タイトル: | 再公表特許(A1)_組織再生治療用徐放性製剤 |
出願番号: | 2007070340 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | A61K 9/16,A61K 47/34,A61K 31/4406,A61P 9/10,A61P 9/00,A61P 11/00,A61P 37/08,A61P 3/10,A61P 13/12,A61P 19/02,A61P 29/00,A61P 19/10 |
酒井 芳紀 内田 享弘 JP WO2008047863 20080424 JP2007070340 20071018 組織再生治療用徐放性製剤 小野薬品工業株式会社 000185983 大家 邦久 100081086 林 篤史 100121050 酒井 芳紀 内田 享弘 JP 2006285357 20061019 A61K 9/16 20060101AFI20100129BHJP A61K 47/34 20060101ALI20100129BHJP A61K 31/4406 20060101ALI20100129BHJP A61P 9/10 20060101ALI20100129BHJP A61P 9/00 20060101ALI20100129BHJP A61P 11/00 20060101ALI20100129BHJP A61P 37/08 20060101ALI20100129BHJP A61P 3/10 20060101ALI20100129BHJP A61P 13/12 20060101ALI20100129BHJP A61P 19/02 20060101ALI20100129BHJP A61P 29/00 20060101ALI20100129BHJP A61P 19/10 20060101ALI20100129BHJP JPA61K9/16A61K47/34A61K31/4406A61P9/10 101A61P9/00A61P11/00A61P37/08A61P3/10A61P9/10A61P13/12A61P19/02A61P29/00 101A61P19/10 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100225 2008539863 39 4C076 4C086 4C076AA31 4C076AA61 4C076CC11 4C076EE24A 4C076EE48A 4C076FF31 4C086AA01 4C086AA02 4C086BC17 4C086MA02 4C086MA05 4C086NA12 4C086ZA36 4C086ZA40 4C086ZA42 4C086ZA45 4C086ZA59 4C086ZA81 4C086ZA96 4C086ZA97 4C086ZB13 4C086ZC35 本発明は、({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸、および乳酸/グリコール酸共重合体からなるマイクロスフェアに関する。 医薬品の投与コンプライアンスの観点から、できるだけ少ない投与回数にするために、薬物を持続的に放出させることが可能な長期徐放性注射剤の開発が検討されてきており、中でも、水に難溶性のポリマーを用いた薬物のマイクロスフェア(以下、MSと略記する場合がある。)による放出制御法が多く検討されている。そのポリマーとしては、薬物放出後、基剤が投与部位に残存しないように生体分解性高分子が使用されており、特に手術縫合糸、および骨固定ボルト等に使用実績のあるポリ乳酸重合体(以下、PLAと略記する場合がある。)あるいは乳酸/グリコール酸共重合体(以下、PLGAと略記する場合がある。)が使用されている。これらは、徐放性注射剤として市販されているLH−RH誘導体のリュープリン(商品名)注射剤や持続性ソマトスタチン誘導体のサンドスタチン(商品名)LAR等に使用されている。 マイクロスフェアに封入される薬物としては、一般的に生理活性ペプチド、各種ホルモン、成長因子、抗体、遺伝子および各種細胞増殖・分化誘導因子類等のペプチド、蛋白質や核酸を用いた例が多い。マイクロスフェアの製造において、一般に封入する薬物が高分子であればあるほど、初期バーストが少なく、放出制御が容易なマイクロスフェアを容易に製造できることが知られている。 それに対して、低分子薬物を含有するマイクロスフェアは、初期バーストが大きい、放出制御が困難、薬物の含有量(封入率)が低い等の理由でマイクロスフェア化が非常に困難であり、生体内で薬物の安定的放出や放出速度の制御を行なうことは非常に困難であった。そのため、低分子化合物を封入した例はあるものの(特許文献1参照)、医薬品として市販されているものはない。 一方、({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸(以下、本薬物と略記する。)は、科学的に安定な非プロスタグランジン(PG)骨格を有するPGI2受容体(IP)作動作用とトロンボキサン(TX)A2合成酵素阻害活性を合わせ持つ低分子化合物である。本薬物は、PGI2作動作用を有することから、血栓症、動脈硬化、虚血性心疾患、胃潰瘍、高血圧等の予防および/または治療に有用であることが知られている(特許文献2参照)。 しかし、本薬物を経口投与した場合には上腹部痛や下痢等の副作用が、静脈内投与した場合には、血管拡張作用に伴う降圧作用、フラッシングや頭痛等の副作用が懸念される。特に、本薬物を上記した疾患のうち、動脈硬化、虚血性心疾患等の循環器系疾患に適用する場合、副作用や治療体系等の観点から、消化管中での高濃度暴露、または急激な血中濃度上昇を防ぎ、患者の負担が少なく、薬効を最大限に発揮できるように、できるだけ少ない投与回数で持続的な薬物濃度維持が可能な製剤、例えば、疾患局所での持続的な組織濃度維持型の投与剤形、または点滴静脈内注射剤の様な持続的な血中濃度維持型の投与剤形等が切望されている。 上記した副作用の発現、急激な血中濃度の上昇等の問題点を改善するための方法として、本薬物を含有するマイクロスフェアを局所投与することが検討されている。例えば、特許文献3では、本薬物およびPLGAを含有する持続性製剤が記載されており、該製剤をラット閉塞性動脈硬化症(ASO)モデルに局所投与した場合、有効であったことが記載されている。しかしながら、特許文献3記載のマイクロスフェアは、薬物の含有率が低いため、マイクロスフェア自体の投与量が増加し、酸性障害が起る点や、さらに、本薬物の放出期間が短く、放出速度が一定ではないため、薬効発現に最適な血中濃度を一定期間維持することが達成できないこと等の問題点を有していた。特開平9−263545号公報特開平6−87811号公報国際公開第2004/032965号パンフレット 本発明の目的は、本薬物を長期間持続的に放出するマイクロスフェアであって、本薬物の高含有化を可能にし、本薬物を一定速度で放出し、かつ放出期間中、薬効発現に最適な血中濃度の範囲を維持することができる、安全で利便性の良いマイクロスフェアを提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本薬物およびPLGAからなるマイクロスフェア(以下、本発明のマイクロスフェアと略記することがある。)において、PLGAの重量平均分子量、PLGA中における乳酸/グリコール酸の組成比、マイクロスフェアの平均粒子径、本薬物とPLGAの重量比等を特定の組合せにすることにより、驚くべきことに、1週間以上の長期間にわたって本薬物を持続的に放出する機能を有し、本薬物の高含有化を可能にすることによって、マイクロスフェアの投与量を酸性障害の起らない最適な範囲にすることが可能となった。さらに、本発明者らは、本薬物のマイクロスフェアが、本薬物の初期バーストの抑制、すなわち、放出試験における薬物残存率を一定値以上に維持することが可能であること、および徐放期間中、薬効発現に最適な本薬物の血中濃度の範囲を維持することが可能であることも見出した。 すなわち、本発明は、[1](i)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が3〜10であり、(ii)マイクロスフェアの平均粒子径が20〜50μmであり、(iii)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量が10,000〜50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比が75/25〜50/50であることを特徴とする、薬物として({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸と、乳酸/グリコール酸共重合体からなり、下記(1)〜(3)の少なくとも一つの条件を満たす2〜4週間持続型マイクロスフェア:(1)放出試験における1時間後の薬物残存率が90%以上である、(2)放出試験における1日後の薬物残存率が82%以上である、(3)投与後から4週間、一定速度で薬物を放出し、薬物の血中濃度を少なくとも0.01ng/mL以上に維持する、[2]薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が4〜8である前記[1]記載のマイクロスフェア、[3]マイクロスフェアの平均粒子径が25〜35μmである前記[1]記載のマイクロスフェア、[4]乳酸/グリコール酸の組成比が50/50である前記[1]記載のマイクロスフェア、[5]薬物の血中濃度が、0.01ng/mL〜150ng/mLである前記[1]記載のマイクロスフェア、[6]前記[1]記載のマイクロスフェアを含有してなる閉塞性動脈硬化症、脳卒中、肺線維症、肺高血圧症、喘息、糖尿病およびその合併症、狭心症、心筋梗塞、腎不全、変形性関節炎、関節リウマチまたは骨粗鬆症の予防および/または治療剤、[7](i)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が4〜8であり、(ii)マイクロスフェアの平均粒子径が25〜35μmであり、(iii)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量が10,000〜30,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比が50/50であることを特徴とする、薬物として({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸と、乳酸/グリコール酸共重合体からなり、下記(1)〜(2)の条件を満たす2週間持続型マイクロスフェア:(1)放出試験における1時間後の薬物残存率が90%以上である、(2)投与後から2週間、一定速度で薬物を放出し、薬物の血中濃度を0.01ng/mL〜150ng/mLの範囲で維持する、および[8](i)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が4〜8であり、(ii)マイクロスフェアの平均粒子径が25〜35μmであり、(iii)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量が30,000〜50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比が50/50であることを特徴とする、薬物として({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸と、乳酸/グリコール酸共重合体からなり、下記(1)〜(2)の条件を満たす4週間持続型マイクロスフェア:(1)放出試験における1日後の薬物残存率が82%以上である、(2)投与後から4週間、一定速度で薬物を放出し、薬物の血中濃度を0.01ng/mL〜150ng/mLの範囲で維持するに関する。 