIH3T3細胞、又は正常凍結胃切片に反応させた後、FITC標識ウサギ抗マウスIgG抗体を2次抗体として反応させ、共焦点顕微鏡で撮影した。また、血清中の自己抗体価(抗ヒストン抗体、抗RNP-70抗体、抗RNP/Sm抗体、抗Sm抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗Scl-70抗体、抗dsDNA IgG抗体など)はELISA法で測定した。(9)細胞移入実験 ブレオマイシン投与後のマウスの脾臓細胞を調製し、抗CD4抗体及び抗B220抗体を用いてヘルパーT細胞とB細胞を分離した。分離した各細胞をブレオマイシン非投与マウス又はヌードマウスに移入し、4週後の組織変化をスコア化(0又は1)した。皮膚の肥厚をスコア1、胃の粘膜下組織の萎縮をスコア1、食道粘膜の萎縮をスコア1とした。変化のない場合をスコア0とした。(10)マススペクトロメトリー 脾臓をサンプルとしたウエスタン・ブロットで強く現れたバンドのうち、20kDa附近のバンドを切り出し、LC/MASで解析し、アミノ酸配列を決定した。 また、正常マウス(BALB/c)の食道組織を2次元電気泳動し、ブレオマイシン投与マウス(BALB/c)の血清を用いてウエスタン・ブロットを行った。反応性が認められたスポットを切り出し、LC/MASで解析し、アミノ酸配列を決定した。2.結果 ブレオマイシン投与終了日から3週後の組織変化を調べたところ、全身に亘って大きな変化が認められた。投与部位では皮膚の肥厚、皮下脂肪組織の減少、コラーゲン繊維の多くの沈着が見られた(図1のA、B)。驚くべきことに、全身の臓器の組織を観察すると様々な組織に病変がみられた。特に下部食道はひどく傷害されていた。また、食道平滑筋の萎縮、食道粘膜において平滑筋様繊維芽細胞の増殖が認められた(図1のC、D)。これらの病変はヒト全身性強皮症(SSc)に特徴的な所見に一致する。食道、胃、小腸に粘膜潰瘍を認めた(図1のC、E、G)。肺の傷害の程度は弱く、ブレオマイシン吸入モデルと同等であった(図1のF)。小血管の繊維化もみられた。BALB/cマウス(6週齢)では、ほとんど同様の所見が観察された。 ブレオマイシン投与終了日と投与終了日から3週後に、ブレオマイシン投与マウスの血清を採取した。マウスの各組織の溶解物をSDS-PAGEに供し、採取した血清(サンプル血清)又はコントロール血清を用いてウエスタン・ブロットを行った。その結果、様々な組織について様々な分子量のタンパクとサンプル血清が反応した(図2のA、B、C)。脾臓細胞の溶解物をサンプルとした場合に認められた20KDa附近のバンドを切り出し、マススペクトメトリーで分析したところ、ヒストンH2Aであることが判明した。ブレオマイシン投与マウスの血清は牛ヒストン標品と強く反応した(図3)。また、サンプル血清を用いてHep-2細胞やNIH3T3細胞を免疫染色したところ、細胞質、核の分子に強く反応した。また、正常胃粘膜の組織にも反応した(図2のD、E、F、G、H、I)。ELISA法で既存の抗原に対する反応性を調べたところ、ヒストンに対するIgG抗体を認め、マススペクトメトリーの結果が裏付けられた。また、ヒトSScで抗体価が上昇することが知られている抗Scl-70抗体や抗セントロメア抗体の抗体価が強い上昇を示した(図2のK、L)。また、抗SS-A/Ro抗体や抗SS-B/La抗体など、ヒト全身性エリテマトーデス(SLE)をはじめとする全身性自己免疫疾患で上昇する抗体価が比較的高かった(図2のM、N)。 脾臓もブレオマイシン投与で破壊されるが(図1のJ)、PNA(Peanut agglutinin)陽性領域、B220やIgG陽性領域はむしろ増大傾向にあり、自己反応性のB細胞の増殖が示唆された(図4)。皮膚、胃粘膜、小腸、血管、腎臓糸球体に抗原抗体複合体の沈着が見られた(図5)。免疫細胞の浸潤、即ちMHCクラスII,CD4+,CD8+細胞及びCD11b細胞の浸潤が胃に認められとともに、CD8細胞が胃腺に多数見られた(図6)。ブレオマイシンは活性酸素を誘導することが知られている。事実、脾臓、胸腺細胞をブレオマイシン処理すると活性酸素の産生が確認された(図7)。C3Hマウスから採取した胸腺細胞をブレオマイシン処理し、同系マウスに3回注射した後、血清を採取した(図8の上段)。この血清を用いてHep-2細胞を免疫染色すると核及び細胞質が染色され(図8の下段左)、ウエスタン・ブロットの結果からは胸腺に反応する抗体の抗体価が上昇することが判明した(図8の下段右)。そこで、どの免疫細胞が全身性強皮症発症に重要であるかを検索することにした。ブレオマイシン投与マウスの脾臓細胞を非投与BALB/cヌードマウスに移入し、4週後に組織を検索したところ、ブレオマイシン投与マウスと同様の病変が形成された。そこで、CD4 T細胞、B220細胞を磁気細胞分離法で分離し、各細胞を用いて同様の移入実験を行った。その結果、CD4 T細胞を移入したマウスにのみ、ブレオマイシン投与マウスと同様の病変が形成された。このことから、CD4 T細胞が全身性強皮症病態形成の中心的役割を果たすことが判明した(図9)。 