生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_タイヤのグリップ特性の評価方法
出願番号:2007216420
年次:2009
IPC分類:B60C 19/00,C08K 3/04,C08L 21/00,G01M 17/02,G01N 19/00


特許情報キャッシュ

中北 一誠 国澤 鉄也 JP 2009046088 公開特許公報(A) 20090305 2007216420 20070822 タイヤのグリップ特性の評価方法 住友ゴム工業株式会社 000183233 朝日奈 宗太 100065226 中北 一誠 国澤 鉄也 B60C 19/00 20060101AFI20090206BHJP C08K 3/04 20060101ALI20090206BHJP C08L 21/00 20060101ALI20090206BHJP G01M 17/02 20060101ALI20090206BHJP G01N 19/00 20060101ALI20090206BHJP JPB60C19/00 ZC08K3/04C08L21/00G01M17/02 BG01N19/00 A 2 1 OL 8 4J002 4J002AC001 4J002AC011 4J002AC031 4J002AC081 4J002DA036 4J002FD016 4J002FD150 4J002GN01 本発明は、ゴム組成物の特性、さらには組成からタイヤのグリップ特性を単回帰分析により評価する方法に関する。本発明によれば、精度を落とさずに実験数を減らすことができる。 タイヤのグリップ力はタイヤトレッドゴムの凝着摩擦とヒステリシス摩擦によって生ずるが、これらの摩擦を考慮してタイヤトレッドゴム組成物の物性からグリップ特性を相関付けようとすると、2つの式による重回帰分析となり、実験数を多く必要とする。 ところでタイヤのグリップ特性をタイヤのトレッドを形成するゴム組成物の物性から単回帰式で評価することは、すでに提案されている(特許文献1)。 特許文献1では、トレッドゴムの損失正接をtanδとし、貯蔵弾性率をE’としたとき、グリップ力KをK={tanδ/(E’)1/3}×104の関係式で表わし、左右のタイヤのグリップ力に変化をつけて旋回時の安定性を向上させることが提案されている。 しかし、tanδとE’とは温度や歪条件によっては相関しやすく(すなわち、{tanδ/(E’)1/3}が定数になってしまう)、tanδとE’を用いてグリップ特性を単回帰分析することは困難であるが、特許文献1ではどのような組成のゴム組成物を選定し実験を進めるかは示唆されておらず、特許文献1によって、計画的に実験を行い、グリップ特性をゴム組成物の物性から単回帰分析することは困難である。 本発明者らは、直行配列表を用いて、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成のゴム組成物を直行配列表を用いて選定し、それらのtanδ/E*nを変数とするとき、グリップ特性が単回帰式で表現でき、精度を落とさずに少ない実験数でタイヤのグリップ特性を評価できることを見出し、本発明を完成した。特開平8−132823号公報 本発明は、タイヤのトレッド用ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*から精度を落とさずに少ない実験数でタイヤのグリップ特性を評価できる方法を提供することを目的とする。 すなわち本発明は、ゴム組成物を含むトレッドを有するタイヤにおいて、直行配列表を用いて、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成のゴム組成物を作製し、該ゴム組成物のtanδ/E*nを変数とする単回帰式によりタイヤのグリップ特性を分析するグリップ特性の評価方法に関する。 かかる評価方法において、ゴム組成物におけるパラメータとして、(1)ゴム成分の種類または配合量、(2)カーボンブラックの種類または配合量、および(3)硫黄の配合量および/または加硫促進剤の種類と配合量を選択し、これらのパラメータで直行配列表を組み、この実験計画表に従って、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用ゴム組成物を作製し、該実験用ゴム組成物のtanδおよびE*nのデータを取得し、さらに該実験用ゴム組成物をトレッドとして有するタイヤの実走行試験によりグリップ特性データを取得し、前記関係:tanδ/E*nを変数とするグリップ特性の単回帰式を導き、この単回帰式に従って該実験用ゴム組成物の組成からタイヤのグリップ特性を分析することが好ましい。 