本発明で用いられる本薬物は、式(A)で示される({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸(CAS登録番号176391−41−6)である。本薬物は特開平6−87811号公報の実施例2(g)に記載されており、本薬物は該公報記載の方法に準じて製造することができる。また、本薬物の代わりに、本薬物の塩、例えば、ナトリウム塩または塩酸塩を用いても良い。 本発明のマイクロスフェアとは、本薬物およびPLGAからなるマイクロスフェアを意味する。 本発明で用いられるPLGAは生体内分解性の高分子である。PLGAによるマイクロスフェアが生体内に投与されると、まず水分子がポリマー内に速やかに浸透し、PLGAを水和し、膨潤させ、加水分解を全体で進行させ、PLGAの分子量が漸次低下する。体液(水分)は約24時間以内にマイクロスフェア内に侵入し、十分に膨潤する。PLGAの低分子化の進行に伴い、ドメイン構造は破壊され脆弱となり、そこに存在する本薬物は、脆弱となったPLGA結合の間から拡散と溶解により放出される。PLGAの加水分解は非酵素的および酵素的に起こり、体液(水分)の侵入により開始され、加水分解に合せて本薬物が徐々に放出される。 本発明で用いられるPLGAは自体公知の製造方法に従って製造するか、または市販品として入手することができる。例えば、本発明で使用するPLGAとしては、PLGA−7510(和光純薬工業(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=75/25、重量平均分子量10,000)、PLGA−7515(和光純薬工業(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=75/25、重量平均分子量15,000)、PLGA−7520(和光純薬工業(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=75/25、重量平均分子量20,000)、PLGA−5010(和光純薬工業(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=50/50、重量平均分子量10,000)、PLGA−5015(和光純薬工業(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=50/50、重量平均分子量15,000)、PLGA−5020(和光純薬工業(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=50/50、重量平均分子量20,000)、PLGA5−50(PLGA5−1ともいう。三井化学(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=50/50、重量平均分子量50,000)、PLGA75−50(三井化学(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=75/25、重量平均分子量50,000)、H1702−2(三井化学(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=50/50、重量平均分子量18,000)、H1702−3(三井化学(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=50/50、重量平均分子量35,000)、H1702−4(三井化学(株)製、DL−乳酸/グリコール酸=50/50、重量平均分子量46,000)等が挙げられる。また、これらのPLGAの低分子量(重量分子量:1〜3,000)をカットオフしたもの等がある。 本明細書中、PLGAの重量平均分子量は、ゲルパーミェーションクロマトグラフィー(GPC)で測定したポリスチレン換算の平均分子量をいう。 PLGAにおける乳酸としては、L−、D−およびDL−乳酸を用いてもよく、好ましくはDL−乳酸である。 後記する適応疾患のうち、閉塞性動脈硬化症、脳卒中、肺線維症、肺高血圧症、喘息、糖尿病およびその合併症、狭心症、心筋梗塞、腎不全、変形性関節炎、関節リウマチまたは骨粗鬆症の予防および/または治療に本発明のマイクロスフェアを適用する場合、その徐放(スローリリース)期間としては、2週間〜4週間が好ましい。 本発明のマイクロスフェアにおいて、目的とする徐放(スローリリース)期間にあわせて、PLGAの重量平均分子量を以下の通り選択すればよい。例えば、2週間〜4週間の徐放期間の場合、約10,000〜約50,000が好ましい。中でも、2週間の徐放期間を目的とする場合、PLGAの重量平均分子量は約10,000〜約30,000が好ましく、約10,000〜約20,000がより好ましく、約20,000が特に好ましい。また、4週間の徐放期間を目的とする場合、PLGAの重量平均分子量は約30,000〜約50,000が好ましく、約40,000〜約50,000がより好ましく、約50,000が特に好ましい。 また、PLGAにおける乳酸/グリコール酸の組成比についても、目的とする徐放(スローリリース)期間にあわせて、組成比を以下の通り選択すればよい。例えば、2週間〜4週間の徐放期間の場合、75/25〜25/75(w/w)が好ましく、より好ましくは75/25〜50/50(w/w)であり、特に好ましくは50/50(w/w)である。 また、PLGAを用いたマイクロスフェアは、その平均粒子径が大きくなるとリリース速度は遅くなる。しかし、マイクロスフェアを、例えば、皮下投与、筋肉内投与、または疾患臓器内局所投与する場合、平均粒子径が10μm以下になると、マイクロスフェアが血管系に流出した場合、全身循環し、標的部位ではない肺、肝または腎等に留まり、その部位にてリリースすることもあるため、薬効が発現しない虞がある。また、粒子径が70μm以上になると、投与時の注射針(25G〜27G)の通針性が悪くなり、また、血管系にマイクロスフェアが流入した場合、末梢血管を閉塞し虚血状態を引き起こすこともある。 したがって、本発明のマイクロスフェアの平均粒子径としては、上記した問題点を回避し、かつ目的とする徐放期間にあわせて、平均粒子径を適宜調製すればよく、例えば、2週間〜4週間の徐放期間の場合、約20〜約50μmであり、より好ましくは約25〜約35μmである。 本発明において、マイクロスフェアの平均粒子径は、PLGAの製造時に用いる乳化用ホモジナイザー(例えば、ヒストコロン(日音医理科器械製作所製)、ホモミキサー(プライミクス社製)、ユニミキサー(プライミクス社製)、TKロボミックス(プライミクス社製)等)の種類と、撹拌時の回転数とを適宜組み合わせて調整することができる。 なお、本発明のマイクロスフェアの平均粒子径とは、その一次粒子の平均粒子径(重量基準平均径)を意味し、例えば一般に用いられているレーザー回折式の粒度分布測定装置(例えば、SALD−2100(株式会社島津製作所))や、コールターカウンター(Beckman Coulter製、Multisizer3)により測定することができる。なお、本明細書において、具体的に記載されているマイクロスフェアの平均粒子径はコールターカウンター法によって測定された値を意味する。 本発明において、マイクロスフェアにおける本薬物とPLGAの重量比としては、本薬物1重量部に対してPLGAの重量部としては、約3〜約10が好ましく、より好ましくは約3.5〜約9であり、特に好ましくは約4〜約8である。 PLGA中に含まれる本薬物の封入率(封入率は、相当する本薬物の含有量に変換することができる。)が少ない場合は、PLGA自体の投与量が増加する。PLGA自体の安全性に関しては、すでにリュープリン注射用、またはサンドスタチンLAR筋注用等の開発において、PLGA自体に毒性はないことが証明されているが、大量に投与された場合は投与局所において加水分解された乳酸および/またはグリコール酸の濃度が増し、酸性障害を起こすことが知られている。したがって、可能な限り投与時のPLGAの量を減少させることが好ましく、そのためには本薬物の封入率を増加させる必要がある。一方、本薬物の封入率を増加させた場合、マイクロスフェアの粒子の表面構造が歪になり、その結果、初期バーストが亢進する。したがって、良好な封入率は、約9%〜約25%(このとき、含有量としては本薬物1重量部に対してPLGAの重量部が約3〜約10の場合が相当する。)であり、さらに約10%〜約22%(このとき、含有量としては本薬物1重量部に対してPLGAの重量部が約3.5〜約9の場合が相当する。)であり、とりわけ約11%〜約20%(このとき、含有量としては本薬物1重量部に対してPLGAの重量部が約4〜約8の場合が相当する。)が最適である。 なお、本発明のマイクロスフェアにおいて、PLGA中に含まれる本薬物の含有量、すなわち封入率とは、以下の式で示される。封入率(%)=(本薬物の測定含有量/マイクロスフェア量)×100封入率は、後記実施例記載の方法に基づいて測定することができる。 本発明において、「2〜4週間持続型」のマイクロスフェアとは、本発明のマイクロスフェアに封入された本薬物が、投与後から約2週間〜約4週間、持続的に放出される機能を有するマイクロスフェアを意味する。「2週間持続型」または「4週間持続型」のマイクロスフェアとは、それぞれ、本発明のマイクロスフェアに封入された本薬物が、投与後から約2週間または約4週間、持続的に有効量が放出される機能を意味する。また、本明細書中において、「2週間持続型」と「2週間の徐放期間を有する」とは同義であり、「4週間持続型」と「4週間の徐放期間を有する」も同義である。 本発明において、「投与後から約4週間、一定速度で薬物を放出する」とは、本発明のマイクロスフェアに封入された本薬物が、投与後から約4週間、持続的、かつ一定速度、すなわち定常的に放出されることを意味する。ここで、本薬物が、一定速度で放出されていることを確認する方法としては、当業者であれば明らかなように、後記するin vitroリリース試験(放出試験)において、本薬物の残存率が時間に応じて直線的に推移すること、すなわち0次放出されていることを確認すればよい。この機能によって、上記の放出期間内において、本薬物の有効血中濃度または疾患局所有効濃度を持続的、かつ定常的に維持することができる。上記において、好ましい放出期間としては2週間または4週間である。 後記する実施例で得られたラットにおける本薬物の血中濃度は、ラットにおいて副作用(例えば、体重減少、下痢、降圧作用等)を回避し、薬効発現に適している。