タイトル: | 公開特許公報(A)_pH測定方法及びpH測定装置 |
出願番号: | 2007098093 |
年次: | 2008 |
IPC分類: | G01N 27/414,G01N 27/416 |
西尾 友志 岩本 恵和 野村 聡 三村 享 JP 2008256488 公開特許公報(A) 20081023 2007098093 20070404 pH測定方法及びpH測定装置 株式会社堀場製作所 000155023 西村 竜平 100121441 佐藤 明子 100113468 西尾 友志 岩本 恵和 野村 聡 三村 享 G01N 27/414 20060101AFI20080926BHJP G01N 27/416 20060101ALI20080926BHJP JPG01N27/30 301EG01N27/46 353ZG01N27/30 301Z 7 1 OL 10 この発明は、非水溶液のpHを迅速かつ正確に測定することができるpH測定方法及びpH測定装置に関するものである。 石油製品中の中和価は、その油の中に含まれる酸性又は塩基性物質の量を相当する水酸化カリウムのmg数で表したものであり、滴定しようとする対象によって全酸価、強酸価、全塩基価、強塩基価の4種に分けられる。 全酸価は、油の中の酸性成分の全量、すなわちナフテン系、添加剤中の酸性物質、使用中に生成した有機酸等の全てを合せた量を意味する。全酸価をもって潤滑油の精製度の目安としたり、製造工程の管理指標や、使用潤滑油の管理指標としたり、又は、潤滑油の酸化試験や実用試験後の劣化状態を知るための目安等として広く用いられている。 塩基価と強塩基価は油の中の塩基性物質の量を示すが、天然の石油留分中には塩基性物質はほとんど存在しないので、塩基価は潤滑油に添加される清浄分散剤の量の目安としてエンジン油の評価や使用エンジン油の管理に用いられる。 中和価試験方法(JIS K2501)は、全酸価と強酸価、及び、全塩基価と強塩基価の試験方法に分けられ、いずれにも指示薬滴定法と電位差滴定法があるが、電位差滴定法ではpHガラス電極が用いられる。 しかしながら、pHガラス電極は表面に水和ゲル層が生じることにより、シラノールイオン交換サイトが形成されて、このサイトを通して形成されたプロトンの濃度勾配により電位差が生じ、pHの測定が可能となっているが、電位差滴定法は測定対象が石油製品等の非水溶液であるため、pHガラス電極では水和ゲル層が形成されにくく、応答に15〜50分かかっていた。また、pH電極の応答が遅いと中和点を過ぎてしまうため、迅速かつ精度の高い中和価の測定が困難であった。 そこで本発明は、石油製品等の非水溶液のpHを迅速かつ精度良く測定することができるpH測定方法及びpH測定装置を提供すべく図ったものである。 すなわち本発明に係るpH測定方法は、作用電極としてISFET電極を用いて、非水溶液のpHを測定することを特徴とする。 本発明において測定対象となる非水溶液としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール;トルエン等の有機溶剤;ガソリン、軽油、潤滑油等の石油製品が挙げられる。なかでも石油製品のpH測定に好適に用いられる。 前記ISFET電極は、Ion Sensitive Field Effect Transistor(イオン感応性電界効果型トランジスタ)からなる電極であり、ISFETのゲート上のイオン感応膜に試料溶液が接すると、試料溶液中のイオン活量に応じて界面電位が発生する。ISFETのゲート上にTa2O5からなる薄膜が形成してあると水素イオンに感応するpH電極として機能する。 本発明においては作用電極として、このようなISFET電極を用いるので、ガラス電極とは異なりpH測定のために表面に水和ゲル層を形成する必要がなく、測定対象が非水溶液であっても、応答性よくpHの測定を行なうことができる。 本発明において連続してpH測定をおこなう場合は、フローインジェクション分析法を用いてもよい。連続測定が可能であれば石油製品の品質管理等に好適となる。 本発明は石油製品等の中和価を測定するために使用することも可能である。石油製品の中和価を測定する場合は、石油製品を攪拌しながら水酸化カリウムを滴下し、中和するまで、すなわちpHが7になるまでに滴下した水酸化カリウムの量(mg)を測定し、これを中和価とする。 本発明に係るpH測定方法を実施するためのpH測定装置は特に限定されないが、作用電極がISFET電極であることが必要である。 前記ISFET電極は、ボディがポリフェニルサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素樹脂;ガラス等により構成してあることが好ましい。ポリフェニルサルファイド、フッ素樹脂、ガラス等は非水溶液に対する耐久性が高いので、このような材料によりISFET電極のボディを構成することにより長期間にわたる使用が可能となる。 前記pH測定装置は、フローセルを備えているものであっても良い。フローセルを備えることによりフローインジェクション分析法等を用いた連続測定が可能となる。 