生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_人工唾液
出願番号:2007139852
年次:2007
IPC分類:A61K 31/728,A61K 9/12,A61K 47/08,A61P 1/02


特許情報キャッシュ

柿木 保明 井上 裕之 宮内 聡 JP 2007291117 公開特許公報(A) 20071108 2007139852 20070528 人工唾液 生化学工業株式会社 000195524 多田 公子 100099852 宮川 佳三 100099760 柿木 保明 井上 裕之 宮内 聡 JP 1999080306 19990324 A61K 31/728 20060101AFI20071012BHJP A61K 9/12 20060101ALI20071012BHJP A61K 47/08 20060101ALI20071012BHJP A61P 1/02 20060101ALI20071012BHJP JPA61K31/728A61K9/12A61K47/08A61P1/02 6 2000606248 20000324 OL 21 4C076 4C086 4C076AA24 4C076BB22 4C076CC09 4C076DD23A 4C076DD33A 4C076FF68 4C086AA01 4C086AA02 4C086EA25 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA05 4C086MA13 4C086MA57 4C086NA14 4C086ZA67 本発明は、ヒアルロン酸(以下、HAともいう)またはその薬学的に許容される塩からなる、口腔乾燥症患者に適用するための人工唾液に添加されることを特徴とする添加剤に関する。また本発明は、前記添加剤を含有し、口腔乾燥症患者に適用されることを特徴とする、口腔内の非乾燥感持続性が改善された人工唾液に関する。 以下、本発明に最も近いと思われる技術について説明する。 特許文献1には、糖類等の保湿剤と界面活性剤とを水に配合してなる乾燥防止用組成物が記載されており、当該組成物を口腔等の乾燥を防止するために使用することが開示されている。また具体的に、0.1、1または3%のHAを含む溶液からなる当該組成物も記載されている。 しかしながら、口腔乾燥症患者の口腔内に適用するとの思想については開示も示唆も見あたらない。また保湿剤のみを適用した場合には充分な効果が得られず、また効果があったとしても極めて一時的であった旨の記載がある。 特許文献2には、少なくとも1個のポリマーと少なくとも1個の電解質との水溶液からなる治療的組成物が記載されており、当該組成物を含む唾液代用剤も記載されている。 しかしながら、HAについての記載はなく、また後述の実施例に示すとおり、本発明に認められるような顕著な効果についての記載も示唆も見あたらない。 特許文献3には、平均分子量80万〜400万のHAを有効成分とする医薬組成物の、口腔内炎症の治療及び予防、口腔衛生等への使用が記載されている。 しかしながら口腔乾燥症患者の口腔内への適用や、口腔内の非乾燥感持続性を改善するという思想について、開示も示唆も見あたらない。 特許文献4には、HAを有効成分とする経口抗炎症剤が開示されており、また特許文献5には、HAを有効成分とするアレルギー治療剤が開示されており、口腔への適用も開示されている。 しかしこれらのいずれにも、口腔乾燥症患者の口腔内への適用や、口腔内の非乾燥感持続性を改善するという思想について、開示も示唆も見あたらない。特開昭61−24510号特表平9−508898号欧州特許第444492号特開平6−107550号特開平5−320055号 近年、老人医療問題が社会問題化している。老人は、老化による唾液分泌量の低下に加え、種々の薬剤の影響により、口腔乾燥症になりやすい。口腔乾燥症になると、摂食障害を起こし、最終的には経管栄養や点滴に頼らざるを得なくなる場合もある。また食事ができなくなると、生きる意欲も急速に失われ、知的障害を起こす場合も多い。このような状態での生命予後は悪く、1年で半数の患者が亡くなるともいわれている。口腔乾燥症患者の口腔内の乾燥感を改善し、自立して食事ができるようになれば、老人医療に対する改善効果は極めて大きい。 また抗うつ剤等を投与しているような精神科の患者は、薬の副作用で口腔乾燥症になる場合も多い。 水を飲ませればよいとの考え方もあるが、経験上、口腔乾燥症の患者に水を飲ませてもその瞬間が潤うだけであり、実用的ではない。健常人が快適に感じるようなものでも、口腔乾燥症患者には不快に感じる場合もあり、患者による評価も加味して評価することも重要である。 従って本発明の目的は、口腔乾燥症患者の口腔内の非乾燥感持続性が改善された人工唾液を提供することである。 本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、HAまたはその薬学的に許容される塩が口腔乾燥症患者の口腔内の非乾燥感を顕著に持続させることを見出し、さらに特定の分子量、極限粘度等の特性を有するHAまたはその薬学的に許容される塩により特に優れた前記効果が得られることを見出した。そしてこのようなHAまたはその薬学的に許容される塩を人工唾液の成分として利用することにより、口腔乾燥症を顕著に予防、改善し、さらにそれに伴う種々の症状・状態を予防、改善できることも見出した。本発明はこれらの知見に基づいて完成されたものである。 すなわち本発明は、ヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩を含み、口腔乾燥症患者に適用するための人工唾液に添加されることを特徴とする添加剤(以下、「本発明添加剤」ともいう)を提供するものである。 