本発明によれば、タイヤのトレッド用ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*から精度を落とさずに少ない実験数でタイヤのグリップ特性を評価できる方法を提供することができる。 本発明の特徴の1つは、トレッド用ゴム組成物のtanδ/E*nを変数とする単回帰式を利用する点にある。 トレッド用ゴム組成物の損失正接tanδはヒステリシス摩擦の指標であり、このヒステリシス摩擦はエネルギーロスと相関することからグリップ特性に関係する。 トレッド用ゴム組成物の複素弾性率E*は凝着摩擦の指標であり、接触面積さらには硬さと相関することからグリップ特性に関係する。E*は動的粘弾性試験結果から算出することができる。 nは0〜3程度の正の有理数であり、路面のあらさにより決定される。nの値が大きくなるとヒステリシス摩擦に影響を与え、値が小さくなると凝着摩擦に影響を与える。 トレッド用ゴム組成物のtanδ/E*nをグリップ特性の単回帰式の変数とする理由は、サンプル数が少ない場合でも、精度よくヒステリシス摩擦の影響と凝着摩擦の影響とを分離できるからである。 本発明のもう1つの特徴は、タイヤのグリップ特性を評価するに当たり、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用のトレッド用ゴム組成物を直行配列表から選定する点にある。直行配列表としては、L4直行配列表、L8直行配列表、L9直行配列表などが利用できるが、サンプル数が少ない点からL4直行配列表が好ましい。 損失正接tanδと複素弾性率E*がいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成を選定するための直行配列表は、つぎに示すパラメータなどを基に作成すればよい。 好ましいパラメータとしては、(1)ゴム成分の種類または配合量、(2)カーボンブラックの種類または配合量、(3)硫黄の配合量および/または加硫促進剤の種類と配合量、(4)樹脂の種類または配合量、(5)可塑剤の種類または配合量、(6)シリカの種類または配合量、などが挙げられるが、グリップ特性との相関が明確な点、タイヤトレッド用のゴム組成物の基本構成である点、物性がランダム化しやすい(たとえば、損失正接tanδと複素弾性率E*の相関が低くなる、損失正接tanδも各温度間の相関が低くなり、どの温度での相関が高いかといった点が明確になるなど)点などから、(1)〜(3)が好ましい。 ゴム成分としては特に限定されず、タイヤのトレッド用ゴム組成物として使用され得るものであればよい。たとえば天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴムなどの1種または2種以上が例示でき、なかでもNR、BR、SBRの1種または2種以上がトレッド用ゴムとして一般的である。 カーボンブラックとしては、特に限定されず、タイヤのトレッド用ゴム組成物として使用され得るものであればよい。たとえばSAF、ISAF、HAFなどが例示できる。 カーボンブラックの配合量とは、ゴム成分に対する重量部で表現する。通常、ゴム成分100重量部に対する重量部である。 硫黄の配合量とは、ゴム成分に対する重量部で表現する。通常、ゴム成分100重量部に対する重量部である。 加硫促進剤としては、特に限定されず、タイヤのトレッド用ゴム組成物として使用され得るものであればよい。たとえばN−ターシャリブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’―ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)などが例示できる。また、配合量とは、ゴム成分に対する重量部で表現する。通常、ゴム成分100重量部に対する重量部である。 これらのパラメータを使用して、直行配列表を作成する。そのとき、ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成となるように作成する。 ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成は、上記パラメータを基準にして決めればよい。 つぎに、上記(1)〜(3)のパラメータを使用した直行配列表の例を示すが、本発明はこの配列表に限定されるものではない。(直行配列表の例1) この直行配列表から、つぎの8つの配合が作製できる。