生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンを有効成分とする骨代謝改善剤
出願番号:2007151027
年次:2008
IPC分類:A61K 31/047,A61K 31/122,A61P 19/08,A61P 19/10,A61K 36/02,A61K 36/06,A23L 1/30


特許情報キャッシュ

多胡 善幸 青木 史樹 富永 雄仁 横田 真一 和田 誠基 JP 2008303166 公開特許公報(A) 20081218 2007151027 20070606 ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンを有効成分とする骨代謝改善剤 株式会社カネカ 000000941 多胡 善幸 青木 史樹 富永 雄仁 横田 真一 和田 誠基 A61K 31/047 20060101AFI20081121BHJP A61K 31/122 20060101ALI20081121BHJP A61P 19/08 20060101ALI20081121BHJP A61P 19/10 20060101ALI20081121BHJP A61K 36/02 20060101ALI20081121BHJP A61K 36/06 20060101ALI20081121BHJP A23L 1/30 20060101ALI20081121BHJP JPA61K31/047A61K31/122A61P19/08A61P19/10A61K35/80 ZA61K35/72A23L1/30 BA23L1/30 Z 10 OL 12 4B018 4C087 4C088 4C206 4B018MD81 4B018MD89 4B018ME05 4C087AA01 4C087AA02 4C087BC11 4C087CA37 4C087MA37 4C087MA52 4C087ZA96 4C087ZA97 4C087ZB22 4C088AA12 4C088BA32 4C088MA37 4C088MA52 4C088NA14 4C088ZA96 4C088ZA97 4C088ZB22 4C206AA01 4C206AA02 4C206CA13 4C206CB25 4C206MA01 4C206MA04 4C206MA57 4C206MA72 4C206NA14 4C206ZA96 4C206ZA97 4C206ZB22 本発明は、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、またはこれらの誘導体を有効成分とする骨代謝改善剤や、これらを含有する各種組成物に関する。 哺乳動物の骨は骨吸収と骨形成を繰り返しており、骨形成に関与する細胞が骨芽細胞であり、骨吸収に関与する細胞が破骨細胞である。骨の成長、維持および修復は、これらの細胞の形成と吸収の速度バランスに依存しており、そのバランスが崩れることにより、骨吸収が骨形成を上回り、骨粗鬆症などの骨密度が減少する骨疾患がもたらされる。よって骨形成が骨吸収を下回らないことが骨密度の維持や増強に重要である(非特許文献1)。 骨粗鬆症は、骨を形成するカルシウムやコラーゲンの減少による骨密度低下と骨組織の退行を引き起こす全身性の骨疾患である。骨粗鬆症は、高齢者の、特に閉経後の女性に多く見られ、近年の高齢化に伴い増加し続けている。骨粗鬆症による骨の脆弱化は、疼痛や、骨折のリスク上昇を招くことから、寝たきりの原因となり、高齢者の生活の質に大きく影響を及ぼす問題となっている(非特許文献2) 骨粗鬆症の原因は、性ホルモンの低下、カルシウムの摂取不足、ビタミンD不足、運動不足、カルシウム代謝調節ホルモンのアンバランスなどが挙げられる。その治療には、性ホルモンであるエストロジェン、カルシウム代謝ホルモン、ビタミンK2、活性型ビタミンD3、ビスフォスフェート化合物などの医薬品が使用されているが、投与量によっては安全性に問題がある場合があり、使用量や使用期間に注意を払う必要がある(非特許文献3)。 そのような状況から近年、食品を原料とした骨粗鬆症改善素材が開発され、食経験があることから、医薬品と比較して安全性が高いと考えられている。その代表例として、大豆イソフラボン、乳由来塩基性ペプチドなどがあり、近年、安全に日常的に摂取できる骨代謝改善素材として注目されている。また、カゼインフォスフォペプチドをはじめとして、骨の材料として必要なカルシウムの腸管吸収促進作用を持つ物質が知られている。