タイトル: | 公開特許公報(A)_PPARγ活性化剤 |
出願番号: | 2007131683 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | A61K 31/12,A61P 3/10,A61P 3/06,A61P 3/04,A61P 9/10,A61P 9/12,A61P 25/28,A61P 29/00,A61P 1/04,A61P 43/00,A23L 1/30,A23L 2/52,C12N 15/09 |
忍 和歌子 奥澤 亜美 小出 秀之 高乗 仁 JP 2008285438 公開特許公報(A) 20081127 2007131683 20070517 PPARγ活性化剤 株式会社オンコレックス 504283301 岩城 全紀 100106954 忍 和歌子 奥澤 亜美 小出 秀之 高乗 仁 A61K 31/12 20060101AFI20081031BHJP A61P 3/10 20060101ALI20081031BHJP A61P 3/06 20060101ALI20081031BHJP A61P 3/04 20060101ALI20081031BHJP A61P 9/10 20060101ALI20081031BHJP A61P 9/12 20060101ALI20081031BHJP A61P 25/28 20060101ALI20081031BHJP A61P 29/00 20060101ALI20081031BHJP A61P 1/04 20060101ALI20081031BHJP A61P 43/00 20060101ALI20081031BHJP A23L 1/30 20060101ALI20081031BHJP A23L 2/52 20060101ALN20081031BHJP C12N 15/09 20060101ALN20081031BHJP JPA61K31/12A61P3/10A61P3/06A61P3/04A61P9/10 101A61P9/12A61P25/28A61P29/00A61P1/04A61P43/00 111A23L1/30 BA23L2/00 FC12N15/00 A 13 OL 15 4B017 4B018 4B024 4C206 4B017LG15 4B017LP01 4B018MD61 4B018ME03 4B018ME04 4B018ME14 4B018MF01 4B024AA01 4B024AA11 4B024CA04 4B024CA20 4B024DA02 4B024EA04 4B024FA02 4B024GA12 4B024HA11 4C206AA01 4C206AA02 4C206CB14 4C206KA01 4C206MA01 4C206MA04 4C206NA14 4C206ZA16 4C206ZA42 4C206ZA45 4C206ZA68 4C206ZA70 4C206ZB11 4C206ZC33 4C206ZC35 4C206ZC41本発明は、PPAR(Peroxisome Proliferator Activated Receptor、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体)γ活性化剤、およびPPARγ活性化剤(以下において、PPARγアゴニストということもある。)を有効成分として含有することを特徴とするインスリン抵抗性症候群(糖尿病、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満、高血圧症、動脈硬化症)またはアルツハイマー病、あるいは炎症性疾患の予防・改善用組成物に関する。 PPARは核内受容体ファミリーに属するサブファミリーであり、PPARα、β/δおよびγの3種類のサブタイプで構成されている。また、PPARγについてはスプライシングの相違によりγ1およびγ2という2種のアイソフォームが存在する。各サブタイプの生理的機能は近年詳細に検討され、未解明の部分はあるものの、その概要が明らかにされている(非特許文献1、2参照)。 各サブタイプの遺伝子発現の組織特異性については、PPARαは代謝の活発な組織、即ち肝臓、心臓、腎臓、筋肉で高発現をしており、PPARβ/δは組織普遍的に発現がみられるが、これに対し、PPARγはアイソフォームにより発現が異なり、γ1は脂肪細胞、マクロファージの他に、心臓、腎臓、結腸、筋肉等の組織で発現しているものの、γ2の発現は脂肪細胞に限定されている。 各サブタイプの機能は重複する部分はあるが、各々固有の機能も有することが判明している。 PPARαは脂質代謝の調節に関与し、血中トリグリセリド・LDLコレステロールの低減、血中HDLコレステロールの向上作用を有する。