(1)SBR1+カーボンブラック60重量部+硫黄1重量部(2)SBR1+カーボンブラック70重量部+硫黄1重量部(3)SBR1+カーボンブラック60重量部+硫黄2重量部(4)SBR1+カーボンブラック70重量部+硫黄2重量部(5)SBR2+カーボンブラック60重量部+硫黄1重量部(6)SBR2+カーボンブラック70重量部+硫黄1重量部(7)SBR2+カーボンブラック60重量部+硫黄2重量部(8)SBR2+カーボンブラック70重量部+硫黄2重量部 これらのパラメータで組んだ直行配列表に従い、この実験計画表に従って、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用ゴム組成物を作製する。 単回帰分析が可能であるから、実験用ゴム組成物の数は4〜8、さらには4でよい。重回帰分析だと、実験用ゴム組成物の数は10を超えるものとなる。 上記配列表の例1でL4直行配列表とすれば、たとえば、(1)、(4)、(6)および(7)の配合などを選択できる。 実験用ゴム組成物の調製、加硫は通常の方法でよく、たとえばバンバリーミキサーなどで混練し、160℃、20分間という条件で加硫する。 かくして作製した実験用ゴム組成物のtanδおよびE*のデータを取得する。 tanδおよびE*の測定はいずれも、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて行う。 こうして各実験用ゴム組成物のtanδ/E*nを求めておく。 ついで、実験用ゴム組成物をトレッドとして有するタイヤを作製し、実車による実走行試験を行い、グリップ特性データを取得する。 グリップ特性データとしては、タイヤのグリップ力に相関して変化する、たとえばサーキット(またはテストコース)の区間タイム、乾燥路面でのブレーキイングにおける停止距離、湿潤路面でのブレーキイングにおける停止距離などが好ましい。 得られたグリップ特性データ値を縦軸としtanδ/E*nの値を横軸とする(またはその逆)グラフにプロットし、単回帰式を導き出す。 導き出した単回帰式を用いれば、ゴム組成物のtanδおよびE*を測定することにより、そのゴム組成物をトレッドとするタイヤのグリップ特性が評価できる。 本発明の評価方法は、2輪車のタイヤ、4輪車のタイヤのいずれにおいても行うことができる。 実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。実施例1 実験用ゴム組成物として、前記直行配列表の例1のうち、(1)、(4)、(6)および(7)の配合を選択し、他の成分を表2の処方(重量部)で配合してゴム組成物A〜Dをそれぞれ作製した。 なお、表2中の各成分は、以下のとおりである。SBR1:SBR 1712(住友化学工業(株)製のSBR)SBR2:SBR HS1(住友化学工業(株)製のSBR)カーボンブラック:三菱化学(株)製のN220硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエース0355老化防止剤:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N‘−フェニル−p−フェニレンジアミン)ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「椿」酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号オイル:出光興産(株)製のNH−60加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) これらの各ゴム組成物A〜Dについて、n=0.8、測定温度75℃、初期歪み20%、振幅歪5%、周波数20Hzにて伸長モードでtanδおよびE*を測定し、tanδ/E*0.8を求めた。結果を表3に示す。tanδおよびE*はゴム組成物Aの測定値を1としたときの指数評価としている。 ついで、各実験用ゴム組成物A〜Dをトレッドとして有するタイヤA〜D(205/60R15)を作製し、これらのタイヤA〜Dを装着した実車(排気量2000ccの4輪車)による乾燥路面(JARIのブレーキ路)での制動試験を行い、停止距離(m)を計った。結果を表3に示す。 得られた各データを、停止距離(m)をX軸としtanδ/E*0.8の値をY軸とするグラフにプロットしたところ(図1)、停止距離(グリップ力)とtanδ/E*0.8がよく相関することが分かった。▲はタイヤA、●はタイヤB、■はタイヤC、◆はタイヤDである。 