タイトル: | 公開特許公報(A)_シクロデキストリン包接体水懸濁液及びその製造方法 |
出願番号: | 2007179819 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 47/40,A61K 9/10,A61K 31/355,A61K 31/385,A61K 31/122,A61K 8/03,A61K 8/73 |
山本 孝 木水 貢 神谷 淳 吉本 克彦 北 伸也 金法 順正 田口 栄子 松田 恵理 寺尾 啓二 久田 研次 堀 照夫 廣垣 和正 JP 2009013140 公開特許公報(A) 20090122 2007179819 20070709 シクロデキストリン包接体水懸濁液及びその製造方法 独立行政法人科学技術振興機構 503360115 石川県 591040236 根上工業株式会社 390028048 小松精練株式会社 000184687 株式会社シクロケム 503065302 国立大学法人福井大学 504145320 木森 有平 100105809 浅野 典子 100126398 山本 孝 木水 貢 神谷 淳 吉本 克彦 北 伸也 金法 順正 田口 栄子 松田 恵理 寺尾 啓二 久田 研次 堀 照夫 廣垣 和正 A61K 47/40 20060101AFI20081219BHJP A61K 9/10 20060101ALI20081219BHJP A61K 31/355 20060101ALI20081219BHJP A61K 31/385 20060101ALI20081219BHJP A61K 31/122 20060101ALI20081219BHJP A61K 8/03 20060101ALI20081219BHJP A61K 8/73 20060101ALI20081219BHJP JPA61K47/40A61K9/10A61K31/355A61K31/385A61K31/122A61K8/03A61K8/73 11 1 OL 13 4C076 4C083 4C086 4C206 4C076AA22 4C076CC21 4C076CC40 4C076CC47 4C076EE39F 4C076EE39Q 4C076FF16 4C076FF36 4C076FF66 4C076GG45 4C083AC491 4C083AC492 4C083AC861 4C083AC862 4C083AD251 4C083AD252 4C083AD661 4C083AD662 4C083BB60 4C083CC01 4C083DD39 4C083EE01 4C083FF01 4C086AA01 4C086AA02 4C086BA09 4C086BB04 4C086MA02 4C086MA05 4C086MA08 4C086NA03 4C086NA05 4C206AA01 4C206CB27 4C206MA02 4C206MA05 4C206MA13 4C206MA43 4C206NA03 4C206NA05 本発明は、水に対して難溶性のシクロデキストリン包接体を含む水懸濁液及びその製造方法に関する。 シクロデキストリンはデンプンに酵素を作用させて得られる天然環状分子であり、例えばグルコースが6個繋がったα−シクロデキストリン、グルコースが7個繋がったβ−シクロデキストリン、及びグルコースが8個繋がったγ−シクロデキストリン等が知られている。このシクロデキストリンは、分子内に他の機能性成分を取り込み、化学量論的な割合(例えばシクロデキストリン1分子に対して機能性成分1分子)で包接体と呼ばれる複合体を形成する。熱や紫外線等の外部環境に対して不安定な機能性成分であっても、シクロデキストリン包接体を構成することで安定化し、その効果を持続させることができる。例えばヨウ素やアリルチオシアネートは抗菌性、メントールは害虫忌避効果、ビタミンEは抗酸化能、ジカプリル酸ピリドキシンは皮脂分泌抑制、ジパルミチン酸アスコルビルは美白・コラーゲン産生、ヘスペリジンは血行促進等、包接される機能性成分に応じて様々な効果が得られる。 これまでに様々な包接体の作製が試みられており、例えば特許文献1には、β−シクロデキストリン又はγ−シクロデキストリンとα−トコフェロール(ビタミンE)とを4:1〜8:1の重量比で混合してα−トコフェロールとシクロデキストリンとからなる複合体を製造することが記載されている。また、機能性成分としてコエンザイムQ10を含む包接体の製造方法については、特許文献2及び特許文献3に記載がある。特許文献2においては、重量比で、コエンザイムQ10に対してγ−シクロデキストリンを1〜100倍として、コエンザイムQ10とシクロデキストリンとを複合体とする方法が記載されている。特許文献3には、コエンザイムQ10とシクロデキストリンとの使用割合を、コエンザイムQ10 100重量部に対し、シクロデキストリン25〜1000重量部とすることが記載されている。なお、特許文献4には、α−リポ酸の水への溶解度を改善する目的でシクロデキストリンを用いることが記載されている。特許文献5には、水性塗料配合物にシクロデキストリン含有化合物を添加することが記載されている。特開2003−238402号公報米国特許第6861447号明細書特開2005−002005号公報特開2006−321784号公報特開2000−178507号公報 ところで近年、シクロデキストリン包接体を水に懸濁又は溶解して水懸濁液又は水溶液の状態とし、これを食品、化粧品、医薬品、水系塗料等に用いることが行われている。