タイトル: | 再公表特許(A1)_微生物培養用培地および微生物培養方法 |
出願番号: | 2007068537 |
年次: | 2010 |
IPC分類: | C12N 1/20 |
山本 博章 JP WO2008038625 20080403 JP2007068537 20070925 微生物培養用培地および微生物培養方法 株式会社ツムラ 000003665 本多 一郎 100096714 山本 博章 JP 2006265622 20060928 C12N 1/20 20060101AFI20091225BHJP JPC12N1/20 A AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20100128 2008536373 21 4B065 4B065AA01X 4B065BB02 4B065BB40 本発明は、微生物培養用培地および微生物培養方法(以下、それぞれ単に「培地」および「培養方法」とも称する)に関し、詳しくは、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させるための微生物培養用培地、および、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させる微生物培養方法に関する。 日本薬局方収載の微生物限度試験法において、被検試料である漢方生薬製剤や生薬中の微生物試験を行う場合、通常の市販培地での培養では、当該被検試料中に含まれる抗菌性物質(発育阻止物質)の存在のために、標的菌の増殖が悪く、試験法として機能しない場合があることが知られている。 このような場合、日本薬局方では、希釈・ろ過、中和または不活化などの手段によって、抗菌性物質の影響を除去しなければならないとの記載があるが、この場合、被検試料が完全に溶媒に溶解する製剤の場合にはメンブランフィルターによるろ過法等が適用できるものの、不溶物の場合には不活化か希釈しか手段がない。したがって、実際上は希釈以外の選択肢は少ないのが現状である。 また、例えば、非特許文献1では生薬や漢方エキスについて、また、非特許文献2では切断および粉末生薬について、それぞれ抗菌性があることが示されているが、いずれにおいても希釈による抗菌性物質の除去以外の解決法は提示されていない。 さらに、医薬、化粧品業界では、抗菌性物質の不活化のため、培地にレシチンとポリソルベートを添加する手法が汎用されており、レシチンとポリソルベートが予め添加されている培地(SCDLP培地等)も市販されているが、この培地は高価であり、また、パラベン類や水銀系等の防腐剤の不活化に対しては効果が高いものの、漢方生薬製剤の不活化には効果が低いケースが多い。 さらに、発育阻害物質を吸着するための吸着材として活性炭を用いた培地が特殊培地として市販されているが、漢方生薬製剤、生薬、または香辛料等の抗菌作用を有する食品中の抗菌性物質の除去という点では必ずしも十分とはいえなかった。防菌防黴 Vol.25, No.8,pp. 467-473, 1997防菌防黴 Vol.31, No.9,pp. 517-525, 2003 漢方生薬製剤、生薬、または香辛料等の抗菌作用を有する食品中の微生物限度試験を行うに際し被検試料を希釈する場合、希釈を重ねることは、試験規模が同じ場合には感度が下がることを意味するため、品質保証上の問題、すなわち、疑陰性で出荷してしまうことによる経済的損失というリスクを、完全に解消することはできなかった。この点は、被検試料の希釈以外の抗菌性物質の影響除去手段においても同様であった。 そこで本発明の目的は、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を的確に増殖させることのできる微生物培養用培地および微生物培養方法を提供することにある。 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、微生物培養用培地、または、被検試料調製時に使用する溶液に対し、酸性白土または活性白土を添加し、特には、さらに活性炭を添加することで、漢方生薬製剤や生薬等の被検試料中の抗菌性物質を吸着、低減して、抗菌性を減弱することが可能となることを見出して、本発明を完成するに至った。 即ち、本発明の微生物培養用培地は、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させるための微生物培養用培地において、微生物培養用基礎培地中に、酸性白土または活性白土を含有することを特徴とするものである。本発明の培地においては好適には、前記微生物培養用基礎培地中に、さらに活性炭を含有させる。 また、本発明の微生物培養方法は、微生物培養用培地にて、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させる微生物培養方法において、前記被検試料の溶液中に、酸性白土または活性白土を添加することを特徴とするものである。