本発明添加剤に使用されるヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩は、好ましくは重量平均分子量が30万〜120万であり、極限粘度が7〜20dl/gである。より好ましくは、重量平均分子量が50万〜120万であり、極限粘度が10〜20dl/gである。また鉄含量は20ppm以下が好ましい。 また本発明は、本発明添加剤を含有し、口腔乾燥症患者に適用されることを特徴とする、口腔内の非乾燥感の持続性が改善された人工唾液(以下、「本発明人工唾液」ともいう)を提供する。 本発明人工唾液は好ましくは液剤の形態にあり、25℃において剪断速度1秒-1で測定した見かけ粘度が好ましくは10〜6000mPa・sである。 本発明人工唾液においては、好ましくは本発明添加剤の濃度が、0.01〜0.6%(w/v)となるように配合される。 本発明人工唾液は、口腔内の非乾燥感持続を目的として好ましく用いることができ、また降圧剤、利尿剤、精神安定剤、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ剤等の向精神薬、神経弛緩剤、制癌剤等の薬剤投与に伴う口腔乾燥症患者に適用することも好ましい使用形態である。 また本発明は、ヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩を含む、口腔内の非乾燥感持続剤、口腔粘膜障害改善剤、口腔内の疼痛緩和剤、口腔乾燥症に起因する諸症状の改善及び/または予防剤も提供する。本発明の口腔乾燥症に起因する諸症状の改善及び/または予防剤の好ましい適用目的としては水分の過剰摂取防止、夜尿症の防止、舌の硬化防止等が挙げられる。 前記の通り、乾燥防止、炎症の治療及び予防、アレルギー治療等を目的としてHAを口腔内へ適用することはこれまでにも開示されてきたが、HA、特に本発明により明らかにされた特定の濃度、分子量、極限粘度等の特性を有するHAが口腔内の非乾燥感持続性の改善作用、すなわちその投与により非乾燥感を長時間持続させる作用を有することはこれまで知られていなかったものである。 以下、本発明の実施の形態について説明する。<1>本発明添加剤 本発明添加剤において用いるヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩の由来は特に限定されず、鶏冠、臍帯、ヒアルロン酸を産生する微生物等から分離、精製されたヒアルロン酸を用いることができる。特に、高純度に精製され、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないものが好ましい。 ヒアルロン酸の薬学的に許容される塩としては、例えば、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、またはジエタノールアミン塩、シクロヘキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との塩のうち、薬学的に許容される塩を用いることができる。なかでもヒアルロン酸ナトリウムであることが好ましい。 ヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩の重量平均分子量は、特に限定されないが、30万〜120万程度が好ましく、50万〜120万程度がより好ましく、50万〜90万程度が特に好ましい。 また、前記ヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩は、好ましくは7〜20dl/g、より好ましくは10〜20dl/g、特に好ましくは10〜16dl/gの極限粘度を有するものである。 上記のような分子量、極限粘度を有するヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩を使用することにより、特に持続性に優れた口腔乾燥防止効果が得られる。 なお、本発明添加剤に使用されるヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩中のエンドトキシン濃度は、後述の液剤である人工唾液とした場合において0.3EU/mL以下であることが好ましい。本発明添加剤中のエンドトキシン濃度は、当業者に周知慣用のエンドトキシンの測定法を用いて測定することができるが、カブトガニ・アメボサイト・ライセート成分を用いるリムルス試験法が好ましい。なおEU(エンドトキシン単位)は、日本工業規格生化学試薬通則(JIS K8008)や、U.S. Department of Health and Human Services, Public Health Service, Food and Drug Administration, Guideline on validation of the Limulus amebocyte lysate test as an end-product endotoxin test for human and animal parenteral drugs, biological products, and medical devices, Rockville, MD, 1987に従って測定・算出できる。また、鉄含量は20ppm以下であることが好ましい。 本発明添加剤はヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩に加え、任意の成分を含むことができる。そのような任意の成分は本発明添加剤の用途に不適当なものでない限り特に限定されないが、後述する人工唾液に添加することができる、医薬用担体、添加剤、薬理活性成分であることが好ましい。 