タイトル: | 公開特許公報(A)_免疫抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤が併用投与された臓器移植患者における薬物相互作用及び血中免疫抑制剤濃度変動の予測 |
出願番号: | 2007195810 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C12Q 1/68,C12N 15/09 |
乾 賢一 増田 智先 JP 2009027982 公開特許公報(A) 20090212 2007195810 20070727 免疫抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤が併用投与された臓器移植患者における薬物相互作用及び血中免疫抑制剤濃度変動の予測 東レ株式会社 000003159 国立大学法人京都大学 504132272 平木 祐輔 100091096 石井 貞次 100096183 藤田 節 100118773 乾 賢一 増田 智先 C12Q 1/68 20060101AFI20090116BHJP C12N 15/09 20060101ALI20090116BHJP JPC12Q1/68 AC12N15/00 A 14 1 OL 17 特許法第30条第1項適用申請有り 電気通信回線でのプログラム集・要旨集発表 学会名:日本薬学会第127年会(富山) 講演番号:280−pm11 電子通信回線掲載日:2007年2月1日 掲載アドレス:http://nenkai.pharm.or.jp/127/web/ 4B024 4B063 4B024AA11 4B024CA04 4B024CA05 4B024CA06 4B024CA09 4B024CA10 4B024CA12 4B024HA08 4B024HA09 4B024HA12 4B024HA14 4B063QA01 4B063QA12 4B063QA18 4B063QA20 4B063QQ42 4B063QQ53 4B063QR08 4B063QR32 4B063QR36 4B063QR42 4B063QR51 4B063QR55 4B063QR62 4B063QR66 4B063QR82 4B063QS03 4B063QS12 4B063QS16 4B063QS25 4B063QS34 4B063QS36 4B063QX02 本発明は、臓器移植患者に移植後に投与される免疫抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤(以下、「PPI」と称する)の薬物相互作用及び血中免疫抑制剤濃度変動を予測し、かつ、効能及び副作用に関して該患者に適する種類のPPIを選択するための方法に関する。より具体的には、前記予測は、ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型の測定に基づく。 本発明はまた、上記方法で遺伝子多型を測定するためのプライマーキットに関する。 臓器移植の際、移植患者に対し、免疫抑制剤(例えばタクロリムスなど)と共に、外科的ストレスでおこる胃出血や消化器潰瘍を抑制するためのPPIを同時に投与する。 免疫抑制剤は、血中トラフ濃度(血中濃度/投与用量)の有効治療域が狭く、個体間又は個体内変動が大きいことが知られている(非特許文献1)。この変動は、代謝酵素の遺伝子型による影響が示唆されており、例えばCYP3A5*1/*1型(野生型)の肝臓を移植された場合、生体肝移植(LDLT)患者のタクロリムスの血中濃度/投与用量(C/D)比が減少すること(非特許文献2)、腸のCYP3A5がタクロリムスの薬物動態に重要であること(非特許文献3)が報告されている。 また、MDR1のmRNA発現レベルがタクロリムスのC/Dと相関すること(非特許文献4)、CYP3A5変異型の心臓移植患者で、MDR1が3種の一塩基多型(SNP)の変異型である場合、野生型に比べてタクロリムス濃度が増加すること(非特許文献5)などが知られている。 さらにまた、腎移植患者において、CYP2C19、CYP3A5及びMDR1と関連するタクロリムスの薬物動態に対するラベプラゾール及びランソプラゾールの影響が開示され、CYP3A5*3/*3を有するCYP2C19PM腎移植患者におけるタクロリムスとラベプラゾール又はランソプラゾールとの間に有意な相互作用があることを結論づけている(非特許文献6)。 PPIには、CYP2C19とCYP3A4により代謝されるものがある(非特許文献7及び8))。CYP2C19遺伝子に変異があると、PPIは、CYP3A4のみによって代謝されるため、同じくCYP3A4を代謝経路として含むタクロリムスとの間の競合が増加する。これにより、CYP3A4によるタクロリムス代謝が潜在的に抑制され、それによりタクロリムスの血中濃度が上昇することが知られている(非特許文献9〜12)。http://www.jssx.org/jp/nenkai/nenkai21/iwasaki.pdf(第21回日本薬物動態学会年会 北川賞受賞講演、2006年11月30日、東京)Goto, M.ら, Pharmacogenetics 2004;14:471−8Uesugi, M.ら, Pharmacogenet Genomics 2006;16:119−27Masuda, S.ら, Clin Pharmacol Ther. 2006;79:90−102Wang, J.ら, Transplant Immunol. 2006;15:235−240Miura, Mら, Biopharm. Drug Dispos. 2007; 28:167−175Andersson, T.ら, Br J Clin Pharmacol 1993;36:521−30Pearce, RE.ら, J Pharmacol Exp Ther 1996;277:805−16Itagaki, F.ら J pharm Pharmacol 2004;56:1055−9Homma, M.