本発明の培養方法において好適には、前記溶液中に、さらに活性炭を添加する。 本発明によれば、上記構成としたことにより、漢方生薬製剤、生薬、または香辛料等の抗菌作用を有する食品等の抗菌作用を有する被検試料中の標的菌を的確に増殖させることができ、結果としてこれら被検試料中に含まれる標的菌を容易に検出することができる微生物培養用培地および微生物培養方法を実現することが可能となった。 以下、本発明の好適実施形態について、詳細に説明する。 本発明においては、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させるに際し、使用する微生物培養用培地、または、被検試料の溶液中に、酸性白土または活性白土を含有させる点が重要である。 これにより、酸性白土または活性白土の吸着作用によって被検試料中に含まれる抗菌性物質を吸着することで、被検試料の抗菌性を低減させることができ、標的菌を的確に増殖させることができるため、従来のような希釈等の手段を用いることなく、容易に標的菌を検出することが可能となる。かかる酸性白土とは、モンモリロナイトを主とする白色または灰色の粘土であって、大きな比表面積と吸着能を有する多孔質構造を持つ物質であり、また、活性白土は、酸性白土を原料として、これを鉱酸で処理して得られる、酸性白土と同様に大きな比表面積と吸着能を有する多孔質構造を持つ物質である。酸性白土および活性白土はいずれも安価であるため、コスト的な観点からも、本発明のメリットは大きい。 具体的には、本発明の培地においては、微生物培養用基礎培地中に酸性白土または活性白土を含有させる。酸性白土または活性白土の添加量としては、被検試料や標的菌の種類、特性にもよるが、好適には培地の1〜20重量%、より好適には3〜10重量%程度である。酸性白土または活性白土の添加量が少なすぎると抗菌性の低減効果が不十分で、標的菌が十分増殖せず、検出が適切に行えなくなるおそれがある。一方、添加量が多すぎてもそれ以上の効果は望めない。 この場合、微生物培養用基礎培地中に、酸性白土または活性白土とともに、さらに活性炭を添加することで、抗菌性の低減効果をより高めることができ、標的菌の増殖をより促進することができる。活性炭の添加量としては、被検試料や標的菌の種類、特性にもよるが、好適には培地の1重量%以上5重量%未満、特には1〜3重量%とする。活性炭の添加量が1重量%未満では、添加による有意な増殖促進効果が得られず、一方、5重量%以上であると、却って標的菌の増殖が妨げられるおそれがある。 また、本発明の培養方法において具体的には、抗菌作用を有する被検試料の溶液中に酸性白土または活性白土を添加する。この場合の酸性白土または活性白土の添加量としては、被検試料や標的菌の種類、特性にもよるが、好適には上記溶液の1〜20重量%、より好適には3〜10重量%である。酸性白土または活性白土の添加量が少なすぎると抗菌性の低減効果が不十分で、標的菌が十分増殖せず、検出が適切に行えなくなるおそれがある。一方、添加量が多すぎてもそれ以上の効果は望めない。 この場合も、上記溶液中に、酸性白土または活性白土とともに、さらに活性炭を添加することで、抗菌性の低減効果をより高めて、標的菌の増殖をより促進することができる。活性炭の添加量としては、被検試料や標的菌の種類、特性にもよるが、好適には上記溶液の1重量%以上5重量%以下、特には1〜3重量%程度とする。活性炭の添加量が1重量%未満では、添加による有意な増殖促進効果が得られず、一方、5重量%より多いと、却って標的菌の増殖が妨げられるおそれがある。 本発明においては、酸性白土または活性白土を用いて被検試料中の抗菌性物質を吸着することで、被検試料中の標的菌の増殖抑制因子を除去する点のみが重要であり、それ以外の点については、常法に従い適宜実施することができ、特に制限されるものではない。 例えば、本発明において用いる微生物培養用基礎培地としては、日本薬局方に収載されている培地など、被検試料や標的菌に応じ通常使用される一般的な培地を適宜用いることができ、例えば、SCD(ソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・ブロス)培地等を用いることができる。 本発明を適用し得る抗菌作用を有する被検試料としては、例えば、漢方生薬製剤、生薬、または香辛料等の抗菌作用を有する食品等が挙げられ、本発明は、このような従来法では十分増殖させることができなかったこれら被検試料中の標的菌についても的確に増殖させることができる点で特に有用である。したがって本発明によれば、これら漢方生薬製剤、生薬、または抗菌作用を有する食品中に特定の菌が含まれるか否かを容易に検出することが可能となる。この場合、漢方生薬製剤、生薬、または抗菌作用を有する食品を被検試料とする場合の溶液作成に用いる溶媒としては、例えば、リン酸緩衝液、ペプトン食塩緩衝液、培養に使用する液体培地などを用いることができる。