生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_魚油抽出法及びこの方法を利用した食品又は医薬品
出願番号:2007220762
年次:2009
IPC分類:C11B 1/10,A23L 1/30,A23D 9/02,A61K 35/60,A61P 3/02


特許情報キャッシュ

伊東 芳則 山本 淳二 JP 2009051959 公開特許公報(A) 20090312 2007220762 20070828 魚油抽出法及びこの方法を利用した食品又は医薬品 八洲商事株式会社 505380108 伊東 芳則 507289162 竹本 松司 100082304 杉山 秀雄 100088351 湯田 浩一 100093425 魚住 高博 100102495 手島 直彦 100112302 白石 光男 100152124 伊東 芳則 山本 淳二 C11B 1/10 20060101AFI20090213BHJP A23L 1/30 20060101ALI20090213BHJP A23D 9/02 20060101ALI20090213BHJP A61K 35/60 20060101ALI20090213BHJP A61P 3/02 20060101ALI20090213BHJP JPC11B1/10A23L1/30 AA23D9/02A61K35/60A61P3/02 2 1 OL 8 4B018 4B026 4C087 4H059 4B018MD11 4B018MD12 4B018MD74 4B018ME04 4B018MF01 4B026DC01 4B026DC05 4B026DG14 4B026DH10 4B026DP10 4C087AA01 4C087AA02 4C087AA03 4C087AA04 4C087BB29 4C087CA03 4C087CA06 4C087MA52 4C087NA20 4C087ZC21 4H059BC06 4H059CA16 4H059CA72 4H059CA73 4H059DA07 4H059DA08 本発明は、魚の頭部を利用した魚油抽出法及びこの方法を利用した食品又は医薬品に関する。 エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等のn−3系PUFA(多価不飽和脂肪酸)を豊富に含む魚油は、健康に良い油として認識され、世界中で需要が高まっている。 通常、魚油は、煮取り法と呼ばれる高温の曝気下で行われる方法により製造されるため、有効成分のPUFAが酸化しやすく、著しい品質の低下を招き、時には有害物質へと変質する。また、腐敗酸化した魚油は、色もコーヒー色になり甚だしい悪臭を発する。 このため、得られた魚油は、有機溶媒処理、分子蒸留等の複雑な化学工程を経て精製され、やっと商品化される。例えば、特許文献1には、脱ガム処理・脱酸処理をした後、水蒸気蒸留という工程を経て漸く過酸化物価を抑え、臭いを軽減させる製法が記載されている。 また、特許文献2には、低温で水晒しを繰り返し、遠心分離で魚油を抽出する方法が記載されている。しかし、この方法によれば、処理水を大量に必要とし、収量が少なく、残留農薬等の有害物質の排除工程が無いので、安全性に不安が有る。 さらに、特許文献3には、粒径5〜200μmまで眼窩組織を破砕し、30〜60℃で加温して、魚油の臭いと着色を抑える方法が記載されているが、この方法も、残留農薬等の排除工程が無いので、安全性に対する不安が解消されていない。特許第3229378号公報特開2004−91514号公報特許第3128111号公報 本発明が解決しようとする課題は、廃棄されることが多かった魚の頭部を利用し、有害成分の含有量が少なく、酸化しにくくて魚臭が少なく、清澄で過酸化物価の低い高品質の魚油を、簡単な操作で効率良く得られ、処理に要する水の使用量を最小限に抑え、洗浄水の使用量も少なくて済む魚油抽出法を提供することにある。 本発明の魚油抽出法は、魚の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みを魚油とする。 本発明の食品又は医薬品は、上記魚油抽出法で得られた魚油を含む。 