このデータから単回帰式II: tanδ/E*0.8=−0.0492×停止距離(m)+3.0819を導き出した(相関係数をRとすると、R2=0.9776)。実施例1で測定した停止距離をX軸としtanδ/E*0.8の値をY軸とするグラフであって、停止距離とtanδ/E*0.8が相関していることを示すグラフである。ゴム組成物を含むトレッドを有するタイヤにおいて、直行配列表を用いて、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成のゴム組成物を作製し、該ゴム組成物のtanδ/E*nを変数とする単回帰式によりタイヤのグリップ特性を分析するグリップ特性の評価方法。ゴム組成物におけるパラメータとして、(1)ゴム成分の種類または配合量、(2)カーボンブラックの種類または配合量、および(3)硫黄の配合量および/または加硫促進剤の種類と配合量を選択し、これらのパラメータで直行配列表を組み、この実験計画表に従って、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用ゴム組成物を作製し、該実験用ゴム組成物のtanδおよびE*nのデータを取得し、さらに該実験用ゴム組成物をトレッドとして有するタイヤの実走行試験によりグリップ特性データを取得し、前記関係:tanδ/E*nを変数とするグリップ特性の単回帰式を導き、この単回帰式に従って該実験用ゴム組成物の組成からタイヤのグリップ特性を分析する請求項1記載の評価方法。 【課題】タイヤのトレッド用ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*から少ない実験数で精度を落とすことなくタイヤのグリップ特性を評価できる方法を提供する。【解決手段】ゴム組成物を含むトレッドを有するタイヤにおいて、直行配列表を用い、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成のゴム組成物を作製し、該ゴム組成物のtanδ/E*nを変数とする単回帰式によりタイヤのグリップ特性を分析するグリップ特性の評価方法。【選択図】図1


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る

特許公報(B2)_タイヤのグリップ特性の評価方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_タイヤのグリップ特性の評価方法
出願番号:2007216420
年次:2012
IPC分類:B60C 19/00,C08K 3/04,C08L 21/00,G01M 17/02,G01N 19/00


特許情報キャッシュ

中北 一誠 国澤 鉄也 JP 5091587 特許公報(B2) 20120921 2007216420 20070822 タイヤのグリップ特性の評価方法 住友ゴム工業株式会社 000183233 河村 洌 100098464 藤森 洋介 100149630 谷 征史 100154449 中北 一誠 国澤 鉄也 20121205 B60C 19/00 20060101AFI20121115BHJP C08K 3/04 20060101ALI20121115BHJP C08L 21/00 20060101ALI20121115BHJP G01M 17/02 20060101ALI20121115BHJP G01N 19/00 20060101ALI20121115BHJP JPB60C19/00 ZC08K3/04C08L21/00G01M17/02 BG01N19/00 A B60C 1/00〜 19/12 C08K 3/04 C08L 21/00 G01M 17/02 G01N 19/00 特開2003−213044(JP,A) 特開2007−203809(JP,A) 特開2006−248440(JP,A) 特開平09−150610(JP,A) 特開2003−291610(JP,A) 特開2003−221466(JP,A) 特開平10−315706(JP,A) 特開平03−186402(JP,A) 特開平07−108805(JP,A) 特開平09−151279(JP,A) 特開平04−278807(JP,A) 2 2009046088 20090305 8 20100608 鎌田 哲生 本発明は、ゴム組成物の特性、さらには組成からタイヤのグリップ特性を単回帰分析により評価する方法に関する。本発明によれば、精度を落とさずに実験数を減らすことができる。 