タイトル: | 再公表特許(A1)_氷核形成活性を有するタンパク質 |
出願番号: | 2007054982 |
年次: | 2009 |
IPC分類: | C07K 14/435,A23B 4/08,A23B 5/05,A23B 7/04,A23L 3/37,A23L 1/325,A23J 1/04 |
千葉 智 久保田 光俊 西澤 聡子 岡本 直子 鈴木 賢一 JP WO2007105731 20070920 JP2007054982 20070313 氷核形成活性を有するタンパク質 日本水産株式会社 000004189 小野 新次郎 100140109 社本 一夫 100089705 小林 泰 100075270 千葉 昭男 100080137 富田 博行 100096013 千葉 智 久保田 光俊 西澤 聡子 岡本 直子 鈴木 賢一 JP 2006067758 20060313 C07K 14/435 20060101AFI20090703BHJP A23B 4/08 20060101ALI20090703BHJP A23B 5/05 20060101ALI20090703BHJP A23B 7/04 20060101ALI20090703BHJP A23L 3/37 20060101ALI20090703BHJP A23L 1/325 20060101ALI20090703BHJP A23J 1/04 20060101ALN20090703BHJP JPC07K14/435A23B4/08 JA23B5/04 BA23B7/04A23L3/37 AA23L1/325 101BA23J1/04 AP(BW,GH,GM,KE,LS,MW,MZ,NA,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,TJ,TM),EP(AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MT,NL,PL,PT,RO,SE,SI,SK,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AT,AU,AZ,BA,BB,BG,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,HU,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI,NO,NZ,OM,PG,PH,PL,PT,RO,RS,RU,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,SV,SY,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,UZ,VC,VN,ZA,ZM,ZW 再公表特許(A1) 20090730 2008505167 20 4B022 4B034 4B069 4H045 4B022LA06 4B022LB01 4B022LJ04 4B034LB07 4B034LC05 4B034LK20X 4B069CA01 4B069CA06 4H045AA10 4H045AA20 4H045AA30 4H045BA17 4H045CA50 4H045EA01 4H045GA01 4H045GA06 4H045GA21 4H045GA22 本発明は、氷核形成活性を有するタンパク質、特に氷結晶の再結晶化阻害活性を有する氷核形成活性を有するタンパク質およびその製造方法、利用に関する。 水は0℃で氷になるといわれているが、厳密には、純水を冷やしても0℃では凍り始めず、凝固点以下の温度でも凍結しない過冷却現象が知られている。水の凍結は、温度が0℃以下になると水の中に存在する何らかの物質が氷の核になり、結晶が成長するという過程で進行する。この凍結現象をコントロールすることができれば、食品の冷凍保存技術、微生物や生物組織の保存技術などをはじめ、人口降雨技術、冷熱輸送技術などあらゆる分野での利用が可能になると考えられている。 水の凍結に関係する物質として注目されているのが、氷核タンパク質(Ice Nuclear Protein; INP)と不凍タンパク質 (Anti-Freeze Protein; AFP)である。 氷核活性細菌は、−20℃でも凍結しない純水を−2〜−4℃で凍結させる能力をもつ細菌のことで、水が凍結を開始するときの核として働くことが明らかとなっており、このような細菌は植物に凍霜害を引き起こす原因になることが知られている。この氷核活性細菌としてはシュードモナス(Pseudomonas)属、エルウィニィア(Erwinia)属の細菌が知られている(非特許文献1、2)。氷核タンパク質は、これら氷核活性細菌から得られる氷核活性を有するタンパク質である。氷核タンパク質は、微生物由来のものが大半であり、食品分野での利用も提案されている(特許文献1−4)が、あまり実用化されていないのが現状である。