タイトル: | 再公表特許(A1)_ポドフィロトキシン類の高分子結合体 |
出願番号: | 2007060026 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | A61K 31/365,C08G 81/00,A61P 35/00,A61K 47/48,A61K 47/34,A61K 31/7048,A61P 43/00,A61K 9/08 |
北川 正行 石川 恵三 山本 啓一朗 高塩 一俊 柴田 雅夫 JP WO2007135910 20071129 JP2007060026 20070516 ポドフィロトキシン類の高分子結合体 日本化薬株式会社 000004086 川口 義雄 100062007 小野 誠 100114188 渡邉 千尋 100140523 金山 賢教 100119253 大崎 勝真 100103920 坪倉 道明 100124855 北川 正行 石川 恵三 山本 啓一朗 高塩 一俊 柴田 雅夫 JP 2006138509 20060518 A61K 31/365 20060101AFI20090904BHJP C08G 81/00 20060101ALI20090904BHJP A61P 35/00 20060101ALI20090904BHJP A61K 47/48 20060101ALI20090904BHJP A61K 47/34 20060101ALI20090904BHJP A61K 31/7048 20060101ALI20090904BHJP A61P 43/00 20060101ALI20090904BHJP A61K 9/08 20060101ALN20090904BHJP JPA61K31/365C08G81/00A61P35/00A61K47/48A61K47/34A61K31/7048A61P43/00 123A61K9/08 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20091001 2008516621 22 4C076 4C086 4J031 4C076AA12 4C076AA94 4C076BB11 4C076CC27 4C076CC42 4C076EE23A 4C076EE41A 4C076EE49A 4C076EE59A 4C076FF15 4C076FF31 4C076GG45 4C076GG46 4C086AA01 4C086AA02 4C086AA03 4C086AA04 4C086CA01 4C086MA01 4C086MA02 4C086MA04 4C086MA05 4C086MA07 4C086NA02 4C086NA05 4C086NA12 4C086NA14 4C086NA15 4C086ZB26 4J031AA53 4J031AA55 4J031AB04 4J031AC03 4J031AC07 4J031AD01 4J031AE19 4J031AF03 4J031CD09 4J031CD25 本発明は、ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基がエステル結合しているポドフィロトキシン類の高分子結合体、その製造方法及びその用途に関する。 ポドフィロトキシンは、多年草ポドフィルム属のアメリカミヤオソウの根や茎からの水抽出物に含有される生理活性物質であり、ポドフィロトキシンやその誘導体は抗癌活性を有することが知られている。しかし、これらの化合物は水に難溶性のものが多く、又、更なる有効性向上を目指してポドフィロトキシン類の水溶性高分子化誘導体等の研究が行われてきた。 例えば、特許文献1には、ポリエチレングリコールを結合したポドフィロトキシンの高分子誘導体について記載されている。しかしながら、このポドフィロトキシンの高分子誘導体は、構造上ポリエチレングリコール一分子に対して1〜2個のポドフィロトキシン分子しか結合できず、その結果、有効量の薬剤を投与するためには大量のポリマーの投与が必要となる。 特許文献2には、ミセルを形成し水溶性を示すポリエチレングリコールとポリアスパラギン酸のブロック共重合体に薬剤を結合した分子が記載されており、特許文献3には、ポリエチレングリコール類とポリ酸性アミノ酸とのブロック共重合体の側鎖カルボン酸に疎水性物質を結合した高分子薬物運搬体となる高分子担体が記載されている。特許文献4には、ポリエチレングリコール類とポリグルタミン酸とのブロック共重合体の側鎖カルボン酸基と、カンプトテシン類のフェノール性水酸基とを結合させたカンプトテシン類の高分子誘導体が記載されている。しかしながら、特許文献2〜4にはポドフィロトキシン類の結合体については記載されていない。特表平10−513187号公報特許第2694923号公報特許第3268913号公報国際公開第2004/39869号パンフレット 特許文献1に記載のポリエチレングリコール類部分と薬剤との結合は、生体の加水分解酵素により切断されるものであり、それにより薬剤の運搬と放出を制御している。しかしながら、生体の加水分解酵素は、種差はもとより同一種においても個体差が大きいと考えられており、薬剤との結合の切断を加水分解酵素に依存することは放出される薬剤による効果に個体差を生じることが危惧される。 特許文献2に記載されているアドリアマイシン結合体は、ブロック共重合体とアドリアマイシンがアミド結合で結合されているが、アミド結合は化学的に安定な結合様式であるため加水分解による薬剤の放出が遅く、その薬効に疑問がある。 エトポシドやテニポシド等のポドフィロトキシン類は有用な抗癌剤であり、水溶性を有し抗癌活性に優れる新規な誘導体が求められている。 本発明者等は上記の課題を解決すべく鋭意努力した結果、コハク酸モノアミド構造の遊離のカルボン酸に水酸基を有する化合物がエステル結合していると、コハク酸モノアミドが環化構造(コハク酸イミド)へ変化するに伴って水酸基を有する化合物を遊離しやすいという現象から、ポリエチレングリコール構造部分とコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーとポドフィロトキシン類の水酸基とがエステル結合したポドフィロトキシン類の高分子結合体を製造したところ、該高分子結合体が加水分解酵素に依存することなくポドフィロトキシン類を放出することを見出し、本発明を完成した。 即ち、本発明は、以下の(1)〜(10)に関する。