| タイトル: | 公開特許公報(A)_細胞内物質の抽出方法 |
| 出願番号: | 2007163509 |
| 年次: | 2009 |
| IPC分類: | C12Q 1/68,C12Q 1/66,C12Q 1/02 |
岡村 大輔 JP 2009000042 公開特許公報(A) 20090108 2007163509 20070621 細胞内物質の抽出方法 パナソニック株式会社 000005821 岩橋 文雄 100097445 内藤 浩樹 100109667 永野 大介 100109151 岡村 大輔 C12Q 1/68 20060101AFI20081205BHJP C12Q 1/66 20060101ALI20081205BHJP C12Q 1/02 20060101ALI20081205BHJP JPC12Q1/68 ZC12Q1/66C12Q1/02 8 OL 7 4B063 4B063QA01 4B063QA20 4B063QQ05 4B063QQ22 4B063QR02 4B063QS02 4B063QS03 4B063QS12 4B063QS40 4B063QX01 本発明は、細胞を破砕して細胞内物質を取り出す抽出方法に関する。より詳細には、細胞溶解剤である界面活性剤のタンパク質(酵素・抗体等)への影響を低減した細胞内物質の抽出方法に関する。 細胞から細胞内物質を抽出する手法として、界面活性剤による抽出がよく用いられる。界面活性剤による細胞の溶解は、リン脂質を中心に構成される細胞膜に、界面活性剤が吸着し、流動性が大きくなることで破壊(バースト)を誘導すると考えられている。界面活性剤による細胞内物質の抽出は、操作簡便、安価かつ強力に抽出能力を発揮できる。 しかしながら、界面活性剤には、タンパク質の疎水基部分に吸着することにより、タンパク質構造を変性する恐れがある。したがって、細胞から抽出した細胞内タンパク質が界面活性剤により不活性化したり、抽出した細胞内物質を酵素・抗体等のタンパク質を用いて測定する場合においても、界面活性剤により酵素活性が阻害され、測定値に大きな影響を及ぼしたりする可能性がある。 このように、界面活性剤を用いて細胞内物質を抽出する例として、細胞内ATP測定がある。細胞内ATP測定は、微生物等の細胞を界面活性剤で破壊し、細胞内から抽出したATPをホタル由来の酵素であるルシフェラーゼを用いた生物発光法等で定量する。一般的に、細胞内ATPを抽出する界面活性剤として陽イオン界面活性剤が用いられる。その理由として、プラス電荷を有する陽イオン界面活性剤は、マイナスの電荷を有する細胞表面への吸着速度が速いため、迅速に細胞を破壊することができるからである。 しかしながら、陽イオン界面活性剤はルシフェラーゼに対し、阻害効果を示す。界面活性剤を用いて細胞内ATPを抽出するためには、試料と界面活性剤を混合した混合溶液に対し、界面活性剤濃度が0.05%以上になるように添加することが望ましい。しかし、界面活性剤濃度が0.05%以上である場合、酵素反応を著しく阻害するため、測定感度及び測定精度が大きく低下する。一方、界面活性剤濃度が0.05%より低いと酵素反応は抑制される反面、細胞内ATPの抽出効率が不十分になるというものである。 したがって、実際の測定においては、ルシフェラーゼに対して阻害効果がなくなるまで、界面活性剤を含む試料を希釈してから、ATPの測定が行われていた。その結果、生物発光法が有する高感度検出能の優位性が失われるという課題があった。 そのため、近年ではルシフェラーゼに対する阻害作用を抑えるため、様々な改善が試みられてきた。その一つとして、陽イオン界面活性剤である塩化ベンザルコニウムに耐性を有する変異ルシフェラーゼを遺伝子組換えにより調整し、塩化ベンザルコニウムを細胞溶解剤に用いた試料を希釈することなくATPを定量できる方法が考案されている(例えば特許文献1を参照。)