タイヤのグリップ力はタイヤトレッドゴムの凝着摩擦とヒステリシス摩擦によって生ずるが、これらの摩擦を考慮してタイヤトレッドゴム組成物の物性からグリップ特性を相関付けようとすると、2つの式による重回帰分析となり、実験数を多く必要とする。 ところでタイヤのグリップ特性をタイヤのトレッドを形成するゴム組成物の物性から単回帰式で評価することは、すでに提案されている(特許文献1)。 特許文献1では、トレッドゴムの損失正接をtanδとし、貯蔵弾性率をE’としたとき、グリップ力KをK={tanδ/(E’)1/3}×104の関係式で表わし、左右のタイヤのグリップ力に変化をつけて旋回時の安定性を向上させることが提案されている。 しかし、tanδとE’とは温度や歪条件によっては相関しやすく(すなわち、{tanδ/(E’)1/3}が定数になってしまう)、tanδとE’を用いてグリップ特性を単回帰分析することは困難であるが、特許文献1ではどのような組成のゴム組成物を選定し実験を進めるかは示唆されておらず、特許文献1によって、計画的に実験を行い、グリップ特性をゴム組成物の物性から単回帰分析することは困難である。 本発明者らは、直行配列表を用いて、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成のゴム組成物を直行配列表を用いて選定し、それらのtanδ/E*nを変数とするとき、グリップ特性が単回帰式で表現でき、精度を落とさずに少ない実験数でタイヤのグリップ特性を評価できることを見出し、本発明を完成した。特開平8−132823号公報 本発明は、タイヤのトレッド用ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*から精度を落とさずに少ない実験数でタイヤのグリップ特性を評価できる方法を提供することを目的とする。 すなわち本発明は、ゴム組成物を含むトレッドを有するタイヤにおいて、直行配列表を用いて、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成のゴム組成物を作製し、該ゴム組成物のtanδ/E*nを変数とする単回帰式によりタイヤのグリップ特性を分析するグリップ特性の評価方法に関する。 かかる評価方法において、ゴム組成物におけるパラメータとして、(1)ゴム成分の種類または配合量、(2)カーボンブラックの種類または配合量、および(3)硫黄の配合量および/または加硫促進剤の種類と配合量を選択し、これらのパラメータで直行配列表を組み、この実験計画表に従って、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用ゴム組成物を作製し、該実験用ゴム組成物のtanδおよびE*nのデータを取得し、さらに該実験用ゴム組成物をトレッドとして有するタイヤの実走行試験によりグリップ特性データを取得し、前記関係:tanδ/E*nを変数とするグリップ特性の単回帰式を導き、この単回帰式に従って該実験用ゴム組成物の組成からタイヤのグリップ特性を分析することが好ましい。 本発明によれば、タイヤのトレッド用ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*から精度を落とさずに少ない実験数でタイヤのグリップ特性を評価できる方法を提供することができる。 本発明の特徴の1つは、トレッド用ゴム組成物のtanδ/E*nを変数とする単回帰式を利用する点にある。 トレッド用ゴム組成物の損失正接tanδはヒステリシス摩擦の指標であり、このヒステリシス摩擦はエネルギーロスと相関することからグリップ特性に関係する。 トレッド用ゴム組成物の複素弾性率E*は凝着摩擦の指標であり、接触面積さらには硬さと相関することからグリップ特性に関係する。E*は動的粘弾性試験結果から算出することができる。 nは0〜3程度の正の有理数であり、路面のあらさにより決定される。nの値が大きくなるとヒステリシス摩擦に影響を与え、値が小さくなると凝着摩擦に影響を与える。 トレッド用ゴム組成物のtanδ/E*nをグリップ特性の単回帰式の変数とする理由は、サンプル数が少ない場合でも、精度よくヒステリシス摩擦の影響と凝着摩擦の影響とを分離できるからである。 本発明のもう1つの特徴は、タイヤのグリップ特性を評価するに当たり、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用のトレッド用ゴム組成物を直行配列表から選定する点にある。直行配列表としては、L4直行配列表、L8直行配列表、L9直行配列表などが利用できるが、サンプル数が少ない点からL4直行配列表が好ましい。 