ら, Transplantation 2002;73:303−4Itagaki, F.ら, Transplant Proc 2002;34:2777−8Takahashi, K.ら, Ann Pharmacother 2004;38:791−4 しかし、上記の知見にも拘らず、CYP2C19変異型の肝臓を移植された患者において、PPIがタクロリムスなどの免疫抑制剤の薬物動態にどのような影響を及ぼすかについては知られていなかった。また、免疫抑制剤、特にタクロリムスは、血中トラフ濃度の有効治療域が狭く、個体間又は個体内変動が大きいことが知られており、従って個人に応じた適切な投与量を決定することが難しいという問題があった。 本発明者らは、今回、肝臓移植などの臓器移植患者の手術後の免疫抑制剤の薬物動態変動を理解するためには、臓器受容者と臓器提供者の双方のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子多型を知ることが重要であることを見出した。 すなわち、本発明は、以下の特徴を有する。 本発明は、臓器移植患者に移植後に投与される免疫抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤(PPI)の薬物相互作用及び血中免疫抑制剤濃度変動を予測し、かつ、効能及び副作用に関して該患者に適する種類のPPIを選択するための方法であって、該方法が、臓器移植患者及び臓器提供者の双方の生物学的サンプルにおけるヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型を測定し、それによって、 (1) 臓器移植患者及び臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型がともに変異型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベルを超えて副作用をもたらすことを示し、かつ、該副作用を抑制するか回避するような種類のPPIが選択される、並びに/或いは、 (2) 臓器移植患者又は臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型の少なくとも1つが野生型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベル以下であって副作用をもたらさないことを示し、かつ、任意の種類のPPIが選択される、ことを含む、上記方法を提供する。 本発明の実施形態において、変異型であるヒトチトクロームP450 3A5の遺伝子多型が、CYP3A5*3である。 本発明の別の実施形態において、遺伝子多型がCYP3A5*3である臓器移植患者又は臓器提供者が、CYP3A5*3/*3である。 本発明の別の実施形態において、変異型であるヒトチトクロームP450 2C19の遺伝子多型が、CYP2C19*2又はCYP2C19*3である。 本発明の別の実施形態において、遺伝子多型がCYP2C19*2又はCYP2C19*3である臓器移植患者又は臓器提供者が、CYP2C19*2/*3又はCYP2C19*2/*2又はCYP2C19*3/*3である。 本発明の別の実施形態において、移植臓器が肝臓である。 本発明の別の実施形態において、免疫抑制剤がタクロリムスである。 本発明の別の実施形態において、PPIがランソプラゾール、ラベプラゾール又はオメプラゾール、或いはそれらの組合せである。 本発明の別の実施形態において、前記(1)における副作用を抑制するか回避するような種類のPPIが、ラベプラゾールである。 本発明の別の実施形態において、前記(2)における任意の種類のPPIが、ランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール、及びそれらの組合せからなる群から選択される。 本発明の別の実施形態において、遺伝子多型の測定を制限断片長多型(RFLP)法で行うことを含む。 本発明の別の実施形態において、RFLP法が制限断片のPCR増幅をさらに含む。 本発明の別の実施形態において、PCR増幅が、配列番号1、3、5、7、9及び12のオリゴヌクレオチドからなる群から選択されるオリゴヌクレオチドと、配列番号2、4、6、8、10、11及び13のオリゴヌクレオチドからなる群から選択されるオリゴヌクレオチドとの組合せからなるプライマーを用いて行われる。 本発明はさらに、本発明の上記の方法で使用するための、かつヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型を測定するためのプライマーキットであって、該プライマーが、配列番号1、3、5、7、9及び12のオリゴヌクレオチドのセットと、配列番号2、4、6、8、10、11及び13のオリゴヌクレオチドのセットとを含むことを特徴とする上記キットを提供する。 本発明により、タクロリムスなどの免疫抑制剤の薬物動態をより精度高く予想することを可能にし、かつ、免疫抑制剤の的確な投与量を決定すること及び最大許容レベルを超える免疫抑制剤の副作用を抑制又は回避する種類のPPIを選択することが可能になる。本発明の方法は、タクロリムスだけでなく、CYP2C19、CYP3A5及びMDR1からなる代謝酵素の何れかの基質となる任意の免疫抑制剤に適用することができる。 本発明は、臓器移植患者(以下「レシピエント」とも称する)及び臓器提供者(以下「ドナー」とも称する)の双方におけるヒトチトクロームP450 3A5*3(以下、「CYP3A5*3」とも称する)及び/又はヒトチトクロームP450 2C19*2、2C19*3(以下、それぞれ「CYP2C19*2」、「CYP2C19*3」とも称する)遺伝子多型と、臓器移植における拒絶反応を抑制するための免疫抑制剤及びPPI投与時の患者血中免疫抑制剤濃度変動及び/又は薬物相互作用との間に相関性があるという知見に基づく。 