生命科学関連特許情報

タイトル:公開特許公報(A)_キチン分解物の製造方法
出願番号:2007051722
年次:2008
IPC分類:C12P 19/26,C13K 13/00,C08B 37/08,A61K 8/73


特許情報キャッシュ

戸谷 一英 二階堂 満 福村 卓也 柴田 歌菜子 JP 2008212025 公開特許公報(A) 20080918 2007051722 20070301 キチン分解物の製造方法 焼津水産化学工業株式会社 390033145 独立行政法人国立高等専門学校機構 504237050 松井 茂 100086689 戸谷 一英 二階堂 満 福村 卓也 柴田 歌菜子 C12P 19/26 20060101AFI20080822BHJP C13K 13/00 20060101ALI20080822BHJP C08B 37/08 20060101ALI20080822BHJP A61K 8/73 20060101ALN20080822BHJP JPC12P19/26C13K13/00C08B37/08 AA61K8/73 11 OL 23 4B064 4C083 4C090 4B064AF21 4B064CA21 4B064CB07 4B064CB30 4B064CC30 4B064CE06 4B064CE09 4B064CE10 4B064CE11 4B064DA01 4B064DA10 4B064DA20 4C083AD321 4C083AD322 4C083CC01 4C090AA05 4C090BA46 4C090BC27 4C090CA01 4C090CA09 4C090CA31 4C090CA43 4C090DA21 4C090DA23 4C090DA26 本発明は、キチン分解物の製造方法に関する。 キチンは、エビ、カニ等の甲殻、イカの軟骨、カブトムシ、コオロギ等の昆虫類の外皮、キノコ類、真菌類の細胞壁等に含まれている天然物素材であり、N−アセチル−D−グルコサミンがβ1−4グルコシド結合で重合した構造を有する分子量数10万〜数100万の高分子量多糖類である。そして、そのキチンのβ1−4グルコシド結合が加水分解されてなる構造を有するキチン分解物、例えばキチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン等、又は更に脱アセチル化されてなる構造を有するキトサンオリゴ糖、グルコサミン等は、医薬、化粧品、肥料等としての利用が期待されており、一部は実用化されている。 従来、キチン分解物は、主として以下のようにして製造されている。 すなわち、例えば、カニやエビの甲殻を原料にして、希塩酸処理による炭酸カルシウム除去、希アルカリ処理によるタンパク除去、有機溶媒処理による脱色等の処理を施すことによって、原料に含まれる他の構成成分からキチンを分離する。そして、得られたキチンを濃塩酸で処理し、キチンのβ1−4グルコシド結合を加水分解して低分子化して、キチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン等を製造することができる。また、キチンを濃アルカリ処理することにより、構成糖の2位のアセチル基を脱離させて構成糖の2位に遊離アミノ基を有するキトサン、キトサンオリゴ糖、グルコサミン等を製造することができる。 しかしながら、濃塩酸や濃アルカリ、有機溶剤を用いるので工業的に生産すると環境に与える負荷が大きいという問題があった。 このため、化学的方法によらず、微生物が生産するキチン分解酵素を利用する方法が種々報告されている。 更に、キチン分解酵素を利用した実際的な製造システムとして、例えば下記特許文献1には、甲殻類の外骨殻から得られるキチンを少なくとも1つのキチナーゼと1つのキトビアーゼとを生産するために選択された有機体で醗酵させ、得られるキチン分解酵素の集合体でもってキチンを酵素的に加水分解し、キチン分解酵素の集合体からN−アセチル−D−グルコサミンを分離することよりなるN−アセチル−D−グルコサミン(2−アセタミド−2−デオキシ−D−グルコース)を生産する方法が開示されている。そして、該方法によれば、中間グルコサミン段階を経る必要がないのでN−アセチル−D−グルコサミン生産に係る費用を大幅に減少しうるのみならず、有機溶媒を必要としない(アルコールによる再結晶化工程を除く)ので環境にやさしく好ましい方法であることが記載されている。特表2000−513925号公報 しかしながら、キチン分解酵素が有効に働くためには基質となるキチンが溶媒中に有効に分散していることが必要であるが、キチンは溶解性が極めて乏しいことから、濃酸に溶解した後、十分量の水に添加して再沈殿させて調製したコロイダルキチンを利用したり、有機溶媒の存在する環境下に酵素を作用させたりしなければならないという問題があった。そして、そのようにして得られるキチン分解物は、その低分子化度や脱アセチル化度等の性質をコントロールすることが難しく、また、原料の利用効率にも限界があった。 更に、カニやエビの甲殻を原料にする場合には、キチンを抽出しなければならないが、微生物が生産するキチン分解酵素を利用する方法のみによってはその抽出工程に用いられる、酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を抑えることはできなかった。 したがって、本発明の目的は、低分子化度や脱アセチル化度をコントロールすることが容易であり、酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を低減することができ、原料とされるキチン含有組成物又はキチンの利用効率にも優れたキチン分解物の製造方法を提供することにある。 上記目的を達成するため、本発明の第1は、キチン含有組成物又はキチンからなるキチン原料を、キチン質の結晶化度として70%以下になるように微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料を加水分解するキチン加水分解工程とを含むことを特徴とするキチン分解物の製造方法を提供するものである。 上記発明によれば、原料とされるキチン含有組成物又はキチンのキチン質の結晶化度として70%以下となるように微粉砕するので、原料中のキチンが加水分解を受け易い構造とされる。したがって、その低分子化や脱アセチル化をコントロールし易く、また、原料の利用効率も高めることができる。更に、塩酸等の酸で加水分解させる場合であっても従来よりもその使用量を低減することができ、室温・常圧近くの穏やかな条件であっても効率的にキチン分解物を製造することができる。更にまた、酵素を用いて加水分解させる場合には、酵素の基質とするためにキチンをコロイダルキチン等に調製する必要がなく効率的にキチン分解物を製造することができる。 更に、キチン含有組成物から直接的にキチンの低分子化を行うことができるので、カニ殻等の甲殻類の外殻を原料とする場合であっても、キチン抽出の工程を省略することができ、そのための酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を低減することができる。 本発明の第2は、キチン含有組成物からなるキチン原料を、キチン質の結晶化度として70%以下になるように微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料からキチンを抽出するキチン抽出工程と、抽出されたキチンを加水分解するキチン加水分解工程とを含むことを特徴とするキチン分解物の製造方法を提供するものである。 上記発明によれば、原料とされるキチン含有組成物のキチン質の結晶化度として70%以下となるように微粉砕するので、原料に含まれるキチン以外の他の構成成分が分解を受け易い構造とされる。したがって、例えば、カニ殻、エビ殻等の甲殻類の外殻を原料としてキチンを分離・抽出する際に、希塩酸処理による炭酸カルシウム除去、希アルカリ処理によるタンパク除去、有機溶媒処理による脱色等の処理を施す場合であっても、その酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量の低減や、上記処理に要する時間の短縮をすることができる。また、原料に含まれる他の構成成分から効率的にキチンを抽出することができるので原料の利用効率も高めることができる。 更に、上記発明によれば、カニ殻等の甲殻類の外殻を原料とする場合であっても、分子量、荷電状態等の物理化学的特性においてより均質なキチンを分離・抽出することができる。したがって、その低分子化や脱アセチル化をコントロールし易く、更に、塩酸等の酸で加水分解させる場合であっても従来よりもその使用量を軽減することができ、室温・常圧近くの穏やかな条件であっても効率的にキチン分解物を製造することができる。更にまた、酵素を用いて加水分解させる場合には、酵素の基質とするためにキチンをコロイダルキチン等に調製する必要がなく効率的にキチン分解物を製造することができる。 本発明においては、前記キチン抽出工程が、タンパク質除去処理、無機塩除去処理、及び色素除去処理から選ばれた少なくとも一種の処理を含む工程であることが好ましい。 本発明においては、前記キチン原料微粉砕工程において、キチン原料をキチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下になるように微粉砕することが好ましい。 本発明においては、前記キチン含有組成物が、甲殻類の外殻であることが好ましい。また、前記キチン含有組成物が、カニ殻及び/又はエビ殻であることが好ましい。 本発明においては、前記キチン加水分解工程が、β−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素をキチンに作用させる処理を含む工程であることが好ましい。