特開平6−181729号特許3028246号特開平6−113712号特許3090932号Appl. Microbiol. 28, p456, (1974)Proc. 4th Int. Cont. Plant. Path. Bact. P725, (1978) 本発明は、安全性、活性、生産性、価格等の面で、食品をはじめとする広い分野で使用できる氷核形成活性を有する物質を提供することを課題とする。 発明者は、多くの種類の生物種から不凍タンパク質が見出されていることから、南極海に生息するオキアミにもそのようなタンパク質が含まれているかもしれないとの考えに基づき、試験を開始したが、公知の文献に記載されているような方法では不凍活性を有する物質を得ることができなかった。抽出方法を工夫することにより、不凍活性を有するタンパク質を見出し、さらに氷核活性を有するタンパク質も見出した。さらにオキアミ以外の甲殻類にも注目した結果、同様の抽出方法を採用することにより類似の性質を有するタンパク質を得ることに成功した。 さらに、それら氷核活性を有するタンパク質が氷結晶の再結晶化阻害活性を有することを見出し、本発明を完成させた。 本発明は、(1)〜(2)の氷結晶の再結晶化阻害方法を提供する。(1)氷核形成活性を有するタンパク質を用いる氷結晶の再結晶化阻害方法。(2)氷核形成活性を有するタンパク質が甲殻類由来のタンパク質である(1)の氷結晶の再結晶化抑制方法。 本発明は、(3)〜(5)の氷核形成活性を有するタンパク質を提供する。(3)甲殻類由来の氷核形成活性を有するタンパク質。(4)甲殻類由来のタンパク質が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示されるタンパク質である(3)の氷核形成活性を有するタンパク質。(5)甲殻類が、エビ類、ザリガニ類、カニ類、オキアミ類、シャコ類のいずれかに属するものである(3)又は(4)の氷核形成活性を有するタンパク質。 本発明は、(6)〜(8)の氷核形成活性を有するタンパク質を含む氷核形成活性を有する甲殻類抽出物を提供する。(6)甲殻類由来の氷核形成活性を有するタンパク質を含む氷核形成活性を有する甲殻類抽出物。(7)甲殻類由来の氷核形成活性を有するタンパク質が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示されるタンパク質である(6)の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物。(8)甲殻類が、エビ類、ザリガニ類、カニ類、オキアミ類、シャコ類のいずれかに属するものである(6)又は(7)の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物。 本発明は、(9)〜(12)の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法を提供する。(9)甲殻類の肉及び/又は内臓を圧搾して得た体液、又は、殻、肉及び/又は内臓の抽出液をそのまま、あるいは、さらに精製して用いることを特徴とする甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。(10)精製により、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示されるタンパク質を濃縮することを特徴とする(9)の甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。(11)甲殻類の殻、肉及び/又は内臓から界面活性剤を添加した抽出液で抽出することを特徴とする(9)又は(10)の甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。(12)甲殻類が、エビ類、ザリガニ類、カニ類、オキアミ類、シャコ類のいずれかに属するものである(9)、(10)又は(11)の甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。 本発明は、(13)〜(17)の氷結晶の再結晶化を抑制することにより食品の凍結による品質劣化を抑制する方法を提供する。(13)氷核形成活性を有するタンパク質を添加することを特徴とする氷結晶の再結晶化を抑制することにより食品の凍結による品質劣化を抑制する方法。(14)氷核形成活性を有するタンパク質として(3)ないし(5)いずれかのタンパク質又は(6)ないし(8)のいずれかの甲殻類抽出物を添加する(13)の方法。(15)食品が冷凍食品である(13)又は(14)の方法。(16)冷凍食品が卵、小麦粉、又は、魚肉を材料として使用する食品である(13)、(14)又は(15)の方法。(17)冷凍食品が魚肉すり身、又は魚肉落し身である(16)の方法。 