本発明添加剤は上記ヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩を含む粉末等の固体形態に調製されるが、それらの成分を水、緩衝液、生理食塩水等に溶解、懸濁等した液剤の形態に調製してもよい。 本発明添加剤の使用量は適宜選択することができるが、有効成分であるヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩として、後述のように液剤である人工唾液に使用する場合は、液剤中の終濃度として0.01〜1%(w/v)程度が好ましく、より好ましくは0.01〜0.6%(w/v)程度であり、さらに好ましくは0.01〜0.5%(w/v)程度であり、特に好ましくは0.1〜0.4%(w/v)程度である。固形剤である人工唾液に使用する場合は、固形剤中0.1〜5%(w/w)程度が好ましい。<2>本発明人工唾液 本発明人工唾液は、本発明添加剤を含有し、口腔乾燥症患者に適用されることを特徴とする、口腔内の非乾燥感持続性が改善された人工唾液である。 本発明人工唾液は後述するように液剤、固形剤等の形態に調製することができるが、本発明人工唾液中の本発明添加剤の含有量は、有効成分であるヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩として、液剤である本発明人工唾液では0.01〜1%(w/v)程度が好ましく、より好ましくは0.01〜0.6%(w/v)程度であり、さらに好ましくは0.01〜0.5%(w/v)程度であり、特に好ましくは0.1〜0.4%(w/v)程度である。固形剤である本発明人工唾液では0.1〜5%(w/w)程度が好ましい。特に前記本発明添加剤に使用されるような特性を有するヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩をこのような量で使用することにより、特に優れた口腔内の非乾燥感持続性が得られる。 また、本発明人工唾液を液剤として提供する場合において、当該液剤の見かけ粘度を25℃において剪断速度1秒-1で測定した場合の値は、好ましくは10〜6000mPa・s、より好ましくは10〜3000mPa・s、特に好ましくは10〜1500mPa・sである。このような見かけ粘度の液剤である本発明人工唾液を使用することにより特に優れた口腔内の非乾燥感持続性が得られる。 また、本発明人工唾液の成分組成は、本発明添加剤を含有する限りにおいて特に限定されないが、液剤の形態で、かつ無機電解質成分組成がヒトの正常な唾液とほぼ同一になるように調整された組成であってもよい。このような人工唾液(液剤)の組成としては下記のような組成が例示され、かつ好ましい。ヒアルロン酸またはその塩(含量:0.01〜1%(w/v))塩化ナトリウム(含量:0.05〜0.1%(w/v))塩化カリウム(含量:0.1〜0.15%(w/v))塩化カルシウム(含量:0.01〜0.02%(w/v))塩化マグネシウム(含量:0.004〜0.006%(w/v))リン酸二カリウム(含量:0.01〜0.05%(w/v)) なお、これらの無機電解質成分は、全部を配合してもよく、1又は2以上を組合せて配合してもよい。 これらの組成成分を溶解する溶媒としては水が好ましく、特に注射用蒸留水、滅菌水等の薬学的に許容される水が好ましい。 なお本発明人工唾液には、生理学的に許容され、本発明人工唾液中のヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩に対して悪影響を与えず、かつ上述した本発明人工唾液の性質を維持する限りにおいて、さらに他の物質を適宜添加してもよい。このような物質としては、医薬用担体、添加剤、薬理活性成分等を挙げることができる。医薬担体としては、慣用の賦形剤、添加剤としては、着色剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、安定化剤、pH調整剤、乳化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、分散剤、基剤、増粘剤、甘味料、矯味剤、香料、清涼化剤等、通常医薬に用いられるものが例示される。 例えば、緩衝剤としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、酢酸緩衝液等が例示される。 pH調整剤としては、塩酸、水酸化ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム等が例示される。 等張化剤としては、塩化ナトリウム、グリセリン、ブドウ糖、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D−マンニトール、果糖、キシトール、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム等が例示される。 安定化剤としては、酒石酸、コハク酸、酢酸、グルタミン酸、グリシン、リンゴ酸、乳酸、クエン酸またはこれらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩など)、ヨウ素含有の還元剤(ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム等の金属ヨウ化化合物類等)、硫黄含有の還元剤(チオ硫酸カリウム、及びチオ硫酸ナトリウム等のチオ硫酸金属塩類、チオシアン酸カリウム、及びチオシアン酸ナトリウム等のチオシアン酸金属塩類、チオ尿素、チオセミカルバジド、チオペンタール等のチオケトン類、L−メチオニン等のスルフィド類等)が例示される。 防腐剤としては、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、グルコン酸クロルヘキシジン等が例示される。 甘味料としては、アスパルテーム、アマチャ、カンゾウ、D-ソルビトール、D-マンニトール、サッカリン等が例示される。 