また、前記キチン加水分解工程が、キチナーゼ、リゾチーム、及びキトビアーゼから選ばれた少なくとも一種の酵素をキチンに作用させる処理を含む工程であることが好ましい。更にまた、前記キチン加水分解工程が、塩酸をキチンに作用させる処理を含む工程であることが好ましい。 また、本発明においては、複数個の粉砕媒体ボールと粉体とを収納した処理容器の回転により、該粉体を微粒子化する高速粉体反応装置を用いて、前記キチン原料微粉砕工程を行うことが好ましい。これによれば、キチン原料をキチン質の結晶化度として70%以下になるように効率よく微粉砕することができる。 本発明の別の好ましい態様においては、更に、脱アセチル化処理を施す脱アセチル化工程を含み、前記脱アセチル化工程において、前記原料に由来するキチン及び/又はその低分子化物のアセチルグルコサミン残基のアセチル基を脱アセチル化する。これによれば、本発明の上記利点を享受しつつ、キチンの構成糖であるアセチルグルコサミンの2位のアセチル基を脱離させて構成糖の2位に遊離アミノ基を有する、キトサンオリゴ糖、グルコサミン等を製造することができる。 本発明によれば、低分子化度や脱アセチル化度をコントロールすることが容易であり、酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を低減することができ、原料とされるキチン含有組成物又はキチンの利用効率にも優れたキチン分解物の製造方法を提供することができる。 本発明において原料とされるキチン含有組成物としては、カニ、エビ、オキアミ等の甲殻類の外殻、イカの軟骨、カブトムシ、コオロギ等の昆虫類の外皮、キノコ類、真菌類の細胞壁等に由来するものを好ましく例示できる。特にカニ殻、エビ殻が資源としても豊富であり、好ましく用いることができる。 本発明において原料とされるキチンとしては、上記のキチン含有組成物キチンを酸処理してカルシウム分を除去し、更に水酸化ナトリウム処理により蛋白質を除去することなどにより調製されたキチン、又はこれと均等なキチンであればよく、キチン粉末として市販されているものを用いることもできる。 本発明の上記キチン原料微粉砕工程においては、微粉砕手段によって、上記キチン含有組成物又はキチンからなるキチン原料を、キチン質の結晶化度として70%以下、より好ましくは結晶化度60%以下、更により好ましくは結晶化度50%以下になるように微粉砕する。ここで、高分子化合物系材質において、その結晶化度とは、結晶質部分と非晶質部分との相対な量に相関するパラメータであり、その一般的な測定・算出方法としては、密度法、X線回折法、赤外線吸収法、NMR法などが挙げられる。なお、本発明においては、粉末X線回折測定(測定用X線:CuKα線)によって得られる回折角―散乱強度プロット図形(X線回折(XRD)パターン)に基づいて下記の式(I)で算出される値である。 上記微粉砕手段は、特に限定されないが、複数個の粉砕媒体ボールと粉体とを収納した処理容器の回転により、該粉体を微粒子化する高速粉体反応装置が好ましく用いられ、特に特許第3486682号又は特許第3533526号に開示されているコンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置がより好ましく用いられる。同高速粉体反応装置は、粉砕用容器や粉砕用ボールの衝突による磨耗分の混入を軽減でき、スケールアップも容易であるので、本発明の微粉砕手段として好ましく用いることができる。ただし、公知のボールミル微粉砕機等を用いることもできる。 コンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置について、図1の説明図に沿って説明する。 図1に示すように、装置主要部は、回転する円筒型容器である高速回転容器10(粉砕容器)と、その内部の上部に配置される固定ガイドベーン20とを設けた単純な構造になっている。この容器の中に媒体ボール30と試料粉末とを投入し高速回転容器10を高速回転させる。媒体ボール30と試料粉末は固定ガイドベーン20によってその運動方向を変えられ、媒体ボール30は衝突部60(MA点)に向かう。一方、粉体の一部はガイドベーンと容器内壁とのクリアランス70(約0.5mm)を通過し、容器内壁に試料粉体層40が形成される。したがって、衝突部60(MA点)においては、容器内壁の試料層と固定ガイドベーンによって方向を変えられた媒体ボールが1点で集中的に衝突し、効率的な粉砕がなされる。また、容器内壁の試料粉体層40の形成は容器からの不純物介入を防止する効果もある。 本発明の上記キチン原料微粉砕工程においては、上記微粉砕手段によって、キチン原料をキチン質の結晶化度として、上記の結晶化度になるように微粉砕し、且つ、平均粒子径が40μm以下、より好ましくは25μm以下、更により好ましくは20μm以下になるように微粉砕することが好ましい。その平均粒子径の測定は、公知の方法を用いて行うことができるが、例えば、メタノールを分散媒として、レーザー回折・散乱法の原理による粒度分布測定装置を用いて測定することができる。 本発明の上記キチン加水分解工程においては、キチン加水分解手段によってキチンを加水分解する。キチン加水分解手段としては、キチン分解酵素等による酵素的加水分解、又は塩酸等による酸加水分解が挙げられる。 キチン分解酵素としては、例えば、バチラス(Batillus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、トリコダーマ(Trichoderma)属、セラチア(Serratia)属、コリネバクテリア(Corynebacteria)属、ビブリオ(Vibrio)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、アミコラクトプシス(Amycolactopsis)等の微生物に由来するキチナーゼ、テンサイ等の植物に由来するキチナーゼ、卵白由来リゾチーム、キトビアーゼ等を好ましく例示できる。これらの酵素は、一般にβ−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素であるが、そのエンド型、エキソ型のいずれの分解特性のものであってもよい。また、β−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素以外の酵素であって、キチンの低分子化に寄与できる酵素を組み合わせて用いてもよい。 本発明においては、キチンに塩酸を作用させて加水分解することも好ましく、これによれば、塩酸の使用量の低減や反応時間の短縮をし、従来の酸加水分解よりも生産性を向上させることができる。また、上記の酵素的加水分解と酸加水分解を併用して、本発明のキチン加水分解手段とすることもできる。 本発明においては、キチン原料を微粉砕工程によって微粉砕した後、該微粉砕物からキチンを抽出し、このキチン抽出部に対して上記キチン加水分解工程を施してもよい。この場合のキチン抽出手段としては、タンパク質除去処理、無機塩除去処理、及び色素除去処理等の公知の処理手段を例示することができる。本発明においては、キチン原料を微粉砕したことにより、それらの公知の処理手段に準拠しつつ、より短時間、より緩和された条件でキチン含有組成物からキチンを抽出することができる。 また、本発明においては、キチン加水分解工程を施した後、更に脱アセチル化工程を施してもよい。脱アセチル化工程においては、脱アセチル化手段によって、原料に由来するキチン及び/又はその低分子化物のアセチルグルコサミン残基のアセチル基を脱アセチル化する。脱アセチル化手段としては、N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化酵素等による脱アセチル化、又は濃アルカリ等によるアルカリ加水分解が挙げられる。 本発明のキチン分解物の製造方法によって得られたキチン低分子化物やキチン低分子化物の脱アセチル化物は、公知の透析、塩析、限外濾過等の手段によって更に濃縮・精製することができる。例えば、分解残渣を濾過処理等により取り除くことができ、酵素タンパク、着色を活性炭処理等により取り除くことができ、バッファー、脱アセチル化物をイオン交換クロマトカラム処理等により取り除くことができる。また、活性炭カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィーなどの分離・精製手段等により分解物を重合度別に単離することができる。更に、酵素処理によりN−アセチルグルコサミン(単糖)、キトビオース(2糖)、グルコサミン(単糖)、キトサンオリゴ糖ダイマー(2糖)にまで完全分解を行い、これらを逆浸透膜(RO膜)処理や結晶化処理により精製することができる。 このような濃縮・精製方法の一例としては、例えば、特開2005−281648号公報に挙げられた、キチンの酸による部分加水分解時に生成する副生塩等をイオン交換膜電気透析によって効率的に除去する方法などが挙げられる。 以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。 <試験例1> カニ殻を、特許第3486682号及び特許第3533526号に記載されたコンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置(株式会社真壁技研社製)を用いて微粉砕した。 すなわち、上記高速粉体反応装置のジルコニア製粉砕容器(1000ml)に、原料粉としてカニ殻20gと、媒体ボールとして直径10mmのジルコニアボール271g(80ml)とを投入し、空気雰囲気下、回転数700rpmにて60分間の粉砕処理を行った。 