本発明は、(18)〜(21)の氷核形成活性を有するタンパク質または氷核形成活性を有する甲殻類抽出物を含む食品の品質改良剤及び当該品質改良剤を添加した食品を提供する。(18)(1)ないし(5)のいずれかの氷核形成活性を有するタンパク質、(6)ないし(8)のいずれかの氷核形成活性を有する甲殻類抽出物、又は、(9)ないし(12)いずれかの方法で製造した氷核形成活性を有するタンパク質を含む食品の品質改良剤。(19)(18)の品質改良剤を添加したことを特徴とする品質改良された食品。(20)食品が冷凍食品である(19)の食品。(21)食品が卵、小麦粉、又は、魚肉を材料として使用する食品である(19)又は(20)の食品。 本発明の氷核形成活性を有するタンパク質は、食品への添加に適した甲殻類由来のタンパク質であるから、各種食品に添加することができる。氷核形成活性を有するタンパク質については過冷却にならず、凍りやすいという性質を利用する用途は提案されているが、食品への利用は極めて限られていた。しかし、本発明では、氷核形成活性を有するタンパク質に氷結晶の再結晶化阻害活性を見出し、製造工程において冷凍工程を経る食品に添加することにより、冷凍による品質劣化を抑制することができる。実施例1のオキアミから抽出したタンパク質のクロマトグラフィーのチャートを示した図である。実施例1のSephacryl S-200 HRゲルろ過カラムクロマトグラフィーのチャートを示した図である。実施例2において本タンパク質試料1の分子量を確認した、SDS-ポリアクリルアミドゲルを用いた電気泳動の写真である。実施例3の本タンパク質試料1の氷核形成活性の測定結果を示す図である。実施例3の本タンパク質試料1の氷核形成活性の温度安定性を示す図である。実施例4の本タンパク質試料1の氷結晶の再結晶化阻害活性を示す図である。実施例7のオキアミ熱水抽出物の電気泳動の写真である。実施例8の本タンパク質試料1を添加した落とし身の塩溶解性を示す図である。実施例8の本タンパク質試料1を添加した落とし身のDMA生成量を示す図である。実施例9の鶏卵に本タンパク質試料1を添加した場合の凍結温度曲線を示す図である。実施例10のすり身に本タンパク質試料1を添加した場合の凍結解凍時の温度履歴を示す図である。実施例10のすり身の加熱ゲルに本タンパク質試料1を添加した場合の凍結曲線を示す図である。 本発明において氷核形成活性を有するタンパク質(以下、氷核タンパク質とも記す。)とは、水が凍結する際に過冷却になるのを抑制する作用を有するタンパク質であり、微生物由来のものが知られている。氷核形成活性は水の凍結のきっかけとなるもので、水の過冷却状態を氷点下のより高い温度で終了させる。人口雪の製造などにも用いられているが、冷凍食品への応用も検討されている。より高い温度で冷凍することができるのでエネルギーの節約のため、あるいは、液状食品の凍結濃縮、凍結乾燥など、過冷却を抑制できるという性質から予想される用途が提案されている。しかし、それらの用途のためには、微生物由来の場合、安全性などの懸念からか利用は進んでいない。 本発明者らは、氷核タンパク質が単に過冷却を抑制するだけでなく、氷結晶の再結晶化阻害活性を有することを見出した。凍結した水が温度上昇によりわずかに溶けた場合に、溶けた水が再度、残存している氷結晶のまわりに氷結するため、氷結晶の大きさはどんどん成長し大きくなったり、小さい氷結晶同士が結合して大きな結晶を形成したりする現象がある。この現象は氷結晶の再結晶化と呼ばれる。氷結晶の再結晶化阻害活性とは、この再結晶化を抑制する活性である。すなわち、小さい氷結晶を小さいままで維持する活性である。本発明者らは、氷核タンパク質にはそのような氷結晶の成長あるいは結合を抑制し、氷結晶を小さいサイズのままで保持する性質を有することを見出した。この性質を見出したことにより、冷凍食品などの凍結の際だけでなく、冷凍保存中の温度変化による食品の品質劣化も抑制することができ、氷核タンパク質の利用価値を高め、利用範囲を拡張することができる。 本発明において、氷結晶の再結晶化阻害活性の有無は、氷結晶を顕微鏡で観察し、微小氷結晶数を観察する方法により測定した。すなわち、30%スクロース溶液に溶解した氷結晶の再結晶化阻害活性を有するタンパク質試料2μlをカバーガラス上に滴下し、さらにその上にカバーガラスを乗せて挟み、温度制御のできる光学顕微鏡(オリンパス社製BH2型顕微鏡、リンカム社製LK600温度制御装置)のステージに乗せ、冷却ステージ内の温度を20℃、−30℃、20℃、−30℃、20℃、−30℃、−10℃の順に0.1℃/秒で冷却、加熱を繰り返した後、−10℃で30分保持し、10.01〜35μm2の面積を有する氷結晶を微小氷結晶として、その個数を数えた。氷結晶の再結晶化阻害活性を有する物質を添加しないと氷結晶は大きく成長し微小氷結晶が少なくなるが、氷結晶の再結晶化阻害活性あると微小氷結晶数が多くなる。 本発明者らは、甲殻類からの抽出物に氷核形成活性を有することを見出した。