生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_送電線の熱履歴測定方法および送電線の余寿命測定方法
出願番号:2007217036
年次:2009
IPC分類:G01N 17/00,G01N 27/04


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今村 義人 尾崎 利行 立木 秀志 中井 由弘 高木 義幸 JP 2009052892 公開特許公報(A) 20090312 2007217036 20070823 送電線の熱履歴測定方法および送電線の余寿命測定方法 九州電力株式会社 000164438 九州電技開発株式会社 501410779 住友電気工業株式会社 000002130 上代 哲司 100078813 神野 直美 100094477 今村 義人 尾崎 利行 立木 秀志 中井 由弘 高木 義幸 G01N 17/00 20060101AFI20090213BHJP G01N 27/04 20060101ALI20090213BHJP JPG01N17/00G01N27/04 Z 5 1 OL 10 2G050 2G060 2G050AA01 2G050BA10 2G050EB02 2G050EC05 2G060AA10 2G060AD04 2G060AE28 2G060AF07 2G060GA01 2G060HC10 2G060HC18 2G060HD03 2G060KA09 本発明は、送電線の熱履歴測定方法、およびその送電線の熱履歴測定方法を用いた送電線の余寿命測定方法に関する。 一般に、屋外等に架線される送電線は、経年劣化するため、所定の条件に基づいてその余寿命が判断されて、撤去・交換が行われる。送電線の劣化を招く原因としては、長年繰返し加わる曲げによる疲労、腐食、通電による発熱、或いは雷撃等による損傷などが挙げられるが、これらの内でも、通電による発熱の影響(以下、「熱履歴」という)は、送電線全体の引っ張り強さを低下させ、設備の設計上、必要な強度に対する余裕度を減少させ、余寿命を減少させる大きな原因とされている。 引張り強さの低下は,高温になるほど短時間で進行する。そこで、引張り試験による送電線の強度検査が、発熱による熱履歴を測定する方法として、直接的かつ簡便な手段として行われている(「電気学会技術報告 第660号 架空送電線の電流容量 (1997)」)(非特許文献1)。「電気学会技術報告 第660号 架空送電線の電流容量」 3〜14ページ、確率論的電流容量決定手法調査専門委員会編、1997年12月、電気学会発行 しかし、前記引張り強さの測定は、一般に撚り線で提供される送電線を、そのまま引張り試験機にセットして行われるわけではなく、通常は、通電を分担する素線を直線状に撚りを戻した後に試験機にセットして行われる。このため、引張り試験を行う前に、素線の撚りを戻して直線状に加工する必要がある。この際、素線に転位が生じるため、得られた引張り強さは、測定前の測定対象物についての正確な引張り強さとは、一致しない。 また、経年変化による腐食や、施工時の傷などがあると、送電線の素線の断面積が部位により異なるため、引張り荷重は求めることはできても、引張り強さを正確に求めることができない。 このように、従来の引張り試験による測定法では、送電線の経年後における引張り強さを正確に把握することができず、結果的に、送電線の熱履歴が正確に測定できないという問題がある。 送電線の熱履歴は、個々の送電状況や、周囲の気象条件によっても大きく左右される。例えば、寒冷地の送電線や、主として寒冷期に使用されている送電線などの場合には、熱の影響が、他の場所、時期に使用されている送電線の場合に比べて小さく、温暖な場所では逆となるため、熱影響による劣化の程度を測定する場合、これらを考慮して測定し、評価を行う必要がある。 また、近年、送電線の運用は、供給安定の他、経済的効率向上も勘案することが要請されるようになり、厳しさが増して来ている。このため、送電線の電流容量を、従来よりも増やして運用する事例が増加してきている。送電線の電流容量を増やせば、電流による発熱量が増加する。従来は、送電線の電流容量について、かなり余裕を持った条件で設定されていたため、送電線が電流による発熱で、実際に熱的に劣化する確率は非常に低かったが、電流容量の増加に伴い、設定条件における余裕度が減少して、熱的に劣化する確率が高まってきたと言える。また、事故対応等の短期的な運用では、計算上送電線の熱劣化を生じる可能性のあるような大電流送電を強いられることも増えてきている。このため、従来よりも、送電線の熱劣化の発生を正確に検証する必要性が高まっている。 このため、送電線に転位が生じない方法により、送電線を実運用にできるだけ近い状態のもとで、送電線に断面積の変化が生じていても、熱影響が比較的小さい送電線を含めて、送電線の熱履歴の状況を正確に測定する方法の開発が求められている。さらに、その測定結果に基づき、送電線の余寿命を正確に判断する余寿命測定方法の開発が求められている。 本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、従来、金属(導体)の不純物量を測定する手段として用いられていた残留抵抗比が、送電線の熱履歴を測定するのに好適な指標であることを見出し、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明は、その請求項1として、残留抵抗比を用いて、送電線の熱履歴を測定することを特徴とする送電線の熱履歴測定法を提供する。 ここで、残留抵抗比とは、常温での電気抵抗値(Rt)と、絶対零度での電気抵抗値(Ro)以下、「残留抵抗値」という)との比である。 