タイトル: | 公開特許公報(A)_光学活性δ−ラクトンの製造方法 |
出願番号: | 2007230305 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07D 309/30 |
立原 徹 JP 2009062303 公開特許公報(A) 20090326 2007230305 20070905 光学活性δ−ラクトンの製造方法 長谷川香料株式会社 000214537 立原 徹 C07D 309/30 20060101AFI20090227BHJP JPC07D309/30 D 2 OL 9 4C062 4C062BB57 本発明は、香料化合物として有用な光学活性δ−ラクトンの製造方法に関する。 δ−ラクトンは香料化合物として広く用いられている化合物である。例えば、δ−オクタラクトンは強いココナッツ、クマリン様香気、δ−ノナラクトンは強い脂肪様で甘いナッツ様香気、δ−デカラクトンは、強く甘いクリーム、ナッツ様の香気、δ−ウンデカラクトンは強いクリーミー、脂肪様でピーチ香も併せ持つ香気、δ−ドデカラクトンは強く新鮮なクリーミー、フルーティーな脂肪香、δ−トリデカラクトンはソフトでムスクノートのあるクリーミー、ココナッツ、バター様香気、δ−テトラデカラクトンはウッディー、ムスク調のあるソフトなクリーム、バター用の香気を有する香料化合物として知られており、従来から香料組成物の調合素材として利用されている(非特許文献1)。また、これらのδ−ラクトン類を合成的に製造する方法としては、例えば、2−アルキルシクロペンタノンを過酸で酸化する方法(非特許文献1)などが提案されている。 一方、δ−ラクトンはその構造上、環状部分と側鎖の境目に不斉炭素を有するため、光学異性体が存在する。最近の分析技術の発達に伴い、天然物中のδ−ラクトンの立体配置や光学純度が明らかになってきており、また両異性体間で香気が異なることが知られている(非特許文献2)。したがって、特定の原料素材について天然と同様の香気を調合香料により再現しようとする場合は、その原料素材の天然体と同じ光学異性体のδ−ラクトンを用いることにより、フレーバーに天然感を与え、嗜好性を高め、香料自体の付加価値が高まることは明らかである。 光学活性δ−ラクトンの製造方法に関する従来技術としては、例えば、光学活性2−アルキルシクロペンタノンをメタクロロ過安息香酸(m−CPBA)を用いて酸化する方法(特許文献1)、メタホウ酸塩の存在下、有機酸と過酸化水素を作用させる方法(特許文献2)、5−ヒドロキシ−5−アルケン酸−δ−ラクトンを不斉触媒を用いて水素化する方法(特許文献3)、などが提案されている。特公平7−84456号公報特開2004−352636号公報特許第3568558号公報「合成香料」451〜456頁、印藤元一著、化学工業日報社、平成8年発行香料,No.173,p.97,(1992) しかしながら、メタクロロ過安息香酸は工業的に製造されておらず、工業的生産を鑑みた場合、コスト的な問題がある。また、不斉触媒を用いた還元方法は、高価な触媒を用いて高圧下で反応させる必要があるためコスト的な問題があり、また、環境への負荷が大きいなどの問題点があった。そこで、低コストで、かつ、環境への負荷も小さい光学活性δ−ラクトンの製造方法が求められていた。 本発明者は、この問題を解決すべく、鋭意研究を行ったところ、光学活性2−アルキルシクロペンタノンを、酢酸ナトリウムなどの弱塩基性塩の存在下で、過酢酸を用いて酸化することにより、原料である光学活性2−アルキルシクロペンタノンの光学純度を保持したまま、光学活性δ−ラクトンに導くことができることを見出し、さらに、弱塩基性塩の存在下では反応速度が弱塩基性塩非存在下での反応と比較して反応速度が飛躍的に加速することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は 下記式(2)(式中、*はR配置またはS配置のいずれか一方の不斉炭素原子を示し、Rは炭素数3〜9の直鎖のアルキル基を示す)で表されるアルキルシクロペンタノンを過酢酸を用いて酸化する際に、弱塩基性塩の存在下で行うことを特徴とする、下記式(1)(式中、*はR配置またはS配置のいずれか一方の不斉炭素原子を示し、Rは炭素数3〜9の直鎖のアルキル基を示す)で表される光学活性δ−ラクトンの製造方法を提供するものである。 