(実施例1) 培地に対する酸性白土または活性白土の添加による効果を確認するために、被検試料として漢方エキス製剤である三物黄ゴン湯および大承気湯を用い、下記の表1中にそれぞれ示す条件で酸性白土または活性白土を添加したソイビーン・カゼイン・ダイジェスト・ブロス培地(以下、SCD培地)において、日本薬局方収載の微生物限度試験法に記載されている「培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験」に準じ、培地の組成による標的菌の増殖状況を確認するために黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)を添加して、増菌培養後にフォーゲル・ジョンソン培地へ塗抹培養を行い、黄色ブドウ球菌定性反応が認められるかの判定を行った。(従来例1) 従来例として、活性炭を添加した培地において、実施例と同様にして培養試験を行った。(比較例1−1〜1−3) 比較例として、活性炭または活性白土のいずれも添加しない培地において、被検試料のみ、標的菌のみ、被検試料および標的菌の双方を、それぞれ添加して、培養試験を行った。(比較例1−4,1−5) 比較例として、代表的なイオン吸着剤であるセパビーズSP−700を添加した培地において、実施例と同様にして培養試験を行った。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表1中に示す。 上記表1に示す結果より、通常の培地に被検試料としての漢方エキス製剤および標的菌を添加しても、標的菌の増殖は見られなかった。これに対し、培地に活性白土を添加した実施例においては、従来の活性炭(粉末)を用いた場合と同様に標的菌の増殖が確認され、また、酸性白土を添加した実施例においては、漢方エキス製剤の処方により標的菌の増殖が確認された。従って、酸性白土または活性白土の添加により、抗菌作用を有する漢方エキス製剤中の標的菌を的確に増殖させ得ることが確認できた。なお、顆粒状の活性炭およびイオン吸着剤においても、漢方エキス製剤の処方により効果が得られないものが観察された。(実施例2,比較例2) 被検試料を変えた場合の活性白土添加培地の効果を確認するために、被検試料として漢方エキス製剤である五淋散および竜胆瀉肝湯をそれぞれ用い、下記の表2中に示す量で活性白土を添加した培地(基礎培地:SCD培地)に黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)を添加し、上記実施例1と同様に試験・評価した。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表2中に示す。 上記表2に示す結果より、五淋散および竜胆瀉肝湯についても、培地に活性白土を添加することにより抗菌作用が抑制され、標的菌を増殖させることができることが確認できた。(従来例3,実施例3,比較例3) 培地に活性白土に加えて活性炭を添加した場合の効果を確認するために、被検試料として漢方エキス製剤である潤腸湯、五淋散、竜胆瀉肝湯、通導散および大承気湯をそれぞれ用い、下記の表3中に示す量で活性白土および活性炭を添加した培地(基礎培地:SCD培地)において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)を添加し、上記実施例1と同様に試験・評価した。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表3中に示す。 上記表3に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例においては、活性炭のみを用いた場合以上に標的菌の増殖が確認され、活性白土とともに活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的に抑制できることが確かめられた。(実施例4,比較例4) 被検試料として桂枝茯苓丸、抑肝散、大建中湯をそれぞれ用い、下記の表4中に示す量で活性白土および活性炭を添加した培地(基礎培地:SCD培地)において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)を添加し、上記実施例1と同様に試験・評価した。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応有の場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表4に示す。 上記表4に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例においては標的菌の良好な増殖による定性反応が常時確認されたが、活性炭のみを用いた場合や何も添加しない場合では安定的な定性反応が確認できず、活性白土とともに活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的に抑制し、安定的な試験結果を得られることが確かめられた。