一般に、常温(t℃)における金属(導体)の抵抗値Rtは、格子欠陥による抵抗値Rd、不純物の影響による抵抗値Ri、及び格子振動による抵抗値Rvの総和として、下式(1)のように表される。 Rt=Rd+Ri+Rv=(l/A)×(ρd+ρi+ρv) (1) ここで、ρd、ρi、ρvは、それぞれ、格子欠陥による抵抗率、不純物の影響による抵抗率、金属(導体)の格子振動による抵抗率である。また、lは、金属(導体)の長さであり、Aは、金属(導体)の断面積である。(l/A)と各ρとの積が前記の各抵抗値となる。 この内、格子振動による抵抗値Rvは、絶対零度付近においては、ほぼ0(結晶がほぼ完全な規則性を保っている)であるため、残留抵抗値R0は、格子欠陥による抵抗値Rd、及び不純物の影響による抵抗値Riの和として、下式(2)のように表すことができる。なお、残留抵抗値としては、通常、4.2°K(液体ヘリウムの温度)における電気抵抗値を使用するが、実用上問題はない。 R0=Rd+Ri=(l/A)×(ρd+ρi) (2) 前記式(1)および(2)より、残留抵抗比Xは、下式(3)のように表される。 X=(Rt/R0)=(ρd+ρi+ρv)/(ρd+ρi)=1+α (3)なお、 α=ρv/(ρd+ρi) (4)である。式(3)に示すように、金属(導体)の形状に関する項(l/A)は消去され、残留抵抗比Xは、各抵抗率による関係のみで表すことができる(前記非特許文献1、3頁)。 ここで、1)格子振動による抵抗率ρdは、測定温度が同一であれば、同一であること2)金属(導体)を焼き鈍すことにより、格子欠陥の影響が排除できることより、残留抵抗比Xの変化から、不純物の量の変化を捉えることができる。 本発明者は、送電線の場合、1)基本的に経年による不純物量の変化はないこと2)格子欠陥の量は、熱影響がその殆どを支配していること3)残留抵抗比の測定には、引張り試験のように、撚りを戻すことや、荷重を加えることによる転位がないこと4)残留抵抗比は、形状に関する項(l/A)が消えているため、腐食や傷などによって生じる試料形状の如何には影響されないことに着目し、前記残留抵抗比が、送電線の熱影響の正確な測定に利用できることを見出した。 即ち、前記各抵抗率において、1)不純物の影響による抵抗率ρiは、経年変化の前後において、同一であること2)格子振動による抵抗率ρvは、測定温度が同一であれば、同一であること 以上のことより、経年変化前後の、あるいは長年の使用による熱履歴の前後の測定において、温度を同一にすれば、残留抵抗比Xの変化から、経年変化に伴う格子欠陥による抵抗率ρdの変化、即ち熱影響(熱履歴)を捉えることができることを見出したのである。 以上のように、残留抵抗比は、送電線の熱履歴を測定する指標として好適に用いることができ、経年変化前後の送電線の残留抵抗比を比較することにより、経年変化による熱影響を知ることができる。 本発明に係る熱履歴測定方法は、従来の引張り試験を用いた熱履歴測定法とは異なり、撚りを戻したりする余分な手順を必要とせず、効率的であるとともに、より正確な測定結果を得ることができる。また、残留抵抗比は、各抵抗率に基づく値であり、形状に関する項(l/A)を含まないため、腐食や傷の発生に伴ってサンプル形状が変化(断面積の変化)しても、残留抵抗比には影響することがなく、信頼性の高い測定結果を得ることができる。さらに、熱影響が比較的小さい送電線に対しても、正確に熱履歴を測定することができる。 具体的態様として、本発明は、その請求項2において、測定対象と同じ材質、種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱前後における各残留抵抗比を測定し、得られた各残留抵抗比と、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比とを用いて、前記測定対象送電線の熱履歴状況を測定することを特徴とする送電線の熱履歴測定方法を提供する。 本請求項2に係る熱履歴測定方法の詳細は、以下の通りである。(熱履歴のない試料の残留抵抗比の測定) 最初に、測定対象と同じ種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない試料を用いて、熱履歴のない時点での残留抵抗比X0を測定する。次に、同じ試料を用いて、一定温度で所定時間加熱する(熱履歴を加える)。加熱条件としては、送電線の設計について一般的に用いられている「短時間電流容量」という設計法に示されている加熱温度、加熱時間を使用することが、後述する送電線の余寿命測定との関係もあり、好ましい。 これは、数年〜数十年の送電線の寿命を短時間の試験で予測する方法であり、具体的には、一定の加熱温度で、一定時間、加熱したときに、引張り強さの値が、加熱前より10%低下した時点を、送電線寿命の目安として判断するものであり、今日広く業界において採用されている設計法である。実際の運用としては、加熱時間を一律に400時間と定めておいて、その400時間加熱で引張り強さを10%低下させる加熱温度として、送電線の種類により、それぞれの材料の耐熱特性に応じて、以下のように決められている。 ・ECAl (電気用アルミニウム材、純度99.7%):120℃ ・60TAl(60%導電率耐熱アルミニウム合金) :180℃ ・ZTAl (超耐熱アルミニウム合金) :210℃ ・XTAl (超々耐熱アルミニウム合金) :300℃ 以上に基づき、測定対象の送電線の種類・耐熱特性に対応した加熱温度で、400時間加熱する。加熱後、残留抵抗比X400を測定する。この400時間加熱後の残留抵抗比X400は、即ち劣化の限界(寿命)における残留抵抗比XMAXを意味しており、加熱前後での残留抵抗比の差(X400−X0)が、寿命時点における劣化状況を示している。(測定対象試料による残留抵抗比測定) 次に、測定対象の送電線から得られた試料を用いて、熱履歴後の残留抵抗比Xtを測定する。