しかしながら、ビタミンE、コエンザイムQ10及びα−リポ酸等、ある種のシクロデキストリン包接体は、水に対して難溶性を示すため、これを水中に分散させると、凝集し、沈殿してしまう。したがって、得られる水懸濁液の分散状態は不均一なものとなる。このような状態の液体組成物は、見た目が悪く、ロット間にばらつきが生じるなどの不都合があり、例えば飲料等の食品や化粧品、医薬品、水系塗料などへの利用には制限が生じる。さらには、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体を含む水懸濁液を用いて布やポリマーにコーティングすると、製品毎に品質に著しい差異が生じるため、不都合である。したがって、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体の凝集を抑制する技術が求められている。 一般的に水に溶解しにくい物質を分散させる方法として、増粘剤や界面活性剤の使用が考えられる。しかし、これらの成分はシクロデキストリンに包接される可能性があり、可能な限り使用しないことが望ましい。さらに、分散を達成するために粘度を上げてしまえば使用に制約が生じる。また、界面活性剤にも毒性などのため制限がある場合がある。 以上から、包接体を水中で分散させるために必要な条件、すなわち、シクロデキストリンと相互作用しないこと、必要以上に高粘度にしないこと、及び、使用目的に対して使用制限のないこと、これらをすべて満たす増粘剤や界面活性剤の探索はきわめて困難である。 一方、前述の特許文献1から特許文献3は、シクロデキストリンと機能性成分とを複合化してシクロデキストリン包接体を作製する技術に関するものであり、包接体を水中に懸濁させるための技術ではない。また、特許文献4にはα−リポ酸の水懸濁液を作製する際にシクロデキストリンを用いることが記載されているが、包接体の懸濁を目的とした技術ではない。さらに、特許文献5に記載される技術は、水性塗料の粘度を低下させる目的でシクロデキストリンを用いるものであり、いずれもシクロデキストリン包接体の凝集を抑制する技術ではない。 本発明はこのような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体の水中での凝集を抑制し、長時間にわたって良好な分散状態を維持することが可能なシクロデキストリン包接体水懸濁液及びその製造方法を提供することを目的とする。 前述の目的を達成するために、本発明に係るシクロデキストリン包接体水懸濁液は、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体が、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の共存により水中に懸濁化されていることを特徴とする。また、本発明に係るシクロデキストリン包接体水懸濁液の製造方法は、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体を、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類により水中に懸濁化させることを特徴とする。 ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類を水中に共存させることで、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体の水中での凝集が抑制され、長時間にわたって良好な分散状態が維持される。 本発明によれば、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体の水中での凝集を抑制することができる。したがって、本発明によれば、例えば飲料等の食品や化粧品、医薬品、水系塗料などの液体組成物に対してシクロデキストリン包接体を添加したい場合、製品毎の品質ばらつきを抑えることができる。また、本発明によれば布帛等にシクロデキストリン包接体を均一にコーティングする際の処理液として好ましい状態を実現でき、製品毎の品質ばらつきを抑えることができる。 以下、本発明に係るシクロデキストリン包接体水懸濁液及びその製造方法について、詳細に説明する。 本発明のシクロデキストリン包接体水懸濁液は、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体が、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の共存により水中に懸濁化されている。 本発明において、シクロデキストリン包接体とは、シクロデキストリン類がゲスト分子を包接した複合体のことをいう。本発明において水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体とは、温度25℃における水に対する溶解度が5%以下であるシクロデキストリン包接体を言う。このような溶解度を示すシクロデキストリン包接体としては、ゲスト分子が脂溶性ビタミン類であるものが例示される。ゲスト分子として使用可能な脂溶性ビタミン類としては、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、コエンザイムQ10、ビタミンCエステル等が例示される。また、ゲスト分子としてα−リポ酸も使用可能である。 一方、シクロデキストリン包接体を構成するシクロデキストリン類には、グルコースが環状に結合したシクロデキストリンがある。