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タイトル:公開特許公報(A)_内因性オピオイドペプチドの血中分泌促進用組成物
出願番号:2007255330
年次:2009
IPC分類:A61K 38/00,A61K 38/17,A61P 43/00


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白神 俊幸 JP 2009084197 公開特許公報(A) 20090423 2007255330 20070928 内因性オピオイドペプチドの血中分泌促進用組成物 不二製油株式会社 000236768 白神 俊幸 507323145 白神 俊幸 A61K 38/00 20060101AFI20090327BHJP A61K 38/17 20060101ALI20090327BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090327BHJP JPA61K37/18A61K37/16A61P43/00 111 4 1 OL 8 特許法第30条第1項適用申請有り 1.(財)不二たん白質研究振興財団、第10回研究報告会講演要旨集、平成19年5月24日発行(同日に同報告会において講演要旨集に記載の内容を発表) 2.特定非営利活動法人 日本栄養改善学会、第54回日本栄養改善学会学術総会講演要旨集、平成19年9月1日(平成19年9月21日に同総会において講演要旨集に記載の内容を発表) 4C084 4C084AA02 4C084BA43 4C084CA15 4C084DC50 4C084NA14 4C084ZA081 4C084ZA082 4C084ZC022 4C084ZC752本発明は、内因性オピオイドペプチドの血中分泌促進用組成物に関する。 痛みは本来生理的な生体警告反応であるが、過剰かつ持続的痛みは除去する必要がある。極度の痛みを抑制する目的で、従来よりモルヒネ等が鎮痛薬として用いられているが、これは生体が有する内因性のモルヒネ様鎮痛物質(オピオイドペプチド)に対する受容体(オピオイド受容体)に結合することで強力な鎮痛作用を示す。内因性オピオイドペプチドにはエンケファリン類、エンドルフィン類、ダイノルフィン類が知られており、メチオニンエンケファリンやロイシンエンケファリンはδ受容体、β−エンドルフィンはμ受容体、ダイノルフィンAはκ受容体に結合することにより生理的な疼痛制御を行う。これらのオピオイドペプチドは、脳を主とする中枢神経系のほか、副腎髄質や消化管などで産生される。 アルギニンは、癌性疼痛などの鎮痛剤が効きにくい慢性の強い痛みにも鎮痛作用を示す、天然の鎮痛成分であることが知られている。この鎮痛作用は、アルギニン摂取によって脳内神経ペプチドであるキョートルフィン(アルギニンとチロシンのジペプチド)合成反応が促進することにより、オピオイドペプチドの一種であるエンケファリンの放出が促進し、これがオピオイド受容体に結合することによると考えられる。実際、アルギニンをマウスに皮下投与すると、脳内のキョートルフィンの濃度増加に依存して鎮痛効果が現れ(非特許文献1)、ヒトにおいても他の治療効果が期待できない難治性の慢性疼痛患者へアルギニンを静脈投与することにより持続性の鎮痛効果が現れることが報告されている(非特許文献2)。また、担癌マウスにおいて大豆蛋白質食を摂取すると、癌性疼痛が軽減されるという報告がある(非特許文献3)。 このように非特許文献1や非特許文献2ではアルギニンの投与は皮下投与や静脈投与での鎮痛作用が報告されているものの、食事として経口摂取する場合に上記と同様の生理効果が期待できるか否かについては不明である。また、経口摂取の場合には、アルギニン単独投与による非生理的影響や、腎臓など臓器への過度の負担や、高浸透圧による下痢などが生ずる可能性がある。 また、非特許文献3のような大豆蛋白質食の場合には、オリゴペプチド体に比べると吸収効率が悪いという問題がある。 特許文献1では、人乳由来のオピオイドペプチドであるβ−カゾモルフィン4に着目し、これに類似した配列であるTyr−Pro−Phe−Val−Val(YPFVV)が大豆β−コングリシニンのβ−サブユニット中に存在することを見出され、このYPFVVペプチドそのものがオピオイド活性を有し、オピオイドペプチドとして作用しうることが確認されている。すなわち、エンケファリン類、エンドルフィン類、ダイノルフィン類などのヒトの内因性オピオイドペプチドの代替ペプチドとして使用できることの可能性を示すものであるが、内因性オピオイドペプチドに対して何らかの作用を示すものではない。