当業者であれば明らかなように、当該血中濃度は、ヒトにおける本薬物の血中濃度に外挿することができる。 本薬物のヒトにおける血中濃度が約150ng/mLを超えた場合、血小板凝集抑制作用に加えてフラッシング(顔面紅潮)、頭重感や一過性の降圧作用を示すことが懸念される。それに対して、本薬物の血中濃度および/または疾患組織の局所濃度が約0.01ng/mLを下回る場合、薬効が十分に発現しない可能性がある。 ラットから得られた血中濃度の結果をヒトに外挿する方法として、その値の約1/100倍〜約100倍の数値を用いるのが一般的であるため、ヒトにおける薬効発現に適した本薬物の血中濃度は約0.01ng/mL〜約150ng/mLと推定される。 本発明において、「薬物の血中濃度を維持する」とは、本発明のマイクロスフェアを全身的に投与した際に、副作用を回避し、ヒトにおける薬効発現に適した本薬物の血中濃度の範囲を維持することを意味し、その範囲として具体的には、約0.01ng/mL〜約150ng/mLが好ましく、より好ましくは、約0.1ng/mL〜約60ng/mLである。一方、本薬物のマイクロスフェアを疾患局所に投与し、局所濃度を持続的に高濃度維持することを目的とする場合、血中に流出する本薬物の血中濃度としては、投与臓器等部位にもより異なるが、例えば、約0.01ng/mL〜約150ng/mLの約1/10〜約1/100程度となる。 本発明のマイクロスフェアの投与形態としては、例えば、皮下、皮内、筋肉内、血管内、中枢および心筋等の疾患局所臓器内への注射剤、骨セメント、人工骨補填材(β−TCP;tricalcium phosphate)、ゼラチンハイドロゲル類等と混合した埋め込み剤、薬物溶出ステント(DES)、直腸、子宮、口腔内等の経粘膜投与剤、経口剤、坐剤、点鼻剤、吸入剤、点眼剤、関節腔、または腫瘍等の病巣部等への投与等が挙げられる。 2週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1時間後の本薬物の残存率が約90%以上に保持されること、また、4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1日後の本薬物の残存率が約82%以上に保持されることによって、初期バーストの抑制、すなわち、本薬物の初期放出量を抑制し、一時的な血中濃度の上昇を抑制し、本薬物の一時的な血中濃度上昇に伴う降圧作用等を抑制することが可能となる。 本発明において、初期バーストの度合いを評価する方法としては、特に限定されないが、例えば、後記実施例記載のin vitroリリース試験(放出試験)等が挙げられる。本発明において、当該in vitroリリース試験において、2週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1時間後の本薬物の残存率が約90%以上に保持された場合、または4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1日後の本薬物の残存率が約82%以上に保持された場合、初期バーストが抑制されているものと判断した。 また、本発明において、初期バーストの抑制効果を高めるために添加剤を加えてもよい。例えば、温度やイオンの添加によって内水相の粘度を増加したり、固化したりする物質、陽電荷を有する塩基性の残基を持つ物質、高分子重合体と相互作用を持ちo/wまたはw/o/wエマルジョンの粘度を増大する物質が好ましい。具体的には、例えばゼラチン、寒天、アルギン酸、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)あるいはアルギン酸、リジン等の塩基性アミノ酸、塩基性アミノ酸を含むポリペプチド、N−メチルグルカミン等の有機塩基、および天然あるいは合成の塩基性高分子(キトサン類として、例えばヒドロキシプロピルトリモニウムキトサン等)(内水相中での濃度が約0.05%〜約80%)等が挙げられる。 また、本発明において、初期バーストの抑制効果を高めるために、マイクロスフェアの製造時に混在する約3,000以下の低分子量のPLGAを除去してもよい。 本発明のマイクロスフェアの製造方法としては、例えば水中乾燥法(例えば、o/w法、w/o法、w/o/w法等)、相分離法、噴霧乾燥(スプレードライ)法、超臨界流体による造粒法、これらに準ずる方法あるいは実施例に記載した方法等が挙げられる。 以下に、水中乾燥法(o/w法)と噴霧乾燥法について、具体的な製造方法を記述する。(1)水中乾燥法(o/w法) 本方法においては、まずPLGAの有機溶媒溶液若しくは有機溶媒/アルコール系溶媒溶液を作製する。前記有機溶媒は、沸点が120℃以下であることが好ましい。有機溶媒としては、例えばハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、クロロホルム等)、脂肪族エステル(酢酸エチル等)、エーテル類、芳香族炭化水素、ケトン類(アセトン等)、アルコール類(メタノール、エタノール等)、脂肪族カルボン酸類(酢酸等)、およびジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)等が挙げられる。これらは2種以上適宜の割合で混合して用いてもよい。有機溶媒として好ましくは、ジクロロメタン、アセトンである。アルコール系溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等が挙げられ、好ましくはメタノールまたはエタノールである。有機溶媒/アルコール系溶媒の容積比(v/v)としては、約1/1〜約20/1が好ましく、より好ましくは約2/1〜約10/1である。 PLGAの有機溶媒溶液中若しくは有機溶媒/アルコール系溶媒溶液中の濃度は、PLGAの重量平均分子量、有機溶媒、アルコール系溶媒の種類等によって異なるが、一般的には約0.01〜約80%(w/v)から選ばれる。好ましくは約0.1〜約40%(w/v)、さらに好ましくは約1〜約20%(w/v)である。 このようにして得られたPLGAの有機溶媒溶液若しくは有機溶媒/アルコール系溶媒溶液中に、本薬物を添加し、溶解させる。この本薬物の添加量は、目的とする放出時間等によって異なるが、PLGAの有機溶媒溶液若しくは有機溶媒/アルコール系溶媒溶液中の濃度として、約0.001%〜約90%(w/v)、好ましくは約0.1%〜約50%(w/v)、さらに好ましくは約0.3〜30%(w/v)である。また、必要に応じて、抗酸化剤および/または添加剤を本薬物と共にPLGAの有機溶媒溶液もしくは有機溶媒/アルコール系溶媒溶液中に溶解してもよい。 次いで、上記で調製された溶液をさらに水相中に加えて、撹拌機、乳化機等を用いてo/wエマルジョンを形成させる。この際の水相体積は一般的には油相体積の約1倍〜約10,000倍であり、さらに好ましくは、約2倍〜約5,000倍であり、特に好ましくは、約10倍〜約1,000倍である。水相中に乳化剤を加えてもよい。乳化剤は、一般的に安定なo/wエマルジョンを形成できるものであれば何れでもよい。乳化剤としては、例えばアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、レシチン、ゼラチン等が挙げられる。これらは適宜組み合わせて使用してもよい。乳化剤として好ましくはポリビニルアルコール(PVA)が挙げられる。外水相中の乳化剤の濃度は、好ましくは約0.001%〜約20%(w/v)である。さらに好ましくは約0.01%〜約10%(w/v)、特に好ましくは約0.05%〜約5%(w/v)である。 o/wエマルジョンを形成する際の撹拌速度を適宜調製することにより、得られるマイクロスフェアの粒子径を調製することができる。例えば、回転数が速ければ得られるマイクロスフェアの粒子径は小さくなり、逆に回転速度が遅ければ粒子径が大きくなる。 油相の溶媒の蒸発には、通常用いられる方法が採用される。その方法としては、撹拌機、あるいはマグネチックスターラー等で撹拌しながら常圧もしくは徐々に減圧して行なうか、ロータリーエバポレーター等を用いて、真空度を調節しながら行なう。このようにして得られたマイクロスフェアは遠心分離法あるいはろ過して分取した後、マイクロスフェアの表面に付着している遊離の有効成分、乳化剤等を、例えば界面活性剤溶液またはアルコール等で数回繰り返し洗浄した後、再び、蒸留水(精製水)に分散して凍結乾燥する。前記したo/w法においては、本薬物をPLGAの有機溶媒溶液中に分散させる方法、すなわちs/o/w法によりマイクロスフェアを製造してもよい。また、製造されたマイクロスフェアの注射溶液への分散性を向上させ凝集を抑制し、安定した徐放性マイクロスフェア注射剤を得るために分散剤、保存剤、等張化剤、賦形剤、抗酸化剤を添加し、凍結乾燥を行ってもよい。これらの添加剤を加えることによって、マイクロスフェア同士の凝集性の抑制、懸濁性の向上による通針性の向上を行なうことが可能である。 (2)噴霧乾燥法により本発明のマイクロスフェアを製造する場合には、PLGAと有効成分を溶解した有機溶媒またはエマルジョンを、ノズルを用いてスプレードライヤー装置(噴霧乾燥機)の乾燥室内へ噴霧し、きわめて短時間に微粒化液滴内の有機溶媒または水を揮発させマイクロスフェアを調製する。ノズルとしては、二液体ノズル型、四流体ノズル型、圧力ノズル型、回転ディスク型等がある。このとき、所望により、o/wエマルジョンの噴霧と同時にマイクロスフェアの凝集防止を目的として、有機溶媒または凝集防止剤(マンニトール、ラクトース、ゼラチン等)の水溶液を別ノズルより噴霧することも有効である。このようにして得られたマイクロスフェアは、必要があれば加温し、減圧下でマイクロスフェア中の水分および溶媒の除去をより完全に行なう。 分散剤としては、例えば、マンニトール、ラクトース、グルコース、Tween80(商品名)、HCO−60(商品名)、CMC−Na(商品名)、アルギン酸ナトリウム、デンプン類(例:コーンスターチ等)、グリシン、フィブリン、コラーゲン等が挙げられる。 保存剤としては、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベン等が挙げられる。 等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、マンニトール、ソルビトール、ブドウ糖等が挙げられる。 賦形剤としては、例えば、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、ブドウ糖等が挙げられる。 抗酸化剤としては、例えば、パラベン類(メチルパラベン等)、ソルビン酸またはその塩類、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、α−トコフェロール、アスコルビン酸パルミテート、ノルジヒドロキシグアイアレチン酸、グアヤコールエステル類、1,3−ブチレングリコール、デヒドロ酢酸ナトリウム、没食子酸プロピル等)、三価金属イオンを生成する塩(塩化アルミニウム、ミョウバン、アルミニウムアラントイネート等)等が挙げられる。 