生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_ラムナン硫酸の製造方法
出願番号:2007118726
年次:2008
IPC分類:C08B 37/00,A61K 36/02,A61P 7/02


特許情報キャッシュ

大谷 淨治 浜口 元彦 JP 2008274085 公開特許公報(A) 20081113 2007118726 20070427 ラムナン硫酸の製造方法 江南化工株式会社 304040441 小林 洋平 100108280 大谷 淨治 浜口 元彦 C08B 37/00 20060101AFI20081017BHJP A61K 36/02 20060101ALI20081017BHJP A61P 7/02 20060101ALI20081017BHJP JPC08B37/00 QA61K35/80 ZA61P7/02 3 3 OL 12 4C088 4C090 4C088AA15 4C088AC01 4C088BA08 4C088BA12 4C088BA27 4C088BA34 4C088BA37 4C088CA25 4C088NA14 4C088ZA54 4C088ZC41 4C090AA04 4C090BA64 4C090BB16 4C090BB54 4C090BC07 4C090BD32 4C090BD37 4C090BD41 4C090CA42 4C090DA09 4C090DA23 本発明は、ラムナン硫酸の製造方法に関するものである。 藻類には、各種の有用な多糖類(例えば、フコイダン、ラムナン硫酸など)が含まれている。このうち、ラムナン硫酸は、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖を意味しており、一部の藻類またはバクテリアなどに含まれている。また、緑藻の一種であるヒトエグサからラムナン硫酸を抽出する方法が知られている(非特許文献1)。このラムナン硫酸には、抗潰瘍効果(特許文献1)などの薬理作用が認められている。 本発明者らは、ラムナン硫酸の薬理作用を探求すると共に、その製造方法に関する研究開発を行ってきた。従来法としては、次のようなものが知られている。乾燥させたヒトエグサを水に懸濁し、加熱することによりラムナン硫酸を浸出させる。遠心分離して固形物を除いたあと、エタノールを添加することで、多糖類を沈殿させ、それを集めて水に溶解し、透析により低分子量成分を除くことによりラムナン硫酸を得る(特許文献1)。 しかし、ヒトエグサは食用にも供されるので高価であるため、ラムナン硫酸の生産を大量かつ安価に行うことが困難であった。特開平6−247861号公報藻類の生化学的研究、共立出版、1979、p602−619 本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも安価にラムナン硫酸を製造できる方法を提供することにある。 海藻の細胞は、個々の細分が分泌した細胞間物質で結着することで藻体を形成している。水中で生育する海藻の細胞間物質は、水に対して不溶性となっている。この細胞間物質は、細胞から分泌された物質により作られたものであるので、その成分は本来水溶性である。水溶性の各成分が細胞内で作られ、細胞外に排出され、細胞膜に存在する酵素の作用で、各成分が合成されて、水に不溶の細胞間物質が形成されていると推定される。 細胞間物質の構成成分はおよそ、セルロース(βグルカン)と蛋白質とその海藻固有の多糖である。このため、本発明者らは、セルラーゼとプロテアーゼで細胞間物質を処理すると、これらの酵素で分解されない多糖のみを溶出・取り出すことができるのではないかと推定した。なお、酵素を使用しない方法での抽出は、酸・アルカリ・熱で、構成成分の結合を切って溶出・抽出するので、必ずしも藻体の多糖を抽出できるとは限らなかった。 こうして、本発明者らは、鋭意検討の結果、従来はラムナン硫酸の製造用材料としては顧みられていなかった安価なアオサを材料とし、これをセルラーゼとプロテアーゼで処理することにより、ラムナン硫酸を製造できることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。 こうして上記課題を解決するために、本発明に係るラムナン硫酸の製造方法は、アオサをセルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理することを特徴とする。 ラムナン硫酸とは、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖類のことを意味している。天然のラムナン硫酸の分子量は、数十万〜数百万程度までに広く分布している。但し、精製中或いは精製後に、予期しないで酸処理、アルカリ処理などにより、容易に加水分解され、分子量が小さくなることがある。本発明の方法によれば、ほとんど加水分解を受けない大分子量のラムナン硫酸を製造することができる。また、大分子量のラムナン硫酸は、適当に処理することにより、所望の分子量としたラムナン硫酸又はラムナンを調製することもできる。 アオサとは、緑藻に属する藻類の一種である。アオサの仲間(アオサ属Ulvaceae)には、ヒメアオノリ属、ヒメボタンアオサ属、アオノリ属、ペルクルサリア属、アオサ属、クロヒトエグサ属などが含まれる。アオサの体のつくりは単純であり、比較できる形質が少なく、かつ同種であっても個体によって形態が大きく異なることから、その分類は非常に難しい。図1及び図2には、アオサの分類例を示した。従来、ラムナン硫酸を得るためには、ヒトエグサ(クロヒトエグサ属)を熱水で処理していた。ところが、アオサ属(ミナミアオサ、アナアオサを含む)は、熱水処理のみでは、ラムナン硫酸を得ることが困難であった。アオサ属は、成長速度及び栄養塩固定能力が高いことから、内湾の富栄養化海域において、しばしば大発生する。このため、水質浄化に対する取り組みが行われているものの、用途(食用・材料を含む)に乏しいことから、ほとんどは廃棄処分されている。本発明によれば、アオサ属に新たな付加価値を与えることができる。 本発明においては、Ulva fenestrata, U. armoricana, U. scandinavica, U. rigida, U. taeniata,リボンアオサ(U. fasciata),アミアオサ(U. reiculata),コツブアオサ(U. spinulosa),ナガアオサ(U. arasakii),アナアオサ(U. pertusa), U. rotundata,オオバアオサ(U. lactuca),ミナミアオサ(U. ohnoi)などのアオサが好ましく用いられる。 セルラーゼとは、エンド−1,4−β−グルカナーゼとも称し、セルロースのβ1→4グルコシド結合を加水分解し、おもにセロビオースを生成する酵素を意味する。セルラーゼは、高等植物、細菌、糸状菌、木材腐朽菌、軟体動物などに存在する。本発明においては、セルラーゼの由来は問われず、上記いずれの生物から抽出・精製したもの、或いは分子生物学的に製造したものを用いることもできる。セルラーゼは、アオサの細胞壁を分解し、ラムナン硫酸をアオサから流出しやすくなるように作用すると考えられる。 プロテアーゼとは、タンパク質分解酵素あるいはタンパク分解酵素とも呼ばれる。ペプチド結合の加水分解を触媒するEC3.4群の総称として用いられる。プロテアーゼは、動物、植物、微生物界に広く分布し、細胞内外のいずれにも存在する。本発明においては、プロテアーゼの由来は問われず、上記いずれの界から抽出・精製したもの、或いは分子生物学的に製造したものを用いることもできる。 