(1)ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基がエステル結合しているポドフィロトキシン類の高分子結合体。(2)ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーがブロック共重合体である上記(1)記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。(3)2以上のコハク酸モノアミド構造部分がポリアスパラギン酸である上記(2)に記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。(4)高分子結合体が一般式(I)[式中、R1は水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を示し、R2は結合基を示し、R3は水素原子又は(C1〜C6)アシル基を示し、R4はポドフィロトキシン類の水酸基の残基を示し、R5は(C1〜C30)アルコキシ基、(C7〜C30)アラルキルオキシ基、(C1〜C30)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R6)CONH(R7)からなる群から選ばれる基を示し、R6、R7は同一でも異なっていてもよく(C3〜C6)環状アルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)アルキル基を示し、tは5〜11500の整数を示し、d、e、f、g、h、i及びjは各々独立に0〜200の整数を示し、ただしd+eは1〜200の整数を示し、且つ、d+e+f+g+h+i+jは3〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸の各構成単位の結合順は任意である]で表される化合物である上記(3)記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。(5)R1が(C1〜C6)アルキル基であり、R2が(C2〜C6)アルキレン基であり、R3が(C1〜C6)アシル基であり、tが8〜2300の整数であり、d、e、f、g、h、i及びjが各々独立に0〜100の整数であり、ただしd+eは1〜100の整数であり、且つd+e+f+g+h+i+jが6〜100の整数である上記(4)記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。(6)R1が(C1〜C3)アルキル基であり、R2が(C2〜C4)アルキレン基であり、R3が(C1〜C3)アシル基であり、tが100〜300の整数であり、d、e、f、g、h、i及びjが各々独立に0〜90の整数であり、ただしd+eは1〜90の整数であり、且つd+e+f+g+h+i+jが15〜90の整数である上記(5)記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。(7)ポドフィロトキシン類がポドフィロトキシン、エトポシド又はテニポシドである上記(1)〜(6)のいずれか一項に記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。(8)ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基とを有機溶媒中、脱水縮合剤を用いてエステル結合させることで得られる、ポドフィロトキシン類の高分子結合体。(9)ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基とを有機溶媒中、脱水縮合剤を用いてエステル結合させることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか一項に記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体の製造方法。(10)上記(1)〜(8)のいずれか一項に記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体を有効成分とする抗癌剤。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体は、生体の加水分解酵素に依存することなく薬剤放出が可能であり、個体差に影響されにくく有効な治療効果が期待できる。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体は、ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基がエステル結合していることを特徴とする。 本発明においてコハク酸モノアミド構造部分とは、−HNCO−C−C−CO2H構造を意味し、例えば、コハク酸モノアミド(−HNCO−CH2−CH2−CO2H)や、アスパラギン酸の2個のカルボン酸のうち1個がアミド化された構造(−HNCO−CH(−NH−)−CH2−CO2H、あるいは−HNCO−CH2−CH(−NH−)−CO2H)等が挙げられる。これらコハク酸モノアミド構造部分は、例えば、ポリアスパラギン酸のようにポリマーの主鎖を構成していてもよく、あるいは、デキストラン等のポリアルコール、ポリリジン等のポリアミン、ポリアスパラギン酸以外のポリカルボン酸(例えば、ポリ乳酸等)からなる主鎖ポリマーの官能基に結合したものでもよい。 ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーとしては、主鎖ポリマーからポリエチレングリコール構造部分とコハク酸モノアミド構造部分が櫛状に並んだグラフト型ポリマーや、ポリエチレングリコール構造部分とコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーが直列に結合したブロック型ポリマー(ブロック共重合体)等が挙げられる。 2個以上のコハク酸モノアミド構造部分がポリアスパラギン酸である場合、グラフト型ポリマーにはポリアスパラギン酸の主鎖にポリエチレングリコール構造部分が部分的に結合しているポリマー等も含まれ、ブロック型ポリマーにはポリエチレングリコール構造部分の末端にポリアスパラギン酸の末端が結合したポリマー等も含まれる。