しかし、これらのカルシウム吸収促進作用を有する物質は、消化管から体内へのカルシウム吸収を促進するものであり、骨へのカルシウム沈着を促進するものではない。そのため、骨代謝の改善や骨強化に十分な効果を得られない場合がある。従って骨に対して直接働きかける食品成分が望まれている。 近年、カロテノイドのキサントフィル類に分類されるβクリプトキサンチンの骨粗鬆症への有用性が報告された(非特許文献4)。当該報告では、その他のリコペンやルテインなどのカロテノイドに関しても評価しており、βクリプトキサンチンのみが特異的に骨粗鬆症に有用であることを示している。また、このような効果に着目してβクリプトキサンチンを有効成分とした剤も提案されている(特許文献1)。その他にもβクリプトキサンチンの骨粗鬆症への有用性に関してはいくつかの証明がなされており(非特許文献5,6)骨粗鬆症への有用性が期待されている。しかしながら、その一方でリコペンに関しては骨粗鬆症に有用であると主張する報告も存在する(非特許文献7)。以上より、カロテノイド類の骨粗鬆症への有用性は、βクリプトキサンチンに関しては十分に検証されているが、その他のカロテノイドに関しては全く結論が得られていない状況である。また、非特許文献4から考えるとカロテノイドやキサントフィル類であれば骨粗鬆症に必ず有用であるというわけではないということは明らかである。また、カロテノイドやキサントフィル類は天然に莫大な分子種が存在し、一部の分子種を除いて全く骨粗鬆症への効果が検証されていないのが現状である。 ゼアキサンチンは、主にトウモロコシ、唐辛子、マリーゴールド、パプリカ、カボチャ、クコまたは、スピルリナなどに含まれるキサントフィル類であり、日常の食生活でも多量に摂取されている成分である。ゼアキサンチンは、食品着色用として利用されている他、抗肥満作用(特許文献2)、抗癌(特許文献3)、その誘導体の抗酸化作用(特許文献4)の用途が提案されている。 アスタキサンチンは、主にヘマトコッカス藻やクロレラなどの藻類、エビ・カニなどの甲殻類、サケ・タイなどの魚類に含まれるキサントフィル類であり、日常の食生活でも多量に摂取されている成分である。アスタキサンチンは、食品着色料として利用されている他、抗ストレス(特許文献5)、抗癌(特許文献6)、皮膚外用剤(特許文献7)、抗酸化剤(特許文献8)の用途が提案されている。また、カロテノイドとフラボノイドの混合物の相乗作用による骨粗鬆症への用途が提案されており、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンがそのカロテノイドの一つとして挙げられている(特許文献9)。しかしながら、当該特許文献はゼアキサンチンまたはアスタキサンチンが単独で骨粗鬆症に効果があることを提案するものではない。また、唯一骨粗鬆症への有用性が証明されているβクリプトキサンチンとフラボノイドの組合せの作用は示されているものの、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンとフラボノイドの相乗作用は全く示されていない。従って当該特許文献からゼアキサンチンまたはアスタキサンチンの骨粗鬆症への効果は全く明らかとはされていない。 一方、疫学的研究では、老齢の骨粗鬆症の患者は、βクリプトキサンチン、リコペン、αカロテン、βカロテン、レチノールおよび、ゼアキサンチンなどのカロテノイド類の血中濃度が低いと報告されている(非特許文献8)。しかし、上記の疫学研究では血中濃度の差異が生じる原因に関して全く検討されていない。即ち、骨粗鬆症をもたらす原因は、上記のカロテノイドの血中濃度が低いせいであるのか、または骨粗鬆症になったことによって2次的にカロテノイドの体内動態が変動しているだけであるかを結論することはできない。従って、この疫学研究は、上記のカロテノイド類の補給が骨粗鬆症の予防・改善に効能を示すかどうかを証明するものではない。さらに、どの種類のカロテノイドが骨粗鬆症に関連しているかを推定することも不可能である。実際に細胞レベルや動物レベルでそれぞれ単独のカロテノイドが効果を有すると示された報告は、リコペンやβクリプトキサンチンに関しては存在するが、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンに関しては存在しない(非特許文献4,5,6,7,9)。 ヒトにおけるカロテノイド類の摂取量と骨密度の相関性を検証した疫学研究も存在する(非特許文献10)。この疫学研究では、閉経後の女性でβカロテンと骨密度に関して正の相関が認められている。また、男性と閉経前の女性においてリコペンと骨密度に関して正の相関が認められている。