(実施例5,比較例5) 被検試料として桂枝茯苓丸、抑肝散、大建中湯をそれぞれ用い、下記の表5中に示す量で活性白土および活性炭を添加した培地(基礎培地:SCD培地)において黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)を添加し、United States Pharmacopeia 30,<62>MICROBIOLOGICAL EXAMINATION OF NONSTERILE PRODUCTS:TESTS FOR SPECIFIED MICROORGANISMSに準拠して試験・評価した。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応有の場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表5に示す。 上記表5に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例においては標的菌の良好な増殖による定性反応が常時確認されたが、活性炭のみを用いた場合や何も添加しない場合では安定的な定性反応が確認できず、活性白土とともに活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的に抑制し、安定的な試験結果が得られることが確かめられた。(比較例6,実施例6,従来例6) 活性炭(粉末)のみを5重量%で培地に添加した場合と、活性白土のみを5重量%で培地に添加した場合の微生物の生育に対する影響を確認するために、SCD培地と、これに活性白土または活性炭を各5重量%添加した培地とをそれぞれ準備し、日本薬局方収載の微生物限度試験法に記載されている「培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験」に準じ、標的菌の増殖状況を確認した。使用菌種は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)および緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa IFO 13275)とし、増菌培養後に、黄色ブドウ球菌はフォーゲル・ジョンソンカンテン培地へ、緑膿菌はNACカンテン培地へ塗抹、培養を行い、黄色ブドウ球菌または緑膿菌の定性反応が認められるか否かの判定を行った。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。実施例、比較例および従来例の各々に対し、10サンプルずつ試験を行なった。得られた結果を、下記の表6中に示す。 上記表6に示す結果より、活性炭を5重量%添加した培地では、黄色ブドウ球菌のコロニー産生が弱くなっているサンプルがあることがわかる。これは、活性炭の添加量が多すぎると、培地成分の吸着が生じ、これにより、増殖に悪影響を与えているものと考えられる。一方、活性白土については、添加量を10重量%に増加した場合でも、悪影響は見られなかった。(実施例7,比較例7,従来例7) 活性炭および活性白土の培地に対する影響をより詳細に確認するために、SCD培地と、これに活性白土および/または活性炭を下記表7中に示す所定量にて添加した培地とをそれぞれ準備して、日本薬局方収載の微生物限度試験法に準じて、24時間振とう培養後培地内の菌濃度測定を行った。標的菌としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)または緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa IFO 13275)を用い、約100cfuの菌数を初発菌として添加した。得られた結果を、下記の表7中に示す。なお、下記表中の「%」は「重量%」を示す。 上記表7に示す結果より、活性炭3重量%と活性白土5重量%の2つを同時に添加した培地では、黄色ブドウ球菌および緑膿菌のいずれについても、試験菌の増殖能は無添加の培地とほぼ同等であった。これに対し、活性炭のみを添加した培地では特に黄色ブドウ球菌にて増殖能が低下していることから、活性白土を添加することで、活性炭の添加による増殖能の低下を抑制できることが確認できた。(実施例8,比較例8) 被検試料として桂枝茯苓丸を用い、米国薬局方収載の微生物限度試験を想定したケースとして、SCD培地に活性炭3重量%および活性白土5重量%を添加したもの(ISCD培地)、無添加のSCD培地、SCD培地に0.5重量%レシチンおよび4.0重量%ポリソルベート20を添加したもの(LPSCD培地)をそれぞれ準備して、これを試料溶解溶液として用い、United StatesPharmacopeia 28,<61> MICROBIAL LIMIT TESTSに準拠して試験を行い、定型集落の生成を比較した。培養時試料濃度は0.01g/mLとし、標的菌としては、Staphylococcus aureusATCC6538を用いた。 