また、動脈硬化巣の形成に関るNF-κB、AP1の活性発現抑制作用を有する。従い、PPARα活性化剤は高脂血症・動脈硬化症に対する予防・治療効果を有する。PPARδの生理的機能については、未だ不明の部分が多いが、脂質代謝の活性化に基づく血中脂質低減作用、排卵誘発並びに肥満阻止作用が推測されている。 一方、PPARγに関しては小型脂肪細胞の分化誘導を行い、脂肪細胞のインスリン感受性を維持し、脂肪分解を抑制し、血中への遊離脂肪酸の分泌を低減することで、遊離脂肪酸に基づく末梢組織でのインスリン抵抗性を抑制する。また、脂肪細胞並びに筋肉、肝臓等の末梢組織においてグルコースの取込み、代謝を促進する。また、エネルギー消費に関るUCP2の脂肪細胞における発現を亢進する。従い、PPARγ活性化剤は糖尿病並びに肥満に対する予防・治療効果を有する。 また、PPARγは脂質代謝に関与し、その活性化剤は血中トリクリセリドおよび遊離脂肪酸の低減作用を発現することで、高脂血症の予防・治療効果を有する。更に、PPARγは血圧維持に関与するエンドセリン、PAI-1等の因子の産生に関ることで、その活性化剤は高血圧症に対する予防・治療効果を有すること、炎症に関るTNFαの脂肪細胞におけるPPARγによる産生阻害、マクロファージにおけるPPARγのNF-κBを介したアポトーシス誘導への関与、MMP-9の活性阻止、NO産生抑制等に関与することで、その活性化剤は炎症性腸疾患等の炎症に対する予防・治療効果を有することが期待されている。 また最近、PPARγがアミロイドβの代謝に関与することが報告され、その活性化剤がアルツハイマー病の予防・治療効果を有する可能性も示唆されている(非特許文献3、4参照)。 PPAR活性化剤、特にPPARγ活性化剤の糖尿病等の重要な各種疾患に対して予防・治療効果が期待されることを受けて、多くの合成医薬品が開発され、ピオグリタゾン等が既に製品として臨床応用されるようになっている。 また、顕著な活性を有さずとも、副作用の回避が期待され、長期の摂取が可能であることが期待されるPPARγ活性作用を有する食品由来の天然物が探索され、次のような化合物が発見されている。 多価不飽和脂肪酸である、エイコサペンタエン酸、脂肪酸の代謝物である9-HODE、13-HODE(非特許文献1、2参照)、ヨモギ由来成分であるカフェ酸、クロロゲン酸、3,5-ジカフェオイルキナ酸、4,5-ジカフェオイルキナ酸およびクロロゲニン酸メチル(特許文献1)、ウコン由来成分であるクルクミン(特許文献2参照)。他に、モノアシルグリセロール(特許文献3参照)が報告されている。一方、従来、ジンゲロールには、PPARγ活性化効果については全く知られていなかった。特開2003-34636号公報特開2003-128539号公報特開2001-354558号公報Willson-TM et al. , J. Med. Chem.(2000) 43, 527-550Lehrke-M & Lazar-MA , Cell(2005) 123, 993-999d'Abramo C et al. , Biochem J(2005) 391, 693-698Sastre M et al. , Proc Natl AcadSci USA.(2005) 103, 443-448 上記より、PPARγアゴニストはインスリン抵抗性を改善し、糖尿病をはじめ、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、高血圧症、動脈硬化症等のインスリン抵抗性症候群およびアルツハイマー病や炎症性疾患を予防・改善する効果を有する。 本発明は、PPARγに対して新規アゴニスト活性を有する物質を見出すことを目的とし、該物質を有効成分とするPPARγ活性化剤の提供を課題とする。さらに、本発明は、該物質を含有するインスリン抵抗性症候群およびアルツハイマー病や炎症性疾患等の予防および/または改善用組成物の提供を課題とする。 本発明者らは、各種植物抽出物からPPARγアゴニストを鋭意探索した結果、一般に日常的に用いられる生姜の成分であるジンゲロール類、とりわけ[6]−ジンゲロールが高いPPARγアゴニスト活性があることを見出し、さらに研究をすすめ本発明を完成させた。 本発明は、ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を有効成分とするPPARγアゴニストに関する。 また本発明は、上記のPPARγアゴニストであるジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を有効成分とするインスリン抵抗性、高脂血症、糖尿病、肥満等の生活習慣病およびアルツハイマー病や炎症性疾患の予防および/または改善する作用を有する組成物に関する。