より具体的には、臓器移植患者及び臓器提供者の双方の生物学的サンプルにおけるヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型を測定することによって、 (1)臓器移植患者及び臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型(以下、それぞれ「CYP3A5」、「CYP2C19」とも称する)がともに変異型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベルを超えて副作用をもたらすことを示し、かつ、該副作用を抑制するか回避するような種類のPPIが選択される、並びに/或いは、 (2)臓器移植患者又は臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型の少なくとも1つが野生型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベル以下であって副作用をもたらさないことを示し、かつ、任意の種類のPPIが選択される。 CYP3A5の遺伝子型は、高活性型(*1/*1)、中等度活性型(*1/*3など)及び低活性型(*3/*3など)に分けられるが、このうち、本発明方法において測定対象として好ましい遺伝子型は、CYP3A5*3であり、より好ましい遺伝子型はCYP3A5*3/*3である。また、CYP2C19の遺伝子型は、高活性型(*1/*1)、中等度活性型(*1/*2、*1/*3など)及び低活性型(*2/*2、*2/*3、*3/*3など)に分けられるが、このうち、本発明方法において測定対象として好ましい遺伝子型は、CYP2C19*2、CYP2C19*3であり、より好ましい遺伝子型はCYP2C19*2/*2、CYP2C19*2/*3及びCYP2C19*3/*3である。ここで、高活性型は野生型(又は正常型)であり、一方、中等度活性型及び低活性型は、変異型であり、タンパク質の機能が低下又は欠損している。 上記(1)において、臓器移植患者及び臓器提供者双方のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子型がともに変異型、好ましくは上記各低活性型、である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベルを超えて副作用をもたらすことを示す。 また、上記(2)において、臓器移植患者又は臓器提供者のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子型の少なくとも1つが野生型、すなわち上記各高活性型、である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベル以下であって副作用をもたらさないことを示す。 本発明において、上記「副作用をもたらす」又は「副作用をもたらさない」とは、好ましくは100%の確率で副作用をもたらす場合又は副作用をもたらさない場合を意味する。しかし、例えば患者の年齢、体質、容態などの要因のために常に上記事象の確率が100%になるとは限らないかもしれない。このような場合を考慮して、上記事象の確率が80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上であっても本発明の範囲内に包含されるものとする。 本明細書中で使用する、血中免疫抑制剤濃度に関する「最大許容レベル」なる用語は、この血中レベルを超すと免疫抑制剤による副作用が生じるような許容レベルの上限値を意味する。 本発明の方法は、いずれの臓器移植にも適用可能であり、該臓器移植には、例えば肝臓、腎臓、心臓、肺などの臓器の移植が含まれる。特に好ましい臓器移植は、肝移植である。 本発明において、免疫抑制剤は、臓器移植に使用可能なものであれば特に制限はなく、例えばタクロリムス((財)日本医薬情報センター編集・発行 JAPIC 医療用医薬品集2007 1322−1329)、シロリムス(ラパマイシンともいう)、エベロリムス(サーティカンともいう)(J.Med.Chem.2001,44,2027−2034 Bernd Kuhn)などが含まれる。 タクロリムスは、T細胞、特にヘルパーT細胞によるTNF−αやインターロイキン−2、−4及び−5などのサイトカイン産生や、肥満細胞によるヒスタミン遊離の直接抑制などの薬理作用が認められている。また、タクロリムスは、薬物排出トランスポーターであるP-糖タンパク質の基質であり、P糖タンパク質はMDR1遺伝子によってコードされており小腸及び腎臓で高発現している(Saeki, Tら, J. Biol. Chem. 1993; 268:6077−6080)。 シロリムスは、mammalian target of rapamycin(mTOR)の阻害を介して、抗原やサイトカインに反応して生ずるTリンパ球の増殖・活性化を抑制する免疫抑制薬であり、海外では腎臓、肝臓、心臓などの移植後の免疫抑制療法に広く用いられている。血中濃度の上昇に伴って血球減少、高脂血症、口内炎などの副作用の発生頻度が上昇すること、体内動態の個人差が大きいことから、血中濃度モニタリングが推奨されている。また、シロリムスは、薬物代謝酵素CYP3Aや、薬物排出トランスポーターP−糖タンパク質の基質として知られている。 エベロリムスは、FKBP−12(FK−506 binding protein−12)と複合体を形成し、細胞内情報伝達分子であるmTOR(mammarian target of rapamysin)に結合して細胞増殖シグナルを阻害することにより細胞増殖抑制作用を示すと考えられており、インターロイキン−2によるT細胞の増殖を抑制することで免疫抑制作用を示す。 これらの免疫抑制剤は、構造が類似しておりその薬物動態は似通っている。上記の免疫抑制剤は、何れもチトクロームP450 3A4及び/又はチトクロームP450 3A5によって代謝され、その後、MDR1の基質になる。 