タイトル: | 公開特許公報(A)_細胞付着防止剤 |
出願番号: | 2007172319 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 36/18,A61P 1/04,A61P 31/04 |
高垣 欣也 小野 裕之 鍔田 仁人 額田 善之 JP 2009007318 公開特許公報(A) 20090115 2007172319 20070629 細胞付着防止剤 株式会社東洋新薬 398028503 高垣 欣也 小野 裕之 鍔田 仁人 額田 善之 A61K 36/18 20060101AFI20081212BHJP A61P 1/04 20060101ALI20081212BHJP A61P 31/04 20060101ALI20081212BHJP JPA61K35/78 CA61P1/04A61P31/04 2 OL 6 4C088 4C088AB44 4C088AC04 4C088BA07 4C088CA11 4C088MA43 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA68 4C088ZB35 4C088ZC51 本発明は、クランベリーの乾燥粉砕物を有効成分とするヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止に関するものであり、さらに、細胞が胃部細胞である細胞付着防止剤に関するものである。 ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫などの発生につながることが報告されている。細菌の中でヒト悪性腫瘍の原因となりうることが明らかになっている唯一の病原体である。世界保健機構は、ヘリコバクター・ピロリに感染すると胃癌およびリンパ腫になりやすくなると発表しており、世界人口の50%は当細菌に感染していると概算されている。 胃の内部は胃液に含まれる塩酸によって強酸性であるため、従来は細菌が生息できない環境だと考えられていたが、ヘリコバクター・ピロリはウレアーゼと呼ばれる酵素を産生しており、この酵素で胃粘液中の尿素をアンモニアと二酸化炭素に分解する。このとき生じたアンモニアで、局所的に胃酸を中和することによって胃へ定着(感染)している。 治療方法として慢性の胃炎患者などに対しては、ヘリコバクター・ピロリの除菌治療が実施されている。除菌治療では抗生物質と、一過性の胃酸過多による副作用を防止するためのプロトンポンプ阻害薬の併用が標準的であり、この組み合わせによる除菌の成功率は80%程度とされてきたが、近年抗生物質耐性菌株が増え、除菌率が低下してきているとの報告がある。また、軟便、下痢、皮疹などの副作用があることが知られている。 一方、食品であるブロッコリースプラウトに含まれるスルフォラファンの殺菌効果により胃の中に住むヘリコバクター・ピロリの除菌効果が確認されている。また、クランベリーの抽出物および果汁に当該菌の予防効果があることが知られている。しかし、長期間の摂取を行わなければならない、抽出物および果汁の場合は残渣処理等の問題がある。この様に抗生物質の使用に関連する耐性増大および副作用の問題が無く、残渣処理の煩雑さの無い、ヘリコバクター・ピロリ菌感染を効果的に防ぐ組成物が必要とされている。特表2006−503059号公報 本発明は、抗生物質の使用に関連する耐性増大および副作用の問題が無く、長期間摂取の煩雑さの無い、ヘリコバクター・ピロリ菌感染を効果的に防ぐ組成物を提供することを目的としてなされたものである。 本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、クランベリーの乾燥粉砕物に優れたヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止効果があることを見出し、本発明を完成するに至った。 本発明によれば、安全性が高く、効果的なヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止剤を提供することができる。 以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は、下記実施形態の記載により限定して解釈するべきでなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。 本発明のヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止剤は、クランベリー乾燥粉砕物を含有する。クランベリーは、北アメリカなどの寒冷地に生息するツルコケモモ属の植物であり、小果実を実らせる。アメリカでは品種改良が行われて大規模に栽培されている。クランベリー果実は、熟すとチェリー大の大きさとなり、一般に鮮紅色を呈し、すっきりとした強い酸味と渋みを有する。クランベリー果実はそのままでも食せるが、これまでドライフルーツとして、またジュースなどの飲料用、料理用ソース、ジャム、ゼリー菓子などの原料として広く利用されている。また、クランベリー果実は、食物繊維、ビタミンCなどのビタミン類、有機酸類の含有量が高いこと、尿のpH調整や尿路感染症に有効であることが知られている。本発明における乾燥粉砕物は、特に限定されず、クランベリーの果実をせん断し、当業者が通常に使用する方法で、乾燥、粉砕し得られたものをいう。 本発明のヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止剤の形態は、特に限定されず、任意の形態で医薬または飲食品として提供することができる。例えば、散剤、顆粒剤、錠剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤などの形態で提供することができる。