また、本発明は弱塩基性塩が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、前記の光学活性δ−ラクトンの製造方法を提供するものである。 なお、弱塩基性塩の存在下で、光学活性2−アルキルシクロペンタノンを過酢酸を用いて酸化することにより、原料である光学活性2−アルキルシクロペンタノンの光学純度を保持したまま、光学活性δ−ラクトンに導くことができるという報告例はこれまでに全くなく、本発明者がはじめて見出したものである。本発明の方法によれば、低コストで、環境への負荷も小さく、かつ、迅速に、光学活性2−アルキルシクロペンタノンから、その光学純度を保持したまま光学活性δ−ラクトンを製造することができる。以下、本発明の製造方法について、さらに詳細に説明する。本発明で原料として使用する光学活性2−アルキルシクロペンタノンのアルキル基は特に限定されるものではないが、2−プロピルシクロペンタノン、2−ブチルシクロペンタノン、2−ペンチルシクロペンタノン、2−ヘキシルシクロペンタノン、2−へプチルシクロペンタノン、2−オクチルシクロペンタノン、2−ノニルシクロペンタノン、2−イソブチルシクロペンタノンなどを挙げることができる。これらのうち、2−ペンチルシクロペンタノンおよび2−へプチルシクロペンタノンを特に好ましく例示することができる。 本発明で原料として使用する光学活性2−アルキルシクロペンタノンはいかなる方法により得たものでも使用することができるが、例えば、不斉触媒であるRu−BINAP錯体を用いた水素化により(S)−および(R)−体をそれぞれ得る方法(第37回TEAC要旨集(1993)、依頼講演−1およびTetrahedron Lett. 43(2002),p.9081−9084参照)、ラセミ体の2−アルキルシクロペンタノンをエノールエステル化した後、カンディダ・アンタークティカ(Candida antarctica)由来のリパーゼを用いて不斉加水分解する方法(本出願人による特願2007−222577)、2−アルキリデンシクロペンタノンを基質として、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属に属する微生物を作用させることにより、基質中の二重結合を立体選択的に還元し、光学活性な(R)−2−アルキルシクロペンタノンを得る方法(本出願人による特願2007−199519)などにより得ることができる。 本発明の製造法は、この光学活性な2−アルキルシクロペンタノンを酢酸ナトリウムなどの弱塩基性塩の存在下で、過酢酸を用いて酸化することを特徴とするものである。 本発明において使用し得る溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ペンタン、ヘキサン、塩化メチレンなどの水非混和性有機溶媒を挙げることができる。これらの水非混和性有機溶媒の使用量は特に制限されず任意に選択することができるが、通常、式(2)の光学活性な2−アルキルシクロペンタノン1重量部に対して約0.5〜約20重量部の範囲内がしばしば採用される。 本発明の方法において用いることのできる過酢酸は市販の約40%程度の濃度のものを使用することができる。過酢酸は高濃度のものについては爆発性、助燃作用を有しており、工業的製造方法には向かないとされるが(例えば、特開2004−352636号公報参照)、本発明で用いる約40%程度の濃度の過酢酸は比較的安定性が高いものであり、工業的にも広く使用されている。過酢酸の使用量は、厳密に制限されるものではなく広い範囲で変えることができるが、一般的には例えば、光学活性な2−アルキルシクロペンタノン1モルに対して約0.5モル〜約3モル、好ましくは約0.8モル〜約1.5モルの範囲内の使用量を挙げることができる。 