本発明は、より具体的には、〔1〕 ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とするPPARγ活性化剤、〔2〕 インスリン抵抗性症候群、アルツハイマー病および炎症性疾患から選択される少なくとも1の疾患の予防または改善用である〔1〕に記載の活性化剤、〔3〕 インスリン抵抗性症候群が、糖尿病、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満症、高血圧症および動脈硬化症から選択される少なくとも一の疾患である〔2〕に記載の活性化剤、〔4〕 ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とするインスリン抵抗性症候群の予防または改善用組成物、〔5〕 インスリン抵抗性症候群が、糖尿病、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満症、高血圧症および動脈硬化症から選択される少なくとも一の疾患である〔4〕に記載の組成物、〔6〕 インスリン抵抗性症候群が、糖尿病である〔4〕に記載の組成物、〔7〕 インスリン抵抗性症候群が、肥満症である〔4〕に記載の組成物、〔8〕 肥満が内臓脂肪型肥満である請求項〔7〕に記載の組成物、〔9〕 ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とするアルツハイマー病の予防または改善用組成物、〔10〕 ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする炎症性腸疾患の予防または改善用組成物〔11〕 飲食用であることを特徴とする〔4〕〜〔10〕のいずれか1項記載の組成物、〔12〕 医薬用であることを特徴とする〔4〕〜〔10〕のいずれか1項記載の組成物、〔13〕 非ヒト動物用であることを特徴とする〔4〕〜〔10〕のいずれか1項記載の組成物を提供するものである。 さらに本発明は、以下に関する。〔14〕 PPARγ活性化剤または、インスリン抵抗性症候群もしくはアルツハイマー病あるいは炎症性疾患の予防または改善用組成物を製造するためのジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上の使用、〔15〕 ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を、個体(患者等)へ投与する工程を含むことを特徴とするインスリン抵抗性症候群、アルツハイマー病または炎症性疾患の予防または改善方法。 本発明に係る活性化剤または組成物は、PPARγアゴニスト活性を有するので、インスリン抵抗性症候群やアルツハイマー病、あるいは炎症性疾患を予防または改善し得る。また、本発明の活性化剤または組成物は、インスリン抵抗性症候群を予防または改善し得るので、例えば、糖尿病(特にインスリン非依存性糖尿病またはII型糖尿病)をはじめ、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、高血圧症、動脈硬化症等の症状、病態または疾患等を予防または改善し得る。さらに、本発明に係る活性化剤または組成物は、インスリン抵抗性症候群を予防または改善し得るので、例えば、内臓脂肪型肥満に高血糖(糖尿病)、高血圧、高脂血症のうち2つ以上を合併したメタボリックシンドローム等の生活習慣病等をも予防または改善し得る。 以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。 本発明によって、ジンゲロール類がPPARγアゴニストであることが見出された。本発明は、ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有するPPARγ活性化剤を提供する。 本発明のジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を有効成分として含有する組成物は、血糖降下作用および内臓脂肪低減作用を有しており、インスリン抵抗性症候群、とりわけ例えば糖尿病または肥満等の予防・改善用組成物として有用であり、さらにアルツハイマー症や炎症性疾患の予防・改善用組成物として有用である。 インスリン抵抗性症候群としては、組織や細胞等でのインスリンの働きが低下したために生じる症状、疾患または病態等が挙げられる。インスリン抵抗性症候群には、例えば、糖尿病、肥満、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、高血圧症、動脈硬化症等が含まれる。糖尿病としては、例えば、インスリン抵抗性糖尿病またはII型糖尿病等が好ましく挙げられる。