測定対象の送電線の残留抵抗比と、前記熱履歴が加えられていない送電線の残留抵抗比の差(Xt−X0)が、測定対象の送電線の測定時点における劣化の状況を示している。(測定対象試料の熱履歴測定) そして、2つの残留抵抗比の差から、その比{(Xt−X0)/(X400−X0)}×100%を求めると、これが測定対象試料の劣化の程度を示す指標として、熱履歴の状況を示す。 前記の測定においては、測定対象の送電線と同じ材質、種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない(経年変化前)試料が、用意される必要がある。それには、同一品を新品のまま保存しておいて、測定時、それを用いて、加熱前の残留抵抗比X0及び加熱後の残留抵抗比X400を得る方法や、新品の時点で、予め、加熱前の残留抵抗比X0及び加熱後の残留抵抗比X400を得ておく方法があるが、管理の煩雑さ等、実務上では、困難な場合が多い。 本発明者は、前記新品試料に換えて、加熱前の残留抵抗比X0及び加熱後の残留抵抗比X400を得るために適当な試料につき検討した結果、送電線に装着される接続管や、クランプなどの接続部品の質量、形状が、電線よりはるかに大きく、接続管やクランプの熱放散が大きいことに着目した。 送電線は、通常、2000〜3000mの1連続長の電線を接続して使用されるが、数百m毎に鉄塔(懸垂鉄塔または耐張鉄塔)が設置されて、電線が支持される。このとき、接続では接続管が、懸垂鉄塔では懸垂クランプが、耐張鉄塔では耐張クランプが電線に装着されて、電線を支持する。 接続管やクランプの質量は電線よりはるかに大きいため、接続管やクランプは加熱され難く、また熱放散も大きくなるため、送電線に電流を流したとき、係る部位における温度上昇は、送電線の半分程度とされている。そして、送電線においては、少しの温度低下でも寿命が大きく伸びることが分かっている(アルミ電線標準専門委員会、「大電流電線」電気協同研究32、No1、1976)ため、上記の部品の装着部は、一般電線部に比べると実質的には、「熱劣化が生じていない部分」と言える。 温度と寿命との関係について一例を挙げると、ECAlでは、120℃、400時間の加熱で10%引張り強さが低下(劣化)するが、90℃の加熱温度では36年で10%である。仮に部品の装着部の温度が60℃とすると、10%引張り強さが低下するには、数百年を要するということになり、通常の使用条件では熱的な影響は殆どないと判断してもかまわない。 以上のことより、接続管やクランプなどの接続部品近傍は、実質的に熱履歴が加えられていない箇所と判断しても問題はない。請求項3は、この好ましい態様であって、熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする送電線の熱履歴測定方法を提供する。 また、避雷器への分岐などは、回路構成上、電流がわずかしか流れない部分であり、もともと熱履歴を受けない箇所であるため、その近傍の電線を熱履歴前の送電線として使用してもよい。請求項4は、この好ましい態様であって、熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に電気が流れず、このため熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする送電線の熱履歴測定方法を提供する。 このように、送電線の残留抵抗比を用いることにより、劣化の状況を測定できることが分かったが、送電線の管理者は、劣化の状況からその余寿命を判断して、いつ送電線を撤去・交換すべきかを具体的に把握する必要がある。 本発明者は、熱履歴が加えられていない試料を用いて、一定温度で所定時間加熱する(熱履歴を加える)際、加熱経過途中において残留抵抗比を測定しておけば、送電線の残留抵抗比を測定すると同時に、該送電線の余寿命を判定できることを見出した。 即ち、本発明者は、その請求項5において、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱経過時間と残留抵抗比の変化を、予めマスターデータとして求めておき、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比と、前記マスターデータにおける残留抵抗比との一致点を求め、それに対応した加熱時間から、前記測定対象の送電線の余寿命を判定することを特徴とする送電線の余寿命測定方法を提供する。 本請求項に係る余寿命測定法の詳細は、以下の通りである。(マスターデータの収集) 最初に、マスターデータを収集する。具体的には、熱履歴が加えられていない(経年変化前)あるいは実質的に熱履歴が加えられていない試料を用いて、一定温度で所定時間加熱する(熱履歴を加える)。加熱条件としては、上述した「短時間電流容量」設計法に示されている加熱温度、加熱時間を使用する。 測定対象の送電線の種類・耐熱特性に対応した加熱温度で、加熱時間を400時間まで変化させて、途中、加熱経過時間に対する残留抵抗比を順次測定して、マスターデータとする。具体的事例として、図1を挙げる。図1は、得られたマスターデータを、加熱経過時間を横軸、残留抵抗比を縦軸として、表1に示す加熱経過時間毎のデータをプロットしたものである。各データを結んだ曲線を、以下「マスターカーブ」という。(測定対象試料による残留抵抗比測定) 次に、測定対象の送電線から得られた試料を用いて、その残留抵抗比を測定する。(測定対象試料の熱履歴測定) そして、得られた測定値と、マスターデータにおける残留抵抗比の一致点を求め、それに対応する加熱時間を測定すれば、同時に当該試料の余寿命を得ることができる。図1を用いて説明すると、400時間加熱により送電線の寿命と判断するので、測定された残留抵抗比に対応する加熱時間と400時間との差が、この加熱温度に対応した送電線の余寿命を示していることになる。 