また、本pH測定装置において、前記ISFET電極は液アース機構を備えていても良い。非水溶液を攪拌すること等によりISFET電極と非水溶液との間に摩擦力が生じると流動電位が発生するが、特に非水溶液が石油製品等の帯電しやすいものである場合は、流動電位の影響によりpH測定装置の指示値のふらつきが生じる。このような場合にISFET電極が液アース機構を備えていると流動電位を除去することができる。 このように本発明によれば、短時間でpH測定や中和価滴定ができ、例えば、エタノールのpH測定は、ガラス電極では10〜60分程度必要なところ、1分以内に測定することができる。滴定測定においてpHセンサの応答が遅いと中和点を過ぎてしまうが、作用電極としてISFET電極を用いるので、応答が早く、より正確な中和点を決定できる。このため、高性能で連続測定も可能なpH測定装置を得ることができる。また、ISFET電極のボディ材に非水溶液に耐久性を有するものを使用することにより、長期使用が可能となる。また、MEMS技術を適用することにより本発明に係るpH測定装置を小型化することも可能である。 以下、本発明に係るpH測定装置の一実施形態を図面を参照して説明する。 本実施形態に係るpH測定装置1は、図1にその概要を示すように、フローセルを備えた液体注入型のものである。 このようなpH測定装置1はフローインジェクション分析が可能であり、定量ポンプ等を用いて制御された連続流れをつくりだし、この流れの中で反応や試料注入等を行い、末端に設置したフローセルを備えたpH計本体により測定対象の溶液のpHを測定する。 図1に示すpH測定装置1は、流路の上流側から、ポンプ2に続いて、試料注入口3及び攪拌装置4が設けられ、その下流にはISFET電極6及び比較電極7が内蔵されたフローセル5が配置されている。そして、ISFET電極6及び比較電極7には、pH計本体8が接続されている。 前記ポンプ2としては一定速度で試料溶液をフローセル3に送ることができるものであれば特に限定されず、例えば液体クロマトグラフィー用ポンプ等を用いることができる。 前記攪拌装置4としては試料溶液を攪拌することができるものであれば特に限定されず、例えば、回転する攪拌棒を備えたものや、マグネチックスターラ等を用いることができる。 前記フローセル5は、図2に示すように、内蔵されたISFET電極6及び比較電極7が、試料溶液が流れる流路51内に露出され、試料溶液と接触できるよう構成されている。試料溶液は、流路51の流入口52から入り、図中の矢印のように流れ、流出口53に至る。 前記ISFET電極6としては、ゲート上に水素イオン感応膜が形成されているものが挙げられ、例えば、ゲート上にTa2O5からなる薄膜が形成されているものを用いることができる。また、ISFET電極6のボディはポリフェニルサルファイド;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン等のフッ素樹脂;ガラス等により構成してある。 ISFET電極6のボディには更に、液アース機構として金属製のリングからなるパッキンが取り付けられていてもよい。 前記比較電極7としては適宜公知のものから選択して使用することができ、例えば、標準水素電極、銀/塩化銀電極、水銀/塩化水銀電極等を用いることができる。ここで、非水溶液においては、内部液に含まれる塩化カリウムが溶けにくいことから、液絡部において、目詰まり等の問題を生じることがある。このことから、なかでもピンホール型の液絡部を有するものや、ダブル・ジャンクション型のものが好適に用いられる。 前記pH計本体8は、ハードウェア構成として、CPU、A/D変換器、記憶装置、入力手段、ディスプレイ等を一体的に備えた専用のものである。そして前記CPUや必要に応じてその周辺機器が、前記記憶装置に格納したプログラムに基づいて動作することにより、測定データ算出部、測定データ格納部等としての機能を発揮して、pHを算出し表示する。 本実施形態に係るpH測定装置1を用いて非水溶液のpHを測定する場合、まず、ポンプ2によって送られたトルエン、イソプロピルアルコール等の誘電率を上げるための希釈用の溶媒に対し、試料注入口3から石油製品等の試料が添加され、攪拌装置4で充分に混合される。希釈された試料(以下、試料溶液という。)はフローセル5に送られ、フローセル5内において、内蔵されたISFET電極6のゲート上のイオン感応膜(SiO2−Ta2O5)に接すると、試料溶液中の水素イオン活量に応じて界面電位が発生する。この界面電位を、比較電極7を用いて、ISFET電極6と比較電極7との電位差(電圧)として測定してpHを算出し、pH計本体8に表示する。なお、試料が石油製品等の帯電しやすい非水溶液である場合は、指示値のふらつきの原因となる流動電位の発生を抑えるために、pH測定中は攪拌装置4を停止させておくことが好ましい。測定が終了した試料溶液はpH測定装置1外に排出される。 このようなpH測定装置1によれば、作用電極としてISFET電極を用いているので、応答が早く、より正確な測定を行なうことができる。また、フローセルを備えているので連続測定も可能である。