国際公開第2004/032965号パンフレット記載の製造例2の本薬物とPLGAを含有してなるマイクロスフェアは、その薬物含有率が約5%と非常に低いので、十分な薬効を得るためには、多量に投与する必要が生じる。そのため、PLGA自体の投与量も多くなり、投与後に上記したような酸性障害が起こることが懸念される。そこで、本発明では、その問題点を克服するために薬物含有量(封入率)を増加させた。しかしながら、単純に薬物含有量を増加させるだけでは、後記実施例に示すように本薬物の初期バーストが生じることが問題となる。そのため、さらにPLGAの重量平均分子量、PLGA中における乳酸/グリコール酸の組成比、マイクロスフェアの平均粒子径、本薬物とPLGAの重量比を適宜調節して組み合わせることによって、本薬物の初期バーストを抑制し、投与後から約2週間〜約4週間にわたって、一定速度で本薬物を放出すること(0次放出)を達成しうるマイクロスフェアを見出した。さらに、本発明のマイクロスフェアは、徐放期間中、副作用を回避し、薬効発現に最適な本薬物の血中濃度の範囲を維持することも可能であることも見出した。 本発明において、約2週間〜約4週間の徐放期間を有し、上記した機能を有するマイクロスフェアを調製するためには、1)マイクロスフェアの平均粒子径を約20〜約50μmに、2)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部を約3〜約10に、3)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量を約10,000〜約50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比を約75/25〜約50/50にすることが好ましく、より好ましくは1)マイクロスフェアの平均粒子径を約25〜約35μmに、2)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部を約4〜約8に、3)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量を約10,000〜約50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比を約50/50に調製することである。 中でも、2週間の徐放期間を有するマイクロスフェアを製造するためには、1)マイクロスフェアの平均粒子径を約25〜約35μmに、2)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部を約4〜約8に、3)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量を約10,000〜約20,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比を約50/50に調製することであり、4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアを製造するためには、1)マイクロスフェアの平均粒子径を約25〜約35μmに、2)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部を約4〜約8に、3)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量を約50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比を約50/50に調製することである。 上記の通り、各構成要件を好ましい範囲に調製された本発明のマイクロスフェアは、後記実施例に記載するin vitroリリース試験(放出試験)において、2週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1時間後の本薬物の残存率が約90%以上であり、また、4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは1日後の本薬物の残存率が約82%以上であることから、いずれも初期バーストが抑制されている。さらには、当該マイクロスフェアは、後記実施例に示すように、各徐放期間に応じて、有効血中濃度を維持する機能をも有している。[医薬品への適用] 本薬物は、PGI2受容体作動作用、TXA2合成酵素阻害作用、内因性修復因子産生促進作用、幹細胞分化誘導作用、および血管新生促進作用等を有しているため、本薬物および本薬物を含有するマイクロスフェアは、各種臓器障害(例えば、血管・リンパ管疾患(例えば、閉塞性動脈硬化症(ASO)、バージャー病、レイノー病、動脈硬化、リンパ浮腫等)、心疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症、上室性頻脈性不整脈、うっ血性心不全、冠動脈疾患、特発性心筋症、拡張型心筋症、心房細動、心筋炎等)、神経変性疾患(例えば、虚血性脳障害、脳血管障害、脳卒中(脳梗塞、脳出血等)、パーキンソン病、アルツハイマー病、糖尿病性神経障害、脊柱管狭窄症、認知症、モヤモヤ病、脊髄損傷、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、脳動脈瘤等)、肺疾患(例えば、急性肺炎、肺線維症、肺高血圧症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、全身性炎症反応症候群(SIRS)、急性肺障害(ALI)、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、サルコイドーシス、間質性肺炎、過敏性肺炎、喘息等)、骨・軟骨疾患(例えば、脊椎または膝等変形性関節炎(OA)、関節リウマチ(RA)、骨粗鬆症、骨折、骨壊死、骨膜損傷、心肺手術に伴う胸骨再生療法等)、肝疾患(例えば、劇症肝炎、急性肝炎、肝硬変、慢性肝炎、脂肪肝等)、腎疾患(例えば、急性腎不全、虚血性腎傷害、クラッシュ症候群、慢性腎不全、糸球体疾患、糸球体腎炎、腎硬化症、増殖性糸球体腎炎、尿細管間質性疾患、腎血管系障害症、嚢胞性腎疾患、中毒性腎症、尿細管輸送異常症、透析患者腎障害、腎症等)、膵疾患(例えば、糖尿病、慢性膵炎、急性膵炎等)、消化器疾患(例えば、食道炎、胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病等)、臓器・組織移植(心臓移植、肝移植、腎移植、肺移植、膵移植、筋皮弁移植、食道移植、皮膚移植、血管・リンパ管移植、造血幹細胞移植、骨・軟骨移植等)、糖尿病性合併症(例えば、神経障害、皮膚潰瘍、腎症等)、血管内皮細胞障害(例えば、PTCA(percutaneous transluminal coronary angioplasty:経皮経管冠動脈形成術)後の再狭窄予防等)、歯科疾患(例えば、歯周病、抜歯創、口腔創傷、歯周骨組織障害、歯周炎等)、皮膚疾患(例えば褥瘡、脱毛疾患、円形脱毛症、皮膚潰瘍等)、眼科疾患(例えば、緑内障等)、耳鼻科疾患(難聴、感音難聴等)、多臓器不全(MOF)、アレルギー疾患、膠原病等の予防および/または治療剤として有用である。特に、血管・リンパ管疾患として、ASO、バージャー病、リンパ浮腫、糖尿病性潰瘍、心疾患として心筋梗塞、狭心症、心不全、肺疾患として肺線維症、肺高血圧症、喘息、COPD、腎疾患として急性腎不全、慢性腎不全、糖尿病性腎症、骨・軟骨疾患としてOA、RA、骨粗鬆症、骨折、神経変性疾患として脳卒中、パーキンソン病、脊髄損傷、糖尿病性神経障害、肝疾患として急性肝炎、劇症肝炎、肝硬変およびPTCA再狭窄への予防および/または治療剤として有望である。 本薬物が産生を誘導・促進・増幅する内因性修復因子には、産生細胞により異なるが、例えば、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、各種の線維芽細胞増殖因子(a/bFGF)、形質転換増殖因子−α/β(TGF−α/β)、血小板由来増殖因子(PDGF)、アンジオポイエチン、低酸素誘導因子(HIF)、インスリン様成長因子(IGF)、骨形成蛋白質(BMP)、結合組織成長因子(CTGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、神経成長因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、幹細胞因子(SCF)、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、結合組織成長因子(CTGF)、顆粒球単球コロニー刺激因子(GM−CSF)、ケラチノサイト増殖因子(KGF)、軟骨細胞成長因子(GDF)等またはそのファミリーの増殖因子等が知られているが、今回新たにストローマ細胞由来因子(SDF−1)の産生誘導作用を見出した。SDF−1は、造血にとどまらず、発生過程における幹細胞、前駆細胞の動態制御の鍵となるサイトカインの一つであることが明らかになっている。例えば、本薬物により、線維芽細胞からは、VEGF−A、HGF、EGFおよびSDF−1等が産生誘導される。また、上記の内因性修復因子類を産生する他の薬物類としては、他のプロスタグランジン(PG)I2受容体アゴニスト(例えば、ベラプロスト、イロプロスト、NS−304等)、PGE2受容体の中のEP2、EP4受容体アゴニスト、およびこれらの混合アゴニスト(PGE1、PGE2、PGI2およびその誘導体等)等が挙げられる。本発明の目的を達成するために、本薬物の代わりに上記薬物を用いてもよい。 本発明のマイクロスフェアは皮下投与、筋肉内投与および/または組織埋め込み投与することにより、長時間スローリリースされ、局所組織濃度および/または血中濃度を維持する。維持された薬物は、本来有するPGI2受容体作動作用およびTXA2合成酵素素阻害作用等による血管拡張作用および血小板凝集抑制作用等により、残存血管の血流量を増加させる。また、本薬物は各種の内因性修復因子の産生を促進させるため、血管新生・再生促進作用および幹細胞分化誘導作用等により組織再生促進作用を有し、各種疾患に対して選択的な効果を有する。 徐放(リリース)期間と投与方法は、疾患とその治療法により、安全性、利便性、低侵襲性、患者負担、コンプライアンス等を考慮して適宜決定される。 本発明のマイクロスフェアは、約2週間〜約4週間の徐放期間を有するため、上記した疾患のうち、とりわけ、血管・リンパ管疾患(例えば、ASO、バージャー病、レイノー病、リンパ浮腫、PTCA再狭窄予防等)、心疾患(例えば、心筋梗塞、狭心症、心不全、拡張型心筋症等)、腎疾患(例えば、急性腎不全、慢性腎不全、糖尿病性腎症等)、神経変性疾患(例えば、脳卒中、パーキンソン病、糖尿病性神経障害、骨髄損傷等)、肺疾患(例えば、肺高血圧症、肺線維症、喘息、COPD等)、および骨・軟骨疾患(例えば、骨粗鬆症、関節リウマチ、変形性関節症、骨折、歯周病等)の予防および/または治療に有用である。 本発明のマイクロスフェアをこれらの疾患に適用するための好ましい投与方法としては、疾患局所に直接投与する方法として、例えば、皮下、皮内、筋肉内、血管内、中枢および心筋等の疾患局所組織内への注射剤、骨セメント、人工骨補填材(β−TCP;tricalcium phosphate)、ゼラチンハイドロゲル類等と混合した埋め込み剤、手術糸、ボルト、フィルム、シート等に含有させる方法やステント等にコーティングさせる方法等がある。