タイトル: | 特許公報(B2)_突然変異を起こした細胞が光る実験動物の作製とその利用 |
出願番号: | 2007212031 |
年次: | 2014 |
IPC分類: | C12N 15/09,C12N 5/10,A01K 67/027,C12Q 1/02,G01N 21/76 |
野田 朝男 中村 典 JP 5525683 特許公報(B2) 20140418 2007212031 20070816 突然変異を起こした細胞が光る実験動物の作製とその利用 公益財団法人 放射線影響研究所 508259216 平木 祐輔 100091096 藤田 節 100118773 野田 朝男 中村 典 JP 2006221851 20060816 20140618 C12N 15/09 20060101AFI20140529BHJP C12N 5/10 20060101ALI20140529BHJP A01K 67/027 20060101ALI20140529BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20140529BHJP G01N 21/76 20060101ALI20140529BHJP JPC12N15/00 AC12N5/00 102A01K67/027C12Q1/02G01N21/76 C12N 15/09 A01K 67/027 C12N 5/10 C12Q 1/02 G01N 21/76 CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN) JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII) GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq PubMed CiNii WPIDS(STN) 日本放射線影響学会大会講演要旨集,2003年10月 6日,Vol. 46th,p. 142, 2-P-086 日本放射線影響学会大会講演要旨集,2006年,Vol. 49,p. 136, 137 6 2008067696 20080327 10 20100723 太田 雄三 本発明は、突然変異をおこした細胞を可視化できるよう蛍光タンパク質をノックインした細胞に関する。インビボ突然変異を測定する従来の技術はlacZあるいはlacI遺伝子を持つファージベクターを導入したトランスジェニックマウス(MutaMouseやBigBlueマウス)を利用したものである(非特許文献1)。これらは標的遺伝子が小さくて外来性であり、システム上の制限から個体を構成する細胞、組織あたり突然変異頻度が求められないとか、小さな突然変異しか検出できない、あるいは変異を検出するためには動物を殺して組織からDNAを抽出してファージベクターに組み込んで大腸菌に形質導入しなければならないといった問題があった。一方、細胞内在性の遺伝子の突然変異を検出する系は生体にとって重要な遺伝子を対象とすることができるので検査系としては理想的である(非特許文献2)。しかし、invivo突然変異を検出できる組織が対象とする遺伝子の発現と検出系の有無に大きく依存するため、遺伝子毎に限られるという問題があった。近年、相同塩基配列間の組換えによる欠失変異を指標とした発癌物質のスクリーニング系が酵母などで作成されている(非特許文献3、特許文献1)が、これも直接には動物個体に応用することができない。ほ乳動物では、mousepink eyed unstable 遺伝子座が相同塩基配列間の組換えによる欠失変異を指標とした発癌物質のスクリーニング系として考案されている。しかし、このシステムはマウスの毛色や網膜細胞で起こる突然変異しか検出できないといった問題があった(特許文献2)。米国特許第5792633号米国特許第6264915号Katoh et al., Mutat Res. 341:17-28, 1994, Barnett et al., Environ MolMutagen. 40:251-7, 2002Shiestl, et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:4576-4581,1997, Tao etal., Mutagenesis. 