即ち、予め、送電線の種類・耐熱特性に応じた加熱時間でマスターデータを準備しておけば、送電線の残留抵抗比を測定するにより、該送電線の余寿命を直接的に把握することができるので、送電線の撤去・交換時期を容易、かつ正確に判断できて好ましい。 前述したように、余寿命に十分な余裕があれば、送電線の電流容量を、従来よりも増やして運用することができるが、送電線の電流容量を増やせば、電流による発熱量が増加し、余寿命はより短くなる。加熱温度と電線の寿命の関係については、過去にデータの蓄積があり、送電線の運用条件(周囲温度、送電力)に基づいて送電線がおかれている温度がわかっておれば、容易に余寿命を算定できる。 本発明は、熱履歴を、残留抵抗比を用いて測定するので、従来の引張り強度による測定と異なり、測定試料を撚り戻すといった加工が不要であり、転位も生じないため、実運用に近い状態で、熱履歴の状況を正確に測定することができる。また、残留抵抗比は、測定試料の形状による影響を受けないため、その種類・耐熱温度が同じ送電線であれば、形状が異なる送電線であっても、1つのマスターデータを用いて、熱履歴を正確に測定することができ、極めて有用である。さらに、熱による影響が比較的小さい送電線に対しても適用できる。 また、本発明は、残留抵抗比から、送電線の余寿命を直接的に把握することができ、送電線の撤去・交換時期を容易、かつ正確に判断でき有用である。 本発明を実施するための最良の形態につき、以下の実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明と同一および均等の範囲内において、種々の変更を加えてもよい。 以下の実施例は、測定試料として、ECAl送電線を用いた。なお、測定は、各測定段階において試料数3個を1群として扱い、測定値はその平均値で表す。(マスターデータの収集) マスターデータ収集用試料として、クランプ近傍より、長さ200mmの電線を採取した。試料を、25℃恒温槽中に10分間保持し、6A通電したときの電圧V1を測定した。次いで、試料を、液体ヘリウム(4.2°K)中に3分間保持し、6A通電したときの電圧V2を測定した。電流が6Aと一定なので、加熱経過時間0での残留抵抗比X0は、 X0=(V1/6)/(V2/6)=(V1/V2)により求められる。 次いで、120℃恒温層の中に試料を静置して、トータルで400時間加熱した。途中、表1に示す加熱経過時間毎に、1群の試料を取り出し、上記と同様の手順で、各加熱経過時間での残留抵抗比Xを求め、マスターデータを得た。結果を表1に示し、それに基づくマスターカーブを図1に示す。なお、図1において、縦軸は残留抵抗比、横軸は加熱経過時間を示す。(測定対象の送電線試料による残留抵抗比) 上記と同じ材質、種類、サイズの測定対象の送電線試料(経年:22年)を用いて、上記と同様の手順で、残留抵抗比Xtとして、31.86を得た。(熱履歴、及び余寿命の測定) 図1の縦軸にXtを配し、データとの交点を求め、そこから対応する加熱経過時間を求めると、加熱経過時間Ttとして160時間が得られた。400時間との差(400−Tt)が、余寿命であり、余寿命は240時間(120℃)であることがわかる。熱履歴による劣化の程度は、{(Xt−X0)/(X400−X0)}×100%で求め、当初より65%劣化が進行していることが分かる。 図1を用いることにより、直接的に、その加熱経過時間(履歴時間)及び余寿命を判定できるため、本方法を用いた判定は、簡便で有用な方法である。 また、種類の異なる送電線毎に、さらに同じ種類の送電線であっても、残留抵抗比に影響を及ぼしやすい不純物量(Fe、Si等)が異なる送電線毎に、予めマスターカーブを作成して、データベース化しておくことにより、測定試料に対応するマスターカーブを迅速に選定できるため、極めて容易に、測定試料の熱劣化の程度を推定することができる。残留抵抗比と加熱経過時間との関係を示す図である。 残留抵抗比を用いて、送電線の熱履歴を測定することを特徴とする送電線の熱履歴測定方法。 測定対象と同じ材質、種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱前後における各残留抵抗比を測定し、得られた各残留抵抗比と、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比とを用いて、前記測定対象送電線の熱履歴の状況を測定することを特徴とする送電線の熱履歴測定方法。 前記熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする請求項2に記載の送電線の熱履歴測定方法。 前記熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に電気が流れず、このため熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする請求項2に記載の送電線の熱履歴測定方法。 請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱経過時間と残留抵抗比の変化を、予めマスターデータとして求めておき、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比と、前記マスターデータにおける残留抵抗比との一致点を求め、それに対応した加熱時間から、前記測定対象の送電線の余寿命を判定することを特徴とする送電線の余寿命測定方法。 【課題】送電線に転位が生じない方法により、送電線を実運用にできるだけ近い状態のもとで、送電線に断面積の変化が生じていても、熱影響が比較的小さい送電線を含めて、送電線の熱履歴の状況を正確に測定する方法を提供する。さらに、その測定結果に基づき、送電線の余寿命を正確に判断する余寿命測定方法を提供する。【解決手段】残留抵抗比を用いて、送電線の熱履歴を測定することを特徴とする送電線の熱履歴測定方法。熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱経過時間と残留抵抗比の変化を、予めマスターデータとして求めておき、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比と、前記マスターデータにおける残留抵抗比との一致点を求め、それに対応した加熱時間から、前記測定対象送電線の余寿命を判定することを特徴とする送電線の余寿命測定方法。【選択図】 図1