。特開平11−239493号公報 しかしながら、特許文献1記載の界面活性剤耐性をもつ変異ルシフェラーゼは、界面活性剤として塩化ベンザルコニウムを用いた生物発光反応によるATP測定方法のみに限定される。ATP測定には、他にも電気化学測定法や高感度酵素発色法があり、これらには、それぞれ特有の酵素が用いられているが界面活性剤耐性を有していない。従って、測定感度を上げるためには、新たに界面活性剤による耐性を持たせる酵素を作製しなければならないという課題があった。 本発明は、前記従来の課題を解決するもので、新たに界面活性剤による耐性を持たせた酵素の作製を必要とせず、感度の高い細胞内物質の抽出方法を提供することを目的とする。 前記従来の課題を解決するために、本発明の細胞内物質の抽出方法は、界面活性剤存在下で、細胞に浸透圧ショックを誘導させることを特徴としたものである。 また、本発明は、界面活性剤に細胞を入れて懸濁する工程と、前記細胞内の浸透圧と異なる浸透圧を有する液体を混合する工程からなることを特徴としたものである。 本発明の細胞内物質の抽出方法によれば、細胞溶解剤である界面活性剤の酵素への影響を低減し、安価で操作簡便に細胞内物質を抽出することができる。 また、界面活性剤濃度が酵素への影響の少ない希薄な濃度で十分なため、界面活性剤の種類に応じた異なる対処を施す必要もなく、界面活性剤耐性能を有する酵素以外の酵素を用いて測定する際にも、酵素の種類に応じた対処を施す必要もなくなる。 以下に、本発明の細胞内物質の抽出方法の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。(実施の形態1) 従来は、細胞からATPを抽出するためには、検体である細胞と界面活性剤を混合した混合溶液における界面活性剤濃度を0.05%以上にする必要があるとされていた。ところが、本発明者らは、鋭意実験を重ねた結果、従来よりも著しく低い界面活性剤濃度でも、細胞内ATPを十分に抽出できることを見いだした。 界面活性剤の細胞破壊効果は細菌によって異なるので、細胞の代わりに基質溶液を用いて界面活性剤(塩化ベンザルコニウム)の濃度を変えて酵素の発光量を測定した。本実施例では、界面活性剤耐性を備えていない酵素にはキッコーマン社製ゲンジボタル由来のルシフェラーゼを用い、界面活性剤には和光純薬社製の塩化ベンザルコニウムを用いた。 ルシフェラーゼの調製は、凍結乾燥品5mgに対してリン酸二水素カリウムからなる10mMリン酸緩衝液(pH7.4)10mLに溶解させたものをルシフェラーゼ溶液として測定に用いた。シグマ社製のD−ルシフェリン5mgに対して5mLの10mMリン酸緩衝液(pH7.4)に溶解させたものをD−ルシフェリン溶液として用いた。ルシフェラーゼの測定には、基質として、10mMリン酸緩衝液に100mM塩化マグネシウムおよび10nMのATPを溶解させたものを基質溶液として使用した。 塩化ベンザルコニウムは、それぞれ10mMリン酸緩衝液に溶解させ、それぞれ0.003%、0.0015%、0.003%、0.006%、0.015%、0.0225%、0.03%、0.045%、0.06%、0.075%、0.09%、0.15%、0.3%のものを界面活性剤溶液として調製した(ルシフェラーゼ溶液、基質溶液、界面活性剤溶液を混合した混合溶液に対して、0.0001%、0.0005%、0.001%、0.002%、0.005%、0.0075%、0.01%、0.015%、0.02%、0.025%、0.03%、0.05%、0.1%の塩化ベンザルコニウム濃度となる)。 発光量の測定には、界面活性剤溶液100μL、基質溶液100μL、D−ルシフェリン溶液50μL、ルシフェラーゼ溶液50μLを順に混合し、発光検出装置(キッコーマン社製ルミテスターC−1000)で待ち時間3秒、測定時間5秒の測定条件で発光量を測定した。 