プロテアーゼは、作用様式によって、末端からペプチド結合を切断するエキソペプチダーゼ(アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼを含む)と、中間から切断するエンドペプチダーゼとに分類されるが、本発明においては、いずれのペプチダーゼも適用できる。また、活性発現機構によって、セリンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、金属プロテアーゼなどに分類されるが、本発明においては、いずれのペプチダーゼも適用できる。但し、経済的な観点からすると、エキソペプチダーゼ、セリンプロテアーゼを用いることが好ましい。 ラムナン硫酸は、アオサの内部において、タンパク質成分と結合することにより、アオサ体内に留まっているものと考えられる。プロテアーゼは、ラムナン硫酸と結合しているタンパク質成分を分解し、ラムナン硫酸がアオサから容易に流出するように作用すると考えられる。 本発明においては、セルラーゼ処理、及びプロテアーゼ処理の順序は問われず、(1)セルラーゼ処理を行った後に、プロテアーゼ処理を行う、(2)プロテアーゼ処理を行った後に、セルラーゼ処理を行う、(3)セルラーゼ処理とプロテアーゼ処理とを同時に行う、のいずれでもよい。また、セルラーゼ処理およびプロテアーゼ処理の際には、それら酵素が作用可能な適当なpH及び温度域において処理することができる。 適当なpHとは、用いる酵素(セルラーゼ及びプロテアーゼ)が作用できるpHを意味している。pHの調節には、適当な酸(塩酸・硫酸などの無機酸、酢酸・シュウ酸・クエン酸などの有機酸を含む)または適当なアルカリ(アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア、アミンなど)を用いることができる。また、使用するセルラーゼとプロテアーゼの作用pH域が異なる場合には、各酵素処理の際に、それぞれ適当なpHに調整することが好ましい。 適当な温度とは、用いる酵素(セルラーゼ及びプロテアーゼ)が作用できる温度を意味している。一般的には、10℃〜80℃(好ましくは、20℃〜70℃、更に好ましくは20℃〜60℃)の温度域で用いることが好ましい。また、使用するセルラーゼとプロテアーゼの作用温度域が異なる場合には、各酵素処理の際に、それぞれ適当な温度に調整することが好ましい。 本発明においては、酵素処理の前に、アオサと水とを混合しておくことが好ましい。乾燥する前のアオサを用いた場合には、アオサに付着した水分、及びアオサに含まれる水分が存在するために、必ずしもアオサと水とを混合する必要はない。但し、アオサと水とを混合することにより、酵素処理時のpH調整を行いやすいことから好ましい。 アオサと水とを混合する際には、アオサはそのままで用いることもできるし、適当な大きさに切断したものを用いることもできる。また、アオサは、海から採取したものを乾燥することなく用いることもできるし、乾燥させたものを用いることもできる。 アオサと水とは、任意の質量比率で混合することができる。但し、アオサに対して水が少なすぎる場合には、十分にラムナン硫酸が抽出されないおそれがある一方、水に対してアオサが少なすぎる場合には、ラムナン硫酸の濃度が低いために、ラムナン硫酸抽出後の処理に手間が掛かることになる。このため、アオサ:水=1:100〜100:1(好ましくは1:10〜10:1、更に好ましくは1:5〜5:1)の質量比として混合することが好ましい。 本発明においては、セルラーゼ処理を行った後に、プロテアーゼ処理を行うことが好ましい。アオサにおけるラムナン硫酸の存在形態は必ずしも明確ではないが、まずセルラーゼ処理を行うことにより、アオサの外壁部分(セルロース)を分解し、その後にプロテアーゼ処理を施すことが、より好ましい形態となる。 また、セルラーゼ処理とプロテアーゼ処理とを同時に行うことが好ましい。そのようにすれば、酵素処理が一度で済むので、製造時間を短縮することができる。なお、本発明によれば、プロテアーゼ処理を行った後に、セルラーゼ処理を行う、こともできる。 本発明によれば、従来にはほとんど使用価値が認められなかったアオサから、ラムナン硫酸を抽出することができる。このため、安価かつ大量にラムナン硫酸を提供することができる。ラムナン硫酸には、各種の有用な生理活性があることから、産業上の利用価値が非常に大きい発明となる。 次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。 アオサが有する多糖類は、従来文献(特許文献1、非特許文献1)に開示された方法(例えば、熱水加熱処理、熱希アルカリ処理、熱希酸処理)では抽出され難い。本発明者らは、上記方法に代えて、次の方法により、アオサから多糖類を調製することに成功した。 図3には、本実施形態の方法を示した。まず、アオサを適当な大きさ(例えば、数cm〜10cm程度)に裁断する(S100)。本発明によれば、裁断処理は必ずしも必要ではないが、適当な大きさとしておくことにより、各種処理を行いやすくなる。 次に、アオサに適量の水を加えて、アオサと水との混合液を調製する(S110)。本発明によれば、加水処理は必ずしも必要ではないが、水を加えることにより、酵素処理時のpH調整を行いやすくなる。 次に、酵素の種類に応じて、pHを調整した後(S120)、酵素を添加し、酵素処理を行う(S130)。このとき、セルラーゼ処理を行った後、プロテアーゼ処理を行うことが好ましいが、本発明によれば、必ずしもこの順で行う必要はなく、プロテアーゼ処理を行った後、セルラーゼ処理を行っても良いし、セルラーゼ処理とプロテアーゼ処理とを同時に行っても良い。このとき、使用する酵素に応じて、反応物を適当な温度域に保つ。また、酵素処理時には、混合液を撹拌することができる。本発明に使用できるセルラーゼとしては、セルロース分解活性を有しているものであればよい。市販品としてのセルラーゼには、不純物として別の酵素活性(例えば、アミラーゼ、プロテアーゼなどの活性)を有しているものがあるが、これらのものも本発明に用いることができる。セルラーゼとしては、特に限定されるものではないが、例えばセルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム製)、スペザイムCP、GC220、マルチフェクトCL、インディエイジ44L、プリマファースト、インディエイジRPW、インディエイジMAX、インディエイジスーパーGXプラス、インディエイジニュートラ、オプチマッシュBG、マルチフェクトA40、ピュラダックスHA(ジェネンコア協和製)、ドリセラーゼKSM、セルロシンAC40、LaminexBG(協和エンザイム製)、GODO−TCF、GODO−TCL、GODO TCDーH、ベッセレックス(合同酒精製)、ソフィターゲン・C−1(タイショーテクノス製)、超耐熱性セルラーゼ(耐熱性酵素研究所)、セルライザー、セルラーゼXL−522、セルチームC、セルライザーHTコンク、セルラーゼXL−531(ナガセケムテックス製)、ベイクザイムXE(日本シイベルヘグナー製)、セルソフト、デニマックス、セルザイム、セルクラスト、セルクラスト1.5LFG、バイオフォードプラス、エネルジェックス(ノボザイムズ製)、セルロシンAC40、セルロシンAL、セルロシンT2、セルロシンME(エイチビィアイ製)、セルラーゼ”オノヅカ”3S、セルラーゼ”オノヅカ”P12S、セルラーゼY−NC、セルラーゼY−2NC、パンセラーゼBR、マセロチーム2A(ヤクルト薬品工業製)、スミチームAC、スミチームC(新日本化学工業製)、エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット、バイオスター、フェドラーゼ(洛東化成工業製)などが用いられる。 