結果はコロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表8中に示す。 上記表8に示す結果より、米国薬局方にて例示されている不活化培地であるLPSCD培地を試料溶解溶液として用い、さらにそれでの培養を実施した場合、定型集落は見られず、抗菌性物質による影響を抑制することはできなかったのに対し、活性白土および活性炭を添加したISCD培地をそれに用いた場合では定型集落が形成されており、抗菌性物質の影響が抑制されていることが確かめられた。(実施例9,比較例9) 被検試料として桂枝茯苓丸を用い、下記の表9中に示す量で活性白土および活性炭を添加した培地(基礎培地:SCD培地)においてSalmonella enterica spp. enterica serotype abony ACM5080を添加し、United States Pharmacopeia30,<62>MICROBIOLOGICAL EXAMINATION OF NONSTERILE PRODUCTS:TESTS FOR SPECIFIED MICROORGANISMSに準拠して試験・評価した。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表9中に示す。 上記表9に示す結果より、培地に活性白土に加えて活性炭を添加した実施例においては標的菌の増殖が確認されたが、活性炭のみを用いた場合では増殖が確認できず、活性白土とともに活性炭を添加することで、被検試料の抗菌作用をより効果的に抑制できることが確かめられた。(実施例10,比較例10) 被検試料として食品である山葵または茶を用いた場合の培地による標的菌の培養状況を確認するために、ペプトン緩衝液中に、チューブ山葵または茶(夾雑菌の妨害を防止するためオートクレーブ滅菌したもの)をそれぞれ10g,1g,0.1gにて添加して、溶液量が100mLとなるよう調製し、10倍,100倍,1000倍の被検試料溶液を作製した。SCD培地,レシチン・ポリソルベート添加SCD培地(SCDLP培地),SCD培地に活性炭3重量%および活性白土5重量%を添加したもの(ISCD培地)の各培地90mLに試料溶液10mLを添加し、日本薬局方収載の微生物限度試験法に記載されている「培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験」に準じ、試験菌の増殖状況を確認した。使用菌種は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)とし、上記実施例1と同様に試験・評価した。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表10中に示す。 上記表10に示す結果より、SCD培地およびSCDLP培地においては、山葵および茶のいずれについても高濃度の10倍液については標的菌のコロニーが生成せず、抗菌性物質の影響を抑制できなかったのに対し、活性白土および活性炭を添加したISCD培地においては、全濃度の溶液についてコロニーが生成しており、抗菌性物質の影響が抑制されていることが確かめられた。これにより、本発明の培地においては、漢方生薬製剤のみならず、山葵や茶に含まれる抗菌性物質についても吸着、低減して、抗菌性を抑制でき、食品微生物試験の改良へも応用できることが確認された。(実施例11,比較例11) 被検試料として食品の乾燥香辛料を用いた場合の培地による標的菌の培養状況を確認するために、以下の試験を実施した。ターメリック粉末、粉末胡椒、乾燥バジルリーフをそれぞれ10g,5g,0.5g秤取し、溶液量が100mLとなるよう調製し、10倍,20倍,200倍の被検試料溶液を作製した。この被検試料溶液それぞれ10mLを日本薬局方収載の生薬の微生物限度試験法に記載されている7.5%食塩加SCD培地、7.5%食塩加SCD培地に活性炭3重量%および活性白土5重量%を添加したもの(7.5%食塩加SCDAA培地)、7.5%食塩加SCDB培地に活性白土5重量%を添加したもの(7.5%食塩加SCDA培地)90mLに添加し、日本薬局方収載の生薬の微生物限度試験法に記載されている「培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験」に準じて、試験菌の増殖状況を確認した。使用菌種は黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)とし、上記実施例1と同様に試験・評価した。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表11中に示す。 