シクロデキストリンとしては、具体的にはα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等が知られており、ゲスト分子に応じて適当な種類を選択すればよい。また、本発明のシクロデキストリン類には、シクロデキストリンにメチル基、アセチル基、グリコシル残基等を付加したシクロデキストリン誘導体も含まれる。シクロデキストリン誘導体としては、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリンやアセチル化シクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン、グリコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン等が挙げられる。 本発明においては、水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体とともにゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類を共存させ、シクロデキストリン包接体を水中に懸濁化している。ここで、シクロデキストリン包接体を懸濁するために用いられる、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類には、グルコースが環状に結合したシクロデキストリンがある。シクロデキストリンとしては、具体的にはα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等が知られており、ゲスト分子に応じて適当な種類を選択すればよい。また、本発明において、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類には、シクロデキストリンにメチル基、アセチル基、グリコシル残基等を付加したシクロデキストリン誘導体も含まれる。シクロデキストリン誘導体としては、ヒドロキシプロピル化シクロデキストリンやアセチル化シクロデキストリン、メチル化シクロデキストリン、グリコシルシクロデキストリン、マルトシルシクロデキストリン等が挙げられる。 シクロデキストリン包接体の凝集抑制効果を大きく得るためには、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類のグルコース単位数をシクロデキストリン包接体のグルコース単位数と同じとすることが好ましい。例えば、ビタミンEのγ−シクロデキストリン包接体を懸濁化する際には、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類として、γ−シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル化γ−シクロデキストリン、アセチル化γ−シクロデキストリン、メチル化γ−シクロデキストリン、グリコシルγ−シクロデキストリン、マルトシルγ−シクロデキストリン等を用いることが好ましい。 水懸濁液において、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、水懸濁液中に存在するゲスト分子に対して重量比で9倍〜10000倍となるように、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類を共存させる。水懸濁液中に存在するシクロデキストリン類とゲスト分子との比率を前記範囲内としたとき、高い凝集抑制効果が得られる。 シクロデキストリン包接体の凝集抑制のために使用されるシクロデキストリン類の最適な使用量は、懸濁化するシクロデキストリン包接体を構成するゲスト分子の種類に応じて異なる。例えば、コエンザイムQ10のシクロデキストリン包接体の場合、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、コエンザイムQ10に対して重量比で9倍〜10000倍となるように、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類を共存させることが好ましい。また、ビタミンEのシクロデキストリン包接体の場合、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、ビタミンEに対して重量比で13倍〜10000倍となるように、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類を共存させることが好ましい。さらに、α−リポ酸の場合には、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、α−リポ酸に対して重量比で9倍〜10000倍となるように、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類を共存させることが好ましい。使用量が前記範囲を下回ると効果が小さく、また、使用量が多ければ効果は大きいが、次第に効果は頭打ちになり、使用量に見合った効果が望めないためである。 以下、前述のシクロデキストリン包接体水懸濁液の製造方法について説明する。本発明の製造方法は、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類を共存させたシクロデキストリン包接体水懸濁液を得ることのできる方法をいずれも含む。