9:187-91, 1994, Kyoizumi, et al., Mutat Res. 214:215-22, 1989Yeast DEL assay; Galli et al., Genetics149:1235-1250,1998放射線や環境変異源、さらには医薬品や食品の生体への影響をこれまでより正確に測定するため、個体内で組織細胞が起こす突然変異を正確に可視的に測定できる系が必要とされている。しかも特定の組織に片寄ることなく全ての組織細胞の突然変異が測定できる実験動物が必要である。 本発明者は上記問題に着目し、構造遺伝子の重複、あるいは部分重複と、その重複部分の3'端にインフレームで蛍光タンパク質をコードする遺伝子部分を結合させることにより、細胞内に突然変異がおこった際に、細胞自身が蛍光を発して検出できることを見出し、本発明を完成させるに至った。 すなわち本発明は、[1]下記の遺伝子を5'側から下記の順に連結したことを特徴とするノックインターゲットベクター、(1)構造遺伝子の部分遺伝子配列であって配列の長さが1kb以上である遺伝子配列(2)マーカー遺伝子配列(3)前記(1)と同一の部分遺伝子配列を含む構造遺伝子の部分遺伝子配列であって、3'端にインフレームで蛍光タンパク質をコードする遺伝子部分を結合させた遺伝子配列(4)構造遺伝子の下流の遺伝子を1kb以上含む部分遺伝子配列[2]前記[1]記載のベクターを用いた遺伝子部分重複・GFPノックイン細胞の作製方法、[3]前記[2]記載の方法を用いて作製したノックイン細胞、[4]前記[2]記載の方法を用いて作製したノックイン非ヒト哺乳動物、[5]前記[3]記載の細胞を用いて医薬品・食品、放射線・環境変異源などの生体への影響を突然変異が起これば細胞が光る事により測定する方法、からなる。 細胞自身が蛍光を発するので、個体から細胞を取り出したり、特殊な操作を行わなくても簡便に突然変異を検出することができる。体内の各種組織でどのように突然変異細胞が誕生してどのような運命をたどっているのかこれまで情報はほとんどない。そのためインビボシステムは環境と個体の関係、各種疾患と突然変異の関係を体を構成する全細胞について検査することができるため応用範囲が広い。例えば、本願発明の動物個体や細胞を種々の薬剤に暴露した際の突然変異頻度の増加を測定することにより、薬剤による遺伝子の突然変異による癌化のリスクを予想することができ、より危険性の少ない薬剤の開発が可能となる。また、紫外線やX線等の照射により突然変異が増加することが知られているが、本願発明の個体や細胞に放射線照射を行い、突然変異の頻度を測定することにより、放射線被ばくによる突然変異(もしくは突然変異による癌化)の予防・治療薬の開発も可能となる。放射線や環境変異源の暴露のみならず、食品摂取や大気などから受ける影響をヒトを含む動物個体で測定すること、特に遺伝影響を個体レベルで測定できる実験動物はこれまで良いものがなかったため、本願発明で得られる動物はあらゆる産業において作業環境の長期的リスク評価に用いることができる。 以下、本発明の構成について詳述する。[1]問題を解決するためには生体内で突然変異を起こした細胞が容易に識別できること、その変異細胞が生き残って他の細胞と同様に機能し続けた場合に、できれば生きたまま取り出して増殖させ、突然変異の構造を解析できればよいということになる。細胞としては、哺乳動物由来の細胞が好ましく、より好ましくは、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウシ、サルおよび個体から取り出したヒト由来の細胞である。[2]変異細胞を生きたまま観察する方法としては蛍光タンパク質遺伝子の導入がある。蛍光タンパク質としては、GFP、HcRed、DsRedなどが例示できる。変異のターゲット遺伝子としては、劣性致死性の遺伝子以外が好ましい。変異細胞が生きて光って欲しいからである。失活変異でも細胞致死に至らないこと、生体内でユビキタスに発現している遺伝子である事が望ましい。具体的には、HPRT、APRTなどが例示できる。[3]ターゲット遺伝子内に重複構造を持ち込み、この重複からの復帰変異を突然変異検出の系として用いると従来の突然変異検出系よりも効率よく変異を検出できる。[4]重複遺伝子の3'端にインフレームで蛍光タンパク質をコードする遺伝子部分を導入すれば、重複からの復帰変異に伴ってターゲット遺伝子と蛍光タンパク質遺伝子の融合タンパク質が発現して細胞はターゲット遺伝子活性の復活と共に光り出す。[5]ターゲット遺伝子を重複させ、その3'端にインフレームで蛍光タンパク質をコードする遺伝子部分を結合したターゲットベクターをES細胞に導入して細胞内在性遺伝子をこのベクターで置き換えたノックインマウスを作製する。