微生物由来の氷核タンパク質では、安全性の面から使用がためらわれることが多いが、甲殻類はそれ自体が食品であり、本発明の氷核タンパク質は安心して食品に使用できるものである。甲殻類の肉、内臓等を圧搾して得た体液、あるいは、肉、内蔵、殻の水などの溶媒による抽出液がこの氷核形成活性を有する。この活性は、実施例に示すように0〜90℃程度の温度では安定なので、広く食品への利用が可能である。 本発明において氷核形成活性は、タンパク質の添加により水の凍結温度を上昇させる程度で評価した。具体的には、水道水10mlにタンパク質溶液を100μl加え、5℃に設定しておいた冷却恒温槽中で10分間インキュベーションし、その後、0.3℃/分で温度を低下させ、凍結温度(過冷却温度)を測定した。凍結温度が高いほど氷核形成活性が高いと評価する。 本発明において甲殻類とは、節足動物大顎亜門甲殻網を指し、さらにカシラエビ亜網(Cepharocarida)、ムカデエビ亜網(Remipedia)、ミジンコ亜網(Branchiopoda)、アゴアシ亜網(Maxillopoda)、エビ亜網(Malacostraca)に分類される動物を指す。特に水産産業上食用として多く利用されているエビ目(十脚目)に含まれるエビ、ザリガニ、カニ、オキアミ目のオキアミ、ナンキョクオキアミ、シャコ目のシャコなどが挙げられる。 本発明の氷核形成活性を有するタンパク質を精製、濃縮するには、タンパク質を抽出し、分離、濃縮するための一般的な方法を用いることができる。すなわち、甲殻類に存在するすべての組織を破砕し、得られた懸濁液を遠心分離し、不溶性物質を取り除く。この際に界面活性剤(陰イオン系、非イオン系、両性イオン系、陽イオン系、高分子界面活性剤など)を使用することにより可溶化が促進され、抽出性が増す。特に、非イオン系の界面活性剤が適している。得られた上澄みは次に示す一般的な方法でタンパク質を分離・濃縮することができる。塩析による方法として硫安分画による分離・濃縮方法。有機溶媒による分離・濃縮方法としてアセトン、エタノール、プロパノール、メタノールを用いた方法。塩酸、硫酸、三塩化酢酸を用いた酸沈殿法。水溶性ポリマー(ポリエチレングリコール、デキストランを用いた分離・濃縮方法。限外ろ過(膜濃縮)による分離・濃縮方法。イオン交換クロマトグラフィー担体、疎水クロマトグラフィー担体、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー担体、逆相クロマトグラフィー担体、及びゲルろ過クロマトグラフィー担体でそれぞれ吸着・分離することができる。さらには上澄みを加熱処理して他のタンパク質を熱変性させ沈殿させることもできる。また得られた分離物は凍結乾燥やスプレードライなどで粉末化することもできる。 具体的には、本発明のタンパク質は肉、内臓、殻のいずれにも含まれているので、それら原料の冷凍品、生のまま、あるいは乾燥品をホモジナイザーで粉砕した上で水を加えて懸濁し、約50℃で30分間、抽出する。この抽出物を遠心分離処理(15000Gで3分間)すると、上清として氷核タンパク質溶液が得られる。抽出温度は0〜80℃、特に0〜60℃程度が好ましい。温度を高くするとかえって抽出効率が低下する傾向があるからである。この粗抽出液のままでも氷核活性があるのでそのまま使用することができる。濃縮、精製するには、「ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示されるタンパク質」を濃縮、精製することを指標にして上述のタンパク質の精製、濃縮方法を組み合わせて行うことができる。 本発明の氷核タンパク質は、氷結晶の再結晶化阻害活性を有するので、製造工程に凍結工程を含む食品、あるいは冷凍食品などの凍結による品質劣化を抑制するために使用することができる。特に冷凍耐性の低い食品、例えば、卵、魚肉、小麦粉などを原料とする食品の品質劣化を抑制することができる。 魚肉のすり身、落し身においては、TMAO(トリメチルアミン−N−オキシド)が冷凍保存中にDMA(ジメチルアミン)とホルムアルデヒドに分解されるのを抑制する。ホルムアルデヒドは冷凍変性の原因として知られている。冷凍魚肉では、冷凍中に氷結晶の再結晶化が繰り返され、凍結濃縮が生じ、そのため、TMAOの分解が促進されると考えられ、本発明の氷核タンパク質の氷結晶の再結晶化阻害活性により、この凍結濃縮が抑制され、結果としてTMAOの分解が抑制されると考えられる。 本発明のタンパク質は氷核形成活性、氷結晶の再結晶化阻害活性を有するので、食品に添加することにより、凍結による食品の劣化を抑制することができる。食品への添加量は、食品の種類、使用目的によるが、食品の総重量に対して、実施例1の本タンパク試料1程度の純度の場合で0.00001%〜10%、好ましくは0.001%〜0.1%程度添加するのが好ましい。 以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに限定されるものではない。