また、プロテアーゼとしては、特に限定されるものではないが、例えばオリエンターゼ20A、テトラーゼS、オリエンターゼ90N、ヌクレイシン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ0NS、オリエンターゼ22BF、オリエンターゼ5BL(エイチビィアイ製)、モルシンF、IP酵素(キッコーマン製)、パパイン、ブロメライン、プロテックス7L、アルカリプロテアーゼGL440、プロテックス6L、ピュラフェクト、ピュラフェクト0X、プロペラーゼ、プロテックス0XG(ジェネンコア協和製)、ソフターゲンM、ソフターゲン・M2(タイショーテクノス製)、グリンドアミルPR59、グリンドアミルPR43(ダニスコカルタージャパン製)、デナプシン2P、食品用精製パパイン、デナチームAP、ビオプラーゼAL−15FG、ビオプラーゼ30L、ビオプラーゼAPL−30、ビオプラーゼXL−416F、ビオプラーゼSP−15FG、ビオプラーゼSP−4FG、プロテアーゼCL−15(ナガセケムテックス製)、PTN、ニュートラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、バイオフィードプロ、アルカラーゼ、NUE、ピラーゼ、クリアーレンズプロ、エバラーゼ、カンナーゼ、ノボザイムFM、フレーバーザイム、プロタメックス、ノボラン(ノボザイムズ製)、プロテアーゼYP−SS、パンチダーゼNP−2、パンチダーゼP、アロアーゼAP−10、アロアーゼNP−10、アロアーゼNS、アロアーゼXA−10、プロテアーゼAL(ヤクルト薬品工業製)、マキシレン、フロメーズ(ロビン製)、アクチナーゼAS、アクチナーゼAF(科研ファルマ製)、精製パパイン、コクラーゼ・P(三共ライフテック製)、スミチームAP、スミチームLP、スミチームFP、スミチームLPL、スミチームMP(新日本化学工業製)、プロチンP、デスキン、プロチンA、サモアーゼ(大和化成製)、ニューラーゼF3G、ニューラーゼA、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼN「アマノ」G、プロテアーゼS「アマノ」G、パパインW−40、プロメラインF、プロレザーFG−F、プロテアーゼP「アマノ」3G、プロテアーゼM「アマノ」G(天野エンザイム製)、ベイクザイムB500(日本シイベルヘグナー製)、Papain F.、Trypsin4.0 T、COROLASE N、VERON L10、COROLASE L10、COROLASE 7089、VERON W(樋口商会製)、名糖レンネット、名糖レンネットスーパー(名糖産業製)、エンチロンNBS、エンチロンSA、マグナックスMT(洛東化成工業製)、アクチナーゼE(科研製薬株式会社製)などが用いられる。 酵素処理が終了したら、必要に応じて加熱・pH調整等の方法での酵素失活処理等の後処理を行ってから反応物をろ過し、水溶液画分と残渣画分とに分ける(S140)。このとき、多糖類のほとんどは水溶液側に抽出されているので、水溶液画分を回収する(S150)。ここで、水溶液画分を乾燥処理することにより(S160)、多糖類の粗抽出物とすることができる(S170)。 また、水溶液画分或いは粗抽出物については、当業者に周知の生化学的な手法(例えば、イオン交換、透析、電気透析、活性炭吸着、カラム分離、限外ろ過、ゲルろ過など)を単独で、或いは適当に組み合わせることにより、更に精製処理を行い(S180)、乾燥することにより(S190)、精製抽出物とすることができる(S200)。 <実施例1> アオサからの粗抽出物及び精製抽出物の調製 次に、アオサから多糖類を調製する際の具体的な方法について、実施例を参照しつつ詳細に説明する。 まず、海岸でアオサを採取した。顕微鏡観察等により、このアオサはアナアオサであることが判った。 アオサを軽く水洗して、表面に付着したゴミ等を取り除いた後、適当な大きさ(約5cm〜10cm程度)に裁断した。裁断後のアオサ(約300g)をビーカに入れ、ここに水を注ぎ、約1000gの混合液とした。混合液のpHは6であった。本実施形態に用いたセルラーゼの至適pHは6付近である。もし、混合液のpHが至適pHから外れるようであれば、リン酸、クエン酸などの酸を用いてpHを下げる、或いは炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリを用いてpHで上げることができる。 ここに1gのセルラーゼ(セルロシンT2(エイチビーアイ株式会社製))を添加し、良く混合して酵素を溶解した。 上記ビーカを55℃の温水槽に付けて、48時間に渡って酵素処理(セルラーゼ処理)を行った。セルラーゼ処理後の混合液中のアオサには、外観上は大きな変化は認められず、少し柔らかくなった程度であった。 セルラーゼ処理後の混合液をトリスヒドロキシメチルアミノメタンと希塩酸とを用いて、pHを9程度に調整した。本実施形態で得られる多糖類を食品として用いる場合には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどを用いてpHを調整することが好ましい。pH調整後、1gのプロテアーゼ(アクチナーゼE(科研製薬株式会社製))を添加し、良く混合して酵素を溶解した。 上記ビーカを55℃の温水槽に付けて、48時間に渡って酵素処理(プロテアーゼ処理)を行った。プロテアーゼ処理後の混合液中のアオサは、大半が溶解しており、少量の未分解物が残っている程度であった。 両酵素処理が完了した混合液を85℃で30分間加熱した後、布を使ってろ過し、水溶液画分と残渣画分とに分けた。水溶性画分を凍結乾燥処理することにより、多糖類の粗抽出物(約8g)を得た。 1gの粗抽出物を7M尿素・0.15M塩化カリウム溶液(以下、「溶液A」という)に溶解した。予め溶液Aにて平衡化したDEAEカラムに、粗抽出物溶液をアプライし、カラム容積の3倍以上の溶液Aを通液した。 次いで、溶液Aに代えて、7M尿素・2.3M塩化カリウム溶液をカラムに通液し、塩化カリウムが0.15Mから2.3Mとなるステップグラジエントを行った。 カラムの溶出側にフラクションコレクターを設け、各フラクションを回収した。各フラクションについて、一部(0.5mL)を用い、これに5%フェノール(0.5mL)と硫酸(2.5mL)を添加し、フェノール発色が認められるか否かを確認した。ここで黄色〜茶色に発色したフラクションには、多糖類が存在していることから、これらのフラクションを合わせて、透析膜中に入れ、透析・脱塩処理を行った。 透析後の溶液を凍結乾燥し、300mgの精製抽出物を得た。 <実施例2> 粗抽出物及び精製抽出物の分析 粗抽出物及び精製抽出物については、上記フェノール硫酸発色による多糖類の検出に加えて、GPC(HPLC)分析、糖組成の分析、硫酸基含量の分析を行った。 GPC(HPLC)分析は、次の条件で行った。 カラムは、Shodex OHpack SB−806M HQ 直列2本を用い、溶離液は0.1M NaCl溶液を使用し、流量を1.0mL/minとした。また、カラム温度は40℃とした。 10mgのサンプルを10mLの0.1M NaCl溶液に溶解し、0.2μmまたは0.45μmのメンブランフィルターでろ過したものを分析に供した。このサンプル液50μLをHPLC装置に注入し分析した。 糖組成の分析は、次の条件で行った。 カラムは、Shodex Asahipak NH2P−50 4Eを用い、溶離液は、アセトニトリル:水=75:25を使用し、流量を1.0ml/minとした。また、カラム温度は40℃とした。 20mgのサンプルを10mLの2N硫酸液に添加し、沸騰水中で2時間、加熱・分解した。これに飽和塩化バリウム溶液を加えて中和した後、遠心分離して硫酸バリウムを沈降・除去した。上澄液を回収し、乾固するまで減圧乾燥した。