また、糖尿病には、耐糖能異常も含まれる。肥満としては、例えば内臓脂肪型肥満や皮下脂肪型肥満等が挙げられるが、内臓脂肪型肥満が好ましい。脂質代謝異常疾患としては、例えば、高脂血症、高コレステロール血症、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド血症等が挙げられる。また、インスリン抵抗性症候群には、例えば、内臓脂肪型肥満に高血糖(糖尿病)、高血圧、高脂血症(脂質代謝異常疾患)のうち2つ以上を合併したメタボリックシンドローム等の生活習慣病等も含まれる。 炎症としては、PPARγ活性が抑制または低下等したために生じる炎症性の症状、疾患または病態等が挙げられ、炎症性疾患としては、具体的には、例えば炎症性腸疾患等が挙げられる。 ジンゲロール類は式(但し、式中、nは2、4、6、8または10を表す)で表される化合物が挙げられ、例えば、生姜(Zingiber officinale)等の生薬に含まれている。 ジンゲロール類としては、例えば、[4]−ジンゲロール([4]−gingerol)、[6]−ジンゲロール([6]−gingerol)、[8]−ジンゲロール([8]−gingerol)、[10]−ジンゲロール([10]−gingerol)、または[12]−ジンゲロール([12]−gingerol)等が挙げられる。本発明においては、それらのジンゲロール類は、単独で用いることもできるし、あるいは、異なる複数のジンゲロール類を組み合わせて同時に用いることもできる。本発明のPPARγ活性化剤または組成物において用いられるジンゲロール類としては、好ましくは、[6]−ジンゲロール〔(S)−5−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)−3−デカノン;C17H26O4=294.38〕である。 本発明のジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上は、化学合成によって、または天然物から抽出して精製することによって、調製することができる。あるいは、市販品を用いてもよい。化学合成は公知の方法、例えばフェルラ酸にジエチルリン酸シアニド(DEPC)でアシル化させる方法(N. Kato et al.,Chem. Pharm. Bull.,32(4),1679(1984))や、フェルラ酸とβ−ケトスルホキシドとの反応による方法(G.Solladieet al.,J. Org. Chem.,58,2181(1993))等により実施できる。また市販品としては、例えばジンゲロール(C17H26O4,商品コード:16739-86;ナカライテスク株式会社製)等が挙げられる。 本発明におけるジンゲロール類を、天然物から抽出する場合には、ジンゲロール類を含有する植物の全体または一部分(例えば、全草、葉、根、根茎、茎、根皮、若しくは花等)をそのまま用いて、または簡単に加工処理(例えば、乾燥、切断、若しくは粉末化等)したもの(例えば、生薬等)を用いて抽出できる。ジンゲロール類を含有する植物としては、特に限定されないが、例えばショウガ科等の植物が挙げられる。ショウガ科の植物としては、例えばショウガ属またはアルピニア属の植物が好ましい。ショウガ属の植物としては、例えば、生姜(Zingiber officinale) 等が挙げられる。アルビニア属の植物としては、例えば、高良姜(Alpiniaofficinarum) 等が挙げられる。抽出条件は一般的に植物抽出に用いられる条件ならば特に制限はない。例えば、水(例えば、冷水、温水、熱湯等、好ましくは熱湯)によって抽出するか、または有機溶媒を用いて抽出できる。有機溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、アセトン、メチルイソブチルケトン、石油エーテル、シクロヘキサン、四塩化炭素、トルエン、ベンゼン、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテル、ピリジン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、またはアセトニトリル等を用いることができ、これらの有機溶媒を単独、または適宜組み合わせ、一定の比率で混合し、更には無水または含水状態で用いることができる。好ましくは、エチルアルコール−水混合溶媒、エチルアルコール、エーテル、クロロホルム、ベンゼン、アセトン、または熱石油エーテル等が望ましい。抽出は、加熱下に行っても良い。抽出物の形態は、抽出液の形態でもよいし、溶媒を除去したものでもよい。さらに、適切な溶媒に溶解、懸濁した形態であってもよい。また、これらの抽出物には、PPARγアゴニスト活性があり、PPARγアゴニスト活性を失わない範囲内で脱臭、精製等の操作を加えることができる。