<南極オキアミ(ホール)からの氷核形成活性を有するタンパク質の抽出・精製> 冷凍南極オキアミ80gに対して50mM炭酸水素アンモニウム(pH7.9)、1mM PMSFを含む抽出液420mlを用いてホモジナイザーで懸濁した。この懸濁液にTriton-X100(シグマ社製)を0.1%になるように加えて、氷冷下で1時間攪拌した。その後、この懸濁液を10,000×gで30分間遠心分離を行い、得られた上清に対して硫安分画を行った。すなわち35〜65%飽和の硫安を加えて得られる沈殿を10,000×gで30分間遠心分離を行い回収した。この沈殿に対して1M硫酸アンモニウム、50mM炭酸水素アンモニウム(pH7.9)(A液)を含む溶液を加えて懸濁した。この懸濁液を10,000×g 20分間遠心して得られた上清を上記A液の緩衝液で平衡化してある2.6cm×20cm(106ml)の疎水カラムクロマトグラフィー(TOYOPEARL Phenyl 650M 東ソー社)に供与し、50mM炭酸水素アンモニウム(pH7.9)(B溶液)を用いて直線濃度勾配でタンパク質を溶出した。その結果、図1に示すクロマトグラフィーのAピークの画分を得た。 さらにこの画分を透析膜に入れ、その周囲にポリエチレングリコール6000(和光純薬工業株式会社製)をまぶし、4℃下で約3時間静置し約10倍に濃縮した。これを次に10mM炭酸水素アンモニウム(pH7.9)溶液に4℃で一晩透析した。透析後、同溶液で予め平衡化しておいた1.6cm×60cmのSephacryl S-200 HRゲルろ過カラムクロマトグラフィーに供与した。図2に示すクロマトグラフィーの矢印で示すピークの画分を得た。この画分を透析膜に入れ、蒸留水にて透析した後、それを凍結乾燥した。この精製方法により80gの冷凍南極オキアミから80mgのタンパク質(本タンパク質試料1)を得た。<本タンパク質試料1の分子量等性質確認> 本タンパク質試料1の分子量をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により測定した。10%アクリルアミドゲルを用いて、0.1%SDS、25mMトリスヒドロキシメチルアミノメタン、192mMグリシン(pH8.6)を含む緩衝液を用いて、12mAで約2時間泳動を行った後、CBB R-250でタンパク質を染色した。その結果このタンパク質は約86kDa又は90kDaの単量体によって構成される約200kDaのサブユニット構造を有することが示された(図3;最左列は分子量マーカー、左から2列目は200kDaのサブユニットを、3列目は86kDa又は90kDaの単量体を示す)。糖鎖の確認はSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、ゲルを約1時間室温で7.5%の酢酸溶液に浸した。次いで0.2%過ヨウ素酸に移し、4℃で45分間インキュベートした。さらにシッフ試薬(和光純薬工業(株))に移し、45分間冷凍した。その後、シッフ試薬を除き、10%酢酸で洗浄した。その結果、86kDa、90kDa、200kDaのバンドが発色し、これらのタンパク質には糖が付いていることが示された(図3;右から2列目)。脂質の確認はNile Blue Aにより検出した。Nile blue A溶液は 0.25gを100mlの蒸留水に溶解し、その後濃硫酸を1ml加え、その後、2時間ボイルし、フィルターでろ過して作成した。この溶液中に電気泳動後のゲルを移し50℃で30分間インキュベーションした。その後、5%酢酸溶液に移し、50℃で2日間インキュベートし、さらにその後0.5%塩酸溶液に5分間インキュベートし、蒸留水で洗浄した。その結果、86kDa、90kDa、200kDaのバンドが発色し、これらのタンパク質に脂肪酸が結合していることが示された(図3;最右列)。<アミノ酸配列分析> 本タンパク質試料1のN末端アミノ酸配列を分析した。すなわち、分子量の確認の方法と同様にSDS-ポリアクリルアミド電気泳動を行った後、セミドライ式転写装置を用いてポリフッ化ビニリデン膜に転写した。そして本タンパク質試料1のバンドを切出し、そのN末端アミノ酸配列をプロテインシーケンサー(ABI社製 473A型プロテインシーケンサー)で分析した。その結果、本タンパク質試料のN末端のアミノ酸配列は、配列表の配列番号1及び2に示したとおりであることが明らかとなった。またこのことから、本タンパク質試料1中には、類似のアミノ酸配列を持つアイソフォームが存在することが示された。<氷核形成活性の測定> 上記本タンパク質試料1について以下の方法で氷核形成活性を測定した。水道水10mlにタンパク質溶液を100μl加え、5℃に設定しておいた冷却恒温槽中で10分間インキュベーションし、その後、0.3℃/分で温度を低下させ、凍結温度(過冷却温度)を測定した。 その結果、図4に示すように、タンパク質濃度が0〜200μg/mlで濃度依存的に過却温度が上昇し、100μg/mlで−8℃まで上昇した。