また、直腸、子宮、口腔内等の経粘膜投与剤、経口剤、坐剤、点鼻剤、吸入剤、点眼剤、関節腔、経皮剤、軟膏剤、貼付剤または腫瘍等の病巣部等への投与等が挙げられる。[毒性] 本薬物、および本発明のマイクロスフェアの毒性は低く、医薬として使用するために十分に安全である。 本薬物、および本発明のマイクロスフェアは、心疾患、血管・リンパ管疾患、肺疾患、腎疾患、肝疾患、膵疾患、骨・軟骨疾患、アレルギーおよび神経変性疾患等の予防および/または治療に有用である。本発明のマイクロスフェアは、投与後から約2週間〜約4週間にわたり、一定速度で本薬物を放出する機能を有するため、特に、ASO、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、糖尿病およびその合併症、腎不全、肺線維症、肺高血圧症、喘息、OA、RA、骨粗鬆症等の予防および/または治療に有用である。さらに、本発明のマイクロスフェアは、本薬物の初期バーストを抑制し、投与後から約2週間〜約4週間にわたり、副作用を回避し、薬効発現に適した本薬物の血中濃度の範囲を維持することが可能である。In vitroリリース試験において、製剤例1−4で調製したマイクロスフェアの薬物残存率の推移を示した図である。In vitroリリース試験において、製剤例2−3で調製したマイクロスフェアの薬物残存率の推移を示した図である。ラット4−VOモデルにおいて、製剤例2−2で製造したマイクロスフェアを1回皮下投与(10mg/kg)をした際の本薬物の血中動態を示した図である。 以下、製剤実施例および実施例によって本発明を具体的に詳述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。製剤実施例1.マイクロスフェアの調整(o/w法) 本薬物およびPLGAをジクロロメタンまたは、ジクロロメタンおよびメタノール(または、ジメチルスルホキシド、酢酸)の混合溶液に溶解させた。ヒストコロン(日音医理科器械製作所製、NS-60型)を用いて、1,000〜5,000rpmで撹拌した0.1%ポリビニルアルコール(ナカライテスク株式会社製)水溶液(1N塩酸によりpH3.0に調整)300mL〜40000mL中に、上記で調整した溶液を加え、室温で30秒〜3分間撹拌し、o/wエマルジョンとした。このo/wエマルジョンを室温で4時間撹拌し、ジクロロメタンを揮発させ、油層を固化させた後、遠心分離機(日立製、HIMAC-CR5B2)を用いて遠心分離(3,000rpm、10分間)した。上清を除去した後、精製水(30〜50mL)で分散し、遠心分離(3,000rpm、10分間)し、上清を除去した後、0.2%(w/v)Tween溶液(30〜50mL)で分散し、遠心分離(3,000rpm、10分間)し、さらに上清を除去した後、再度精製水(30mL)で分散し、遠心分離(3,000rpm、10分間)し、上清を除去した。沈殿物をドライアイス−メタノールで凍結後、減圧乾燥(12時間)させることによって、本薬物のマイクロスフェアを製造した。製剤例1−3については、公知の方法により、PLGAとして、PLGA−5010の低分子量(重量分子量:1〜3,000)をカットオフしたものを用いた。 得られたマイクロスフェアの平均粒子径の測定は、コールターカウンター(Beckman Coulter製、Multisizer3)で行なった。 また、得られたマイクロスフェア中の本薬物含有量(封入率)は以下の方法で測定した。 上記で製造したマイクロスフェア(約10mg)をアセトニトリル50mLに加え、超音波処理を10分行い、マイクロスフェアを溶解させた。前記で調製した溶液400μLに内部標準(IS)液A100μLおよび移動相500μL(pH3.0)を加え、混和した。この混和溶液を遠心分離(12、000rpm、3分後)した後、得られた上清10μLに含まれる本薬物の含有量を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で測定し、マイクロスフェア中の本薬物の封入率を算出した。封入率(%)=(本薬物の測定含有量/マイクロスフェア量)×100<HPLC条件>装置:クロマトグラフ(島津製作所製、Shimadzu LC-10AT)、UV検出器(島津製作所製、Shimadzu SPD-10A)、データ解析機器(島津製作所製、Shimadzu C-R7A)検出:UV-265 nmカラム:SHISEIDO CAPCELLPACK C18 UG120 (4.6 mm i. d. x 150 mm)(資生堂製)カラム温度:25℃付近の一定温度移動相:アセトニトリル:水:トリエチルアミン=1000:900:3(水とトリエチルアミンの混合溶液をリン酸でpH3に調整する)流速:1.0mL/分内部標準(IS):n−プロピルパラベン本薬物溶出時間:7分IS溶出時間:4分<IS液Aの調製方法>IS100mgを秤量し、エタノールにて100mLにメスアップした。この溶液10mLを採り、エタノールにて100mLにメスアップし、これをIS液Aとした。 上記調製および測定結果を以下の表1〜表4に示す。なお、以下の表中、PL/GAとは、PLGAにおける乳酸(PL)/グリコール酸(GA)の組成比を意味する。回転数は、本薬物およびPLGAを含有する混合溶液と、0.1%ポリビニルアルコール水溶液とをヒストコロンを用いて撹拌し、o/wエマルジョンを作製する際の回転数を意味する。CH2Cl2はジクロロメタン、MeOHはメタノールを意味し、DMSOはジメチルスルホキシドを意味する。実施例1.In vitroリリース試験 製剤実施例1で製造したマイクロスフェアを、本薬物として30μg/mLになるように0.2(w/v)%Tween80含有1/15Mリン酸緩衝液(pH7)に加えて、ボルテックス(10秒)および超音波(20秒)により、均一に分散させた。1mLずつ容器に小分け充填し、37℃恒温槽で静置させた。経時的に容器ごとサンプリングし、遠心分離(12、000rpm、5分)して、上清を除き、得られたペレットをドライアイス−メタノールで凍結させ、減圧乾燥した。このペレットにアセトニトリル500μLを加えて、超音波処理により、マイクロスフェアを溶解させた。これにIS液B500μLを加えて、混和した。この混和溶液を500μL量り取り、移動相(pH3)500μLで希釈し、遠心分離(12、000rpm、3分間)後、得られた上清10μL中のマイクロスフェア内に含まれる本薬物の残存量をHPLCで測定した。 本薬物の残存率(%)の計算方法は、本薬物がすべて溶出した場合の本薬物濃度(30μg/mL)を100%として算出した。 前記したように、2週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1時間後の本薬物の残存率が約90%以上であった場合、初期バーストが抑制されているものとした。同様に、4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1日後の本薬物の残存率が約82%以上であった場合、初期バーストが抑制されているものとした。<HPLC条件>装置:クロマトグラフ(島津製作所製、Shimadzu LC-10AT)、UV検出器(島津製作所製、Shimadzu SPD-10A)、データ解析機器(島津製作所製、Shimadzu C-R7A)検出:UV-265 nmカラム:SHISEIDO CAPCELLPACK C18 UG120 (4.6 mm i. d. x 150 mm)(資生堂製)カラム温度:25℃付近の一定温度移動相:アセトニトリル:水:トリエチルアミン=1000:900:3(水:トリエチルアミン(900:3)の混合溶液をリン酸でpH3に調整する)流速:1.0mL/分内部標準(IS):n−プロピルパラベン<IS液Bの調製>IS100mgを秤量し、エタノールにて100mLにメスアップした。この溶液10mLを量り、エタノールにて100mLにメスアップした。この溶液10mLを量り、エタノールにて100mLにメスアップし、これをIS液Bとして用いた。 算出結果を以下に表5〜表8に示す。 表5の結果から、比較製剤例1−1〜1−7のマイクロスフェアは、平均粒子径が小さく、および/または封入率が高いため、いずれも1時間後の本薬物の残存率が90%未満であり、初期バーストが生じていることがわかった。それに対して、表6の結果から、製剤例1−1〜1−4のマイクロスフェアでは、1時間後の本薬物の残存率が90%以上であることから、初期バーストが抑制されていることが示された。また、製剤例1−1〜1−4のマイクロスフェアでは、本薬物の約2週間の持続的放出が達成され、さらに、製剤例1−4の薬物残存率の推移を示した図1のように、本薬物の残存率が、時間に応じて直線的に減少していることが示され、0次放出が達成されていることが明らかとなった。 表7の結果から、比較製剤例2−1〜2−8のマイクロスフェアでは、平均粒子径が小さく、および/または封入率が高いため、いずれも1日後の本薬物の残存率が82%未満であり、初期バーストが生じていることがわかった。それに対して、表8の結果から、製剤例2−1〜2−5のマイクロスフェアでは、1日後の本薬物の残存率が82%以上であることから、初期バーストが抑制されていることが示された。また、製剤例2−1〜2−5のマイクロスフェアでは、本薬物の約4週間の持続的放出が達成され、さらに、製剤例2−3の薬物残存率の推移を示した図2のように、本薬物の残存率が、時間に応じて直線的に減少していることが示され、0次放出が達成されていることが明らかとなった。 2週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1)マイクロスフェアの平均粒子径を約25〜約35μmに、2)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部を約4〜約8に、3)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量を約10,000〜約20,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比を約50/50に調製することによって、本薬物を一定速度で放出することが可能であることがわかった。また、4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアでは、1)マイクロスフェアの平均粒子径を約25〜約35μmに、2)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部を約4〜約8に、3)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量を約50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比を約50/50に調製することによって、本薬物を一定速度で放出することが可能であることがわかった。実施例2.