具体的には、シクロデキストリン包接体を少量の水に懸濁して得られるシクロデキストリン包接体のペーストに、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の粉末又はゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の水溶液を加える方法が挙げられる。また、シクロデキストリン包接体の粉末にゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の粉末又はゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の水溶液を加える方法が挙げられる。さらには、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類とゲスト分子とからシクロデキストリン包接体を作製する際に化学量論的な割合よりもシクロデキストリン類を過剰とし、且つ、得られたシクロデキストリン包接体とゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類との混合物を水に懸濁させる方法が挙げられる。 本発明のシクロデキストリン包接体水懸濁液においては、シクロデキストリン包接体の凝集が抑制され、均一な分散状態が長時間にわたり維持される。このため、本発明のシクロデキストリン包接体水懸濁液は、商品の最終形態が水懸濁液である、或いは、製造プロセス中にシクロデキストリン包接体水懸濁液を用いる工程を含む食品、化粧品等にも応用可能である。また、本発明のシクロデキストリン包接体水懸濁液は、布帛等へシクロデキストリン包接体をコーティングするための処理液として用いることも可能である。 水に難溶性のシクロデキストリン包接体を水に分散させると、水中で二次凝集を起こし、時間経過とともに粒度が増大する。そこで、粒度分布を指標としてシクロデキストリン包接体の分散性を評価した。なお、以下の実験では、ビタミンE、コエンザイムQ10又はα−リポ酸のシクロデキストリン包接体を分散対象としているが、本発明はこれに限るものではない。また、シクロデキストリン包接体と混合されるシクロデキストリン類も、γ−シクロデキストリンに限るものではなく、分散させたいシクロデキストリン包接体に最適なシクロデキストリン類を適宜選択すればよい。<実験1> 実験1では、ビタミンEをゲスト分子とするシクロデキストリン包接体の水懸濁液を作製する際にシクロデキストリン類、単糖であるグルコース又は二糖であるトレハロースを添加し、その効果について検討した。なお、ビタミンEのシクロデキストリン包接体は、ビタミンEとγ−シクロデキストリンとが1:2のモル比で複合化することにより形成されている。(サンプル1) γ−シクロデキストリンのビタミンE包接体(シクロケム社製)1gを少量の水でペースト状にした後、水を加えて撹拌し、濃度0.5w/v%の懸濁液を調製した。一方、α−シクロデキストリンを水に溶解し、1.0w/v%のα−シクロデキストリン水溶液を調製した。ビタミンEのγ−シクロデキストリン包接体懸濁液1.2mLを前記α−シクロデキストリン水溶液280mLに加え、粒度分布測定用の試料溶液とした。なお、サンプル1の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量、すなわち、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和は、計算上、ビタミンEに対して3280倍(重量比)である。 その後、試料溶液について、島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−300V)を用いて粒度分布の経時変化を測定した。具体的には、試料溶液を超音波で7分間処理し、試料溶液を撹拌しながら凝集体の粒度分布の経時変化を追跡した。超音波処理終了時を測定開始時刻(t=0)とした。結果を図1に示す。(サンプル2) サンプル1で調製したα−シクロデキストリン水溶液を1.0w/v%のβ−シクロデキストリン水溶液に変更したこと以外は、サンプル1と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。なお、サンプル2の試料溶液に含まれるゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和は、計算上、ビタミンEに対して3280倍(重量比)である。結果を図1に示す。(サンプル3) サンプル1で調製したα−シクロデキストリン水溶液を0.25w/v%のγ−シクロデキストリン水溶液に変更したこと以外は、サンプル1と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。なお、サンプル3の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、ビタミンEに対して830倍(重量比)である。結果を図1に示す。(サンプル4) サンプル1で調製したα−シクロデキストリン水溶液を0.5w/v%のγ−シクロデキストリン水溶液に変更したこと以外は、サンプル1と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。なお、サンプル4の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、ビタミンEに対して1640倍(重量比)である。