また、閉経前の女性においてルテインとゼアキサンチンの混合物の摂取と骨密度との間に正の相関性が認められている。一般に流通するルテインとゼアキサンチンの混合物はルテインが主成分であり、ゼアキサンチンはルテインと比較して20分の1以下の含有量である。従って、この疫学研究からその摂取が骨密度に効果があるとすれば、リコペンとルテインとβカロテンである。尚、一般に骨粗鬆症をはじめとする骨疾患を発症するのは、閉経後の女性が多数であることから、骨疾患に効果があるかどうかを結論するためには、骨粗鬆症の発症率が高い閉経後の女性における相関性の証明が必要である。このことから、この疫学研究からその補給が骨疾患へ効果があるという可能性があるとすればβカロテンが有力である。WO2004−037236特開2003−095930特開平10−212228特開平6−108048特開平9−124470特表2005−513009特許第3863675特開第2619491特開2006−104090日本臨床,2002年,60巻増刊号3,34〜37項医学の歩み,2001年,198巻,9号,574〜579項Bio clinica,2001年,16巻,196〜197項Biological & Pharmaceutical Bulletin,2003年,26巻, 8号,1188〜1191項International journal of molecular medicine,2006年,17巻,15〜20項Biochemical pharmacology,2004年,67巻, 1297〜1305項Journal of Medicinal Food,2003年,6巻,79〜86項Bone,2006年,38巻 244〜248項Journal of cellular Biochemistry,2005年,95巻,1224〜1234項Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition,2003年,12巻,4号,467〜473 ゼアキサンチンおよびアスタキサンチンはいくつかの用途が提案されている。しかしながら骨疾患に対して有用な効果があることは全く知られていない。本発明は、食習慣があり安全であるゼアキサンチンやアスタキサンチンを有効成分として、骨代謝を改善する剤または組成物を提供することを課題とする。 本発明者らは、ゼアキサンチンおよびアスタキサンチンが骨代謝改善に有用である破骨細胞分化抑制効果を有することを見出し、それを基に本発明を完成するに至った。 ゼアキサンチンやアスタキサンチンが上記効果を有し、骨代謝改善に有用であるということは全く知られていなかった。 即ち本発明が提供するのは以下の通りである。 [1]ゼアキサンチン、ゼアキサンチン誘導体、アスタキサンチンおよびアスタキサンチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分とする骨代謝改善剤。 [2]ゼアキサンチンおよびゼアキサンチン誘導体、アスタキサンチンおよびアスタキサンチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物を有効成分とする骨代謝改善剤。 [3]藻類の処理物であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の骨代謝改善剤。 [4]培養酵母の処理物であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の骨代謝改善剤。 [5]スピルリナまたはヘマトコッカス藻の処理物であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の骨代謝改善剤。 [6][1]〜[5]に記載の骨代謝改善剤からなる破骨細胞分化抑制剤。 [7][1]〜[6]に記載の骨代謝改善剤を含有する飲食用組成物。 [8][1]〜[6]に記載の骨代謝改善剤を含有する医薬用組成物。 [9]骨疾患の改善または予防を目的とした[1]〜[8]に記載の剤または組成物。 [10]骨疾患が骨粗鬆症である[9]に記載の剤または組成物。 本発明の骨代謝改善剤、またはこれを含有する組成物は、破骨細胞の分化抑制をすることから、骨吸収の抑制が期待できる。従って、骨粗鬆症をはじめとする骨吸収を伴う骨疾患の治療、改善および予防に有用である。さらに、食経験のある材料から本発明の剤または組成物を製造することが可能であるので、摂取しても安全である。 