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体のポリマーにおけるポリエチレングリコール構造部分としては両末端又は片末端が修飾されたポリエチレングリコールが挙げられ、両末端が修飾されている場合、その修飾基は同一でも異なっていてもよい。該修飾基としては置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基が挙げられる。置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基のアルキル基としては下記のアルキル基が挙げられ、好ましくは(C1〜C4)アルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基等である。置換基を有していてもよい(C1〜C6)アルキル基の置換基としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基等が挙げられる。 ポリエチレングリコール構造部分の分子量としては300〜500000程度であり、好ましくは500〜100000程度、更に好ましくは1000〜50000程度である。 本発明におけるポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーの分子量は500〜600000程度、好ましくは600〜110000程度、更に好ましくは800〜80000程度である。 なお、本発明における分子量とはGPC法で測定した重量平均分子量である。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体において、ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーに結合するポドフィロトキシン類の結合量は、総カルボン酸基数に対して1〜100%、好ましくは1〜90%、更に好ましくは2〜60%である。 本発明におけるポドフィロトキシン類は、水酸基を有し、且つ、抗腫瘍活性を有しているポドフィロトキシン類であれば特に限定されない。該ポドフィロトキシンとしては、例えば、下記式(II)で表されるポドフィロトキシン、下記式(III)で表されるエトポシドや下記式(IV)で表されるテニポシド等が挙げられる。ポドフィロトキシン類の水酸基とは、例えば、下記式(II)のアルコール性水酸基、下記式(III)や下記式(IV)の糖部のアルコール性水酸基やベンゼン環のフェノール性水酸基が挙げられるが、その置換位置は限定されない。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体とは、ポドフィロトキシン類のアルコール性水酸基あるいはポドフィロトキシン類のフェノール性水酸基のいずれかにより結合した結合体、またはそれらの混合物が挙げられ、あるいは、高分子結合体一分子上にポドフィロトキシン類がアルコール性水酸基により結合したものとフェノール性水酸基により結合したものとが混ざっていてもよい。 本発明において2以上のコハク酸モノアミド構造部分としてはポリアスパラギン酸が好ましい。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体として好ましくは、上記一般式(I)[式中、R1は水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を示し、R2は結合基を示し、R3は水素原子又は(C1〜C6)アシル基を示し、R4はポドフィロトキシン類の水酸基の残基を示し、R5は(C1〜C30)アルコキシ基、(C7〜C30)アラルキルオキシ基、(C1〜C30)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R6)CONH(R7)からなる群から選ばれる基を示し、R6、R7は同一でも異なっていてもよく(C3〜C6)環状アルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)アルキル基を示し、tは5〜11500の整数を示し、d、e、f、g、h、i及びjは各々独立に0〜200の整数を示し、ただしd+eは1〜200の整数を示し、且つd+e+f+g+h+i+jは3〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸の各構成単位の結合順は任意である]で表される化合物が挙げられる。 一般式(I)のR1における(C1〜C6)アルキル基としては、直鎖又は分岐鎖の(C1〜C6)アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられ、直鎖又は分岐鎖の(C1〜C4)アルキル基が好ましく、直鎖又は分岐鎖の(C1〜C3)アルキル基、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基が特に好ましく、メチル基が殊更好ましい。 一般式(I)のR2で表される結合基としては、特に限定されないが(C2〜C6)アルキレン基が挙げられ、(C2〜C4)アルキレン基が好ましく、例えば、エチレン基、トリメチレン基、ブチレン基等が挙げられ、トリメチレン基が特に好ましい。 一般式(I)のR3における(C1〜C6)アシル基としては、特に限定されないが、例えば、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ピバロイル基等が挙げられ、(C1〜C3)アシル基が好ましく、アセチル基が特に好ましい。 一般式(I)のR4であるポドフィロトキシン類の水酸基の残基においてポドフィロトキシン類としては、上記のポドフィロトキシン類が挙げられ、ポリマーのカルボン酸部分と脱水縮合剤によりエステル結合をする水酸基を有し、且つ、抗腫瘍活性を有するポドフィロトキシン類であれば特に限定されない。該ポドフィロトキシン類としては、例えば、上記式(II)で表されるポドフィロトキシン、上記式(III)で表されるエトポシドや上記式(IV)で表されるテニポシド等が挙げられる。 一般式(I)のR5は、(C1〜C30)アルコキシ基、(C7〜C30)アラルキルオキシ基、(C1〜C30)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R6)CONH(R7)からなる群から選ばれる基を示し、R6、R7は同一でも異なっていてもよく(C3〜C6)環状アルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)アルキル基である。