矯味剤としては、キシリトール、アスコルビン酸、エリスリトール、銅クロロフィリンナトリウム、緑茶末、クマザサエキス、オレンジ油、レモン油、ローズ油等が例示される。 香料としては、ハッカ油、スペアミント油、チモール、ヒノキチオール、ラベンダー油等が例示される。 清涼化剤としては、1-メントール、カンフル、ハッカ油等が例示される。 また薬理活性成分としては、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヘパラン硫酸、ヘパリン、ケラタン硫酸等のグリコサミノグリカン、漢方薬(例えば、オウゴンエキス、麦門冬湯、白虎加人参湯、五苓散、八味地黄丸、半夏厚朴湯、紫苓湯、小柴胡湯、十全大補湯、乾姜、生姜、半夏、知母、茯苓、天門冬、五味子、葛根、人参、紫根等)、公知の抗炎症剤、鎮痛剤、ビタミン剤、抗菌剤、成長因子、接着因子、抗菌剤等が挙げられる。 本発明人工唾液は、特に口腔乾燥症(唾液分泌低下症を含む。本明細書において同じ。)患者に適用され、このような患者に投与されたときに、口腔内の非乾燥感持続性が改善されていること、すなわち口腔内の乾燥感の防止効果が長時間にわたって持続され得ることを特徴とする。 口腔乾燥症とは、唾液分泌量の減少等による口腔内の異常な乾燥を示す症状である。その原因は多種にわたり、一時的な口腔乾燥症は、急激な脱水状態、高熱、出血、ストレス等で起こる場合もあり、また持続的な口腔乾燥症は唾液腺の老人性萎縮、顔面や頚頭部への放射線照射、シェーグレン症候群、ミクリッツ(Mikulicz)病、慢性唾液腺炎等の唾液腺疾患、尿崩症、糖尿病、慢性腎不全、甲状腺機能異常、ビタミンB群欠乏症、貧血、薬剤(例えば降圧剤、利尿剤、向精神薬、神経弛緩剤、制癌剤等)投与等により起こる。本発明人工唾液の適用対象となる口腔乾燥症は、これらの原因によっては特に限定されないが、唾液腺の老人性萎縮、顔面や頚頭部への放射線照射、シェーグレン症候群に伴う口腔乾燥症または薬剤投与に伴う口腔乾燥症に適用されることが好ましい。当該薬剤としては、口腔乾燥症の原因となる薬剤であれば特に限定されないが、降圧剤、利尿剤、向精神薬(例えば精神安定剤、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ剤等)、神経弛緩剤または制癌剤が特に好ましい。 本発明人工唾液の投与形態は、患者の口腔内に適用される限りにおいて特に限定されない。好ましくは液剤として使用されるが、これには限定されず、固形剤、例えば粉末剤、顆粒剤、キャンディー、グミ、ゼリー、トローチ剤等の剤形で投与することができる。また固形剤(例えば粉末、顆粒等)の形態で提供し、使用時に水等を添加して液剤としてもよい。 また、軟膏剤(クリーム)や貼付剤として使用してもよく、さらに練歯磨やチューインガム等の形態にしてもよい。すなわち本発明人工唾液は、純然とした医薬品のみならず、医薬部外品、化粧品、食品、医療用具等として提供してもよい。 例えば、本発明人工唾液を医薬部外品または化粧品として提供する場合には、以下のような組成とすることができ、かつ好ましい。ヒアルロン酸ナトリウム、キシリトール、1-メントール、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、精製水 また、本発明人工唾液を化粧品として提供する場合には、例えば以下の(a)、(b)のいずれの組成とすることもでき、かつ好ましい。(a) ヒアルロン酸ナトリウム、銅クロロフィリンナトリウム、クマザサエキス、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、法定色素、精製水(b) ヒアルロン酸ナトリウム、オウゴンエキス、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、精製水 液剤の場合、スプレー剤、含漱剤(口腔洗浄剤(マウスウォッシュ)、口腔リンス、液状歯磨等を含む。以下、本明細書において同じ。)、口腔内塗布用の製剤等として適用することができる。本発明人工唾液をスプレー剤として用いる場合は、スプレー容器に本発明人工唾液を充填する。スプレー容器は、1ストロークごとに人工唾液が放出される簡易型スプレー容器であってもよく、膨張性のガスが本発明人工唾液と共に充填された耐圧型スプレー容器であってもよい。膨張性ガスとしては、溶存状態で酸性を示すガスが、HAを安定に保持できるという効果を有することから好ましい。このようなガスとしては炭酸ガスが例示され、かつ好ましい。 また本発明人工唾液を含漱剤として用いる場合、例えばボトルに本発明人工唾液を充填することができる。例えば大容量のボトルに充填し、使用時に必要量を分取してもよいが、1回使い捨てのユニットボトルが便利で使いやすいことから好ましい。 また本発明人工唾液を口腔内塗布用の製剤とする場合には、例えば上記スプレー剤や含漱剤と同様の容器やボトルに充填した本発明人工唾液を、使用時に清浄な脱脂綿、ガーゼ、スポンジ、不織布等に付着させ、これを口腔内に塗布することにより用いることができる。なお、予め本発明人工唾液を付着させた脱脂綿、ガーゼ、スポンジ、不織布等を、密閉可能な容器や包装等に封入し、これを口腔内塗布用の製剤として提供してもよい。また、脱脂綿等に柄をつけて、さらに使いやすくしてもよい。 本明細書における「口腔内の非乾燥感の持続性の改善」とは、本発明人工唾液を適用しない場合、あるいは水や従来知られている人工唾液を使用した場合と比較して、本発明の人工唾液を適用することにより口腔内の非乾燥感あるいは湿潤感が持続される期間が延長されることを意味する。本発明の人工唾液は、特に長時間の非乾燥感の持続時間が得られることを特徴とし、その時間は患者、症状によっても異なるが1時間〜6時間程度である。 