本明細書の骨代謝改善剤は、ゼアキサンチン、ゼアキサンチン誘導体、アスタキサンチンおよびアスタキサンチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する骨代謝改善効果を有する剤および組成物である。上記の化合物の含有量は限定されないが、骨代謝改善効果を発揮できる範囲で含まれていれば良い。 ここにいうゼアキサンチンとは、分子式 C40H56O2であり、別名(3R,3'R)-β,β-カロテン-3,3'-ジオールに相当する。構造式は下記一般式で示されるとおりである。また、その誘導体とはゼアキサンチンの塩、酸化体、還元体、幾何異性体、光学異性体、配糖体、エステル体などが挙げられる。 ここにいうアスタキサンチンとは、分子式 C40H52O4であり、別名(3,3'-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4'-ジオンに相当する。構造式は下記一般式で示されるとおりである。また、その誘導体とはアスタキサンチンの塩、酸化体、還元体、幾何異性体、光学異性体、配糖体、エステル体などが挙げられる。 ゼアキサンチンは、広く食用とされる野菜の他、卵や細菌類にも含まれるキサントフィル類である。またスピルリナ属などの藻類にも存在する。本発明で用いられるゼアキサンチンは、上述の天然素材から得るほうが好ましいが、化学合成した化合物でも使用することができる。ゼアキサンチンを得るための材料は、好ましくはThe Biochemical journal. 1974年 144巻,231〜243項に報告されているようなゼアキサンチンを生産する細菌などとすると、生産効率の面から有利である。さらに好ましくは、ゼアキサンチンを得るための材料は食経験のある材料である方が安全性の観点から有用であり、スピルリナ、ホウレンソウ、ケール、卵、トウモロコシ、唐辛子、マリーゴールド、パプリカ、カボチャ、クコなどが挙げられる。 アスタキサンチンは、緑藻類、藍藻類、微細藻類に含まれるキサントフィル類である。また、これらの生物を捕食する生物である魚類や甲殻類の体内に蓄積されている場合もある。本発明で用いられるアスタキサンチンは、上述の天然素材から得る方が好ましいが、化学合成した化合物でも使用することができる。その他にも公知の細菌(特公平7−14340)やファフィア・ロドチーム酵母(特開2006−255692)による製造方法や、人工的に培養した藻類から得る方法(特許第2707572)などにより得ることもできる。 本発明の骨代謝改善剤、またはこれを含有する各種組成物は、ゼアキサンチン、アスタキサンチン、またはこれらの誘導体を含む材料であれば、そのまま用いることができるが、好ましくは上述の材料を処理することにより、より摂取に適した形の組成物や、ゼアキサンチンやアスタキサンチンの含有量の高い組成物、もしくは精製物とした上で有効成分として用いるほうが好ましい。本発明で用いられるゼアキサンチンおよびゼアキサンチン誘導体は、藻類または培養酵母の処理物が好ましい。例えば、ゼアキサンチンの含有量が多いことで知られているスピルリナを抽出溶媒に浸すことで得られる抽出物が好ましい。また本発明で用いられるアスタキサンチンおよびアスタキサンチン誘導体は、藻類または培養酵母の処理物が好ましい。例えば、アスタキサンチンの含有量が多いことで知られているヘマトコッカス藻を抽出溶媒に浸すことで得られる抽出物が好ましい。上述の材料を処理する方法は限定されないが、例えば抽出法が挙げられる。その場合、上述の材料を、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサンや、食用油等の油脂類による溶媒抽出法、超臨界法など各種方法を用いて抽出することができる。これらの抽出に用いる溶媒、温度、時間などの条件はゼアキサンチンやアスタキサンチンが抽出される条件であれば特に限定されない。前記材料は、所望により、乾燥、粉砕、脱脂またはケン化などの加工をした後抽出を行ってもよく、また抽出後、所望により、遠心、ろ過、濃縮、ケン化、粗精製、精製等を行っても良いし、抽出物をそのまま使用しても良い。好ましくは液々分配、酸処理、アルカリ処理、晶析、活性炭処理、各種クロマトグラフィー処理などによりゼアキサンチンやアスタキサンチンを粗精製もしくは精製するほうが好ましい。また、前述の方法により得られたゼアキサンチまたはアスタキサンチンンを含む抽出物や粗精製物もしくは精製物は、所望により任意の食品もしくは医薬品で用いられる製剤化処理を行うこともできる。その場合の製剤化処理は限定されないが、例えば食用油脂や乳化剤などの助剤を用いた乳化処理、粉末化、増粒などが挙げられる。