魚としては、鮪、鰹等の比較的大型の魚種が適しており、酸化を防ぐために、冷凍保存したものを用いるのが望ましい。 容器に投入した原料は、魚油の融点に近い30〜40℃、圧力−0.0939MPaG〜−0.0971MPaGで沸騰させるのが理想的であるが、真空ポンプの能力は大きなものが要求され、コストもかかることから、工業生産的には、魚油の品質に悪影響を与えない55℃、−0.088MPaG程度で十分であると考えられる。 低圧状態で沸騰させる時間、及び、次工程において加熱・加圧する時間は60分から90分が適当であるが、それ以上であっても良い。 本発明の魚油抽出法によれば、最初の原料投入後、全ての抽出工程を外気と接触させずに同じ圧力容器中で行い、最初に真空状態として、減圧下で水分に含まれる酸素を容器外に排出しながら抽出し、加圧・加熱する際も外気を遮断した密封容器内で連続して抽出が行われるので、酸素の極端に少ない状態が保たれ、この結果、抽出温度を120℃にまで昇温しても品質が劣化しないため、高温で効率良く有効成分を抽出できるばかりか、酸化防止剤等を添加しなくても酸化しにくく、魚油特有の悪臭や変色を防ぐことができて、食品、化粧品等に幅広く利用可能である。 また、容器を移し変える手間、容器を洗浄する手間、抽出用水及び洗浄水の使用量が大幅に削減され、通常魚1トンに対して10トンの水を使用するという水産加工業界の常識に対し、魚とほぼ同量の水を使用するだけで済み、製造コストが大幅に低減される。 さらに、最初に低圧状態で沸騰させるので、沸点が低くなって燃料の消費量が少なくて済み、次いで加圧・加熱することにより、有効成分が無駄なく抽出され、高品質を保ちつつ高収量を上げることができる。 また、低圧状態での沸騰により、蒸気中に含有されるPCB等の揮発性有害成分が除去されるため、非常に安全性の高い魚油が得られる。 本発明の食品又は医薬品は、不快な色や魚臭が無く、身体に有効なω−3系不飽和脂肪酸を手軽に摂取することができる。 魚の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去し、蒸気中に含まれる有害成分を取り除く工程と、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して有効成分を抽出する工程とを行い、得られた抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みを魚油とする。 必要に応じて、上澄みとなった魚油に6000G〜10000Gで遠心分離処理を行えば、更に清澄な魚油を採取できる。 −70℃で冷凍保存された鮪の頭部16kgを冷凍のまま4つに分け、半解凍の状態になるまで放置した後、16kgの水と共に真空・圧力釜に投入した。 次に、圧力−0.088MPaG、温度55℃の条件下で60分間激しく沸騰させながら、発生した蒸気を真空ポンプにより継続的に吸引除去した。 次いで、真空吸引を停止し、真空・圧力釜を密封したまま、直ちに圧力を0.2MPaGに加圧設定すると共に、103℃まで昇温させ、60分間この加圧・加熱条件を維持した。真空状態を保ちながら加熱するため、真空・圧力釜の水蒸気の蒸発により、真空から徐々に圧力が高まり、激しい沸騰を続け、大気圧を超えた状態で沸騰が停止する。即ち、0.2MPaG、103℃の条件下では油液分は沸騰しない。 加圧・加熱処理後、真空・圧力釜から取り出した物質を、24.5kgの液分と、骨、筋組織等から成る6.2kgの固形分とに分離した。 さらに、液分を5分間静置して上澄み部分5.3kgを魚油として回収した。回収した上澄み部分を分析した結果、その総脂質含有量は99.5重量%であり、過酸化物価は0.6meq/kgであった。 [過酸化物価(POV)の経時的変化] 本実施例で得られた魚油と、煮取り法で得られた魚油とを常温で空気の入ったガラス透明容器に保管し、油採取後の過酸化物価の変化を測定した。その結果と、参考のために大豆油、しょうゆ油の過酸化物価の経時変化(2003年、キッコーマン株式会社調べ)とを併せて図1に示す。 図1から明らかなように、本実施例で得られた魚油は、従来製法で得られた魚油や大豆油に比べて圧倒的に酸化しにくく、非常に酸化抑制作用の高いしょうゆ油よりも優れていた。 