さらに、本発明の方法において用いられる弱塩基性塩としては、例えば、酢酸、炭酸のごとき有機酸のナトリウム塩、カリウム塩などを挙げることができ、特に酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムを好適に例示することができる。これらの弱塩基性塩の使用量も厳密に制限されるものではないが、一般的には、光学活性な2−アルキルシクロペンタノン1モルに対して約0.1〜約3モル、好ましくは約0.2〜約1.0モルの範囲内で添加することができる。 次に本発明による光学活性なδ−ラクトンの合成方法についてさらに具体的に説明する。まず反応容器に原料となる光学活性な2−アルキルシクロペンタノン、水非混和性有機溶媒、弱塩基性塩を前記したごとき範囲内の比率で仕込み、攪拌及び冷却によって発熱を抑えながら、約0〜約50℃、好ましくは約20〜約30℃に保ちつつ約0.8〜約1.5倍モル量の過酢酸を約2分〜約10時間、好ましくは約5分〜約4時間かけて滴下する。その後同温で約1〜約24時間攪拌反応を続けた後、反応混合物の総量に対して約0.5〜約2倍重量の水を加えて反応を終了する。 次いで溶媒層を分離採取し、常法により水、硫酸鉄水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液などで洗浄後、溶媒を回収することにより目的とする粗生成物を得ることができる。このようにして得られる粗生成物を所望によりカラムクロマトグラフィーや精密蒸留を行うことにより、先に例示した光学活性な2−アルキルシクロペンタノンに対応する光学活性なδ−ラクトンを高純度で得ることができる。 本発明の方法により得ることのできる光学活性なδ−ラクトンは各種フルーツやその他の調合香料に、その原料素材の天然体と同じ光学異性体を用いることにより、フレーバーに天然感と同様の香気を再現し、嗜好性を高め、香料自体の付加価値を高めることができる。また、本発明によれば、光学活性なδ−ラクトンを有効成分として含有する香料組成物を利用して、光学活性なδ−ラクトンを香気香味成分として含有する飲食品類、香粧品類、保健・衛生・医薬品類などを提供することができる。 例えば、炭酸飲料、果汁飲料、果実酒飲料類、乳飲料などの飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類などの冷菓類;和・洋菓子、チューインガム類、パン類、コーヒー、紅茶、お茶、タバコなどの嗜好品類;和風スープ類、洋風スープ類などのスープ類;ハム、ソーセージなどの畜肉加工品;風味調味料、各種インスタント飲料乃至食品類、各種のスナック類などに、光学活性なδ−ラクトンを有効成分として含有する香料組成物の適当量を添加することにより、そのユニークな香気香味が賦与された飲食品類を提供することができる。また、例えば、シャンプー類、ヘアクリーム類、その他の毛髪化粧料基剤;オシロイ、口紅、その他の化粧用基剤や化粧用洗剤類基剤などに、光学活性なδ−ラクトンを有効成分として含有する香料組成物の適当量を添加することにより、そのユニークな香気が賦与された化粧品類を提供することができる。さらにまた、光学活性なδ−ラクトンを有効成分として含有する香料組成物の適当量が配合を洗濯用洗剤類、消毒用洗剤類、防臭洗剤類、その他各種の保健・衛生用洗剤類;歯磨き、ティッシュ、トイレットペーパーなどに配合することにより、そのユニークな香気が賦与された各種保健・衛生材料類;医薬品類などを提供することができる。 以下、実施例により本発明の態様をさらに具体的に説明する。 参考例1(R)−2−ペンチルシクロペンタノンの合成特願2007−199519に記載の方法にしたがって光学純度74.0%eeの(R)−2−ペンチルシクロペンタノンを調製した。 実施例1下記の反応式にしたがって(R)−δ−デカラクトンを合成した。 100mlフラスコに(R)−2−ペンチルシクロペンタノン(74.0%ee)1.54g(10mmol)、酢酸ナトリウム300mg(3.7mmol)およびトルエン7.5mlを仕込み、氷冷下攪拌を行った。0〜5℃で10分をかけて40%過酢酸2.1g(11.1mmol)を滴下した。