タイトル: | 公開特許公報(A)_香辛料中の残留農薬分析方法 |
出願番号: | 2007260789 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | G01N 30/88,G01N 27/62,G01N 30/26,G01N 30/72 |
久世 典子 阿部 友紀 内野 昌幸 佐藤 信仁 JP 2009092404 公開特許公報(A) 20090430 2007260789 20071004 香辛料中の残留農薬分析方法 株式会社カネカ 000000941 株式会社カネカサンスパイス 594026170 久世 典子 阿部 友紀 内野 昌幸 佐藤 信仁 G01N 30/88 20060101AFI20090403BHJP G01N 27/62 20060101ALI20090403BHJP G01N 30/26 20060101ALI20090403BHJP G01N 30/72 20060101ALI20090403BHJP JPG01N30/88 CG01N27/62 VG01N27/62 CG01N27/62 XG01N30/26 AG01N30/88 101KG01N30/72 AG01N30/72 C 3 OL 9 2G041 2G041CA01 2G041EA04 2G041EA06 2G041FA07 2G041GA09 2G041HA01 2G041LA07 本発明は、香辛料中に残留する農薬を分析する技術に関する。 2006年5月にわが国で残留農薬の規制に関する法律、ポジティブリスト制が施行され、市場に流通するすべての農薬が規制の対象となった。法律の施行とともに、食品に残留する農薬が基準値以下であることを分析して確認する必要が生じたが、規制の対象となる農薬は800種類以上存在し、多種類の農薬をいかに効率よく分析できるかが課題となっている。これを満たす分析方法として、厚生労働省から残留農薬の一斉分析法が告示されており、さらにこの告示法を改良した分析方法も報告されている。 しかしながら、香辛料は他の農産物と比較して、香りや辛味、苦味等、非常に多くの成分からなる試料であり、非特許文献1の一斉分析法や、特許文献1、非特許文献2などの改良法においては、これら香辛料中に含まれる成分が、ガスクロマトグラフィー質量分析計や液体クロマトグラフィー質量分析計を用いた農薬の測定工程において夾雑成分となり、農薬の測定を妨げる。このため、香辛料中の残留農薬分析においては、分析不可能な農薬が多数存在する。特開2003−149104号公報愛知県衛生研究所報,No.53,Page33-41(2003.03.03) GC-パルスドFPD/FTDによる大葉中残留農薬の一斉分析平成17年1月24日付け食安発第0124001号厚生労働省医薬食品局食品安全部長通知 食品に残留する農薬、飼料添加物又は動物用医薬品の成分である物質の試験法 本発明は、上記問題を解決するもので、香辛料中の多くの残留農薬の分析を可能とする分析法を提供することを目的とする。 本発明は、香辛料に残留する農薬の分析方法であって、試料抽出液をシリカゲルカートリッジに供し、混合比率を変えた混合溶媒を溶出溶媒として順次溶出、分画することによって農薬と夾雑成分を分離する前処理工程と、この前処理工程を経た溶液中の農薬濃度を測定する測定工程からなることを特徴とする残留農薬分析方法にある。 本発明の方法によれば、農薬濃度測定工程において夾雑成分となる香辛料中の成分と農薬を、前処理工程において分離することができ、農薬濃度測定工程での農薬の測定を容易にし、香辛料中の残留農薬の分析を改善することができる。 本発明の対象となる香辛料としては、厚生労働省通知食安発第1129001号に定められたスパイス、ハーブ、及びショウガ、唐辛子等が挙げられる。 本発明における試料抽出液とは、試料に抽出溶媒、若しくは超臨界二酸化炭素を加え、ホモジナイズ、振とう、還流等の抽出操作を行った後、ろ過や遠心分離により抽出液を固液分離して得られるものである。上記の抽出溶媒としては農薬を溶解する溶媒であればいずれも使用できるが、一般的にはアセトニトリルが好適に使用される。 なお、上記試料抽出液はGPC、液液分配、固相吸着剤等によりさらに精製されることが望ましい。固相吸着剤としては例えばC18、グラファイトカーボン、イオン交換体が使用される。 