結果を図1に示す。(サンプル5) サンプル1で調製したα−シクロデキストリン水溶液を1.00w/v%のγ−シクロデキストリン水溶液に変更したこと以外は、サンプル1と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。なお、サンプル5の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、ビタミンEに対して3280倍(重量比)である。結果を図1に示す。(サンプル6) サンプル1で調製したα−シクロデキストリン水溶液をイオン交換水に変更したこと以外は、サンプル1と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。なお、サンプル6の試料溶液にはシクロデキストリン類として包接体自体が持つγ−シクロデキストリンのみが含まれており、その含有量は計算上、ビタミンEに対して6倍(重量比)である。結果を図1に示す。(サンプル7) サンプル1で調製したα−シクロデキストリン水溶液を1.00w/v%のグルコース水溶液に変更したこと以外は、サンプル1と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。結果を図1に示す。(サンプル8) サンプル1で調製したα−シクロデキストリン水溶液を1.00w/v%のトレハロース水溶液に変更したこと以外は、サンプル1と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。結果を図1に示す。(評価) 図1より、イオン交換水、グルコース水溶液及びトレハロース水溶液の添加では殆ど効果が無く、分散直後から凝集がみられた。これに対し、ビタミンEのγ−シクロデキストリン包接体にシクロデキストリン類水溶液を添加すると、包接体の凝集が抑えられることがわかる。なお、包接体を構成するシクロデキストリン類とグルコース単位数が同じであるシクロデキストリン類、すなわちγ−シクロデキストリンを添加したときの効果が最も大きかった。また、γ−シクロデキストリンの添加量を変化させたサンプル3〜5の比較より、γ−シクロデキストリン添加量が多いほど大きな効果が得られることがわかる。<実験2> 以下のサンプル9〜サンプル12では、コエンザイムQ10をゲスト分子とするシクロデキストリン包接体の水懸濁液を作製する際にシクロデキストリン類、グルコース又はトレハロースを添加し、その効果について検討した。なお、コエンザイムQ10のシクロデキストリン包接体は、コエンザイムQ10とγ−シクロデキストリンとが1:2のモル比で複合化することにより形成されている。(サンプル9) γ−シクロデキストリンのコエンザイムQ10包接体(シクロケム社製)1gを少量の水でペースト状にした後、水を加えて撹拌し、濃度0.5w/v%の懸濁液を調製した。一方、γ−シクロデキストリンを水に溶解し、1.0w/v%のγ−シクロデキストリン水溶液を調製した。γ−シクロデキストリンのコエンザイムQ10包接体懸濁液1.2mLを前記α−シクロデキストリン水溶液280mLに加えた後、超音波を4時間照射し、粒度分布測定用の試料溶液とした。得られた試料溶液を撹拌しながら超音波で7分間処理した。その後、試料溶液について、島津製作所社製レーザ回折式粒度分布測定装置(SALD−300V)を用いて粒度分布の経時変化を測定した。具体的には、試料溶液を超音波で7分間処理し、試料溶液を撹拌しながら凝集体の粒度分布の経時変化を追跡した。超音波処理終了時を測定開始時刻(t=0)とした。なお、サンプル9の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、コエンザイムQ10に対して2330倍(重量比)である。結果を図2に示す。(サンプル10) サンプル9で調製したγ−シクロデキストリン水溶液をイオン交換水に変更したこと以外は、サンプル9と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。なお、サンプル10の試料溶液にはシクロデキストリン類として包接体自体が持つγ−シクロデキストリンのみが含まれており、その含有量は計算上、コエンザイムQ10に対して4倍(重量比)である。結果を図2に示す。(サンプル11) サンプル9で調製したγ−シクロデキストリン水溶液を1.00w/v%のグルコース水溶液に変更したこと以外は、サンプル9と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。結果を図2に示す。(サンプル12) サンプル9で調製したγ−シクロデキストリン水溶液を1.00w/v%のトレハロース水溶液に変更したこと以外は、サンプル9と同様にして粒度分布の経時変化を追跡した。結果を図2に示す。(評価) 図2より、ゲスト分子としてコエンザイムQ10を用いたシクロデキストリン包接体においても、ゲスト分子としてビタミンEを用いた場合と同様の結果が得られていることがわかる。すなわち、イオン交換水、グルコース水溶液及びトレハロース水溶液の添加では殆ど効果が無く、分散直後から凝集がみられた。これに対し、コエンザイムQ10のシクロデキストリン包接体にシクロデキストリン類水溶液を添加すると、包接体の凝集が抑えられることがわかる。<実験3> 実験3では、実験1とは異なる方法、すなわち包接体水懸濁液に対する顕微鏡写真の画像解析からビタミンEのシクロデキストリン包接体の凝集を評価した。