滴下終了後、室温下で3時間攪拌を行った。この時点での転換率は95%であった。反応液を水洗し、硫酸鉄水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣を精密蒸留(102〜103℃/0.13kPa)し、(R)−δ−デカラクトン1.2g(7.1mmol、収率71%、光学純度74.1%ee)を得た。 (R)−δ−デカラクトンの光学純度はキラル液相を用いたガスクロマトグラフィー法により決定した。(測定条件)ガスクロ装置:6890N−Autosampler(Agilent社製)カラム:CHIRAMIX(登録商標)(GLサイエンス社製)(0.25mm×30m)温度:60℃〜180℃まで(毎分1℃昇温)。 比較例1(添加剤を使用しない例)300mlフラスコに(R)−2−ペンチルシクロペンタノン(74.0%ee)9.24g(60mmol)およびトルエン45mlを仕込み、氷冷下攪拌を行った。0〜5℃で15分をかけて40%過酢酸2.1g(11.1mmol)を滴下した。滴下終了後、室温下で攪拌反応を行った。3時間反応後の転換率は12.8%であったので、さらに反応を続け96時間反応を行った。この時点での転換率は96%であった。反応液を水洗し、硫酸鉄水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣を精密蒸留(102〜103℃/0.13kPa)し、(R)−δ−デカラクトン6.3g(37.5mmol、収率62%、光学純度74.0%ee)を得た。 以上の通り、添加剤を使用しない比較例1では、実施例1と比べて光学純度は変わらないものの、反応速度が遅く、反応終了までに長時間を要した。 比較例2(添加剤として硫酸の存在下で反応を行った例) 100mlフラスコに(R)−2−ペンチルシクロペンタノン(74.0%ee)6.0g(39mmol)を仕込み、加熱攪拌し温度を50℃とした。50℃で30分かけて40%過酢酸(8.8g,46.7mmol)に濃硫酸0.1gを加えたものを滴下した。滴下終了後、室温下で6時間攪拌反応を行った。この時点での転換率は98%であった。反応液を水洗し、硫酸鉄水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣を精密蒸留(102〜103℃/0.13kPa)し、(R)−δ−デカラクトン3.7g(22.0mmol、収率56%、光学純度45.2%ee)を得た。 以上の通り、添加剤として硫酸を使用した比較例2では、実施例1と比べて反応速度はそれほど変わらないものの、光学純度が大きく低下した。 参考例2 (R)−2−ヘプチルシクロペンタノンの合成 特願2007−222577に記載の不斉加水分解法にしたがって光学純度72.6%eeの(R)−2−ヘプチルシクロペンタノンを調製した。 実施例2下記の反応式にしたがって(R)−δ−ドデカラクトンを合成した。 300mlフラスコに(R)−2−ヘプチルシクロペンタノン(72.6%ee)15g(82mmol)、酢酸カリウム2.9g(30mmol)およびトルエン100mlを仕込み、氷冷下攪拌を行った。9〜10℃で10分をかけて40%過酢酸17.6g(93mmol)を滴下した。滴下終了後、室温下で3時間攪拌を行った。この時点での転換率は99%であった。反応液を水洗し、硫酸鉄水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣を精密蒸留(123〜126℃/0.13kPa)し、(R)−δ−ドデカラクトン13.0g(66mmol、収率80%、光学純度73.2%ee)を得た。 参考例3 (S)−2−ヘプチルシクロペンタノンの合成 Tetrahedron Letters,43(2002),p.9081−4に記載の方法にしたがい光学純度95.0%eeの(S)−2−ヘプチルシクロペンタノンを調製した。 実施例3 下記の反応式にしたがって(S)−δ−ドデカラクトンを合成した。30mlフラスコに(S)−2−ヘプチルシクロペンタノン(95.0%ee)1.5g(8.2mmol)、酢酸カリウム0.29g(3.0mmol)およびトルエン10mlを仕込み、氷水冷下攪拌を行った。