測定結果を図1に示す。ゲンジボタル由来ルシフェラーゼは、塩化ベンザルコニウムの0.03%以上では、ほとんど発光を示さなかった。これは、ルシフェラーゼ自体が界面活性剤により失活したためと考えられる。蛍光測定が可能な限界発光量は凡そ30,000(RLU)なので、図1よりこの値での塩化ベンザルコニウム濃度は0.02%である。 次に、細菌を用いて行った本発明の実施例を示す。使用した細菌は、大腸菌、緑膿菌、酵母を用いた。<本発明の実施例1〜7および比較例1〜3の調製> 大腸菌、緑膿菌、酵母をそれぞれLB寒天培地〔バクトトリプトン1%(W/V)、酵母エキス0.5%(W/V)、塩化ナトリウム1%(W/V)、寒天1.5%(W/V)〕上で、37℃で18時間培養を行った。LB培地上で増殖した大腸菌、緑膿菌及び酵母の内、それぞれ1コロニーを接種してリン酸二水素カリウムからなる10mMリン酸緩衝液(pH7.4)500μLに懸濁させ細胞懸濁液を作製した。得られた細胞懸濁液を8000rpmで10分間の遠心分離し、菌体を沈殿させた。10mMリン酸緩衝液(pH7.4)を除去し、再度10mMリン酸緩衝液(pH7.4)500μL中に菌体を懸濁させた。この操作を2度繰り返し、菌体を洗浄した。細胞懸濁液をLB寒天培地上で37℃、18時間培養し、コロニー数を計測した結果、調製した大腸菌、緑膿菌、酵母懸濁液にはそれぞれ106CFU/mL、106CFU/mL、105CFU/mL相当の生菌が存在していた。 本発明の実施例として、作製した実施例と比較例の調整条件を以下に説明する。まず、実施例として、細胞懸濁液500μLに対し、それぞれ0.0002%、0.0001%、0.002%、0.01%、0.015%、0.02%、0.04%、のの塩化ベンザルコニウム溶液を500μL加え、最終濃度をそれぞれ0.0001%にした実施例1、0.0005%にした実施例2、0.001%にした実施例3、0.005%にした実施例4、0.0075%にした実施例5、0.01%にした実施例6、0.02%にした実施例7を作製した。 また、比較例として、塩化ベンザルコニウム溶液を全く加えない比較例1と、細胞懸濁液500μLに対して各々0.06%と0.1%の塩化ベンザルコニウム溶液を500μL加えて最終濃度を、0.03%とした比較例2と、0.05%とした比較例3とを作製した。<細胞内ATPの抽出及びATP抽出量の測定> 調製した各濃度の塩化ベンザルコニウム含有大腸菌懸濁液100μLを採取し、2Mスクロース溶液100μLと混合し、最終濃度1Mスクロース含有大腸菌細胞内ATP抽出液を調製した。ATP濃度の測定のための発光試薬は、ゲンジボタル由来ルシフェラーゼ(キッコーマン社製)を用いた。これは、界面活性剤の耐性の無いルシフェラーゼである。大腸菌、緑膿菌、酵母の細胞内ATP抽出液200μLそれぞれに対し、ゲンジボタル由来ルシフェラーゼを100μL添加し、発光測定装置(キッコーマン社製ルミテスターC−1000)で発光量を測定した。本実施例での効果の判定基準は、菌のATP菌の定量計測できる最低発光値を50,000(RLU)とし、測定の可否を判断した。○は、定量測定可能と判断したもの、△はばらつきを考慮した上で測定可能と思われるもの、×は定量測定が出来ないと判断したものである。測定結果を表1に示す。 表1の結果から、実施例2に示すように大腸菌では、塩化ベンザルコニウム濃度が0.0005%を超えると酵素の発光量が急増しており、大腸菌細胞内ATPを抽出できる。これは、大腸菌においては、塩化ベンザルコニウムによる菌のバーストが従来よりもニ桁低い濃度で引き起こされることを示している。同様に、緑膿菌も塩化ベンザルコニウム濃度が0.005%を超えると菌のバーストを引き起こされ、菌内部のATPの定量に必要な発光量を得られることを示している。