[6]当該マウスを用いて、医薬品・食品、放射線・環境変異源のインビボ遺伝影響測定系を確立する。以下に本願発明のターゲットベクターの構築例を示す。(1)構造遺伝子の一部分を含む部分遺伝子配列(以下、部分配列という)をPCR等で増幅する。あるいは、ゲノムDNAから直接BACクローン等を用いて単離することもできる。当該部分遺伝子配列の長さは1kb以上が好ましく、10kb以下がより好ましい。(2)(1)で得られた部分遺伝子配列に終始コドンが含まれている場合は、終始コドンを削り、蛍光タンパク質遺伝子のオープンリーディングフレームを当該遺伝子とコドンをあわせて(in-frameとなるように)繋げる。(3)(1)で得られた部分遺伝子配列の部分遺伝子配列を再度PCR等で増幅する。当該部分遺伝子配列の長さは1kb以上が好ましく、10kb以下がより好ましい。(4)(3)で得られた部分遺伝子配列の3’端にマーカー遺伝子発現ユニットを繋げる。(5)構造遺伝子の下流のゲノム塩基配列をPCR等で増幅する。当該部分遺伝子配列の長さは1kb以上が好ましく、3kb以下がより好ましい。また、構造遺伝子から下流3kb以内に存在する配列が好ましい。(6)(2)、(4)、(5)で得られた配列が5'側から(4)、(2)、(5)と並ぶように連結し、プラスミドに挿入することによりターゲットベクターを構築することができる。以下に組み換え細胞の作製・選抜例を示す。前記ターゲットベクターを定法によりES細胞に導入する。ターゲットベクターが目的とする遺伝子座に導入された細胞を得るために、マーカーの発現やターゲットされた遺伝子の機能欠損を指標にする。 [実施例1] マウス由来の細胞へのHPRT遺伝子の導入ほ乳動物遺伝子の突然変異の例として、マウスX染色体上のHPRT (Hypoxanthine phosphoribosyltransferase) 遺伝子を用いる。しかし本発明はHPRT遺伝子以外の多くの遺伝子にも応用することが可能である。HPRT構造遺伝子領域はNCBI,EMBL,SAKURA等の核酸塩基配列データベースにBX64962などとして登録されている。この遺伝子は核酸生合成系においてサルベージ経路で最も重要な働きをしている遺伝子であり、生体内の全ての組織細胞で発現していると考えられている。この遺伝子が突然変異を起こして機能欠失が起こった細胞は6チオグアニン(6TG)耐性となるため、in vitroの細胞培養法によっても変異を検出できることが知られている。一方、HPRT遺伝子が機能している細胞はHAT(Hypoxanthine Aminopterin Thymidine) 含有培地により選択することができることも知られている。HPRT遺伝子の機能欠損を伴うような突然変異はヒトではレッシュナイハン症候群を引き起こすが、マウスでは特段の病的症状が現れないことがHPRTノックアウトマウスの研究より明らかとなっている。マウスでは核酸生合成のサルベージ経路依存性が小さいからである。本発明では、マウスHPRT構造遺伝子のうち、エクソン6からエクソン9までの遺伝子部分を重複させ、その重複部分の3'端にインフレームでGFP(Green Fluorescent Protein) 遺伝子のオープンリーディングフレームを結合させる例を示す。1. ターゲットベクターの作成:(1)マウスゲノムDNAよりHPRTエクソン6からエクソン9までの約8.5kbをPCR法により単離し塩基配列の確認をおこなう。具体的には129マウス由来のゲノムDNAをマウスHPRT構造遺伝子エクソン5の下流270塩基の位置に対応する塩基配列を用いたPCRプライマーATGTGTTTTGCTGCTCATGA(配列番号1)およびエクソン9中の終止コドン(TAA)直前の位置に対応する逆方向プライマーCTTTGTATTTGGCTTTTCCA(配列番号2)を用いてPCR増幅する事により、エクソン6からエクソン9部分を含む8.5kb領域DNA断片を単離する。このPCR増幅は宝酒造のLA-Taq polymeraseが最も効率が良く、増幅されたDNAの塩基配列も正確であることが確認できた。(2)この8.5kbDNAをInvitrogen社のpCR2.1TOPOベクターにTAクローニングする。結果として作製されたpCR-8.5kbプラスミドを精製し、8.5kbの挿入DNA断片を制限酵素EcoRIで消化することにより単離し、Eco RI消化されたGFPベクタープラスミド(pQBI25-fNI, 和光純薬)とT4 リガーゼを用いて結合した。