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特許公報(B2)_送電線の熱履歴測定方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_送電線の熱履歴測定方法
出願番号:2007217036
年次:2011
IPC分類:G01N 17/00,G01N 27/04


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今村 義人 尾崎 利行 立木 秀志 中井 由弘 高木 義幸 JP 4744492 特許公報(B2) 20110520 2007217036 20070823 送電線の熱履歴測定方法 九州電力株式会社 000164438 九州電技開発株式会社 501410779 住友電気工業株式会社 000002130 上代 哲司 100078813 神野 直美 100094477 今村 義人 尾崎 利行 立木 秀志 中井 由弘 高木 義幸 20110810 G01N 17/00 20060101AFI20110721BHJP G01N 27/04 20060101ALI20110721BHJP JPG01N17/00G01N27/04 Z G01N 17/00−19/10 G01N 27/00−27/24 特開2001−057118(JP,A) 特開2006−343221(JP,A) 特開2002−260459(JP,A) 2 2009052892 20090312 9 20081028 樋口 宗彦 本発明は、送電線の熱履歴測定方法に関する。 一般に、屋外等に架線される送電線は、経年劣化するため、所定の条件に基づいてその余寿命が判断されて、撤去・交換が行われる。送電線の劣化を招く原因としては、長年繰返し加わる曲げによる疲労、腐食、通電による発熱、或いは雷撃等による損傷などが挙げられるが、これらの内でも、通電による発熱の影響(以下、「熱履歴」という)は、送電線全体の引っ張り強さを低下させ、設備の設計上、必要な強度に対する余裕度を減少させ、余寿命を減少させる大きな原因とされている。 引張り強さの低下は,高温になるほど短時間で進行する。そこで、引張り試験による送電線の強度検査が、発熱による熱履歴を測定する方法として、直接的かつ簡便な手段として行われている(「電気学会技術報告 第660号 架空送電線の電流容量 (1997)」)(非特許文献1)。「電気学会技術報告 第660号 架空送電線の電流容量」 3〜14ページ、確率論的電流容量決定手法調査専門委員会編、1997年12月、電気学会発行 しかし、前記引張り強さの測定は、一般に撚り線で提供される送電線を、そのまま引張り試験機にセットして行われるわけではなく、通常は、通電を分担する素線を直線状に撚りを戻した後に試験機にセットして行われる。このため、引張り試験を行う前に、素線の撚りを戻して直線状に加工する必要がある。この際、素線に転位が生じるため、得られた引張り強さは、測定前の測定対象物についての正確な引張り強さとは、一致しない。 また、経年変化による腐食や、施工時の傷などがあると、送電線の素線の断面積が部位により異なるため、引張り荷重は求めることはできても、引張り強さを正確に求めることができない。 このように、従来の引張り試験による測定法では、送電線の経年後における引張り強さを正確に把握することができず、結果的に、送電線の熱履歴が正確に測定できないという問題がある。 送電線の熱履歴は、個々の送電状況や、周囲の気象条件によっても大きく左右される。例えば、寒冷地の送電線や、主として寒冷期に使用されている送電線などの場合には、熱の影響が、他の場所、時期に使用されている送電線の場合に比べて小さく、温暖な場所では逆となるため、熱影響による劣化の程度を測定する場合、これらを考慮して測定し、評価を行う必要がある。 また、近年、送電線の運用は、供給安定の他、経済的効率向上も勘案することが要請されるようになり、厳しさが増して来ている。このため、送電線の電流容量を、従来よりも増やして運用する事例が増加してきている。送電線の電流容量を増やせば、電流による発熱量が増加する。従来は、送電線の電流容量について、かなり余裕を持った条件で設定されていたため、送電線が電流による発熱で、実際に熱的に劣化する確率は非常に低かったが、電流容量の増加に伴い、設定条件における余裕度が減少して、熱的に劣化する確率が高まってきたと言える。また、事故対応等の短期的な運用では、計算上送電線の熱劣化を生じる可能性のあるような大電流送電を強いられることも増えてきている。このため、従来よりも、送電線の熱劣化の発生を正確に検証する必要性が高まっている。 このため、送電線に転位が生じない方法により、送電線を実運用にできるだけ近い状態のもとで、送電線に断面積の変化が生じていても、熱影響が比較的小さい送電線を含めて、送電線の熱履歴の状況を正確に測定する方法の開発が求められている。さらに、その測定結果に基づき、送電線の余寿命を正確に判断する余寿命測定方法の開発が求められている。 