また、本実施例で得られた魚油の過酸化物価は、油採取1週間後に0.6meq/kg、7週間後に0.98meq/kgと驚異的に低く、20週間経過後にも2.38meq/kgであって、ほとんど酸化されていないことがわかった。 [脂肪酸組成の経時的変化] 一般に、過酸化物価の変移は一定の期間においてはほとんどその変化に数値が無く、潜伏期間を過ぎると急激に数値が上昇し腐敗にいたる。従って、この潜伏期間内に過酸化物価を測定すると、実際には酸化が進んでいても数値として表れない。このため、最も酸化しやすいといわれるPUFA(高度不飽和脂肪酸)の値を測って、酸化の度合いを知ることが多い。 そこで、本実施例で得られた魚油について、採取後3ヶ月を経過してから、室温にて蓋をしない状態で放置し、20日間にわたり脂肪酸組成を1日2回ずつ測定した(国立大学法人富山大学浜崎教室)。その結果を表1に示す。 表1において、PUFA(高度不飽和脂肪酸)の総量は、測定開始初日37.7%,37.9%であり、20日目36.90%,37.20%であってほとんど変化が無かった。また、有効成分であるEPA,DHAもほとんど減少していなかった。 [色彩色差の測定] 本実施例で得られた魚油と、従来の製法(煮取り法)で抽出した魚油の色を図2に示すが、本実施例で得られた魚油(図2の左側)は、従来製法による魚油(図2の右側)に比べて色が薄いことは、一見して明らかである。 両者の色の差をより客観的に評価するため、採取後3ヶ月経過した本実施例に係る魚油及び煮取り法で得た魚油に対し、分光測色計CM−2600dを用いて、JISZ8729に基づき色彩色差を測定し、その結果を表2に示す。 上記表2において、Lは明度であり、0が黒、50がグレー、100が白を表す。aは−が緑方向、+は赤方向を表す。bは−が青方向、+が黄方向を表す。cは彩度を示し、+の値が大きいほど色が鮮やかになる。hは色相角度を表しており、a+赤方向の軸を0度として、ここから反時計方向の色相に対して移動した角度で色の位置がわかる。一般に6.0から12.0の差があれば著しく異なると評価される。 上記表2の数値から、本実施例に係る魚油はかすかに黄緑がかった透明に近い色調であり、従来製法による魚油は赤褐色を呈していることがわかる。 PUFAは非常に酸化し易く、敏感に酸素、温度、水分、金属イオン、光の影響を受け、酸化とともに耐えがたい魚臭・腐敗臭を発するというのが常識となっているが、以上の測定結果から、本実施例により得られた魚油は、抗酸化剤を一切添加せずとも、常温で透明なガラス容器に大気と接触させて保存しても、殆ど酸化することが無く、色も透明に近く魚油特有の臭いも無く、最も商品価値の高いDHA・EPAの含有量も殆ど減少しないことが確認された。 実施例1により得られた魚油と、鮪の残渣から抽出濃縮したコラーゲンペプチド及びアンセリン含有粉末を好みの硬さによって1:5〜1:10の割合に混ぜ、一粒300mg漢50mgの丸薬に加工し、アルミニウムの小袋に3〜5粒ずつ収納した。この丸薬は、長期間保存しても酸化せず、魚臭も無く、服用しやすかった。 なお、実施例1で得られた魚油を透明な容器に保存しておき、食塩、レモンと共にドレッシングとして野菜サラダに1〜2gふりかけたが、色が薄くて酸化による悪臭も無く、全く違和感は感じられなかった。 また、この魚油を脂肪分の少ない赤身の鮪刺身に振りかけたところ、特に魚臭さが増すことも無く、脂肪分が豊富なトロ鮪のような風味となった。本発明に係る魚油、従来製法による魚油、大豆油、しょうゆ油の過酸化物価の経時変化を示す図。本発明に係る魚油、及び、従来製法による魚油の色を示す図。 魚の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みを魚油とすることを特徴とする魚油抽出法。 請求項1に記載の魚油抽出法により得られた魚油を含む食品又は医薬品。 【課題】有害成分の含有量が少なく、酸化しにくくて魚臭が少なく、清澄で過酸化物価の低い高品質の魚油を、簡単な操作で効率良く得られ、処理に要する水の使用量を最小限に抑え、洗浄水の使用量も少なくて済む魚油抽出法の提供。【解決手段】魚の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みを魚油とする。【選択図】図1