血中濃度測定試験 雄性Crl:CD(SD)系ラット(SPF、日本チャールズリバー株式会社、8週齢)に、下記表9に示す各投与製剤(マイクロスフェア)を非絶食下5mL/kgの用量で、皮下投与を行なった。各群3匹(投与群5および6は各6匹)を用いて、各採血ポイント(投与後3時間、8時間、24時間(1日)、3日、7日、10日、14日、17日、21日、24日、28日)において、ラット頚動脈より無麻酔下にて約0.5mLヘパリン加採血を行なった。得られた血液は、12,000rpmで2分間遠心分離し、上清を血漿として回収した。 得られた血漿中における本薬物の血中濃度測定は、LC/MS/MS法にて測定した。血漿の前処理は、血漿に内部標準溶液を加え、水で希釈後、固相抽出カートリッジカラム(ODS−B)に負荷し、水洗除蛋白後メタノールで溶出し、濃縮乾固した。残留物に0.1%酢酸水溶液/アセトニトリルを加え溶解後、LC/MS/MSに注入した。HPLC条件;HPLC:島津10A分析カラム:CAPCELLPAK C18MG120(2.0mmi.d.x150mm、5μm、資生堂)移動層:0.1%酢酸水溶液/アセトニトリル(50:50、vol%)流速:0.2mL/分MS/MS条件;MS/MS:API4000Ionization mode:ESIIon polarity mode: positiveMonitor ion:本薬物(Precursor ion (m/z)*:429.2、Product ion (m/z)*:79.2)内部標準(Precursor ion (m/z)*:445.4、Product ion (m/z)*:168.1)*:mass-to charge ratio、本薬物の保持時間:8.15分投与群1:投与製剤例1のマイクロスフェアを本薬物として10mg/kgの用量で皮下投与した。投与群2:投与製剤例2のマイクロスフェアを本薬物として10mg/kgの用量で皮下投与した。投与群3:本薬物として10mg/kgの用量で皮下投与した。投与群4:本薬物として10mg/kgの用量で経口投与した。 各投与群に用いた投与製剤例の処方を以下の表9に示す。なお、各投与製剤例は、製造実施例1に記載された製造方法に準じて調製された。 各投与群における本薬物の血中濃度の経時的変化を表10および表11に示す。 上記結果から明らかなように、本薬物の皮下投与(投与群3)および経口投与(投与群4)は投与後1時間から8時間まで高い血中濃度を示し、2日後では血中濃度が0.2ng/mL以下であった。それに対して、本発明のマイクロスフェアのうち、4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアの投与群1では、投与後1日から28日までの間、約0.7ng/mL〜約22ng/mLの範囲で、本薬物の血中濃度が持続的に維持されていた。同様に、2週間の徐放期間を有するマイクロスフェアの投与群2では、投与後1日から14日までの間、約4ng/mL〜約30ng/mLの範囲で、本薬物の血中濃度が持続的に維持されていた。さらには、測定期間中、いずれの投与群においても副作用を示す所見(下痢、降圧作用等)は観察されなかった。 したがって、上記実施例1で示されたマイクロスフェアは、2週間および4週間の徐放期間を有するマイクロスフェアはいずれも、副作用を回避し、本薬物の薬理作用を発現するのに十分な血中濃度を持続的に維持する機能も有することが示された。実施例3.本薬物のSDF−1、およびEGFの産生促進作用 正常ヒト臍帯静脈血管内皮細胞と正常ヒト皮膚線維芽細胞から構成された血管新生キット(倉敷紡績株式会社)を入手して使用した。培養方法 培養機器は炭酸ガス培養器BNA−121Dを、培養液は血管新生キットに付属する血管新生専用培地-2を使用し、37℃、5%二酸化炭素−95%空気、湿潤環境で培養した。試験の実施方法 細胞入手直後から3時間培養し、その後に培養液を交換し培養を継続した。培養開始3日後にも培養液交換を行った。培養開始6日後に培養液を交換することにより本薬物を処置した。処置濃度はいずれも100nmol/Lとした。陰性対照にはDMSOを処置した。本薬物処置の6、24、48および72時間後に培養上清を採取し、増殖因子の測定に供した。測定した増殖因子はEGFおよびSDF−1である。 培養上清は以下ELISAキットにより測定した。Human EGF Immunoassay (R&D Systems Inc, DEG00)Human SDF-1α Immunoassay (R&D Systems Inc, DSA00) 本薬物を処置してから72時間後の測定結果を表12に示す。*:P<0.05(Studentのt検定) 上記結果から、本薬物を処置してから72時間後には、溶媒対照群に比し、EGFおよびSDF−1が有意に増加していた。 したがって、本薬物はこれらの増殖因子産生促進作用に基づく血管新生作用、組織再生促進作用が示された。実施例4.総頸動脈閉塞再開通(4−VO)モデルでの効果の検討1)ラット総頸動脈閉塞再開通(4−VO)モデル動物の作製法 9週齢のCrlj:WI系雄性ラットにペントバルビタールナトリウムを腹腔内投与し、麻酔下で脳定位固定装置に腹位に固定した。後頭から頸部皮膚および筋肉層に切開を行い、第一頸椎部で左右の翼孔を露出し、ハンダゴテの先端を各々の翼孔に刺入し、椎骨動脈を熱凝固して両側椎骨動脈を永久閉塞した。続いて前頸部に正中切開を行い、両側総頸動脈を露出剥離し、それにシリコンチューブを潜らせ環状に留置後、頸部皮膚を縫合した。椎骨動脈焼灼手術の翌日にジエチルエーテルで麻酔後、背位に固定し、頸部総頸動脈に留置したシリコンチューブにより両側の総頸動脈を露出し、杉田式クリップにて10分間の一時閉塞を行ない、再開通した。正常群(投与群1)についても虚血再開通以外の同様の操作を行った。2)病理組織学的検討 ラット4点虚血−再開通後に一定の投与期間(8日)または投与期間(42日)+休薬期間(2週間以上)を設け、ペントバルビタールナトリウム麻酔下で生理食塩液、4%パラホルムアルデヒド液、ブアン液の順で灌流固定し、脳を摘出した。ブアン固定した脳より、ブレグマ−3.3mm付近の切り出しを行った。脱水、透徹後、パラフィン包埋した。ブレグマ-約3.3mmの部位から厚さ10μmの切片を4枚作製し、そのうちの1枚でNissl染色によるCA1神経細胞数の計測を行った。うち1枚をPCNA染色(ミクログリア)、1枚にGFAP染色(グリア)とした。試験1)PG類の皮下投与での検討;ラット4−VOモデル(10分閉塞再灌流)後、オルノプロスチル、PGE1・αCDおよび本薬物の1日2回42日間反復皮下投与における海馬CA1領域神経細胞数への影響を検討した。 群構成:正常群(42日間媒体投与後評価:投与群1)、対照群(8日間溶媒投与後評価;投与群2、42日間媒体投与後評価:投与群3)、本薬物(10mg/kg×2回/日の42日間反復皮下投与;投与群4)、オルノプロスチル(0.1mg/kg×2回/日の42日間反復皮下投与;投与群5)、プロスタグランジンE1;PGE1・αCD(1.5mg/kg×2回/日の42日間反復皮下投与;投与群6、3mg/kg×2回/日の42日間反復皮下投与;投与群7)。なお、PGE1・αCDの投与量は、PGE1としての投与量である。本薬物およびオルノプロスチルは降圧作用を示さない最大投与量を設定した。 評価:投与群2は8日後、その他の投与群は42日後、脳灌流固定後、Nissl染色、H−E染色、およびGFAP染色により海馬CA1領域神経細胞数を評価した。(CA1a、CA1b、CA1c領域各10箇所、左右20箇所の神経細胞数を写真撮影し、画像解析装置(Win ROOF V3.6 三谷商事)により成熟神経細胞数を計測した。) Nissl染色による結果を表13に示す。##: P<0.01 vs 投与群1(Dunnett検定)*および**:vs 投与群3* P<0.05, ** P<0.01(Dunnett検定) 4−VO虚血再灌流直後に1回、虚血1〜8日と虚血1〜42日は、1日2回、媒体、本薬物、PGE1・αCD、およびオルノプルスチルを皮下投与した。8日後および42日後に灌流固定後、左右海馬CA1錐体神経細胞数を、Nissl染色により計測した。 その結果、正常群(投与群1)に比し、虚血再開通(4−VO)において、8日目(投与群2)で海馬CA1領域神経細胞が有意な減少を示し、42日後(投与群3)においても細胞数は増加していなかった。一方、本薬物、オルノプロスチル、PGE1・αCDの1.5mg/kgおよび3mg/kg皮下投与において、いずれも虚血42日で媒体(投与群3)と比較して海馬CA1錐体神経細胞の有意な増加が認められた。各種検体投与は虚血での神経細胞障害保護作用および/または神経細胞再生促進作用が確認された。試験2)本薬物反復経口投与での検討;本薬物の障害後1日2回反復経口投与における神経細胞再生促進作用の確認および水迷路学習障害への効果の検討群構成(各群n=12)(1)脳摘出海馬CA1領域神経細胞数評価 投与群1:4−VO+媒体 8日 投与群2:4−VO+本薬物 10mg/kg×2回/日×8日 投与群3:4−VO+本薬物 1mg/kg×2回/日×42日(神経細胞数評価のみ)(2)水迷路学習能測定(4群〜7群)後に脳摘出CA1領域神経細胞数評価(4群〜7群) 投与群4:正常(sham群)+媒体 42日(正常対照) 投与群5:4−VO+媒体 42日(溶媒対照) 投与群6:4−VO+本薬物 10mg/kg×2回/日×42日 投与群7:4−VO+媒体8日+本薬物 10mg/kg×2回/日×34日(再生能評価)(3)病理:投与群1および投与群2は8日目に、投与群4〜投与群7は、水迷路学習能試験翌日に脳の灌流固定を実施し、上記試験1)記載の方法と同様に神経細胞数の測定を行なった。尚、投与群3は、休薬後、投与群4〜投与群7と同時期に脳の固定を実施し、評価した。(4)水迷路学習能測定 投与群3〜投与群7を用いて各群偏りのないように、モーリス水迷路実験装置を用いて、運動機能検査を実施した。水迷路学習能の実験装置 視覚では識別不可能な透明なアクリル製のプラットホーム(直径:約12cm、高さ:約30cm)とプラットホームが水に隠れるように約32cmの高さまで水(水温:17〜18℃)を張った灰色塩化ビニール製の円形プール(直径:約148cm、高さ:約44cm)を使用した。 また、プールを4つの象限に分割し、そのうちの第四象限中央(プール中央より約36cm)にプラットホームを設置し、プールの周囲には空間的手がかりとして電球を設置した。水迷路学習能の習得試行測定 最終投与から2週間以上の休薬期間を設け、A〜Eの各1地点からラットの頭を円形プールの壁に向けて投入し、プラットホーム上に到達するまでの時間(goal latency:秒)をストップウォッチで測定(測定時間は最大90秒間)した。90秒以内にプラットホームに辿り着き、プラットホーム上に30秒間滞在した場合は、プラットホームの位置を認識していると判断し、測定を終了した。辿り着けなかったラットは、goal latencyを90秒とした。 第1日目〜4日目にgoal latencyの測定を1日2試行(午前1試行、午後1試行)した。ラットの頭をA〜Eの各地点から円形プールの壁に向けて入れた。