また、このように特定の配列のペプチドを多量に摂取することは、非生理的であり、摂取アミノ酸のアンバランスという問題が生じうる。 そのため、内因性のオピオイドペプチドの分泌を効果的に促進させることによって間接的に鎮痛作用を示すような成分や素材を見出すことは有意義である。(参考文献)高木博司,日本薬理学雑誌,96,85-96,1990.Harima A et al., Eur Neuropsychopharmacol, 1, 529-533, 1991.Zhao C et al., J Pain, 5, 104-110, 2004.特開2007−91656号公報 本発明は、天然の内因性のモルヒネ様鎮痛物質であるオピオイドペプチドの分泌を促進させる用途に適した組成物を提供することを課題とする。本発明者は、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、大豆蛋白質を酵素分解して得られた大豆由来のオリゴペプチド混合物をラットに摂取させたところ、内因性のオピオイドペプチドであるエンケファリン類、エンドルフィン類及びダイノルフィン類の血中濃度がいずれも上昇し、それらの血中への分泌が促進されることを見出した。 即ち、本発明は、1.大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合されたことを特徴とする内因性オピオイドペプチドの血中への分泌促進用組成物、2.内因性オピオイドペプチドが、エンケファリン類、エンドルフィン類又はダイノルフィン類である前記1.記載の組成物、3.大豆由来のオリゴペプチド混合物中、分子量500以下のペプチド画分が65%以上であって、且つ、遊離アミノ酸が10%以下であることを特徴とする前記1.記載の組成物、4.内因性オピオイドペプチド血中分泌促進用組成物の製造のための、大豆由来のオリゴペプチド混合物の使用、に関するものである。 本発明が提供する組成物は、天然由来であり、内因性のモルヒネ様鎮痛物質であるオピオイドペプチドの血中濃度を効果的に増加させる作用を有しており、オピオイドペプチドが関連する種々の生理作用の発現を増強させることが期待できる。 本発明が開示する内因性オピオイドペプチドの血中への分泌促進用組成物は、大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合されたことを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。また、本発明は、内因性オピオイドペプチド血中分泌促進用組成物の製造のための大豆由来のオリゴペプチド混合物の使用方法を開示するものである。以下、本発明を具体的に説明する。 まず、本発明において「組成物」は、例えば薬剤、飲食品、飼料などのような種々の原料を配合して製造されるものを意味する。 本発明の組成物が薬剤である場合は、種々の投与形態の製剤とすることができる。すなわち、経口的投与の場合に、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、粒剤もしくは丸剤等の固形製剤や、溶液、エマルジョンもしくはサスペンジョンなどの液剤の形態等で投与することができる。これらの製剤の調製にあたっては製剤化のために許容される添加剤、例えば賦形剤、安定剤、防腐剤、潤滑剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、張度調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤等を併用して製剤化することが出来る。 本発明の組成物が飲食品である場合は、一般的な飲食品の形態であるクリーム、マーガリン、清涼飲料、栄養飲料、乳製品、豆乳、発酵豆乳、大豆蛋白飲料、豆腐、納豆、油揚げ、厚揚げ、がんもどき、ハンバーグ、ミートボール、唐揚げ、ナゲット、各種総菜、焼き菓子、シリアル、飴、ガム等の菓子類、タブレット、パン類、米飯類などのように、様々な形態に調製することができる。さらに、飲食品中における大豆オリゴペプチド混合物を有効成分(関与する成分)として飲食品の包装や商用パンフレット等に本発明の効果を有する旨を記載した、健康用途の飲食品(特定保健用食品、特別用途食品等)にすることができる。 そして、本発明の組成物は飼料として提供されることも可能である。飼料の種類は特に限定されないが、家畜用やペットフードのような飼料に含有せしめることも可能である。(大豆由来のオリゴペプチド混合物) 本発明の組成物中に配合される大豆由来のオリゴペプチド混合物は、大豆蛋白質を含む原料を蛋白質加水分解酵素により酵素分解して得られる大豆蛋白質酵素分解物であればよい。これは特定の配列のみを有するペプチドではなく、様々なアミノ配列と分子量を有するペプチドの混合物である。 