一般式(I)のR5としては、一分子中同一でも異なっていてもよく、又、ポドフィロトキシン類の高分子結合体に使用されるポリマーにおいて単一でも混合物でもよい。 該(C1〜C30)アルコキシ基としては、直鎖又は分岐鎖の(C1〜C30)アルコキシ基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖の(C1〜C10)アルコキシ基が好ましく、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられ、(C7〜C30)アラルキルオキシ基としては、直鎖又は分岐鎖の(C7〜C30)アラルキルオキシ基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖の(C7〜C12)アラルキルオキシ基が好ましく、例えば、4−フェニルブトキシ基等が挙げられる。 該(C1〜C30)アルキルアミノ基又はジ(C1〜C30)アルキルアミノ基としては、直鎖又は分岐鎖の(C1〜C30)アルキルアミノ基又はジ(C1〜C30)アルキルアミノ基が挙げられ、直鎖又は分岐鎖の(C1〜C20)アルキルアミノ基又はジ(C1〜C20)アルキルアミノ基が好ましく、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、i−プロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、t−ブチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジ(n−ブチル)アミノ基等が挙げられる。 該カルボキシ基が保護されたアミノ酸としては、通常のペプチド合成で用いられるカルボキシ基が保護されたアミノ酸が挙げられ、例えば、フェニルアラニンベンジルエステル等が挙げられる。 一般式(I)のR5における−N(R6)CONH(R7)[R6、R7は同一でも異なっていてもよく(C3〜C6)環状アルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)アルキル基である]としては特に限定されないが、例えば、シクロヘキシルアミノカルボニルシクロヘキシルアミノ基、イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基等が挙げられる。 本発明の上記一般式(I)で表されるポドフィロトキシン類の高分子結合体における2以上のコハク酸モノアミド構造部分であるポリアスパラギン酸には、α−アミノ酸型、β−アミノ酸型、環化したもの等の構成単位があるが、これらの構成単位の結合順は限定されず、ブロック型でもランダム型でもよい。 上記一般式(I)で表されるポドフィロトキシン類の高分子結合体におけるポリアスパラギン酸の全アスパラギン酸数はd+e+f+g+h+i+jで表され、例えば、ブロック共重合体を製造する際に用いたアスパラギン酸誘導体の量から求めることができる。該アスパラギン酸数(d+e+f+g+h+i+j)は、3〜200個程度であり、好ましくは6〜100個程度であり、特に好ましくは15〜90個程度である。 全アスパラギン酸数(d+e+f+g+h+i+j)に対するポドフィロトキシン類の結合したアスパラギン酸数(d+e)の割合は1〜100%、好ましくは3〜90%、更に好ましくは4〜60%である。又、アスパラギン酸数(d+e)としては1〜200個程度、好ましくは1〜100個程度、特に好ましくは1〜90個程度である。 ポドフィロトキシン類の結合したアスパラギン酸数(d+e)は、例えば、下記の実施例に示すように、ポドフィロトキシン類を有機溶媒中でエステル結合させる脱水縮合反応を行った後に、反応液中に残存する未反応のポドフィロトキシン類の量から求めることができる。 全アスパラギン酸数(d+e+f+g+h+i+j)に対するα−アミノ酸型(d+f+h)の割合は10〜100%であり、好ましくは20〜100%であり、β−アミノ酸型(e+g+i)の割合は0〜90%であり、好ましくは0〜80%である。この割合は、例えば、ポリアスパラギン酸の保護基の脱保護条件等を選ぶことにより適宜変えることができる。 上記一般式(I)のtとしては5〜11500程度の整数であるが、好ましくは8〜2300程度の整数であり、更に好ましくは100〜300程度の整数である。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体は、水中でポリエチレングリコール構造部分を外殻とするミセルを形成してもよい。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体は、ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基とを有機溶媒中、脱水縮合剤を用いてエステル結合させることにより得られ、該製造方法も本発明に含まれる。即ち、例えば、特許文献2に記載の方法にて調製されるポリエチレングリコール構造部分−ポリアスパラギン酸のブロック共重合体と、反応させる基以外の官能基を必要に応じて保護したポドフィロトキシン類とを、両者が溶解する有機溶媒中、好ましくはN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン(DMI)、N−メチルピロリドン(NMP)等の非プロトン性極性溶媒中、0〜180℃、好ましくは5〜50℃でジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、ジイソプロピルカルボジイミド(DIPC)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(WSC)、1−エトキシカルボニル−2−エトキシ−1,2−ジヒドロキシキノリノン(EEDQ)等の脱水縮合剤を用いた反応に付す製造方法である。又、該縮合反応の際にN,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)等の反応補助剤を用いてもよい。縮合反応後、必要に応じて脱保護を行い、通常の分離精製等の操作によりポドフィロトキシン類の高分子結合体が製造される。 