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る

特許公報(B2)_魚油抽出法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_魚油抽出法
出願番号:2007220762
年次:2011
IPC分類:C11B 1/10,A23L 1/30,A23D 9/02,A61K 35/60,A61P 3/02


特許情報キャッシュ

伊東 芳則 山本 淳二 JP 4739297 特許公報(B2) 20110513 2007220762 20070828 魚油抽出法 八洲商事株式会社 505380108 伊東 芳則 507289162 竹本 松司 100082304 杉山 秀雄 100088351 湯田 浩一 100093425 魚住 高博 100102495 手島 直彦 100112302 白石 光男 100152124 伊東 芳則 山本 淳二 20110803 C11B 1/10 20060101AFI20110714BHJP A23L 1/30 20060101ALI20110714BHJP A23D 9/02 20060101ALI20110714BHJP A61K 35/60 20060101ALI20110714BHJP A61P 3/02 20060101ALI20110714BHJP JPC11B1/10A23L1/30 AA23D9/02A61K35/60A61P3/02 C11B 1/00−15/00 A23D 9/00− 9/06 A23L 1/27− 1/308 A61K35/00−35/76 A61P 1/00−43/00 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) 特開2006−241186(JP,A) 特開2007−106700(JP,A) 特開平07−126686(JP,A) 特開昭63−183996(JP,A) 特許第3229378(JP,B2) 特開昭63−090598(JP,A) 1 2009051959 20090312 7 20070912 近藤 政克 本発明は、魚の頭部を利用した魚油抽出法に関する。 エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)等のn−3系PUFA(多価不飽和脂肪酸)を豊富に含む魚油は、健康に良い油として認識され、世界中で需要が高まっている。 通常、魚油は、煮取り法と呼ばれる高温の曝気下で行われる方法により製造されるため、有効成分のPUFAが酸化しやすく、著しい品質の低下を招き、時には有害物質へと変質する。また、腐敗酸化した魚油は、色もコーヒー色になり甚だしい悪臭を発する。 このため、得られた魚油は、有機溶媒処理、分子蒸留等の複雑な化学工程を経て精製され、やっと商品化される。例えば、特許文献1には、脱ガム処理・脱酸処理をした後、水蒸気蒸留という工程を経て漸く過酸化物価を抑え、臭いを軽減させる製法が記載されている。 また、特許文献2には、低温で水晒しを繰り返し、遠心分離で魚油を抽出する方法が記載されている。しかし、この方法によれば、処理水を大量に必要とし、収量が少なく、残留農薬等の有害物質の排除工程が無いので、安全性に不安が有る。 さらに、特許文献3には、粒径5〜200μmまで眼窩組織を破砕し、30〜60℃で加温して、魚油の臭いと着色を抑える方法が記載されているが、この方法も、残留農薬等の排除工程が無いので、安全性に対する不安が解消されていない。特許第3229378号公報特開2004−91514号公報特許第3128111号公報 本発明が解決しようとする課題は、廃棄されることが多かった魚の頭部を利用し、有害成分の含有量が少なく、酸化しにくくて魚臭が少なく、清澄で過酸化物価の低い高品質の魚油を、簡単な操作で効率良く得られ、処理に要する水の使用量を最小限に抑え、洗浄水の使用量も少なくて済む魚油抽出法を提供することにある。 