その結果生じたプラスミドpQBI-mhprt8.5-1は、マウスHPRT遺伝子の終止コドンを削った位置からGFP遺伝子の開始コドンが続き、もしHPRT遺伝子が正常に発現・翻訳された場合、HPRT蛋白質のC末端にGFP蛋白質が融合蛋白質として連なることになる。プラスミドpQBI-mhprt8.5を鋳型として、このマウスHPRTDNAの5'端とGFP発現ユニットの3'端(polyA signalの3'端)領域を再度LA-Taqを用いて増幅する。この場合は増幅DNA端はSal I切断塩基配列をつけてある。プライマー塩基配列は、GTCGACATGTGTTTTGCTGCTCATGA(配列番号3), GTCGACTATTGTCTTCCCAATCCTCC(配列番号4)である。約9.5Kbの増幅DNA断片をpTA2ベクター(東洋紡)にTAクローニングして塩基配列の正確性を確認した。生じたプラスミドpTA-8.5GFP#12をSalIにて消化し、9.5Kb のSal I DNA 断片としてHPRT-GFP結合体を単離した。(3)再度プラスミドpQBI-mhprt8.5を鋳型としてマウスHPRTDNAのうちのエクソン6からエクソン8までのDNA領域(7.8Kb)をPCR増幅する。この場合のPCRプライマーの両端にはBam HIで消化される塩基配列を付加した。プライマー塩基配列は以下である。GGATCCATGTGTTTTGCTGCTCATGA(配列番号5), GGATCCCAAATCCCTGAAGTACTCAT(配列番号6)。 増幅された7.8Kb DNAをpTA2ベクターにTAクローニングしてpTA-Left arm#12と名付けて塩基配列の確認を行った。その後、Bam HI消化して7.8 Kb のDNA断片を単離した。(4)プラスミドpMC1-neo-PA(Stratagene社)からネオマイシン耐性遺伝子発現ユニットをXho IとBam HI消化により単離してプラスミドpBluescript II (Stratagene 社)のEcoRV部位にDNAリガーゼを用いて挿入したプラスミド pBS-neoを作成した。pBS-neoをBam HI 消化して、(3)で得られた7.8 Kb DNAをリガーゼを用いて挿入した。正方向に7.8Kbが挿入されたプラスミドをpBS-neo-loxP-7.8#6とした。(5)プラスミドpBS-neo-loxP-7.8#6をSalIにて消化した後に、(2)で得られた9.5 KbのDNAをリガーゼにて結合した。正方向に結合されたプラスミドを確認してpBS-neo-loxP-7.8-8.5GFP#17とした。(6)マウスゲノムDNAよりHPRT構造遺伝子の3’端の下流域約2.3KbをPCR増幅にて単離した。PCRプライマーの両端にはApaIで消化される塩基配列を付加してある。プライマー塩基配列は以下の通りであり、GGGCCCTTTGGGACCAAAAGTCCTGT(配列番号7), GGGCCCCTGGGAATTGAACTCAGGAC(配列番号8)、これらはマウスHPRT遺伝子終止コドンの下流0.99Kbおよび3.3Kbに位置している。この増幅DNAを単離してpTA2ベクターにTAクローニングしてpTA2.3-2(right arm)とした。pTA2.3-21をApa Iにて消化し、2.3KbのDNA断片を単離した。(7)プラスミドpBS-neo-loxP-7.8-8.5GFP#17をApaI消化した後、(6)で得られた2.3Kb DNAをリガーゼを用いて結合した。正方向に2.3KbDNAが挿入されたプラスミドを選び出し、pBS-neo-loxP-7.8-8.5GFP2.3-2としてES細胞へのターゲットベクターとした。(8)プラスミドpBS-neo-loxP-7.8-8.5GFP2.3-2をBssHIIにて消化して約22 KbのDNAをpBSベクターから切り離した。このDNAをマウスES細胞(Funakoshiや大日本住友製薬)にエレクトロポレーション法にて導入した。導入2日後にG418選択をおこない始め、5日後からは6TGをさらに加えることにより、ES細胞の内在性HPRT遺伝子内にDNAが挿入されてHPRT機能が破壊された細胞クローンを選別した。2. マウスES細胞においてX染色体中のHPRT遺伝子とターゲットベクターのHPRT7.8Kb(left arm)およびHPRT2.3Kb(right arm)が相同組換えを起こした場合、内在性のHPRT遺伝子はエクソン6からエクソン8までが重複し、重複部分の3'端はGFP遺伝子が結合した構造となる(図1)。