CYP3A4、CYP3A5及びMDR1には遺伝子多型が存在するが、これによって酵素の活性が変化し、免疫抑制剤の動態に影響を及ぼす。従って、これらの遺伝子多型を調べることによって、免疫抑制剤の患者血中免疫抑制剤濃度変動を予測して、副作用又は薬理作用不足を防ぐために有用な情報を得ることができる。CYP3A4の遺伝子多型は、日本人での発現頻度が非常に低い(0〜5%)ことから、変異型の発現頻度が高い、CYP3A5及びMDR1の遺伝子多型が重要であることが示唆される。CYP3A5の遺伝子多型には*1〜*11まで同定されているが、本発明では、特に日本人で頻度の高いCYP3A5*3という変異型を検出することが望ましい。CYP3A5*3は、遺伝子のスプライシング異常を引き起こし、正常なCYP3A5タンパク質が合成されないことにより、薬剤代謝能が失われる。 免疫抑制剤は、一般に他の薬物と併用されることが多いが、臓器移植の場合には、外科的ストレスでおこる胃出血や消化器潰瘍を予防するためのプロトンポンプ阻害薬(PPI)と併用される。 プロトンポンプ阻害薬としては、オメプラゾール(静脈注射)((財)日本医薬情報センター編集・発行 JAPIC 医療用医薬品集2007 591−595)、ランソプラゾール(経口)((財)日本医薬情報センター編集・発行 JAPIC 医療用医薬品集2007 2540−2544)、ラベプラゾール(経口)((財)日本医薬情報センター編集・発行 JAPIC 医療用医薬品集2007 2521−2523)などが知られている。オメプラゾールは、主にCYP2C19によって代謝され、ランソプラゾールは、CYP2C19、CYP3A4両者により代謝され、ラベプラゾールは、CYP3A4のほか非酵素的な代謝が行われる。 CYP2C19遺伝子に変異があると、PPIの代謝経路が限定されて、CYP3A(CYP3A4、CYP3A5)のみによって代謝されるようになると、同じくCYP3Aを代謝経路として含む免疫抑制剤との間の競合が増加する。これにより、CYP3Aによる免疫抑制剤代謝が潜在的に抑制され、それによりタクロリムスの血中濃度が上昇すると考えられる。CYP2C19では、*1〜*21まで報告されているが、出現頻度と影響度からエキソン5に存在する*2変異型(G681A)、エキソン4に存在する*3変異型(G636A)を検出することが望ましい。CYP2C19*2及びCYP2C19*3はそれぞれ、スプライシング異常、ストップコドン出現により正常なCYP2C19タンパク質が合成されないことにより薬剤代謝能が失われる。 CYP2C19遺伝子に変異があると、CYP3A4による免疫抑制剤代謝が潜在的に抑制され、それにより免疫抑制剤の血中濃度が上昇する。従って、臓器移植における免疫抑制剤及びPPI投与時の免疫抑制剤の血中濃度、及び薬物相互作用を予測するためには、CYP3A5とCYP2C19の遺伝子多型を同時に測定することが望ましい。また、これら酵素の遺伝子多型は、臓器移植患者及び臓器提供者の双方について測定することが望ましい。このことは、特に肝臓移植の場合に重要であるが、その理由は、肝臓は薬物代謝担当臓器であるからである。腎移植又は心移植の場合には、臓器移植患者の遺伝子多型(又は一塩基多型SNP)のみを検出することも可能であるが、しかし、臓器移植患者及び臓器提供者の双方について上記酵素の遺伝子多型を測定することがより望ましい。 本発明の方法において、臓器移植患者及び臓器提供者からの生物学的サンプルにおける遺伝子多型の検出は、公知のSNP検出方法のいずれも使用することができる。多型の検出は、例えば、RFLP(restriction fragment length polymorphism;制限断片長多型)法、PCR−SSCP(single strand conformation polymorphism)法、ASO(allele specific oligonucleotide)ハイブリダイゼーション、ダイレクトシークエンス法、ARMS法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法、RNaseA切断法、化学切断法、DOL法、TaqMan PCR法、インベーダー法、MALDI−TOF(matrix assisted laser desorption−time of flight)/MS法、TDI法、モレキュラー・ビーコン法、ダイナミック・アレルスペシフィック・ハイブリダイゼーション法、パドロック・プローブ法、UCAN法、DNAチップ又はDNAマイクロアレイを用いた核酸ハイブリダイゼーション法、ECA法などの公知の方法により実施することができる(国際公開第WO03/023063号;中村祐輔編、SNP遺伝子多型の戦略、2000年、中山書店、など)。 例えばRFLP法は、遺伝子多型の存在により、制限酵素で処理して得られるDNA断片の長さに違いが生じることを利用し、一塩基多型を検出する方法である。この方法では、DNAを特定の制限酵素、たとえばCYP3A5*3の多型を検出するには制限酵素SspIを用いて処理し、アガロースゲルでの電気泳動パターンからその一塩基多型を解析する(Ron H.N.van SCHAIKら, Clinical Chemistry 2002;48:10 1668−1671)。 本発明方法において、RFLP法は、制限断片のPCR増幅をさらに含むことができる。このPCR−RFLP法の具体的な実施手順は、後述の実施例に記載されているので、それを参照することができる。また、PCR増幅で使用可能なCYP3A5及びCYP2C19遺伝子多型を測定するためのPCRプライマーの例は、配列番号1、3、5、7、9及び12のオリゴヌクレオチドからなる群から選択されるオリゴヌクレオチドと、配列番号2、4、6、8、10、11及び13のオリゴヌクレオチドからなる群から選択されるオリゴヌクレオチドとの組合せからなるプライマーである。