(サンプル13) 先ず、10mLの水を計り取り、ビタミンEのγ−シクロデキストリン包接体0.1gに対してその一部を加えてガラス棒で練り、ペースト状とした。得られたペーストに残りの水を加えて撹拌し、包接体水懸濁液を調製した。包接体水懸濁液5mLに対してγ−シクロデキストリン0.05gを加えて撹拌し、粒度分布測定用の試料溶液とした。なお、サンプル13の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、ビタミンEに対して13倍(重量比)である。 次に、試料溶液に超音波を7分間照射した。次に、試料溶液を撹拌し、所定時間の経過後(0分、15分、30分)に試料溶液の一部を採取し、2枚のスライドガラスで挟んだ。次に、CCDカラーカメラ(キーエンス社製、VB−7010)を用いて顕微鏡像を取得し、画像解析ソフト(キーエンス社製、VH−H1A5)により解析した。解析範囲は1687μm×1270μmとした。撹拌30分後の顕微鏡写真を図3に、画像解析ソフトによる解析した凝集体の大きさ(投影面積の平均値)の経時変化を図4に示す。(サンプル14) γ−シクロデキストリンを添加しなかったこと以外は、サンプル13と同様にして試料溶液を調製し、顕微鏡像の取得及び画像解析を行った。なお、サンプル14の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、ビタミンEに対して6倍(重量比)である。撹拌30分後の顕微鏡写真を図5に、画像解析ソフトにより解析した凝集体の大きさ(投影面積の平均値)の経時変化を図4に示す。(評価) 図3〜図5に示すように、ビタミンEに対してγ−シクロデキストリンを重量比で6倍共存させたサンプル14では凝集抑制効果は得られていない。これに対して、ビタミンEに対してγ−シクロデキストリンを重量比で13倍共存させたサンプル13では、シクロデキストリン包接体の凝集が抑制されていることがわかる。<実験4> 実験4では、実験3と同様の手法で、α−リポ酸のシクロデキストリン包接体の凝集を評価した。(サンプル15) ビタミンEのγ−シクロデキストリン包接体をα−リポ酸のγ−シクロデキストリン包接体に変更したこと以外はサンプル13と同様にして試料溶液を調製した。その後、サンプル13と同様に、顕微鏡像を取得し、さらには画像解析を行った。凝集体の大きさの経時変化を図6に示す。なお、サンプル15の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、α−リポ酸に対して9倍(重量比)である。(サンプル16) γ−シクロデキストリンを添加しなかったこと以外は、サンプル15と同様にして試料溶液を調製した。その後、顕微鏡像の取得及び画像解析を行った。画像解析ソフトによる解析した凝集体の大きさ(投影面積の平均値)の経時変化を図6に示す。なお、サンプル16の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、α−リポ酸に対して4倍(重量比)である。(評価) 図6に示すように、α−リポ酸のシクロデキストリン包接体を用いた場合、α−リポ酸に対してγ−シクロデキストリンを9倍共存させることで、シクロデキストリン包接体の凝集が抑制されていることがわかる。<実験5>実験5では、実験3と同様の手法で、コエンザイムQ10のシクロデキストリン包接体の凝集を評価した。(サンプル17) ビタミンEのγ−シクロデキストリン包接体をコエンザイムQ10のγ−シクロデキストリン包接体に変更したこと以外はサンプル13と同様にして試料溶液を調製した。その後、サンプル13と同様に、顕微鏡像を取得し、さらには画像解析を行った。凝集体の大きさの経時変化を図7に示す。なお、サンプル17の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、コエンザイムQ10に対して9倍(重量比)である。(サンプル18) γ−シクロデキストリンを添加しなかったこと以外は、サンプル17と同様にして試料溶液を調製した。その後、顕微鏡像の取得及び画像解析を行った。画像解析ソフトによる解析した凝集体の大きさ(投影面積の平均値)の経時変化を図7に示す。なお、サンプル18の試料溶液におけるシクロデキストリン類の含有量は、計算上、コエンザイムQ10に対して4倍(重量比)である。(評価) 図7に示すように、コエンザイムQ10のシクロデキストリン包接体を用いた場合、コエンザイムQ10に対してγ−シクロデキストリンを9倍共存させることで、シクロデキストリン包接体の凝集が抑制されていることがわかる。γ−シクロデキストリンのビタミンE包接体の水中でのメディアン径の経時変化を示す特性図である。γ−シクロデキストリンのコエンザイムQ10包接体の水中でのメディアン径の経時変化を示す特性図である。サンプル13(γ−シクロデキストリン添加有り)の包接体水懸濁液の顕微鏡写真である。水中における凝集体(ビタミンEのγ−シクロデキストリン包接体)の大きさの経時変化を示す図である。サンプル14(γ−シクロデキストリン添加無し)の包接体水懸濁液の顕微鏡写真である。水中における凝集体(α−リポ酸のγ−シクロデキストリン包接体)の大きさの経時変化を示す図である。水中における凝集体(コエンザイムQ10のγ−シクロデキストリン包接体)の大きさの経時変化を示す図である。 水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体が、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の共存により水中に懸濁化されていることを特徴とするシクロデキストリン包接体水懸濁液。 