本発明の魚油抽出法は、魚の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みを魚油とする。 魚としては、鮪、鰹等の比較的大型の魚種が適しており、酸化を防ぐために、冷凍保存したものを用いるのが望ましい。 容器に投入した原料は、魚油の融点に近い30〜40℃、圧力−0.0939MPaG〜−0.0971MPaGで沸騰させるのが理想的であるが、真空ポンプの能力は大きなものが要求され、コストもかかることから、工業生産的には、魚油の品質に悪影響を与えない55℃、−0.088MPaG程度で十分であると考えられる。 低圧状態で沸騰させる時間、及び、次工程において加熱・加圧する時間は60分から90分が適当であるが、それ以上であっても良い。 本発明の魚油抽出法によれば、最初の原料投入後、全ての抽出工程を外気と接触させずに同じ圧力容器中で行い、最初に真空状態として、減圧下で水分に含まれる酸素を容器外に排出しながら抽出し、加圧・加熱する際も外気を遮断した密封容器内で連続して抽出が行われるので、酸素の極端に少ない状態が保たれ、この結果、抽出温度を120℃にまで昇温しても品質が劣化しないため、高温で効率良く有効成分を抽出できるばかりか、酸化防止剤等を添加しなくても酸化しにくく、魚油特有の悪臭や変色を防ぐことができて、食品、化粧品等に幅広く利用可能である。 また、容器を移し変える手間、容器を洗浄する手間、抽出用水及び洗浄水の使用量が大幅に削減され、通常魚1トンに対して10トンの水を使用するという水産加工業界の常識に対し、魚とほぼ同量の水を使用するだけで済み、製造コストが大幅に低減される。 さらに、最初に低圧状態で沸騰させるので、沸点が低くなって燃料の消費量が少なくて済み、次いで加圧・加熱することにより、有効成分が無駄なく抽出され、高品質を保ちつつ高収量を上げることができる。 また、低圧状態での沸騰により、蒸気中に含有されるPCB等の揮発性有害成分が除去されるため、非常に安全性の高い魚油が得られる。 魚の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去し、蒸気中に含まれる有害成分を取り除く工程と、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して有効成分を抽出する工程とを行い、得られた抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みを魚油とする。 必要に応じて、上澄みとなった魚油に6000G〜10000Gで遠心分離処理を行えば、更に清澄な魚油を採取できる。 −70℃で冷凍保存された鮪の頭部16kgを冷凍のまま4つに分け、半解凍の状態になるまで放置した後、16kgの水と共に真空・圧力釜に投入した。 次に、圧力−0.088MPaG、温度55℃の条件下で60分間激しく沸騰させながら、発生した蒸気を真空ポンプにより継続的に吸引除去した。 次いで、真空吸引を停止し、真空・圧力釜を密封したまま、直ちに圧力を0.2MPaGに加圧設定すると共に、103℃まで昇温させ、60分間この加圧・加熱条件を維持した。真空状態を保ちながら加熱するため、真空・圧力釜の水蒸気の蒸発により、真空から徐々に圧力が高まり、激しい沸騰を続け、大気圧を超えた状態で沸騰が停止する。即ち、0.2MPaG、103℃の条件下では油液分は沸騰しない。 加圧・加熱処理後、真空・圧力釜から取り出した物質を、24.5kgの液分と、骨、筋組織等から成る6.2kgの固形分とに分離した。 さらに、液分を5分間静置して上澄み部分5.3kgを魚油として回収した。回収した上澄み部分を分析した結果、その総脂質含有量は99.5重量%であり、過酸化物価は0.6meq/kgであった。 [過酸化物価(POV)の経時的変化] 本実施例で得られた魚油と、煮取り法で得られた魚油とを常温で空気の入ったガラス透明容器に保管し、油採取後の過酸化物価の変化を測定した。その結果と、参考のために大豆油、しょうゆ油の過酸化物価の経時変化(2003年、キッコーマン株式会社調べ)とを併せて図1に示す。 図1から明らかなように、本実施例で得られた魚油は、従来製法で得られた魚油や大豆油に比べて圧倒的に酸化しにくく、非常に酸化抑制作用の高いしょうゆ油よりも優れていた。 