より具体的には、CYP3A5遺伝子多型を測定するためのPCRプライマーの例は、配列番号1のオリゴヌクレオチドと、配列番号2のオリゴヌクレオチドとの組合せであり、また、CYP2C19遺伝子多型を測定するためのPCRプライマーの例は、配列番号3,4のオリゴヌクレオチドと、配列番号5,6のオリゴヌクレオチドとの組合せである。 また、TaqMan PCR法は、蛍光標識したアレル特異的オリゴ(TaqManプローブ)とTaq DNAポリメラーゼによるPCR反応を利用した方法である。TaqManプローブは、約20塩基長であり、その5’末端がFAM、VICなどの蛍光レポーター色素で標識され、3’末端がクエンチャーによって標識される。 或いは、古典的な検出方法としては、例えば、被験者の細胞等から抽出したゲノムDNAを試料とし、前後の配列で示される塩基を含む約15〜約500塩基の違続した塩基配列を含有してなる核酸をプローブとして用い、例えばWallaceら(Proc. Nat1. Acad. Sci. USA,80,278−282(1983))の方法に従って、ストリンジェンシーを正確にコントロールしながらハイブリダイゼーションを行い、プローブと完全相補的な配列のみを検出する方法や、上記核酸と上記核酸において多型部位の塩基が他の塩基に置換された核酸のいずれか一方を標識し、他方を未標識としたミックスプローブを用い、変性温度から徐々に反応温度を低下させながらハイブリダイゼーションを行い、一方のプローブと完全相補的な配列を先にハイブリダイズさせ、ミスマッチを有するプローブとの交差反応を防ぐ方法などが挙げられる。ここで標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、125I、131I、3H、14Cなどが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。 遺伝子多型を測定するための生物学的サンプルは、例えば細胞、組織、体液(例えば血液、リンパ液など)などを含み、血液が、操作上の簡便さから好ましい。これらのサンプルからゲノムDNAを抽出し、上記の方法により多型を測定することができる。ゲノムDNAの抽出は、溶解バッファ(EDTA,NaCl,SDS含有Tris−HCl,pH7.5)により細胞を溶解した後、例えばフェノール/クロロホルムによりDNAの抽出を行うことを含む。ゲノムDNA抽出のために、種々のキットが市販されているのでそれらを使用することができる。 本発明によれば、臓器移植患者及び臓器提供者双方のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子型がともに変異型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベルを超えて副作用をもたらすと判定されるが、このような場合には、該副作用を抑制するか又は回避するような種類のPPIを選択することによって、的確な予後の管理が可能となる。このような目的に合ったPPIとしては、例えばラベプラゾールが挙げられる。一方、臓器移植患者又は臓器提供者のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子型の少なくとも1つが野生型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベル以下であって副作用をもたらさないと判定され、このような場合には、オメプラゾール、ランソプラゾール、ラベプラゾールなどの任意のPPIの選択及び投与が可能になる。 本発明の好適実施形態によれば、本発明の方法において、移植臓器が肝臓であり、免疫抑制剤がタクロリムス(「FK506」ともいう)であり、PPIがオメプラゾール、ランソプラゾール又はラベプラゾール、或いはそれらの組合せである。タクロリムスの有効な免疫抑制の血中レベル範囲は5〜15ng/mlであり、また最大許容レベルは15ng/mlであり、このレベルを超えると腎機能障害、高血糖、中枢毒性、感染症などの障害が起こり易くなる。 また、免疫抑制剤としてシロリスム及びPPIとしてランソプラゾールを肝移植患者(例えば、CYP2C19*2/*3、CYP3A5*3/*3)に使用したときにも、臓器提供者が例えばCYP2C19*2/*2、CYP3A5*3/*3(いずれも変異型)である場合、シロリムスの最大許容レベルを超えることを見出している。シロリムスの最大許容レベルは、タクロリムスとほぼ同じである。 臓器移植患者において、免疫抑制剤の許容レベル範囲の管理は、例えば免疫抑制剤の血中トラフ濃度、すなわち血中濃度対投与用量(C/D)比、をモニターすることによって行うことができる。また、移植臓器の種類に対応した臓器の働きを調べるための生化学的臨床検査を行うことができる。例えば、移植臓器が肝臓であれば、総ビリルビン(T−Bil)、ALT、AST、γ−GTPなどを同時に検査することによって、移植された肝臓の機能を知る手がかりになる。 本発明はさらに、本発明の上記方法で使用するための、かつCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子多型を測定するためのプライマーキットであって、該プライマーが、配列番号1、3、5、7、9及び12のオリゴヌクレオチドのセットと、配列番号2、4、6、8、10、11及び13のオリゴヌクレオチドのセットとを含むことを特徴とする上記キットを提供する。 プライマーは、個々に別々の容器に入れてもよいし、或いは、測定すべき遺伝子多型ごとに各セットから選択された2種のプライマーを組み合わせて1つの容器にいれてもよい。 本発明のキットには、PCR増幅に必要なバッファ、dNTPミックス、耐熱性DNAポリメラーゼ酵素などの試薬を、使用説明書と一緒に包含させることができる。 本発明は、以下の実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されないものとする。