本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討の結果、従来、金属(導体)の不純物量を測定する手段として用いられていた残留抵抗比が、送電線の熱履歴を測定するのに好適な指標であることを見出した。 即ち、本発明は、第1の技術として、残留抵抗比を用いて、送電線の熱履歴を測定することを特徴とする送電線の熱履歴測定法を提供する。 ここで、残留抵抗比とは、常温での電気抵抗値(Rt)と、絶対零度での電気抵抗値(Ro)以下、「残留抵抗値」という)との比である。 一般に、常温(t℃)における金属(導体)の抵抗値Rtは、格子欠陥による抵抗値Rd、不純物の影響による抵抗値Ri、及び格子振動による抵抗値Rvの総和として、下式(1)のように表される。 Rt=Rd+Ri+Rv=(l/A)×(ρd+ρi+ρv) (1) ここで、ρd、ρi、ρvは、それぞれ、格子欠陥による抵抗率、不純物の影響による抵抗率、金属(導体)の格子振動による抵抗率である。また、lは、金属(導体)の長さであり、Aは、金属(導体)の断面積である。(l/A)と各ρとの積が前記の各抵抗値となる。 この内、格子振動による抵抗値Rvは、絶対零度付近においては、ほぼ0(結晶がほぼ完全な規則性を保っている)であるため、残留抵抗値R0は、格子欠陥による抵抗値Rd、及び不純物の影響による抵抗値Riの和として、下式(2)のように表すことができる。なお、残留抵抗値としては、通常、4.2°K(液体ヘリウムの温度)における電気抵抗値を使用するが、実用上問題はない。 R0=Rd+Ri=(l/A)×(ρd+ρi) (2) 前記式(1)および(2)より、残留抵抗比Xは、下式(3)のように表される。 X=(Rt/R0)=(ρd+ρi+ρv)/(ρd+ρi)=1+α (3)なお、 α=ρv/(ρd+ρi) (4)である。式(3)に示すように、金属(導体)の形状に関する項(l/A)は消去され、残留抵抗比Xは、各抵抗率による関係のみで表すことができる(前記非特許文献1、3頁)。 ここで、1)格子振動による抵抗率ρdは、測定温度が同一であれば、同一であること2)金属(導体)を焼き鈍すことにより、格子欠陥の影響が排除できることより、残留抵抗比Xの変化から、不純物の量の変化を捉えることができる。 本発明者は、送電線の場合、1)基本的に経年による不純物量の変化はないこと2)格子欠陥の量は、熱影響がその殆どを支配していること3)残留抵抗比の測定には、引張り試験のように、撚りを戻すことや、荷重を加えることによる転位がないこと4)残留抵抗比は、形状に関する項(l/A)が消えているため、腐食や傷などによって生じる試料形状の如何には影響されないことに着目し、前記残留抵抗比が、送電線の熱影響の正確な測定に利用できることを見出した。 即ち、前記各抵抗率において、1)不純物の影響による抵抗率ρiは、経年変化の前後において、同一であること2)格子振動による抵抗率ρvは、測定温度が同一であれば、同一であること 以上のことより、経年変化前後の、あるいは長年の使用による熱履歴の前後の測定において、温度を同一にすれば、残留抵抗比Xの変化から、経年変化に伴う格子欠陥による抵抗率ρdの変化、即ち熱影響(熱履歴)を捉えることができることを見出したのである。 以上のように、残留抵抗比は、送電線の熱履歴を測定する指標として好適に用いることができ、経年変化前後の送電線の残留抵抗比を比較することにより、経年変化による熱影響を知ることができる。 本発明に係る熱履歴測定方法は、従来の引張り試験を用いた熱履歴測定法とは異なり、撚りを戻したりする余分な手順を必要とせず、効率的であるとともに、より正確な測定結果を得ることができる。また、残留抵抗比は、各抵抗率に基づく値であり、形状に関する項(l/A)を含まないため、腐食や傷の発生に伴ってサンプル形状が変化(断面積の変化)しても、残留抵抗比には影響することがなく、信頼性の高い測定結果を得ることができる。さらに、熱影響が比較的小さい送電線に対しても、正確に熱履歴を測定することができる。 具体的態様として、本発明は、第2の技術として、測定対象と同じ材質、種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱前後における各残留抵抗比を測定し、得られた各残留抵抗比と、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比とを用いて、前記測定対象送電線の熱履歴状況を測定することを特徴とする送電線の熱履歴測定方法を提供する。 上記第2の技術に係る熱履歴測定方法の詳細は、以下の通りである。(熱履歴のない試料の残留抵抗比の測定) 最初に、測定対象と同じ種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない試料を用いて、熱履歴のない時点での残留抵抗比X0を測定する。次に、同じ試料を用いて、一定温度で所定時間加熱する(熱履歴を加える)。加熱条件としては、送電線の設計について一般的に用いられている「短時間電流容量」という設計法に示されている加熱温度、加熱時間を使用することが、後述する送電線の余寿命測定との関係もあり、好ましい。 これは、数年〜数十年の送電線の寿命を短時間の試験で予測する方法であり、具体的には、一定の加熱温度で、一定時間、加熱したときに、引張り強さの値が、加熱前より10%低下した時点を、送電線寿命の目安として判断するものであり、今日広く業界において採用されている設計法である。実際の運用としては、加熱時間を一律に400時間と定めておいて、その400時間加熱で引張り強さを10%低下させる加熱温度として、送電線の種類により、それぞれの材料の耐熱特性に応じて、以下のように決められている。 ・ECAl (電気用アルミニウム材、純度99.7%):120℃ ・60TAl(60%導電率耐熱アルミニウム合金) :180℃ ・ZTAl (超耐熱アルミニウム合金) :210℃ ・XTAl (超々耐熱アルミニウム合金) :300℃ 以上に基づき、測定対象の送電線の種類・耐熱特性に対応した加熱温度で、400時間加熱する。