得られたカニ殻微粉砕物を0.1M酢酸バッファー(pH6.0)に終濃度10mg/mlで分散させ、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)を最終濃度1mg/mlとなるように添加して40℃で酵素処理した。また、微粉砕していないカニ殻(0.1〜5mmに粉砕されたもの)を対照として同様に酵素処理した。 酵素処理開始から3時間、18時間、48時間後の酵素処理液について、その溶液の一部を下記分析条件にてHPLCに供し、該単糖及び2糖の検出曲線下面積を、別途に標準濃度試料から得られた検量線に当てはめて定量し、上記酵素処理液中に溶解していた量に換算した。なお、生成した単糖及び2糖が、それぞれN−アセチルグルコサミン、及びキトビオースであることを1H、13CNMR分析により確認した。 <HPLC条件>・カラム:Asahipak NH2P-50 4E(商品名、昭和電工株式会社製)・移動相:アセトニトリル/水 = 75/25・流速 :0.8ml/min・カラム温度:室温・検出器:RI検出器 その結果、図2に示すように、微粉砕していないカニ殻を酵素処理しても単糖への糖化はほとんど起こらなかった。一方、カニ殻を微粉砕した後に酵素処理したものについては、酵素処理によって経時的に単糖への糖化が起こり、48時間後にはその糖化率は約20%であった。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のカニ殻の質量を100としたときの、生成した単糖及び2糖の合算質量の相対割合を意味する。 以上から、カニ殻からなるキチン原料に微粉砕処理を施すことにより、キチン分解物である単糖及び/又は2糖をより効率的に調製できることがわかる。 <試験例2> 原料試料として、市販のキチン粉末(焼津水産化学工業株式会社製、平均粒径244μm)を用いた以外は上記試験例1と同様にしてその微粉砕化した。 得られたキチン微粉砕物を0.1M酢酸バッファー(pH6.0)に終濃度10mg/mlで分散させ、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)を最終濃度1mg/mlとなるように添加して37℃で酵素処理した。また、微粉砕していない市販のキチン粉末を対照として同様に酵素処理した。 酵素処理開始から1時間、12時間、24時間後の酵素処理液について、上記試験例1と同様にして生成した単糖(N−アセチルグルコサミン)及び2糖(キトビオース)を分離、定量した。 その結果、図3に示すように、微粉砕していないキチン粉末を酵素処理しても単糖への糖化率は10%に満たなかった。一方、キチン粉末を微粉砕した後に酵素処理したものについては、酵素処理によって経時的に単糖への糖化が起こり、24時間後のキチン分解酵素で糖化率は約50%近くとなった。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のキチン粉末の質量を100としたときの、生成した単糖及び2糖の合算質量の相対割合を意味する。 以上から、キチン粉末からなるキチン原料に微粉砕処理を施すことにより、キチン分解物である単糖及び/又は2糖をより効率的に調製できることがわかる。 <試験例3> キチン粉末を原料として用いて、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチナーゼ酵素処理によるキチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。 すなわち、微粉砕条件を(i)回転数700rpm―粉砕時間60分、(ii)回転数700rpm―粉砕時間120分、(iii)回転数800rpm―粉砕時間120分として、上記試験例2と同様にして微粉砕処理を行った。そして得られたキチン粉末微粉砕物について、上記試験例2と同様にして、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)で24又は48時間処理した後のキチンの糖化率を求めた。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のキチン粉末の質量を100としたときの、生成した単糖、又は2糖の質量の相対割合を意味する。 図4はその結果をまとめたグラフである。図4(a)に示すように、微粉砕処理したキチン粉末では、キチナーゼ「エイコンCHL」での酵素処理によって単糖(N−アセチルグルコサミン)が経時的に生成した。その糖化率は、上記微粉砕条件(i)〜(iii)間でほぼ同程度であった。 また、図4(b)に示すように、微粉砕処理したキチン粉末では、キチナーゼ「エイコンCHL」での酵素処理によって2糖(キトビオース)が経時的に生成した。そして、上記微粉砕条件(i)〜(iii)間で、酵素処理後48時間の糖化率を比較すると、それぞれ46.4%、53.5%、56.9%であり、上記微粉砕条件(i)<(ii)<(iii)の順で増加傾向を示した。 <試験例4> キチナーゼとしてYatalase を用いた以外は、上記試験例3と同様にして、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。 図5はその結果をまとめたグラフである。図5(a)に示すように、微粉砕処理したキチン粉末では、Yatalaseでの酵素処理によって単糖(N−アセチルグルコサミン)が経時的に生成した。その糖化率は、上記粉砕条件(i)<(ii)<(iii)の順で増加傾向を示した。また、図5(b)に示すようにYatalaseでの酵素処理では2糖(キトビオース)は生成しなかった。 <試験例5> カニ殻を原料として用いて、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチナーゼ酵素処理によるキチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。 すなわち、微粉砕条件を(i)回転数500rpm―粉砕時間30分、(ii)回転数500rpm―粉砕時間60分、(iii)回転数700rpm―粉砕時間30分、(iv)回転数700rpm―粉砕時間60分として、上記試験例1と同様にして微粉砕処理を行った。そして得られたカニ殻微粉砕物について、上記試験例1と同様にして、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)で3又は22時間処理した後のキチンの糖化率を求めた。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のカニ殻の質量を100としたときの、生成した2糖(キトビオース)の質量の相対割合を意味する。 図6はその結果をまとめたグラフである。図6に示すように、微粉砕処理したカニ殻では、キチナーゼ「エイコンCHL」での酵素処理によって2糖が経時的に生成した。そして、上記微粉砕条件(i)〜(iv)間で、酵素処理後22時間の糖化率を比較すると、それぞれ7.6%、11.4%、9.4%、14.5%であり、上記微粉砕条件(i)<(iii)<(ii)<(iv)の順で増加傾向を示した。 <試験例6> キチナーゼとしてYatalase を用いた以外は、上記試験例5と同様にして、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のカニ殻の質量を100としたときの、生成した単糖(N−アセチルグルコサミン)の質量の相対割合を意味する。 図7はその結果をまとめたグラフである。図7に示すように、微粉砕処理したカニ殻では、Yatalaseでの酵素処理によって単糖(N−アセチルグルコサミン)が経時的に生成した。そして、上記微粉砕条件(i)〜(iv)間で、酵素処理後22時間の糖化率を比較すると、それぞれ4.8%、8.6%、4.8%、8.1%であり、上記粉砕条件(i)、(iii)<(ii)、(iv)の順で増加傾向を示した。 上記試験例3〜6の結果を考え合わせると、上記高速粉体反応装置によるキチン原料の微粉砕処理において、回転数を上げたり、粉砕時間を長くしたりして微粉砕の程度を大きくすることによって、キチナーゼ酵素処理によるキチン分解物の生成が促進されることが明らかとなった。 <試験例7> 上記高速粉体反応装置を用いた微粉砕の程度が、キチン粉末微粉砕物の平均粒子径及び結晶化度に与える影響を調べた。 すなわち、キチン粉末の微粉砕条件を(a)回転数500rpm―粉砕時間30分、(b)回転数500rpm―粉砕時間60分、(c)回転数700rpm―粉砕時間30分、(d)回転数700rpm―粉砕時間60分、(e)回転数700rpm―粉砕時間120分、(f)回転数800rpm―粉砕時間120分として、上記試験例2と同様にして、微粉砕処理を行った。なお、微粉砕条件(d)、(e)、(f)は、それぞれ上記試験例3及び4における微粉砕条件(i)、(ii)、(iii)と同じ条件である。 そして得られたキチン粉末微粉砕物について、その平均粒子径(D50)及び結晶化度を測定した。 なお、平均粒子径(D50)は、メタノールを分散媒として、レーザー回折・散乱法の原理による粒度分布測定装置「X−100」(米国マイクロトラック社製)を用いて測定した。 また、結晶化度は、X線回折装置「JDX‐3530」(日本電子株式会社製)を用いて、X線にはCu‐Kα線を用い、管電流30mA、管電圧30kVの設定条件で測定した。図8にはX線回折測定で得られた回折角―散乱強度プロット図形(X線回折(XRD)パターン)の一例を示す。結晶化度は、この回折角―散乱強度プロット図形に基づいて下記の式(I)で算出される値である。 図9はその結果をまとめたグラフ(図9a)及び表(図9b)である。グラフ(図9a)から明らかなように、平均粒子径は、微粉砕の程度が大きくなるにつれて、30.5〜16.4μmの範囲で減少傾向を示し、また、結晶化度も微粉砕の程度が大きくなるにつれて、84.0〜35.5%の範囲で減少傾向を示した。 