<実施例1>(1):ゲノムDNAの抽出 肝移植患者(レシピエント1;51歳男性)と肝臓提供者(ドナー1;55歳男性)の血液からWizard(R) Genomic DNA Purification Kit(プロメガ株式会社)を用いて、ゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAは、20ng/μlになるように純水で希釈し、使用するまで−30℃で凍結保存した。(2):特定すべき一塩基多型を含む領域のPCRによる増幅 各遺伝子の変異の検出のために、変異部位のみ特異的に増幅し、かつ制限酵素サイトを与えるプライマーを使用した。プライマーはオリゴヌクレオチドを人工的に合成し、脱塩カラムを用いて精製した上で使用した。オリゴヌクレオチドは、DNA自動合成装置を用いて化学的に合成することができる。この合成には一般にホスホアミダイト法が使用され、この方法によって約100塩基までの一本鎖DNAを自動合成することができる。DNA自動合成装置は、例えばPolygen社、ABI社、Applied BioSystems社などから市販されている。 PCRにはTaKaRa ExTaq(タカラバイオ株式会社)を用い、メーカー指定の条件で35サイクルの増幅反応を実施した。もっとも、このPCRは単に遺伝子の特定領域を増幅することが目的であるため、PCRの方法や酵素の種類に特段の制限はない。ここで、PCRには、常法に従い、25μMフォワードプライマー(配列番号1又は3又は5)0.4μl、25μMリバースプライマー(配列番号2又は4又は6)0.4μl、10×PCRバッファ2μl、dNTPミックス1.6μl、ExTaq DNAポリメラーゼ0.1μl、手順(1)で調製したゲノムDNA溶液20ng/μl 2μlを、純水で20μlにメスアップしたものを用いた。また、PCRは、95℃・3分の後、94℃・30秒/55℃・30秒/72℃・30秒を35サイクル、その後72℃・5分反応し、反応後は4℃で保存した。(3):PCR産物の制限酵素処理による多型判定(RFLP) 手順(2)で得られたPCR産物を下記に示す、それぞれ適切な制限酵素で処理し、断片長を確認することにより、多型を検出した。制限酵素処理は、手順(2)のPCR産物8μl、10×バッファ1.5μl、酵素0.5μlを用いた。それぞれCYP3A5*3はSsp1と37℃で一晩、CYP2C19*2はSmaIと25℃で一晩、2C19*3はBamHIと37℃で一晩反応させた。 反応産物全量を3.5%アガロースゲル電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色して写真を撮影した。 電気泳動後、写真撮影して、断片長を確認した。レシピエント1、ドナー1とも同じパターンを示していた(図4)。CYP3A5は、293bpのPCR産物(1レーン)が175bpと125bpに切断されている(2レーン)ことから、CYP3A5*3/*3変異型であることが判明した。CYP2C19Exon5は、169bpのPCR産物(3レーン)が169bpと120bpに切断され(4レーン)、CYP2C19Exon4は、130bpのPCR産物(5レーン)が130bpと102bpに切断されている(6レーン)ことから、CYP2C19は*2と*3変異をヘテロに持つ、CYP2C19*2/*3変異型であることが判明した。(4):レシピエントの術後タクロリムス血中濃度測定 レシピエント1にタクロリムス(商品名プログラフ、藤沢薬品工業株式会社)及びPPI(オメプラゾール(商品名オメプラール、アストラゼネカ株式会社)、ランソプラゾール(商品名タケプロン、武田薬品工業株式会社))を投与し、タクロリムスの血中濃度を全自動イムノアッセイシステムIMx(登録商標)システム(アボットジャパン株式会社)にて、モニターした。投与日、投与量及び投与薬剤は、図1(患者1変異型/オメプラゾール+ランソプラゾール)に示す通りである。 図1から、タクロリムスの濃度/投与量(C/D)比が、9日目以降では2倍に増加していることがわかった。<実施例2>(1):ゲノムDNAの抽出 肝移植患者(レシピエント2;60歳男性)と肝臓提供者(ドナー2;54歳女性)の血液からWizard(R) Genomic DNA Purification Kit(プロメガ株式会社)を用いて、ゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAは、20ng/μlになるように純水で希釈し、使用するまで−30℃で凍結保存した。(2):特定すべき一塩基多型を含む領域のPCRによる増幅 レシピエント2とドナー2のゲノムDNAを用いたこと以外は実施例1と同様である。(3):PCR産物の制限酵素処理による多型判定(RFLP) 実施例1と同様の操作を行った。 電気泳動後、写真撮影して、断片長を確認した(図5)。レシピエント2のCYP3A5は、293bpのPCR産物(1レーン)が175bpと125bpにバンドがある(2レーン)ことから、CYP3A5*3/*3変異型であることが判明した。ドナー2のCYP3A5は、293bpのPCR産物(1レーン)が150bpと125bpにバンドがある(2レーン)ことから、CYP3A5*1/*1野生型であることが判明した。レシピエント2とドナー2のCYP2C19Exon5は、同じパターンを示しており、169bpのPCR産物(3レーン)が120bpにのみバンドが検出され(4レーン)、またCYP2C19Exon4もレシピエント2、ドナー2とも同じパターンを示し、130bpのPCR産物(5レーン)が102bpにのみバンドが検出された(6レーン)ことから、レシピエント2、ドナー2ともCYP2C19は*1/*1野生型であることが判明した。(4):レシピエントの術後タクロリムス血中濃度測定 レシピエント2にタクロリムス及びPPI(オメプラゾール及びランソプラゾール)を投与し、タクロリムスの血中濃度を全自動イムノアッセイシステムIMx(登録商標)システム(アボットジャパン株式会社)にて、モニターした。