正常マウス(BALB/c)の食道組織を2次元電気泳動に供し、ブレオマイシン投与マウス(BALB/c)の血清を用いてウエスタン・ブロットを行った結果、合計12のスポットを認めた(図10)。各スポットを切り出し、マススペクトロメトリーで分析し、アミノ酸配列を決定した。続いて、各アミノ酸配列でデータベース検索を行い、各スポットのタンパク質を決定した(下記参照)。また、決定された各タンパク質についてヒト相同タンパク質を検索した(下記参照)。(1−1)スポット1のタンパク質(抗原タンパク質1) サイトケラチン13(配列番号1) NCBI(National Center for Biotechnology Information)のデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 13 (Cytokeratin-13) (CK-13) (Keratin-13) (K13) (47 kDa cytokeratin); ACCESSION P08730(1−2)スポット1のタンパク質のヒト相同タンパク質 サイトケラチン13(配列番号2) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 13 (Cytokeratin-13) (CK-13) (Keratin-13) (K13).; ACCESSION P13646(2−1)スポット2のタンパク質(抗原タンパク質2) クレアチンキナーゼ(M型)(配列番号3) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase M-type (Creatine kinase M chain) (M-CK).; ACCESSION P07310(2−2)スポット2のタンパク質のヒト相同タンパク質 クレアチンキナーゼ(M型)(配列番号4) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase M-type (Creatine kinase M chain) (M-CK).; ACCESSION P06732(3−1)スポット3のタンパク質(抗原タンパク質3) キチナーゼ3様タンパク質4前駆体(配列番号5) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Chitinase 3-like protein 4 precursor (Secreted protein Ym2).; ACCESSION Q91Z98(4−1)スポット4のタンパク質(抗原タンパク質4) カルボニック・アンヒドラーゼ3(配列番号6) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Carbonic anhydrase 3 (Carbonic anhydrase III) (Carbonate dehydratase III) (CA-III).; ACCESSION P16015(4−2)スポット4のタンパク質のヒト相同タンパク質 カルボニック・アンヒドラーゼ3(配列番号7) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Carbonic anhydrase 3 (Carbonic anhydrase III) (Carbonate dehydratase III) (CA-III).; ACCESSION P07451(5−1)スポット5のタンパク質(抗原タンパク質5) ユビキノール−チトクロームc還元酵素複合体コアタンパク1(配列番号8) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Ubiquinol-cytochrome-c reductase complex core protein 1, mitochondrial precursor (Core I protein).; ACCESSION Q9CZ13(5−2)スポット5のタンパク質のヒト相同タンパク質 ユビキノール−チトクロームc還元酵素複合体コアタンパク1(配列番号9) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Ubiquinol-cytochrome-c reductase complex core protein 1, mitochondrial precursor (Core I protein).; ACCESSION P31930(6−1)スポット6のタンパク質(抗原タンパク質6) トランスゲリン(配列番号10) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Transgelin (Smooth muscle protein 22-alpha) (SM22-alpha)(Actin-associated protein p27).; ACCESSION P37804(6−2)スポット6のタンパク質のヒト相同タンパク質 