脱臭、精製は公知の方法で行うことができる。 本発明の活性化剤または組成物は、ジンゲロール類の誘導体、またはその薬学的に許容される塩を有効成分とするものであってもよい。ジンゲロール類の誘導体としては、各種のエステル体、エーテル体等が挙げられ、例えば、ジンジャージオール、デヒドロジンゲロン、ショウガオールあるいはメチルジンゲロール等を例示することができる。なお、前記のジンゲロール類またはその誘導体には、立体異性体が存在し、本発明では、それらの任意の純粋な立体異性体またはそれらの混合物を用いることができる。 薬学的に許容される塩としては、無機酸付加塩(例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等)、有機カルボン酸・スルホン酸付加塩(例えばギ酸塩、酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩等)、あるいは、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩等が挙げられる。 また本発明は、ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を有効成分として含有することを特徴とする、インスリン抵抗性症候群、アルツハイマー病、または炎症性疾患の予防もしくは改善用組成物を提供する。本発明の組成物には、例えば、飲食用もしくは医薬用あるいは動物用が含まれる。該組成物は、「治療薬」、「予防薬」、「治療剤」、「予防剤」、「医薬品」、「医薬組成物」、「飲食用組成物」、「飲料」、「食品」または「飼料」等と表記することもできる。 本発明のインスリン抵抗性症候群、アルツハイマー病または炎症性疾患の予防・改善用組成物は、PPARγアゴニストを含有する組成物であって、ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を有効成分として含有することを特徴としており、その形態は限定されず、例えば、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)や健康食品等の飲食品、医薬品、医薬部外品等として用いることができる。その摂取量はジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩として成人一人一日当たり0.1〜2000mg/kg体重、好ましくは1〜200mg/kg体重がよい。 また、本発明の活性化剤もしくは組成物の一つの態様としては、非ヒト動物用であり、例えば、家畜またはペット等の愛玩動物用である。家畜やペット用の飼料やペットフードとしても使用することができ、その摂取量はジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩として一日当たり0.1〜2000mg/kg体重が好ましい。 本発明の活性化剤または組成物は、安全とされている投与量の範囲内において、ヒトを含む動物に対して、必要量(有効量)が投与される。本発明の薬剤の投与量は、剤型の種類、投与方法、患者の年齢や体重、患者の症状等を考慮して、最終的には医師または獣医師等の判断により適宜決定することができる。 なお、本発明における「予防」または「改善」には、完全な予防効果または改善効果を有する場合に限定されず、部分的な効果を有する場合であってもよい。 本発明の活性化剤または組成物は、生理学的に許容される担体、賦形剤、あるいは希釈剤等と混合し、医薬用または飲食用組成物として経口、あるいは非経口的に投与することができる。経口剤としては、顆粒剤、散剤、錠剤、カプセル剤、溶剤、乳剤、あるいは懸濁剤等の剤型とすることができる。非経口剤としては、注射剤、点滴剤、外用薬剤、あるいは座剤等の剤型を選択することができる。注射剤には、皮下注射剤、筋肉注射剤、静脈注射剤、動脈注射剤あるいは腹腔内注射剤等を示すことができる。外用薬剤には、経鼻投与剤、あるいは軟膏剤等を示すことができる。本発明の活性化剤または組成物は、主成分であるジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含むように、上記の剤型とすることができる。上記剤型は、公知の製剤技術を使用できる。 例えば、経口投与用の錠剤は、賦形剤、崩壊剤、結合剤、および滑沢剤等を加えて混合し、圧縮整形することにより製造することができる。賦形剤としては、例えば、乳糖、デンプン、あるいはマンニトール等が挙げられる。崩壊剤としては、例えば、炭酸カルシウムやカルボキシメチルセルロースカルシウム等が挙げられる。