なお、水槽上に設置したビデオカメラによりラットの遊泳行動軌跡をテレビモニターに映し出しながらビデオ画像行動解析装置(SMART、Panlab社)で遊泳時間、移動距離および通過回数を解析し、さらに遊泳行動をDVDビデオレコーダを用いて記録した。結果を表14〜17に示す。1)投与群1および投与群2の海馬CA1領域の神経細胞数**: P<0.01 vs 投与群1(Dunnett検定) 上記から明らかなように、投与群1に比べ、投与群2においては、虚血再灌流後の経口投与により、8日目においてすでに海馬CA1領域神経細胞数の有意な減少抑制が認められ、神経細胞障害保護作用が確認された。2)投与群3〜投与群7の海馬CA1領域の神経細胞数**:vs 投与群4 P<0.01(Aspin-Welchのt-検定またはStudentのt-検定)#:vs 投与群5 P<0.05(Aspin-Welchのt-検定)aa:vs 投与群5 P<0.01(Dunnett検定)+:vs 投与群5 P<0.1(Studentのt-検定) 正常群(投与群4)に比し、媒体投与群(投与群5、4−VOモデルにおける42日後)は、有意に海馬CA1神経細胞数の減少を示したが、本薬物の1mg/kg(投与群3)および10mg/kg(投与群6)の経口投与により、有意な海馬CA1領域神経細胞数の増加が確認された。また、本評価系においては、虚血再開通約5日後には、海馬CA1領域の神経細胞死が完了することが知られており、8日目まで媒体投与し、9日目から本薬物の10mg/kgの34日間反復経口投与(投与群7)においても、海馬CA1領域神経細胞の増加傾向を示した。したがって、本薬物は神経細胞保護作用に加えて、神経細胞再生促進作用をも有することが確認された。3)水迷路学習能測定(1)プラットホーム上に到達するまでの時間(goal latency:秒)値は平均±標準偏差で示す。###:vs 4群 P<0.01*,**:vs 5群 P<0.1, P<0.05(二元配置分散分析(8試行))(2)プラットホーム上に到達するまでの移動距離値は平均±標準偏差で示す。###:vs 4群 P<0.01**:vs 5群 P<0.05(二元配置分散分析(8試行)) 溶媒対照群(投与群5)は正常群(投与群4)に比し、水迷路学習能訓練試行でGoal latency(秒)および移動距離の有意な延長を示した。本薬物の10mg/kgの1日2回の経口投与(投与群6)および8日目までは媒体投与し、9日目から本薬物の10mg/kgの1日2回の経口投与(投与群7)では、溶媒対照群(投与群5)に比し、水迷路学習能訓練試行でGoal latency(秒)および移動距離の有意な延長の短縮を示した。(検定:二元配置分散分析;8試行) よって、本薬物は神経保護作用および内在性神経細胞再生促進作用を示すことにより、神経細胞数の増加に加えて、神経障害による学習機能障害を回復することが確認された。試験3)本発明のマイクロスフェアの単回皮下投与での検討;神経細胞再生促進作用および行動薬理への効果の検討1)海馬CA1領域神経細胞数への影響の検討 試験1)と同様に実施し、海馬CA1神経細胞数により評価した。 ラット4−VOモデルにおいて、10分閉塞再灌流後、製造例2−2で製造したマイクロスフェアを1回のみ皮下投与し、42日後における海馬CA1領域神経細胞数への影響を評価した。なお、投与量は、マイクロスフェアーに含まれる本薬物量を示す。また、投与1群および2群のPLGA・MS投与量は、投与群3、5,6、7と同量を投与した。 群構成を以下の表18に示す。投与群1:正常群(sham群)、偽手術を施した正常ラットに陰性対照のPLGA・MSのみを1回皮下投与した。投与群2:溶媒対照群、4−VOラットに陰性対照のPLGA・MSのみを1回皮下投与した。投与群3:製造例2−2で製造したマイクロスフェアを4−VO虚血再灌流直後に10mg/kgを1回皮下投与した。投与群4:製造例2−2で製造したマイクロスフェアを4−VO虚血再灌流直後に30mg/kgを1回皮下投与した。投与群5:製造例2−2で製造したマイクロスフェアを4−VO虚血再灌流48時間後に10mg/kgを1回皮下投与した。投与群6:製造例2−2で製造したマイクロスフェアを4−VO虚血再灌流7日後に10mg/kgを1回皮下投与した。投与群7:(血中濃度測定用)製造例2−2で製造したマイクロスフェアを4−VO虚血再灌流直後に10mg/kgを1回皮下投与(投与群3と同じ)。 42日後に灌流固定後、左右海馬CA1錐体神経細胞数を、Nissl染色により海馬CA1領域の神経細胞数を評価した。(CA1a、CA1b、CA1c領域各10箇所、左右20箇所の神経細胞数を画像解析装置により計測した。)結果を表19に示す。 その結果、対照群(投与群2)は、正常群(投与群1)に比し海馬CA1錐体神経細胞の有意な減少が認められ、本発明のマイクロスフェアの皮下投与群(投与群3〜6)は、対照群(投与群2)に比し、いずれも海馬CA1錐体神経細胞の有意な増加が認められた。値は平均±標準偏差で示す。##:vs 1群 p<0.01(Aspin-Welchのt検定)*および**:vs 2群 *p<0.05, **p<0.01(Dunnett検定)+および++:vs 2群 +p<0.05, ++p<0.01(Aspin-Welchのt検定)以上から、本発明のマイクロスフェアの単回皮下投与(投与群3〜6)は、優れた神経細胞障害保護作用および/または神経細胞再生促進作用が確認された。また、6群の7日後に1回皮下投与においても2群に比し有意な神経細胞数の増加が確認されたことから、神経再生促進作用が確認された。2)受動回避反応試験 中央のギロチンドアに仕切られた明室(W260×D110×H290)と床のグリッドから電気刺激を与える暗室(W320×D320×H340)を備えたstep through型受動的回避反応装置(SHOCK SCRAMBLER、竹井機器工業株式会社)を用いた。ラットを明室に入れてギロチンドアを静かに開け、ラットが入口を確認してから暗室に入るまでの時間(反応潜時)を測定した。また、暗室に入ると同時にギロチンドアを閉め電気刺激(1mA、3sec、スクランブル方式)を与え、これを獲得試行とした。獲得試行は、脳の摘出2日前に行なった。保持試行は獲得試行1日後に行った。獲得試行と同様にラットを明室に入れてギロチンドアを静かに開け、ラットが入口を確認してから暗室に入るまでの時間(反応潜時)を計測した。また、保持試行の反応潜時は最高600秒までとした。結果を以下の表20に示す。値は平均±標準偏差で示す。#:vs. 1群 p<0.05(Wilcoxon検定)*:vs. 2群 p<0.05(Wilcoxon検定) 投与群2は投与群1に比し、保持試行の反応潜時が短縮され、記憶・学習障害が生じていることが示された。一方、投与群3〜6は、投与群2に比し、保持試行の反応潜時が延長したことを示し、とりわけ、投与群5は有意な反応潜時の延長を示した。 よって、本発明のマイクロスフェアは神経細胞傷害保護作用および/または神経細胞再生促進作用を示すことにより、神経障害による機能を回復することが確認された。 以上から、本発明のマイクロスフェアの単回皮下投与(投与群3〜6)は、本薬物の反復皮下投与(試験1)および本薬物の反復経口投与(試験2)に比し、有効性、安全性、本薬物累積投与量および投与コンプライアンス等において優れた神経細胞障害保護作用および神経細胞再生促進作用を有し、記憶・学習障害の機能回復が確認された。3)血中濃度測定 投与群7の検体を用いて、実施例2と同様の操作により本薬物の血中動態を示した結果を図3に示す。 以上より、4−VOラットでは、本発明のマイクロスフェアの単回皮下投与24時間後から4週間の間、0.1〜10ng/mLの範囲で本薬物の血中濃度が持続的に維持されていることが確認された。 以上から、本薬物のマイクロスフェアは、神経細胞再生促進作用を有していることから、神経変性疾患、特に脳卒中の予防および/または治療に有用であることが示唆された。実施例5.STZ誘発糖尿病モデルにおける神経伝導速度への影響1)STZ誘発糖尿病モデル動物の作製 8〜11週齢の雌性SDラット(日本エスエルシー株式会社)にストレプトゾトシン(STZ;シグマ)のクエン酸緩衝液(pH約4.5)を40mg/kg腹腔内投与した。正常対照群はクエン酸緩衝液のみを腹腔内投与した。2)血糖値の測定 STZ投与2週間後に血糖値、神経伝導速度、および体重を測定し、均等になるように群分けを行ない、被験物質の投与を開始した。また、血糖値の経時変化は、被験液投与開始4、8及び12週間後(神経伝導速度の測定前日)に実施した。尾静脈より採取した血液で、血糖値測定器(アントセンスII、バイエル三共)を用いて血糖値を測定した。また、12週間後の血糖値測定後に、16時間以上絶食し、空腹時血糖、および2g糖負荷試験を実施し、負荷後30分、60分、および120分後に同様に採血し、血糖値およびインスリン値を測定した。3)神経伝導速度の測定 STZ投与2週間後、被験液投与開始4、8及び12週間後にペントバルビタール30〜45mg/kgを腹腔内投与し、麻酔を施した。ラットの腰背部の毛を除去し、腹位に固定後、坐骨神経付近に遠位刺激用の針電極(NECメディカルシステムズ)を、同側のアキレス腱付近に近位刺激用の針電極を、さらに同側の足低筋に導出用の針電極(NECメディカルシステムズ)を刺入した。体温が37〜38℃の範囲にあることを確認し、遠位及び近位の刺激電極に電気刺激装置(SEN−3301、日本光電工業)を用いて矩形波刺激(0.5Hz、0.1msec、submax voltage)を行なった。誘発される電位は測定用電極より導出し、生体電気アンプ(AB−621G、日本光電工業)を介して誘発筋電図加算プログラム(MTS50061C、メディカルトライシステム)に入力し、10回加算平均して、遠位と近位の各伝導時間及び電極間の距離から神経伝導速度を算出した。測定は各投与群の左足(投与側)と右足(非投与側)について行い各々その平均値をデータとして採用した。4)群分け法 2〜5群は、STZ投与2週間後に飽食時血糖値を測定し、300mg/dL以上を示し、且つ乖離した重症糖尿病ラットは除外し、これらのラットを糖尿病モデル動物として使用した。各群の神経伝導速度、血糖値及び体重が均等になるように群分けを行なった。5)投与方法 臨床適用予定経路に従い、経口投与はディスポーザブル注射筒及びラット用胃ゾンデを用いて強制経口投与した(投与群3)。左肢大腿部坐骨神経に沿った筋肉内4箇所に均等に筋肉内投与した(投与群4)。また、皮下投与はエーテル麻酔を施し、ディスポーザブル注射筒及びディスポーザブル25G注射針を用いて背部に皮下投与した(投与群5)。投与液量は最新の体重を基に算出した。6)群構成 群構成を以下の表21に示す。 マイクロスフェアの投与量は、含まれる本薬物量で示した。また、投与群2の本薬物を含まないマイクロスフェア量は、投与群4および投与群5と同用量を投与した。7)血糖値の経時変化 各投与群の血糖値の経時変化を以下の表22に示す。値は平均±標準偏差で示す。#および##:vs. 1群 #p<0.05, ##p<0.01(Welchのt検定)*および**:vs 2群 *p<0.05, **p<0.01(Studentのt検定) 表22の結果から、投与群4は、投与群2に比し、4週後に有意な血糖値の低下を示した。