前記シクロデキストリン包接体の温度25℃における水に対する溶解度が5%以下であることを特徴とする請求項1記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液。 ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と前記シクロデキストリン包接体を構成するシクロデキストリン類とのグルコース単位数が同じであることを特徴とする請求項1又は2記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液。 ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と、包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、ゲスト分子に対して重量比で9倍〜10000倍であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液。 前記シクロデキストリン包接体を構成するゲスト分子がコエンザイムQ10である場合、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、コエンザイムQ10に対して重量比で9倍〜10000倍であることを特徴とする請求項4記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液。 前記シクロデキストリン包接体を構成するゲスト分子がビタミンEである場合、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、ビタミンEに対して重量比で13倍〜10000倍であることを特徴とする請求項4記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液。 前記シクロデキストリン包接体を構成するゲスト分子がα−リポ酸である場合、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と包接体を構成した状態のシクロデキストリン類との和が、α−リポ酸に対して重量比で9倍〜10000倍であることを特徴とする請求項4記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液。 水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体を、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類により水中に懸濁化させることを特徴とするシクロデキストリン包接体水懸濁液の製造方法。 シクロデキストリン包接体のペーストに、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の粉末、又はゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の水溶液を加えることを特徴とする請求項8記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液の製造方法。 シクロデキストリン包接体の粉末に、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の粉末、又はゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の水溶液を加えることを特徴とする請求項8記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液の製造方法。 ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類とゲスト分子とから前記シクロデキストリン包接体を作製する際に、化学量論的な割合より前記シクロデキストリン類を過剰とするとともに、 得られたシクロデキストリン包接体とゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類との混合物を水に懸濁させることを特徴とする請求項8記載のシクロデキストリン包接体水懸濁液の製造方法。 【課題】水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体の水中での凝集を抑制し、長時間にわたって良好な分散状態を維持可能であるシクロデキストリン包接体水懸濁液の提供。【解決手段】水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体が、ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類の共存により水中に懸濁化されているシクロデキストリン包接体水懸濁液。水に対して難溶性を示すシクロデキストリン包接体とは、シクロデキストリン包接体の温度25℃における水に対する溶解度が5%以下であるものをいう。ゲスト分子を包接しないシクロデキストリン類と前記シクロデキストリン包接体を構成するシクロデキストリン類とのグルコース単位数が同じであることが好ましい。該懸濁液は飲料等の食品や化粧品、医薬品、水系塗料などへ利用できる。【選択図】図1