結合剤としては、例えば、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、あるいはポリビニルピロリドンが挙げられる。滑沢剤としては、例えば、タルクやステアリン酸マグネシウム等が挙げられる。 本発明のジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を含む錠剤は、マスキングや、腸溶性製剤とするために、白糖等による糖衣や公知のコーティング剤でコーティングを施すことができる。コーティング剤には、例えば、エチルセルロースやポリオキシエチレングリコール、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート等を用いることができる。 また注射剤は、主成分であるジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩を適当な溶媒に溶解、あるいは分散剤を用いて分散媒に分散させることにより得ることができる。溶媒または分散媒の選択により、水性溶剤と油性溶剤のいずれの剤型とすることもできる。水性溶剤とするには、蒸留水、生理食塩水、あるいはリンゲル液等を用いることができる。また、例えば、プロピレングリコール等の溶解補助剤等を利用することもできる。 油性溶剤では、各種植物油やプロピレングリコール等を利用できる。分散剤としては、例えばポリソルベート80等の非イオン界面活性剤やメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはポリビニルピロリドン等の水溶性高分子等が挙げられる。注射剤には、必要に応じてフェノール等の保存剤を添加することもできる。また注射剤中には、塩化ナトリウムやブドウ糖等の公知の等張化剤等を加えることができる。更に、注射剤には、ベンジルアルコールや塩酸プロカイン等のような無痛化剤を添加することができる。 本発明の活性化剤または組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で他の薬物と併用することができる。他の薬物としては特に限定されないが、例えばインスリン抵抗性改善薬、抗糖尿病薬、抗肥満薬、抗高脂血症薬、降圧剤、アルツハイマー治療剤、または抗炎症薬等が好ましく挙げられる。 インスリン抵抗性改善薬としては、例えば、塩酸ビオグリタゾンまたはメトホルミン等が挙げられる。 抗糖尿病薬としては、例えば、グリベンクラミド、グリメピリド等のスルフォニルウレア剤;例えば、メトホルミン、ブフォルミン等のビグアナイド剤;例えば、ボグリボース、アカルボース、ミグリトール等のαグルコシダーゼ阻害剤;例えば、塩酸ピオグリタゾン、トログリタゾン等のチアゾリジン系誘導体;または、例えば、ナテグリニド、ミチグリニドカルシウム水和物等のフェニルアラニン誘導体等が挙げられる。 抗肥満薬としては、例えば、シブトラミン、オルリスタット、マジンドールまたはフェンフルラミン等が挙げられる。 抗高脂血症薬としては、例えば、プラバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン等のHMG−CoA還元酵素阻害薬;例えば、ベザフィブラート、フェノフィブラート等のフィブラート系薬剤;例えば、コレスチラミン等の胆汁酸吸着剤;または、例えば、ニセリトロール等のニコチン酸誘導体等が挙げられる。 降圧剤としては、例えば、アダラート、アムロジン、カルスロット等のカルシウム拮抗剤;例えば、フロセミド、トリクロルメチアジド、ヒドロクロロチアジド、スピロノラクトン、トリアムテレン、メトラゾン、インダパミド等の降圧系利尿薬;例えば、カプトプリル等のアンジオテンシン変換酵素阻害薬;例えば、ロサルタン、バルサルタン、テルミサルタン、オルメサルタンメドキソミル等のアンジオテンシンII受容体拮抗薬;例えば、プロプラノロール、ピンドロール、メトプロロール、アテノロール、カルテオロール、ラベタロール、アモスラロール、アセブトロール、アロチノロール等のβ遮断薬等が挙げられる。 アルツハイマー治療剤としては、例えば、ガランタミン、塩酸ドネペジル、トラミプロセート、R−フルルビプロフェン、塩酸メマンチンまたはリバスチグミン等が挙げられる。 抗炎症剤としては、例えば、プレドニゾロンやブデソニド等のステロイド薬、サラゾスルファピリジン、メサラミン、オルサラジンまたはバルサラジド等が挙げられる。 また、本発明の活性化剤または組成物は、種々の形態の飲料、スナック類、乳製品、調味料、でんぷん加工製品、加工肉製品等あらゆる食品に適宜配合することができる。 本発明の飲食品としては、例えば、飲料が好ましく挙げられ、本発明のジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有する茶系飲料、清涼飲料、果実飲料、野菜飲料、発泡性飲料、乳飲料、乳酸菌飲料、またはアルコール性飲料等を挙げることができる。