投与群4および投与群5は、投与群2に比し、8週後および12週後においても有意な血糖値の低下を示したが、投与群3はいずれも有意な血糖値の低下は示さなかった。8)左(薬物投与側)神経伝導速度 各投与群における左足(4群の薬物投与側)の神経伝導速度の経時変化を以下の表23に示す。値は平均±標準偏差で示す。#および##:vs. 1群 #p<0.05, ##p<0.01(Studentのt検定)*および**:vs 2群 *p<0.05, **p<0.01(Studentのt検定) 表23の結果から、投与群1に比し、投与群2は4週、8週後および12週後に有意な神経伝導速度の低下を示し、糖尿病性神経障害が発症していることが確認できた。一方、8週後における投与群4および投与群5は、投与群2に比し、有意な神経伝導速度の延長効果を示し、12週後における投与群3、投与群4および投与群5は、投与群2に比し、有意な神経伝導速度の延長効果を示したが、その効果は投与群3に比し投与群4および投与群5の方がより勝っていた。このことは、本薬物の血中濃度の持続性が有用であることを示している。また、8週後および12週後において投与群4は投与群5に比し神経伝導速度の延長効果が勝っており、全身投与に比し疾患局所投与の有用性が確認できた。9)右(薬物非投与側)神経伝導速度 各投与群における右足(薬物非投与側)の神経伝導速度の経時変化を以下の表24に示す。値は平均±標準偏差で示す。#および##:vs. 1群 #p<0.05, ##p<0.01(Studentのt検定)*:vs 2群 *p<0.05(Studentのt検定) 表24の結果から、投与群1に比し、投与群2は0週、4週、8週および12週後に有意な神経伝導速度の低下を示し、糖尿病性神経障害が発症していることが確認できた。一方、8週後および12週後における投与群4および投与群5は、投与群2に比し、神経伝導速度を延長させる有意な傾向を示し、その効果はほぼ等しかった。なお、投与群3ではいずれも有意な延長効果は認められなかった。 これらの結果から、投与群3での1日2回反復経口投与に比し、本発明のマイクロスフェアの間歇投与が、持続的な血中動態を有し、有効性、安全性、総投与量および投与コンプライアンスの点でより有用であることが確認できた。また、本発明のマイクロスフェアの間歇投与においても、背部皮下における全身投与(投与群5)よりも、疾患局所への筋注(投与群4)がよりその効果が勝っていたことにより、疾患局所での本薬物の高濃度維持の有用性が確認できた。10)腎傷害改善作用 被験物質投与開始から12週目に、ラットを代謝ケージに移し、自由飲水下、24時間採尿を行い、尿排泄量を測定後、遠心器を用いて遠心分離(1500 rpm、25℃、10分)し、上澄みを採取した。自動分析装置7170(日立製作所)を用いて尿中の総蛋白(ピロガロールレッド法)、クレアチニン(クレアチニナーゼ・F−DAOS法)及び尿糖値を測定した。測定結果(濃度)と尿総排泄量から、総尿中クレアチニン、総蛋白、グルコース排泄量を計算した結果を以下の表25に示す。値は平均±標準偏差で示す。#および##:vs. 1群 #p<0.05, ##p<0.01(Aspin-Welchのt検定) 表25の結果から、投与群1に比し、投与群2は尿中のグルコース、クレアチニン、総蛋白が上昇していたことから、糖尿病性腎症が発症していることが確認できた。一方、投与群4および投与群5では、投与群2に比し、尿中総クレアチニン、糖および総蛋白排泄量の減少傾向が見られ、腎機能の改善傾向が明らかとなった。11)経口糖負荷試験(OGTT) 被験物質投与開始から13週後に、18時間絶食させたラットに経口糖負荷試験(OGTT)を実施した。絶食ラットの尾静脈から採血後、2g/kgのブドウ糖を強制経口投与し、投与30、60及び120分後に同様に尾静脈から血液約500μL採血し、約400μLをEDTA−2Na処理後、遠心器を用いて遠心分離(3000rpm、4℃、10分)し、血漿を採取し、自動分析装置7170(日立製作所)を用いて血糖値を測定した。残りの血液約100μLは、遠心器を用いて遠心分離(3000rpm、4℃、10分)し、血清を採取し、インスリン(ELISA法;レビスインスリンキット((株)シバヤギ))を測定した。インスリンを測定した結果を以下の表26に示す。値は平均±標準偏差で示す。##:vs. 1群 ##p<0.01(Studentのt検定)+:vs. 2群 +p<0.1(Studentのt検定) 表26の結果から、投与群2では投与群1に比し、有意なインスリン量の低下を示した。一方、投与群4では投与群2に比し、インスリン量の増加に有意傾向が見られたことから、インスリンの合成・分泌促進作用が確認された。12)体重に及ぼす影響 被験物質投与前と被験物質投与開始14週後にラットの体重測定を行ない、結果を以下の表27に示す。値は平均±標準偏差で示す。##:vs. 1群 ##p<0.01(Studentのt検定)*:vs 2群 *p<0.05(Studentのt検定) 表27の結果から、投与開始後14週目において、投与群2では投与群1に比し、体重の有意な減少が示された。一方、投与3群は投与2群に比し有意な体重減少が見られたが、投与群4および投与群5では、投与群2とほぼ同等であったことから、本発明のマイクロスフェアによる体重への影響はないことが確認された。 以上から、本発明のマイクロスフェアは、体重への影響がなく、3週間に1回の間歇筋肉内投与および背部皮下投与において、飽食時の血糖値の減少、および膵β細胞の再生促進作用による糖負荷時におけるインスリン生合成・分泌の亢進作用を示した。また、本発明のマイクロスフェアの筋注および皮下投与において、神経伝導速度の有意な改善作用を示し、また、疾患局所への筋肉内投与がより効果が勝っており、糖尿病性神経障害に対する効果が確認された。また、尿中クレアチニンおよび総蛋白排泄量の減少により、糖尿病性腎症に対する効果が確認された。なお、本結果での血糖値の低下は、神経伝導速度および腎症の有意な改善作用は示さない程度の効果である。 本発明のマイクロスフェアは、投与後約2週間〜約4週間の徐放期間を有し、本薬物の高含有化を可能にし、本薬物の初期バーストを抑制し、かつ本薬物の血中濃度を薬効発現に最適な範囲で維持することが可能であるため、ASO、心筋梗塞、狭心症、脳卒中、糖尿病およびその合併症、腎不全、肺線維症、肺高血圧症、喘息、OA、RA、骨粗鬆症等の予防および/または治療に有用である。(i)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が3〜10であり、(ii)マイクロスフェアの平均粒子径が20〜50μmであり、(iii)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量が10,000〜50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比が75/25〜50/50であることを特徴とする、薬物として({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸と、乳酸/グリコール酸共重合体からなり、下記(1)〜(3)の少なくとも一つの条件を満たす2〜4週間持続型マイクロスフェア:(1)放出試験における1時間後の薬物残存率が90%以上である、(2)放出試験における1日後の薬物残存率が82%以上である、(3)投与後から4週間、一定速度で薬物を放出し、薬物の血中濃度を少なくとも0.01ng/mL以上に維持する。薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が4〜8である請求の範囲1記載のマイクロスフェア。マイクロスフェアの平均粒子径が25〜35μmである請求の範囲1記載のマイクロスフェア。乳酸/グリコール酸の組成比が50/50である請求の範囲1記載のマイクロスフェア。薬物の血中濃度が、0.01ng/mL〜150ng/mLである請求の範囲1記載のマイクロスフェア。請求の範囲1記載のマイクロスフェアを含有してなる閉塞性動脈硬化症、脳卒中、肺線維症、肺高血圧症、喘息、糖尿病およびその合併症、狭心症、心筋梗塞、腎不全、変形性関節炎、関節リウマチまたは骨粗鬆症の予防および/または治療剤。(i)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が4〜8であり、(ii)マイクロスフェアの平均粒子径が25〜35μmであり、(iii)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量が10,000〜30,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比が50/50であることを特徴とする、薬物として({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸と、乳酸/グリコール酸共重合体からなり、下記(1)〜(2)の条件を満たす2週間持続型マイクロスフェア:(1)放出試験における1時間後の薬物残存率が90%以上である、(2)投与後から2週間、一定速度で薬物を放出し、薬物の血中濃度を0.01ng/mL〜150ng/mLの範囲で維持する。(i)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が4〜8であり、(ii)マイクロスフェアの平均粒子径が25〜35μmであり、(iii)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量が30,000〜50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比が50/50であることを特徴とする、薬物として({5−[2−({[(1E)−フェニル(ピリジン−3−イル)メチレン]アミノ}オキシ)エチル]−7,8−ジヒドロナフタレン−1−イル}オキシ)酢酸と、乳酸/グリコール酸共重合体からなり、下記(1)〜(2)の条件を満たす4週間持続型マイクロスフェア:(1)放出試験における1日後の薬物残存率が82%以上である、(2)投与後から4週間、一定速度で薬物を放出し、薬物の血中濃度を0.01ng/mL〜150ng/mLの範囲で維持する。 [要約][課題]本発明の目的は、投与後約2週間〜約4週間の徐放期間を有し、本薬物の高含有化を可能にし、本薬物の初期バーストを抑制し、かつ徐放期間中、本薬物の最適な有効血中濃度を維持することが可能な本薬物を含有するマイクロスフェアを提供することにある。[解決手段]本薬物およびPLGAを含有するマイクロスフェアについて、1)薬物1重量部に対して乳酸/グリコール酸共重合体の重量部が約3〜約10、2)マイクロスフェアの平均粒子径が約20〜約50μm、3)乳酸/グリコール酸共重合体の重量平均分子量が約10,000〜約50,000かつ乳酸/グリコール酸の組成比が約75/25〜約50/50となるように調製することにより、上記課題を解決することが可能となった。 さらに、当該マイクロスフェアは、各種内因性修復因子を産生促進することにより、各種組織障害に対して有用であることが明らかとなった。[選択図]なし