本発明におけるシリカゲルカートリッジには、例えばシリカゲルを固相吸着剤とする固相カートリッジが使用される。 溶出溶媒とする混合溶媒には、農薬を溶解させることができ、溶媒同士が分離せず、かつシリカゲルに非可逆的に吸着されない溶媒ならばいずれも使用できる。これらの溶媒の混合比率を変えることによって極性を変化させた複数の混合溶媒を溶出溶媒として使用する。特に、アセトンとn-ヘキサンからなる混合溶媒を使用し、アセトン含量を増やすことによって極性を上げた複数の混合溶媒を溶出溶媒として用いる方法が好ましい。 上記溶出溶媒にて順次溶出、分画する方法においては、まず試料抽出液を乾固した後、一番目の溶出溶媒にて溶解する。この試料溶解液を一番目の溶出溶媒にて平衡化したシリカゲルカートリッジに供する。このシリカゲルカートリッジに一番目の溶出溶媒を流し、溶出液を採取する。次に、一番目の溶出溶媒よりも極性の高い混合溶媒を二番目の溶出溶媒とし、シリカゲルカートリッジに流して溶出液を採取する。同様の操作を繰り返し、試料溶解液を複数の溶出液に分画する。なお、溶出溶媒として用いる混合溶媒の極性及び分画数は試料に含まれる成分により適時調整することが望ましい。この操作によって農薬濃度測定工程において夾雑成分となる香辛料中の成分と農薬を分離することができる。 得られた溶出液は、ついで濃縮、場合によっては乾固した後、適当な溶媒に溶解して残留農薬測定用検液とする。 上記の溶解溶媒としては農薬を溶解し、農薬の機器分析に障害を与えない溶媒であればいずれも使用できるが、一般的にはGCではアセトン、n-ヘキサン混合溶媒、LCではメタノールが好適に使用される。係る溶解工程の後、タンデム型を含むGC/MS、タンデム型を含むLC/MSの機器分析手段を用いて、残留農薬の測定、定量を行うことができる。 以下、本発明を実験例を用いて、さらに詳細に説明する。まず、本実験で用いた各種試薬、固相吸着剤、装置を下記に示す。 (試薬)アセトニトリル、アセトン、トルエン、n-ヘキサン:関東化学製、残留農薬試験・PCB試験用5,000倍 (固相カートリッジ)C18:Sep-Pak Vac 6cc(1g) C18(Waters)GC/PSA:InertSep GC/PSA 500mg/500mg/20mL(GLサイエンス)シリカゲル:Sep-Pak Vac 6cc(1g) Silica(Waters) (装置)高速ホモジナイザー:ウルトラタラックスT25ベーシック(IKA Works)遠心分離機:H-103N4(KOKUSAN)減圧エバポレーター:Rotavapor R-200(BUCHI)自動窒素濃縮装置:EVAN-SFE(MORITEX)タンデム型ガスクロマトグラフ質量分析計システム:注入部:大量注入装置LVI-S200(アイスティサイエンス)GC部:GC6800N(Agilent)質量分析部:Quattro micro GC(Micro mass) (実施例1) 0.1ppmの農薬を添加したコショウを試料とし、分析した際の添加回収率を評価した。具体的な方法と結果について以下に示す。 (前処理工程) 試料1gを採取し、アセトニトリル20mLを加え高速ホモジナイザーにて1分間ホモジナイズを行う。5000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄を採取する。残渣にアセトニトリル10mLを加え振とうし、5000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄を先ほどの上澄と併せる。これにn-ヘキサン10mLを加えて振とうし、アセトニトリル層を採取する。n-ヘキサン層にn-ヘキサン飽和アセトニトリル10mLを加えて振とうし、アセトニトリル層を先ほどのアセトニトリル層と併せる。これを40℃減圧エバポレーターにて濃縮する。これにアセトニトリル5mLを加えて溶解し、C18固相カートリッジに供し、アセトニトリル15mLで溶出し、40℃減圧エバポレーターで濃縮する。これにアセトニトリル/トルエン(3/1)5mLを加えて溶解し、GC/PSA固相カートリッジに供する。アセトニトリル/トルエン(3/1)15mLで溶出し、濃縮乾固したのち、アセトン/n-ヘキサン(1/1)にて5mLに定容する。