したがって、微粉砕処理を施すことでキチン原料の平均粒子径を減少させることができるだけでなく、キチン質の結晶性を破壊できることが明らかとなった。また、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の平均粒子径の減少割合が比較的小さいものであったのに対し、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の結晶化度の減少割合は比較的大きなものであった。 キチン粉末原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率との相間関係を求めるために、上記試験例3及び4で得られた結果のうち、図4(b)で示す24時間処理後の2糖(キトビオース)生成のデータ又は48時間処理後の2糖(キトビオース)生成のデータ、並びに図5(a)で示す24時間処理後の単糖(N‐アセチルグルコサミン)生成のデータ又は48時間処理後の単糖(N‐アセチルグルコサミン)生成のデータについて、その糖化率の値をY軸に、それらに対応する結晶化度の値をX軸にプロットしてその相関係数を求めた。 その結果、図10に示すとおり、キチン粉末原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率とがよく相関していることが明らかとなった。 したがって、図9のグラフ(図9a)及び表(図9b)で示したように、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の平均粒子径の減少割合が比較的小さいものであることを考慮に入れれば、微粉砕処理を施すことでキチナーゼ処理による糖化率が促進されることの主な要因の一つが、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の結晶化度の減少であることが考えられた。 <試験例8> カニ殻を原料に用いて、高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、平均粒子径及び結晶化度に与える影響を調べた。 すなわち、カニ殻の微粉砕条件を(g)回転数500rpm―粉砕時間30分、(h)回転数500rpm―粉砕時間60分、(i)回転数700rpm―粉砕時間30分、(j)回転数700rpm―粉砕時間60分として、上記試験例1と同様にして、微粉砕処理を行った。なお、微粉砕条件(g)〜(j)は、それぞれ上記試験例5及び6における微粉砕条件(i)〜(iv)と同じ条件である。そして得られたカニ殻微粉砕物について、試験例7と同様にして、その平均粒子径(D50)及び結晶化度を測定した。 図11(a)はその結果をまとめた表である。図11(a)に示す表から明らかなように、平均粒子径は、微粉砕の程度が大きくなるにつれて、15.1〜10.1μmの範囲で減少傾向を示し、また、結晶化度も微粉砕の程度が大きくなるにつれて、50.0〜25.8%の範囲で減少傾向を示した。 したがって、原料としてカニ殻を用いた場合も、微粉砕処理を施すことでキチン原料(カニ殻)の平均粒子径を減少させることができるだけでなく、キチン質の結晶性を破壊できることが明らかとなった。 カニ殻原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率との相間関係を求めるために、上記試験例5及び6で得られた結果のうち、図6で示す22時間処理後のデータ、並びに図7で示す22時間処理後のデータについて、その糖化率の値をY軸に、それらに対応する結晶化度の値をX軸にプロットしてその相関係数を求めた。 その結果、図11(b)に示すとおり、カニ殻原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率とがよく相関していることが明らかとなった。 したがって、図11(a)の表に示したように、微粉砕処理を施すことによるカニ殻原料の平均粒子径の減少割合が比較的小さいものであることを考慮に入れれば、微粉砕処理を施すことでキチナーゼ処理による糖化率が促進されることの主な要因の一つが、微粉砕処理を施すことによるカニ殻原料の結晶化度の減少であることが考えられた。コンバージミルの原理を説明する説明図である。カニ殻とカニ殻微粉砕物とにキチナーゼを作用させた場合の糖化率を比較した結果を示す図表である。キチン粉末とキチン粉末微粉砕物とにキチナーゼを作用させた場合の糖化率を比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(「エイコンCHL」)処理による糖化(分解)をキチン粉末原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(Yatalase)処理による糖化(分解)をキチン粉末原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(「エイコンCHL」)処理による糖化(分解)をカニ殻原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(Yatalase)処理による糖化(分解)をカニ殻原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。試験例7のX線回折測定で得られた回折角―散乱強度プロット図形(X線回折(XRD)パターン)の一例を示す図表である。キチン粉末原料の微粉砕の程度と平均粒子径及び結晶化度との関係を示すグラフ(a)及び表(b)である。キチン粉末微粉砕物においてその結晶化度と糖化率との相関を示す図表である。カニ殻原料の微粉砕の程度と平均粒子径及び結晶化度との関係を示す表(a)及びカニ殻原料微粉砕物においてその結晶化度と糖化率の相関を示す図表(b)である。符号の説明10 高速回転容器20 固定ガイドベーン30 媒体ボール40 試料粉体層50 ボールと粉体の飛程域60 衝突部70 ガイドベーンと容器内壁とのクリアランス キチン含有組成物又はキチンからなるキチン原料を、キチン質の結晶化度として70%以下になるように微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料を加水分解するキチン加水分解工程とを含むことを特徴とするキチン分解物の製造方法。 キチン含有組成物からなるキチン原料を、キチン質の結晶化度として70%以下になるように微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料からキチンを抽出するキチン抽出工程と、抽出されたキチンを加水分解するキチン加水分解工程とを含むことを特徴とするキチン分解物の製造方法。 前記キチン抽出工程が、タンパク質除去処理、無機塩除去処理、及び色素除去処理から選ばれた少なくとも一種の処理を含む工程である請求項2記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン原料微粉砕工程において、キチン原料をキチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下になるように微粉砕する請求項1〜3のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン含有組成物が、甲殻類の外殻である請求項1〜4のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン含有組成物が、カニ殻及び/又はエビ殻である請求項5記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン加水分解工程が、β−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素をキチンに作用させる処理を含む工程である請求項1〜6のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン加水分解工程が、キチナーゼ、リゾチーム、及びキトビアーゼから選ばれた少なくとも一種の酵素をキチンに作用させる処理を含む工程である請求項1〜6のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン加水分解工程が、塩酸をキチンに作用させる処理を含む工程である請求項1〜6のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 複数個の粉砕媒体ボールと粉体とを収納した処理容器の回転により、該粉体を微粒子化する高速粉体反応装置を用いて、前記キチン原料微粉砕工程を行う請求項1〜9のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 更に、脱アセチル化処理を施す脱アセチル化工程を含み、前記脱アセチル化工程において、前記原料に由来するキチン及び/又はその低分子化物のアセチルグルコサミン残基のアセチル基を脱アセチル化する請求項1〜10のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 【課題】低分子化度や脱アセチル化度をコントロールすることが容易であり、酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を低減することができ、原料とされるキチン含有組成物又はキチンの利用効率にも優れたキチン分解物の製造方法を提供する。【解決手段】キチン含有組成物又はキチンからなるキチン原料をキチン質としてキチン質の結晶化度として70%以下になるように微粉砕し、これを直接加水分解する。又は、キチン含有組成物からなるキチン原料をキチン質の結晶化度として70%以下になるように微粉砕し、これからキチンを抽出し、その抽出後のキチンを加水分解する。【選択図】なし