加熱後、残留抵抗比X400を測定する。この400時間加熱後の残留抵抗比X400は、即ち劣化の限界(寿命)における残留抵抗比XMAXを意味しており、加熱前後での残留抵抗比の差(X400−X0)が、寿命時点における劣化状況を示している。(測定対象試料による残留抵抗比測定) 次に、測定対象の送電線から得られた試料を用いて、熱履歴後の残留抵抗比Xtを測定する。測定対象の送電線の残留抵抗比と、前記熱履歴が加えられていない送電線の残留抵抗比の差(Xt−X0)が、測定対象の送電線の測定時点における劣化の状況を示している。(測定対象試料の熱履歴測定) そして、2つの残留抵抗比の差から、その比{(Xt−X0)/(X400−X0)}×100%を求めると、これが測定対象試料の劣化の程度を示す指標として、熱履歴の状況を示す。 前記の測定においては、測定対象の送電線と同じ材質、種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない(経年変化前)試料が、用意される必要がある。それには、同一品を新品のまま保存しておいて、測定時、それを用いて、加熱前の残留抵抗比X0及び加熱後の残留抵抗比X400を得る方法や、新品の時点で、予め、加熱前の残留抵抗比X0及び加熱後の残留抵抗比X400を得ておく方法があるが、管理の煩雑さ等、実務上では、困難な場合が多い。 本発明者は、前記新品試料に換えて、加熱前の残留抵抗比X0及び加熱後の残留抵抗比X400を得るために適当な試料につき検討した結果、送電線に装着される接続管や、クランプなどの接続部品の質量、形状が、電線よりはるかに大きく、接続管やクランプの熱放散が大きいことに着目した。 送電線は、通常、2000〜3000mの1連続長の電線を接続して使用されるが、数百m毎に鉄塔(懸垂鉄塔または耐張鉄塔)が設置されて、電線が支持される。このとき、接続では接続管が、懸垂鉄塔では懸垂クランプが、耐張鉄塔では耐張クランプが電線に装着されて、電線を支持する。 接続管やクランプの質量は電線よりはるかに大きいため、接続管やクランプは加熱され難く、また熱放散も大きくなるため、送電線に電流を流したとき、係る部位における温度上昇は、送電線の半分程度とされている。そして、送電線においては、少しの温度低下でも寿命が大きく伸びることが分かっている(アルミ電線標準専門委員会、「大電流電線」電気協同研究32、No1、1976)ため、上記の部品の装着部は、一般電線部に比べると実質的には、「熱劣化が生じていない部分」と言える。 温度と寿命との関係について一例を挙げると、ECAlでは、120℃、400時間の加熱で10%引張り強さが低下(劣化)するが、90℃の加熱温度では36年で10%である。仮に部品の装着部の温度が60℃とすると、10%引張り強さが低下するには、数百年を要するということになり、通常の使用条件では熱的な影響は殆どないと判断してもかまわない。 以上のことより、接続管やクランプなどの接続部品近傍は、実質的に熱履歴が加えられていない箇所と判断しても問題はない。第3の技術(請求項1)は、この好ましい態様であって、熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする送電線の熱履歴測定方法を提供する。 また、避雷器への分岐などは、回路構成上、電流がわずかしか流れない部分であり、もともと熱履歴を受けない箇所であるため、その近傍の電線を熱履歴前の送電線として使用してもよい。第4の技術(請求項2)は、この好ましい態様であって、熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に電気が流れず、このため熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする送電線の熱履歴測定方法を提供する。 このように、送電線の残留抵抗比を用いることにより、劣化の状況を測定できることが分かったが、送電線の管理者は、劣化の状況からその余寿命を判断して、いつ送電線を撤去・交換すべきかを具体的に把握する必要がある。 本発明者は、熱履歴が加えられていない試料を用いて、一定温度で所定時間加熱する(熱履歴を加える)際、加熱経過途中において残留抵抗比を測定しておけば、送電線の残留抵抗比を測定すると同時に、該送電線の余寿命を判定できることを見出した。 即ち、本発明者は、第5の技術として、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱経過時間と残留抵抗比の変化を、予めマスターデータとして求めておき、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比と、前記マスターデータにおける残留抵抗比との一致点を求め、それに対応した加熱時間から、前記測定対象の送電線の余寿命を判定することを特徴とする送電線の余寿命測定方法を提供する。 本請求項に係る余寿命測定法の詳細は、以下の通りである。(マスターデータの収集) 最初に、マスターデータを収集する。具体的には、熱履歴が加えられていない(経年変化前)あるいは実質的に熱履歴が加えられていない試料を用いて、一定温度で所定時間加熱する(熱履歴を加える)。加熱条件としては、上述した「短時間電流容量」設計法に示されている加熱温度、加熱時間を使用する。 測定対象の送電線の種類・耐熱特性に対応した加熱温度で、加熱時間を400時間まで変化させて、途中、加熱経過時間に対する残留抵抗比を順次測定して、マスターデータとする。具体的事例として、図1を挙げる。図1は、得られたマスターデータを、加熱経過時間を横軸、残留抵抗比を縦軸として、表1に示す加熱経過時間毎のデータをプロットしたものである。