この乾固物に10mLのアセトニトリル/水(75/25)液を加え溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過したものを分析に供した。このサンプル液をHPLC装置に注入・分析し、スタンダードとの比較により、糖組成を計算した。 スタンダード(検量線)には、適量(1〜20mg)の標品の糖(試薬)に10mLのアセトニトリル/水(75/25)液を加え溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過したものを用いた。分析結果から、tR(リテンションタイム:保持時間)と検量線を得た。 硫酸基含量の測定は、次の方法で行った(この方法は、日本薬局法に記載されている燃焼フラスコ法と同じデータが得られる)。 20mgのサンプルに5mLの1N塩酸を加え溶解した後、沸騰水中で5時間加熱・分解した。1mLの分解液を採取し、ロータリーエバポレーターを用いて60℃で減圧濃縮・乾固した。乾固物に2mLの純水を加えて溶解し、再度ロータリーエバポレーターにて60℃で減圧濃縮・乾固した。添加した塩酸を蒸散させるため、純水添加と減圧濃縮・乾固の操作を5回繰り返した。最終的な乾固物に10mLの純水を添加・溶解し、サンプル液とした。 0.5mLのサンプル液(硫酸基濃度に応じて純水で適当に希釈したもの)に、2mLのエタノール、1mLの塩化バリウム緩衝液、1.5mLのロジソン酸Na液を添加し、10分間暗室で発色させた後、520nmで吸光度を測定した。 スタンダード(検量線)には、硫酸ナトリウムを標品として用い、適当な濃度の水溶液を調整した後、上記と同様の操作を行って発色させ、その吸光度を測定し、検量線を作成した。 粗抽出物の分析結果を図4及び図5に示した。図4には、GPC(HPLC)分析チャートを示した。図中のピーク1(tR=16.183min.)がアオサ由来の多糖類であると判断した。標品との比較から、この多糖類の分子量は、数十万〜数百万程度の範囲であることが判った。 また、図5には、糖組成分析チャートを示した。チャートより、粗抽出物には、多糖類以外のアオサ由来水溶性物質(例えば、アミノ酸など)が多く含まれていることが判った。また、糖類として、ラムノースを主とし、他にキシロース、マンノース、グルコースなどが含まれていることが判った。 また、ロジソン酸法による硫酸基含量の分析結果から、粗抽出物には、8〜9%(SO4換算)の硫酸基が含まれることが判った。 精製抽出物の分析結果を図6及び図7に示した。図6には、GPC(HPLC)分析チャートを示した。図中のピーク1(tR=16.438min.)がアオサ由来の多糖類であると判断した。標品との比較から、この多糖類の分子量は、数十万〜数百万程度の範囲であることが判った。 また、図7には、糖組成分析チャートを示した。チャートより、精製抽出物には、主にラムノース、他にキシロース、マンノース、グルコースなどが含まれていることが判った。比較品として、図8には、従来法によりヒトエグサからの精製抽出物の糖組成分析チャートを示した。両抽出物の糖組成は、類似しているものの、それらの組成比は異なっていることが判った。 また、ロジソン酸法による硫酸基含量の分析結果から、精製抽出物には、約16%(SO4換算)の硫酸基が含まれていることが判った。 <実施例3> 抗トロンビン活性(血液抗凝固活性)の測定 (1)試薬の調製 下記6種類の溶液をそれぞれ調製した。A液:バルビタール緩衝液(pH7.3) 2.88gのバルビタールと1.88gのバルビタールNaを水に溶解して、1LとしたものをA液とした。B液:生理食塩水 9gの塩化ナトリウムを水に溶解し、1LとしたものをB液とした。C液:牛胎児血清希釈液 2mLの牛胎児血清にB液を加え、50mLとしたものとC液とした。D液:1%フィブリノーゲン液 500mgのフィブリノーゲンをB液で溶解し、50mLとしたものをD液とした。E液:0.01%トロンビン液 5mgのトロンビンをB液で溶解し、50mLとしたものをE液とした。 一般にトロンビンは、質量ではなく、UNIT量で販売されている(例えば、1000UNIT/本)。トロンビン溶液は保存が効かないので、実際の試験では、市販品のトロンビンの一部を計量して採取し、B液で溶かして使用した。F液:サンプル液 所定量のサンプルを10mLのA液に溶解したものをF液とした。また、コントロールとして、サンプルを含まないA液のみを用いた。 (2)抗トロンビン活性の測定 1mLのA液、0.5mLのF液、0.75mLのC液、及び0.75mLのE液の全量3mLを試験管に混合し、37℃の温水槽で15分間インキュベートした。 これに1mLのD液を加えて全量を4mLとし、37℃の温水槽でインキュベートしながら、溶液の白濁・凝固までの時間を観察した。 測定は各サンプルで7回行い、その平均値を白濁・凝固時間とした。 (3)比活性 サンプルとして、ヘパリン(Heparin Sodium関東化学:市販試薬)とアオサ精製抽出物を用いた。F液中のサンプル濃度を同じにして、ヘパリンに対する抗トロンビン比活性を求めた。比活性は、上記(2)の溶液の白濁・凝固までの時間から、次式で求めた。 T0:コントロールの白濁・凝固までの時間 T1:ヘパリン添加時の白濁・凝固までの時間 T2:アオサ精製抽出物添加時の白濁・凝固までの時間 比活性(%)=(T2−T0)/(T1−T0)×100 (4)結果 アオサ精製抽出物のヘパリンに対する、抗トロンビン比活性は、約15%であった。 (5)考察 アオサ精製抽出物には抗トロンビン活性があり、ヘパリン様の血液凝固阻害作用を有していることが判った。ただし、その活性は、ヘパリンの約15%の比活性にとどまった。 特許第2521083号によれば、抗トロンビン活性は、ヒトエグサ由来のラムナン硫酸では、ヘパリン以上の比活性があるとされている。 このことと、構成糖の差異を考慮すると、アオサ由来のラムナン硫酸は、ヒトエグサ由来のラムナン硫酸とは別の物質であると考えられる。 このように本実施形態によれば、従来にはほとんど使用価値が認められなかったアオサから、ラムナン硫酸を抽出することができた。このため、安価かつ大量にラムナン硫酸を提供することが可能となった。ラムナン硫酸には、各種の有用な生理活性があることから、産業上の利用価値が非常に大きい発明である。アオサ類の分類図である(アオサ類の分子情報による集団生態学的解析と応用、2003、成山堂書店、p70−87から引用)。アオサ類の分類図である(蒲郡市三河湾環境チャレンジ、第3回シンポジウム(H17.9)、第2章.1より引用)。アオサ由来多糖類の製造方法を示す工程図である。アオサ粗抽出物のGPC(HPLC)分析チャートである。アオサ粗抽出物の糖組成分析チャートである。アオサ精製抽出物のGPC(HPLC)分析チャートである。アオサ精製抽出物の糖組成分析チャートである。ヒトエグサ精製抽出物の糖組成分析チャートである。アオサをセルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理することを特徴とするラムナン硫酸の製造方法。セルラーゼ処理を行った後に、プロテアーゼ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のラムナン硫酸の製造方法。前記セルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理の前に、アオサと水とを混合しておくことを特徴とする請求項1または2に記載のラムナン硫酸の製造方法。 【課題】 安価にラムナン硫酸を製造できる方法を提供すること。【解決手段】 アオサをセルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理することにより、ラムナン硫酸を製造できる。このとき、セルラーゼ処理を行った後に、プロテアーゼ処理を行うことが好ましい。また、セルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理の前に、アオサと水とを混合しておくことが好ましい。この製造方法によれば、従来には用途が少なかったアオサにラムナン硫酸製造材料としての付加価値が付く。【選択図】 図3