そのようにして得られた製剤は、吸収性や、摂取の容易さ、取り扱いの容易さの観点から有利である。本明細書では、ゼアキサンチンやアスタキサンチンを含む材料を用い、上述のように抽出、粗精製、精製などの処理をして得たゼアキサンチン、アスタキサンチン、またはこれらの誘導体を含む組成物を処理物と呼ぶ。 本発明でいう骨代謝改善作用とは、生体内で骨吸収を抑制する作用のことをいう。骨吸収の抑制は、骨粗鬆症をはじめとする骨量の減少を伴う疾患の予防に有用である。本明細書で提供する剤および組成物は、破骨細胞の分化を抑制し、骨吸収の抑制を介して生体内の骨代謝を改善することができる。この骨代謝改善作用は骨粗鬆症などの骨量が減少する疾患の予防や改善に有用である。 骨代謝改善作用は、評価物質を直接動物に投与して評価することもできるが、培養細胞を用いて骨吸収を抑制する作用に関連する破骨細胞の分化抑制活性や培養破骨細胞による骨吸収抑制活性を評価する方法もある。破骨細胞の分化抑制活性は、骨髄細胞、脾臓細胞、マクロファージなどの細胞を用いて評価することもできる。これら細胞を用いた評価では、破骨細胞を分化させる作用を有するRANKLやM-CSFを添加した培地を用いて破骨細胞の分化抑制を評価する方法や、骨芽細胞と共培養してプロスタグランジンE2、副腎皮質ホルモン、インターロイキンー1β、活性型ビタミンD3や、リポポリサッカライドなどの破骨細胞分化刺激試薬を添加した培地を用いて破骨細胞の分化抑制を評価する方法が挙げられる。これらの培養法において、破骨細胞分化の評価は、破骨細胞に特異的に発現する酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)の発現により評価することができる。具体的にはTRAPにより発色する基質を用いた染色法による破骨細胞数のカウント法、もしくはTRAPにより発色する基質を用いた比色法などが挙げられる。これらのうち少なくとも1種の測定において、サンプルの活性が一般に溶媒対照と比較し、低い値を示す場合、そのサンプルを「破骨細胞分化抑制活性あり」と評価する。 本発明の飲食用組成物は、上記の骨代謝改善剤を含有する組成物であり、これらを一般的な食品に混合したものである。また、公知の食品として適当な担体や助剤などを使用してカプセル剤、錠剤、顆粒剤など服用しやすい形態にしたものでもよい。ここに言う飲食用とは、例えば、一般食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、健康食品、栄養補助食品などである。ここにいう一般食品とは、飲料、乳製品、発酵乳、乳酸菌飲料、加工乳、コーヒー飲料、ジュース、アイスクリーム、飴、ビスケット、ウェハース、ゼリー、スープ、麺類、を含むがそれに限定されるものではない。好ましくは飲料、乳製品、加工乳、発酵乳、乳酸菌飲料、ウェハース、ゼリーを含む。 本発明の医薬用組成物は、上記の骨代謝改善剤を含有する組成物であり、上記剤そのものであってもよいし、所望により医薬的に許容される担体を含有する組成物であってもよい。その用途は限定されず、例えば一般用医薬品(OTC)など容易に入手可能な医薬品又は医薬部外品などが挙げられる。医薬用組成物の形態は限定されず、例えば、丸薬剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル錠剤、トローチ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤などである。好ましくはカプセル剤、液剤、エリクシル、錠剤、カシェ、座薬などとするほうが良い。また医薬的に許容される担体とは、経口、経腸、経皮、および皮下投与のために好適である任意の材料であり、例えば水、ゼラチン、アラビアガム、ラクトース、微結晶性セルロース、スターチ、ナトリウムスターチグリコレート、燐酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド性二酸化ケイ素、などが挙げられる。 本発明は、骨粗鬆症をはじめとする骨疾患に対して骨密度を改善する効果のある物質を含有させても良い。骨密度改善効果のある物質としては、今まで公知の物質を用いることができるが、例えば、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクトスクロースなどのオリゴ糖類、ビタミンK、ビタミンD、ビタミンC、葉酸などのビタミン類、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、などのミネラル類、ダイジン、グリシチン、ゲニスチン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステインなどの大豆イソフラボン、大豆胚軸抽出物、カゼインホスホペプチドなどのペプチド類、またはザクロ等の抽出物、グルコサミン、コンドロイチン、およびコラーゲンを単独又はそれらを組み合わせることが好ましい。