なお、患者の症状が極めて重度の場合には、適用当初、長時間の非乾燥感の持続効果が見られない場合もある。しかし数日間継続して適用すると、非乾燥感が長時間持続するようになることが、後述の実施例により確かめられた。 また、本発明人工唾液は、HAによる口腔内粘膜の保護効果も有しており、特に以下のような種々の具体的用途に特に好ましく適用できる。 本発明人工唾液は、特に口腔乾燥症患者の口腔内の非乾燥感持続のために適用されることが好ましいが、HAの作用により口腔乾燥症患者以外の患者においても一般的に口腔内の非乾燥感を長時間にわたって持続できるものである。従って本発明は、HAまたはその薬学的に許容される塩を含む、口腔内の非乾燥感持続剤も提供する。 またHAを含む本発明人工唾液は、後記実施例に示すように口腔内の疼痛緩和作用も有している。口腔内の疼痛の原因としては、口腔乾燥に伴うもの(例えば、舌痛症や口腔粘膜痛等)や、口腔内潰瘍(アフタ性口内炎等)に伴うもの等があるが、これらの原因の種類によらず、本発明人工唾液を適用し疼痛緩和作用を得ることができる。従って本発明は、HAまたはその薬学的に許容される塩を含む、口腔内の疼痛緩和剤も提供する。 またHAを含む本発明人工唾液は、後記実施例に示すように口腔粘膜障害、例えば口腔内潰瘍(アフタ性口内炎等)の改善作用(治癒促進作用)も有している。従って本発明は、HAまたはその薬学的に許容される塩を含む、口腔粘膜障害改善剤(口腔粘膜障害治癒促進剤、口腔粘膜障害治療剤)も提供する。口腔粘膜障害のなかでも、口腔内潰瘍の改善剤として用いることが好ましい。 この場合において、液剤とする場合には、液剤中のHAまたはその薬学的に許容される塩の濃度は0.2〜0.4%(w/v)が好ましい。 また、HAを含む本発明人工唾液は、後記実施例に示すように口腔乾燥症患者の義歯の装着を容易ならしめ、義歯の連続的装着時の不快感、違和感を改善するという作用・効果を有している。従って本発明は、HAまたはその薬学的に許容される塩を含む、口腔乾燥症患者に適用するための義歯装着補助剤を提供する。かかる補助剤は、口腔乾燥症患者の義歯装着時の痛みや不快感を軽減することにより義歯の装着を容易にし、さらには義歯の連続的装着時の不快感、違和感を改善して義歯装着の適合性を増すという効果を有する。従って、かかる目的でこの補助剤を適用することが好ましい。この場合において、液剤とする場合には、液剤中のHAまたはその薬学的に許容される塩の濃度は0.1〜0.4%(w/v)が好ましい。 また、HAを含む本発明人工唾液は、後記実施例に示すように、鼻腔に投与することにより、鼻腔の乾燥をも改善するという作用・効果を有している。従って本発明は、HAまたはその薬学的に許容される塩を含む、鼻腔乾燥改善剤を提供する。 HAを含む本発明人工唾液は、前記のように改善された口腔内の非乾燥感持続性を有するので、口腔乾燥症に起因する諸症状や状態を防止(改善)するために適用することもできる。口腔乾燥症に伴う諸症状や状態としては、例えば水分の過剰摂取、水分の過剰摂取に伴う夜尿症、水分の過剰摂取に伴う下痢、口腔乾燥に伴う味覚障害、嚥下障害、舌の硬化、灼熱感、摂食障害、齲歯の多発、歯肉炎の重度化、口腔内感染症(カンジダ症等)、症候性白板症、発音障害、外傷の発生、アフタや口内炎の多発、褥瘍性潰瘍の発生、グラム陰性桿菌の残留による肺炎誘発(誤嚥性肺炎の発症)、口の不快感等が例示され、これらの症状の治療及び/または予防剤として投与することができる。従って本発明はHAまたはその薬学的に許容される塩を含む、口腔乾燥症に起因する諸症状の治療及び/または予防剤も提供するものである。本発明の口腔乾燥症に起因する諸症状の治療及び/または予防剤は、特に水分の過剰摂取防止、夜尿症の防止または舌の硬化防止のために適用されることが好ましい。 また、口腔粘膜障害の予防、嚥下障害(飲み込みにくい等の症状)の改善、咀嚼障害(よく噛めない、咬みにくい等の症状)の改善、味覚障害(味がしなくなる、わからなくなる、濃い味でないとわからない等の症状)の改善、発音障害(口がよく回らないので、しゃべりにくい)の改善、口腔内の不快感の改善等のために適用されることも好ましい。 本発明人工唾液及び各薬剤の投与量は、その剤形、投与方法、投与目的、患者の具体的症状、体重、年齢等に応じて個別的に決定されるべき事項であり、特に限定はされないが、HAの投与量として1日当り約10mg〜1000mg程度である。 また、上記製剤の投与間隔は隔日でも毎日でもよく、特に限定されない。投与は1日1回程度でも可能であり、1日2〜20回程度に分けて投与することもできる。 本発明人工唾液は、ヒトのみならず、哺乳動物に広く適用することができるが、ヒトに用いることが特に好ましい。 なおHAまたはその薬学的に許容される塩は、既に医薬品(例えば、関節機能改善剤や眼科手術補助剤等)、化粧品、食品等にも用いられており、その安全性が確認されている。また、後述の実施例によっても高い安全性が確認された。 以下に、本発明の実施例を製剤例及び試験例として具体的に説明する。しかしながら、これらにより本発明の技術的範囲が限定されるものではない。 本実施例においては、鉄含量が4.6ppm、重量平均分子量90万のヒアルロン酸ナトリウムを使用した。このヒアルロン酸ナトリウムの極限粘度を測定した結果、16.0dl/gであった。 [製剤例](1)簡易型スプレー剤1 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.2%(w/v)、0.4%(w/v)または0.6%(w/v)となるように注射用蒸留水に溶解し、それぞれ50mlの簡易型スプレー容器に充填した。(2)簡易型スプレー剤2 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.2%(w/v)または0.4%(w/v)となるように3%(w/v) キシリトール水溶液に溶解し、それぞれ50mlの簡易型スプレー容器に充填した。