また、本実施例で得られた魚油の過酸化物価は、油採取1週間後に0.6meq/kg、7週間後に0.98meq/kgと驚異的に低く、20週間経過後にも2.38meq/kgであって、ほとんど酸化されていないことがわかった。 [脂肪酸組成の経時的変化] 一般に、過酸化物価の変移は一定の期間においてはほとんどその変化に数値が無く、潜伏期間を過ぎると急激に数値が上昇し腐敗にいたる。従って、この潜伏期間内に過酸化物価を測定すると、実際には酸化が進んでいても数値として表れない。このため、最も酸化しやすいといわれるPUFA(高度不飽和脂肪酸)の値を測って、酸化の度合いを知ることが多い。 そこで、本実施例で得られた魚油について、採取後3ヶ月を経過してから、室温にて蓋をしない状態で放置し、20日間にわたり脂肪酸組成を1日2回ずつ測定した(国立大学法人富山大学浜崎教室)。その結果を表1に示す。 表1において、PUFA(高度不飽和脂肪酸)の総量は、測定開始初日37.7%,37.9%であり、20日目36.90%,37.20%であってほとんど変化が無かった。また、有効成分であるEPA,DHAもほとんど減少していなかった。 [色彩色差の測定] 本実施例で得られた魚油と、従来の製法(煮取り法)で抽出した魚油の色を図2に示すが、本実施例で得られた魚油(図2の左側)は、従来製法による魚油(図2の右側)に比べて色が薄いことは、一見して明らかである。 両者の色の差をより客観的に評価するため、採取後3ヶ月経過した本実施例に係る魚油及び煮取り法で得た魚油に対し、分光測色計CM−2600dを用いて、JISZ8729に基づき色彩色差を測定し、その結果を表2に示す。 上記表2において、Lは明度であり、0が黒、50がグレー、100が白を表す。aは−が緑方向、+は赤方向を表す。bは−が青方向、+が黄方向を表す。cは彩度を示し、+の値が大きいほど色が鮮やかになる。hは色相角度を表しており、a+赤方向の軸を0度として、ここから反時計方向の色相に対して移動した角度で色の位置がわかる。一般に6.0から12.0の差があれば著しく異なると評価される。 上記表2の数値から、本実施例に係る魚油はかすかに黄緑がかった透明に近い色調であり、従来製法による魚油は赤褐色を呈していることがわかる。 PUFAは非常に酸化し易く、敏感に酸素、温度、水分、金属イオン、光の影響を受け、酸化とともに耐えがたい魚臭・腐敗臭を発するというのが常識となっているが、以上の測定結果から、本実施例により得られた魚油は、抗酸化剤を一切添加せずとも、常温で透明なガラス容器に大気と接触させて保存しても、殆ど酸化することが無く、色も透明に近く魚油特有の臭いも無く、最も商品価値の高いDHA・EPAの含有量も殆ど減少しないことが確認された。 実施例1により得られた魚油と、鮪の残渣から抽出濃縮したコラーゲンペプチド及びアンセリン含有粉末を好みの硬さによって1:5〜1:10の割合に混ぜ、一粒300mg〜50mgの丸薬に加工し、アルミニウムの小袋に3〜5粒ずつ収納した。この丸薬は、長期間保存しても酸化せず、魚臭も無く、服用しやすかった。 なお、実施例1で得られた魚油を透明な容器に保存しておき、食塩、レモンと共にドレッシングとして野菜サラダに1〜2gふりかけたが、色が薄くて酸化による悪臭も無く、全く違和感は感じられなかった。 また、この魚油を脂肪分の少ない赤身の鮪刺身に振りかけたところ、特に魚臭さが増すことも無く、脂肪分が豊富なトロ鮪のような風味となった。本発明に係る魚油、従来製法による魚油、大豆油、しょうゆ油の過酸化物価の経時変化を示す図。本発明に係る魚油、及び、従来製法による魚油の色を示す図。 魚の頭部に同量の水を加え、圧力−0.088MPaG〜−0.0971MPaG,温度30℃〜55℃で低圧・加熱しながら、少なくとも60分間蒸気を除去した後、容器を密封したまま、圧力0.2MPaG,温度60℃〜120℃で、少なくとも60分間加圧・加熱して得た抽出物を液分と固形分とに分離し、液分を静置して上澄みを魚油とすることを特徴とする魚油抽出法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る