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特許公報(B2)_キチン分解物の製造方法

生命科学関連特許情報

タイトル:特許公報(B2)_キチン分解物の製造方法
出願番号:2007051722
年次:2013
IPC分類:C12P 19/26,C13K 13/00,C08B 37/08,A61K 8/73


特許情報キャッシュ

戸谷 一英 二階堂 満 福村 卓也 柴田 歌菜子 JP 5320565 特許公報(B2) 20130726 2007051722 20070301 キチン分解物の製造方法 独立行政法人国立高等専門学校機構 504237050 松井 茂 100086689 戸谷 一英 二階堂 満 福村 卓也 柴田 歌菜子 20131023 C12P 19/26 20060101AFI20131003BHJP C13K 13/00 20060101ALI20131003BHJP C08B 37/08 20060101ALI20131003BHJP A61K 8/73 20060101ALN20131003BHJP JPC12P19/26C13K13/00C08B37/08 AA61K8/73 C12P 19/26 C08B 37/08 C13K 13/00 CA/BIOSIS/MEDLINE/WPIDS(STN) JSTPlus(JDreamII) 特表2000−513925(JP,A) 特開平05−056792(JP,A) 特開平10−192000(JP,A) 特開昭55−009758(JP,A) 特開昭59−091893(JP,A) 特開昭63−137692(JP,A) 9 2008212025 20080918 23 20100226 松原 寛子 本発明は、キチン分解物の製造方法に関する。 キチンは、エビ、カニ等の甲殻、イカの軟骨、カブトムシ、コオロギ等の昆虫類の外皮、キノコ類、真菌類の細胞壁等に含まれている天然物素材であり、N−アセチル−D−グルコサミンがβ1−4グルコシド結合で重合した構造を有する分子量数10万〜数100万の高分子量多糖類である。そして、そのキチンのβ1−4グルコシド結合が加水分解されてなる構造を有するキチン分解物、例えばキチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン等、又は更に脱アセチル化されてなる構造を有するキトサンオリゴ糖、グルコサミン等は、医薬、化粧品、肥料等としての利用が期待されており、一部は実用化されている。 従来、キチン分解物は、主として以下のようにして製造されている。 すなわち、例えば、カニやエビの甲殻を原料にして、希塩酸処理による炭酸カルシウム除去、希アルカリ処理によるタンパク除去、有機溶媒処理による脱色等の処理を施すことによって、原料に含まれる他の構成成分からキチンを分離する。そして、得られたキチンを濃塩酸で処理し、キチンのβ1−4グルコシド結合を加水分解して低分子化して、キチンオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン等を製造することができる。また、キチンを濃アルカリ処理することにより、構成糖の2位のアセチル基を脱離させて構成糖の2位に遊離アミノ基を有するキトサン、キトサンオリゴ糖、グルコサミン等を製造することができる。 しかしながら、濃塩酸や濃アルカリ、有機溶剤を用いるので工業的に生産すると環境に与える負荷が大きいという問題があった。 このため、化学的方法によらず、微生物が生産するキチン分解酵素を利用する方法が種々報告されている。 更に、キチン分解酵素を利用した実際的な製造システムとして、例えば下記特許文献1には、甲殻類の外骨殻から得られるキチンを少なくとも1つのキチナーゼと1つのキトビアーゼとを生産するために選択された有機体で醗酵させ、得られるキチン分解酵素の集合体でもってキチンを酵素的に加水分解し、キチン分解酵素の集合体からN−アセチル−D−グルコサミンを分離することよりなるN−アセチル−D−グルコサミン(2−アセタミド−2−デオキシ−D−グルコース)を生産する方法が開示されている。そして、該方法によれば、中間グルコサミン段階を経る必要がないのでN−アセチル−D−グルコサミン生産に係る費用を大幅に減少しうるのみならず、有機溶媒を必要としない(アルコールによる再結晶化工程を除く)ので環境にやさしく好ましい方法であることが記載されている。特表2000−513925号公報 しかしながら、キチン分解酵素が有効に働くためには基質となるキチンが溶媒中に有効に分散していることが必要であるが、キチンは溶解性が極めて乏しいことから、濃酸に溶解した後、十分量の水に添加して再沈殿させて調製したコロイダルキチンを利用したり、有機溶媒の存在する環境下に酵素を作用させたりしなければならないという問題があった。そして、そのようにして得られるキチン分解物は、その低分子化度や脱アセチル化度等の性質をコントロールすることが難しく、また、原料の利用効率にも限界があった。 更に、カニやエビの甲殻を原料にする場合には、キチンを抽出しなければならないが、微生物が生産するキチン分解酵素を利用する方法のみによってはその抽出工程に用いられる、酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を抑えることはできなかった。 したがって、本発明の目的は、低分子化度や脱アセチル化度をコントロールすることが容易であり、酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を低減することができ、原料とされるキチン含有組成物又はキチンの利用効率にも優れたキチン分解物の製造方法を提供することにある。 上記目的を達成するため、本発明の第1は、キチン含有組成物又はキチンからなるキチン原料を、微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料を加水分解するキチン加水分解工程とを含み、 前記キチン原料微粉砕工程は、回転容器と、該回転容器内に配置された固定ガイドベーンとを有し、前記回転容器内に媒体ボールと、原料粉体とを投入して、前記回転容器を回転させることにより、前記固定ガイドベーンによって前記媒体ボールの運動方向を変えて、前記回転容器内壁に衝突させることにより,前記原料粉体を粉砕するように構成された高速粉体反応装置を用いて、前記キチン原料が、キチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下になるように行うことを特徴とするキチン分解物の製造方法を提供するものである。 上記発明によれば、原料とされるキチン含有組成物又はキチンのキチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下となるように微粉砕するので、原料中のキチンが加水分解を受け易い構造とされる。したがって、その低分子化や脱アセチル化をコントロールし易く、また、原料の利用効率も高めることができる。更に、塩酸等の酸で加水分解させる場合であっても従来よりもその使用量を低減することができ、室温・常圧近くの穏やかな条件であっても効率的にキチン分解物を製造することができる。更にまた、酵素を用いて加水分解させる場合には、酵素の基質とするためにキチンをコロイダルキチン等に調製する必要がなく効率的にキチン分解物を製造することができる。 更に、キチン含有組成物から直接的にキチンの低分子化を行うことができるので、カニ殻等の甲殻類の外殻を原料とする場合であっても、キチン抽出の工程を省略することができ、そのための酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を低減することができる。 本発明の第2は、キチン含有組成物からなるキチン原料を、微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料からキチンを抽出するキチン抽出工程と、抽出されたキチンを加水分解するキチン加水分解工程とを含み、 前記キチン原料微粉砕工程は、回転容器と、該回転容器内に配置された固定ガイドベーンとを有し、前記回転容器内に媒体ボールと、原料粉体とを投入して、前記回転容器を回転させることにより、前記固定ガイドベーンによって前記媒体ボールの運動方向を変えて、前記回転容器内壁に衝突させることにより,前記原料粉体を粉砕するように構成された高速粉体反応装置を用いて、前記キチン原料が、キチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下になるように行うことを特徴とするキチン分解物の製造方法を提供するものである。 上記発明によれば、原料とされるキチン含有組成物のキチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下となるように微粉砕するので、原料に含まれるキチン以外の他の構成成分が分解を受け易い構造とされる。したがって、例えば、カニ殻、エビ殻等の甲殻類の外殻を原料としてキチンを分離・抽出する際に、希塩酸処理による炭酸カルシウム除去、希アルカリ処理によるタンパク除去、有機溶媒処理による脱色等の処理を施す場合であっても、その酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量の低減や、上記処理に要する時間の短縮をすることができる。また、原料に含まれる他の構成成分から効率的にキチンを抽出することができるので原料の利用効率も高めることができる。 