対照とした水道水の過冷却温度は−13℃であった。したがって本タンパク質試料1は過冷却温度を上昇する氷核形成活性を有するタンパク質であることが示された。<氷核形成活性の温度安定性> 本タンパク質試料1の温度安定性について試験した。試料を50mM 炭酸水素アンモニウム水溶液(pH7.9)に溶解し(タンパク質濃度7.5mg/ml)、0〜90℃にそれぞれ1時間保持し、その後、氷核形成活性を測定した。その結果、0℃で保持した試料の活性に対して氷核形成活性は90〜106%保持しており熱に安定であることが示された(図5)。<氷結晶の再結晶化阻害活性の測定> 本タンパク質試料1の氷結晶の再結晶化阻害活性として、氷結晶を顕微鏡で観察し、微小氷結晶数を観察した。すなわち、30%スクロース溶液に溶解した本タンパク質試料2μlをカバーガラス上に滴下し、さらにその上にカバーガラスを乗せて挟み、光学顕微鏡(オリンパス社製 BH2型)のステージに乗せ温度制御装置(リンカム社製LK600)により冷却ステージ内の温度を20℃、−30℃、20℃、−30℃、20℃、−30℃、−10℃の順に0.1℃/秒で冷却、加熱を繰り返した後、−10℃で30分保持し、10.01〜35μm2の面積を有する氷結晶を微小氷結晶として数えた。その結果、図6に示すように、本タンパク質試料1は、不凍活性を有しないにもかかわらず、濃度2.2×10-10〜2.2×10-2mg/mlで魚類不凍タンパク質(A/F Protein Inc. AFP TypeIII)とほぼ同様の氷結晶の再結晶化阻害活性が確認された。 ここで、他の氷核形成活性を有するタンパク質についてもこのような氷結晶の再結晶化阻害活性を有するかどうかについて試験した。サンプルとして氷核活性細菌である「菌体破砕物 キサントモナス属製(和光純薬工業)」を用い同様の実験を行った。図6に示されるように、細菌由来の氷核形成タンパク質においても氷結晶の再結晶化阻害活性が確認された。これまでに氷核形成活性を有するタンパク質が再結晶化阻害活性を有するという報告例はないが、氷核形成タンパク質が、氷核形成時に多数の氷核を産生することにより、一つ一つの氷結晶の大きさを制限し、最終的な氷結晶の大きさに影響を与えていると推察される。この氷核形成タンパク質が氷結晶の再結晶化阻害活性を有するという結果は、新たな知見である。<南極オキアミの各部位からの氷核形成活性を有するタンパク質の精製> 上記氷核形成活性を有するタンパク質がオキアミのどの部位に多く含まれるかを確認するために眼球、身肉、肝膵臓、殻に分けて、SDS−ポリアクリルアミド電気泳動で確認したところいずれの部位にも存在することが確認された。特に殻に多く含まれることが確認されたので南極オキアミの殻からも実施例1と同じ方法で精製したところ、10gの殻から20mgのタンパク質が得られた。<甲殻類由来タンパク質の氷核形成活性の測定> オキアミ以外の甲殻類由来タンパク質の氷核形成活性の観察を行った。実施例1と同様の方法により、タラバガニ、ズワイガニ、アメリカザリガニの殻からタンパク質を精製し、観察を行った結果、氷核形成活性を有することが確認された(表1)。<南極オキアミからの氷核形成活性を有するタンパク質の熱水抽出> 冷凍南極オキアミ15gをホモジナイザーで粉砕した上で水15gを加えて懸濁し、異なる温度条件(50℃、80℃、100℃)で30分間、インキュベートとし抽出物を作製した。次に得られた抽出物を遠心分離処理(15000Gで3分間)し、得られた抽出液のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動分析を行った。図7に電気泳動結果を示す。尚、レーンAには50℃抽出物をレーンBは50℃抽出物の遠心上清、レーンCは80℃抽出物、レーンDは80℃抽出物上清、レーンEは100℃抽出物、レーンFは100℃抽出物上清をアプライした。図7に示したように80℃以上の抽出では目的とするタンパク質がほとんど確認されていない。一方、50℃抽出物の遠心上清には大量に目的物が含まれており、効率よく抽出することが可能であることが確認された。<食品への応用1:水産物―スケソウタラ落とし身への添加―> 三陸沖で漁獲された鮮魚であるスケソウタラから肉を採取し、3mmメッシュのミンサーで挽肉状にした。それを500g取り、水50g、砂糖50gを加え、さらに本タンパク質試料1をそれぞれ0〜0.1%になるように加え、卓上ミキサーで25秒間攪拌した。これを落とし身サンプルとして使用した。 次にそれぞれを−25℃で一晩凍結し、その後−10℃で2週間保存したものを保存性評価の指標となる塩溶解性、TMAO分解度の測定用に用いた。塩溶解性の測定 落とし身3gに0.1M KCl 20mM Tris-HCl(pH7.5)溶液を27ml加え、ホモジナイズした(10,000rpm×30秒 3回)、その後、5,000rpm×10分間の遠心分離を行い、沈殿物を得て、さらにその沈殿物に上記同液を27ml加えて攪拌する。