トランスゲリン(配列番号11) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Transgelin (Smooth muscle protein 22-alpha) (SM22-alpha) (WS3-10)(22 kDa actin-binding protein).; ACCESSION Q01995(7−1)スポット7のタンパク質(抗原タンパク質7) クレアチンキナーゼ(B型)(配列番号12) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase B-type (Creatine kinase B chain) (B-CK).; ACCESSION Q04447(7−2)スポット7のタンパク質のヒト相同タンパク質 クレアチンキナーゼ(B型)(配列番号13) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase B-type (Creatine kinase B chain) (B-CK).; ACCESSION P12277(8−1)スポット8のタンパク質(抗原タンパク質8) フルクトース−ビスホスフェート・アルドラーゼA(配列番号14) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fructose-bisphosphate aldolase A (Muscle-type aldolase) (Aldolase 1).; ACCESSION P05064(8−2)スポット8のタンパク質のヒト相同タンパク質 フルクトース−ビスホスフェート・アルドラーゼA(配列番号15) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fructose-bisphosphate aldolase A (Muscle-type aldolase) (Lung cancer antigen NY-LU-1).; ACCESSION P04075(9−1)スポット9のタンパク質(抗原タンパク質9) クレアチンキナーゼ(配列番号16) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase, sarcomeric mitochondrial precursor (S-MtCK).; ACCESSION Q6P8J7(9−2)スポット9のタンパク質のヒト相同タンパク質 クレアチンキナーゼ(配列番号17) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Creatine kinase, sarcomeric mitochondrial precursor (S-MtCK)(Mib-CK) (Basic-type mitochondrial creatine kinase).; ACCESSION P17540(10−1)スポット10のタンパク質(抗原タンパク質10) サイトケラチン14(配列番号18) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 14 (Cytokeratin-14) (CK-14)(Keratin-14) (K14).; ACCESSION Q61781(10−2)スポット10のタンパク質のヒト相同タンパク質 サイトケラチン14(配列番号19) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Keratin, type I cytoskeletal 14 (Cytokeratin-14) (CK-14)(Keratin-14) (K14).; ACCESSION P02533(11)スポット10のタンパク質 該当なし(12−1)スポット12のタンパク質(抗原タンパク質11) 脂肪酸結合タンパク質(配列番号20) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fatty acid-binding protein, adipocyte (AFABP) (Adipocyte lipid-binding protein) (ALBP) (A-FABP) (P2 adipocyte protein)(Myelin P2 protein homolog) (3T3-L1 lipid-binding protein) (422 protein) (P15).; ACCESSION P04117(12−2)スポット12のタンパク質のヒト相同タンパク質 脂肪酸結合タンパク質(配列番号21) NCBIのデータベースでの登録情報:DEFINITION Fatty acid-binding protein, adipocyte (AFABP) (Adipocyte lipid-binding protein) (ALBP) (A-FABP).; ACCESSION P150903.