大豆蛋白質を含む原料としては、大豆(形状は粒状、粉末状などを問わない)、豆乳(全脂、脱脂等を問わない)、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白、分画大豆蛋白などを使用することができる。特に少量の摂取でより多量のオリゴペプチドを摂取できるようにしたい場合には、蛋白質含量の高い分離大豆蛋白や分画大豆蛋白の使用が好ましい。 酵素分解に用いる蛋白質加水分解酵素は特に限定されず、金属プロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ等のいずれも使用できる。 酵素分解の程度は、全てが遊離アミノ酸にまで分解されていなければ特に限定されるものではないが、オリゴペプチド混合物中、分子量500以下のペプチド画分(ジペプチドやトリペプチドが主体)として50%以上、好ましくは65%以上となる程度が適当である。ペプチド混合物の分子量が大きすぎると吸収速度の優位性が少なくなり、オピオイド分泌促進の効果が減殺される可能性があるためである。また、オリゴペプチド混合物中、遊離アミノ酸が20%以下、好ましくは10%以下となる程度が適当である。遊離アミノ酸が多くなりすぎると大量摂取による問題を生ずる可能性があるためである。 このように低分子ペプチドが多く、遊離アミノ酸の少ないオリゴペプチド混合物を得るには、複数の酵素を併用する方が効率的であり、特に遊離アミノ酸の含量を減らすにはエキソプロテアーゼ活性の少ない酵素を使用することが好ましい。 本発明の大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合された組成物を摂取することにより、エンケファリン類、エンドルフィン類及びダイノルフィン類などの内因性オピオイドペプチドの血中への分泌を促進させることができる。したがってこれら内因性オピオイドペプチドが関連する種々の生理作用の発現を促進させることが期待できる。期待される生理作用としては、鎮痛作用、鎮咳作用、鎮静作用等が挙げられる。 本発明の組成物中における大豆オリゴペプチド混合物の配合量は、組成物の形態・量によっても異なり、適宜設定することができる。通常、オリゴペプチド混合物が1日あたりの有効量を摂取できるように、組成物中の配合量を当業者が適宜設定することができる。例えば、1日あたりの大豆オリゴペプチド混合物の摂取量を6gと設定した場合、1日あたりの組成物の摂取量が10gである場合は、組成物中の配合量を60質量%とすれば良い。 本発明の組成物の有効摂取量は使用目的・使用対象・使用形態等により異なるが、ヒトの場合、通常は1日あたりの大豆オリゴペプチド混合物の摂取量が3g以上、好ましくは6g以上程度となるように1回あるいは数回に分けて調整すればよい。医薬品の多くが適正量以上の摂取は安全性に問題を生じる可能性があるのに対し、本発明の組成物に配合される大豆オリゴペプチド混合物は天然物由来であるため、安全性の観点からは摂取量の上限はほとんど問題にはされない。 以下に実施例を記載するが、この発明の技術思想がこれらの例示によって限定されるものではない。(試験例) 以下の方法に従い、大豆オリゴペプチド混合物がラットの血中オピオイドペプチド濃度に及ぼす影響について調べた。・試験飼料の調製 飼料組成はマウス・ラットの成体維持用の栄養研究用標準飼料である「AIN-93M」に準じ、蛋白質源として(1)ミルクカゼイン、(2)分離大豆蛋白「フジプロ」(不二製油(株)製、登録商標)又は(3)大豆オリゴペプチド混合物「ハイニュート」(不二製油(株)製、登録商標)を各14%含有する飼料を3点調製した。順に(1)をMC食、(2)をSPI食、(3)をAM食と称する。なお、「ハイニュート」は分子量500以下のペプチド画分が65%以上であって、且つ、遊離アミノ酸が10%以下であるタイプのものを使用した。・動物飼育 Wister系雄ラット(日本チャールス・リバー(株)、7週齢、約230g)18匹を一週間馴化飼育した。馴化期間は全ての群にMC食を自由摂取させ、その後3群(6匹ずつ)に分けてそれぞれMC食、SPI食、又はAM食に切り替え、さらに一週間自由摂取させた。飼育期間中の採餌量及び体重は原則として2日ごとに測定した。・採決及び血中オピオイドペプチドの定量 飼育開始2週間後、12時間の絶食を行い、ネンブタールによる過麻酔下で、全採血した。なお、本実験はノートルダム清心女子大学の動物実験委員会の承認を得て動物実験指針に則り行った。血液はEDTA(1mg/mL of blood)及びアプロチニン(0.6TIU/mL of blood)入り採血管にて血漿分離した。