又、R5が−N(R6)CONH(R7)基(R6、R7は同一でも異なっていてもよく(C3〜C6)環状アルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)アルキル基)であるポドフィロトキシン類の高分子結合体は、上記のカルボジイミド類を縮合剤として用いる反応によっても得られる。 一般式(I)の化合物中のR5に(C1〜C30)アルコキシ基、(C7〜C30)アラルキルオキシ基、(C1〜C30)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基又はカルボキシ基が保護されたアミノ酸を導入する方法としては、ポリマーのカルボン酸基を活性化してから結合させたい量の対応するアルコール、対応するアミンやカルボキシ基が保護されたアミノ酸等を塩基性条件下に反応させる方法、対応するアルコール、対応するアミンやカルボキシ基が保護されたアミノ酸等を活性化させてからポリマーに反応させる方法等が可能である。ポリマーを精製した後に同様の反応でポリマー中の未反応のカルボン酸基を再活性化させることができ、ここにポドフィロトキシン類の水酸基を縮合させてもよく、或いは異なるアルコール、アミン等を繰り返し反応させて、R5の種々の置換基を有するポリマーを合成し、次いで、ポドフィロトキシン類を縮合させてもよい。又、ポドフィロトキシン類を縮合させた後に、(C1〜C30)アルコキシ基、(C7〜C30)アラルキルオキシ基、(C1〜C30)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基若しくはカルボキシ基が保護されたアミノ酸等を縮合させてもよい。 ただし、本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体の製造法は上記の方法に限定されるわけではない。 本発明には、本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体を有効成分とする抗癌剤も含まれる。該高分子結合体は、注射剤、錠剤、散剤等の通常使用されている剤型にて使用され得る。製剤化に当たり通常使用されている薬学的に許容される担体や、例えば、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、溶剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、保存剤、無痛化剤、色素、香料等が使用できる。中でも注射剤としての使用が好ましく、通常、例えば、水、生理食塩水、5%ブドウ糖又はマンニトール液、水溶性有機溶媒(例えば、グリセロール、エタノール、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ポリエチレングリコール、クレモフォア等又はそれらの混合液)あるいは水と該水溶性有機溶媒の混合液等が使用される。 本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体の投与量は、患者の性別、年齢、生理的状態、病態等により当然変更され得るが、例えば、非経口的に、通常、成人1日当たり、活性成分として0.01〜500mg/m2、好ましくは0.1〜250mg/m2を投与する。注射による投与は、静脈内、動脈内、患部(腫瘍部)等に行われる。 以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明がこれらの実施例に限定されるものではない。 実施例1 化合物1(分子量12000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が35のポリアスパラギン酸部分からなるブロック共重合体とエトポシドとの結合体:一般式(I)のR1=Me(メチル基)、R2=トリメチレン基、R3=Ac(アセチル基)、R4=エトポシド残基、R5=イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、d+e+f+g+h+i+j=35、t=273)の合成 特許文献3に記載された方法によって調製したメトキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(アスパラギン酸の重合数35、1.80g)と市販のエトポシド(700mg)をDMF(70ml)に溶解し、DMAP(72mg)、DIPC(1.25ml)を加え、25℃にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(105ml)、酢酸エチル(105ml)及びジイソプロピルエーテル(840ml)を加え、室温にて120分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、100ml)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、210ml)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル社製ダウエックス50(H+)、15ml)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、30ml)にて溶出した。得られた溶出画分に水(140ml)を加えアセトニトリルを減圧下留去し、その後、凍結乾燥することによって化合物1(2.06g)を得た。 HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による反応液中の未反応エトポシド量の計量から、化合物1中のエトポシド含量は16.5%(w/w)、d+e+f+g+h+i+jに対するd+eの割合は15%であった。化合物1中、遊離のエトポシドは未検出であった。 本方法によりR5としてイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基を付加することができ、その存在比は化合物1を重水酸化ナトリウム/重水/重アセトニトリルに溶解したものの1H−NMR(水素核磁気共鳴スペクトル)から求められ、化合物1におけるイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基がポリアスパラギン酸に占める割合、即ち、d+e+f+g+h+i+jに対するf+gの割合は19.6%だった。