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特許公報(B2)_ラムナン硫酸の製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_ラムナン硫酸の製造方法
出願番号:2007118726
年次:2012
IPC分類:C08B 37/00,A61K 36/02,A61P 7/02


特許情報キャッシュ

大谷 淨治 浜口 元彦 JP 5038012 特許公報(B2) 20120713 2007118726 20070427 ラムナン硫酸の製造方法 江南化工株式会社 304040441 小林 洋平 100108280 大谷 淨治 浜口 元彦 20121003 C08B 37/00 20060101AFI20120913BHJP A61K 36/02 20060101ALN20120913BHJP A61P 7/02 20060101ALN20120913BHJP JPC08B37/00 QA61K35/80 ZA61P7/02 C08B 37/00 A61K 36/02 A61P 7/02 JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamII) CAplus(STN) 特開昭63−235301(JP,A) 特開平06−247861(JP,A) 特開平04−298501(JP,A) 特公昭39−010224(JP,B1) 特開2009−057283(JP,A) 3 2008274085 20081113 12 20081216 熊谷 祥平 本発明は、ラムナン硫酸の製造方法に関するものである。 藻類には、各種の有用な多糖類(例えば、フコイダン、ラムナン硫酸など)が含まれている。このうち、ラムナン硫酸は、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖を意味しており、一部の藻類またはバクテリアなどに含まれている。また、緑藻の一種であるヒトエグサからラムナン硫酸を抽出する方法が知られている(非特許文献1)。このラムナン硫酸には、抗潰瘍効果(特許文献1)などの薬理作用が認められている。 本発明者らは、ラムナン硫酸の薬理作用を探求すると共に、その製造方法に関する研究開発を行ってきた。従来法としては、次のようなものが知られている。乾燥させたヒトエグサを水に懸濁し、加熱することによりラムナン硫酸を浸出させる。遠心分離して固形物を除いたあと、エタノールを添加することで、多糖類を沈殿させ、それを集めて水に溶解し、透析により低分子量成分を除くことによりラムナン硫酸を得る(特許文献1)。 しかし、ヒトエグサは食用にも供されるので高価であるため、ラムナン硫酸の生産を大量かつ安価に行うことが困難であった。特開平6−247861号公報藻類の生化学的研究、共立出版、1979、p602−619 本発明は、上記した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、従来よりも安価にラムナン硫酸を製造できる方法を提供することにある。 海藻の細胞は、個々の細分が分泌した細胞間物質で結着することで藻体を形成している。水中で生育する海藻の細胞間物質は、水に対して不溶性となっている。この細胞間物質は、細胞から分泌された物質により作られたものであるので、その成分は本来水溶性である。水溶性の各成分が細胞内で作られ、細胞外に排出され、細胞膜に存在する酵素の作用で、各成分が合成されて、水に不溶の細胞間物質が形成されていると推定される。 細胞間物質の構成成分はおよそ、セルロース(βグルカン)と蛋白質とその海藻固有の多糖である。このため、本発明者らは、セルラーゼとプロテアーゼで細胞間物質を処理すると、これらの酵素で分解されない多糖のみを溶出・取り出すことができるのではないかと推定した。なお、酵素を使用しない方法での抽出は、酸・アルカリ・熱で、構成成分の結合を切って溶出・抽出するので、必ずしも藻体の多糖を抽出できるとは限らなかった。 こうして、本発明者らは、鋭意検討の結果、従来はラムナン硫酸の製造用材料としては顧みられていなかった安価なアオサを材料とし、これをセルラーゼとプロテアーゼで処理することにより、ラムナン硫酸を製造できることを見出し、基本的には本発明を完成するに至った。 こうして上記課題を解決するために、本発明に係るラムナン硫酸の製造方法は、アオサをセルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理することを特徴とする。 ラムナン硫酸とは、ラムノースを構成単糖の主成分とする硫酸化多糖類のことを意味している。天然のラムナン硫酸の分子量は、数十万〜数百万程度までに広く分布している。但し、精製中或いは精製後に、予期しないで酸処理、アルカリ処理などにより、容易に加水分解され、分子量が小さくなることがある。本発明の方法によれば、ほとんど加水分解を受けない大分子量のラムナン硫酸を製造することができる。また、大分子量のラムナン硫酸は、適当に処理することにより、所望の分子量としたラムナン硫酸又はラムナンを調製することもできる。 アオサとは、緑藻に属する藻類の一種である。アオサの仲間(アオサ属Ulvaceae)には、ヒメアオノリ属、ヒメボタンアオサ属、アオノリ属、ペルクルサリア属、アオサ属、クロヒトエグサ属などが含まれる。アオサの体のつくりは単純であり、比較できる形質が少なく、かつ同種であっても個体によって形態が大きく異なることから、その分類は非常に難しい。図1及び図2には、アオサの分類例を示した。従来、ラムナン硫酸を得るためには、ヒトエグサ(クロヒトエグサ属)を熱水で処理していた。ところが、アオサ属(ミナミアオサ、アナアオサを含む)は、熱水処理のみでは、ラムナン硫酸を得ることが困難であった。アオサ属は、成長速度及び栄養塩固定能力が高いことから、内湾の富栄養化海域において、しばしば大発生する。このため、水質浄化に対する取り組みが行われているものの、用途(食用・材料を含む)に乏しいことから、ほとんどは廃棄処分されている。本発明によれば、アオサ属に新たな付加価値を与えることができる。 本発明においては、Ulva fenestrata, U. armoricana, U. scandinavica, U. rigida, U. taeniata,リボンアオサ(U. fasciata),アミアオサ(U. reiculata),コツブアオサ(U. spinulosa),ナガアオサ(U. arasakii),アナアオサ(U. pertusa), U. rotundata,オオバアオサ(U. lactuca),ミナミアオサ(U. ohnoi)などのアオサが好ましく用いられる。 セルラーゼとは、エンド−1,4−β−グルカナーゼとも称し、セルロースのβ1→4グルコシド結合を加水分解し、おもにセロビオースを生成する酵素を意味する。セルラーゼは、高等植物、細菌、糸状菌、木材腐朽菌、軟体動物などに存在する。本発明においては、セルラーゼの由来は問われず、上記いずれの生物から抽出・精製したもの、或いは分子生物学的に製造したものを用いることもできる。セルラーゼは、アオサの細胞壁を分解し、ラムナン硫酸をアオサから流出しやすくなるように作用すると考えられる。 プロテアーゼとは、タンパク質分解酵素あるいはタンパク分解酵素とも呼ばれる。