(3)簡易型スプレー剤3 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.2%(w/v)または0.4%(w/v)となるように以下の組成からなるリン酸緩衝水溶液に溶解し、それぞれ50mlの簡易型スプレー容器に充填した。 塩化ナトリウム 0.9%(w/v) リン酸二水素ナトリウム 0.1mM リン酸水素二ナトリウム 1.5mM(4)含漱剤1 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.2%(w/v)となるように注射用蒸留水に溶解し、ユニットボトルに充填した。(5)含漱剤2 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.4%(w/v)となるように生理食塩溶液に溶解し、ユニットボトルに充填した。(6)含漱剤3 ヒアルロン酸ナトリウム及びコンドロイチン硫酸ナトリウムをそれぞれ濃度0.2%(w/v)となるように注射用蒸留水に溶解し、ユニットボトルに充填した。(7)グミキャンディー1 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.5%(w/v)、ゼラチンを濃度10%(w/v)、ソルビトールを濃度10% (w/v)となるように注射用蒸留水に溶解して加温し、2gずつ型に分注した後冷却し、グミキャンディーを製造した。(8)グミキャンディー2 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.5%(w/v)、ゼラチンを濃度10%(w/v)、キシリトールを濃度5% (w/v)となるように注射用蒸留水に溶解して加温し、2gずつ型に分注した後冷却し、グミキャンディーを製造した。(9)ゼリータイプの製剤 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.5% (w/v)、ゼラチンを濃度3% (w/v)、キシリトールを濃度5% (w/v)となるように注射用蒸留水に溶解して加温し、2gずつ型に分注した後冷却して、ゼリータイプの製剤を製造した。(10)トローチ剤 ヒアルロン酸ナトリウム10mg、精製白糖1600mg、ヒドロキシプロピルセルロース20mg、香料及び着色料を微量添加し、さらに乳糖を加えて最終的に2000mgに調整し、常法により1錠2000mgのトローチを製造した。(11)スプレー剤 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.1%(w/v)となるように以下の組成からなる溶液に溶解し、その50mlを二酸化炭素と共に耐圧型スプレー容器に充填してスプレー剤を製造した。塩化ナトリウム(0.0844%(w/v))塩化カリウム(0.120%(w/v))塩化カルシウム(0.0146%(w/v))塩化マグネシウム(0.0052%(w/v))リン酸二カリウム(0.0342%(w/v))(12)塗布用の液剤 ヒアルロン酸ナトリウムを濃度0.02%(w/v)、0.05%(w/v)または0.1%(w/v)となるように注射用蒸留水に溶解し、それぞれボトルに充填した。投与は、柄つきのスポンジをこの液剤に浸した後、これを口腔内に塗布することにより行うことができる。[試験例](1)薬効薬理試験1 製剤例(1)で調製した製剤(簡易型スプレー剤1(ヒアルロン酸ナトリウム濃度0.2%のもの))を用いて、下記口腔乾燥症患者4名の口腔内に1〜2ストローク(1ストロークは約120〜130μL)投与した。結果を表1に示す。 なお、比較例として「水」、「市販の人工唾液(サリベート(登録商標);帝人株式会社製;カルボキシメチルセルロースを含有する)」、「麦門冬湯」、及び「白虎加人参湯」を用いて同様に試験を行った。 その結果、「水」と「市販の人工唾液」は、いずれも投与直後から乾燥感及び疼痛の消失が見られたが、その効果は一瞬であり、上記製剤のような効果の持続性は見られなかった。 また「麦門冬湯」と「白虎加人参湯」は、効果の発現に時間を要し、上記製剤のような投与直後からの効果発現は見られなかった。 この結果から、本発明人工唾液は、口腔乾燥症患者に適用することにより、極めて短時間で乾燥感及び疼痛を消失・緩解させ、その効果は長時間持続することが明らかとなった。また本発明人工唾液は、口腔内潰瘍による疼痛にも効果を有することが明らかになった。(2)薬効薬理試験2 12名の口腔乾燥症患者に薬効薬理試験1と同様の投与を行い、口腔内の非乾燥感の持続時間、症状の変化等を観察した。サリベートを使用した履歴のある患者については使用感のサリベートとの比較についても調べた。結果を表2に示す。 表2中、乾燥度は製剤投与前の口腔内の乾燥感を表し、4:非常に強い乾燥感がある、3:乾燥感がある、2:少し乾燥感がある、1:あまり乾燥感はない、0:乾燥感は全くない状態を表す。粘性は製剤投与後に製剤による口腔内の粘性感(粘り)の評価を表し、4:強い粘性感がある、3:粘性感がある、2:少し粘性感がある、1:口腔として普通の粘性感である、0:粘性感は全くない状態を表す。効果は患者の使用感についての評価を表し、4:是非使用したい、3:できれば使用したい、2:どちらでもよい、1:できれば使用したくない、0:使用したくないとの評価を表す。持続時間、その他の効果には、投与後の口腔内非乾燥感の持続時間、及びその他の症状の変化を示した。これらの評価は全て患者自身の自覚症状、評価である。 備考には患者が罹患している疾患、状態、投与されている薬剤等を示した。 表2に示した結果から判るように、本発明人工唾液を投与すると少なくとも1時間〜数時間口腔内の非乾燥感が持続し、長時間にわたって非乾燥感を持続し得る。