上記表11に示す結果より、7.5%食塩加SCD培地においては、ターメリック粉末、粉末胡椒、乾燥バジルリーフのいずれについても高濃度の10倍液、20倍液に関して標的菌のコロニーが生成せず、抗菌性物質の影響を抑制できなかったのに対し、活性白土および活性炭を添加した7.5%食塩加SCDAA培地においては全サンプル全濃度の溶液について、活性白土を添加した7.5%食塩加SCDA培地においては乾燥バジルリーフ全濃度の溶液について、コロニーが生成しており、抗菌性物質の影響が抑制されていることが確かめられた。これにより、本発明の培地においては、漢方生薬製剤のみならず、乾燥香辛料に含まれる抗菌性物質についても吸着、低減して、抗菌性を抑制でき、食品微生物試験の改良へも応用できることが確認された。(実施例12,比較例12) 被検試料として抗生物質を用いた場合の培地による標的菌の培養状況を確認するために、以下の試験を実施した。クロラムフェニコールを、250mg/L、50mg/L、5mg/L、0.5mg/L、0.05mg/Lの濃度で、日本薬局方収載の微生物限度試験法に記載されているSCD培地、SCD培地に活性炭3重量%および活性白土5重量%を添加したもの(ISCD培地)、乳糖ブイヨン培地(以下、LB培地)、LB培地に活性炭3重量%および活性白土5重量%を添加したもの(ILB培地)にそれぞれ添加した。日本薬局方収載の微生物限度試験法に記載されている「培地の性能試験及び発育阻止物質の確認試験」に準じ、試験菌の増殖状況を確認した。使用菌種は、SCD培地およびISCD培地には黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus IFO 13276)、LB培地及びILB培地には大腸菌(Escherichia coli IFO 3972)を使用し、増菌培養後はフォーゲル・ジョンソンカンテン培地(黄色ブドウ球菌)およびマッコンキーカンテン培地(大腸菌)へ塗抹、培養を行い、定性反応が認められるか否かの判定を行った。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表12中に示す。なお、下記表中の「%」は「重量%」を示す。 上記表12に示す結果より、黄色ブドウ球菌、大腸菌ともに、通常のSCD培地およびLB培地と比較して、ISCD培地およびILB培地において100倍高い濃度の抗生物質が含まれる培地の培養においても集落生成および定性反応が生じており、抗生物質の影響が抑制されていることが確かめられた。これにより、本発明の培地においては、漢方生薬製剤のみならず、抗生物質含有の試料についても抗菌性を抑制できることが確認され、一般医薬品微生物試験の改良へも応用できることが確認された。(実施例13) 活性白土と活性炭を配合した培地において、活性白土5%に対して活性炭を1%または2%配合した際の微生物培養効果を確認するため、被検試料として漢方エキス製剤である潤腸湯、五淋散、竜胆瀉肝湯、通導散および大承気湯をそれぞれ用いて、実施例3に記載の方法で試験・評価を行った。 結果は、コロニー産生且つ定性反応ありの場合を○、コロニー産生のみまたは弱い定性反応ありの場合を△、コロニー産生なしの場合を×とした。得られた結果を、下記の表13中に示す。 上記表13に示す結果より、培地に活性白土を5重量%加えた場合には、活性炭の配合量が1重量%であったとしても十分に標的菌の増殖が確認され、被検試料の抗菌作用を効果的に抑制できることが確かめられた。 抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させるための微生物培養用培地において、微生物培養用基礎培地中に、酸性白土または活性白土を含有することを特徴とする微生物培養用培地。 前記微生物培養用基礎培地中に、さらに活性炭を含有する請求項1記載の微生物培養用培地。 前記抗菌作用を有する被検試料が、漢方生薬製剤、生薬および抗菌作用を有する食品からなる群から選ばれる請求項1または2記載の微生物培養用培地。 微生物培養用培地にて、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させる微生物培養方法において、前記被検試料の溶液中に、酸性白土または活性白土を添加することを特徴とする微生物培養方法。 前記溶液中に、さらに活性炭を添加する請求項3記載の微生物培養方法。 前記抗菌作用を有する被検試料が、漢方生薬製剤、生薬および抗菌作用を有する食品からなる群から選ばれる請求項4または5記載の微生物培養方法。 抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を的確に増殖させることのできる微生物培養用培地および微生物培養方法を提供する。 抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させるための微生物培養用培地において、微生物培養用基礎培地中に、酸性白土または活性白土を含有する。微生物培養用培地にて、抗菌作用を有する被検試料に含まれる標的菌を増殖させる微生物培養方法において、被検試料の溶液中に、酸性白土または活性白土を添加する。酸性白土または活性白土とともに、活性炭を併用することが好適である。