またその形態は限定されず、飲食用組成物、医薬用組成物を含む。これらの含有量は限定されないが、骨疾患に対して効果が発揮できる範囲で含まれていれば良い。 本発明の組成物は、ヒトをはじめとする哺乳動物に投与することにより、骨粗鬆症をはじめとする骨疾患を処置、改善または予防することができる。具体的には、閉経、加齢、不動化、ステロイド剤の使用、および免疫抑制剤の使用による骨粗鬆症の他、慢性関節リウマチ、歯槽膿漏、歯根膜炎、変形関節炎などが挙げられる。 以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。 (実施例1)ゼアキサンチンの精製市販のスピルリナ粉末1重量部を99%メタノール5重量部に浸し50℃で2時間2回抽出した。その抽出液の溶媒をエバポレーターにより除去し、粉末抽出物を得た。得られた粉末抽出物に水酸化カリウムを加えてメタノールに再溶解して65℃2時間加熱することによりケン化反応を行った。得られたケン化物の溶媒をエバポレーターにより除去した後に酢酸エチルに溶解し、溶解した酢酸エチルと等量の蒸留水を用いた液々分配を2回行った。液々分配後の酢酸エチル層の溶媒を除去してゼアキサンチンを含む粉末を得た。得られたゼアキサンチンを含む粉末を、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒に溶解し、ヘキサンと酢酸エチルの混合溶媒を展開相としたシリカゲル(ワコーゲルC−200)カラムクロマトグラフィーにより精製することによりゼアキサンチン精製物80mgを得た。 (実施例2)ゼアキサンチン、アスタキサンチンの破骨細胞分化抑制効果の測定 1〜3日齢のDDYマウスの頭頂骨から採取した骨芽細胞(1×104 cells/well)および、5週齢のDDYマウスの大腿骨および脛骨から採取した骨髄細胞(2×105 cells/well)を48wellプレートに播種した。また細胞の播種と同時に各wellに市販試薬のゼアキサンチン(EXTRASYNTHESE社より購入)またはアスタキサンチン(和光純薬社より購入)、実施例1で得られたゼアキサンチン精製物を1×10-6M〜1×10-7Mになるように添加した。培地は分化刺激試薬として活性型ビタミンD3を1×10-8Mの濃度で添加した10%FBSを含むα-MEM培地(gibco社)とした。培養開始3〜4日後に各wellの培地交換を経て、合計7日間各物質と活性型ビタミンD3存在下で細胞培養を行った。培養終了後、細胞をホルマリン固定し、酒石酸耐性酸フォスファターゼ染色(TRAP染色)を定法に従って行った。次にTRAP染色により染まった細胞(TRAP陽性細胞)を顕微鏡下でカウントすることにより破骨細胞分化を評価した。 破骨細胞分化抑制活性は、平行してTRAP陽性細胞数を測定した溶媒対照の平均値を1とした時のゼアキサンチン添加処理でのTRAP陽性細胞数の割合(破骨細胞分化抑制率)により評価した。測定は4〜8回繰り返して行った。破骨細胞分化抑制率が統計学的に有意に1以下となったサンプルを「破骨細胞分化抑制活性あり」と評価した。表1にその結果を示す。値は平均値±標準偏差とした。 表1のP値はDunnett法により算出された溶媒対照との統計的有意差を評価する値である。一般にP値が0.05以下であれば統計学的に有意な差があると考えられている。従ってP値が0.01以下であることは、表1記載のサンプルは、破骨細胞分化抑制活性があることを示している。よって表1より、ゼアキサンチンおよびアスタキサンチンは破骨細胞分化抑制作用を有し、骨代謝改善効果があることを確認した。 (実施例3)ゼアキサンチンの骨粗鬆症改善効果の確認8週齢のSD系メスラットを1週間飼育後、1群8匹に群分けし卵巣摘出手術を行うことにより骨粗鬆症を発症させた。飼料はAIN93組成の精製飼料を用い、実施例1で得られたゼアキサンチン精製物を0.0006重量%になるように添加し自由摂取させた。サンプルを添加しない飼料を与えた群を対照(コントロール)とした。卵巣摘出手術から6週間飼育後にラットを安楽死させ、大腿骨を摘出し骨幹端部の総骨密度および海綿骨密度をpQCT法(peripheral Quantitative Computed Topography)により測定した。