ペプチド結合の加水分解を触媒するEC3.4群の総称として用いられる。プロテアーゼは、動物、植物、微生物界に広く分布し、細胞内外のいずれにも存在する。本発明においては、プロテアーゼの由来は問われず、上記いずれの界から抽出・精製したもの、或いは分子生物学的に製造したものを用いることもできる。 プロテアーゼは、作用様式によって、末端からペプチド結合を切断するエキソペプチダーゼ(アミノペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼを含む)と、中間から切断するエンドペプチダーゼとに分類されるが、本発明においては、いずれのペプチダーゼも適用できる。また、活性発現機構によって、セリンプロテアーゼ、チオールプロテアーゼ、酸性プロテアーゼ、金属プロテアーゼなどに分類されるが、本発明においては、いずれのペプチダーゼも適用できる。但し、経済的な観点からすると、エキソペプチダーゼ、セリンプロテアーゼを用いることが好ましい。 ラムナン硫酸は、アオサの内部において、タンパク質成分と結合することにより、アオサ体内に留まっているものと考えられる。プロテアーゼは、ラムナン硫酸と結合しているタンパク質成分を分解し、ラムナン硫酸がアオサから容易に流出するように作用すると考えられる。 本発明においては、セルラーゼ処理、及びプロテアーゼ処理の順序は問われず、(1)セルラーゼ処理を行った後に、プロテアーゼ処理を行う、(2)プロテアーゼ処理を行った後に、セルラーゼ処理を行う、(3)セルラーゼ処理とプロテアーゼ処理とを同時に行う、のいずれでもよい。また、セルラーゼ処理およびプロテアーゼ処理の際には、それら酵素が作用可能な適当なpH及び温度域において処理することができる。 適当なpHとは、用いる酵素(セルラーゼ及びプロテアーゼ)が作用できるpHを意味している。pHの調節には、適当な酸(塩酸・硫酸などの無機酸、酢酸・シュウ酸・クエン酸などの有機酸を含む)または適当なアルカリ(アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素の水酸化物(水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩、アンモニア、アミンなど)を用いることができる。また、使用するセルラーゼとプロテアーゼの作用pH域が異なる場合には、各酵素処理の際に、それぞれ適当なpHに調整することが好ましい。 適当な温度とは、用いる酵素(セルラーゼ及びプロテアーゼ)が作用できる温度を意味している。一般的には、10℃〜80℃(好ましくは、20℃〜70℃、更に好ましくは20℃〜60℃)の温度域で用いることが好ましい。また、使用するセルラーゼとプロテアーゼの作用温度域が異なる場合には、各酵素処理の際に、それぞれ適当な温度に調整することが好ましい。 本発明においては、酵素処理の前に、アオサと水とを混合しておくことが好ましい。乾燥する前のアオサを用いた場合には、アオサに付着した水分、及びアオサに含まれる水分が存在するために、必ずしもアオサと水とを混合する必要はない。但し、アオサと水とを混合することにより、酵素処理時のpH調整を行いやすいことから好ましい。 アオサと水とを混合する際には、アオサはそのままで用いることもできるし、適当な大きさに切断したものを用いることもできる。また、アオサは、海から採取したものを乾燥することなく用いることもできるし、乾燥させたものを用いることもできる。 アオサと水とは、任意の質量比率で混合することができる。但し、アオサに対して水が少なすぎる場合には、十分にラムナン硫酸が抽出されないおそれがある一方、水に対してアオサが少なすぎる場合には、ラムナン硫酸の濃度が低いために、ラムナン硫酸抽出後の処理に手間が掛かることになる。このため、アオサ:水=1:100〜100:1(好ましくは1:10〜10:1、更に好ましくは1:5〜5:1)の質量比として混合することが好ましい。 本発明においては、セルラーゼ処理を行った後に、プロテアーゼ処理を行うことが好ましい。アオサにおけるラムナン硫酸の存在形態は必ずしも明確ではないが、まずセルラーゼ処理を行うことにより、アオサの外壁部分(セルロース)を分解し、その後にプロテアーゼ処理を施すことが、より好ましい形態となる。 また、セルラーゼ処理とプロテアーゼ処理とを同時に行うことが好ましい。そのようにすれば、酵素処理が一度で済むので、製造時間を短縮することができる。なお、本発明によれば、プロテアーゼ処理を行った後に、セルラーゼ処理を行う、こともできる。 本発明によれば、従来にはほとんど使用価値が認められなかったアオサから、ラムナン硫酸を抽出することができる。このため、安価かつ大量にラムナン硫酸を提供することができる。ラムナン硫酸には、各種の有用な生理活性があることから、産業上の利用価値が非常に大きい発明となる。 次に、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施形態によって限定されるものではなく、発明の要旨を変更することなく様々な形態で実施することができる。また、本発明の技術的範囲は、均等の範囲にまで及ぶものである。 アオサが有する多糖類は、従来文献(特許文献1、非特許文献1)に開示された方法(例えば、熱水加熱処理、熱希アルカリ処理、熱希酸処理)では抽出され難い。本発明者らは、上記方法に代えて、次の方法により、アオサから多糖類を調製することに成功した。 図3には、本実施形態の方法を示した。まず、アオサを適当な大きさ(例えば、数cm〜10cm程度)に裁断する(S100)。本発明によれば、裁断処理は必ずしも必要ではないが、適当な大きさとしておくことにより、各種処理を行いやすくなる。 次に、アオサに適量の水を加えて、アオサと水との混合液を調製する(S110)。本発明によれば、加水処理は必ずしも必要ではないが、水を加えることにより、酵素処理時のpH調整を行いやすくなる。 次に、酵素の種類に応じて、pHを調整した後(S120)、酵素を添加し、酵素処理を行う(S130)。このとき、セルラーゼ処理を行った後、プロテアーゼ処理を行うことが好ましいが、本発明によれば、必ずしもこの順で行う必要はなく、プロテアーゼ処理を行った後、セルラーゼ処理を行っても良いし、セルラーゼ処理とプロテアーゼ処理とを同時に行っても良い。このとき、使用する酵素に応じて、反応物を適当な温度域に保つ。また、酵素処理時には、混合液を撹拌することができる。本発明に使用できるセルラーゼとしては、セルロース分解活性を有しているものであればよい。市販品としてのセルラーゼには、不純物として別の酵素活性(例えば、アミラーゼ、プロテアーゼなどの活性)を有しているものがあるが、これらのものも本発明に用いることができる。セルラーゼとしては、特に限定されるものではないが、例えばセルラーゼA「アマノ」3、セルラーゼT「アマノ」4(天野エンザイム製)、スペザイムCP、GC220、マルチフェクトCL、インディエイジ44L、プリマファースト、インディエイジRPW、インディエイジMAX、インディエイジスーパーGXプラス、インディエイジニュートラ、オプチマッシュBG、マルチフェクトA40、ピュラダックスHA(ジェネンコア協和製)、ドリセラーゼKSM、セルロシンAC40、LaminexBG(協和エンザイム製)、GODO−TCF、GODO−TCL、GODO TCDーH、ベッセレックス(合同酒精製)、ソフィターゲン・C−1(タイショーテクノス製)、超耐熱性セルラーゼ(耐熱性酵素研究所)、セルライザー、セルラーゼXL−522、セルチームC、セルライザーHTコンク、セルラーゼXL−531(ナガセケムテックス製)、ベイクザイムXE(日本シイベルヘグナー製)、セルソフト、デニマックス、セルザイム、セルクラスト、セルクラスト1.5LFG、バイオフォードプラス、エネルジェックス(ノボザイムズ製)、セルロシンAC40、セルロシンAL、セルロシンT2、セルロシンME(エイチビィアイ製)、セルラーゼ”オノヅカ”3S、セルラーゼ”オノヅカ”P12S、セルラーゼY−NC、セルラーゼY−2NC、パンセラーゼBR、マセロチーム2A(ヤクルト薬品工業製)、スミチームAC、スミチームC(新日本化学工業製)、エンチロンCM、エンチロンMCH、バイオヒット、バイオスター、フェドラーゼ(洛東化成工業製)などが用いられる。 