投与日、投与量及び投与薬剤は、図2(患者2野生型/オメプラゾール+ランソプラゾール)に示す通りである。 図2から、タクロリムスの濃度/投与量(C/D)比は、ランソプラゾール投与下でも変化がなかった。<実施例3>(1):ゲノムDNAの抽出 肝移植患者(レシピエント3;41歳女性)と肝臓提供者(ドナー3;63歳女性)の血液からWizard(R) Genomic DNA Purification Kit(プロメガ株式会社)を用いて、ゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAは、20ng/μlになるように純水で希釈し、使用するまで−30℃で凍結保存した。(2):特定すべき一塩基多型を含む領域のPCRによる増幅 レシピエント3とドナー3のゲノムDNAを用いたこと以外は実施例1と同様である。(3):PCR産物の制限酵素処理による多型判定(RFLP) 実施例1と同様の操作を行った。 電気泳動後、写真撮影して、断片長を確認した(図6)。レシピエント3とドナー3のCYP3A5は、同じパターンを示しており、293bpのPCR産物(1レーン)が175bpと125bpにバンドがある(2レーン)ことから、両者ともCYP3A5*3/*3変異型であることが判明した。レシピエント3のCYP2C19Exon5は、169bpのPCR産物(3レーン)が制限酵素処理後も169bpにのみバンドが検出され(4レーン)、またCYP2C19Exon4は、130bpのPCR産物(5レーン)が制限酵素処理後には102bpにのみバンドが検出された(6レーン)ことから、レシピエント3はCYP2C19*2/*2変異型であることが判明した。 ドナー3のCYP2C19Exon5は、169bpのPCR産物(3レーン)が169bpと120bpに切断され(4レーン)、CYP2C19Exon4は、130bpのPCR産物(5レーン)が130bpと102bpに切断されている(6レーン)ことから、ドナー3のCYP2C19は*2と*3変異をヘテロに持つ、CYP2C19*2/*3変異型であることが判明した。(4):レシピエントの術後タクロリムス血中濃度測定 レシピエント3にタクロリムス及びPPI(オメプラゾール及びラベプラゾール)を投与し、タクロリムスの血中濃度を全自動イムノアッセイシステムIMx(登録商標)システム(アボットジャパン株式会社)にて、モニターした。投与日、投与量及び投与薬剤は、図3(患者3変異型/オメプラゾール+ラベプラゾール)に示す通りである。 図3から、タクロリムスの濃度/投与量(C/D)比は、ラベプラゾール投与下でも変化がなかった。<実施例4>(1):ゲノムDNAの抽出 肝移植患者(レシピエント4)と肝臓提供者(ドナー4)の血液からWizard(R) Genomic DNA Purification Kit(プロメガ株式会社)を用いて、ゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAは、20ng/μlになるように純水で希釈し、使用するまで−30℃で凍結保存した。(2):特定すべき一塩基多型を含む領域のPCRによる増幅 レシピエント4とドナー4のゲノムDNAを用い、25μMフォワードプライマー(配列番号1又は3又は5又は7又は9又は12)0.4μl、25μMリバースプライマー(配列番号2又は4又は6又は8又は10又は11又は13)0.4μlを用いたこと以外は、実施例1と同様に行った。(3):PCR産物の制限酵素処理による多型判定(RFLP) 実施例1と同様の操作を行った。ここで、MDR1のEx12の多型検出には、HaeIII、Ex21の多型検出にはBsrIとBanI、Ex26の多型検出には、MboIにより処理した。 電気泳動後、写真撮影して、断片長を確認し、多型を判定する。(4):レシピエントの術後タクロリムス血中濃度測定 レシピエント4にタクロリムス及びPPIを投与し、タクロリムスの血中濃度を全自動イムノアッセイシステムIMx(登録商標)システム(アボットジャパン株式会社)にて、モニターする。上記実施例と同様に、タクロリムスの濃度/投与量(C/D)比を測定し、PPI投与によるタクロリムスの血中濃度変化を解析する。 本発明は、臓器移植後の移植患者において、拒絶反応の抑制を目的として投与される免疫抑制剤の副作用を抑制又は回避するために、かつプロトンポンプ阻害剤の的確な選択を可能にするために医療上有用である。この図は、肝移植患者(レシピエント1;CYP2C19*2/*3,CYP3A5*3/*3)に、タクロリムス(PO(経口投与))と、オメプラゾール(IV(静脈内投与)、20mg/日)、ランソプラゾール(PO、30mg/日)を投与したときの、タクロリムスの用量、タクロリムスの血中濃度、タクロリムスの濃度/投与量(C/D)比、AST、ALT及びT−Bil(総ビリルビン)の術後の経日変化を示すグラフである。なお、肝臓提供者はCYP2C19*2/*3,CYP3A5*3/*3の遺伝子型をもつ。この図は、肝移植患者(レシピエント2; CYP2C19*1/*1,CYP3A5*3/*3)に、タクロリムス(PO)と、オメプラゾール(PO、20mg/日)、ランソプラゾール(PO、30mg/日)を投与したときの、タクロリムスの用量、タクロリムスの血中濃度、タクロリムスの濃度/投与量(C/D)比、AST、ALT及びT−Bilの術後の経日変化を示すグラフである。なお、肝臓提供者はCYP2C19*1/*1,CYP3A5*1/*1の遺伝子型をもつ。この図は、肝移植患者(レシピエント3; CYP2C19*2/*2,CYP3A5*3/*3)に、タクロリムス(PO)と、オメプラゾール(PO、20mg/日)、ラベプラゾール(PO、30mg/日)を投与したときの、タクロリムスの用量、タクロリムスの血中濃度、タクロリムスの濃度/投与量(C/D)比、AST、ALT及びT−Bilの術後の経日変化を示すグラフである。なお、肝臓提供者はCYP2C19*2/*3,CYP3A5*3/*3の遺伝子型をもつ。