更に、ISFET電極のボディ材が非水溶液に耐久性を有するものであるので、長期使用も可能である。 なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。 ISFET電極に設ける液アース機構は金属製のリングに限定されず、導電率の高い材料を任意の形状に加工してISFET電極のボディに取り付けることができる。 試料溶液に比較電極の内部液のKClが漏出して測定結果が安定しない場合は、試料注入口3及び攪拌装置4をフローセル5の下流側に設け、攪拌装置4の下流に別途ISFET電極を単独で設けても良い。このように構成することにより、比較電極からのKClの漏出による影響を排除して、測定結果を安定させることができる。 本発明に係るpH測定装置はバッチ型のものでもよく、このようなバッチ型のものは、例えば、pH計本体とそれに接続されたISFET電極と比較電極とからなり、ビーカ等の容器内に充填された試料溶液にISFET電極と比較電極とを浸漬し、試料溶液をマグネチックスターラで攪拌しながら、試料溶液のpHを測定する。中和価測定のための滴定を行なう場合は、ビーカ内の試料溶液を攪拌しながらpHを測定して、pHが7になるまで(中和するまで)ビュレット等を用いて水酸化カリウムを滴下する。 なお、ゲート上にTa2O5からなる薄膜が形成してあるISFET電極とpHガラス電極の応答性を比較したグラフを図3に示した。図3に示すように、前記ISFET電極をpH7のバッファー中からエタノール中に置き換えたところ、1分以内に安定し、エタノール中からpH7のバッファー中に再度置き換えた場合も、良好に応答した。一方、pHガラス電極をpH7のバッファー中からエタノール中に置き換えると、15分経過しても安定しなかった。 バッチ型のpH測定装置において、試料溶液に比較電極の内部液のKClが漏出して測定結果が安定しない場合は、ビーカ等の容器内にイオン透過性の半透膜からなる隔膜を設けて容器内を2分割し、一方に試料溶液(希釈用溶媒+試料)を収容し、他方に希釈用溶媒のみを収容し、試料溶液にはISFET電極のみを浸漬し、希釈用溶媒には比較電極とISFET電極とを浸漬して、pHを測定してもよい。このように試料溶液にはISFET電極のみを浸漬してpHを測定することにより、比較電極からのKClの漏出による影響を排除して、測定結果を安定させることができる。 また、バッチ型のpH測定装置の簡易なタイプとして、底面が半導体ウエハからなり、かつ、当該半導体ウエハ上にISFETが形成された容器に、試料溶液を収容し、当該試料溶液に比較電極を浸漬し、pH測定を行なうものも挙げられる。 更に、連続測定が可能なタイプのpH測定装置として、試料溶液とアルカリと酸のそれぞれの注入路を備え、それらが合流するポイントに攪拌装置を設け、その下流に設けられISFET電極及び比較電極を内蔵するフローセルで電位差を測定し、電極に接続してある電位差計でpHを算出するものが挙げられる。このような連続測定が可能なタイプのpH測定装置は中和価の測定等に好適に用いられる。 本発明は、その他にも、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。 本発明を適用することにより、非水溶液を測定対象として良好な応答性と高い精度を有するpH測定が可能になる。本発明の一実施形態に係るpH測定装置の概要図。同実施形態におけるフローセルの構成を示す概要図。ISFET電極とpHガラス電極の応答性を比較したグラフ。符号の説明1・・・pH測定装置5・・・フローセル6・・・ISFET電極7・・・比較電極 作用電極としてISFET電極を用いて、アルコール、有機溶剤、又は、石油製品のpHを測定するpH測定方法。 フローインジェクション分析法を用いる請求項1記載のpH測定方法。 中和価を測定する請求項1記載のpH測定方法。 アルコール、有機溶剤、又は、石油製品のpHを測定するための装置であって、作用電極がISFET電極であるpH測定装置。 前記ISFET電極は、ボディがポリフェニルサルファイド、フッ素樹脂、又は、ガラスにより構成してある請求項4記載のpH測定装置。 フローセルを備えている請求項4又は5記載のpH測定装置。 前記ISFET電極は、液アース機構を備えている請求項4、5又は6記載のpH測定装置。 【課題】石油製品等の酸性や塩基性物質の量を示す中和価の試験方法は、指示薬滴定法と電位差滴定終点法があり、そのうち電位差滴定終点法ではpHガラス電極が用いられている。しかし、pHガラス電極表面では水和ゲルが形成し難く、応答が遅く、正確な測定が困難である。そこで、石油等の非水溶液のpHを迅速かつ精度良く測定することができるpH測定方法及びpH測定装置を提供する。【解決手段】作用電極としてISFET電極6を用いて、ゲート上にイオン感応膜を形成することにより、試料溶液のイオン活量に応じた界面電位が発生する。ISFET電極を用いることで、pH測定のために、表面に水和ゲル形成が必要なく、非水溶液を対象として、良好な応答性と高い精度のpHを測定が可能となる。【選択図】図1