酵母においては、これの菌とは多少異なり、0.0005%の塩化ベンザルコニウム濃度付近で酵素の発光量の増加は見られるものの大腸菌や緑膿菌の発光量の約半分の発光量である。本実験では、定量に十分な値を得ることが出来たが、検体のばらつきを考慮すると十分な発光量が得られない可能性がある。一方、どの菌においても、塩化ベンザルコニウム濃度が0.01%を超えると酵素の発光量が激減し、満足に定量することが出来なかった。 以上の結果より、種類の異なる菌において、細胞内の物質を抽出するための塩化ベンザルコニウム濃度は、従来の定説よりも二桁低い0.0005%で十分であり、界面活性剤の耐性を有さない酵素が失活しない塩化ベンザルコニウム濃度は、0.01%となる。 なお、本発明に用いる界面活性剤は、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性イオン界面活性剤等、細胞表面に存在するリン脂質に吸着することにより流動性が変化し、細胞表面構造の維持を不安定化させるものであれば特に限定されないが、細胞表面への吸着速度が速い陽イオン界面活性剤が好ましい。また、界面活性剤は、常温保存が可能なものが望ましい。このようなものとして、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等が挙げられる。さらに、浸透圧ショックを誘導する手段としては、酵素・抗体等のタンパク質の阻害作用を有さないものに限定される。例えば、グルコース、スクロース等の糖化合物があり、適宜、選択すれば良い。 本発明手法は、ルシフェラーゼ以外の酵素を用いた細胞内物質の測定にも利用可能である。さらに、本発明手法で用いる抽出試薬は、界面活性剤と、糖化合物のような浸透圧ショックを誘導させるもので十分であるため、安価で常温かつ長期間の保存ができる利点を有する。 本発明にかかる細胞内物質の抽出方法は、細胞を大型な装置を用いて機械的に破砕する必要が無いので、細胞内部のタンパク質・酵素・抗体等の生体物質の損傷を抑えることができる。そのため、細胞内物質に含まれる酵素や抗体等のタンパク質を簡便に、且つ正確に測定する方法に利用することができる。塩化ベンザルコニウムの濃度とゲンジボタル由来ルシフェラーゼの発光量との関係を示す図界面活性剤存在下で、細胞に浸透圧ショックを誘導させることを特徴とする細胞内物質の抽出方法。界面活性剤に細胞を入れて懸濁する工程と、前記細胞内の浸透圧と異なる浸透圧を有する液体を混合する工程と、からなる請求項1に記載の細胞内物質の抽出方法。前記界面活性剤は、陽イオン界面活性剤である請求項1及び2に記載の細胞内物質の抽出方法。前記陽イオン界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムである請求項3に記載の細胞内物質の抽出方法。前記塩化ベンザルコニウム濃度は、0.0005%から0.01%の範囲にある請求項4に記載の細胞内物質の抽出方法。前記細胞内物質は、細胞内機能性物質である請求項1〜5に記載の細胞内物質の抽出方法。前記細胞内機能性物質として、アデニンヌクレオチドである請求項6に記載の細胞内物質の抽出方法。前記アデニンヌクレオチドとして、アデノシン三リン酸(ATP)である請求項7に記載の細胞内物質の抽出方法。 【課題】新たに界面活性剤による耐性を持たせた酵素の作製を必要とせず、感度の高い細胞内物質の抽出方法を安価で操作及び保存条件が簡便な細胞内物質の抽出方法を提供する。【解決手段】界面活性剤として塩化ベンザルコニウムを用いて、その濃度を0.0005%から0.01%の範囲調製した溶液中に細胞を入れて懸濁する工程と、前記細胞内の浸透圧と異なる浸透圧を有する液体を混合する工程と、からなる請求項1に記載の細胞内物質の抽出方法。【選択図】なし