このES細胞(HPRT-dup-GFP細胞) はHPRT遺伝子の機能は欠損している。left armの7.8Kbがエクソン8の途中までしかなく異常なHPRT蛋白質が細胞内で合成されるからである。このES細胞はある低い頻度で重複部分に自然突然変異を起こし、重複部分が失われる(欠失型変異、図2)。これは典型的な復帰型の突然変異である。この突然変異が起こると野生型のHPRT遺伝子構造が復活し、且つHPRT−GFP融合mRNAが発現するためHPRT−GFP融合蛋白質が細胞内で産生される事になる。HPRT−GFP融合蛋白質はHPRT活性とGFP活性を保持しているため、細胞はHAT培地耐性且つGFP発光する。当該HPRT部分重複−GFPノックインES細胞を6TG(6 thioguanine) 含有培地で増殖させ、約10の5乗個ほど10cmシャーレにまきこんで6TGを除きHAT含有培地にて選択を行うと約7日でHAT耐性コロニーが数個出現する。この突然変異はES細胞クローン由来のゲノムDNAをサザンブロットあるいはPCR検査することにより確認できる。図3ではいくつかのHPRT-dup-GFP細胞DNAをPCR検査した例である。HPRT-dup-GFP細胞のHPRT遺伝子座の構造は以下のPCRにて確認できる。(1)7.8Kbのleft armが内在性HPRT遺伝子座の相同部位に挿入されていることを示す(図3A)。left arm DNAよりもさらに上流のHPRT遺伝子塩基配列とネオマイシン耐性遺伝子内の塩基配列をプライマーとしたPCRにより約7.8KbのPCR増幅DNAが確認できる。用いたプライマー塩基配列は、TAGTGAGTTTAAAGACCGAG(HPRTエクソン5の約150塩基下流) (配列番号9)、CTTCTATCGCCTTCTTGAC (ネオマイシン耐性遺伝子の終止コドンの約10塩基上流) (配列番号10)である。(2)約2.3Kbのright armが内在性HPRT遺伝子座の相同部位に挿入されていることを示す。GFP遺伝子発現ユニット内の塩基配列と、right arm DNAよりもさらに下流のHPRT遺伝子塩基配列をプライマーとしたPCRにより約2.5KbのPCR増幅DNAが確認できる(図3B)。用いたプライマー塩基配列は、CAGCAAGGGGGAGGATTGGGAAGAC(GFP遺伝子の終止コドンの約240塩基下流)(配列番号11)、GCATTTGTCACATGTCAGGT (HPRT終止コドンの約3.5Kb下流)(配列番号12)である。(3)マウスHPRT遺伝子座にGFP遺伝子が挿入されている事は、GFP遺伝子を含む約0.36Kb部分のPCR増幅により確認できる(図3B)。用いたプライマー塩基配列は、TGTCCTCTTCAAGTTGCTGG(HPRTエクソン9の180塩基上流) (配列番号13)、TTCAAGTAGACGTGATGACC (pQBI-25fN1プラスミドのEco RI部位より180塩基下流)(配列番号14)である。HAT含有培地により選択された突然変異ES細胞クローンは、相同組換えにより導入されたHPRT遺伝子部位よりもさらに上流のHPRT塩基配列とGFP遺伝子内の塩基配列とのPCR増幅により約8.6Kb DNAとして確認できる(図3C)。用いたプライマー塩基配列は、TAGTGAGTTTAAAGACCGAG (HPRTエクソン5の約150塩基下流) (配列番号15)、CCAGTAGTGCAGATGAACTT(pQBI-25fN1プラスミド中のEcoRI部位より170塩基下流、)(配列番号16)である。このPCRでは親株のHPRT-dup-GFP細胞は8.6KbDNAのPCR増幅が起こらない事も確認できる(図3C)。HPRT-dup-GFP細胞の自然突然変異頻度は約10のマイナス5乗ほどである。このコロニーを蛍光顕微鏡で観察すると全て緑色の蛍光を発しており(図4)、遺伝子型を調べると全て野生型HPRTに戻っていることが確認できる(図3C)。[実施例2]HPRT部分重複−GFPノックインマウスの作成得られたES細胞を定法(例えば、「ジーンターゲッティング」Joyner A.L著、野田哲生監訳、メディカル・サイエンス・インターナショナル社刊、1995あるいは、Capecchi.Science244:1288-1292, 1989)に従ってマウス胚(blastocyst)に注入してキメラマウスを作成することができる。キメラマウスの交配によりES細胞由来の仔を取ればHPRT-dup-GFPマウスが作成できる。