各データを結んだ曲線を、以下「マスターカーブ」という。(測定対象試料による残留抵抗比測定) 次に、測定対象の送電線から得られた試料を用いて、その残留抵抗比を測定する。(測定対象試料の熱履歴測定) そして、得られた測定値と、マスターデータにおける残留抵抗比の一致点を求め、それに対応する加熱時間を測定すれば、同時に当該試料の余寿命を得ることができる。図1を用いて説明すると、400時間加熱により送電線の寿命と判断するので、測定された残留抵抗比に対応する加熱時間と400時間との差が、この加熱温度に対応した送電線の余寿命を示していることになる。 即ち、予め、送電線の種類・耐熱特性に応じた加熱時間でマスターデータを準備しておけば、送電線の残留抵抗比を測定するにより、該送電線の余寿命を直接的に把握することができるので、送電線の撤去・交換時期を容易、かつ正確に判断できて好ましい。 前述したように、余寿命に十分な余裕があれば、送電線の電流容量を、従来よりも増やして運用することができるが、送電線の電流容量を増やせば、電流による発熱量が増加し、余寿命はより短くなる。加熱温度と電線の寿命の関係については、過去にデータの蓄積があり、送電線の運用条件(周囲温度、送電力)に基づいて送電線がおかれている温度がわかっておれば、容易に余寿命を算定できる。 本発明は、熱履歴を、残留抵抗比を用いて測定するので、従来の引張り強度による測定と異なり、測定試料を撚り戻すといった加工が不要であり、転位も生じないため、実運用に近い状態で、熱履歴の状況を正確に測定することができる。また、残留抵抗比は、測定試料の形状による影響を受けないため、その種類・耐熱温度が同じ送電線であれば、形状が異なる送電線であっても、1つのマスターデータを用いて、熱履歴を正確に測定することができ、極めて有用である。さらに、熱による影響が比較的小さい送電線に対しても適用できる。 また、本発明は、残留抵抗比から、送電線の余寿命を直接的に把握することができ、送電線の撤去・交換時期を容易、かつ正確に判断でき有用である。 本発明を実施するための最良の形態につき、以下の実施例に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明と同一および均等の範囲内において、種々の変更を加えてもよい。 以下の実施例は、測定試料として、ECAl送電線を用いた。なお、測定は、各測定段階において試料数3個を1群として扱い、測定値はその平均値で表す。(マスターデータの収集) マスターデータ収集用試料として、クランプ近傍より、長さ200mmの電線を採取した。試料を、25℃恒温槽中に10分間保持し、6A通電したときの電圧V1を測定した。次いで、試料を、液体ヘリウム(4.2°K)中に3分間保持し、6A通電したときの電圧V2を測定した。電流が6Aと一定なので、加熱経過時間0での残留抵抗比X0は、 X0=(V1/6)/(V2/6)=(V1/V2)により求められる。 次いで、120℃恒温層の中に試料を静置して、トータルで400時間加熱した。途中、表1に示す加熱経過時間毎に、1群の試料を取り出し、上記と同様の手順で、各加熱経過時間での残留抵抗比Xを求め、マスターデータを得た。結果を表1に示し、それに基づくマスターカーブを図1に示す。なお、図1において、縦軸は残留抵抗比、横軸は加熱経過時間を示す。(測定対象の送電線試料による残留抵抗比) 上記と同じ材質、種類、サイズの測定対象の送電線試料(経年:22年)を用いて、上記と同様の手順で、残留抵抗比Xtとして、31.86を得た。(熱履歴、及び余寿命の測定) 図1の縦軸にXtを配し、データとの交点を求め、そこから対応する加熱経過時間を求めると、加熱経過時間Ttとして160時間が得られた。400時間との差(400−Tt)が、余寿命であり、余寿命は240時間(120℃)であることがわかる。熱履歴による劣化の程度は、{(Xt−X0)/(X400−X0)}×100%で求め、当初より65%劣化が進行していることが分かる。 図1を用いることにより、直接的に、その加熱経過時間(履歴時間)及び余寿命を判定できるため、本方法を用いた判定は、簡便で有用な方法である。 また、種類の異なる送電線毎に、さらに同じ種類の送電線であっても、残留抵抗比に影響を及ぼしやすい不純物量(Fe、Si等)が異なる送電線毎に、予めマスターカーブを作成して、データベース化しておくことにより、測定試料に対応するマスターカーブを迅速に選定できるため、極めて容易に、測定試料の熱劣化の程度を推定することができる。残留抵抗比と加熱経過時間との関係を示す図である。 測定対象と同じ材質、種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱前後における各残留抵抗比を測定し、得られた各残留抵抗比と、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比とを用いて、前記測定対象送電線の熱履歴の状況を測定する送電線の熱履歴測定方法であって、 前記熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする送電線の熱履歴測定方法。 測定対象と同じ材質、種類の送電線であって、熱履歴が加えられていない試料に、一定温度で所定時間の熱履歴を加えて、加熱前後における各残留抵抗比を測定し、得られた各残留抵抗比と、測定対象の送電線から得られた試料の残留抵抗比とを用いて、前記測定対象送電線の熱履歴の状況を測定する送電線の熱履歴測定方法であって、 前記熱履歴が加えられていない試料として、測定対象の送電線に接続されているが、実質的に電気が流れず、このため熱履歴を受けない箇所から採取した試料を用いることを特徴とする送電線の熱履歴測定方法。


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