また、口腔乾燥症、口内炎、アフタ等にともなう口腔内疼痛の緩和が一般的に見られた。患者自身の評価も、全員が本発明人工唾液を使用したいと希望し、カルボキシメチルセルロースを含む市販の人工唾液よりも使用感がはるかによいという評価も得られた。(3)薬効薬理試験3 薬効薬理試験2とは別個独立に、16名の口腔乾燥症患者に薬効薬理試験2と同様の投与を行い、同様に評価した。結果を表3に示す。 表3に示した結果から判るように、薬効薬理試験2と同様の良好な結果が得られた。このことから、本発明人工唾液は、口腔乾燥症患者に広く有用であることが示唆された。また、本発明人工唾液が、咀嚼障害の改善にも有効であることが見出された。 また、本発明人工唾液を鼻腔に投与することにより、鼻腔の乾燥をも改善することが示された。(4)薬効薬理試験4 製剤例(4)で調製した製剤(含漱剤1)を用いて、口腔乾燥症患者(いずれも精神科の患者であり、かつ薬剤の投与による口腔乾燥症)7名の口腔内に、5mLのカップを用いて投与した。なお自覚症状については評価が困難なため、評価は医師の他覚所見のみにて行った。その結果いずれも良好な結果が得られた。 これらの患者中、53歳の男性に投与した場合についてより詳細に観察した。 この患者は、精神分裂病患者であり、口腔乾燥により舌が硬化していた。また口腔乾燥によりジュース類を多飲するためか、夜尿がほぼ毎晩見られる患者であった。 この患者に一定間隔(約3時間おき)で3回、1回あたり約5mLを投与したところ、舌の硬化状態は明らかに改善され、非乾燥状態が翌日まで認められた。またこの間、患者の水分摂取量も減少し、夜尿も改善された。 この結果から、本発明人工唾液は、薬剤投与による口腔乾燥症患者にも効果があり、その効果は約半日持続し得ることが示された。 また本発明人工唾液は、舌の硬化に対しても改善作用があり、さらに水分の過剰摂取を防止し、夜尿症の防止にも使用できることが明らかにされた。(5)薬効薬理試験5 製剤例(12)で調製した製剤(塗布用の製剤)を用いて、表4に示す口腔乾燥症患者4名の口腔内に、柄つきのスポンジで塗布することによって投与した。結果を表4に示す。なお、投与前の日常の状態、乾燥度、食物残さ、舌苔の付着、口臭の有無、および唾液量を併せて示す。唾液量以外は、歯科医師の観察により評価した。唾液量は、安静時にロールワッテ(歯科用の円柱形状の脱脂綿)を口腔内に挿入し、1分間放置して、これに染み込んだ唾液量を0.5g単位で測定することにより求めた。 表4中で、投与前の患者の状態等を示す記号の意味は、以下の通りである。 *日常の状態 ○:自覚的に口腔乾燥感がないが、他覚的に口腔乾燥症状を認める。 1:軽度の乾燥感(日常生活に支障はない。) 2:中度の乾燥感(咀嚼、嚥下に支障があり、食物摂取に水分を必要とする。) 3:重度の乾燥感(夜間の飲水と中途覚醒、食事時は多量の水分が必要。義歯の装着も困難。) *乾燥度 −:湿潤、±:乾燥、+:全体 *食物残さ −:無、+:有 *舌苔の付着 −:無、+:一部有、++:2/3以上有 *口臭の有無 −:無、+:やや有、++:有 表4に示した結果から判るように、本発明人工唾液中のヒアルロン酸ナトリウムは0.02〜0.1%という低濃度でも有効であることが示された。また、水分摂取量が顕著に減少する、義歯装着が可能になる等の効果も見られた。(6)薬効薬理試験6 本発明人工唾液の有効性、特に口腔粘膜保湿効果・非乾燥状態の持続効果を、より客観的かつ定量的に評価するために、ハムスター(シリアン系;SPF;13週齢)を用いて、以下の実験を行った。(6-1) ドライヤーによる口腔乾燥状態(口腔乾燥モデル)の作製 ネンブタール(大日本製薬)による麻酔下で、頬側から直径約10mmの試験管を差込み、口腔内を裏返して露出させた。ドライヤーで露出した口腔内に熱風を約20秒間あてたのち、冷風を2分40秒間あてた。以後、口腔内は測定が終了するまで露出させたままとした。(6-2) 被験物質 (i) 0.2%ヒアルロン酸ナトリウム(簡易型スプレー剤1) (ii) 蒸留水(対照)(6-3) 被験物質の投与 口腔乾燥モデル作製直後に、マイクロシリンジを用いて、100μLの被験物質を当該モデル(1群7匹)の口腔内に塗布することにより投与した。(6-4) 水分蒸散量の測定と統計処理 ハムスターの露出した口腔内の水分蒸散量を、水分蒸散システム(水分蒸散モニターAS−TW2、アサヒバイオメッド製)で測定した。測定は口腔乾燥モデル作製直後、被験物質投与直後、投与後10分目および20分目の時点で行った。また測定結果は、口腔乾燥モデル作成直後の水分蒸散量の平均値を1としたときの相対値として求めた。 結果を図1に示す。 図1より、蒸留水を投与した群(対照群)では、塗布直後は水分蒸散量の増加がみられるものの、投与後10分目には投与前と同程度に下がっていた。これに対し、0.2%ヒアルロン酸ナトリウムを投与した群では、投与後10分目でも水分蒸散量が投与直後の約1/2程度保持されていた。この結果から、0.2%ヒアルロン酸ナトリウムは口腔粘膜の保湿効果を有しており、口腔内の非乾燥状態を持続させることが示された。(7)薬効薬理試験7 本発明人工唾液の有効性、特に口腔粘膜障害の改善(治癒促進)効果を、客観的かつ定量的に評価するために、ハムスター(シリアン系;SPF;13週齢;雄)を用いて以下の実験を行った。(7-1) 口腔粘膜障害(酢酸惹起口腔粘膜障害モデル)の作製 ケタミン(ketamine)とキシラジンの混合溶液を用いてハムスターを麻酔後、ハムスターの右頬袋の外側から試験管をあて、頬袋を反転して口腔粘膜面を露出させ、粘膜面を生理食塩溶液で洗浄した。余分な生理食塩溶液を除いた後、円形濾紙(直径1 cm)を露出した粘膜面にのせた。その濾紙上に30%酢酸溶液を滴下し、そのまま10分間放置して、粘膜面の障害を惹起した。なお、この時に濾紙の表面が常に十分な酢酸溶液で満たされている状態を保つよう、適宜、酢酸溶液を追加で滴下した。