考察 ヒト全身性強皮症類似の病変を呈する動物モデルを作製することに成功した。特に、(1)コラーゲン繊維が、皮膚、食道、胃、腎臓、脾臓そして、小血管で増大していること、(2)抗Scl-70抗体、抗SS-A/Ro抗体、抗SS-B/La抗体といった自己抗体が認められることがヒトの病変に類似する。 本発明のヒト全身性強皮症動物モデルはヒト全身性強皮症と類似の病変を呈する。従って、本発明のヒト全身性強皮症動物モデルは、ヒト全身性強皮症に対する薬剤の探索ないし開発、ヒト全身性強皮症の診断マーカーの探索ないし開発、或いはヒト全身性強皮症の発症機構や進行機構の解明などを目的とした研究や実験でのツールとして有用である。 この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。 本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。ブレオマイシン投与による組織の損傷。C3HマウスにPBS又はブレオマイシン(100μg)を1日1回のペースで3週間に亘って投与した(5日間連続投与の後、2日間の休息)。最終投与から3週後に様々な組織を採取しHE染色及びマッソン染色に供した。A:皮膚(HE染色像)、B:皮膚(マッソン染色像)、C:食道(HE染色像)、D:食道(マッソン染色像)、E:胃(HE染色像)、F:肺(HE染色像)、G:小腸(HE染色像)、H:腎臓(HE染色像)、I:脾臓(HE染色像)、J:脾臓(マッソン染色像)。図中の矢印は組織の繊維化を示す。ブレオマイシン投与マウスにおける自己抗体の産生。C3HマウスにPBS(A)又はブレオマイシン(100μg)を3週間に亘って1日1回投与した(5日間連続投与の後、2日間の休息)。ブレオマイシン投与終了日(21日目、B)と投与終了日から3週後(42日目、C)にブレオマイシン投与マウスの血清を採取した。方法の欄に記載した手順でウエスタン・ブロットを行い、抗体価を測定した。脾臓細胞について強く反応したバンドをマススペクトメトリーで分析したところ、ヒストンH2Aであることが判明した。ブレオマイシン投与終了日から3週後の血清中の抗核抗体(ANAs:Antinuclear antibodies)を、Hep-2細胞及びNIH3T3細胞(コントロール)を用いて間接的免疫蛍光法で検出した。D:コントロール血清のHep-2細胞に対する反応性、E:ブレオマイシン投与終了日に採取した血清のHep-2細胞に対する反応性、F:ブレオマイシン投与終了日から3週後に採取した血清のHep-2細胞に対する反応性、G:ブレオマイシン投与終了日から3週後に採取した血清のNIH3T3細胞に対する反応性、H:コントロール血清の正常マウス胃粘膜組織に対する反応性、I:ブレオマイシン投与終了日から3週後に採取した血清の正常マウス胃粘膜組織に対する反応性。倍率x20。また、方法の欄に記載した手順でELISA法を実施し、抗自己抗体を検出した。J:抗ヒストンIgG抗体の検出結果、K:抗Scl-70 IgG抗体の検出結果、L:抗セントロメアIgG抗体の検出結果、M:抗SS-A/Ro IgG抗体の検出結果、N:抗SS-B/La IgG抗体の検出結果。(コントロールの平均値+2×標準偏差)よりも大きい場合(水平バー)に陽性と判断した。ブレオマイシン投与マウスの血清と牛ヒストン標品との反応。血清は牛ヒストン標本に強く反応した。ブレオマイシン投与C3Hマウスの脾臓の免疫学的構造。ブレオマイシン処理によって脾臓も傷害されていた。凍結切片を各種抗体と反応させた。PNA:抗PNA抗体との反応性、抗B220抗体との反応性、右の列:左二つの像の合成。抗PNA抗体及び抗B220抗体。傷害した組織における免疫複合体の蓄積。皮膚(倍率x10)、胃(倍率x20)、小腸(倍率x10)、腎臓(倍率x10)。矢印は小血管付近のIgGの蓄積を示す。CD11b(PE)/CD11c(FITC)染色像の合成(上段)、MHCclassIIに関する染色像(中段)、CD4(PE)/CD8(FITC)染色像の合成(下段)。倍率x10。ブレオマイシン投与マウスの脾臓細胞及び胸腺細胞におけるROSの産生。A:ブレオマイシン処理C3Hマウスから脾臓細胞を採取し、DCFDA法でROSの産生を測定した。B:C3Hマウスから採取した脾臓細胞。C:C3Hマウスから採取した胸腺細胞を10mg/ml(RPMI+10% FCS)のブレオマイシンで1時間処理した。DCFDA法でROSの産生を測定した。細胞移入実験の方法(上段)及び結果(下段)。C3Hマウスから採取した胸腺細胞をブレオマイシン処理し、同系マウスに1週間の間隔で3回注射した。血清(100倍希釈)を採取し、Hep-2細胞と反応させた。PBSを注射したマウスから採取した血清をコントロールとした。下段左はHep-2細胞の染色像。下段右はウエスタン・ブロットの結果。細胞移入実験の結果。ブレオマイシン投与後のBALB/cマウスの脾臓細胞を調製し、ブレオマイシン非投与ヌードマウスに移入した。脾臓細胞を懸濁し、磁性ビーズ結合抗CD4抗体又は抗B220抗体と反応させた。