また、本発明の飲食品として、本発明のジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有する、液状、固形状、粉末状の嗜好飲料類、調味料および香辛料類、もしくは調理加工食品、および、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品等を挙げることができる。本発明の飲食品は好ましくは、上述の各種疾患、症状または病態の予防もしくは改善効果を有する。 また本発明は、本発明の活性化剤もしくは組成物を個体(例えば、患者等)へ投与する工程を含む、上述の各種疾患の予防または改善方法を提供する。 本発明の予防もまたは改善方法の対象となる個体は、上述の各種疾患を発症し得る生物であれば特に制限されないが、好ましくはヒトである。 個体への投与は、一般的には、例えば、経口投与、動脈内注射、静脈内注射、皮下注射等当業者に公知の方法により行うことができる。投与量は、患者の体重や年齢、投与方法等により変動するが、当業者(医師、獣医師、薬剤師等)であれば適当な投与量を適宜選択することが可能である。 さらに本発明は、ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上の、本発明の活性化剤もしくは組成物の製造における使用に関する。 以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。〔実施例1〕 PPARγ活性化試験:PPARγ活性は、PPARγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)を指標に検討した。すなわち、サル由来CV-1細胞株を6well plateにまき、DMEM[Doulbecco's modified Eagle's Medium ;10% FBS(Fetal BovineSerum)]中で1日培養した。Gal4のDNA結合ドメイン(Gal4-DBD)およびPPARγのリガンド結合ドメイン(PPARγ-LBD)のキメラタンパク発現プラスミド(pGal4DBD/PPARγLBD)、Gal4応答配列(配列番号:CGGAGGACAGTACTCCG)およびホタルルシフェラーゼ遺伝子を含むレポータープラスミド(pGal4-Luc)、およびウミシイタケルシフェラーゼ遺伝子の上流にCMV(cytomegarovirus)プロモーターを連結したコントロールプラスミド(pGL4.75hRluc-CMV;Promega社製)を同時に各々1μg, 0.9μg, 0.1μg/wellとなるようトランスフェクション試薬(FuGENE HD; Roche)と共に加え、前記培養した細胞にプラスミドを導入した。その後形質転換細胞をトリプシンによりはがし、細胞をPBS(リン酸緩衝生理食塩水)にて洗浄後、96wellplateに再度まきなおした。この際、培養液を被験物質を含むDMEM培地に交換し、さらに48時間培養した。PBSにて細胞を洗浄後、デュアルルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社製)を用いてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼ活性を各々測定した。すなわち細胞溶解液で細胞を溶解し、ルシフェリンを含む基質溶液を加え、ルミノメーターにてホタルルシフェラーゼおよびウミシイタケルシフェラーゼの発光量を各々測定した。なお、PPARγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)は以下のように定義した。 PPARγ依存的な遺伝子の転写活性(ルシフェラーゼ活性)=(Gal4-Lucによるホタルルシフェラーゼ活性)/(hRluc-CMVによるウミシイタケルシフェラーゼ活性) 上記に示すPPARγ活性化試験を用い、生姜の成分の一種である[6]−ジンゲロールのルシフェラーゼ活性を測定した。[6]−ジンゲロール(ナカライテスク株式会社製)はDMSOに100mMの濃度で溶解したものを10、20、50、100μMの濃度となるよう培地に添加した。コントロール(ネガティブコントロール)として0.33%DMSO(ジメチルスルホキシド)を添加した群を、また陽性対照(ポジティブコントロール)としてPioglitazone(武田薬品工業株式会社製)を10μMとなるよう添加した群をそれぞれ作成した。 探索の結果、表1に示すように、[6]−ジンゲロールは10、20、50、100μMの濃度にてルシフェラーゼ活性を示した。