9〜10℃で10分をかけて40%過酢酸1.76g(9.3mmol)を滴下した。滴下終了後、室温下で3時間攪拌を行った。この時点での転換率は99%であった。反応液を水洗し、硫酸鉄水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣を精密蒸留(123〜126℃/0.13kPa)し、(S)−δ−ドデカラクトン1.0g(5.1mmol、収率62%、光学純度94.8%ee)を得た。 参考例4 (R)−2−プロピルシクロペンタノンの合成 特願2007−222577に記載の不斉加水分解法にしたがって光学純度71.9%eeの(R)−2−プロピルシクロペンタノンを調製した。 実施例4 下記の反応式にしたがって(R)−δ−オクタラクトンを合成した。 100mlフラスコに(R)−2−プロピルシクロペンタノン(71.9%ee)1.26g(10mmol)、炭酸水素ナトリウム252mg(3.7mmol)およびトルエン7.5mlを仕込み、氷冷下攪拌を行った。0〜5℃で10分をかけて40%過酢酸2.1g(11.1mmol)を滴下した。滴下終了後、室温下で3時間攪拌を行った。この時点での転換率は96%であった。反応液を水洗し、硫酸鉄水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣を精密蒸留(90〜92℃/0.13kPa)し、(R)−δ−オクタラクトン1.13g(8mmol、収率80%、光学純度71.8%ee)を得た。 参考例5 (R)−2−ノニルシクロペンタノンの合成 特願2007−222577に記載の不斉加水分解法にしたがって光学純度73.2%eeの(R)−2−ノニルシクロペンタノンを調製した。 実施例5 下記の反応式にしたがって(R)−δ−テトラデカラクトンを合成した。 100mlフラスコに(R)−2−ノニルシクロペンタノン(73.2%ee)2.14g(10mmol)、酢酸カリウム363mg(3.7mmol)およびトルエン7.5mlを仕込み、氷冷下攪拌を行った。0〜5℃で10分かけて40%過酢酸2.1g(11.1mmol)を滴下した。滴下終了後、室温下で3時間攪拌を行った。この時点での転換率は98%であった。反応液を水洗し、硫酸鉄水溶液、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄後、硫酸マグネシウムを用いて乾燥し、減圧下溶媒を留去した。得られた残渣を精密蒸留(135〜138℃/0.08kPa)し、(R)−δ−テトラデカラクトン1.58g(7mmol、収率70%、光学純度73.0%ee)を得た。 下記式(2)(式中、*はR配置またはS配置のいずれか一方の不斉炭素原子を示し、Rは炭素数3〜9の直鎖のアルキル基を示す)で表されるアルキルシクロペンタノンを過酢酸を用いて酸化する際に、弱塩基性塩の存在下で行うことを特徴とする、下記式(1)(式中、*はR配置またはS配置のいずれか一方の不斉炭素原子を示し、Rは炭素数3〜9の直鎖のアルキル基を示す)で表される光学活性δ−ラクトンの製造方法。 弱塩基性塩が酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、炭酸ナトリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群より選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の光学活性δ−ラクトンの製造方法。 【課題】低コストで、かつ、環境への負荷もかからない方法による光学活性δ−ラクトンの製造方法を提供すること。【解決手段】光学活性2−アルキルシクロペンタノンを、酢酸ナトリウムなどの弱塩基性塩の存在下で、過酢酸を用いて酸化することにより、原料である光学活性2−アルキルシクロペンタノンの光学純度を保持したまま、光学活性δ−ラクトンに導くことができる。また、弱塩基性塩の存在下では弱塩基性塩非存在下での反応と比較して反応速度が飛躍的に加速する。【選択図】なし