値は平均値±標準偏差とした。表2より、ゼアキサンチン投与群はコントロール群よりも総骨密度および海綿骨密度で高値を示した。骨粗鬆症では海綿骨密度が低下することが知られているが、ゼアキサンチン投与群はコントロール群と比較して海綿骨密度の低下を13%抑制し、骨代謝改善効果があることを確認した。 (比較例1)ゼアキサンチン、アスタキサンチン以外のカロテノイドの破骨細胞分化抑制効果の評価 実施例2と同様の方法でゼアキサンチンやアスタキサンチン以外のカロテノイドの作用を評価した。また陽性対照として、既に骨粗鬆症への用途が明らかとされているカロテノイドであるβクリプトキサンチンの作用も評価した。各サンプルは和光純薬社より購入して評価に用いた。表3にその結果を示す。値は平均値±標準偏差とした。 表3のP値はDunnett法により算出された溶媒対照との統計的有意差を評価する値である。一般にP値が0.05以下であれば統計学的に有意な差があると考えられている。従って表3の結果から、既に骨粗鬆症への用途が報告されているカロテノイドであるβクリプトキサンチン以外のカロテノイドのカプサンチン、ビキシンおよびクロセチンには骨代謝改善効果が認められないことを確認した。 この結果より、カロテノイドに属する化合物の全てが骨代謝改善効果を有しているわけではないことは明らかである。従って実施例2の結果から、ゼアキサンチンやアスタキサンチンは、その他のカロテノイド類とは異なる特有の骨代謝改善作用を有する化合物であると結論することができる。 (実施例4)ゼアキサンチンを含有する材料からの抽出物の製造 市販の各材料を乾燥・粉砕し、その1重量部を99%メタノール5重量部に浸し50℃で3時間抽出した後、濾過により抽出液を得た。その抽出液の溶媒をエバポレーターにより除去し、ゼアキサンチンを含む粉末抽出物を得た。表4に材料およびその抽出率(重量%)を示す。このときのスピルリナ抽出物のゼアキサンチン含有量は、0.7 % (重量%)であった。 (実施例5)ゼアキサンチン含有ソフトカプセル剤の調整 ゼアキサンチン精製物 1重量部 コーン油 94重量部 グリセリン脂肪酸エステル 5重量部上記組成で常法によりゼアキサンチンを含有する飲食用又は医薬用のソフトカプセル剤を調整した。 (実施例6)スピルリナ抽出物を用いたゼアキサンチン含有ソフトカプセル剤の調整 実施例4のスピルリナ抽出物 5重量部 コーン油 90重量部 グリセリン脂肪酸エステル 5重量部上記組成で常法によりスピルリナ抽出物を用いたゼアキサンチンを含有する飲食用又は医薬用のソフトカプセル剤を調整した。 ゼアキサンチン、ゼアキサンチン誘導体、アスタキサンチンおよびアスタキサンチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する骨代謝改善剤。 ゼアキサンチン、ゼアキサンチン誘導体、アスタキサンチンおよびアスタキサンチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物を有効成分として含有する骨代謝改善剤。 藻類の処理物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の骨代謝改善剤。 培養酵母の処理物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の骨代謝改善剤。 スピルリナまたはヘマトコッカス藻の処理物であることを特徴とする、請求項1または2に記載の骨代謝改善剤。 請求項1〜5に記載の骨代謝改善剤からなる破骨細胞分化抑制剤。 請求項1〜6に記載の骨代謝改善剤を含有する飲食用組成物。 請求項1〜6に記載の骨代謝改善剤を含有する医薬用組成物。 骨疾患の改善または予防を目的とした請求項1〜8に記載の剤または組成物。 骨疾患が骨粗鬆症である請求項9に記載の剤または組成物。 【課題】 本発明は、食習慣があり安全であるゼアキサンチンまたはアスタキサンチンを有効成分として、骨代謝を改善する剤または組成物を提供することを課題とする。【解決手段】 本発明により、ゼアキサンチンまたはアスタキサンチンを有効成分とする骨代謝改善剤および組成物が提供される。更には、これらからなる破骨細胞分化抑制剤、飲食用組成物、医薬用組成物が提供される。 本発明品は骨代謝改善効果を有することから、骨粗鬆症などの骨疾患の治療、改善および予防に有用である。【選択図】 なし


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