なお、各ルシフェラーゼ活性値は、コントロール(DMSO)におけるルシフェラーゼ活性を100とし、それに対する相対値で示す。〔実施例2〕脂肪細胞分化能試験:マウス3T3-L1細胞株を24 well plateにまき、DMEM (10% CS)中で飽和細胞数になるまで培養した。培養液をDMEM(10% FBS)に交換し、さらに2日培養した。その後分化誘導培地[DMEM-10% FBS, 0.5mM IBMX(3-isobutyl-1-methylxanthine),0.25μM insulin, 2μM dexamethazone]に交換し、2日培養した。さらに培養液を被験物質を含んだDMEM-10% FBSに交換し、2日培養した。この日を0日目とし、更に培養を続け、2、4、6日目に被験物質を新たに添加した。8日目にOilRed O(和光純薬工業株式会社製)にて細胞内の脂肪滴を染色し、画像を取り込んだ(図1)。また同様に分化誘導した細胞を回収し、AdipoRed(Cambrex社製) を用いて脂肪滴の量を蛍光強度として測定した(表2)。被験物質としては、[6]−ジンゲロールを用い20、100μMの濃度となるようDMEM-10%FBSに添加したものを用いた。なお、各脂肪細胞分化能は、コントロール(DMSO)における細胞内の脂肪滴量を100とし、それに対する相対値で示す。陽性対照として、Pioglitazoneを用いた。以上説明したように、本発明に係る活性化剤または組成物は、PPARγアゴニスト活性を有するので、インスリン抵抗性症候群やアルツハイマー病あるいは炎症性疾患を予防または改善し得る。また、インスリン抵抗性症候群を予防または改善できるので、例えば、糖尿病(特にインスリン非依存性糖尿病またはII型糖尿病)をはじめ、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満(特に内臓脂肪型肥満)、高血圧症、動脈硬化症等の症状、病態または疾患、内臓脂肪型肥満に高血糖(糖尿病)、高血圧、高脂血症のうち2つ以上を合併したメタボリックシンドローム等の生活習慣病等を予防または改善し得る。本発明に係るPPARγ活性化剤の顕微鏡写真である。 ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とするPPARγ活性化剤。 インスリン抵抗性症候群、アルツハイマー病および炎症性疾患から選択される少なくとも1の疾患の予防または改善用である請求項1に記載の活性化剤。 インスリン抵抗性症候群が、糖尿病、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満症、高血圧症および動脈硬化症から選択される少なくとも一の疾患である請求項2に記載の活性化剤。 ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とするインスリン抵抗性症候群の予防または改善用組成物。 インスリン抵抗性症候群が、糖尿病、高インスリン血症、脂質代謝異常疾患、肥満症、高血圧症および動脈硬化症から選択される少なくとも一の疾患である請求項4に記載の組成物。 インスリン抵抗性症候群が、糖尿病である請求項4に記載の組成物。 インスリン抵抗性症候群が、肥満症である請求項4に記載の組成物。 肥満が内臓脂肪型肥満である請求項7に記載の組成物。ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とするアルツハイマー病の予防または改善用組成物。ジンゲロール類またはその誘導体、あるいはそれらの薬学的に許容される塩から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする炎症性腸疾患の予防または改善用組成物。飲食用であることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の組成物。医薬用であることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の組成物。非ヒト動物用であることを特徴とする請求項4〜10のいずれか1項に記載の組成物。 【課題】 本発明は、PPARγに対してアゴニスト活性を有する物質を見出すことを目的とし、該物質を有効成分とするPPARγ活性化剤の提供を課題とする。さらに、本発明は、該物質を含有するインスリン抵抗性およびアルツハイマー病や炎症性疾患等の予防または改善剤の提供を課題とする。【解決手段】 各種植物抽出物からPPARγアゴニストを鋭意探索した結果、ジンゲロール類が高PPARγアゴニスト活性を有することを見出し、さらにインスリン抵抗性症候群およびアルツハイマー病や炎症性疾患の予防・改善する効果を有することを見出した。【選択図】なし配列表