血漿中の各種オピオイドペプチド(ロイシンエンケファリン、β−エンドルフィン、ダイノルフィンA)の濃度は、市販EIAキット(ロイシンエンケファリンはPhoenix Pharmaceuticals, Inc.製、β−エンドルフィン及びダイノルフィンAはPeninsula Laboratories, Inc.製)を用いて説明書に従って反応させた後、モデル680マイクロプレートリーダー(バイオ・ラッド ラボラトリーズ(株)製)にて測定波長450nmの吸光度を測定することにより定量化した。・結果(採餌量及び体重の変化) 全ての群においてMC食を与えた馴化期間の一週間並びにその後の試験食の一週間を通じ、原則として試験期間中2日に一度採餌量及び体重を測定したが、MC食、SPI食及びAM食を摂取した各間において、これらの指標における有意な差異は認められなかった。・結果(血漿濃度) MC食群に比較して、SPI食群では有意に血漿中ロイシンエンケファリン濃度が上昇し(約1.5倍)、AM食群においてもSPI食群と同様に血漿濃度が上昇することが明らかとなった(図1参照)。また、他のオピオイドペプチドについても血漿濃度の変動に効果があるか否か検討したところ、β−エンドルフィン(図2)及びダイノルフィンA(図3)においても、ロイシンエンケファリン同様、それぞれSPI食群及びAM食群においてMC食群に比べて有意に上昇していた(約1.5倍)。さらに興味深いことに、SPI食群に比べてAM食群において血漿濃度が高い傾向が認められた(図2、図3参照)。 本試験結果より、分離大豆蛋白、特に大豆オリゴペプチド混合物の経口摂取がエンケファリン以外の内因性オピオイドペプチドの血漿濃度についても高める効果が示された。これは、大豆オリゴペプチド混合物がこれらオピオイドペプチドの分泌を促進することにより鎮痛作用等の種々の生理作用の増強に関与する可能性を示唆するものである。 本発明者らはこれまでに、実験的に腸管粘膜障害を誘発したラットの実験から、腸管粘膜上皮の萎縮時において、遊離アミノ酸や糖の吸収はそれらの輸送担体の発現低下により障害されるが、ペプチド吸収は保たれ、それはペプチド輸送担体PepT1の発現維持によることを分子レベルで明らかにした(Tanaka H et al., Gastroenterology, 114, 714-723, 1998.)。さらに、ラットにおいて摂取蛋白質量、ペプチド食あるいは遊離アミノ酸(フェニルアラニン)食に依存して小腸ペプチド輸送活性が上昇する機構として、PepT1の発現上昇によることをつきとめ、PepT1遺伝子の転写調節にジペプチド、フェニルアラニン、リジン及びアルギニンが関与することを明らかにしている(Shiraga T et al., Gastroenterology, 116, 354-362, 1999.)。 以上より、腸管の吸収能が低下する術後侵襲時等において、大豆オリゴペプチド混合物によりペプチド輸送活性を誘導することは、栄養状態の改善と共に痛みの制御を可能とすることが期待される。MC食、SPI食及びAM食を摂取させたラットにおけるロイシンエンケファリンの血漿濃度を示した図である(means±SD of 5〜6 rats, *P<0.02, ** P<0.002 対MC食群)。MC食、SPI食及びAM食を摂取させたラットにおけるβ−エンドルフィンの血漿濃度を示した図である(means±SD of 5〜6 rats, *P<0.003, **P<0.006 対MC食群)。MC食、SPI食及びAM食を摂取させたラットにおけるダイノルフィンAの血漿濃度を示した図である(means±SD of 5〜6 rats, *P<0.02, **P<0.002 対MC食群)。大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合されたことを特徴とする内因性オピオイドペプチドの血中への分泌促進用組成物。内因性オピオイドペプチドが、エンケファリン類、エンドルフィン類又はダイノルフィン類である請求項1記載の組成物。大豆由来のオリゴペプチド混合物中、分子量500以下のペプチド画分が65%以上であって、且つ、遊離アミノ酸が10%以下であることを特徴とする請求項1記載の組成物。内因性オピオイドペプチド血中分泌促進用組成物の製造のための、大豆由来のオリゴペプチド混合物の使用。 【課題】 本発明は、天然の内因性のモルヒネ様鎮痛物質であるオピオイドペプチドの分泌を促進させる用途に適した組成物を提供することを課題とする。 【解決手段】 大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合されたことを特徴とする内因性オピオイドペプチドの血中への分泌促進用組成物。【選択図】図1