さらに、ガム、キャンディー、ゼリー、錠菓、飲料などの形態で食品として提供することも可能である。これらは、いずれも当業者が一般に用いる技術により製造することができる。 以下、本発明の実施例について説明する。なお、本発明は、下記の実施例に限定して解釈すべきではなく、特許請求の範囲における記載の範囲内で種々の変更が可能である。 本発明の防止剤の細胞付着防止効果を評価するために、以下の実験を行った。具体的には、ヒト胃癌由来細胞株(MKN−45細胞:理化学研究所バイオリソースセンター社提供)を用い、当該細胞へのヘリコバクター・ピロリ菌の付着防止の効果を検討した。 MKN−45細胞を7×105/mlに調製し、100μl/ウェルで96ウェルプレートに播種し、1日間前培養した。 クランベリー乾燥粉砕物(Decas Botanical Synergies社製)とクランベリー果汁パウダー(キッコーマン社製)30mgをそれぞれ10%牛胎児血清(FBS)含有標準培地(RPMI1640培地:Sigama−Aldrich社製)10mlに加え、十分懸濁または溶解させた。さらに、20分間超音波処理を行なった後、37℃の恒温槽で2時間温浴し、当該溶液を同培地で希釈し、3、1、0.33、0.11mg/mlの溶液を調製した。 前培養した96ウェルプレートから培地を除去し、これらの溶液を100μl/ウェルで添加した。コントロールには10%FBS含有RPMI1640培地を添加した。37℃、CO2インキュベーターで1時間培養した。 ヘリコバクター・ピロリ菌は生育させた後プレートからディスポ白金耳にてかきとり、1mlのブルセラブロス(Becton Dickinson社製)にて懸濁した。600nmの吸光度を測定することで濁度を求め、10%FBS含有RPMI1640培地で最終濁度0.008付近になるように希釈した。このヘリコバクター・ピロリ菌懸濁液を50μl/ウェルで1時間クランベリー処理した細胞へ添加した。そのまま30分間37℃、CO2インキュベーターで培養した。なお、コントロールにはヘリコバクター・ピロリ菌のみを添加した。 培養上清を除去し、リン酸緩衝生理食塩水(PBS(-))にて5回洗浄し、96ウェルプレートを−80℃保存した。凍結融解後、ここへヘリコバクター・ピロリ抗原測定キット(メリディアンHpSA ELISA:テイエフビー社製)に付属した検体希釈液を100μl添加し、再度凍結融解を行なったのち、ピペッティングにより確実に破砕と懸濁を行ない、50μlをヘリコバクター・ピロリ抗原測定キットへ供した。 ヘリコバクター・ピロリ菌のMKN−45細胞への付着率を表1に示す。 (実施例1) クランベリー乾燥粉砕物を0.11mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 (実施例2) 実施例1と同じクランベリー乾燥粉砕物を0.33mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 (実施例3) 実施例1と同じクランベリー乾燥粉砕物を1.0mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 (実施例4) 実施例1と同じクランベリー乾燥粉砕物を3.0mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 (比較例1) クランベリー果汁パウダーを0.11mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 (比較例2) 比較例1と同じクランベリー果汁パウダーを0.33mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 (比較例3) 比較例1と同じクランベリー果汁パウダーを1.0mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 (比較例4) 比較例1と同じクランベリー果汁パウダーを3.0mg/mlになるように10%FBS含有RPMI1640培地で調整したものである。 比較例のクランベリー果汁パウダーには、ヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止効果がほとんど認められなかったが、実施例のクランベリー乾燥粉砕物は濃度依存的に強い細胞付着防止効果が認められた。 本発明によれば、安全性が高く、効果的なヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止剤を提供することができる。 クランベリー乾燥粉砕物を有効成分とするヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止剤。 細胞が胃部細胞である請求項1の細胞付着防止剤。 【課題】ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)の感染は、慢性胃炎、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のみならず、胃癌やMALTリンパ腫などの発生につながることが報告されている。よって、安全性が高く、効果的なヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止剤を提供する。【解決手段】クランベリー乾燥粉砕物にヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止効果があることを見出し、その乾燥粉砕物を含有するヘリコバクター・ピロリ菌の細胞付着防止剤の提供。さらに、その付着細胞が胃部細胞である細胞付着防止剤。【選択図】なし