更に、上記発明によれば、カニ殻等の甲殻類の外殻を原料とする場合であっても、分子量、荷電状態等の物理化学的特性においてより均質なキチンを分離・抽出することができる。したがって、その低分子化や脱アセチル化をコントロールし易く、更に、塩酸等の酸で加水分解させる場合であっても従来よりもその使用量を軽減することができ、室温・常圧近くの穏やかな条件であっても効率的にキチン分解物を製造することができる。更にまた、酵素を用いて加水分解させる場合には、酵素の基質とするためにキチンをコロイダルキチン等に調製する必要がなく効率的にキチン分解物を製造することができる。 本発明においては、前記キチン抽出工程が、タンパク質除去処理、無機塩除去処理、及び色素除去処理から選ばれた少なくとも一種の処理を含む工程であることが好ましい。 本発明においては、前記キチン含有組成物が、甲殻類の外殻であることが好ましい。また、前記キチン含有組成物が、カニ殻及び/又はエビ殻であることが好ましい。 本発明においては、前記キチン加水分解工程が、β−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素をキチンに作用させる処理を含む工程であることが好ましい。また、前記キチン加水分解工程が、キチナーゼ、リゾチーム、及びキトビアーゼから選ばれた少なくとも一種の酵素をキチンに作用させる処理を含む工程であることが好ましい。更にまた、前記キチン加水分解工程が、塩酸をキチンに作用させる処理を含む工程であることが好ましい。 本発明の別の好ましい態様においては、更に、脱アセチル化処理を施す脱アセチル化工程を含み、前記脱アセチル化工程において、前記原料に由来するキチン及び/又はその低分子化物のアセチルグルコサミン残基のアセチル基を脱アセチル化する。これによれば、本発明の上記利点を享受しつつ、キチンの構成糖であるアセチルグルコサミンの2位のアセチル基を脱離させて構成糖の2位に遊離アミノ基を有する、キトサンオリゴ糖、グルコサミン等を製造することができる。 本発明によれば、低分子化度や脱アセチル化度をコントロールすることが容易であり、酸・アルカリ溶液、有機溶剤の使用量を低減することができ、原料とされるキチン含有組成物又はキチンの利用効率にも優れたキチン分解物の製造方法を提供することができる。 本発明において原料とされるキチン含有組成物としては、カニ、エビ、オキアミ等の甲殻類の外殻、イカの軟骨、カブトムシ、コオロギ等の昆虫類の外皮、キノコ類、真菌類の細胞壁等に由来するものを好ましく例示できる。特にカニ殻、エビ殻が資源としても豊富であり、好ましく用いることができる。 本発明において原料とされるキチンとしては、上記のキチン含有組成物キチンを酸処理してカルシウム分を除去し、更に水酸化ナトリウム処理により蛋白質を除去することなどにより調製されたキチン、又はこれと均等なキチンであればよく、キチン粉末として市販されているものを用いることもできる。 本発明の上記キチン原料微粉砕工程においては、微粉砕手段によって、上記キチン含有組成物又はキチンからなるキチン原料を、キチン質の結晶化度として70%以下、より好ましくは結晶化度60%以下、更により好ましくは結晶化度50%以下になるように微粉砕する。ここで、高分子化合物系材質において、その結晶化度とは、結晶質部分と非晶質部分との相対な量に相関するパラメータであり、その一般的な測定・算出方法としては、密度法、X線回折法、赤外線吸収法、NMR法などが挙げられる。なお、本発明においては、粉末X線回折測定(測定用X線:CuKα線)によって得られる回折角―散乱強度プロット図形(X線回折(XRD)パターン)に基づいて下記の式(I)で算出される値である。 上記微粉砕手段は、複数個の粉砕媒体ボールと粉体とを収納した処理容器の回転により、該粉体を微粒子化する高速粉体反応装置が好ましく用いられ、特に特許第3486682号又は特許第3533526号に開示されているコンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置がより好ましく用いられる。同高速粉体反応装置は、粉砕用容器や粉砕用ボールの衝突による磨耗分の混入を軽減でき、スケールアップも容易であるので、本発明の微粉砕手段として好ましく用いることができる。 コンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置について、図1の説明図に沿って説明する。 図1に示すように、装置主要部は、回転する円筒型容器である高速回転容器10(粉砕容器)と、その内部の上部に配置される固定ガイドベーン20とを設けた単純な構造になっている。この容器の中に媒体ボール30と試料粉末とを投入し高速回転容器10を高速回転させる。媒体ボール30と試料粉末は固定ガイドベーン20によってその運動方向を変えられ、媒体ボール30は衝突部60(MA点)に向かう。一方、粉体の一部はガイドベーンと容器内壁とのクリアランス70(約0.5mm)を通過し、容器内壁に試料粉体層40が形成される。したがって、衝突部60(MA点)においては、容器内壁の試料層と固定ガイドベーンによって方向を変えられた媒体ボールが1点で集中的に衝突し、効率的な粉砕がなされる。また、容器内壁の試料粉体層40の形成は容器からの不純物介入を防止する効果もある。 本発明の上記キチン原料微粉砕工程においては、上記微粉砕手段によって、キチン原料をキチン質の結晶化度として、上記の結晶化度になるように微粉砕し、且つ、平均粒子径が40μm以下になるように微粉砕する。より好ましくは25μm以下、更により好ましくは20μm以下になるように微粉砕することが好ましい。その平均粒子径の測定は、公知の方法を用いて行うことができるが、例えば、メタノールを分散媒として、レーザー回折・散乱法の原理による粒度分布測定装置を用いて測定することができる。 本発明の上記キチン加水分解工程においては、キチン加水分解手段によってキチンを加水分解する。キチン加水分解手段としては、キチン分解酵素等による酵素的加水分解、又は塩酸等による酸加水分解が挙げられる。 キチン分解酵素としては、例えば、バチラス(Batillus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、トリコダーマ(Trichoderma)属、セラチア(Serratia)属、コリネバクテリア(Corynebacteria)属、ビブリオ(Vibrio)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、アエロモナス(Aeromonas)属、アミコラクトプシス(Amycolactopsis)等の微生物に由来するキチナーゼ、テンサイ等の植物に由来するキチナーゼ、卵白由来リゾチーム、キトビアーゼ等を好ましく例示できる。これらの酵素は、一般にβ−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素であるが、そのエンド型、エキソ型のいずれの分解特性のものであってもよい。また、β−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素以外の酵素であって、キチンの低分子化に寄与できる酵素を組み合わせて用いてもよい。 本発明においては、キチンに塩酸を作用させて加水分解することも好ましく、これによれば、塩酸の使用量の低減や反応時間の短縮をし、従来の酸加水分解よりも生産性を向上させることができる。また、上記の酵素的加水分解と酸加水分解を併用して、本発明のキチン加水分解手段とすることもできる。 本発明においては、キチン原料を微粉砕工程によって微粉砕した後、該微粉砕物からキチンを抽出し、このキチン抽出部に対して上記キチン加水分解工程を施してもよい。この場合のキチン抽出手段としては、タンパク質除去処理、無機塩除去処理、及び色素除去処理等の公知の処理手段を例示することができる。本発明においては、キチン原料を微粉砕したことにより、それらの公知の処理手段に準拠しつつ、より短時間、より緩和された条件でキチン含有組成物からキチンを抽出することができる。 また、本発明においては、キチン加水分解工程を施した後、更に脱アセチル化工程を施してもよい。脱アセチル化工程においては、脱アセチル化手段によって、原料に由来するキチン及び/又はその低分子化物のアセチルグルコサミン残基のアセチル基を脱アセチル化する。脱アセチル化手段としては、N−アセチルグルコサミンの脱アセチル化酵素等による脱アセチル化、又は濃アルカリ等によるアルカリ加水分解が挙げられる。 本発明のキチン分解物の製造方法によって得られたキチン低分子化物やキチン低分子化物の脱アセチル化物は、公知の透析、塩析、限外濾過等の手段によって更に濃縮・精製することができる。例えば、分解残渣を濾過処理等により取り除くことができ、酵素タンパク、着色を活性炭処理等により取り除くことができ、バッファー、脱アセチル化物をイオン交換クロマトカラム処理等により取り除くことができる。また、活性炭カラムクロマトグラフィー、ゲル濾過、高速液体クロマトグラフィーなどの分離・精製手段等により分解物を重合度別に単離することができる。更に、酵素処理によりN−アセチルグルコサミン(単糖)、キトビオース(2糖)、グルコサミン(単糖)、キトサンオリゴ糖ダイマー(2糖)にまで完全分解を行い、これらを逆浸透膜(RO膜)処理や結晶化処理により精製することができる。 このような濃縮・精製方法の一例としては、例えば、特開2005−281648号公報に挙げられた、キチンの酸による部分加水分解時に生成する副生塩等をイオン交換膜電気透析によって効率的に除去する方法などが挙げられる。 以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の範囲を限定するものではない。 <試験例1> カニ殻を、特許第3486682号及び特許第3533526号に記載されたコンバージミルの原理を利用した高速粉体反応装置(株式会社真壁技研社製)を用いて微粉砕した。 すなわち、上記高速粉体反応装置のジルコニア製粉砕容器(1000ml)に、原料粉としてカニ殻20gと、媒体ボールとして直径10mmのジルコニアボール271g(80ml)とを投入し、空気雰囲気下、回転数700rpmにて60分間の粉砕処理を行った。 得られたカニ殻微粉砕物を0.1M酢酸バッファー(pH6.0)に終濃度10mg/mlで分散させ、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)を最終濃度1mg/mlとなるように添加して40℃で酵素処理した。また、微粉砕していないカニ殻(0.1〜5mmに粉砕されたもの)を対照として同様に酵素処理した。 酵素処理開始から3時間、18時間、48時間後の酵素処理液について、その溶液の一部を下記分析条件にてHPLCに供し、該単糖及び2糖の検出曲線下面積を、別途に標準濃度試料から得られた検量線に当てはめて定量し、上記酵素処理液中に溶解していた量に換算した。なお、生成した単糖及び2糖が、それぞれN−アセチルグルコサミン、及びキトビオースであることを1H、13CNMR分析により確認した。 <HPLC条件>・カラム:Asahipak NH2P-50 4E(商品名、昭和電工株式会社製)・移動相:アセトニトリル/水 = 75/25・流速 :0.8ml/min・カラム温度:室温・検出器:RI検出器 その結果、図2に示すように、微粉砕していないカニ殻を酵素処理しても単糖への糖化はほとんど起こらなかった。一方、カニ殻を微粉砕した後に酵素処理したものについては、酵素処理によって経時的に単糖への糖化が起こり、48時間後にはその糖化率は約20%であった。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のカニ殻の質量を100としたときの、生成した単糖及び2糖の合算質量の相対割合を意味する。 以上から、カニ殻からなるキチン原料に微粉砕処理を施すことにより、キチン分解物である単糖及び/又は2糖をより効率的に調製できることがわかる。 <試験例2> 原料試料として、市販のキチン粉末(焼津水産化学工業株式会社製、平均粒径244μm)を用いた以外は上記試験例1と同様にしてその微粉砕化した。 得られたキチン微粉砕物を0.1M酢酸バッファー(pH6.0)に終濃度10mg/mlで分散させ、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)を最終濃度1mg/mlとなるように添加して37℃で酵素処理した。また、微粉砕していない市販のキチン粉末を対照として同様に酵素処理した。 酵素処理開始から1時間、12時間、24時間後の酵素処理液について、上記試験例1と同様にして生成した単糖(N−アセチルグルコサミン)及び2糖(キトビオース)を分離、定量した。 その結果、図3に示すように、微粉砕していないキチン粉末を酵素処理しても単糖への糖化率は10%に満たなかった。一方、キチン粉末を微粉砕した後に酵素処理したものについては、酵素処理によって経時的に単糖への糖化が起こり、24時間後のキチン分解酵素で糖化率は約50%近くとなった。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のキチン粉末の質量を100としたときの、生成した単糖及び2糖の合算質量の相対割合を意味する。 以上から、キチン粉末からなるキチン原料に微粉砕処理を施すことにより、キチン分解物である単糖及び/又は2糖をより効率的に調製できることがわかる。 <試験例3> キチン粉末を原料として用いて、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチナーゼ酵素処理によるキチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。 すなわち、微粉砕条件を(i)回転数700rpm―粉砕時間60分、(ii)回転数700rpm―粉砕時間120分、(iii)回転数800rpm―粉砕時間120分として、上記試験例2と同様にして微粉砕処理を行った。そして得られたキチン粉末微粉砕物について、上記試験例2と同様にして、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)で24又は48時間処理した後のキチンの糖化率を求めた。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のキチン粉末の質量を100としたときの、生成した単糖、又は2糖の質量の相対割合を意味する。 図4はその結果をまとめたグラフである。図4(a)に示すように、微粉砕処理したキチン粉末では、キチナーゼ「エイコンCHL」での酵素処理によって単糖(N−アセチルグルコサミン)が経時的に生成した。その糖化率は、上記微粉砕条件(i)〜(iii)間でほぼ同程度であった。 また、図4(b)に示すように、微粉砕処理したキチン粉末では、キチナーゼ「エイコンCHL」での酵素処理によって2糖(キトビオース)が経時的に生成した。そして、上記微粉砕条件(i)〜(iii)間で、酵素処理後48時間の糖化率を比較すると、それぞれ46.4%、53.5%、56.9%であり、上記微粉砕条件(i)<(ii)<(iii)の順で増加傾向を示した。 <試験例4> キチナーゼとしてYatalase を用いた以外は、上記試験例3と同様にして、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。 図5はその結果をまとめたグラフである。図5(a)に示すように、微粉砕処理したキチン粉末では、Yatalaseでの酵素処理によって単糖(N−アセチルグルコサミン)が経時的に生成した。その糖化率は、上記粉砕条件(i)<(ii)<(iii)の順で増加傾向を示した。また、図5(b)に示すようにYatalaseでの酵素処理では2糖(キトビオース)は生成しなかった。 <試験例5> カニ殻を原料として用いて、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチナーゼ酵素処理によるキチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。 すなわち、微粉砕条件を(i)回転数500rpm―粉砕時間30分、(ii)回転数500rpm―粉砕時間60分、(iii)回転数700rpm―粉砕時間30分、(iv)回転数700rpm―粉砕時間60分として、上記試験例1と同様にして微粉砕処理を行った。そして得られたカニ殻微粉砕物について、上記試験例1と同様にして、キチナーゼ(洛東化成工業株式会社製、商品名「エイコンCHL」)で3又は22時間処理した後のキチンの糖化率を求めた。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のカニ殻の質量を100としたときの、生成した2糖(キトビオース)の質量の相対割合を意味する。 図6はその結果をまとめたグラフである。図6に示すように、微粉砕処理したカニ殻では、キチナーゼ「エイコンCHL」での酵素処理によって2糖が経時的に生成した。そして、上記微粉砕条件(i)〜(iv)間で、酵素処理後22時間の糖化率を比較すると、それぞれ7.6%、11.4%、9.4%、14.5%であり、上記微粉砕条件(i)<(iii)<(ii)<(iv)の順で増加傾向を示した。 <試験例6> キチナーゼとしてYatalase を用いた以外は、上記試験例5と同様にして、上記高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、キチンの分解物の生成にどのように影響するかを調べた。なお、ここでの糖化率とは、酵素反応前のカニ殻の質量を100としたときの、生成した単糖(N−アセチルグルコサミン)の質量の相対割合を意味する。 図7はその結果をまとめたグラフである。図7に示すように、微粉砕処理したカニ殻では、Yatalaseでの酵素処理によって単糖(N−アセチルグルコサミン)が経時的に生成した。そして、上記微粉砕条件(i)〜(iv)間で、酵素処理後22時間の糖化率を比較すると、それぞれ4.8%、8.6%、4.8%、8.1%であり、上記粉砕条件(i)、(iii)<(ii)、(iv)の順で増加傾向を示した。 上記試験例3〜6の結果を考え合わせると、上記高速粉体反応装置によるキチン原料の微粉砕処理において、回転数を上げたり、粉砕時間を長くしたりして微粉砕の程度を大きくすることによって、キチナーゼ酵素処理によるキチン分解物の生成が促進されることが明らかとなった。 <試験例7> 上記高速粉体反応装置を用いた微粉砕の程度が、キチン粉末微粉砕物の平均粒子径及び結晶化度に与える影響を調べた。 すなわち、キチン粉末の微粉砕条件を(a)回転数500rpm―粉砕時間30分、(b)回転数500rpm―粉砕時間60分、(c)回転数700rpm―粉砕時間30分、(d)回転数700rpm―粉砕時間60分、(e)回転数700rpm―粉砕時間120分、(f)回転数800rpm―粉砕時間120分として、上記試験例2と同様にして、微粉砕処理を行った。なお、微粉砕条件(d)、(e)、(f)は、それぞれ上記試験例3及び4における微粉砕条件(i)、(ii)、(iii)と同じ条件である。 そして得られたキチン粉末微粉砕物について、その平均粒子径(D50)及び結晶化度を測定した。 なお、平均粒子径(D50)は、メタノールを分散媒として、レーザー回折・散乱法の原理による粒度分布測定装置「X−100」(米国マイクロトラック社製)を用いて測定した。 また、結晶化度は、X線回折装置「JDX‐3530」(日本電子株式会社製)を用いて、X線にはCu‐Kα線を用い、管電流30mA、管電圧30kVの設定条件で測定した。