損失正接tanδと複素弾性率E*がいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成を選定するための直行配列表は、つぎに示すパラメータなどを基に作成すればよい。 好ましいパラメータとしては、(1)ゴム成分の種類または配合量、(2)カーボンブラックの種類または配合量、(3)硫黄の配合量および/または加硫促進剤の種類と配合量、(4)樹脂の種類または配合量、(5)可塑剤の種類または配合量、(6)シリカの種類または配合量、などが挙げられるが、グリップ特性との相関が明確な点、タイヤトレッド用のゴム組成物の基本構成である点、物性がランダム化しやすい(たとえば、損失正接tanδと複素弾性率E*の相関が低くなる、損失正接tanδも各温度間の相関が低くなり、どの温度での相関が高いかといった点が明確になるなど)点などから、(1)〜(3)が好ましい。 ゴム成分としては特に限定されず、タイヤのトレッド用ゴム組成物として使用され得るものであればよい。たとえば天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴムなどの1種または2種以上が例示でき、なかでもNR、BR、SBRの1種または2種以上がトレッド用ゴムとして一般的である。 カーボンブラックとしては、特に限定されず、タイヤのトレッド用ゴム組成物として使用され得るものであればよい。たとえばSAF、ISAF、HAFなどが例示できる。 カーボンブラックの配合量とは、ゴム成分に対する重量部で表現する。通常、ゴム成分100重量部に対する重量部である。 硫黄の配合量とは、ゴム成分に対する重量部で表現する。通常、ゴム成分100重量部に対する重量部である。 加硫促進剤としては、特に限定されず、タイヤのトレッド用ゴム組成物として使用され得るものであればよい。たとえばN−ターシャリブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’―ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DCBS)、ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)などが例示できる。また、配合量とは、ゴム成分に対する重量部で表現する。通常、ゴム成分100重量部に対する重量部である。 これらのパラメータを使用して、直行配列表を作成する。そのとき、ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成となるように作成する。 ゴム組成物の損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成は、上記パラメータを基準にして決めればよい。 つぎに、上記(1)〜(3)のパラメータを使用した直行配列表の例を示すが、本発明はこの配列表に限定されるものではない。(直行配列表の例1) この直行配列表から、つぎの8つの配合が作製できる。(1)SBR1+カーボンブラック60重量部+硫黄1重量部(2)SBR1+カーボンブラック70重量部+硫黄1重量部(3)SBR1+カーボンブラック60重量部+硫黄2重量部(4)SBR1+カーボンブラック70重量部+硫黄2重量部(5)SBR2+カーボンブラック60重量部+硫黄1重量部(6)SBR2+カーボンブラック70重量部+硫黄1重量部(7)SBR2+カーボンブラック60重量部+硫黄2重量部(8)SBR2+カーボンブラック70重量部+硫黄2重量部 これらのパラメータで組んだ直行配列表に従い、この実験計画表に従って、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用ゴム組成物を作製する。 単回帰分析が可能であるから、実験用ゴム組成物の数は4〜8、さらには4でよい。重回帰分析だと、実験用ゴム組成物の数は10を超えるものとなる。 上記配列表の例1でL4直行配列表とすれば、たとえば、(1)、(4)、(6)および(7)の配合などを選択できる。 実験用ゴム組成物の調製、加硫は通常の方法でよく、たとえばバンバリーミキサーなどで混練し、160℃、20分間という条件で加硫する。 かくして作製した実験用ゴム組成物のtanδおよびE*のデータを取得する。 tanδおよびE*の測定はいずれも、レオメトリックス社製の粘弾性測定装置を用いて行う。 こうして各実験用ゴム組成物のtanδ/E*nを求めておく。 