この図は、レシピエント1及びドナー1のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子型を示すアガロースゲル電気泳動(エチジウムブロミド染色)図である。この図は、レシピエント2及びドナー2のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子型を示すアガロースゲル電気泳動(エチジウムブロミド染色)図である。この図は、レシピエント3及びドナー3のCYP3A5及びCYP2C19の遺伝子型を示すアガロースゲル電気泳動(エチジウムブロミド染色)図である。 臓器移植患者に移植後に投与される免疫抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤(PPI)の薬物相互作用及び血中免疫抑制剤濃度変動を予測し、かつ、効能及び副作用に関して該患者に適する種類のPPIを選択するための方法であって、該方法が、臓器移植患者及び臓器提供者の双方の生物学的サンプルにおけるヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型を測定し、それによって、 (1) 臓器移植患者及び臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型がともに変異型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベルを超えて副作用をもたらすことを示し、かつ、該副作用を抑制するか回避するような種類のPPIが選択される、並びに/或いは、 (2) 臓器移植患者又は臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型の少なくとも1つが野生型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベル以下であって副作用をもたらさないことを示し、かつ、任意の種類のPPIが選択される、ことを含む、上記方法。 変異型であるヒトチトクロームP450 3A5の遺伝子多型が、CYP3A5*3である、請求項1に記載の方法。 遺伝子多型がCYP3A5*3である臓器移植患者又は臓器提供者が、CYP3A5*3/*3である、請求項2に記載の方法。 変異型であるヒトチトクロームP450 2C19の遺伝子多型が、CYP2C19*2又はCYP2C19*3である、請求項1に記載の方法。 遺伝子多型がCYP2C19*2又はCYP2C19*3である臓器移植患者又は臓器提供者が、CYP2C19*2/*2又はCYP2C19*2/*3又はCYP2C19*3/*3である、請求項4に記載の方法。 移植臓器が肝臓である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。 免疫抑制剤がタクロリムスである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。 PPIがランソプラゾール、ラベプラゾール又はオメプラゾール、或いはそれらの組合せである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。 前記(1)における副作用を抑制するか回避するような種類のPPIが、ラベプラゾールである、請求項1に記載の方法。 前記(2)における任意の種類のPPIが、ランソプラゾール、ラベプラゾール、オメプラゾール、及びそれらの組合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。 遺伝子多型の測定を制限断片長多型(RFLP)法で行うことを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。 RFLP法が制限断片のPCR増幅をさらに含む、請求項11に記載の方法。 PCR増幅が、配列番号1、3、5、7、9及び12のオリゴヌクレオチドからなる群から選択されるオリゴヌクレオチドと、配列番号2、4、6、8、10、11及び13のオリゴヌクレオチドからなる群から選択されるオリゴヌクレオチドとの組合せからなるプライマーを用いて行われる、請求項12に記載の方法。 請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法で使用するための、かつヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型を測定するためのプライマーキットであって、該プライマーが、配列番号1、3、5、7、9及び12のオリゴヌクレオチドのセットと、配列番号2、4、6、8、10、11及び13のオリゴヌクレオチドのセットとを含むことを特徴とする、上記キット。 【課題】臓器移植患者における免疫抑制剤及びプロトンポンプ阻害剤(PPI)の薬物相互作用及び血中免疫抑制剤濃度変動の予測。【解決手段】臓器移植患者及び臓器提供者の双方の生物学的サンプルにおけるヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型を測定し、それによって、(1)臓器移植患者及び臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型がともに変異型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベルを超えて副作用をもたらすことを示し、かつ該副作用を抑制するか回避するような種類のPPIが選択される、並びに/或いは、(2)臓器移植患者又は臓器提供者の該ヒトチトクロームP450 3A5及び2C19の遺伝子多型の少なくとも1つが野生型である場合、該患者において血中免疫抑制剤濃度が最大許容レベル以下であって副作用をもたらさないことを示し、かつ任意の種類のPPIが選択される、ことを含む方法。【選択図】図1配列表