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特許公報(B2)_内因性オピオイドペプチドの血中分泌促進用組成物

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タイトル:特許公報(B2)_内因性オピオイドペプチドの血中分泌促進用組成物
出願番号:2007255330
年次:2013
IPC分類:A61K 38/00,A61P 43/00,A61P 25/04


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白神 俊幸 JP 5317456 特許公報(B2) 20130719 2007255330 20070928 内因性オピオイドペプチドの血中分泌促進用組成物 不二製油株式会社 000236768 白神 俊幸 507323145 白神 俊幸 20131016 A61K 38/00 20060101AFI20130926BHJP A61P 43/00 20060101ALI20130926BHJP A61P 25/04 20060101ALI20130926BHJP JPA61K37/18A61P43/00 111A61P25/04 A61K 38/00− 38/58 A61K 36/00− 36/9068 A23L 1/27− 1/308 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) 特開2007−091656(JP,A) 特開2007−222116(JP,A) 特開平10−000071(JP,A) Tian H, et al.,A bioassay for opioid activity in pepsin hydrolysates of feed proteins,Journal of Nanjing Agricultural University (Nanjing Nongye Daxue Xuebao),2002年,Vol. 25, No. 1,p. 117-118 3 2009084197 20090423 8 20100927 特許法第30条第1項適用 1.(財)不二たん白質研究振興財団、第10回研究報告会講演要旨集、平成19年5月24日発行(同日に同報告会において講演要旨集に記載の内容を発表) 2.特定非営利活動法人 日本栄養改善学会、第54回日本栄養改善学会学術総会講演要旨集、平成19年9月1日(平成19年9月21日に同総会において講演要旨集に記載の内容を発表) 瀬下 浩一本発明は、内因性オピオイドペプチドの血中分泌促進用組成物に関する。 痛みは本来生理的な生体警告反応であるが、過剰かつ持続的痛みは除去する必要がある。極度の痛みを抑制する目的で、従来よりモルヒネ等が鎮痛薬として用いられているが、これは生体が有する内因性のモルヒネ様鎮痛物質(オピオイドペプチド)に対する受容体(オピオイド受容体)に結合することで強力な鎮痛作用を示す。内因性オピオイドペプチドにはエンケファリン類、エンドルフィン類、ダイノルフィン類が知られており、メチオニンエンケファリンやロイシンエンケファリンはδ受容体、β−エンドルフィンはμ受容体、ダイノルフィンAはκ受容体に結合することにより生理的な疼痛制御を行う。これらのオピオイドペプチドは、脳を主とする中枢神経系のほか、副腎髄質や消化管などで産生される。 アルギニンは、癌性疼痛などの鎮痛剤が効きにくい慢性の強い痛みにも鎮痛作用を示す、天然の鎮痛成分であることが知られている。この鎮痛作用は、アルギニン摂取によって脳内神経ペプチドであるキョートルフィン(アルギニンとチロシンのジペプチド)合成反応が促進することにより、オピオイドペプチドの一種であるエンケファリンの放出が促進し、これがオピオイド受容体に結合することによると考えられる。実際、アルギニンをマウスに皮下投与すると、脳内のキョートルフィンの濃度増加に依存して鎮痛効果が現れ(非特許文献1)、ヒトにおいても他の治療効果が期待できない難治性の慢性疼痛患者へアルギニンを静脈投与することにより持続性の鎮痛効果が現れることが報告されている(非特許文献2)。また、担癌マウスにおいて大豆蛋白質食を摂取すると、癌性疼痛が軽減されるという報告がある(非特許文献3)。 このように非特許文献1や非特許文献2ではアルギニンの投与は皮下投与や静脈投与での鎮痛作用が報告されているものの、食事として経口摂取する場合に上記と同様の生理効果が期待できるか否かについては不明である。また、経口摂取の場合には、アルギニン単独投与による非生理的影響や、腎臓など臓器への過度の負担や、高浸透圧による下痢などが生ずる可能性がある。 また、非特許文献3のような大豆蛋白質食の場合には、オリゴペプチド体に比べると吸収効率が悪いという問題がある。 