また、プロテアーゼとしては、特に限定されるものではないが、例えばオリエンターゼ20A、テトラーゼS、オリエンターゼ90N、ヌクレイシン、オリエンターゼ10NL、オリエンターゼ0NS、オリエンターゼ22BF、オリエンターゼ5BL(エイチビィアイ製)、モルシンF、IP酵素(キッコーマン製)、パパイン、ブロメライン、プロテックス7L、アルカリプロテアーゼGL440、プロテックス6L、ピュラフェクト、ピュラフェクト0X、プロペラーゼ、プロテックス0XG(ジェネンコア協和製)、ソフターゲンM、ソフターゲン・M2(タイショーテクノス製)、グリンドアミルPR59、グリンドアミルPR43(ダニスコカルタージャパン製)、デナプシン2P、食品用精製パパイン、デナチームAP、ビオプラーゼAL−15FG、ビオプラーゼ30L、ビオプラーゼAPL−30、ビオプラーゼXL−416F、ビオプラーゼSP−15FG、ビオプラーゼSP−4FG、プロテアーゼCL−15(ナガセケムテックス製)、PTN、ニュートラーゼ、エスペラーゼ、サビナーゼ、バイオフィードプロ、アルカラーゼ、NUE、ピラーゼ、クリアーレンズプロ、エバラーゼ、カンナーゼ、ノボザイムFM、フレーバーザイム、プロタメックス、ノボラン(ノボザイムズ製)、プロテアーゼYP−SS、パンチダーゼNP−2、パンチダーゼP、アロアーゼAP−10、アロアーゼNP−10、アロアーゼNS、アロアーゼXA−10、プロテアーゼAL(ヤクルト薬品工業製)、マキシレン、フロメーズ(ロビン製)、アクチナーゼAS、アクチナーゼAF(科研ファルマ製)、精製パパイン、コクラーゼ・P(三共ライフテック製)、スミチームAP、スミチームLP、スミチームFP、スミチームLPL、スミチームMP(新日本化学工業製)、プロチンP、デスキン、プロチンA、サモアーゼ(大和化成製)、ニューラーゼF3G、ニューラーゼA、プロテアーゼA「アマノ」G、プロテアーゼN「アマノ」G、プロテアーゼS「アマノ」G、パパインW−40、プロメラインF、プロレザーFG−F、プロテアーゼP「アマノ」3G、プロテアーゼM「アマノ」G(天野エンザイム製)、ベイクザイムB500(日本シイベルヘグナー製)、Papain F.、Trypsin4.0 T、COROLASE N、VERON L10、COROLASE L10、COROLASE 7089、VERON W(樋口商会製)、名糖レンネット、名糖レンネットスーパー(名糖産業製)、エンチロンNBS、エンチロンSA、マグナックスMT(洛東化成工業製)、アクチナーゼE(科研製薬株式会社製)などが用いられる。 酵素処理が終了したら、必要に応じて加熱・pH調整等の方法での酵素失活処理等の後処理を行ってから反応物をろ過し、水溶液画分と残渣画分とに分ける(S140)。このとき、多糖類のほとんどは水溶液側に抽出されているので、水溶液画分を回収する(S150)。ここで、水溶液画分を乾燥処理することにより(S160)、多糖類の粗抽出物とすることができる(S170)。 また、水溶液画分或いは粗抽出物については、当業者に周知の生化学的な手法(例えば、イオン交換、透析、電気透析、活性炭吸着、カラム分離、限外ろ過、ゲルろ過など)を単独で、或いは適当に組み合わせることにより、更に精製処理を行い(S180)、乾燥することにより(S190)、精製抽出物とすることができる(S200)。 <実施例1> アオサからの粗抽出物及び精製抽出物の調製 次に、アオサから多糖類を調製する際の具体的な方法について、実施例を参照しつつ詳細に説明する。 まず、海岸でアオサを採取した。顕微鏡観察等により、このアオサはアナアオサであることが判った。 アオサを軽く水洗して、表面に付着したゴミ等を取り除いた後、適当な大きさ(約5cm〜10cm程度)に裁断した。裁断後のアオサ(約300g)をビーカに入れ、ここに水を注ぎ、約1000gの混合液とした。混合液のpHは6であった。本実施形態に用いたセルラーゼの至適pHは6付近である。もし、混合液のpHが至適pHから外れるようであれば、リン酸、クエン酸などの酸を用いてpHを下げる、或いは炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリを用いてpHで上げることができる。 ここに1gのセルラーゼ(セルロシンT2(エイチビーアイ株式会社製))を添加し、良く混合して酵素を溶解した。 上記ビーカを55℃の温水槽に付けて、48時間に渡って酵素処理(セルラーゼ処理)を行った。セルラーゼ処理後の混合液中のアオサには、外観上は大きな変化は認められず、少し柔らかくなった程度であった。 セルラーゼ処理後の混合液をトリスヒドロキシメチルアミノメタンと希塩酸とを用いて、pHを9程度に調整した。本実施形態で得られる多糖類を食品として用いる場合には、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウムなどを用いてpHを調整することが好ましい。pH調整後、1gのプロテアーゼ(アクチナーゼE(科研製薬株式会社製))を添加し、良く混合して酵素を溶解した。 上記ビーカを55℃の温水槽に付けて、48時間に渡って酵素処理(プロテアーゼ処理)を行った。プロテアーゼ処理後の混合液中のアオサは、大半が溶解しており、少量の未分解物が残っている程度であった。 両酵素処理が完了した混合液を85℃で30分間加熱した後、布を使ってろ過し、水溶液画分と残渣画分とに分けた。水溶性画分を凍結乾燥処理することにより、多糖類の粗抽出物(約8g)を得た。 1gの粗抽出物を7M尿素・0.15M塩化カリウム溶液(以下、「溶液A」という)に溶解した。予め溶液Aにて平衡化したDEAEカラムに、粗抽出物溶液をアプライし、カラム容積の3倍以上の溶液Aを通液した。 次いで、溶液Aに代えて、7M尿素・2.3M塩化カリウム溶液をカラムに通液し、塩化カリウムが0.15Mから2.3Mとなるステップグラジエントを行った。 カラムの溶出側にフラクションコレクターを設け、各フラクションを回収した。各フラクションについて、一部(0.5mL)を用い、これに5%フェノール(0.5mL)と硫酸(2.5mL)を添加し、フェノール発色が認められるか否かを確認した。ここで黄色〜茶色に発色したフラクションには、多糖類が存在していることから、これらのフラクションを合わせて、透析膜中に入れ、透析・脱塩処理を行った。 透析後の溶液を凍結乾燥し、300mgの精製抽出物を得た。 <実施例2> 粗抽出物及び精製抽出物の分析 粗抽出物及び精製抽出物については、上記フェノール硫酸発色による多糖類の検出に加えて、GPC(HPLC)分析、糖組成の分析、硫酸基含量の分析を行った。 GPC(HPLC)分析は、次の条件で行った。 カラムは、Shodex OHpack SB−806M HQ 直列2本を用い、溶離液は0.1M NaCl溶液を使用し、流量を1.0mL/minとした。また、カラム温度は40℃とした。 10mgのサンプルを10mLの0.1M NaCl溶液に溶解し、0.2μmまたは0.45μmのメンブランフィルターでろ過したものを分析に供した。このサンプル液50μLをHPLC装置に注入し分析した。 糖組成の分析は、次の条件で行った。 カラムは、Shodex Asahipak NH2P−50 4Eを用い、溶離液は、アセトニトリル:水=75:25を使用し、流量を1.0ml/minとした。