ついで、実験用ゴム組成物をトレッドとして有するタイヤを作製し、実車による実走行試験を行い、グリップ特性データを取得する。 グリップ特性データとしては、タイヤのグリップ力に相関して変化する、たとえばサーキット(またはテストコース)の区間タイム、乾燥路面でのブレーキイングにおける停止距離、湿潤路面でのブレーキイングにおける停止距離などが好ましい。 得られたグリップ特性データ値を縦軸としtanδ/E*nの値を横軸とする(またはその逆)グラフにプロットし、単回帰式を導き出す。 導き出した単回帰式を用いれば、ゴム組成物のtanδおよびE*を測定することにより、そのゴム組成物をトレッドとするタイヤのグリップ特性が評価できる。 本発明の評価方法は、2輪車のタイヤ、4輪車のタイヤのいずれにおいても行うことができる。 実施例にもとづいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。実施例1 実験用ゴム組成物として、前記直行配列表の例1のうち、(1)、(4)、(6)および(7)の配合を選択し、他の成分を表2の処方(重量部)で配合してゴム組成物A〜Dをそれぞれ作製した。 なお、表2中の各成分は、以下のとおりである。SBR1:SBR 1712(住友化学工業(株)製のSBR)SBR2:SBR HS1(住友化学工業(株)製のSBR)カーボンブラック:三菱化学(株)製のN220硫黄:軽井沢硫黄(株)製の粉末硫黄ワックス:日本精鑞(株)製のオゾエース0355老化防止剤:住友化学工業(株)製のアンチゲン6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N‘−フェニル−p−フェニレンジアミン)ステアリン酸:日本油脂(株)製のステアリン酸「椿」酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の亜鉛華1号オイル:出光興産(株)製のNH−60加硫促進剤:大内新興化学工業(株)製のノクセラーCZ(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド) これらの各ゴム組成物A〜Dについて、n=0.8、測定温度75℃、初期歪み20%、振幅歪5%、周波数20Hzにて伸長モードでtanδおよびE*を測定し、tanδ/E*0.8を求めた。結果を表3に示す。tanδおよびE*はゴム組成物Aの測定値を1としたときの指数評価としている。 ついで、各実験用ゴム組成物A〜Dをトレッドとして有するタイヤA〜D(205/60R15)を作製し、これらのタイヤA〜Dを装着した実車(排気量2000ccの4輪車)による乾燥路面(JARIのブレーキ路)での制動試験を行い、停止距離(m)を計った。結果を表3に示す。 得られた各データを、停止距離(m)をX軸としtanδ/E*0.8の値をY軸とするグラフにプロットしたところ(図1)、停止距離(グリップ力)とtanδ/E*0.8がよく相関することが分かった。▲はタイヤA、●はタイヤB、■はタイヤC、◆はタイヤDである。 このデータから単回帰式II: tanδ/E*0.8=−0.0492×停止距離(m)+3.0819を導き出した(相関係数をRとすると、R2=0.9776)。実施例1で測定した停止距離をX軸としtanδ/E*0.8の値をY軸とするグラフであって、停止距離とtanδ/E*0.8が相関していることを示すグラフである。ゴム組成物を含むトレッドを有するタイヤにおいて、直行配列表を用いて、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成のゴム組成物を作製し、該ゴム組成物のtanδ/E*nを変数とする単回帰式によりタイヤのグリップ特性を分析するグリップ特性の評価方法。ゴム組成物におけるパラメータとして、(1)ゴム成分の種類または配合量、(2)カーボンブラックの種類または配合量、および(3)硫黄の配合量および/または加硫促進剤の種類と配合量を選択し、これらのパラメータで直行配列表を組み、この実験計画表に従って、損失正接tanδと複素弾性率E*とがいずれの温度および振幅歪においても互いに相関しない組成の実験用ゴム組成物を作製し、該実験用ゴム組成物のtanδおよびE*nのデータを取得し、さらに該実験用ゴム組成物をトレッドとして有するタイヤの実走行試験によりグリップ特性データを取得し、前記関係:tanδ/E*nを変数とするグリップ特性の単回帰式を導き、この単回帰式に従って該実験用ゴム組成物の組成からタイヤのグリップ特性を分析する請求項1記載の評価方法。


ページのトップへ戻る

生命科学データベース横断検索へ戻る