特許文献1では、人乳由来のオピオイドペプチドであるβ−カゾモルフィン4に着目し、これに類似した配列であるTyr−Pro−Phe−Val−Val(YPFVV)が大豆β−コングリシニンのβ−サブユニット中に存在することを見出され、このYPFVVペプチドそのものがオピオイド活性を有し、オピオイドペプチドとして作用しうることが確認されている。すなわち、エンケファリン類、エンドルフィン類、ダイノルフィン類などのヒトの内因性オピオイドペプチドの代替ペプチドとして使用できることの可能性を示すものであるが、内因性オピオイドペプチドに対して何らかの作用を示すものではない。また、このように特定の配列のペプチドを多量に摂取することは、非生理的であり、摂取アミノ酸のアンバランスという問題が生じうる。 そのため、内因性のオピオイドペプチドの分泌を効果的に促進させることによって間接的に鎮痛作用を示すような成分や素材を見出すことは有意義である。(参考文献)高木博司,日本薬理学雑誌,96,85-96,1990.Harima A et al., Eur Neuropsychopharmacol, 1, 529-533, 1991.Zhao C et al., J Pain, 5, 104-110, 2004.特開2007−91656号公報 本発明は、天然の内因性のモルヒネ様鎮痛物質であるオピオイドペプチドの分泌を促進させる用途に適した組成物を提供することを課題とする。本発明者は、上記の課題に対して鋭意研究を重ねた結果、大豆蛋白質を酵素分解して得られた大豆由来のオリゴペプチド混合物をラットに摂取させたところ、内因性のオピオイドペプチドであるエンケファリン類、エンドルフィン類及びダイノルフィン類の血中濃度がいずれも上昇し、それらの血中への分泌が促進されることを見出した。 即ち、本発明は、1.大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合されたことを特徴とする内因性オピオイドペプチドの血中への分泌促進用組成物、2.内因性オピオイドペプチドが、エンケファリン類、エンドルフィン類又はダイノルフィン類である前記1.記載の組成物、3.大豆由来のオリゴペプチド混合物中、分子量500以下のペプチド画分が65%以上であって、且つ、遊離アミノ酸が10%以下であることを特徴とする前記1.記載の組成物、4.内因性オピオイドペプチド血中分泌促進用組成物の製造のための、大豆由来のオリゴペプチド混合物の使用、に関するものである。 本発明が提供する組成物は、天然由来であり、内因性のモルヒネ様鎮痛物質であるオピオイドペプチドの血中濃度を効果的に増加させる作用を有しており、オピオイドペプチドが関連する種々の生理作用の発現を増強させることが期待できる。 本発明が開示する内因性オピオイドペプチドの血中への分泌促進用組成物は、大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合されたことを特徴とする。以下、本発明について詳細に説明する。また、本発明は、内因性オピオイドペプチド血中分泌促進用組成物の製造のための大豆由来のオリゴペプチド混合物の使用方法を開示するものである。以下、本発明を具体的に説明する。 まず、本発明において「組成物」は、例えば薬剤、飲食品、飼料などのような種々の原料を配合して製造されるものを意味する。 本発明の組成物が薬剤である場合は、種々の投与形態の製剤とすることができる。すなわち、経口的投与の場合に、錠剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、粒剤もしくは丸剤等の固形製剤や、溶液、エマルジョンもしくはサスペンジョンなどの液剤の形態等で投与することができる。これらの製剤の調製にあたっては製剤化のために許容される添加剤、例えば賦形剤、安定剤、防腐剤、潤滑剤、乳化剤、滑沢剤、甘味料、着色料、香料、張度調整剤、緩衝剤、酸化防止剤、pH調整剤等を併用して製剤化することが出来る。 本発明の組成物が飲食品である場合は、一般的な飲食品の形態であるクリーム、マーガリン、清涼飲料、栄養飲料、乳製品、豆乳、発酵豆乳、大豆蛋白飲料、豆腐、納豆、油揚げ、厚揚げ、がんもどき、ハンバーグ、ミートボール、唐揚げ、ナゲット、各種総菜、焼き菓子、シリアル、飴、ガム等の菓子類、タブレット、パン類、米飯類などのように、様々な形態に調製することができる。さらに、飲食品中における大豆オリゴペプチド混合物を有効成分(関与する成分)として飲食品の包装や商用パンフレット等に本発明の効果を有する旨を記載した、健康用途の飲食品(特定保健用食品、特別用途食品等)にすることができる。 