これを正確に1mLずつ2本分取し、自動窒素濃縮装置にて乾固させる。 2本それぞれを5%アセトン含有n-ヘキサン2mLに溶解し、5%アセトン含有n-ヘキサンで平衡化したシリカゲル固相カートリッジに供する。5%アセトン含有n-ヘキサン5mL、ついで10%アセトン含有n-ヘキサン5mLにて溶出し、溶出液1とする。次に15%アセトン含有n-ヘキサン5mLにて溶出し、溶出液2とする。次に20%アセトン含有n-ヘキサン5mLにて溶出し、溶出液3とする。次にアセトン10mLにて溶出し、溶出液4とする。溶出液1から溶出液4を自動窒素濃縮装置にて濃縮し、一方はアセトン/n-ヘキサン(1/1)にて1mLに定容してブランク溶液とする。もう一方は0.2ppm農薬混合溶液100μLを添加した後、アセトン/n-ヘキサン(1/1)にて1mLに定容し、0.02ppm農薬標準溶液として検量線作成に用いる。 また、試料1gを採取し、2ppm農薬混合溶液50μLを添加して農薬0.1ppm添加試料を作成し、上記と同様の操作を行ったものを添加回収溶液とする。 上記で調整した溶液10μLを以下の条件にてタンデム型ガスクロマトグラフ質量分析計で分析し、ピーク面積法により各農薬濃度を測定し、添加回収率を算出する。 (タンデム型ガスクロマトグラフ質量分析計による農薬濃度測定工程)カラム:DB-5MS (0.25mm×30m,film 0.25um,Agilent)キャリアーガス:ヘリウム流量:1mL/minGC温度条件.:50℃(4min hold)→25℃/min昇温→100℃(3min hold)→20℃/min昇温→150℃(3min hold)→5℃/min昇温→220℃(5min hold)→5℃/min昇温→300℃(10min hold)イオン源温度:300℃イオン化条件:EI+測定条件:MRMモード (測定農薬) 評価した農薬を表1に示した。 コショウを用いて行った実施例1における農薬154成分の添加回収率を、図1に示した。本発明に基づいた方法によれば、154農薬の内、151農薬が添加回収率50%から100%という良好な分析結果を得ることができた。 (比較例1) 実施例1と同様に試料としてコショウを使用し、下記に示す方法にて添加回収率を評価した。具体的な方法と結果について以下に示す。本方法は厚生労働省告示の残留農薬一斉分析法に準じた方法であり、実施例1の前処理工程より、本発明の特徴である、混合比率を変えた混合溶媒を溶出溶媒として順次溶出、分画する操作を除いたものである。 (前処理工程) 試料1gを採取し、アセトニトリル20mLを加え高速ホモジナイザーにて1分間ホモジナイズを行う。5000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄を採取する。残渣にアセトニトリル10mLを加え振とうし、5000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄を先ほどの上澄と併せる。これにn-ヘキサン10mLを加えて振とうし、アセトニトリル層を採取する。n-ヘキサン層にn-ヘキサン飽和アセトニトリル10mLを加えて振とうし、アセトニトリル層を先ほどのアセトニトリル層と併せる。これを40℃減圧エバポレーターにて濃縮する。これにアセトニトリル5mLを加えて溶解し、C18固相カートリッジに供し、アセトニトリル15mLで溶出し、40℃減圧エバポレーターで濃縮する。これにアセトニトリル/トルエン(3/1)5mLを加えて溶解し、GC/PSA固相カートリッジに供する。アセトニトリル/トルエン(3/1)15mLで溶出し、濃縮乾固したのち、アセトン/n-ヘキサン(1/1)にて5mLに定容する。これを正確に1mLずつ2本分取し、自動窒素濃縮装置にて濃縮し、一方はアセトン/n-ヘキサン(1/1)にて1mLに定容してブランク溶液とする。もう一方は0.2ppm農薬混合溶液100μLを添加した後、アセトン/n-ヘキサン(1/1)にて1mLに定容し、0.02ppm農薬標準溶液として検量線作成に用いる。 また、試料1gを採取し、2ppm農薬混合溶液50μLを添加して農薬0.1ppm添加試料を作成し、上記と同様の操作を行ったものを添加回収溶液とする。農薬濃度測定工程以下は実施例と同様の条件で行う。 比較例1における農薬154成分の添加回収率を図2に示した。