また、カラム温度は40℃とした。 20mgのサンプルを10mLの2N硫酸液に添加し、沸騰水中で2時間、加熱・分解した。これに飽和塩化バリウム溶液を加えて中和した後、遠心分離して硫酸バリウムを沈降・除去した。上澄液を回収し、乾固するまで減圧乾燥した。この乾固物に10mLのアセトニトリル/水(75/25)液を加え溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過したものを分析に供した。このサンプル液をHPLC装置に注入・分析し、スタンダードとの比較により、糖組成を計算した。 スタンダード(検量線)には、適量(1〜20mg)の標品の糖(試薬)に10mLのアセトニトリル/水(75/25)液を加え溶解した後、0.2μmのメンブランフィルターでろ過したものを用いた。分析結果から、tR(リテンションタイム:保持時間)と検量線を得た。 硫酸基含量の測定は、次の方法で行った(この方法は、日本薬局法に記載されている燃焼フラスコ法と同じデータが得られる)。 20mgのサンプルに5mLの1N塩酸を加え溶解した後、沸騰水中で5時間加熱・分解した。1mLの分解液を採取し、ロータリーエバポレーターを用いて60℃で減圧濃縮・乾固した。乾固物に2mLの純水を加えて溶解し、再度ロータリーエバポレーターにて60℃で減圧濃縮・乾固した。添加した塩酸を蒸散させるため、純水添加と減圧濃縮・乾固の操作を5回繰り返した。最終的な乾固物に10mLの純水を添加・溶解し、サンプル液とした。 0.5mLのサンプル液(硫酸基濃度に応じて純水で適当に希釈したもの)に、2mLのエタノール、1mLの塩化バリウム緩衝液、1.5mLのロジソン酸Na液を添加し、10分間暗室で発色させた後、520nmで吸光度を測定した。 スタンダード(検量線)には、硫酸ナトリウムを標品として用い、適当な濃度の水溶液を調整した後、上記と同様の操作を行って発色させ、その吸光度を測定し、検量線を作成した。 粗抽出物の分析結果を図4及び図5に示した。図4には、GPC(HPLC)分析チャートを示した。図中のピーク1(tR=16.183min.)がアオサ由来の多糖類であると判断した。標品との比較から、この多糖類の分子量は、数十万〜数百万程度の範囲であることが判った。 また、図5には、糖組成分析チャートを示した。チャートより、粗抽出物には、多糖類以外のアオサ由来水溶性物質(例えば、アミノ酸など)が多く含まれていることが判った。また、糖類として、ラムノースを主とし、他にキシロース、マンノース、グルコースなどが含まれていることが判った。 また、ロジソン酸法による硫酸基含量の分析結果から、粗抽出物には、8〜9%(SO4換算)の硫酸基が含まれることが判った。 精製抽出物の分析結果を図6及び図7に示した。図6には、GPC(HPLC)分析チャートを示した。図中のピーク1(tR=16.438min.)がアオサ由来の多糖類であると判断した。標品との比較から、この多糖類の分子量は、数十万〜数百万程度の範囲であることが判った。 また、図7には、糖組成分析チャートを示した。チャートより、精製抽出物には、主にラムノース、他にキシロース、マンノース、グルコースなどが含まれていることが判った。比較品として、図8には、従来法によりヒトエグサからの精製抽出物の糖組成分析チャートを示した。両抽出物の糖組成は、類似しているものの、それらの組成比は異なっていることが判った。 また、ロジソン酸法による硫酸基含量の分析結果から、精製抽出物には、約16%(SO4換算)の硫酸基が含まれていることが判った。 <実施例3> 抗トロンビン活性(血液抗凝固活性)の測定 (1)試薬の調製 下記6種類の溶液をそれぞれ調製した。A液:バルビタール緩衝液(pH7.3) 2.88gのバルビタールと1.88gのバルビタールNaを水に溶解して、1LとしたものをA液とした。B液:生理食塩水 9gの塩化ナトリウムを水に溶解し、1LとしたものをB液とした。C液:牛胎児血清希釈液 2mLの牛胎児血清にB液を加え、50mLとしたものとC液とした。D液:1%フィブリノーゲン液 500mgのフィブリノーゲンをB液で溶解し、50mLとしたものをD液とした。E液:0.01%トロンビン液 5mgのトロンビンをB液で溶解し、50mLとしたものをE液とした。 一般にトロンビンは、質量ではなく、UNIT量で販売されている(例えば、1000UNIT/本)。トロンビン溶液は保存が効かないので、実際の試験では、市販品のトロンビンの一部を計量して採取し、B液で溶かして使用した。F液:サンプル液 所定量のサンプルを10mLのA液に溶解したものをF液とした。また、コントロールとして、サンプルを含まないA液のみを用いた。 (2)抗トロンビン活性の測定 1mLのA液、0.5mLのF液、0.75mLのC液、及び0.75mLのE液の全量3mLを試験管に混合し、37℃の温水槽で15分間インキュベートした。 これに1mLのD液を加えて全量を4mLとし、37℃の温水槽でインキュベートしながら、溶液の白濁・凝固までの時間を観察した。 測定は各サンプルで7回行い、その平均値を白濁・凝固時間とした。 (3)比活性 サンプルとして、ヘパリン(Heparin Sodium関東化学:市販試薬)とアオサ精製抽出物を用いた。F液中のサンプル濃度を同じにして、ヘパリンに対する抗トロンビン比活性を求めた。比活性は、上記(2)の溶液の白濁・凝固までの時間から、次式で求めた。 T0:コントロールの白濁・凝固までの時間 T1:ヘパリン添加時の白濁・凝固までの時間 T2:アオサ精製抽出物添加時の白濁・凝固までの時間 比活性(%)=(T2−T0)/(T1−T0)×100 (4)結果 アオサ精製抽出物のヘパリンに対する、抗トロンビン比活性は、約15%であった。 (5)考察 アオサ精製抽出物には抗トロンビン活性があり、ヘパリン様の血液凝固阻害作用を有していることが判った。ただし、その活性は、ヘパリンの約15%の比活性にとどまった。 特許第2521083号によれば、抗トロンビン活性は、ヒトエグサ由来のラムナン硫酸では、ヘパリン以上の比活性があるとされている。 このことと、構成糖の差異を考慮すると、アオサ由来のラムナン硫酸は、ヒトエグサ由来のラムナン硫酸とは別の物質であると考えられる。 このように本実施形態によれば、従来にはほとんど使用価値が認められなかったアオサから、ラムナン硫酸を抽出することができた。このため、安価かつ大量にラムナン硫酸を提供することが可能となった。ラムナン硫酸には、各種の有用な生理活性があることから、産業上の利用価値が非常に大きい発明である。アオサ類の分類図である(アオサ類の分子情報による集団生態学的解析と応用、2003、成山堂書店、p70−87から引用)。アオサ類の分類図である(蒲郡市三河湾環境チャレンジ、第3回シンポジウム(H17.9)、第2章.1より引用)。アオサ由来多糖類の製造方法を示す工程図である。アオサ粗抽出物のGPC(HPLC)分析チャートである。アオサ粗抽出物の糖組成分析チャートである。アオサ精製抽出物のGPC(HPLC)分析チャートである。アオサ精製抽出物の糖組成分析チャートである。ヒトエグサ精製抽出物の糖組成分析チャートである。アナアオサをセルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理することを特徴とするラムナン硫酸の製造方法。セルラーゼ処理を行った後に、プロテアーゼ処理を行うことを特徴とする請求項1に記載のラムナン硫酸の製造方法。前記セルラーゼ処理及びプロテアーゼ処理の前に、アナアオサと水とを混合しておくことを特徴とする請求項1または2に記載のラムナン硫酸の製造方法。


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