そして、本発明の組成物は飼料として提供されることも可能である。飼料の種類は特に限定されないが、家畜用やペットフードのような飼料に含有せしめることも可能である。(大豆由来のオリゴペプチド混合物) 本発明の組成物中に配合される大豆由来のオリゴペプチド混合物は、大豆蛋白質を含む原料を蛋白質加水分解酵素により酵素分解して得られる大豆蛋白質酵素分解物であればよい。これは特定の配列のみを有するペプチドではなく、様々なアミノ配列と分子量を有するペプチドの混合物である。 大豆蛋白質を含む原料としては、大豆(形状は粒状、粉末状などを問わない)、豆乳(全脂、脱脂等を問わない)、濃縮大豆蛋白、分離大豆蛋白、分画大豆蛋白などを使用することができる。特に少量の摂取でより多量のオリゴペプチドを摂取できるようにしたい場合には、蛋白質含量の高い分離大豆蛋白や分画大豆蛋白の使用が好ましい。 酵素分解に用いる蛋白質加水分解酵素は特に限定されず、金属プロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、セリンプロテアーゼ等のいずれも使用できる。 酵素分解の程度は、全てが遊離アミノ酸にまで分解されていなければ特に限定されるものではないが、オリゴペプチド混合物中、分子量500以下のペプチド画分(ジペプチドやトリペプチドが主体)として50%以上、好ましくは65%以上となる程度が適当である。ペプチド混合物の分子量が大きすぎると吸収速度の優位性が少なくなり、オピオイド分泌促進の効果が減殺される可能性があるためである。また、オリゴペプチド混合物中、遊離アミノ酸が20%以下、好ましくは10%以下となる程度が適当である。遊離アミノ酸が多くなりすぎると大量摂取による問題を生ずる可能性があるためである。 このように低分子ペプチドが多く、遊離アミノ酸の少ないオリゴペプチド混合物を得るには、複数の酵素を併用する方が効率的であり、特に遊離アミノ酸の含量を減らすにはエキソプロテアーゼ活性の少ない酵素を使用することが好ましい。 本発明の大豆由来のオリゴペプチド混合物が配合された組成物を摂取することにより、エンケファリン類、エンドルフィン類及びダイノルフィン類などの内因性オピオイドペプチドの血中への分泌を促進させることができる。したがってこれら内因性オピオイドペプチドが関連する種々の生理作用の発現を促進させることが期待できる。期待される生理作用としては、鎮痛作用、鎮咳作用、鎮静作用等が挙げられる。 本発明の組成物中における大豆オリゴペプチド混合物の配合量は、組成物の形態・量によっても異なり、適宜設定することができる。通常、オリゴペプチド混合物が1日あたりの有効量を摂取できるように、組成物中の配合量を当業者が適宜設定することができる。例えば、1日あたりの大豆オリゴペプチド混合物の摂取量を6gと設定した場合、1日あたりの組成物の摂取量が10gである場合は、組成物中の配合量を60質量%とすれば良い。 本発明の組成物の有効摂取量は使用目的・使用対象・使用形態等により異なるが、ヒトの場合、通常は1日あたりの大豆オリゴペプチド混合物の摂取量が3g以上、好ましくは6g以上程度となるように1回あるいは数回に分けて調整すればよい。医薬品の多くが適正量以上の摂取は安全性に問題を生じる可能性があるのに対し、本発明の組成物に配合される大豆オリゴペプチド混合物は天然物由来であるため、安全性の観点からは摂取量の上限はほとんど問題にはされない。 以下に実施例を記載するが、この発明の技術思想がこれらの例示によって限定されるものではない。(試験例) 以下の方法に従い、大豆オリゴペプチド混合物がラットの血中オピオイドペプチド濃度に及ぼす影響について調べた。・試験飼料の調製 飼料組成はマウス・ラットの成体維持用の栄養研究用標準飼料である「AIN-93M」に準じ、蛋白質源として(1)ミルクカゼイン、(2)分離大豆蛋白「フジプロ」(不二製油(株)製、登録商標)又は(3)大豆オリゴペプチド混合物「ハイニュート」(不二製油(株)製、登録商標)を各14%含有する飼料を3点調製した。順に(1)をMC食、(2)をSPI食、(3)をAM食と称する。なお、「ハイニュート」は分子量500以下のペプチド画分が65%以上であって、且つ、遊離アミノ酸が10%以下であるタイプのものを使用した。・動物飼育 Wister系雄ラット(日本チャールス・リバー(株)、7週齢、約230g)18匹を一週間馴化飼育した。馴化期間は全ての群にMC食を自由摂取させ、その後3群(6匹ずつ)に分けてそれぞれMC食、SPI食、又はAM食に切り替え、さらに一週間自由摂取させた。飼育期間中の採餌量及び体重は原則として2日ごとに測定した。・採決及び血中オピオイドペプチドの定量 飼育開始2週間後、12時間の絶食を行い、ネンブタールによる過麻酔下で、全採血した。