実際に、キメラマウスとC57BL/6Jマウスの交配により、ES細胞由来のagouti色マウスを作成した例を示す。この場合、注入したES細胞は129Svマウス由来(agouti毛色)であるが、移植胚(blastocyst)はC57BL/6Jマウス(黒色)であるので、このキメラマウスとC57BL/6Jマウスの交配による産仔がagouti色であれば容易にES細胞由来のノックインマウスと認定できる(図5)。また、このノックインマウスがESと同一のノックインアリルを保持していることも確認できる。具体的には、GFP遺伝子発現ユニット内の塩基配列と、right arm DNAよりもさらに下流のHPRT遺伝子塩基配列をプライマーとしたPCRにより約2.5KbのPCR増幅DNAが確認できる。用いたプライマー塩基配列は、CAGCAAGGGGGAGGATTGGGAAGAC(GFP遺伝子の終止コドンの約240塩基下流)(配列番号11)、GCATTTGTCACATGTCAGGT (HPRT終止コドンの約3.5Kb下流)(配列番号12)である。図6において、レーン1-6はすべて、キメラマウスとC57BL/6Jマウスの交配により生まれたagoutiマウスであるが、#6のみオスである。ES細胞はもともとXY染色体を持つオス細胞であり、このX染色体がノックインアリルとなっているため、ES細胞由来の産仔のメスのみがノックインアリルを継承できることも確認できる(レーン7は本実験に用いたノックインES細胞)。さらに次世代ではこのノックインアリルを持つX染色体はオスにもメスにも継承できる。HPRTdup GFP細胞の作成方法を示す図である。ES細胞においてX印の位置で相同組換えを起こさせるとエクソン6からエクソン8までを含むHPRTゲノムDNAの重複が起こるHPRTdup遺伝子座に起こる欠失型突然変異を示す図である。組換えにより欠失変異(復帰変異)が起こると正常なHPRT遺伝子構造が復活し、GFPが5’端に連なる構造となるES細胞中のHPRTdup遺伝子座の構造を示す図である。復帰変異を起こすと8.6KbのPCR fragmentが検出できる(右端の写真の121-1Rev)(A) HPRTdup細胞クローンのleft arm、(B)right armとGFPの挿入、(C)復帰変異を起こした細胞のleftarm構造のPCR確認突然変異を起こしたES細胞コロニーを示す図である。重複部分の欠失変異を起こした細胞はHPRT活性が復活しHAT耐性コロニーを形成する。この細胞は蛍光顕微鏡下で緑色に光る。(A)変異細胞コロニーの光学顕微鏡、(B)蛍光顕微鏡像キメラマウスとC57BL/6Jマウスの交配により生まれたagoutiマウス(2週齢)。中央の仔マウスがagoutiマウスであり、周辺の2匹は母親マウス(C57BL/6J)である。ノックインマウスの遺伝子型確認。レーン1−6ではノックインアリルの存在が図−3B同様に確認できる。レーン6はagouti毛色を示したオスマウスであり、ノックインアリルを持つX染色体が存在しないことが分かる。 下記の(1)から(4)までの遺伝子配列を5'側から順に連結してなるDNA配列を含むことを特徴とするノックインターゲットベクター。(1)哺乳動物体内でユビキタスに発現するヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子の部分遺伝子配列であって配列の長さが1kb以上である部分遺伝子配列(2)マーカー遺伝子配列(3)前記(1)と同一の部分遺伝子配列を含む、該部分遺伝子配列から前記HPRT遺伝子の3'端までの遺伝子配列であって、該3'端にインフレームで蛍光タンパク質をコードする遺伝子が結合された遺伝子配列(4)前記HPRT遺伝子の3'端から遺伝子座の下流側1kb以上を含む遺伝子配列 請求項1に規定するDNA配列を含むノックインターゲットベクターをインビトロで細胞内に導入し、相同組換えによって該DNA配列を該細胞のゲノムにノックインすることを含む、請求項1に規定するDNA配列を含む細胞の作製方法。 請求項1に規定するDNA配列が細胞内ゲノムにノックインされて含むことを特徴とする細胞。 請求項1に規定するDNA配列が細胞内ゲノムにノックインされて含むことを特徴とする非ヒト哺乳動物。 請求項3記載の細胞又は請求項4記載の非ヒト哺乳動物に対して、変異原を与え、該細胞又は該動物の細胞において突然変異が起こったとき該細胞又は該動物の細胞が発する蛍光を測定することを含む、変異原が生体に及ぼす影響を測定する方法。 前記変異原が医薬品、食品、放射線又は環境変異原である、請求項5記載の方法。配列表