再び5,000rpm×10分間の遠心分離を行い、得られた沈殿物に0.5M KCl 20mM Tris-HCl(pH7.5)溶液を27ml加えて攪拌し、1M ATP30μl加えて一晩氷蔵下で保存する。その後攪拌し、ビウレット法にてその懸濁溶液の蛋白質濃度と容量を測定しておく。さらに懸濁溶液は7,000rpm×15分間遠心分離を行い、得られた上澄みの蛋白質濃度をビウレット法で測定し、併せて容量も測定した。以上の測定より、先の上澄み中の蛋白質量と懸濁液中の蛋白質量の比から塩溶解性を算出した。その結果、図8に示すように塩溶解性については本タンパク質試料1の添加量とともに増加しており、本タンパク質試料1の添加により冷凍保存時のスケソウタラ落とし身の劣化が抑制される傾向が示された。TMAOの分解反応の測定 落とし身サンプル10gに対して蒸留水10ml、10%トリクロロ酢酸(TCA)10mlを加えてホモジナイズする(12,000rpm×2分間)。その後遠心分離(7,500×20分)して上澄みを得る。沈殿物には5%TCA溶液を5ml加えよく攪拌し、遠心分離を行い上澄みを得る。この操作を2回行い、ここまで得られた上澄みを50mlメスフラスコ加え、さらに5%TCA溶液でメスアップし、これをTCA抽出液とする。TCA抽出液1mlと蒸留水3mlを混合し、銅−アンモニア試薬0.4ml、5%二硫化炭素−ベンゼン溶液を添加し、40℃ 5分間インキュベートした。その後、振とうを繰り返し、遠心分離(3,500×5分)を行い、得られた上澄みに対して無水硫酸ナトリウム約0.2g入りの試験管に移し、その溶液を440nmで吸光値を測定する。生成するDMA量は次の式で表される。DMA量(mM)=(440nm測定値)÷1.3×2×50÷1000÷(サンプル重量)×1000 TMAOの分解によるDMAの生成量は図9に示すように本タンパク質試料1の添加量により低下することが示された。本タンパク質試料1の添加によりTMAOの分解によりDMAと同等量のホルムアルデヒドが生じる。DMAの生成量が抑制されたことは、ホルムアルデヒドの生成が抑制されたことを意味し、ホルムアルデヒドによる冷凍保存時のスケソウタラ落とし身の冷凍変性が抑制されることを示す。<食品への応用2:鶏卵の生全卵> 鶏卵の生全卵30mlに本タンパク質試料1をタンパク質濃度で0.56mg添加した。次いで、その全卵を塩化ビニリデン性のケーシング(クレハロンDB56R)に入れて−20℃で1日保管した。凍結時にはその温度履歴を測定した(図10)。また凍結後、室温にて解凍し、沸騰水中で加熱し、ゲルを作製した。その結果、過冷却温度がコントロールでは−11℃であるのに対して、本標品添加すると−8.56℃へ上昇していることがわかった。また解凍後の全卵はコントロールではサラっとした流動性であるものが、本標品を添加した全卵では未凍結とほぼ同じ様に粘性のあるものであった。加熱ゲル断面を走査型電子顕微鏡で観察すると本標品添加品はゲルのネットワークが緻密であることがわかった。本標品の添加により凍結全卵の品質を向上させることができた。<食品への応用3:すり身> スケソウタラ冷凍すり身30gに本タンパク質試料1をタンパク質濃度で0.56mg添加し、フードカッターで混合した。次いでそのすり身を塩化ビニリデン性のケーシング(クレハロンDB56R)に入れて−20℃で一晩保管した後、解凍した。凍結解凍時には温度履歴を記録した(図11)。また解凍した後、ケーシングに詰めて沸騰水中で30分間加熱した。その結果、凍結温度はコントロールでは−9℃付近で過冷却を起こすが、本標品を添加すると−3℃付近で凍結が開始し、さらに過冷却は起きない。また室温(25℃)での解凍では本標品を含むすり身は約1時間30分ほど遅れて解凍が始まる。またこれらのすり身の加熱ゲルの凍結曲線(図12)を見ると最大氷結晶生成帯(−1℃〜―5℃)の通過時間は本標品を添加したほうが約10分早く通過することがわかった。 本発明のタンパク質は、ミール、キチン、キトサン原料に利用される以外はその大半が廃棄される甲殻類の殻に多く含まれるために、大量調製が可能で、かつ安価に生産することが出来る。また、食品由来のタンパク質であるから食品への添加に応用しやすい。本発明のタンパク質は、氷核形成活性および氷結晶の再結晶化阻害活性を有するため、冷凍食品等の品質保持などの目的に広く利用が可能である。[配列表フリーテキスト]配列番号:1N末端アミノ酸配列配列番号:2N末端アミノ酸配列[配列表]<110> Nippon Suisan Kaisha Ltd.<120> 氷核形成活性を有するタンパク質<130> YCT-1257<141> 2007-03-13<150> JP 2006-67758<151> 2006-03-13<160> 2<210> 1<211> 20<212> PRT<213> 南極オキアミ(Euphausiacea sp.)