その他のアスパラギン酸は遊離カルボン酸(h+i)あるいは環状構造(j)である。 実施例2 化合物2(分子量12000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が35のポリアスパラギン酸部分からなるブロック共重合体とポドフィロトキシンとの結合体:一般式(I)のR1=Me(メチル基)、R2=トリメチレン基、R3=Ac(アセチル基)、R4=ポドフィロトキシン残基、R5=イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基、d+e+f+g+h+i+j=35、t=273)の合成 特許文献3に記載された方法によって調製したメトキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(アスパラギン酸の重合数35、226mg)と市販のポドフィロトキシン(106mg)をDMF(5ml)に溶解し、DMAP(12mg)、DIPC(0.16ml)を加え、25℃にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(15ml)及びジイソプロピルエーテル(60ml)を加え、室温にて120分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、10ml)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、10ml)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル社製ダウエックス50(H+)、2.5ml)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、5ml)にて溶出した。得られた溶出画分に水(10ml)を加えアセトニトリルを減圧下留去し、その後、凍結乾燥することによって化合物2(220mg)を得た。 HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による反応液中の未反応ポドフィロトキシン量の計量から、化合物2中のポドフィロトキシン含量は10.6%(w/w)、d+e+f+g+h+i+jに対するd+eの割合は13.1%であった。化合物2中、遊離のポドフィロトキシンは未検出であった。 本方法によりR5としてイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基を付加することができ、その存在比は化合物2を重水酸化ナトリウム/重水/重アセトニトリルに溶解したものの1H−NMRから求められ、化合物2におけるイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基がポリアスパラギン酸に占める割合、即ち、d+e+f+g+h+i+jに対するf+gの割合は15.2%だった。その他のアスパラギン酸は遊離カルボン酸(h+i)あるいは環状構造(j)である。 実施例3 化合物3(分子量12000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が33のポリアスパラギン酸部分からなるブロック共重合体とポドフィロトキシンとの結合体:一般式(I)のR1=Me(メチル基)、R2=トリメチレン基、R3=Ac(アセチル基)、R4=ポドフィロトキシン残基、R5=イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基又はO−ベンジル−フェニルアラニル基、d+e+f+g+h+i+j=33、t=273)の合成 特許文献3に記載された方法によって調製したメトキシポリエチレングリコール−ポリアスパラギン酸ブロック共重合体(アスパラギン酸の重合数33、464.4mg)と市販のポドフィロトキシン(100mg)をDMF(6ml)に溶解し、DMAP(12mg)、DIPC(0.09ml)を加え、15℃にて20時間撹拌した。続いてフェニルアラニンベンジルエステル塩酸塩(36.8mg)、トリエチルアミン(0.02ml)及びDIPC(0.23ml)を加え、15℃にてさらに20時間撹拌し、その後さらに25℃にて4時間攪拌した。反応液に酢酸エチル(10ml)、エタノール(10ml)及びジイソプロピルエーテル(80ml)を加え、室温にて30分攪拌した後沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、20ml)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、20ml)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル社製ダウエックス50(H+)、3ml)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、20ml)にて溶出した。得られた溶出画分に水(25ml)を加え、アセトニトリルを減圧下留去し、その後凍結乾燥することによって化合物3(580mg)を得た。 HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による反応液中の未反応ポドフィロトキシン量の計量から、化合物3中のポドフィロトキシン含量は13.7%(w/w)、d+e+f+g+h+i+jに対するd+eの割合は19%であった。化合物3中、遊離のポドフィロトキシンは未検出であった。 R5の一つとして導入したO−ベンジル−フェニルアラニル基は、化合物3をアセトニトリル−水酸化ナトリウム水溶液中40℃で6時間加水分解し、溶出したベンジルアルコールを定量することから求められ、O−ベンジル−フェニルアラニル基がポリアスパラギン酸に占める割合、即ち、d+e+f+g+h+i+jに対するf+gの割合は、O−ベンジル−フェニルアラニル基が結合したものについては13%であった。 又、R5としてイソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基も導入され、その存在比は化合物3を重水酸化ナトリウム/重水/重アセトニトリルに溶解したものの1H−NMR(水素核磁気共鳴スペクトル)から求められる。イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基がポリアスパラギン酸に占める割合、即ち、d+e+f+g+h+i+jに対するf+gの割合は、イソプロピルアミノカルボニルイソプロピルアミノ基が結合したものについては15%であった。この結果、R5の総量がポリアスパラギン酸に占める割合、即ち、d+e+f+g+h+i+jに対する、f+g割合は28%であった。その他のアスパラギン酸は遊離カルボン酸(h+i)あるいは環状構造(j)である。 比較例1 比較化合物1(分子量12000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が23のポリグルタミン酸部分からなるブロック共重合体とエトポシドとの結合体)の合成 特開平5−955号公報に記載された方法によって調製したメトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体(21mg)と市販のエトポシド(9.6mg)をDMF(1ml)に溶解し、DMAP(0.6mg)、DIPC(0.01ml)を加え、25℃にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(1.5ml)、酢酸エチル(1.5ml)及びジイソプロピルエーテル(12ml)を加え、室温にて30分攪拌した後、沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、2ml)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、3ml)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル社製ダウエックス50(H+)、0.2ml)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、1ml)にて溶出した。得られた溶出画分に水(1ml)を加えアセトニトリルを減圧下留去し、その後凍結乾燥することによって、比較化合物1(28.0mg)を得た。 HPLCによる反応液中の未反応エトポシド量の計量から比較化合物1中のエトポシド含量は23.8%(w/w)であった。比較化合物1中、遊離のエトポシドは未検出であった。 比較例2 比較化合物2(分子量12000のメトキシポリエチレングリコール部分と重合数が23のポリグルタミン酸部分からなるブロック共重合体とポドフィロトキシンとの結合体)の合成 特開平5−955号公報に記載された方法によって調製したメトキシポリエチレングリコール−ポリグルタミン酸ブロック共重合体(52mg)と市販のポドフィロトキシン(10mg)をDMF(1ml)に溶解し、DMAP(2mg)、DIPC(0.03ml)を加え、25℃にて20時間撹拌した。反応液にエタノール(3ml)及びジイソプロピルエーテル(12ml)を加え、室温にて30分攪拌した後沈析物を濾取し、エタノール/ジイソプロピルエーテル(1/4(v/v)、2ml)で洗浄した。得られた沈析物をアセトニトリル/水(1/1(v/v)、3ml)に溶解後、イオン交換樹脂(ダウケミカル社製ダウエックス50(H+)、0.2ml)に通塔し、アセトニトリル/水(1/1(v/v)、1ml)にて溶出した。得られた溶出画分に水(1ml)を加えアセトニトリルを減圧下留去し、その後、凍結乾燥することによって、比較化合物2(64.3mg)を得た。 HPLCによる反応液中の未反応ポドフィロトキシン量の計量から比較化合物2中のポドフィロトキシン含量は16.0%(w/w)であった。比較化合物2中、遊離のポドフィロトキシンは未検出であった。 試験例1 化合物1の酵素非存在下での薬剤放出 化合物1又は比較化合物1を、PBS(リン酸緩衝生理食塩水;pH7.1)にポリマー濃度1mg/mlで溶解し、37℃にてインキュベートした。該高分子結合体より放出されたエトポシドを、HPLCにて分離し標準曲線を用いて定量した。定量値と高分子結合体の薬剤含有量から求めた全薬剤量との比を図1に示した。 図1に明らかなように、本発明の高分子結合体(化合物1)は加水分解酵素がなくても24時間で85%以上のエトポシドを放出するのに対し、コハク酸モノアミド構造部分を持たない比較化合物1は24時間でもほとんどエトポシドを放出しない。この結果は本発明のエトポシド類の高分子結合体が酵素非存在下で優れた薬剤放出性能を有していることを示している。 試験例2 化合物2、3の酵素非存在下での薬剤放出 化合物2、3又は比較化合物2を、PBS(リン酸緩衝生理食塩水;pH7.1)にポリマー濃度で1mg/mlで溶解し、37℃にてインキュベートした。該高分子結合体より放出されたポドフィロトキシンを、HPLCにて分離し標準曲線を用いて定量した。定量値と高分子結合体の薬剤含有量から求めた全薬剤量との比を図2に示した。 図2に明らかなように、本発明の高分子結合体(化合物2及び3)は加水分解酵素がなくても24時間で10〜60%以上のポドフィロトキシンを放出するのに対し、コハク酸モノアミド構造部分を持たない比較化合物2は24時間でもポドフィロトキシンをほとんど放出しない。この結果は本発明のポドフィロトキシン類の高分子結合体が酵素非存在下で優れた薬剤放出性能を有していることを示している。又、薬剤放出性能を自由に制御できることも示している。 試験例3 化合物1の抗腫瘍作用 マウス皮下で継代しているマウス大腸癌Colon26を約2mm角のブロックにし、套管針を用いて雌性CDF1マウスの背側部皮下に移植した。腫瘍移植後7日目に本発明の高分子結合体(化合物1)又は対照薬(エトポシド、ETP)を、マウス尾静脈内に単回投与した。コントロールは薬物を投与しない群である。化合物1は5%ブドウ糖注射液で溶解し用いた。ETPはラステット注(日本化薬社製)を5%ブドウ糖注射液で希釈して用いた。投与後、腫瘍の長径(Lmm)及び短径(Wmm)を、ノギスを用いて計測し、腫瘍体積を(LxW2)/2により計算して投与日の腫瘍体積に対する相対腫瘍体積として表1に示した。又、その際の体重の推移を、投与日の体重に対する相対体重として表1に示した。 表1から、本発明の高分子結合体は、ETP(90mg/kg)と同じ程度の体重減少が起こる投与量(450mg/kg)においてETPより優れた抗癌活性を有し、抗癌剤となることが示された。 