混合比率を変えた混合溶媒を溶出溶媒として順次溶出、分画する操作を行わなかった比較例1では、154成分の内、添加回収率30%以下の分析不可能な農薬が21成分存在した。 一方、本発明を用いた実施例1における結果では、これを大幅に改善することができた。 (実施例2) 本実施例においては、試料としてコショウ、ナツメグ、花椒、赤唐辛子、ショウガ、セージ、ローレル、ターメリックの8つの香辛料を用いて、実施例1と同様の添加回収率評価を行い、本発明の方法の汎用性を評価したものである。本発明に係るシリカゲル固相カートリッジによる分画方法については以下の通り行い、その他は実施例1と同様の方法で行った。 (シリカゲル固相カートリッジによる分画) コショウ: 溶出液1;5%アセトン含有n-ヘキサン、10%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液2;15%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液3;20%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液4;アセトン溶出画分 ナツメグ、セージ: 溶出液1;5%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液2;10%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液3;アセトン溶出画分 花椒、赤唐辛子、ショウガ: 溶出液1;5%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液2;10%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液3;15%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液4;アセトン溶出画分 ローレル: 溶出液1;n-ヘキサン溶出画分 溶出液2;5%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液3;10%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液4;15%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液5;アセトン溶出画分 ターメリック: 溶出液1;n-ヘキサン溶出画分 溶出液2;5%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液3;10%アセトン含有n-ヘキサン溶出画分 溶出液4;アセトン溶出画分 8種類の香辛料において、測定した農薬154成分のほとんどが良好な回収率を示し、本発明による分析法が香辛料中の残留農薬分析法として適したものであることが確認できた。実施例1における農薬154成分の添加回収率比較例1における農薬154成分の添加回収率各種香辛料について実施した実施例2の添加回収率 香辛料に残留する農薬の分析方法であって、試料抽出液をシリカゲルカートリッジに供し、混合比率を変えた混合溶媒を溶出溶媒として順次溶出、分画することによって農薬と香辛料中の夾雑成分とを分離する前処理工程と、この前処理工程を経た溶液中の農薬濃度を測定する測定工程からなることを特徴とする残留農薬分析方法。 請求項1において上記溶出溶媒がアセトン、n-ヘキサンの混合溶媒であることを特徴とする残留農薬分析方法。 請求項1において、上記測定工程がタンデム型を含むガスクロマトグラフィー質量分析計又はタンデム型を含む液体クロマトグラフィー質量分析計のいずれかであることを特徴とする残留農薬分析方法。 【課題】 本発明は、特に香りや辛味、苦味等、非常に多くの成分を含むために分析が困難である香辛料中の残留農薬分析法を提供することを目的とする。【解決手段】 香辛料に残留する農薬の分析方法であって、試料抽出液をシリカゲルカートリッジに供し、混合比率を変えた混合溶媒を溶出溶媒として順次溶出、分画することによって農薬と香辛料中の夾雑成分とを分離する前処理工程と、この前処理工程を経た溶液中の農薬濃度を測定する測定工程からなる。【選択図】 なし