<400> DYDVAHEQQDVNAFLTKITG (一文字記号) Asp Tyr Asp Val Ala His Glu Gln Gln Asp Val Asn Ala Phe Leu Thr Lys Ile Thr Gly (三文字記号)<210> 2<211> 18<212> PRT<213> 南極オキアミ(Euphausiacea sp.)<400> SDPKFQQDINTRLXNVYE (一文字記号) Ser Asp Pro Lys Phe Gln Gln Asp Ile Asn Thr Arg Leu Xaa Asn Val Tyr Glu (三文字記号) 氷核形成活性を有するタンパク質を用いる氷結晶の再結晶化阻害方法。 氷核形成活性を有するタンパク質が甲殻類由来のタンパク質である請求項1の氷結晶の再結晶化抑制方法。 甲殻類由来の氷核形成活性を有するタンパク質。 甲殻類由来のタンパク質が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示されるタンパク質である請求項3の氷核形成活性を有するタンパク質。 甲殻類が、エビ類、ザリガニ類、カニ類、オキアミ類、シャコ類のいずれかに属するものである請求項3又は4の氷核形成活性を有するタンパク質。 甲殻類由来の氷核形成活性を有するタンパク質を含む氷核形成活性を有する甲殻類抽出物。 甲殻類由来の氷核形成活性を有するタンパク質が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示されるタンパク質である請求項6の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物。 甲殻類が、エビ類、ザリガニ類、カニ類、オキアミ類、シャコ類のいずれかに属するものである請求項6又は7の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物。 甲殻類の肉及び/又は内臓を圧搾して得た体液、又は、殻、肉及び/又は内臓の抽出液をそのまま、あるいは、さらに精製して用いることを特徴とする甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。 精製により、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示されるタンパク質を濃縮することを特徴とする請求項9の甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。 甲殻類の殻、肉及び/又は内臓から界面活性剤を添加した抽出液で抽出することを特徴とする請求項9又は10の甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。 甲殻類が、エビ類、ザリガニ類、カニ類、オキアミ類、シャコ類のいずれかに属するものである請求項9、10又は11の甲殻類由来の氷核形成活性を有する甲殻類抽出物の製造方法。 氷核形成活性を有するタンパク質を添加することを特徴とする氷結晶の再結晶化を抑制することにより食品の凍結による品質劣化を抑制する方法。 氷核形成活性を有するタンパク質として請求項3ないし5いずれかのタンパク質又は請求項6ないし8のいずれかの甲殻類抽出物を添加する請求項13の方法。 食品が冷凍食品である請求項13又は14の方法。 冷凍食品が卵、小麦粉、又は、魚肉を材料として使用する食品である請求項13、14又は15の方法。 冷凍食品が魚肉すり身、又は魚肉落し身である請求項16の方法。 請求項1ないし5いずれかの氷核形成活性を有するタンパク質、請求項6ないし8いずれかの氷核形成活性を有する甲殻類抽出物、又は、請求項9ないし12いずれかの方法で製造した氷核形成活性を有するタンパク質を含む食品の品質改良剤。 請求項18の品質改良剤を添加したことを特徴とする品質改良された食品。 食品が冷凍食品である請求項19の食品。 食品が卵、小麦粉、又は、魚肉を材料として使用する食品である請求項19又は20の食品。 甲殻類由来のタンパク質が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)−ポリアクリルアミド電気泳動法による分子量測定で、非還元下では約200,000の分子量であり、還元した場合、約86,000のバンドと約90,000のバンドを示し、N末端アミノ酸が配列番号1又は2で示される氷核形成活性を有するタンパク質。 このタンパク質は、ミール、キチン、キトサン原料に利用される以外はその大半が廃棄される甲殻類の殻に多く含まれるために、大量調製が可能で、かつ安価に生産することが出来る。また、食品由来のタンパク質であるから食品への添加に応用しやすい。本発明のタンパク質は、氷核形成活性および氷結晶の再結晶化阻害活性を有するため、冷凍食品等の品質保持などの目的に広く利用が可能である。