図8にはX線回折測定で得られた回折角―散乱強度プロット図形(X線回折(XRD)パターン)の一例を示す。結晶化度は、この回折角―散乱強度プロット図形に基づいて下記の式(I)で算出される値である。 図9はその結果をまとめたグラフ(図9a)及び表(図9b)である。グラフ(図9a)から明らかなように、平均粒子径は、微粉砕の程度が大きくなるにつれて、30.5〜16.4μmの範囲で減少傾向を示し、また、結晶化度も微粉砕の程度が大きくなるにつれて、84.0〜35.5%の範囲で減少傾向を示した。 したがって、微粉砕処理を施すことでキチン原料の平均粒子径を減少させることができるだけでなく、キチン質の結晶性を破壊できることが明らかとなった。また、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の平均粒子径の減少割合が比較的小さいものであったのに対し、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の結晶化度の減少割合は比較的大きなものであった。 キチン粉末原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率との相間関係を求めるために、上記試験例3及び4で得られた結果のうち、図4(b)で示す24時間処理後の2糖(キトビオース)生成のデータ又は48時間処理後の2糖(キトビオース)生成のデータ、並びに図5(a)で示す24時間処理後の単糖(N‐アセチルグルコサミン)生成のデータ又は48時間処理後の単糖(N‐アセチルグルコサミン)生成のデータについて、その糖化率の値をY軸に、それらに対応する結晶化度の値をX軸にプロットしてその相関係数を求めた。 その結果、図10に示すとおり、キチン粉末原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率とがよく相関していることが明らかとなった。 したがって、図9のグラフ(図9a)及び表(図9b)で示したように、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の平均粒子径の減少割合が比較的小さいものであることを考慮に入れれば、微粉砕処理を施すことでキチナーゼ処理による糖化率が促進されることの主な要因の一つが、微粉砕処理を施すことによるキチン原料の結晶化度の減少であることが考えられた。 <試験例8> カニ殻を原料に用いて、高速粉体反応装置による微粉砕の程度が、平均粒子径及び結晶化度に与える影響を調べた。 すなわち、カニ殻の微粉砕条件を(g)回転数500rpm―粉砕時間30分、(h)回転数500rpm―粉砕時間60分、(i)回転数700rpm―粉砕時間30分、(j)回転数700rpm―粉砕時間60分として、上記試験例1と同様にして、微粉砕処理を行った。なお、微粉砕条件(g)〜(j)は、それぞれ上記試験例5及び6における微粉砕条件(i)〜(iv)と同じ条件である。そして得られたカニ殻微粉砕物について、試験例7と同様にして、その平均粒子径(D50)及び結晶化度を測定した。 図11(a)はその結果をまとめた表である。図11(a)に示す表から明らかなように、平均粒子径は、微粉砕の程度が大きくなるにつれて、15.1〜10.1μmの範囲で減少傾向を示し、また、結晶化度も微粉砕の程度が大きくなるにつれて、50.0〜25.8%の範囲で減少傾向を示した。 したがって、原料としてカニ殻を用いた場合も、微粉砕処理を施すことでキチン原料(カニ殻)の平均粒子径を減少させることができるだけでなく、キチン質の結晶性を破壊できることが明らかとなった。 カニ殻原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率との相間関係を求めるために、上記試験例5及び6で得られた結果のうち、図6で示す22時間処理後のデータ、並びに図7で示す22時間処理後のデータについて、その糖化率の値をY軸に、それらに対応する結晶化度の値をX軸にプロットしてその相関係数を求めた。 その結果、図11(b)に示すとおり、カニ殻原料の結晶化度と、キチナーゼ処理による糖化率とがよく相関していることが明らかとなった。 したがって、図11(a)の表に示したように、微粉砕処理を施すことによるカニ殻原料の平均粒子径の減少割合が比較的小さいものであることを考慮に入れれば、微粉砕処理を施すことでキチナーゼ処理による糖化率が促進されることの主な要因の一つが、微粉砕処理を施すことによるカニ殻原料の結晶化度の減少であることが考えられた。コンバージミルの原理を説明する説明図である。カニ殻とカニ殻微粉砕物とにキチナーゼを作用させた場合の糖化率を比較した結果を示す図表である。キチン粉末とキチン粉末微粉砕物とにキチナーゼを作用させた場合の糖化率を比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(「エイコンCHL」)処理による糖化(分解)をキチン粉末原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(Yatalase)処理による糖化(分解)をキチン粉末原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(「エイコンCHL」)処理による糖化(分解)をカニ殻原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。キチナーゼ酵素(Yatalase)処理による糖化(分解)をカニ殻原料の微粉砕の程度ごとに比較した結果を示す図表である。試験例7のX線回折測定で得られた回折角―散乱強度プロット図形(X線回折(XRD)パターン)の一例を示す図表である。キチン粉末原料の微粉砕の程度と平均粒子径及び結晶化度との関係を示すグラフ(a)及び表(b)である。キチン粉末微粉砕物においてその結晶化度と糖化率との相関を示す図表である。カニ殻原料の微粉砕の程度と平均粒子径及び結晶化度との関係を示す表(a)及びカニ殻原料微粉砕物においてその結晶化度と糖化率の相関を示す図表(b)である。符号の説明10 高速回転容器20 固定ガイドベーン30 媒体ボール40 試料粉体層50 ボールと粉体の飛程域60 衝突部70 ガイドベーンと容器内壁とのクリアランス キチン含有組成物又はキチンからなるキチン原料を、微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料を加水分解するキチン加水分解工程とを含み、 前記キチン原料微粉砕工程は、回転容器と、該回転容器内に配置された固定ガイドベーンとを有し、前記回転容器内に媒体ボールと、原料粉体とを投入して、前記回転容器を回転させることにより、前記固定ガイドベーンによって前記媒体ボールの運動方向を変えて、前記回転容器内壁に衝突させることにより,前記原料粉体を粉砕するように構成された高速粉体反応装置を用いて、前記キチン原料が、キチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下になるように行うことを特徴とするキチン分解物の製造方法。 キチン含有組成物からなるキチン原料を、微粉砕するキチン原料微粉砕工程と、微粉砕されたキチン原料からキチンを抽出するキチン抽出工程と、抽出されたキチンを加水分解するキチン加水分解工程とを含み、 前記キチン原料微粉砕工程は、回転容器と、該回転容器内に配置された固定ガイドベーンとを有し、前記回転容器内に媒体ボールと、原料粉体とを投入して、前記回転容器を回転させることにより、前記固定ガイドベーンによって前記媒体ボールの運動方向を変えて、前記回転容器内壁に衝突させることにより,前記原料粉体を粉砕するように構成された高速粉体反応装置を用いて、前記キチン原料が、キチン質の結晶化度として70%以下であって、且つ、平均粒子径40μm以下になるように行うことを特徴とするキチン分解物の製造方法。 前記キチン抽出工程が、タンパク質除去処理、無機塩除去処理、及び色素除去処理から選ばれた少なくとも一種の処理を含む工程である請求項2記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン含有組成物が、甲殻類の外殻である請求項1〜3のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン含有組成物が、カニ殻及び/又はエビ殻である請求項4記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン加水分解工程が、β−1,4グルコシド結合を加水分解する酵素をキチンに作用させる処理を含む工程である請求項1〜5のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン加水分解工程が、キチナーゼ、リゾチーム、及びキトビアーゼから選ばれた少なくとも一種の酵素をキチンに作用させる処理を含む工程である請求項1〜5のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 前記キチン加水分解工程が、塩酸をキチンに作用させる処理を含む工程である請求項1〜7のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。 更に、脱アセチル化処理を施す脱アセチル化工程を含み、前記脱アセチル化工程において、前記原料に由来するキチン及び/又はその低分子化物のアセチルグルコサミン残基のアセチル基を脱アセチル化する請求項1〜8のいずれか一つに記載のキチン分解物の製造方法。


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