10分間放置後、濾紙を取り、生理食塩溶液で十分に洗浄した。(7-2) 被験物質 下記(i)〜(iii)は、製剤例(1)で調製した簡易型スプレー剤1のものを用いた。 (i) 0.2% ヒアルロン酸ナトリウム (ii) 0.4% ヒアルロン酸ナトリウム (iii) 0.6% ヒアルロン酸ナトリウム (iv) リン酸緩衝生理食塩液(PBS;対照物質)(7-3) 被験物質の投与 各被験物質および対照物質を、上記モデルに対して、障害惹起の翌日から1日1回、3日間投与した。なお、上記(i)、(ii)の被験物質はそれぞれ10匹のモデルに、上記(iii)の被験物質は8匹のモデルに、対照物質は9匹のモデルに投与した。投与は以下の通り行った。 ケタミン及びキシラジンの混合溶液を用いて麻酔後、モデル作製時と同様にハムスターの頬袋を反転して障害部位を露出させ、その障害部位に150μlの被験物質をマイクロシリンジを用いて投与した。その後20分間放置した後、洗浄せずにそのままケージに戻した。(7-4) 障害部位の面積の測定と統計処理 口腔粘膜障害の治癒の程度を客観的かつ定量的に評価するため、障害部位の面積を測定し、その減少の程度を粘膜障害の治癒の程度として評価した。障害部位の面積は、最終投与の翌日(惹起後4日目)に測定した。 具体的には、最終投与の翌日に、まず障害部位全体を撮影し、次いで障害部位全体を20%フルオレセインを用いて染色し、全体を撮影した。フルオレセイン染色前の撮影画像と、フルオレセイン染色後の撮影画像の画像解析の結果に基づいて、障害部位の面積を求めた。 各群とも、障害惹起の翌日における障害面積の平均値を100%として、障害面積の相対値を求めた。結果(平均値±S.D.)は以下の通りであった。対照群 46±16%0.2%投与群 38±10%0.4%投与群 34± 8%0.6%投与群 38± 9% この結果から、いずれの濃度のヒアルロン酸ナトリウムを投与した群においても、対照群に比して口腔粘膜障害面積が減少していた。このことから、ヒアルロン酸ナトリウムには口腔粘膜障害の改善作用、特に、口腔粘膜障害の治癒促進作用があることが示された。 またDunnettの多重比較検定(ノンパラメトリック)により統計解析を行った結果、0.4%投与群における口腔粘膜障害面積の減少は、対照群に比して有意(p<0.05)であった。 また、上記薬効薬理試験1〜7の結果、製剤の投与による副作用は全く見られず、極めて安全性が高いことが示された。 本発明添加剤は、本発明人工唾液の添加剤として有用である。また本発明人工唾液は、口腔乾燥症患者における口腔内の乾燥感および疼痛を極めて短時間で消失・緩解させ、かつその効果は長時間持続し、さらに安全性が高いため極めて有用である。 本発明人工唾液により、口腔乾燥症に起因する諸症状や状態、例えば水分の過剰摂取、水分の過剰摂取に伴う夜尿症、味覚障害、摂食障害等が予防・改善される。例えば老人において口腔乾燥症になると、摂食障害を起こし、最終的には経管栄養や点滴に頼らざるを得なくなる場合もある。食事ができなくなると、生きる意欲も急速に失われ、知的障害や寝たきりになる場合も多い。口腔内の乾燥感を改善し、非乾燥感を持続させることにより自立して食事ができるようになれば、老人医療に対する改善効果も大きく、老人医療費抑制の観点からも非常に有用である。 また本発明人工唾液は、口腔内を潤し、口腔粘膜を保護できるものでもある。よって本発明人工唾液は口腔内の浄化、例えば口腔内感染症や齲歯の予防・改善等にも利用でき、国民の口腔衛生へも大きく寄与するものと考えられる。 さらに本発明により提供される口腔内の非乾燥感持続剤、口腔粘膜障害改善剤、口腔内の疼痛緩和剤、義歯装着補助剤、鼻腔乾燥改善剤も、極めて安全性が高く、また投与も容易であり、極めて有用である。本発明の人工唾液による口腔粘膜保湿効果を測定した結果を示す図である。 重量平均分子量が50万〜120万であるヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩を0.1〜0.4%(w/v)含有する液剤からなる、咀嚼障害改善剤。 ヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩の鉄含量が20ppm以下である、請求項1に記載の改善剤。 さらに少なくとも下記成分の一又は二以上を、下記含量で含有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の改善剤。塩化ナトリウム(含量:0.05〜0.1%(w/v))塩化カリウム(含量:0.1〜0.15%(w/v))塩化カルシウム(含量:0.01〜0.02%(w/v))塩化マグネシウム(含量:0.004〜0.006%(w/v))リン酸二カリウム(含量:0.01〜0.05%(w/v)) スプレー容器またはボトルに充填されていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の改善剤。 溶存状態で酸性を示す膨張性のガスと共に耐圧容器に充填された、請求項4に記載の改善剤。 前記ガスが炭酸ガスである、請求項5に記載の改善剤。 【課題】極めて安全性が高く、また投与も容易である咀嚼障害改善剤を提供する。【解決手段】重量平均分子量が50万〜120万である、鉄含量が20ppm以下であるヒアルロン酸またはその薬学的に許容される塩を0.1〜0.4%(w/v)含有する液剤からなる、さらに少なくとも、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、リン酸二カリウムを特定の含量で、一又は二以上含有する、咀嚼障害改善剤。【選択図】なし


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