なお、本実験はノートルダム清心女子大学の動物実験委員会の承認を得て動物実験指針に則り行った。血液はEDTA(1mg/mL of blood)及びアプロチニン(0.6TIU/mL of blood)入り採血管にて血漿分離した。血漿中の各種オピオイドペプチド(ロイシンエンケファリン、β−エンドルフィン、ダイノルフィンA)の濃度は、市販EIAキット(ロイシンエンケファリンはPhoenix Pharmaceuticals, Inc.製、β−エンドルフィン及びダイノルフィンAはPeninsula Laboratories, Inc.製)を用いて説明書に従って反応させた後、モデル680マイクロプレートリーダー(バイオ・ラッド ラボラトリーズ(株)製)にて測定波長450nmの吸光度を測定することにより定量化した。・結果(採餌量及び体重の変化) 全ての群においてMC食を与えた馴化期間の一週間並びにその後の試験食の一週間を通じ、原則として試験期間中2日に一度採餌量及び体重を測定したが、MC食、SPI食及びAM食を摂取した各間において、これらの指標における有意な差異は認められなかった。・結果(血漿濃度) MC食群に比較して、SPI食群では有意に血漿中ロイシンエンケファリン濃度が上昇し(約1.5倍)、AM食群においてもSPI食群と同様に血漿濃度が上昇することが明らかとなった(図1参照)。また、他のオピオイドペプチドについても血漿濃度の変動に効果があるか否か検討したところ、β−エンドルフィン(図2)及びダイノルフィンA(図3)においても、ロイシンエンケファリン同様、それぞれSPI食群及びAM食群においてMC食群に比べて有意に上昇していた(約1.5倍)。さらに興味深いことに、SPI食群に比べてAM食群において血漿濃度が高い傾向が認められた(図2、図3参照)。 本試験結果より、分離大豆蛋白、特に大豆オリゴペプチド混合物の経口摂取がエンケファリン以外の内因性オピオイドペプチドの血漿濃度についても高める効果が示された。これは、大豆オリゴペプチド混合物がこれらオピオイドペプチドの分泌を促進することにより鎮痛作用等の種々の生理作用の増強に関与する可能性を示唆するものである。 本発明者らはこれまでに、実験的に腸管粘膜障害を誘発したラットの実験から、腸管粘膜上皮の萎縮時において、遊離アミノ酸や糖の吸収はそれらの輸送担体の発現低下により障害されるが、ペプチド吸収は保たれ、それはペプチド輸送担体PepT1の発現維持によることを分子レベルで明らかにした(Tanaka H et al., Gastroenterology, 114, 714-723, 1998.)。さらに、ラットにおいて摂取蛋白質量、ペプチド食あるいは遊離アミノ酸(フェニルアラニン)食に依存して小腸ペプチド輸送活性が上昇する機構として、PepT1の発現上昇によることをつきとめ、PepT1遺伝子の転写調節にジペプチド、フェニルアラニン、リジン及びアルギニンが関与することを明らかにしている(Shiraga T et al., Gastroenterology, 116, 354-362, 1999.)。 以上より、腸管の吸収能が低下する術後侵襲時等において、大豆オリゴペプチド混合物によりペプチド輸送活性を誘導することは、栄養状態の改善と共に痛みの制御を可能とすることが期待される。MC食、SPI食及びAM食を摂取させたラットにおけるロイシンエンケファリンの血漿濃度を示した図である(means±SD of 5〜6 rats, *P<0.02, ** P<0.002 対MC食群)。MC食、SPI食及びAM食を摂取させたラットにおけるβ−エンドルフィンの血漿濃度を示した図である(means±SD of 5〜6 rats, *P<0.003, **P<0.006 対MC食群)。MC食、SPI食及びAM食を摂取させたラットにおけるダイノルフィンAの血漿濃度を示した図である(means±SD of 5〜6 rats, *P<0.02, **P<0.002 対MC食群)。大豆蛋白質を酵素分解したオリゴペプチド混合物であって、分子量500以下のペプチド画分が50%以上であって、且つ、遊離アミノ酸が10%以下であるオリゴペプチド混合物が配合されたことを特徴とする内因性オピオイドペプチドの血中への分泌促進用薬剤。内因性オピオイドペプチドが、エンケファリン類、エンドルフィン類又はダイノルフィン類である請求項1記載の薬剤。内因性オピオイドペプチド血中分泌促進用薬剤の製造のための、大豆蛋白質を酵素分解したオリゴペプチド混合物であって、分子量500以下のペプチド画分が50%以上であって、且つ、遊離アミノ酸が10%以下であるオリゴペプチド混合物の使用。


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