このようにしてCD4 T細胞とB220 B細胞を精製した。精製したCD4細胞(106個又は105個)又はB220細胞(106個)をBALB/cヌードマウスに移入した。CD4細胞(106個)を移入したヌードマウスの代表的な組織像を示した。ブレオマイシン投与マウスと同様の病変が形成されている。正常マウス(BALB/c)の食道組織を用いた2次元電気泳動の結果。12個の特徴的なスポットが認められる。 齧歯目の動物を用意し、所定量のブレオマイシンを連続的に投与するとともに、全身性の繊維化が生ずるのに必要な期間飼育する、ことを特徴とする、ヒト全身性強皮症動物モデルの作製方法。 全身性の繊維化が生ずるのに必要な期間が、ブレオマイシンの初回投与から30日後〜50日後までの期間である、請求項1に記載の作製方法。 ブレオマイシンの投与量が0.5mg/kg/回〜15mg/kg/回であり、投与間隔が1日〜3日である、請求項1又は2に記載の作製方法。 ブレオマイシンの総投与量が7.5mg/kg〜225mg/kgである、請求項3に記載の作製方法。 齧歯目の動物がマウスである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の作製方法。 請求項1〜5のいずれか一項に記載の作製方法で得られる、ヒト全身性強皮症動物モデル。 以下の(a)及び(b)の特徴を呈する齧歯目の動物である、ヒト全身性強皮症動物モデル: (a)皮膚、食道、胃、腎臓、脾臓及び小血管においてコラーゲン繊維の増大が認められる; (b)自己抗体である抗Scl-70抗体、抗SS-A/Ro抗体及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価の上昇が認められる。 齧歯目の動物がマウスである、請求項7に記載のヒト全身性強皮症動物モデル。 請求項6〜8のいずれか一項に記載のヒト全身性強皮症動物モデルを用いることを特徴とする、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法。 以下の(a)及び(b)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法: (a)請求項6〜8のいずれか一項に記載のヒト全身性強皮症動物モデルに試験物質を投与するステップ; (b)皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について評価するステップ。 以下の(a)及び(b)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法、 (a)請求項6〜8のいずれか一項に記載のヒト全身性強皮症動物モデルに試験物質を投与するステップ、 (b)試験物質を投与しないこと以外は同一の条件で処理したヒト全身性強皮症動物モデル(対照群)との間で、皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について比較・評価するステップ。 以下の(A)〜(D)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法、 (A)齧歯目の動物を用意するステップ、 (B)前記動物に所定量のブレオマイシンを連続的に投与するステップ、 (C)ステップ(B)に並行して又はステップ(B)の後に、前記動物に試験物質を投与するステップ、 (D)皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について評価するステップ。 以下の(A)〜(D)のステップを含む、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質のスクリーニング方法、 (A)齧歯目の動物を用意するステップ、 (B)前記動物に所定量のブレオマイシンを連続的に投与するステップ、 (C)ステップ(B)に並行して又はステップ(B)の後に、前記動物に試験物質を投与するステップ、 (D)試験物質を投与しないこと以外は同一の条件で処理した齧歯目の動物(対照群)との間で、皮膚のコラーゲン繊維量、食道のコラーゲン繊維量、胃のコラーゲン繊維量、腎臓のコラーゲン繊維量、脾臓のコラーゲン繊維量、小血管のコラーゲン繊維量、食道の傷害の程度、食道平滑筋の萎縮の程度、食道粘膜の平滑筋様線維芽細胞数、食道の粘膜潰瘍の程度、胃の粘膜潰瘍の程度、小腸の粘膜潰瘍の程度、抗Scl-70抗体の血中抗体価、抗SS-A/Ro抗体の血中抗体価、及び抗SS-B/La抗体の血中抗体価からなる群より選択される一以上の指標について比較・評価するステップ。 【課題】ヒト全身性強皮症の動物モデル及びその用途を提供すること。【解決手段】齧歯目の動物を用意し、所定量のブレオマイシンを連続的に投与するとともに、全身性の繊維化が生ずるのに必要な期間飼育することによって、ヒト全身性強皮症動物モデルを作製する。このようにして作製されたヒト全身性強皮症動物モデルを用い、ヒト全身性強皮症に対して有効な物質をスクリーニングする。【選択図】なし配列表