試験例4 化合物2及び3の抗腫瘍作用 マウス皮下で継代しているマウス大腸癌Colon26を約2mm角のブロックにし、套管針を用いて雌性CDF1マウスの背側部皮下に移植した。腫瘍移植後7日目(表2中、投与開始日)に本発明の高分子結合体(化合物2及び化合物3)又は対照薬(ポドフィロトキシン、POD)を、マウス尾静脈内に投与した。化合物2及び化合物3は5%ブドウ糖注射液で溶解したものを一回投与した。コントロールは薬物を投与しない群である。PODはシグマ社から購入し、ジメチルスルホキシド及び5%ブドウ糖注射液で希釈したものを、投与開始日より5日間連続で投与した。投与後、腫瘍の長径(Lmm)及び短径(Wmm)を、ノギスを用いて計測し、腫瘍体積を(LxW2)/2により計算し、投与開始日の腫瘍体積に対する相対腫瘍体積として表2に示した。また、その際の体重の推移を、投与開始日の体重に対する相対体重として表2に示した。 表2から、本発明の高分子結合体は、POD(15mg/kg/日、5日間連日投与)と同じ程度の体重減少が起こる投与量(75mg/kg)において、単回投与にもかかわらずPODより優れた抗癌活性を有し、抗癌剤となることが示された。本発明の化合物1(ブロック共重合体のポリアスパラギン酸にエトポシドが結合した高分子誘導体)と比較化合物1(ブロック共重合体のポリグルタミン酸にエトポシドが結合した高分子誘導体)のPBS溶液(pH7.1、37℃)中でのエトポシドの全結合量に対するエトポシドの放出量の割合。図1中、−●−は本発明の化合物1、―○―は比較化合物1の放出量の割合を示す。本発明の化合物2及び化合物3(ブロック共重合体のポリアスパラギン酸にポドフィロトキシンが結合した高分子誘導体)と比較化合物2(ブロック共重合体のポリグルタミン酸にポドフィロトキシンが結合した高分子誘導体)のPBS溶液(pH7.1、37℃)中でのポドフィロトキシンの全結合量に対するポドフィロトキシンの放出量の割合。図2中、−◆−は本発明の化合物2、−▲−は本発明の化合物3、―◇―は比較化合物2の放出量の割合を示す。 ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基がエステル結合しているポドフィロトキシン類の高分子結合体。 ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーがブロック共重合体である請求項1記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。 2以上のコハク酸モノアミド構造部分がポリアスパラギン酸である請求項2記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。 高分子結合体が一般式(I)[式中、R1は水素原子又は(C1〜C6)アルキル基を示し、R2は結合基を示し、R3は水素原子又は(C1〜C6)アシル基を示し、R4はポドフィロトキシン類の水酸基の残基を示し、R5は(C1〜C30)アルコキシ基、(C7〜C30)アラルキルオキシ基、(C1〜C30)アルキルアミノ基、ジ(C1〜C30)アルキルアミノ基、カルボキシ基が保護されたアミノ酸及び−N(R6)CONH(R7)からなる群から選ばれる基を示し、R6、R7は同一でも異なっていてもよく(C3〜C6)環状アルキル基若しくは三級アミノ基で置換されていてもよい(C1〜C5)アルキル基を示し、tは5〜11500の整数を示し、d、e、f、g、h、i及びjは各々独立に0〜200の整数を示し、ただしd+eは1〜200の整数を示し、且つ、d+e+f+g+h+i+jは3〜200の整数を示し、ポリアスパラギン酸の各構成単位の結合順は任意である]で表される化合物である請求項3記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。 R1が(C1〜C6)アルキル基であり、R2が(C2〜C6)アルキレン基であり、R3が(C1〜C6)アシル基であり、tが8〜2300の整数であり、d、e、f、g、h、i及びjが各々独立に0〜100の整数であり、ただしd+eは1〜100の整数であり、且つd+e+f+g+h+i+jが6〜100の整数である請求項4記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。 R1が(C1〜C3)アルキル基であり、R2が(C2〜C4)アルキレン基であり、R3が(C1〜C3)アシル基であり、tが100〜300の整数であり、d、e、f、g、h、i及びjが各々独立に0〜90の整数であり、ただしd+eは1〜90の整数であり、且つ、d+e+f+g+h+i+jが15〜90の整数である請求項5記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。 ポドフィロトキシン類がポドフィロトキシン、エトポシド又はテニポシドである請求項1〜6のいずれか一項に記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体。 ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基とを有機溶媒中、脱水縮合剤を用いてエステル結合させることで得られる、ポドフィロトキシン類の高分子結合体。 ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマーのカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基とを有機溶媒中、脱水縮合剤を用いてエステル結合させることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体の製造方法。 請求項1〜8のいずれか一項に記載のポドフィロトキシン類の高分子結合体を有効成分とする抗癌剤。 【課題】生体の酵素に依存することなく薬剤放出が可能であり、有効な治療効果が期待でき、且つ、水溶性を有するポドフィロトキシン類の新規誘導体が求められている。【解決手段】ポリエチレングリコール構造部分と2以上のコハク酸モノアミド構造部分を有するポリマー、特にポリエチレングリコール部分−ポリアスパラギン酸共重合体のカルボン酸基と、ポドフィロトキシン類の水酸基がエステル結合しているポドフィロトキシン類の高分子結合体を提供する。【選択図】なし